『統計学と”魔法使い”という生物』著:A.L 作:クローン少女
アルセーニ・シン・レオニードは常に周りから”神童”だとほめそやされて育った。アルセーニ自身もそれを信じて疑ったことはなく、幼心に自らのことを
”あまりにも常軌を逸した才能を持ち合わせている”
と恐ろしく感じるほどだった。
実際、この幼い少女は驚異的な身体能力を持ち、数学に秀で、5歳に満たないころから”神の手”と呼ばれる宇宙エネルギーの扱いを心得ていた。
しかし、厳格な彼女の両親は一度たりとも手放しで彼女を褒めたことがなかった。
それも、そのはず。彼女の父親は、美しい水の惑星ソースォードの支配者―、ハート種族の将軍であり、レオニード家は代々続く”純血貴族”であった。娘が優秀であるのは当然だ。
ちなみに、ソースォードはこのあたり一帯の太陽系を手中に収める銀河の一大勢力である。その勢いは近年陰りを見せているが、いまだ十分すぎるほどの戦力を保有したまま銀河の端でのさばっていた。
栄あるソースォードの人種は2割の優れた”純血”ハート種族、3割のハート種族と”神の下僕”の混血、5割の”神の下僕”で構成されていた。
ハート種族は、おおむね深海のように深く艶やかな青毛で、黄金色の瞳に、褐色の肌をしていた。加えて、丈夫な肉体と高い免疫力を持ち、適応能力が非常に高い。
長寿で平均寿命が1000歳を超えており、科学技術の発達によって身体の衰えは如何ほどなかった。
事実、”神の子孫”と言わしめるのに十二分である。
そのため、血を汚す元凶である他種族との混血、特に他惑星の種”神に見捨てられた者たち”はソースォードの大気圏に侵入することさえ厳しく規制されていた。
その徹底ぶりは、事故で不時着した他惑星宇宙船の乗組員全員を保安隊がその場で射殺し、宇宙船の残骸ごと周辺一帯を”清め”と称し焼け野原にしたほどである。
”神の星”に劣等種族の血は不必要だったのだ。
”神の子孫”―ハート種族は”神の下僕”を呼び名の通り僕としていたが、体罰や不法な処罰は認められていなかった。
そのため、ソースォード内での争いは少なく、常に治安は維持されていた。
しかし、一歩惑星の外に出ると、平和はどこにも見当たらなかった。
ソースォードの人間による私利私欲のための搾取。しかし、それはソースォードを真の”神の楽園”にするために必要不可欠な”神聖な”行為だった。
ソースォードの人間は信仰深かった。そして、罪深いほど”神に見捨てられた者たち”に冷徹であった。
ソースォードでなければ人ではない。
自分たち”神の子孫”は神の次にこの世でもっとも尊い存在である。
なぜなら、”神”は―
光り輝く星々より気品溢れる、この世で最も高貴で美しい身体
光が宇宙を永遠に飛び続けるように、この世で最も長い寿命
そして、この世のすべてのものを自在に操る力、”神の手”
それらを我々にお与えなさった。
この世の全ての幸福を我々に与えてくださったのだ。
我々は繁栄を極め、ソースォードを銀河最後の”神の楽園”にする”使命”がある。
それらを忠実に代々妄信し続け、自分たちで体現してきたもの―
進んだ最先端科学、他種族を圧倒的に凌駕する身体能力、対象を直接触れずに自在に操り、生き物の脳や自律神経、精密機械を思うがままに意識で操る”神の手”、
それらが彼らの輝かしい繁栄とおごりを支え、同時に彼らを破滅に向かわせることになった。
そして、事実、ソースォードは跡形なく吹き飛ぶことになる。
それは、アルセーニが7歳の誕生日を迎えた日。
細菌兵器と量子爆弾による二重攻撃。予期しない奇襲。敵連合軍の圧倒的な戦力。
両親は目の前で溶け崩れた。故郷は宇宙の塵になった。
少女はこの時のことをあまりよく覚えていない。
いつからか、彼女は暗いゲージの中で寝起きするようになったのだ。
ソースォードとかいう宇宙の謎設定は、スルーしてても大体の話は分かると思います。
なんとなく、あーそんなんだー程度でOK
ほとんど出てこないし、主人公は小さくてよく理解できてないはず‥‥