『統計学と”魔法使い”という生物』著:A.L   作:クローン少女

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アルセーニの改称はアビエスです。


05 旧友の頼み

ホグワーツ特急の発車まで、後15分。

マルフォイ家の当主、アーマンド・マルフォイは今年4年生になる一人息子と友人の娘を連れ、キングス・クロス駅、9と3/4番線のホームに降り立った。

 

ホームはホグワーツ特急に乗り込む生徒と、見送る家族が大勢押し寄せ、新入生とその弟妹たちのはしゃぐ声が響き渡り、半ばパンク状態である。

 

連れている新入生の友人の娘――こと、グリンデルバルドの娘アルセーニも、その例外でなかった。キョロキョロと周囲を見渡し、ご覧の通りに気もそぞろで、手持ちの荷物を今すぐなくしてしまいそうである。

 

 

「お父様、アビエスのコンパートメントには、私が居たほうがよろしいですか?」

 

「ああ‥‥アブラクサス、是非そうしてくれ」

 

 

賢い自分の息子は、チョロチョロと動き回る友人の娘を心配に思ったのだろう。

少女の小さな手は息子によってしっかりと繋ぎ止められていた。兄弟のいない息子の年上らしい振る舞いをアーマンドは心強く思った。

と、同時に、これから息子が背負うことになる責任を心から案じ、アーマンドは息子の肩にそっと手を置いた。

 

 

「アブラクサス、アビエスを頼んだぞ。何かあったらすぐに連絡しなさい」

 

「はい、お父様」

 

「いい返事だ」

 

 

真っ直ぐこちらを見上げて返事をする息子は、自分と瓜二つでマルフォイ家特有のプラチナブロンドと灰色の瞳を持っていた。だが、自分が15の時よりも、ずっと大人びていると彼は思った。アーマンドは穏やかな笑みを浮かべ、明後日の方向を向いている少女にも声をかけた。

 

 

「アビエス、」

 

「はい、おじさん」

 

「お前もアブラクサスの言うことをよく聞くんだぞ。くれぐれも怪我をしたりしないこと。君のお父様が心配するからな」

 

「分かってるよ」

 

「アビエス、そのような返事をしてはいけません。返事は”はい”です」

 

 

息子に注意を受けたグリンデルバルドの娘は、不貞腐れて頬を膨らませた。

 

 

「よい、よい、アブラクサス。まだアビエスは10だ。そのうち、できるようになるだろう」

 

 

彼がハハハと声を立てて笑うと、息子は些か不満そうな表情をしたが、すぐに分かりましたとだけ答えた。

 

 

「さあ、もう乗りなさい。そろそろ出発だろう‥‥ほら、アビエス、鞄を忘れているぞ。なくさないように気をつけなさい」

 

 

落とした鞄を拾って少女に渡し、彼は2人の額へ交互にキスを落とした。

 

 

「行ってきます、お父様」

 

「またね、おじさん」

 

「ああ、いってらっしゃい、アブラクサス、アビエス」

 

 

大勢の生徒の中を少女の手を引いて、息子は電車に乗り込んで行く。

 

 

――息子にグリンデルバルドの娘を預ける。

 

アーマンド・マルフォイ、当然、このことを彼自身が決めたわけではない。

 

(‥‥全く、あいつも変わり者だな。天下のグリンデルバルドがエイリアンを自分の娘にするなど、誰も考えてはいまい)

 

ふうとため息をついた彼の脳裏に、つい数か月前の旧友との会話が蘇っていた。

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

3か月程前のことだ。アメリカでの商売の話をしに、アーマンドはドイツにあるグリンデルバルド邸を訪ねた。彼とグリンデルバルドはダームストラングの同級生である上に、双方ともに純血の家系のため、旧知の仲であった。

 

その結果、アーマンドはグリンデルバルドの”計画”に、少なからず金銭的な援助をしてきたし、彼は幾度も機転の利いた先手を打ち、窮地に置かれたグリンデルバルドを助けてきた。そのため、野望を抱いたグリンデルバルドのことを誰よりもよく理解していると彼は自負していた。

 

その分、グリンデルバルドの”混み入った話”を聞いたとき、彼の衝撃は並大抵のものではなかった。

 

 

『何‥‥お前、宇宙人と言ったか?』

 

『ああ、そうだ。確かにそう言った。おまけに、私はあの子を娘として育てるつもりだと、そう言った』

 

『‥‥‥‥まさか、冗談だろう?』

 

『‥‥冗談でこんな話をするものか』

 

『ハハハ‥‥君から変わった話はたくさん聞いたが‥‥、まさか』

 

 

アーマンドは足を組みなおし、動揺を隠すかのように、出された紅茶を一気に胃に流し込んだ。

 

宇宙人、宇宙人、宇宙人、‥‥エイリアンはやはり存在したのか。やたらマグルが騒ぎ立てていたのもそのせいか?いや、あれはエンターテイメントの域だろう。しかし、今回の話は違う。事実だ。地球以外に生命体がいるというれっきとした事実だ。それを自分の友人は見つけてしまった。というより、捕まえてしまった、のだ。エイリアン自体を。一体、ゲラートは何を考えているんだ。心底恐ろしい。

 

 

『信じてもらえないようだな』

 

 

そんなの当たり前だと彼は心の中で旧友を罵った。こちらはこんなに動揺しているのにお前のその落ち着きは何なんだ。

 

 

『しかし‥‥そう簡単に信じるバカもいないだろう。娘と合わせる。‥‥アルセーニ!』

 

『ぶっ‥‥ゲラート、ま、待て‥‥』

 

 

飲みかけの紅茶を吹き出し、彼は慌ててグリンデルバルドを制したが、間に合わなかった。ブンッと風を切る音が聞こえ、暗闇からエイリアンが姿を現した。

 

 

『何?お父さん!』

 

『っ‥‥!?』

 

バリンッ

 

 

乾いた音がして、彼の手からは割れたティーカップの細かい破片が、パラパラと膝上に零れ落ちた。握りつぶしたのだ。(叫ばなかっただけ、彼を誉めてほしい)

 

目の前に突然現れたエイリアンは随分と小さくて人間の姿をしていた。だが、そのエイリアンの黄色い目と青い髪の毛はアーマンドの腰を抜かすのに十分であった。

 

 

『‥‥‥‥おじさん、血、出てるよ』

 

『‥‥ああ、驚かせてすまない、お嬢さん。血はいずれ止まる』

 

 

その声に抑揚はない。彼の様子をグリンデルバルドは呆れたように見つめ、サッと杖を振ってカップを直した。

 

 

『まったく、何をそんなに動揺しているんだ。七変化だと思えばそんなに驚くこともなかろうに』

 

『アハハ‥‥嫌だな、ゲラート。こんな可愛らしいお嬢さんなら早くそう言ってくれないか。あまりに心臓に悪いだろう?』

 

 

そう言って、少女の方へ軽くウィンクを飛ばすと、グリンデルバルドはあからさまに嫌そうな顔をした。一方で、少女の方は憐れんだ視線をこちらに向けているだけで、ニコリともしなかった。

 

 

『で、ここからが本題なんだが‥‥』

 

 

どうやら、今までの話は本題ではなかったようだ。

 

 

『‥‥なんだ、ゲラート。さっさと用件を言ってくれ。もう、私はこれ以上驚くことはないからな。安心して聞けるだろう』

 

『ああ、そうか。では、娘を預かってくれ』

 

『な‥‥』

 

 

信じられない申し出に、アーマンドの顔から表情というものが、ひとつ残らず消えて行った。

 

 

『‥‥このおじさんの顔、人形みたいで怖い』

 

『言葉を慎め、アルセーニ。この親父は今日からお前の”おじさん”になるんだ』

 

 

え、嫌だあ、という表情を浮かべて、少女はこちらを見てくる。

アーマンドは限界だった。決して、少女の嫌そうな表情のせいではない。

彼にとって、グリンデルバルドの考えていることが分からない、なんてことは許されないのだ。

 

彼は‥‥

 

その宇宙エネルギーとやらを扱う少女を味方に引き入れて、殺人鬼にでもするつもりなのだろうか?‥‥あの年端の行かない少女を?いやいや、流石にそれは無理だろう。

でも、少女がオブスキュリアルだとしたら?

 

話は別だ。ただ、この能天気な少女がオブスキュリアル?ないない。

 

だが、そもそも、エイリアンは魔法を使えるのか?

 

しかし、彼が使えると言っているのだ。使えるのだろう。

 

‥‥だからと言って、その大事な少女を自分に預けるメリットは何だ?

 

彼自身の手元に置いておいた方がいいのではないだろうか?でも、置けない状況だったとしたら?

 

なるほど、

 

手元に置いておきたいが、そういうわけにもいかない、ということか。

 

それは、少女が人身売買組織で高値で取引されていたことに関係するのか?

 

‥‥‥‥ああ、おそらくそうだ。大いに関係があるのだ。

 

この少女は狙われているのだ。ゲラートとて、忙しい。少女の面倒だけ見るわけにもいかないだろう。

 

 

『‥‥私に預けるのもいいが、学校に通わせることを考えたか?』

 

『なるほど、それも一つの手かもしれん。‥‥ああ、アーマンド。やはり、お前は私の一番の理解者だ』

 

 

グリンデルバルドはそう言って、口角を上げニヤリと笑った。

 

 

 

・・・・・・・・

 

 

 

「おじさーん!ありがとうー!バイバイ」

 

 

ハッと我に変えて顔を上げると、コンパートメントの窓から身を乗り出してアビエスがこちらに手を振ってきていた。

 

 

「‥‥ああ、アビエス。あんまり、身を乗り出すな」

 

 

息子がアビエスの身体を引っ張て、窓を半分閉めるのが見えた。だが、少女はニコニコしているだけである。―――当然、少女のあの奇抜な髪の毛は黒く、瞳の色はヘーゼルナッツ色にアーマンドが変えていた。こうして見ると、普通の人間に見える。

 

 

「バイバーイ!」

 

 

仕方なしに手を振り返して、アーマンドは電車の姿が消えるまで見送り続けた。

 

(ああ、息子よ。我々の希望を託したぞ。‥‥アルセーニ、お前は強くなって、彼に力を貸すのだ。4、5年はかかるだろうが、仕方があるまい)

 

これから先のことを思い、電車が消えて行った方向を彼はずっと見つめていた。

 

 

 




アーマンド・マルフォイは捏造です。
1世は存在するので、2世のつもりでお読みください。


オブスキュリアル、を知らない方もいるかと思いますので補足しておきます。

ファンタビを見た方は分かると思うのですが、(といいつつ、自分は見ていない)

オブスキュリアルは、幼少期に虐待などで力が押さえつけられた結果、魔力のコントロールができなくなった、幼い魔法使い、魔女のことを指します。
魔力の暴走はすさまじいもので、広範囲にわたって破壊的な被害をもたらすこともあります。普通、オブスキュリアルは長生きせず、10代で亡くなってしまいます。

グリンデルバルドはオブスキュリアルの子供をマグル支配に使おうと考えていました。

ざっとこんな感じですが、詳しいことはネットで!
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