魔王の親友は転生せし喰種 作:睡蓮
ステータスプレートをもらってから二週間が経った。
現在、俺とハジメは訓練の休憩時間を利用して王立図書館にて魔物や錬成などについての調べ物をしている。
ハジメは、あの時のことから直接バカにしてくる奴はいないが、やっぱり非戦系天職であるためかステータスが他の戦闘系天職のステータスと比べると低いため、知識と知恵でカバーできないかと勉強しているのだ。
俺もこの世界についての知識を集めるためにハジメと一緒に勉強している。
ちなみに今の俺達のステータスはこんな感じだ。
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黒羽錬 17歳 男 レベル:2
天職:■■(未覚醒)
筋力:350(弱体化)※
体力:350(弱体化)※
耐性:350(弱体化)※
敏捷:350(弱体化)※
魔力:350(弱体化)※
魔耐:350(弱体化)※
技能:全属性耐性(弱体化)※・物理耐性(弱体化)※・状態異常耐性(弱体化)※・気配感知(弱体化)※・魔力感知(弱体化)※・五感強化(弱体化)※・限界突破(弱体化)※・閲覧不可(複数)※・言語理解
※未覚醒状態の影響
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南雲ハジメ 17歳 男 レベル:2
天職:錬成師
筋力:32
体力:32
耐性:12
敏捷:52
魔力:12
魔耐:12
技能:錬成・言語理解
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俺のステータスは50上がってやっとレベルが1つあがった。
逆にハジメは訓練をしてもレベルが1つあがるだけなのは俺と同じだが、その数値も「刻み過ぎだろ!」と、内心ツッコミをいれるほど細かくあがっているのでショックを受けていた。
ちなみに天之河のステータスは次の通りだ。
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天之河光輝 17歳 男 レベル:10
天職:勇者
筋力:200
体力:200
耐性:200
敏捷:200
魔力:200
魔耐:200
技能:全属性適性・耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解
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俺以外のクラスメイトの中では一番の成長率だ。
他のヤツらもそれなりに成長しているため、いまだに低レベルでステータスの低いハジメやオタクのくせに勇者よりもステータスの高い俺は蔑まれたり疎まれたりして陰口を言われている。
まあ、そんなことはどうでもいいけど。
正直言ってイシュタルの言っていた事を信じきることはできないが、帰れる方法は今のところそれしか無いため逃げることなどできない。
そのことを考えつつ、もうすぐ訓練の時間であることを思い出し、憂鬱に思いため息をもらす。
ハジメも同様にため息をもらしたので、互いに思わず吹き出してしまった。
「えっと、そろそろいこうか。」
「そうだな。」
そうして俺達は訓練場に向かっていった。
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檜山達がハジメになにかしようと思ったのかこちらに近づいてきていたのを睨み付けて追い払ったこと以外は特になにもなかった訓練を終える。
本来ならそれからは夕食の時間まで自由時間となるのだが、今回はメルド団長から伝えることがあると引き止められた。
何事かと注目する生徒達に、メルド団長は野太い声で告げる。
「明日から、実戦訓練の一環として【オルクス大迷宮】へ遠征に行く。必要なものはこちらで用意してあるが、今までの王都外での魔物との実戦訓練とは一線を画すと思ってくれ! まぁ、要するに気合入れろってことだ! 今日はゆっくり休めよ! では、解散!」
そう言って伝えることだけ伝えるとさっさと行ってしまった。
ざわざわと喧騒に包まれる生徒達だったがしばらくすると落ち着いたのかいつものように自由行動を開始した。
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【オルクス大迷宮】
それは、全百階層からなると言われている大迷宮である。
七大迷宮の一つで、階層が深くなるにつれ強力な魔物が出現する。
にもかかわらず、この迷宮は冒険者や傭兵、新兵の訓練に非常に人気がある。
それは、階層により魔物の強さを測りやすいからということと、出現する魔物が地上の魔物に比べ遥かに良質の魔石を体内に抱えているからだ。
俺達は、メルド団長率いる騎士団員複数名と共に、その【オルクス大迷宮】へ挑戦する冒険者達のための宿場町【ホルアド】に到着した。
新兵訓練によく利用するようで王国直営の宿屋があり、そこに泊まる。
久しぶりに普通の部屋を見た気がする俺とハジメはベッドにダイブし「ふぅ~」と気を緩めた。
明日から早速、迷宮に挑戦だが、今回は行っても二十階層までらしい。
まあ、いくら訓練をしていてステータスが高かったとしても、技術面ではまだ熟練者とはいえず、メルドさん達には届かないため妥当なのだろう。
明日のことを考えつつ、自由な時を過ごしそろそろ寝ようかと思っためたその時、俺達の睡眠を邪魔するように扉をノックする音が響いた。
誰なのかと思っていると扉の向こう側から声が聞こえてくる。
「南雲くん、黒羽くん、起きてる? 白崎です。ちょっと、いいかな?」
思いがけない人物に目を丸くしてお互いの顔を見合わせる俺とハジメ。
とりあえず扉に近かったハジメが開けると、そこには純白のネグリジェにカーディガンを羽織っただけの白崎がいた。
「……なんでやねん。」
「えっ?」
そのある意味、衝撃的な光景に思わず関西弁でツッコミを入れてしまうハジメ。
よく聞こえなかったのか白崎はキョトンとしている。
やはり天然なのかあまりにも無防備な白崎に思わずため息が出る。
そんな白崎にハジメが対応している間に白崎から視線をそらす。
いくら前世があろうとあの服装は刺激が強すぎるのだ。
「あ~いや、何でもないよ。えっと、どうしたのかな? 何か連絡事項でも?」
「ううん。その、少し南雲くんと話たくて……やっぱり迷惑だったかな?」
「…………どうぞ。」
「うん!」
ハジメも同じようにしつつ、最も有り得そうな用件を予想して尋ねているが、上目遣い付きであっさり否定されている。
気がつけば扉を開け部屋の中に招き入れていた。
白崎は何の警戒心もなく嬉しそうに部屋に入り、窓際に設置されたテーブルセットに座った。
俺はそれに合わせてお茶の準備をする。
といっても、ただ水差しに入れたティーパックのようなものから抽出した水出しの紅茶モドキだが。
ハジメが座ったのを確認してからそれぞれの前に紅茶モドキを置いていく。
「ありがとう。」
「別にいいさ。で、白崎はハジメに用があるだろ?ならしばらく外にでてるわ。」
「えっ!ちょっ!?」
ハジメの慌てたような声を無視して部屋を後にする。
行くあても無いので、何となく宿の近くにある空き地に行き空を見上げる。
「大丈夫だとは思うが、なんだかなぁ~。」
メルドさん達がいるとはいえ初の迷宮探索だ。
余程の事がない限り安全のはずなのに、モヤモヤした気持ちが晴れる事はなかった。
ホルアドの空は俺の心に反して、清々しいほどの星空が広がっていた。
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翌日、メルドさんの指示のもと魔物を倒しながらオルクス大迷宮を進んでいく。
周りが活躍を見せる中、ハジメはステータスが低いなりに、騎士団員が相手をして弱った魔物を相手に地面を錬成して落とし穴にはめて串刺しにしたりするなどトラップを使ったりして工夫して戦っていた。
俺は基本はハジメのそばにいて、時折前衛に混じって魔物を倒している。
ちなみに俺は衝撃を増幅して相手にぶつけることができる籠手や脚甲のアーティファクトを使った打撃を主体とした戦い方をしている。
一応剣とかも持っているが、どうにもしっくりこないので仕方なくこの戦い方をしている。
今も戦闘を終えてハジメの近くに戻ると、少しの間だがハジメが白崎と見つめあっていた。
「な~に見つめあってるんだハジメ?」
「なっ!?錬くん!?なに言ってるの!?」
少しからかうように言うと、見られた羞恥心からか顔を赤く染めて慌てたような声をだすハジメ。
「だからなに白崎と見つめあってるんだって言ってんだよ。なんだ?昨日なにかあったのかな?ん?ん?」
「なにもない!なにもないから!」
そうやってからかっていると視線を感じ、二人であたりを見まわす。
でも、すぐにその視線は感じられなくなった。
負の感情を感じられたその視線は普段なら無視するが、いつもの感じよりも比べ物にならないくらい深く重いものだった。それに―――
(あの視線………負の感情だけじゃない。あの感じは………狂気。)
前世で俺を苦しめたあの糞医者から散々向けられたものである狂気。
それよりも弱かったが同じようなものをあの視線から感じた。
昨日からあるモヤモヤした気持ちが膨れ上がる。
そんな漠然とした不安を抱きながらも探索を続けていった。
それからも探索は続き、遂に二十層に到達した。
現在、四十七層までは確実なマッピングがなされているので迷うことはない。
トラップに引っかかる心配もないはずだった。
二十層の一番奥の部屋はまるで鍾乳洞のようで複雑な地形をしていた。
この先を進むと二十一層への階段があるらしい。
予定通り今日の探索は終わりなのだがあと少しというところで先頭のメルドさん達が立ち止まる。
どうやら魔物のようだ。
「擬態しているぞ! 周りをよ~く注意しておけ!」
メルドさんの忠告が飛ぶ。
その直後、前方でせり出していた壁が突如変色しながら起き上がった。
ドラミングをしながら現れたそいつは、カメレオンのような擬態能力を持ったゴリラの魔物のようだ。
「ロックマウントだ! 二本の腕に注意しろ! 豪腕だぞ!」
メルドさんの声が響くと同時に戦闘が始まる。
しばらくロックマウントと前衛組が戦っていると、ロックマウントが後ろに下がり仰け反りながら大きく息を吸った。
直後に部屋全体を震動させるような強烈な咆哮が発せられた。
「グゥガガガァァァァアアアアーーーー!!」
「ぐっ!?」
「うわっ!?」
「きゃあ!?」
その咆哮が発せられると同時に前衛組の動きが硬直する。
魔力を乗せた咆哮で一時的に相手を麻痺させるロックマウントの固有魔法“威圧の咆哮”だ。
ロックマウントはその隙に傍らにあった岩を持ち上げ白崎達後衛組に向かって投げつけた。
後衛組が迎撃しようと魔法を発動しようとするも中断してしまう。
実は投げられた岩もロックマウントだったのだ。
さながらル○ンダイブのように飛んでくるロックマウントに固まってしまったのだろう。
俺はすぐに後衛組の前にでて、ロックマウントを殴り飛ばした。
「あっありがとう黒羽くん。」
「べつに。もう油断すんなよ。」
白崎に対してそう言うと、威圧の咆哮で固まっていた天之河が突然キレだした。
「貴様……よくも香織達を……許さない!」
どうやら気持ち悪さで青褪めているのを死の恐怖を感じたせいだと勘違いしたらしい。
いつもの思い込みから怒り出した天之河の感情に呼応するように聖剣が輝き出す。
「万翔羽ばたき、天へと至れ、“天翔閃”!」
「あっ、こら、馬鹿者!」
メルドさんの声を無視して聖剣を振り下ろす天之河。
すると、聖剣から光が斬撃となって放たれてロックマウントを両断し、奥の壁を破壊した。
息を吐きイケメンスマイルで振り返る天之河にメルドさんの拳骨が炸裂する。
「へぶぅ!?」
「この馬鹿者が。気持ちはわかるがな、こんな狭いところで使う技じゃないだろうが! 崩落でもしたらどうすんだ!」
その言葉に天之河はバツが悪そうに謝罪する。
苦笑しながらも天之河を他のヤツらが慰めていると、白崎が崩れた壁の一部を指差しつぶやいた。
「……あれ、何かな? キラキラしてる……。」
皆もつられて見てみると青白く発光する鉱物があり、白崎たち女子達はその美しさに見惚れていた。
メルドさん曰く、その鉱石はグランツ鉱石といわれている宝石の原石のようなもので、貴族に人気のあるものらしい。
「素敵……。」
「だったら俺らで回収しようぜ!」
グランツ鉱石を見てそうつぶやく白崎を見て檜山が唐突に動き出した。
ステータスのこともあり、ヒョイヒョイと崩れた壁を登っていく。
「こら! 勝手なことをするな! 安全確認もまだなんだぞ!」
メルドさんの言葉を無視して檜山はグランツ鉱石のところまでたどり着き手をかける。
「団長! トラップです!」
「ッ!?」
騎士団員の警告が響き、メルドさんが脱出を促すも一歩遅く、既に罠は作動して俺達の視界が真っ白に染まった。
どうやら罠は転移魔法だったようで、俺達は底が見えない奈落が広がっている縁石すらない巨大な石造りの橋の上にいた。
周囲を警戒しながら見渡すと橋の両サイドにはそれぞれ奥へと続く通路と上階への階段があるのを見つけ、メルドさんの指示に従って移動しようとするが、その時突然魔法陣が展開される。
階段側の橋の入口に現れた魔法陣から大量の魔物が出現し、通路側にも魔法陣は出現し巨大な魔物が現れた。
階段側の魔物はトラウムソルジャーと呼ばれる骸骨の魔物で今もなお魔法陣から増えており、その数は既に百を超えている。
通路側の魔物は体長十メートル級の四足で頭部に兜のような物を取り付けたトリケラトプスのような魔物でこれまで見てきた魔物とは比べものにならない威圧感を放っていた。
「まさか……ベヒモス……なのか……?」
メルドさんからこぼれ落ちたその言葉に俺は驚き、その魔物を凝視してしまう。
ベヒモスとはかつて最強と言われた冒険者が勝てなかった伝説の魔物だからだ。
ベヒモスは大きく息を吸うと凄まじい咆哮を上げた。
「グルァァァァァアアアアア!!」
「ッ!?」
その咆哮で正気に戻ったのか、メルドさんが矢継ぎ早に指示を飛ばす。
「アラン! 生徒達を率いて“トラウムソルジャー”を突破しろ! カイル、イヴァン、ベイル! 全力で障壁を張れ! ヤツを食い止めるぞ! 光輝、お前達は早く階段へ向かえ!」
「待って下さい、メルドさん! 俺達もやります! あの恐竜みたいなヤツが一番ヤバイでしょう! 俺達も……」
「馬鹿野郎! あれが本当にベヒモスなら、今のお前達では無理だ! ヤツは六十五層の魔物。かつて、“最強”と言わしめた冒険者をして歯が立たなかった化け物だ! さっさと行け! 私はお前達を死なせるわけにはいかないんだ!」
メルドさんの鬼気迫る表情に怯むも踏みとどまる天之河。
再度メルドさんが話そうとするもベヒモスが咆哮を上げながら突進してきた。
それを止めるためにハイリヒ王国最高戦力が全力の多重障壁を張る。
「「「全ての敵意と悪意を拒絶する、神の子らに絶対の守りを、ここは聖域なりて、神敵を通さず、“聖絶”!!」」」
複数の人によって作られたその障壁はベヒモスの突進を止め、あたりに衝撃波がおこる。
そんななかで生徒達は前方に立ちはだかる不気味な骸骨の魔物と、後ろから迫る恐ろしい気配に半ばパニック状態になり、陣列など無視して我先にと階段を目指して走り出す。
俺はトラウムソルジャーを殴り飛ばし橋の外に出しながら考える。
(こんままじゃラチがあかない!クラスのヤツらもパニックをおこして連携どころじゃないし……。となるとまとめ役でいて大火力をもったやつ………あいつしかいない!!)
今の状況を打開するために天之河の居るところまで行く。
だけどその前にハジメが先についていて天之河に叫んでいた。
「早く撤退を! 皆のところに! 君がいないと! 早く!」
「いきなり何だ? それより、何でこんな所にいるんだ! ここは君がいていい場所じゃない! ここは俺達に任せて南雲は……」
「そんなこと言っている場合かっ!」
普段見ることのないハジメの様子に天之河達は驚いている。
「あれが見えないの!? みんなパニックになってる! リーダーがいないからだ!」
「そうだぞ天之河!!お前はこのクラスのリーダーだろうが!ならその責任を果たせ!いつまでも周りを見ずに感情任せに行動してんじゃねぇ!!」
「一撃で切り抜ける力が必要なんだ! 皆の恐怖を吹き飛ばす力が! それが出来るのはリーダーの天之河くんだけでしょ! 前ばかり見てないで後ろもちゃんと見て!」
ハジメが言うのに続けて俺も叫ぶ。
俺達の言葉でクラスのヤツらの様子を見た天之河はぶんぶんと頭を振るとこちらに頷いてきた。
「ああ、わかった。直ぐに行く! メルド団長! すいませ――」
「下がれぇーー!」
天之河が“すいません、先に撤退します”そう言おうとしてメルドさんに振り返った瞬間、そのメルドさんの悲鳴と同時に、遂に障壁が砕け散った。
暴風のように荒れ狂う衝撃波によって吹き飛ばされる俺達。
メルドさん達が倒れ伏し呻き声を上げていたが俺達はすぐに立ち上がる。
どうやらメルドさん達の後ろにいたこととハジメが咄嗟に作った石壁が功を奏したようだ。
その後、時間稼ぎをして天之河が神威を放つも全く効かず、逆にベヒモスの攻撃をくらう。
なんとか避けたがその攻撃の余波の衝撃波で満身創痍になる。
弱体化しているがあらゆるものに対する耐性をもち、高いステータスによってまだ動ける俺と駆け寄ってくるハジメを見てメルドさんは
「坊主ども! 香織を連れて、光輝を担いで下がれ!」
そう指示する。
自身は盾を構えていることから、ここを死地と定め、命を賭けて食い止めるつもりのようだ。
そんなメルドさんに、ハジメは必死の形相で、とある提案をする。
それは、この場の全員が助かるかもしれない唯一の方法。
ただし、あまりに馬鹿げている上に成功の可能性も少なく、ハジメが一番危険を請け負う方法だ。
メルドさんは逡巡するが、ベヒモスが既に戦闘態勢を整えている。
「……やれるんだな?」
「やります。」
「………俺もやるぞハジメ。」
突然俺が入ってきたのが予想外だったのか驚く2人。
「足止めをするのは俺がやります。それに俺はステータスが高い上に様々な耐性を持っています。その怪我でやるよりも安全です。」
「錬くん……。」
「………いいだろう。だが必ず助けてやる。だから……頼んだぞ!」
「「はい!」」
そう言って離れていくメルドさん。
絶対に生き残る。
その思いを胸になぜか先ほどから力がみなぎってくる身体を抑え、構える。
片方が
そして遂にベヒモスが動き出した。
突っ込んでくるベヒモスに向けて俺も向かいぶつかる寸前で左側に回り込み殴りつける。
籠手の力によって衝撃が増幅されベヒモスを吹き飛ばす。
明らかにさっきよりも威力が上がっているが今は置いておきベヒモスに攻撃を続ける。
足に力を込めて全身のバネを使って跳躍して、ベヒモスを殴り飛ばした先に回り込みまた殴り飛ばす。
それを何度も繰り返すとキレたのか雄叫びを上げ、頭部の兜が赤熱化を開始する。
それを確認するとハジメより少し離れたところに戻り待機する。
そして、俺に向けて赤熱化を果たした兜を掲げ、突撃、跳躍する。
より強化された視力でタイミングを測り、ぶつかる直前で大きく上に跳躍した。
そしてベヒモスの頭部が俺のいた場所に着弾して、再び地面にめり込んだ。
そこを狙ってベヒモスの頭部を殴りつけより深くめり込ませる。
それと同時にハジメを呼ぶ。
「ハジメェェェェェェ!!」
「うん!」
ハジメは即座に反応して己が唯一使える魔法を赤熱化した地面に触ったときの痛みを堪えて唱えた。
「錬成!!」
石中に埋まっていた頭部を抜こうとしたベヒモスの動きが止まる。
周囲の石を砕いて頭部を抜こうとしても、ハジメが錬成して直してしまうからだ。
ベヒモスは足を踏ん張り力づくで頭部を抜こうとするが、今度はその足元が錬成される。
ずぶりと一メートル以上沈み込む。
更にダメ押しと、ハジメは、その埋まった足元を錬成して固める。
俺もベヒモスの首を締めて動きを阻害しつつ押さえつける。
何度も殴りつけたことで弱っているが、それでもベヒモスの力は強く、直ぐ周囲の石畳に亀裂が入りかけるがハジメがすぐに錬成し直して抜け出すのを防ぐ。
その間にメルドさんは回復した騎士団員と白崎を呼び集め、天之河達を担ぎ離脱しようとする。
パニックになっていたヤツらも何人かがさを取り戻したようで、周囲に声を掛け連携を取って対応し始めている。
その後、作戦通りに白崎の魔法で回復した天之河の一撃を切っ掛けに押し返してトラウムソルジャーを一掃したのを確認してからハジメに声をかける。
「ハジメ、離脱するぞ!」
「わかった!」
最後に思いっきりベヒモスを殴りつけ深く埋めて、ハジメが魔力を全て使った錬成で拘束する。
それと同時に階段に向かって走りだす。
それから数秒後、地面が破裂するように粉砕されベヒモスが咆哮と共に起き上がる。
その眼に、憤怒の色が宿っていると感じるのは勘違いではないだろう。
鋭い眼光が己に無様を晒させた怨敵を探し俺達を捉える。
再度、怒りの咆哮を上げるベヒモス。
俺達を追いかけようと四肢に力を溜めた。
その時あらゆる属性の攻撃魔法が殺到した。
それらはベヒモスを充分に足止めしていた。
あと少しといったところでハジメに一つの火球が軌道を変えて直撃した。
「うあ!?」
「ハジメ!?」
ふらついているハジメを助けるため駆けつけようとするも赤熱化した頭部をベヒモスが突進してきた。
ハジメはなんとかぎりぎりかわすもベヒモスの攻撃による激烈な衝撃が橋全体を襲った。
着弾点を中心に物凄い勢いで亀裂が走り、遂には崩壊した。
崩壊に巻き込まれベヒモスが奈落に落ちていく。
だが落ちていったのはベヒモスだけではない……………ハジメもだ。
「うあぁぁぁ!?」
「ハジ……っが!?」
助けようとハジメに意識を向けた瞬間、俺にも火球がぶつかり動きを阻害される。
その動きを止めた一瞬が仇となり、俺のいた足場も崩壊した。
咄嗟に振り返るとそこには顔を狂気に染めて醜く嗤っている檜山がいた。
「ッ……檜山ァァァァァァァァ!!!」
(クソったれが!?すまねぇ………ハジメ……。)
俺達に火球をぶつけた犯人であろう檜山に向かって怒号を上げる。
心の中ではハジメに謝罪をする。
そして俺もハジメと同じように奈落へと落ちていった。