魔王の親友は転生せし喰種 作:睡蓮
リアルで仕事が忙しくて書く時間がなかなか取れませんでした。
待っている人がいるか分かりませんが続きをどうぞ
「………うっ……ここは?」
流れる水の音が聞こえ、何処からか吹いてくる微風が体をなでる。
硬くて冷たい地面の感触が目覚めたばかりの脳を刺激する。
意識が回復したばかりだからか頭がボーっとして考えがまとまらない。
それでも思い出さなければならないという漠然としたなにかにせかされるように記憶の糸を少しずつ手繰り寄せてゆき………
「……っ!そうだ、ハジメは!?」
檜山によってほんの少し先に自分と同じように奈落に落とされた親友のことを思い出す。
朧気だった意識が急速に覚醒し、横たわっていた体を起こして親友の姿を探す。
緑光石の発光のおかげで薄暗いながらも視界が確保されていることと、技能の五感強化で強化された視力と相まって何の問題もなく周囲の様子をうかがうことができた。
しかし、どれだけ周りを探してもハジメがいた痕跡すら見つからなかった。
(この感じからして最初からこの場所に落ちたのは俺だけみたいだな。ってことは落下地点がずれたのか?まあこのままここにいてもしょうがないし移動するしかないか)
周りの様子にあの石橋の高さが底が見えないぐらい高かったこと、落ちた時に俺とハジメが立っていた位置がずれていたことからある程度の予想をたてて今後の行動を考える。
考えると言ってもここが迷宮のどこら辺なのかわからず、情報が不足しているため具体的なことは決めれられないので、簡単なことについてだけだが。
いつどんなことが起こるのかわからないため、五感強化で強化した聴覚と嗅覚と視覚、気配感知や魔力感知など、今の自分にできること全てを使って最大限の警戒をしながら移動を開始した。
それから数時間後、途中で何体も魔物がいてその中のいくつかは群れをなしていたため、さすがに一人じゃ分が悪いと思い、そいつらに見つからないように岩陰に隠れて移動しながらハジメを探していた。
けれど最初にいた場所の周囲や少し離れたところをくまなく探しても何も見つからなかった。
思ったよりも落下地点のズレが大きかったのか、もっと遠くまで探しにいったほうがいいか、など考えていると……
「――-!?」
「!?ハジメ!?」
強化した聴覚に聞き覚えのある、さっきまで探し続けていた親友の悲鳴のような叫び声が聞こえてきた。
それを聞いた瞬間、俺は考えるよりも先に走り出していた。
まるで跳ねるような感じで移動しながらも、俺の中にある焦燥感に突き動かされるように一歩、また一歩と足を踏み出す。
踏みしめた地面は砕け、その音が迷宮に鳴り響く。
さっきまでの慎重さは何処へ行ったのか、さっきまでの警戒心は何処へ行ったのか。
俺にはもう周りを気にする余裕などすでに無くなっていた。
今の俺の中にある残っているもの、それはさっき聞こえてきた声から本能的に想像してしまったものに対する恐怖と杞憂であってくれという祈りに近い感情だけだった。
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――――――
――――
――
声が聞こえてからどれだけの時間がたっただろうか。
数分か?
それとも数十分か?
はたまた数時間だろうか?
実際はそれほど経っていないだろう。
それでも俺はそれぐらいの時間が経ったんだと錯覚してしまうほど余裕がなかった。
かける、翔る、駆ける。
ただひたすら親友のもとへと駆け続ける。
そしてやっと目的の場所にたどり着いた。
しかし、そこで待ち受けていたものは
壁が、床が、あらゆる所が血によって同じ色に染め上げられていた。
嘘だ、そんなはずない。
目の前の光景に呆然となり、真っ白になった頭ではそんな言葉が駆けめぐる。
理性はこの光景からある最悪の想像をしてしまい、感情がそれを声高らかに否定し拒絶する。
だがあるものを見つけたことによって今度こそ何も考えることができなくなった。
血に染まったその場所の中でも特に血の量が多く、窪みによって小さな血溜まりになっている場所、その中にそれはあった。
大きさはだいたい15~20cmぐらいで最近見慣れてきた錬成用の魔法陣が刻まれた革の手袋に包まれたもの…………ハジメの手だった。
「…………あ………あぁ……………ああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」
それを認識した途端、俺はいつの間にか叫んでいた。
意味がないとわかっていながらも未だに俺の理性が、感情が、否定し拒絶しようとする。
目の前の
俺がそれから少しの間そうしていると、どこからともなく魔物の大群が出てきた。
おそらくさっき走っていたときの音と叫び声につられてよってきたものだろう。
大型犬くらいの大きさで尻尾が二本あり、雷を纏っている狼が、
中型犬くらいの大きさで後ろ足がやたらと大きく発達している兎が、
地球のものと同じぐらいの大きさで、口から炎を出しそれを自身の周囲に漂わせている虎が、
地球のものよりも二回りほど大きく、地面を脈動させつつその身を岩石で包んでいる牛が、
その他多くの魔物達が俺を取り囲む。
本来いくら魔物といえど動物である以上、縄張りや食物連鎖などの関係からこれだけ集まれば何かしらの争いが起こるはず。
メルドさんは複数種類の魔物が混在したり連携を組んだりすると言っていたがこの種類と数で何もないのは普通はあり得ない。
そしてそうならないのはそれ以上の何かに興味を示しているからだ。
例えばこの場に充満している血の匂いや呆然として動かないでいる
魔物達はこの濃い血の匂いに興奮しているのか一様に唸り声を上げる。
それがあっているのかはわからないが、魔物達の目を見て一つだけわかったことが、わかってしまったことがあった。
こいつらにとって
それを理解して、ハジメもこいつらに同じように見られたのかと考えたところで俺の中の何かを繋ぎ止めていた鎖が砕けたような気がした。
「グルァァァァァ!!」
俺が未だに反応しないことに焦れたのか、一匹の二尾の狼――-二尾狼が背後から襲い掛かってきた。
しかし……
ブチュリ
ドシュ!
「ガ!?アァ……ァ………」
肉が食い破られるような音が聞こえると同時に二尾狼の体を何かが貫いた。
二尾狼は自身に起こったことが理解できないのか目を見開きながら力尽きる。
他の魔物達も同様に驚きながらそうなった原因に目を向ける。
そこには先ほどと対して変わらない光景があった―――ある一点を除いて。
微動だにしない俺の背中、腰周りから生える直径1mで全長3mほどの表面が鋭い針のような毛で覆われた狐の尾のようなもの、本来はこの世界の人間が持つことのない別世界の
仲間がやられたことに怒ったのか、他の二尾狼達が全方位から一斉に飛びかかってきた。
それを上に跳んで躱し、
正確に頭を貫かれた二尾狼は暴れることもなく事切れ、二尾狼に続いて飛びかかろうとしていた魔物達も一瞬動きを止める。
その一瞬の隙に地面に降りた俺の再び一本に纏まった鱗赫を振り回した一撃によって切り裂かれた。
先ほどまでと違い、抵抗してきたどころか多くの魔物を短時間で仕留めた俺に、警戒心を上げる残りの魔物達。
「ア゛ア゛ア゛ァァァ!!」
俺はそんな魔物達を黒い眼球と赤い虹彩に変化した眼―――赫眼で睨みつけ、憎悪や憤怒などの感情の赴くままに攻撃を仕掛けた。
「ウモォォォ!」
最初の標的とした岩石を纏った牛―――地牛が俺に反応して雄叫びを上げる。
すると脈動していた地牛の足元の地面が隆起し、鋭いトゲとなって向かってきた。
鱗赫を地面に叩きつけるのと同時にジャンプすることで天井付近まで跳躍してトゲを躱す。
基本的に人間のように翼を持たない生き物は空中では身動きがほとんど取れずに少しの間無防備になる。
「キュウ!」
そのことを理解しているのか、後ろ足が大きく発達した兎―――蹴りウサギが空中を駆けて蹴りつけてきた。
それをあらかじめ分裂させて天井に突き刺しておいた鱗赫で体を引っ張り上げることで回避する。
だが躱されることを予想していたのか躱した蹴りウサギの後ろからさらに二匹の蹴りウサギが迫ってきていた。
天井から抜きとった鱗赫で前転をする要領で勢いを付けながら前と後ろにいる蹴りウサギを纏めて薙ぎ払う。
着地すると炎を操っている虎―――炎虎が口に炎を溜めて吐き出していた。
鱗赫を向かってくる炎に突き出す。
それと同時に鱗赫の内部で赫子を構成している物質―――Rc細胞の結合と剥離を高速で繰り返していく。
やがて鱗赫から蒸気が発生し……
ゴォォウ!!
表面の毛を包み込むようにして炎が吹き出した。
鱗赫を覆う炎は炎虎の炎を取り込み、お返しとばかりに倍以上の規模にして打ち出す。
まさか返ってくるとは思わなかったのか炎虎は防御することもできずに炎に飲み込まれた。
周りの魔物が燃える炎虎に意識をそらした隙に地牛の纏っている岩石の薄い関節部分から鱗赫を突き刺して放炎、岩石の内側から焼きつくす。
その後も床や壁、天井を使って移動しながら鱗赫で魔物達を穿ち、切り裂き、焼きつくする。
だが、それも長くは続かなかった。
魔物達を蹂躙していた鱗赫が霧散するように消えて体中の力が抜けていく。
耐えきれずに思わず膝をついてしまう。
そんなわかりやすい隙を魔物達が見逃す筈がなかった。
散々いたぶられた怒りを晴らすかのように攻撃を仕掛けてきた。
二尾狼の電撃が体を駆け巡り、炎虎の炎が体を燃やしていく。
倒れそうになった体を地牛が地面から作り出したトゲがつらぬき、蹴りウサギ達が発達した足で蹴り飛ばした。
「ガハッ!?」
蹴り飛ばされた体は壁に激突して地面に落ちる。
電撃による痺れや燃やされたことによるやけど、蹴りの衝撃で砕けた骨々につらぬかれ大量に出血している穴。
生きていることすら不思議に思えるほどの重症によってろくに動けない。
ただ迫ってくる死を待つだけとなった。
血が流れ熱が引いていく。
自分という存在が消えていく。
死にたくない、生きたい。
あらゆる生き物が昔から変わらず持ち続ける本能。
それを感じた瞬間、今まで体験したことのないほどの飢餓感と食欲を刺激する匂いを感じ取った。
死に体でボロボロなのにも関わらず、俺は本能に突き動かされるように最後の力を振り絞って匂いの元となっているものをつかみとった。
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人間が吹き飛ばされてから十数分後。
魔物達は警戒を最大限にまで高めて人間が吹き飛んだ方向を見つめていた。
いつもなら追撃を仕掛けてよりダメージを与えている所だが、先の戦闘ではそれを実行しようとしたもの全員が殺された。
故に追撃せずに油断なく警戒しているのだ。
この判断が仇となる事も知らずに。
いつ攻撃がきてもいいように身構えながら少しずつ近づいていく魔物達。
数分かけて近づいてきたところである音が聞こえてきた。
グチャ…
その音は近づくにつれてより多く、より大きく、より鮮明に聞こえてくる。
ガリ……ゴリ……ブチ……グチャ……クチャ……ゴクン
何かを噛み砕くような音、何かを食いちぎるような音、何かを飲み込むような音。
やがて途切れ途切れだった音は完全に聞こえるようになり、音の発生源も見えるようになった。
いや、なってしまった。
そこに居たのはやはりさっきの人間だった。
だがそいつはこれまでの戦いでそいつに殺された魔物達の肉を、骨を、そして魔石を噛み砕き、咀嚼し、嚥下していた。
なぜ
だがなぜ人間に?
動揺している魔物達に人間が振り向く。
だがその目を見た瞬間、魔物達は理解した。
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気がつくと俺は花畑にいた。
自身をつきぬけていく芳醇な香りにそう錯覚するも、次の瞬間にはもとの光景に戻っていた。
喰い散らかされた魔物の死体に背中から
「…………お……れ…は………」
今ある現実に力なく言葉をこぼす。
ハジメの変わり果てた姿を見た。
怒りに、悲しみに、憎しみに、負の感情に突き動かされて多くの魔物を殺した。
一度は力尽き死にかけた。
普通の人だったら発狂してしまうかもしれないような目にあった。
「……ハッ………ハハ」
だが、そんなことよりも………
「ハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
今の俺の状態を理解して、嗤うしかなかった。
前世でも、今世でも、忌々しくて、否定したくて、目をそらし続けた。
橋でも、
なによりもハジメの、
最後の理性でなんとか食べずにすんだものの、これまで拒絶して人間だと言い張り続けていたにもかかわらず、拒絶していたものに染まり、なれはてた。
目をそらし、耳をふさぎ、現実逃避したとしても、前世であの医者の手術を受けた時からどこまでいこうと……
「所詮俺は……喰種でしかない………か。……アッハハハハハハハハ!!」
確認するかのように呟いた後、未だに生やしたままの赫子を戻して歩き始めた。
狂ったような笑みを浮かべ、薄暗い洞窟の中で爛々と輝く赫眼で前を見据えながら。
黒羽くんは発狂してはいませんが今回の出来事で一部が壊れていて少しだけ狂ってしまいました。
ちなみにハジメくんは原作同様爪熊にやられてからは黒羽くんが戦っていた場所の近くの壁の中で絶賛気絶中なので死んでません。