魔王の親友は転生せし喰種   作:睡蓮

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封じられた同類

走り、振るい、駆け抜ける。

百六十センチメートル以上ある雑草が生い茂り、その中を何処にあるかも分からない階段を目指して走り、後ろにいる奴ら目掛けて鱗赫を振るって首を跳ね飛ばす。

だが仲間殺されているにもかかわらず他の奴らはけっして止まらず、いつの間にか減らす前と同じ数に戻っている。

統率のされた動きでただ機械のように他を鑑みることもなく対象である俺を追いかけるそいつらは……

 

「「「「「「「「「「「「シャァアア!!」」」」」」」」」」」」

 

「鬱陶しいんだよトカゲ風情がぁ!!」

 

頭に色とりどりの花を咲かせた恐竜達というなんともシュールな見た目をしていた。

 

――――――――――

 

―――――――

 

―――――

 

―――

 

『おはよう!○○君!』

 

 

 

『一緒に遊ぼ!○○君!』

 

 

 

『ありがとう!○○君!』

 

 

 

 

 

 

 

 

『これからもず~っと友達だよ、○○君!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………久しぶりにみたな、この夢も」

 

階段付近の岩壁にある人一人が入れるぐらいの大きさを持った亀裂の中、ここ数年みることのなかった前世の記憶()についてポツリと溢す。

前世でまだ人間だった子供の頃の、転生してからの両親やハジメといた時と同じぐらい大切な思い出。

両親や幼なじみ、友達と一緒に過ごした何の変哲もない、けどとても楽しくて充実していた日常。

いくら欲しても二度と戻れないもの。

何で今になってこの夢が……とわずかに感傷に浸った気持ちを振り払いつつ外に出た。

俺は今迷宮を下へと順調に降りていき、最初にいた階層から数えておよそ60階層のところにいる。

ここまで来る間に毒を吐き出す虹色の巨大カエルや麻痺の鱗粉を撒き散らす蛾、体の節ごとに分離して襲ってくる巨大ムカデにトレントモドキなど多くの魔物が襲いかかってきた。

なお、その魔物達は殺したあとにもれなく全部喰らいつくしてやった。

全部喰わずに腹が減った時だけ喰っとけば今頃もう少し下の階層まで進めていたし、本音を言えばさっさとこの迷宮から脱出して目的を果たすためにもそうしたかった。

だが、食物変換[+Rc細胞化]によって大量のRc細胞をためておけることや実験によって分かった強力な魔物を喰った際に得られるステータスの上昇補正など、損よりも得のほうが大きいため、はやる気持ちを我慢している。

あと50階層あたりで二体の一つ目巨人の彫刻が半分壁に埋め込まれるように鎮座していて、その間には高さ三メートルほどのの装飾された荘厳な両開きの扉があったのだが、いかにもゲームの迷宮の中層あたりにあるイベント部屋のような感じがし、関わったらどう転がっても面倒なことにしかならなそうだったので無視して進んだ。

ちなみにこの判断がのちのハジメの迷宮攻略の大きな助けになることをこの時の俺には知るよしも無かった。

 

 

閑話休題

 

 

そんなこんなで到達したのが現在俺がいるこの階層。

まず見えたのは樹海だった。

10メートルを超える木々が鬱蒼と茂っており、空気はどこか湿っぽい。

しかし、以前にも熱帯林のような階層を通ったため驚くこともなく、またその階層と違ってそれほど暑くはないのでまだましだった。

やることはこれまでと変わらず、階段の捜索と魔物の捕食だ。

目的を果たすためには強くならなければならない。

 

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黒羽錬 17歳 男 レベル:49

天職:喰種

筋力:4765

体力:4375

耐性:4765

敏捷:4510

魔力:5115

魔耐:5115

技能:全属性耐性[+耐性力上昇III]・物理耐性[+耐性力上昇III]・状態異常耐性[+耐性力上昇III]・気配感知[+特定感知]・魔力感知[+特定感知]・五感強化[+強化幅上昇III]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・胃酸強化[+万物消化]・食物変換[+Rc細胞化]・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚]・土石操作・火属性適合[+魔力消費減少][+効果上昇][+持続時間上昇][+火炎操作][+炎生成][+炎吸収][+炎増幅][+詠唱破棄][+イメージ補強力上昇][+陣省略][+温度操作]・魔力変換[+体力変換][+治癒力変換][+衝撃変換]・超速再生[+痛覚操作][+再生操作][+再生力増強II]・金剛[+部分強化][+集中強化][+付与強化]・豪腕[+部分強化][+集中強化][+付与強化]・風爪・夜目・遠見・気配遮断・甲赫:アラクネ・羽赫+鱗赫:天狐・尾赫:ヒュドラ・■■■・限界突破・言語理解

===============================

 

これが今現在の俺のステータスだが、全然足りない。

あいつら程度ならこのままでも大丈夫だろうが、俺達をこの世界に連れてきたあのクソ野郎は神などと呼ばれ、異なる世界にまで手を出せるほどの力を持っているのだ。

今の状態だと精々魔物の群れや人間の軍隊を相手に出来るだけで、神相手ではまず殺すことは出来ないだろう。

だからこそより強い魔物と戦い、喰らう。

経験のみならず相手の全てを糧として強くなる。

この手で目的を果たすためなら手段なんて選んでられないのだから。

その点で言えばこの迷宮は進め進むほどより強力な魔物がいるため、いちいち探さなくてもいいので助かっている。

そんなこんなで魔物を探して見つけたのだが··········

 

「キシャァァァ」

「·········なんで頭に花なんてはやしてんだ?」

 

頭に花を生やした恐竜という訳のわからない魔物というこれまでに見た中でも特に変な魔物だったため少し戸惑ってしまった。

 

(本当に何なんだこいつ。ここにはそれなりに変な見た目の魔物もいたがこいつは·········ん?)

 

その時俺の鼻がある違和感を嗅ぎとった。

 

「恐竜と花とで匂いが違う?」

 

そう、一体の魔物の筈なのに場所によって匂いが違うのだ。

分裂した巨大ムカデでも匂いが部位ごとでそれぞれ少し違うということや同じ種類の魔物でも僅かに違うということがあったが、この恐竜と花は全く違うのだ。

まるで元から別々の個体だったかのように。

そこまで考えたところでふとあることを思い出した。

 

「よっと」

 

もしそうなら……と自身の考えを確かめるために、その牙でこちらを噛みちぎろうとしてきた恐竜の横に回り込んで鱗赫で頭の花だけを吹き飛ばしてみた。

すると一瞬ビクンと痙攣したかと思うと、そのまま動かなくなった。

しかし急に止まることなんて出来るはずもなく、恐竜はもんどり打ちながら地面を転がり、樹にぶつかって動きをようやく止めた。

しばらく様子を見ていると起き上がり辺りを見渡し始めた。

そして吹き飛ばしたことで四散したかつて自身の頭に咲いていた花を見つけると、これでもかとまるでずっと溜め続けてきた鬱憤を晴らすかのように踏み付け始めた。

一通り踏みつけて満足したのか、達成感あふれる顔で雄叫びを上げる恐竜。

なんとも言いあらわせない微妙な感情を抱きながら見ていると、こちらに気づいたのか恐竜はビクッと反応するも直ぐに姿勢を低くし牙をむき出しにして唸り襲いかかってきた。

今更俺に気づいた恐竜に呆れつつ、その首を鱗赫で跳ね飛ばした。

 

「………」

 

さっきまでの恐竜の反応につい無言になりながらも、一連のことから自分の考えがあっていたことを確信する。

 

「やっぱり寄生されていたか。また厄介なものを」

 

地球にも別の生き物に寄生して操るという同じような生き物がいるためそうなのではないかと思っていたが予想が当たり、これまでとはまた違った系統の魔物の登場に小さくため息をこぼす。

強い魔物がいるのは分かりきったことだし、ステータス上げにも助かるのだがこうも厄介な能力の魔物が多いと相手にするのが億劫になるのだ。

もう割り切ったことだが面倒なことにはかわりない。

とりあえず恐竜の肉を回収しようと手を伸ばした瞬間に感知系の技能に反応があり、その内容に思わず口が引きつってしまった。

十、二十、三十。

次々と増えていく気配は止まることなく、その数が百をこえた辺りで俺は駆け出していた。

さらに気配は増え続け、いつしかいくつかの団体にわかれて周囲を囲むように移動する。

距離を開けるために走るスピードを速くして、しばらく走ってから後方を見てみると二百匹位にまで増え、同じように花を咲かせた恐竜達が扇状に広がりながら追いかけて来ていたのだった。

 

 

そして場面は冒頭に戻る。

 

 

「クソッ!いったいどんだけいんだよ。次から次へとわいてきりがねぇ。」

 

囲まれないように駆けだしたものの、いつしか全方位から恐竜達が現れ、倒しても倒しても際限なく増え続けたことで結局囲まれてしまった。

いつまで経っても終わらない怒濤の攻撃。

鱗赫で薙ぎ払おうが、羽赫で刺し殺そうが、どんなことをしようが奴らはその屍を気にすることもなく、文字通り乗り越えてやってくる。

 

…………………

 

ブチッ

 

「弱くて群れるだけしか能のねぇ雑魚共が………………調子にのってんじゃねぇぞぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

さすがに全部返り討ちにしているとはいえ、溜まりに溜まったストレスによってついに我慢の限界が訪れキレた。

俺の叫びに呼応するように魔力が放出され、今なお襲いかかってきていた恐竜達を軒並み吹き飛ばす。

その背にはいつもより一回りも二回りも大きくなっている鱗赫があり、縦と横に裂けてゆき四本に分裂する。

再び恐竜達が襲いかかってくるまでの僅かな時間、ゆらゆらと揺れる鱗赫に風がいつの間にか纏わり付いていた。

そして恐竜達が飛びかかってきたその瞬間、風は鋭い爪となり鱗赫と共に己に向かってくる敵を蹂躙する。

最前列が一度にやられたことで後続との間に距離ができる。

その隙に土石操作で大量の棘を地面から生やして進路を妨害し、ダメ押しとばかりに鱗赫や炎生成で炎を発生させて炎増幅で強化した後、火炎操作で拡散するように打ち出した。

本来生き物は本能的に火などといった自身の脅威になるものを避ける傾向にあり、自身の力として火を扱っていた例外を除いた魔物も同じ傾向にあった。

寄生され操られていようがその例に漏れず、突然迫ってきて地面に広がる同族だったものや突き刺さっている結晶体、樹海の木々を糧としてより勢いよく燃え上がる炎に恐竜達は意図せず足を止めてしまう。

その事を確認した後、すぐさまその場から天歩の派生技能に羽赫を使って加速し、ある地点を目指して駆けだした。

そもそもこれまでの恐竜達の行動にはいくつか不審な点があった。

いくら同族が死のうが動揺することもなく、殺気や敵意といったようなもの以外の感情が無いかのように特攻するかのごとく執拗に襲いかかり、仲間意識すらないのかと思えばなかなかの規模の数で統率の取れた集団行動をする。

その統率も(一部偏っていたものの)人間顔負けのものでほんの僅かに生じてしまうようなズレすらないほどの緻密さ。

かと思えば攻撃方法はなんらかの固有魔法を使うわけでもなく、自前の牙や爪で攻撃してくるのみという単調さ。

他にもたくさんあり、極め付けには恐竜達に生えているまったく同じにおいの花(・・・・・・・・・・・)

最初は一体一体別々に寄生されて操られていると考えていたが、これらのことからこの花はただの端末のようなもので、それを介して違う場所から本体が遠隔操作しているのではないかと考えるようになった。

それなら攻撃が単調だったことも数多くの魔物を同時に操作していたため手が回らなかったと考えられるし、ある方向だけ恐竜達が多く偏っていたことにも納得いく。

そして……

 

ドゴォォォン!!

 

「見つけたぁ!!」

 

実際にその方向に移動してみれば縦割れの洞窟があり、勢いそのままに突き破ったら恐竜達の花と同じにおいを纏ったアルラウネやドリアード等と言う人間の女と植物が融合したような魔物がいた。

そいつは恐竜達を突破して現れた俺に焦っているのか一心不乱に緑色のピンポン玉のようなものを飛ばしてきた。

俺はそんなものを気にすることもなくアルラウネ擬きに近づき、やがて緑玉にふれる。

勝利を確信したかのように醜い顔を歪めて嗤うアルラウネ擬き。

しかしすぐに驚愕の表情に変わった。

 

「馬鹿が」

 

様々なことへの強い耐性系の技能を持つ俺にはどんな方法であれ、こいつの寄生して操るといったような能力はきくことはない。

実際にアルラウネ擬きの出した緑玉に含まれる胞子は一種の神経毒なので、状態異常耐性によってすぐに防がれたのだ。

操り人形の恐竜達ははるか後方。

ようやく不利であることを、自分がかなう相手ではないことを理解したアルラウネ擬きは後退り、逃げ出そうとする。

 

「させっかよぉ!!」

 

今なお噴出している羽赫で何本もの結晶体の槍を作り出し、数本をアルラウネ擬きに、残りをその周りに突き刺して固定し包囲する。

さらに結晶体を起点として鋼鉄製のワイヤーのような強靭さを持った粘着性のある糸が張り巡らされアルラウネ擬きの動きを封じていく。

その糸は俺の肩甲骨の下辺りから生えた幾つかの節を持ち、一目見ただけで強固だとわかる殻に覆われた四対八本の赫子―――甲赫の鋭く尖った先端部分から出ていた。

すでに土石操作で入り口などの穴は閉じてあり、移動している時からずっと羽赫を出しているため、洞窟内には吹き出し続けた羽赫が充満している。

 

「爆ぜろ」

 

甲赫で自分を覆いきる時にこの階層でアルラウネ擬きによって味わった感情全てを込めてそう吐き捨てる。

次の瞬間、甲赫と身体強化や耐性系の技能で防御をしながら火を発生させて、アルラウネ擬きごと洞窟を爆破した。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

「いっつつ」

 

爆破した際の衝撃が予想以上に大きく、軽いダメージをおってしまい頭を押さえながら周りを見る。

そこはさっきまでいたような自然の洞窟ではなく、明らかに人の手が加えられている事が分かる何処かの遺跡の内部のような場所だった。

 

「··············いくらキレてたからってさすがにやり過ぎたか。」

 

防御していた時に少しの間浮遊感をあったため、おそらく爆破したことで60階層の床をぶち抜いたのだろう。

その証拠に天井には砂塵に見え隠れしている大きな穴があった。

ここまでしてしまったことでようやく自分に余裕がなかったことを自覚する。

はやる気持ちを我慢しているつもりだったが、どうやら知らない内に焦りがあったのだろう。

その事が精神的な余裕を奪っていったようだ。

反省しつつもその不甲斐なさから息をつき自嘲するように笑う。

 

「··············とりあえず進むか」

 

階段もなく真っ直ぐ伸びる通路があるだけのこの空間。

天井の穴から戻ってもいいが、俺の喰種としての勘が進めと言っており、俺の勘は良くも悪くも当たりやすいため進む事にする。

しばらく進むと直径500mほどの大きさのドーム状の空間に出た。

光源がなく薄暗いため夜目と五感強化を使って周囲の観察をしていると·····

 

「だ·····れ·········?」

 

か細い、吹けば消えてしまいそうな弱々しい声が聞こえた。

急いでそちらに目を向けると立方体があり、その中央から腰あたりまで伸びる漆を塗ったようなきれいな光沢を持つ黒髪をした16歳位の女が

 

「なっ!?」

 

片方が赤色(赫眼)に変化した青色の瞳で見つめてきた。

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