Fate/Hero Order   作:九十九猿

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先日言っていた、所長の幕間的なもの救済会
個人的に彼女は好きなんですけど、救いが無いのがどうもかわいそうで…
今回は所長視点です


1-7.5 エミヤとオルガマリー

私に荷が重い。休憩を取って落ち着き始めた時、まずそう思った。楽しそうに話すマシュや藤丸の姿を見ながら、彼らと離れた位置に腰を下ろした。私は彼らのようには騒げない。背中にのしかかる使命感が、重圧感が、無力感が私を捕らえて離さない。急に父が死んで着いた所長の座。その重さだけでも息苦しかったのに、過去の非人道的実験が明らかになり、私がマスター適性を持っていなかったことが明らかになり、私は背にかかる重さで死にかけている。その上今回の異常事態。私はどうしようもなく、何も出来ない。藤丸やマシュが頑張っているのに。もちろん私も頑張ってはいる!最善も尽くしてもいる!なのに、なのに、なのに、なんで異常事態が起きるの!なんで私ばかり!なんで誰も私を認めてくれないのよ!!

 

「所長、紅茶を淹れた。どうぞ、温まるよ」

 

私に語りかけたのはエミヤ。その微笑んだ顔が無性にイラついた。

 

「……ありがとう」

 

ぶっきらぼうに受け取る。今は紅茶を飲むような気分でも無いし、1人になりたいのだけれど、それを我慢して紅茶を一口飲む。

 

「…って、美味しい…!?あなたが淹れたのこれ!?」

 

「あぁ、これでも生前執事のようなことをしていたこともあってね」

 

「英霊になるような奴に執事をさせるなんて、どんな輩よ…」

 

もう一口紅茶を飲んでふぅ、と息を吐き出す。衝撃的な話で色々ぶっ飛んだ気もするけど、私はまだ1人でいたい気分だ。エミヤに藤丸達に混ざってきたら、と声をかけようとした時、彼の方が声をかけてきた。

 

「所長、大丈夫かい?無力感に悩んでいるような、とても酷い顔をしている。ストレスはお肌の大敵だよ」

 

な…この英霊私の心情を察している…ふざけないで…ふざけないで…ふざけないで…

 

「ふざけないで!周りから認められて、英霊となったような奴に私の気持ちの何が分かるっていうのよ!」

 

「落ち着いてくれ所長。これでもオレは真っ当な英霊じゃなくてね、先ほども説明した通り抑止力の守護者、世界と契約して英霊になったが、抑止力に使われるような他の英霊とは違い格が低い英霊だ。それ故、オレの知名度は0に等しいし、誰かに認められていたわけでもない」

 

「それでも、英霊に至るような才能を持っているような奴に何が分かるっていうのよ!」

 

「だから落ち着いてくれ…そうだね、昔話をしようか。錬鉄の英雄の話、これを聞けば君もオレのことが少し分かるだろう」

 

そこから彼は語り始めた。冬木の聖杯戦争から始まって、セイバーに出会い、自分の才能に気づいたこと。それを持って魔術使いになり、自分の理想の為に走ったこと。その道中で人を救う為に世界と契約して、果てには救った人から殺され、それでも後悔はしなかったこと。

 

「まぁこんなものか。先程の君の顔は生前の俺に似ていてね、あの頃は全てを救うことが出来ないのを本気で嘆いていた。今も嘆いていないわけじゃないが、少なくとも今は誰かを救う、ということに満足はしているよ」

 

そう笑いながら話す彼。どうして彼は笑ったいられるのだろう。人の為に身を売り、その人達からも裏切られる。それでも、願うは誰かを救うヒーローのようになる、ということ。狂ってる…。まずそう思った、でも私には少しだけ羨ましい。自分の使命のために、目標のために、自分の命を賭けて本気で挑むことが出来て、例え報われなかったとしても、そのことを本気で悔いていないのだから。話を聞く限り、彼は生前誰にも認められなかったのだろう。

 

「所長は所長のままでいいさ、オレみたいになる必要はない」

 

「…どうして誰にも認められなかったのに、貴方は最後まで頑張ったの?」

 

「どうしてって言われてもね、だってオレの胸の中にある理想が偽善だったとしても、誰かを救う、っていう願いは美しくて、正しいもの、って信じていたからね」

 

まぁ、一回それを忘れてしまったこともあるのだがね。笑いながら彼はそういった。これを笑い話で語れる彼。

 

「でも所長は所長のままで良い。君は無力なんかじゃないだろう。人には役割がある、マシュやマスターは確かに戦闘向きで、彼らがいないと解決は難しいだろう」

 

だけどね、と彼は続ける。

 

「所長だって君には君の役割がある。カルデアの所長としての役割、いわば司令官だろう?君はドクターが思いつかなかった、Aチームの冷凍保存を指示して、彼らの命を救ったんだ」

 

「当たり前よ!死んだら後々私に責任が来るんだから…それ位はするのが当たり前よ」

 

「それでもね、あの場でその指示を出来たのは君だけだ。パニックにいる中まともな指示が出来たのは君だけだ。君にしか出来なかったんだ、だから誇れ。大丈夫、君は無力でも無いし、努力を怠っているわけでも無い。オレが保証しよう」

 

そう言った彼の顔を見ると、思ったよりかっこいい。少し顔が赤くなって、体温が上がるのを感じる。別に恋なんてしてるわけではない。けれど、こんなこと今までに言われたことあっただろうか…あぁ、私はようやく誰かに認めてもらえたんだ。そう思うと身体の力が抜けていくようだった。私は私を変えられないのだろうけど、少なくとも今救われたのかもしれない。

 

「エミヤ、紅茶のお代わりを貰える?」

 

「良いとも」

 

口に含んだ紅茶は心地良い温度で、今だけは抱えている重荷を下ろして、この紅茶の味を楽しもう。そう思った。




エミヤは所長でも平気でフラグを立てそう(
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