今回はエミヤ視点です。
例え、無銘でもエミヤでもその光景は変わりなく、どちらであっても間違いなく覚えているだろう。彼女を見上げる俺、目の前には金色の輝き。
「問おう、貴方が私のマスターか?」
どんなに記憶が薄れてしてしまっても、オレがオレである限りは覚えている、始まりの言葉。エミヤの始まりの言葉は切嗣のソレだが、これはオレが正義の味方になると覚悟した瞬間だろう。非日常に紛れ込む。それ自体は些細なきっかけで、オレを形作った運命の夜の聖杯戦争で、大切だった1つの要因は彼女がオレのサーヴァントととして呼ばれたことだ。オレのサーヴァントととして呼ばれていなければ、オレは今どうなっていたのだろうか。そう思うほどに大きな存在。選定の剣を抜いた存在。アーサー王。真名、アルトリア・ペンドラゴン。その彼女が黒化したとはいえ、目の前に立っている。ならば、あの光景を思い出してしまうのは仕方ないのかもしれない_______
「って、なんでアーサー王が女なのよ!?」
「もしかしたらアーサー王が男装の麗人だったのかもしれないね、王座につくために、とかでさ」
いつものように漫才のようなやり取りをする所長とロマン。
「さて、そろそろ座に帰る時が来たぜセイバー」
クーフーリンの挑発の声と2人のやりとりで、現実に戻される。あのセイバーが相手とはいえ、今は敵。気を抜いてはいけないと、自分を戒める。
「戦闘準備!皆構えて!」
指示を出すマスター。オレも双剣を投影して戦闘に備える。お互いに睨み合って、緊張状態に入ったその時、彼女が口を開いた。
「ここまで来てしまったか…
「アーサー王…貴方は何を言ってるのですか…」
不思議に思ったのか、マシュがセイバーに問いかける。
「貴方が気にすることでは無い。無銘は倒れた、だけどエミヤがそちらにいる。つまり貴方はシロウですね?」
「セイ、バー…?」
昔のような、ただの少女のような顔で微笑まれた。一瞬だけども思わず構えを解き、自分の使命を忘れ、言葉をこぼしてしまった。
「貴方がそちらにいることを少しだけ嬉しく思います。やはり貴方はいつも正しいのだから…」
そこで察する。黒化したとはいえセイバーはセイバーで、事態を止めるために動いてはいるが、恐らくそれも敵の手の中であることを察しているのだろう。ならば…
「マスター、すまないが彼女とは1対1やり合いたい、良いかね?」
「おい、弓兵!」
「ごめん、クーフーリン。エミヤの目を見るとどうしても断れない」
その時オレはどんな目をしていたのだろうか、自分でも分からない。
「ありがとう、マスター。必ず勝つよ」
例えこれが非合理的でも、人理がかかっているとしても、オレはこの選択を後悔しない。万人を救いたいことに変わりはない。けれど、この時だけは彼女を1番救いたいと思ったから____
「セイバー、オレが相手だ」
「いいでしょう、受けて立ちますとも」
そう言った彼女の顔は嬉しそうでも、悲しそうでもあった。だけれど、その後一瞬で敵意を孕む顔に変わる。殺意を放ち、オレと相対する。彼女のことだ、固有結界を発動する時間なんて与えてくれないだろう。ならば取る選択肢は1つ、宝具を放ってくる。ここで勝つためだけなら、
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投影する剣に迷いはなかった。想像するのは最強の自分。憧れの、俺にとっての最強あの剣に近づくために…
「
「
同時に放たれる純白と暗黒。ぶつかり合い、大地を削る。時間が経つうちにオレが徐々に押されていく。予想はしていたが、やはり敵わない。黒化したとはいえセイバーはセイバーなのだ。だが、敵わないから、といって負ける道理はない。チャンスは一瞬。純白の光が消えかけ、セイバーが勝ちを確信しただろうその時。
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ありったけの魔力を込めて、聖剣を爆発させる。聖剣を爆発させた余波で両手が使い物にならなくなった。そして、純白が暗黒を塗り返し、その光は彼女彼女に襲いかかる。
「やりますねシロウ」
そこには彼女が健在して微笑んでいた。
「これで倒せないとはな…」
「いえ、今でも立っているだけで精一杯です。貴方の勝ちですよ、シロウ」
「そうか、それは良かった。オレも限界だよセイバー、もう腕が使い物にならない」
今のセイバーは無力だと確信したマスター達が走り寄ってくる。
「やるじゃねぇか、弓兵」
「お疲れ様、ちょっとだけカッコよかったわよ…」
「今すぐ治療のスクロールを使いますね、エミヤ先輩!」
「エミヤ、ありがとう!」
消えかかっているセイバーがこちらを見ていた。その目はオレを、皆を見ていて、とても優しげな目だった。
「結局聖杯は守りきれませんでしたね…」
「テメェ、何か知ってやがるな?」
「いずれ貴方も知ることになる、アイルランドの光の御子よ、グランドオーダー、聖杯を巡る戦いはまだ始まったばかりだ、ということを」
続けて彼女は口を開く。
「そして、シロウありがとう」
そう言って、セイバーは消えていった。
このシーン、エミヤがカリバーンを使い、セイバーがエクスカリバー・モルガンを使うというシーンはこの作品を書き始めた時から思っていたシーンで、このシーンをかけたことに喜びを感じます。
士郎は凛と強い繋がりを持っていると思っていますが、同様にエミヤはアルトリアと強いつながりを持っていると思っています。例え、お互いが求めているお互いが違っても、この2人には強い結び付きがあるのだと信じています。