「まだ宝具が使えないんです…」
少し休憩を取っていた俺達に、マシュがそう相談してきた。以前から気にしていたようだけど、英霊の2人がいるから、今になって改めて打ち明けたのだろう。
「そう落ち込むことは無いよ、マシュ。英霊にとって宝具は、ヒーロの必殺技みたいなものだよ?そう一朝一夕で使えるようなものじゃ無いって」
「「いや、そんなはずはねぇだろ/ないだろう」」
英霊2人に否定されるドクター、短い付き合いだけどそろそろ彼のキャラが分かり始めてきたように思う。主に不憫、といういう意味でだけど。
「そもそもサーヴァントにとって宝具、ってのは自分の象徴みたいなもんだ。サーヴァントがあって宝具があるんじゃなくて、宝具があってサーヴァントがあるんだよ。俺がキャスターなら杖、ランサーなら槍持ってるのが良い例だ」
「そうだな、奴の言う通り宝具を使えないという状況は変だ、何かしら原因があるのだろう。落ち着いてきたことでもあるし、これからのことを考えて修行…はどうだろうか、マシュ?」
「そうだな、良いんじゃねぇの?ま、嬢ちゃんのために一肌脱ぐとするかね」
「2人ともありがとうございます!」
マシュと彼らが仲良くなって、マシュに修行をつける。エミヤも盾の使い方を教える、と言っていたし、良い機会だろう。それにクーフーリンの話では、残るサーヴァントは皆強敵らしい。ならばマスターとしてもこの修行は必要なことだろうと感じた。それ以前に俺としては、マシュが色んな人と仲良くなっていくことが嬉しい、少しだけ寂しくも思うけど。
「で、貴方達どんな方法で彼女に宝具を使わせるようにするの?」
原因が分からないのにどのような修行をつけるのか気になったのだろうか。所長が彼らに尋ねた。
「実の所大体の原因は分かってる、嬢ちゃんの心の問題だ。ってなわけで、嬢ちゃんとりあえず力尽きるまで1人で戦ってみろ」
そう言ってクーフーリンはルーンを刻み、敵を呼び寄せた。
「荒治療ではあるが、あれは理に適っている。彼はマシュが命の危機を感じれば宝具の展開も出来るだろう、と考えているのだろう」
俺は不安そうな表情をしていたのだろうか、気を遣ったようにエミヤが話しかけてくれた。2人もいることだし、恐らく危険なことにはならないだろう。そう思ってマシュの戦いを見た。
主に相手はスケルトンだ。動きは遅いが、弓や剣、槍などを持っていて、それぞれ間合いも違う。気を抜いていれば攻撃を受けてしまうだろう。かれこれ2.30分は経っただろうか、マシュの息が上がったのを察して、クーフーリンがルーンを消し、敵を呼ぶのをやめた。
「はぁ…はぁ…これでも…ダメでした…」
お疲れマシュ、まだ時間はあるよ。なんて慰めの言葉を掛けようとした時だった。
「うーん…これでいけると思ったんだがなぁ…見込み違いだったか…。ま、無理なら仕方ない。嬢ちゃん、構えろ。今度は俺が相手だ。味方だから、なんで遠慮しなくて良い。俺も遠慮せずに藤丸を殺すからよ」
「おい!!クーフーリン!!」
「ったく、お前はお人好しが過ぎんだよ。少なくとも俺を倒さなきゃ、セイバーの奴を倒すのも夢の夢だっつうの。ならあいつを敵にするか?バーサーカーを。黒化して宝具が使えないあいつなら、少なくとも弓兵の奴と一緒なら勝てないことも無いだろうよ」
「クーフーリン、もう少し君は丁寧なやり方で___」
そう言いかけた、エミヤを遮ってマシュが叫ぶ。
「いえ、良いです!バーサーカーと戦わせてください!」
「いいのか?俺達は嬢ちゃんが宝具を発動するまで加勢しないぜ?」
「おい、クーフー__」
「テメェのお人好しは分かってるが、今は緊急事態だ。悠長にしてる暇はねぇし、一から教える事も出来ない。それに、実戦で学ぶのが一番だろうよ。何でもかんでも優しく、甘くってのは確かにお前の長所だろうが、同時に短所だ。いつも正しいとは限らないんだよ」
そう言い放ったクーフーリン。彼らは2人とも別々の価値観を持って、それぞれがマシュのためと思って行動しているのだろう。価値観のぶつかり合い、善意のぶつかり合い。それを見ている俺はマスターだ。ならば、指示を、方針を出さないといけない。彼らを精一杯尊重した上で。ならば…
「マシュはどうしたいんだ?」
「私はバーサーカーと戦います。それが宝具の発動になるなら、先輩の助けになるなら____」
「だとよ、弓兵。諦めな。それにな、マシュは守る存在じゃなくて、立派な戦士だ」
「………そうだな、今回は私が折れよう。確かに今の彼女の目は覚悟に満ちている」
確かに彼女の目は覚悟に満ちていた、もしかしたら怪我を負うかもしれない、死ぬかもしれない、それでも前に進むために、と。
バーサーカーはシャドウサーヴァント化してるので、FGO基準で宝具なし、ということで、それでも充分強いですが…
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