転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話   作:S,K

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すいません!今日からFGOのクリスマスイベのため更新速度が低下します!少しづつ書き進めますので少々お待ちください…目指せBOX50箱以上…!

それでは最新話をどうぞ!


卑劣なる復讐〜運命に導かれし者達〜

「…知らない天井だ…ここは何処だ…?」

意識が覚醒する、見慣れない天井…清潔感のある部屋…何処かの病院のようだ。

口の中はカラカラ…身体中で痛まない所は無く力もはいらない…たしかダークシグナー?になった偽バクラとの闇のゲームで…

 

 

《お目覚めですかマスター…おはようございます、マスターが昏睡して4日ほど経っています…気分はいかがですか?》

 

「おはようアヤカ、そんなに眠ってたのか…気分はいつも通り最悪だよ、それに身体中が痛い…!」 

 

《しょうがありませんよマスター…マスターの肉体は17年前から著しく弱体化しています、闇のデュエルのダメージは今のマスターにとって1番の毒なのですから…》

 

「ああ、わかってる…でも戦いは避けられない、俺が眠っている間に変わった事は?」

 

《…昨日の夜サテライトで大規模なエネルギー反応を確認しました、識別パターン『Ccapac Apu』です…!》

 

 

「そうか…遊星は無事だろうか…」

サテライトにおける地縛神の出現…それはダークシグナーが本格的な活動開始を意味していた。

 

 

巨人の痣を持つ「復讐者」『鬼柳 京介』

 

猿の痣を持ちルドガーに忠誠を誓う『ディマク』

 

蜥蜴の痣を持ち唯一理性を保つモデル 『ミスティ・ローラ』

 

ハチドリの痣を持ちただ一人への「愛」のために復活した 『カーリー渚』

 

シャチの痣を持ち故郷の恨みを晴らそうとする 『ボマー』

 

蜘蛛の痣を持つダークシグナーのリーダーである 『ルドガー・ゴドウィン』

 

コンドルの痣とドラゴン・ヘッドの痣を受け継いだ「新世界の神」になろうとした悲しき男 『レクス・ゴドウィン』

 

…そして詳細は不明だが冥界から復活した「大邪神」『バクラ=ゾーク』

とにかくバクラだけは俺が倒さなければ…倒さなきゃダメなんだ…!

 

 

《遊海、あまり思い詰めるでない…顔に出ているぞ?》

 

《そうです主よ、我らも付いています!何より主の強さは拙者達が1番わかっています!》

 

《ユウミ…私達があなたを護ります!だからユウミはやれる事を精一杯してください!》

 

「メガロック…みんな…ありがとな…!こんな情けないマスターでごめん…!!」

遊海は精霊達の応援を聞いて涙する、ゼロ・リバースから17年…遊海は精霊達にも大きな苦労を掛けてしまっていた。

 

《マスター、私達はあなたに付いていくと決めています!これまでもたくさんの困難を乗り越えてきました!今回も乗り越えていきましょう!》

 

「ありがとうアヤカ…みんな!」

 

 

 

 

 

 

 

「…そういえば翠は…?」

ナースコールを押し一通りの検査を受けた遊海はポツリと呟く…

 

《翠は一度家へと戻っています、昨日までの3日間付きっきりで看病していたので…疲れて眠っているのではないでしょうか?》

 

「そうだったのか、今度何か埋め合わせしないとな…トリシューラ・プリンがいいかな?それとも旅行にでも行こうか?」

 

《なら旅行がいいかもしれませんね!いつかの約束もありますし!》

 

「世界の祭り巡りか…無事に騒動が解決したらみんなで行こ…コフッ!」

 

《…その前にその病弱を直さないといけませんね…なんとか解決策はないでしょうか…》

 

「ああ…回復系統のカードもダメ…消滅してからの再生でも…DT界の煉獄の封印穴での回復もダメ…本当に神様にでも頼まないとダメか…?」

遊海は最後の切り札として自分を転生させてくれた神に頼む事も考えていた…しかしそれは本当の最終手段にしている、遊海はできれば自分でこの状況をなんとかしたいと思っていたからだ。

 

「神様は俺に新たな人生と相棒、そして翠と再会させてくれた…これ以上は頼り過ぎてはいけない気がするんだ…」

 

《マスターらしい考えですね、きっとまだ方法はあるはずです!探していきましょう!》

 

 

 

(えー…普通に頼ってくれて良いのにのう…)

 

(あなた、彼の意見を尊重しましょう…彼が頼ってくるまでは…)

 

(そうじゃのう…頑張るのじゃ遊海…)

 

 

 

「…なんか誰かに褒められた気がするが…まぁいいか、少し休むよ…」

 

《そうですか…おやすみなさいマスター…》

そして俺は再び意識を手放した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん…少し寝過ぎたか…?」

次に目を覚ますと陽が落ちていた…サイドテーブルには夕食であろうラップをしたお粥が置いてある…

 

「アヤカ…翠は…?」

 

《来てませんね…どうしたのでしょうか…?》

俺が寝ている間にも来ていないらしい…なんだろう胸騒ぎがする…!

 

「アヤカ…サーチしてくれ、この町ぐらいならいけるだろ?」

 

《了解です!サーチ開始………あれ…?》

 

「どうした?」

町をサーチしたアヤカが怪訝な声をあげる…

 

《家にいませんね…というかこの場所は…?マップ展開します!》

空中に町の地図が投影される…翠を示す紫の点は家ではなく埠頭近くを指していた…

 

「埠頭…だと?なんだってそんな場所に…?」

 

Buuu…Buuu…

 

 

「電話…」

サイドテーブルに置かれたスマホがバイブ音で着信を知らせる…液晶には"翠"と表示されている…

 

「もしもし翠?心配かけてごめん、どうしたんだ?」

 

『やぁ…岸波 白野、いや…白波 遊海…元気かい?』

 

「その声…!貴様…ディヴァインだな!!!」

 

『フッフッフッ…正解だよ、私の事を覚えてくれているなんて光栄だなぁ…』

電話口から聞こえてきたのは翠ではなくアルカディアムーブメントの代表…ディヴァインの声だった…。

 

 

『貴様の大事な大事なお姫様は預かった…返してほしくば今すぐドミノ埠頭の倉庫まで来い…失われた決闘王!』ピッ…

ディヴァインは一方的に要件を伝え電話を切った…

 

「ディヴァイン…貴様ァァァ!!!!」

 

 

 

 

「遊海!目が覚めたそうだな!今回の話を…なっ!?奴め!何処に行った!!」

海馬が遊海の病室を訪ねる…しかし遊海の姿は無く、ベッドには破り捨てられた包帯と血だけが点々と落ちていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズゴァン!!

 

 

「ディヴァイン…貴様ァ…!」

 

『いやはや…早いお着きじゃないかメタルナイト・白波 遊海…電話してまだ10分と経っていない…よっぽどあの女が大切なんだなぁ…』

遊海は電話を受けてすぐに倉庫へと向かった…しかし傷が開き鎧の下は血塗れとなっている。

 

 

「翠は何処だ…!」

 

『ああ…ここだよ、まったく彼女を捕らえるのも一苦労でね…少々手荒になってしまったよ!』

 

「ん〜!!んんー!!」

 

「翠…!…貴様…よっぽど地獄に堕ちたいらしいな…!」

 

ディヴァインの隣に椅子に拘束され口を塞がれた翠が照らし出される…自慢の長い髪をショートに切られ、傷だらけの姿で…

 

 

『さぁ…デュエルといこうか白波…私に勝てたら女は返してやるよ…!』

 

「許さない…許さないぞ貴様ァァ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

ディヴァインLP4000

遊海LP4000

 

 

 

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『「静寂のサイコウィッチ」を召喚!』

桃色の髪のサイキッカーが現れる DEF1200

 

『カードを2枚伏せターンエンド!』

ディヴァインLP4000

サイコウィッチ 伏せ2 手札3

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!!ドロー!」

「貴様だけは徹底的に潰す!!手札から『融合』を発動!手札の3体の『サイバー・ドラゴン』を融合!!現われよ!最強の機械龍!『サイバーエンドドラゴン』!!!」

機械族屈指の攻撃力を誇る巨大な機械龍が顕現する ATK4000

 

 

『これは…かのプロデュエリスト「皇帝」のエースモンスター…、一撃で勝負を決めるつもりか…』

 

「そうだ!俺は装備魔法『エターナル・エヴォリューション・バースト』と『リミッター解除』を発動!『サイバーエンド』の攻撃力は倍となりバトルする時相手はモンスター・魔法・罠の効果を発動できなくなる!!」

サイバーエンドの体長が倍になり全てを破壊する光を纏う ATK4000→8000

 

 

「バトル!『サイバーエンド』で…!」  

 

『いいのかい?白波、君の女がどうなっても?』

 

「何…!?」

ディヴァインは一つのスイッチを懐から取り出す

 

『このスイッチを押せば女の頭上から重さ数百キロの鉄板が落下する…これを私のライフが0になる瞬間に押そう…さぁ…彼女はどうなるかな?』

ライトが翠の頭上を照らす…そこには黒く光る巨大な鉄板があった…

 

『条件を変えよう白波…お前がこのデュエルで負ければ彼女は開放しよう…君が勝てば…ぺしゃんこだ』

 

「き…貴様…貴様ァァァ…!!」 

遊海は拳を握り締める…翠は自身とは違い力は万全…鉄板に潰されても死ぬ事はないだろう、しかし…痛みは伴う…

 

「んー!!ん〜!!」

 

翠は何かを訴えかける…恐らくこう言っているのだろう…「私の事はいいからディヴァインを倒して」と…それでも俺は……翠にこれ以上傷ついてほしくない…!

 

 

「…ターンエンド…『リミッター解除』の効果を受けた『サイバーエンド』は破壊される…」

 

「ん"ん〜!!?」

遊海LP4000

手札0

 

 

 

『フッ…自身の勝利よりも女の安全を取るか…泣かせるなぁ、しかしその甘さが命取りになる!』

 

 

 

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『自分のフィールドにレベル3のモンスターがいるとき、手札を「サイコ・ウィールダー」と「サイコ・トラッカー」を特殊召喚!』

 

一輪車に乗ったロボットとヨーヨーを操るロボットが現れる DEF0   DEF600

 

『そして私はレベル3の「サイコウィッチ」と「サイコトラッカー」にレベル3の「サイコウィールダー」をチューニング!』

 

3+3+3=9

 

『我が魂を燃やす復讐の黒炎よ!世界を破壊せよ!シンクロ召喚!「メンタルオーバーデーモン」!』

強化された白い悪魔が現れる ATK3300→3900

 

『シンクロ素材になった「トラッカー」の効果で「メンタルオーバーデーモン」の攻撃力は600アップしている!さらに魔法カード「ファイヤーボール」を発動!500ダメージを与える!』

巨大な火の玉がリアルダメージを伴って遊海に直撃し爆発する!

 

「ガッ…うぐぁぁぁ!!?」

遊海LP4000→3500

 

 

『ハハハハ!貴様のその声が聴きたかった!17年前のあの日!私の野望を踏み躙った貴様の苦しむ声が!!さぁ…消えろ!「メンタルオーバーデーモン」でダイレクトアタック!!』

 

悪魔の巨大な爪が遊海に迫り…

 

 

 

遊海LP0

 

ディヴァイン WIN!

 

 

 

 

 

 

「ガッ…!」

巨大な悪魔の爪は遊海の胸を貫通…コンテナに遊海を張り付けた…

 

 

『フフフ…フハハハハ…!!やった…やったぞ!!私は最強だ!最強の決闘王を殺したのだ!フハハハ!アハハハハハハ!!!』

ディヴァインは狂ったように笑い続ける…その目には復讐の炎が揺らめいていた

 

「ん"ん"ー!?ん〜!!」

翠は遊海を助けようと拘束を解こうとする

 

『無駄だ、その拘束は「闇の呪縛」を使った拘束…力を使えねば君もただの人だろう?さぁもう一眠りしてもらおうか…大丈夫、お前達の身体は有効活用させてもらう…我が野望「世界征服」のために…!』

ディヴァインは拘束された翠に近寄る…その手には注射器が…

 

『さぁ…おねんねの時間だ…永遠に…!』

 

「ん…!!」

ディヴァインの注射器が翠の首筋に…

 

 

 

 

 

 

ガシッ…

 

 

 

 

「俺の妻に触るな、ゲスが…!」

 

『なにっ…なぜ生きてグボァッ!?』

ディヴァインの顔面に遊海の拳が突き刺さり吹き飛ばされる!

 

 

「んんー!」

 

「ごめんな翠…今解くから…」

 

「貴様…確かに胸を貫いたはず…!」

 

「お前の目は節穴か?よく見ろよ、貴様が倒したモノを…!」

 

『何だと…岩…!?』

起き上がったディヴァインは遊海が張り付けになっていたコンテナを見る…そこには人の形をした岩人形があった。

 

 

「すまないなメガロック、トフェニ…助かった」

 

《いいのです主殿…先に決闘者のルールを破ったのは相手方…ならば我らも相応の手段を講じるまで!》

 

《覚悟はできているか小物、翠への暴力の報いを受けてもらうぞ!!》

 

「カードの精霊共の仕業か…!」

 

 

ディヴァインにファイヤーボールを受けた直後、遊海は爆炎に紛れ離脱、その後メガロックの岩操作で人形を造りトフェニが幻術を使いディヴァインと翠に偽りの姿を見せたのだ。

 

 

「遊海さん!ごめんなさい…私…」

 

「いいんだよ翠、ショートカットも似合ってる…明日、美容院で整えてもらおう…その前にこのバカに仕置をしてからだけどな…!!」

 

『ぐっ…お前達!こいつらを殺せぇ!!』

 

「「「…」」」

 

倉庫のいたる所から10人程の男が現れる、瞳に光は無い…洗脳を受けているようだ…

 

 

 

「遊海さん!気をつけて!あの人達全員サイコデュエリストです!私もいきなり襲われて…」

 

「…そういう事か…アヤカ、トフェニ、メガロック…遠慮なくブッ飛ばせ!」

 

『『『了解!!』』』

そこからは一瞬だった、アヤカの体当たりで全員纏めてふっ飛ばし、トフェニが魔法陣で拘束し…メガロックがサッカーボール大の石で全員を気絶させた…この間わずか1分ほどである。

 

 

 

「報いを受けろディヴァイン!30%キラーナックル!!」 

 

『グボァァァ!?』

最後に遊海の怒りの鉄拳がディヴァインの腹に突き刺さり…蹂躙は終わった…。

 

 

「なんでこんな力があるのに平和のために使わないんだよこの馬鹿野郎…アイタタ、傷が全部開いたなこりゃ…翠…その…乱暴はされてないな?」

 

「はい…殴られたりはしましたけど…それ以外は…」

 

「そうか…よかった、あとは海馬社長に任せよう…歩けるか?」

 

「ごめんなさい…逃げられないように足を切られてしまって…」

椅子に座る翠の足元には血溜まりが出来ていた…アキレス腱を切られたようだ…。

 

「この外道め…!とにかく脱出しよう、俺のいた病院に戻って治療してもらって…回復魔法で治そう…ほらっ」

遊海は翠に背中を見せてしゃがみ込む…いわゆるおんぶの体勢である。

 

「えっ…でも遊海さん…身体が…!」

 

「翠…これくらいなら大丈夫だよ、さぁ乗って…」

 

 

 

 

 

グサッ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…えっ…?」

その瞬間、遊海は何が起きたのかわからなかった、唯一確かな事は…自分の胸から巨大な刃が生えているという事だ…、その刃を握っていたのは…

 

 

《翠!!何をしているんですか!!?》

 

「……」

虚ろな瞳で遊海に刃を突き立てる翠の姿だった…。

 

 

 

 

 

「み…みどり、何を…するんだ…!!」

 

「…!」

遊海は翠を振り払う…翠はそのまま尻もちをついて倒れ込む…

 

「ゴボッ…まさか…『後催眠』とか言う奴か…?」

 

後催眠…それは催眠状態の人間に一定の刺激を受けた時に一定の行動を取るように仕向ける催眠術の一種である…本来は心の病の治療などに使われるが…

 

 

「くっ…『洗脳解除』…!」

 

「…あれ…私…何を…?な、何これ…!遊海さん…私…!」

翠の催眠が解ける…意識を取り戻した翠は状況を認識できずに混乱する…

 

「…翠、ごめん…!!」

 

「あ、ああ…私…!うぐっ…!?」パタッ 

遊海はできる限り弱い力で翠を気絶させる…

 

 

「ハァ…ハァ…ガッ……」バタンッ

翠が気絶した事で胸の刃が消失する…それにより栓が無くなり遊海の身体から鮮血が溢れ出す…

 

「…トフェニ…翠を連れて逃げろ…早く…!」

 

《し、しかし主よ!》

 

「マスター命令だ…もう…意識が保たない…早ゴフッ…!」

遊海と精霊達の繋がりは特殊で本来は遊海の意識が無くとも精霊達は自由に実体化ができる…しかし弱体化した遊海の場合…遊海の意識が無い間は精霊達も実体化できなくなってしまうのだ…。

 

《御意…!翠殿を連れて病院へと向かいます…!!》

 

「頼む…!!」 

トフェニは翠を抱き上げ空へと飛び立った…

 

 

『フフフ…ハハハハ…どんな気分だ白波?自分の愛する女に殺される気持ちは?』

 

「ディヴァイ…きさ、ま…!」

倒れていたディヴァインが平然と立ち上がる…彼の腹部から歪んだ鉄板が地面に落ちる…

 

『フフフ…こうもシナリオ通りに行くとはなぁ…しかしパンチだけなら17年前の方が痛かった…よ!!』

 

「カハッ…あ"あ"あ"あ"…!!」

ディヴァインは遊海の腹を踏み付ける…

 

『正直あの女のデータをもう少し調べたかったが…まぁいい、こうして貴様を痛めつけられればなぁ!!!!』

ドガッ!バキ!ボキッ…!

 

ディヴァインは何度も遊海を踏み付ける…17年前、遊海に捕まったディヴァインはゼロ・リバースの混乱に乗じ逃げ出した…それから時が過ぎてなおディヴァインは行方不明となった遊海を探し復讐の機会を狙っていたのだ…。

 

 

「ゴハッ…うぐぁぁぁ…!!(意識を切らすな…せめてトフェニが病院に着くまで…)」

骨の砕ける痛みに耐えながら遊海は意識を保とうとする…

 

『17年…貴様を探し続けた!「お前の力には鉄の強さも鋼の意思も感じない」だと?貴様に何がわかる!!私は最強だ!進化した新たな人類だ!私は!この力で!世界に復讐する!!私を蔑んだ者を蹂躙するために!!!』バキ!グシャ!ゴリッ…!

 

「ガッ…貴様…は…間違…てる…、憎…みは…憎しみしか生…ない、世界…敵…回し…勝ち…無い…!」  

 

『うるさい!うるさいうるさいうるさい!!!この減らず口が!!!』ガン…ボキッ…

 

「…ゴボッ…ヒュ…ヒュ…(駄目だ…まだ………少し…)」

 

《(主殿!翠殿と病院に到着!海馬殿に引き渡しました!まもなく…)》 

トフェニから念話が届く…翠を安全地帯まで連れて行けたようだ…

 

『はぁ…はぁ…これで終わりだ白波…貴様の身体はバラバラに解剖して我らの糧にしてやる…じゃあな!!』

 

 

ザンッ…グサッ…

 

ディヴァインはサイコソードを実体化…遊海の心臓を完全に斬り裂いた…

 

 

「……!(この世で一番怖いのはどんなモノよりも人間……よく言ったもんだ…な……)」

この思考を最後に遊海の意識は黒く塗りつぶされていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

氷室・矢薙Side

 

 

 

「う〜む…?ありゃ?ここはどこじゃ?龍亞と龍可はどこじゃ?」

 

「ぐっ…どうしたんだ爺さん…?何だこの部屋は…?」

 

矢薙と氷室は暗い牢屋のような部屋で目を覚ます…彼らは龍亞達と4人でメタルナイトと謎の5人目を除いたもっとも近くにいるシグナーである十六夜 アキに協力を求めるためにアルカディア・ムーブメントを訪れていた…、その際サイコデュエルで怪我をしたというディヴァインと食事を取る中…麻酔ガスで眠らされこの部屋に監禁されたのだ…。

 

 

「やはりアルカディア・ムーブメントはヤバイ組織だったか…龍亞達が無事だといいんだが…」

 

「それもそうじゃが、ワシ達はどうなるんじゃ!?なんだか嫌な予感がするぞ氷室ちゃん!」

 

「とにかく脱出方法を…ん?なんだかこの部屋臭くないか…?」

 

「な、なんじゃ!ワシはオナラはしとらんぞ!」

 

「いや…違う、これは…血の匂いだ…!」

脱出方法を考える中氷室は部屋に漂う鉄の匂い…血の匂いに気がつく…

 

「ま、まさか実体化したモンスターにワシらを食べさせようというんじゃ…!」

 

「いや…違う…あの袋からだ…!」

 

「あ、あれは…死体袋という奴では…!?」

 

2人は部屋の隅に人間大の黒い袋…いわゆる死体袋を発見する…

 

 

「ワ…ワシらもああなるんかのぅ…!?」

 

「…中を見てみよう、オレ達はこんな正装で脱出に使えるモノは身体しかねぇ…針金1本でもあれば儲けもんだ…!」

 

「ひ、氷室ちゃん!やめた方が…!」

 

矢薙の静止を無視して氷室はチャックに手をかけ袋を開く…

 

 

「…こいつはひでェ…身体中がボコボコだ…コイツ、いったい何をやらかしたんだ…?」

袋の中身は全身血塗れの男だった…胸を刺され身体中の骨が折れているようだ…

 

「ヒィ…これは…んん?まさか…氷室ちゃん!この男…シグナーだ!腕に痣がある!」

 

「なんだって…!確かに右腕に痣が…この模様…まさか…メタルナイト…!?」

氷室は覚えていた、フォーチュン・カップのさなか遊星と戦ったメタルナイト…その腕と同じ痣が浮かんでいたからだ…。

 

「まさか…!」

氷室はハンカチで男の血を拭き落とす…その顔は…彼らの知る男…岸波 白野その人だった。

 

「白野…お前がメタルナイトだったのか…!でも…なんでお前がこんな目に…!」

 

「白野の兄ちゃん…アンタ…!氷室ちゃん!まだ息がある!生きとるぞ!!」

 

「なんだって!?…いったいどんな生命力してやがるんだ…?」

矢薙は血濡れの遊海を見てその命の灯火が消えていない事に気づく…遊海は文字通りの「不老不死」…少しづつだが傷付いた身体を修復していた…。

 

 

「氷室ちゃん!早く脱出しよう!早くせんと白野が死んじまう!」

 

「でも迂闊に出たら…なんだ!?」

 

ゴゴゴ…ガガガガガガ…!

 

突如として地震が起きる…外ではディヴァインに殺され復活したカーリーとディヴァインのデュエルが始まろうとしていた…。

 

 

 

 

「…収まったか…デカイ地震だった、今ならば行けるかもしれない…!どぉりゃ!!!」

氷室は頑丈な身体を活かし扉に体当たりする…そして3回目で扉は外れ、外への道が開いた!

 

「よっしゃ!ナイスじゃ氷室ちゃん!早く龍亞達を探して脱出じゃ!」

 

「わかった!…白野、少し手荒になるが我慢してくれよ!」

氷室達は遊海の入った袋を担ぎ、牢屋から脱出した…。

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

龍亞・龍可Side

 

 

 

 

「さっきの揺れはいったい何なの…!?」

龍可はアルカディア・ムーブメントの一室に閉じ込められていた、やさしいと思っていたディヴァインは悪者だった…ディヴァインとのデュエルに負けた龍亞はガラスを隔てた部屋で気絶している…助けはいまだに来なかったが…

 

 

ドシン!…ドシン!…バキ!!

 

 

「龍可ちゃん!無事かの!?」

 

「遅くなってスマン!助けに来た!」

 

「氷室さん!矢薙さん!!」

 

扉を破って矢薙と黒い袋を担いだ氷室が部屋に入ってくる!

 

「氷室さん!龍亞が!」

 

「ガラスか!2人共!どいてろ!せりゃ!!」

 

 

バリーン!!

 

黒い袋をベッドに置いた氷室がソファでガラスを割り龍亞を助け出す

 

 

「おい!龍亞!大丈夫か!ケガはないか!」

 

「う〜ん…あれっ…氷室のおっちゃん…そうだオレ、ディヴァインに負けて…ハッ!?龍可は!」

 

「龍亞!わたしは大丈夫よ!」

 

「龍可!!…よかった〜…」

龍亞は龍可の無事に安堵する…

 

「とにかくここから脱出するぞ!なんだかヤバそうだ!」

黒い袋を担ぎ直した氷室が2人に脱出を促す…そして4人は部屋を飛び出した…

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ、おっちゃん!それ…何を背負ってるの!そんな袋置いていきなよ!」

 

「ダメなんだ龍亞…コイツだけは置いて行けねぇ…コイツを連れて早く脱出するぞ!」

 

「その袋…人が入ってるの?知ってる人…?」

 

「ああ…その話は後だ!早く脱出するんだ!」

 

「…待って!痣が…誰かシグナーが戦ってる!」

龍可の痣が光を放つ…それは近くでシグナーが決闘している事を示していた…。

 

「まさか…!」

 

「おい!待てよ龍可!!」

龍可は反対方向に走り出す…そして龍亞達もそれを追いかけた…。

 

 

 

 

 

戦っていたシグナーはアキだった、彼女はダークシグナーと化したスーパーモデル・ミスティと戦っていた、しかしそのデュエルのさなかにダークシグナーとなったカーリーに敗北したディヴァインがビルから落下…アキは戦意を喪失してしまう…。

 

「…貴女との勝負はお預けね…さようなら…」

 

そう言ってミスティは姿を消した…後には呆然自失となったアキだけが残されていた…。 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ…ハァ…なんとか間に合ったか…!」

 

ビルが崩壊する中、龍亞達4人はなんとかアルカディア・ムーブメントから脱出する…息は切れているが全員ケガは無い

 

 

ギュイイーン…キキーッ!!

 

「お前達!いったい何があった!!」

 

「ジャック!!」

 

新生したホイールオブフォーチュンに乗り、元キングとなったジャックが現れる…騒ぎを聞き駆けつけたのだ。

 

 

「詳しくはわからん!十六夜 アキとダークシグナーのデュエルがあったんだ!」

 

「そうか…十六夜はまだ中か!?」

 

「あ、ああ…ってオイ!中は危険だ!戻れ!ジャック!!」

 

答えを最後まで聞かずジャックは崩壊するアルカディアムーブメントへと突っ込んで行った…。  

 

 

 

「氷室ちゃん!ワシらは早く離れるんじゃ!あと早く病院へ!彼が死んじまう!!」

 

「くっ…無事でいろよジャック…!」

氷室達は袋を担ぎ直しビルから離れた…

 

 

 

『……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ〜…ここまでくれば安心じゃわい…老体には…堪えるのぉ…」

 

「はぁ…はぁ…こ、怖かった…!龍可は大丈夫?」

 

「うん…走り過ぎて…疲れちゃた…」

 

「ダメだ…急がなくちゃならないが…体力が限界だ…!」

龍亞達はビルから100メートル程離れた場所で座り込む、特に氷室の疲労は凄まじいものだった…。

 

 

「龍亞、龍可…携帯は持ってないか?」

 

「ううん、持ってないよ…ねぇ…その袋の人…生きてるの?」

龍亞は氷室に訪ねる

 

「…正直わからねぇ…そもそも生きてるのが不思議なくらいだ…」

 

 

 

 

『…そいつは死なないのではない…死ねないのだ…』

 

「「「「!?」」」」

 

 

突如、4人の目の前に人影が現れる…それは黒いコートを着た顔を隠した男だった。

 

 

「お前…何者だ!」

 

『お前達に名乗る名は無い、しいて言うなら()()味方だ…そいつを治療しにきた、そいつの怪我はこの時代の技術では治す事はできない…』

 

「龍可ちゃん…あいつはダークシグナーではないのかい…!」

 

「ううん…違うわ、痣が光らない…それに大丈夫な気がする…」

矢薙に問われた龍可は首を横に振る…そして一つの確信があった…「この人ならば大丈夫」と

 

「…何か変な事をしようとしたらすぐに止めるからな…!」

 

氷室は前に出て袋を開く…中には傷付いた遊海が眠っていた…。

 

 

「そんな…白野!白野!!生きてるの!?生きてるんだよね!?」

 

「ヒッ…!」

子供達は傷付いた遊海を見て目を覆ってしまう…

 

 

『まったく…貴様はどうしてここまでボロボロになってまで人を救おうとする…?とにかく貴様には死んで貰っては困る…イレギュラーである奴を倒して貰わなければな…「ディアンケト」よ、愚か者の傷を癒せ…』

黒コートの手から緑色の光が放たれる…そして遊海の身体からゴキゴキと嫌な音がしながら傷が塞がっていく…

 

 

「貴方もサイコデュエリストなの…?」

 

『似て非なる者だ、こいつが起きたら伝えろ…「塩を贈るのは一度だけだ、イレギュラーを倒せ」…とな、さらばだ…』

 

そう言って黒コートの男は姿を消した…。

 

 

 

「いったい奴は何者なんだ…?白野のキズがほとんど治ってやがる…」

 

「…わたし…あの人に会った事があるかもしれない…少し雰囲気は違うけど…確か白波 遊海って名乗ってたような…?」

 

「白波 遊海じゃと!?龍可ちゃん、それは絶対にありえないぞ!?」

 

「矢薙さん?なんで…?」

 

「ワシも聞いた話じゃが…17年前、この町では『バトルシティ』という大会が開かれていた…その決勝戦の日…ゼロ・リバースが起きたんじゃ…彼は特別な力を持っていてサテライトの離れ島『希望の島』にいた5万人近くの人々を救って行方不明なんじゃ…もう死んでおるかもしれん…」

 

「そんな…でも…!」

 

 

ビシューン!!

 

「わわ…今度はなんだ!?」

 

「ジェット機…まさかアレは…!」

龍亞達の頭上にジェット戦闘機が現れ着地する…その中から出てくるのは当然…

 

 

「白野…!無事か!!」

 

「なっ…KCの海馬 瀬人社長…!?」

 

「うそッ…!?」

海馬が飛行機から飛び降りる…そして眠っている遊海を見つける…

 

「お前は…元プロデュエリストの氷室 仁だな?我が友を救ってくれたようだな…感謝する」

 

「あ…いえ…どうして貴方がここに…?」

 

「白野の携帯に発信器を付けていてな…昨日アルカディアムーブメントに襲撃されて行方不明だったのだ…まったく無茶をしおって…コイツはオレが預かる!見舞いに来るならばKCブルーアイズ病院へ来い!さらばだ!!」

海馬は駆けつけた青眼救急車に遊海を託しブルーアイズジェットで去って行った…。

 

 

 

「…いったい白野って何者なの?精霊が見えて、海馬社長と知り合いで…」

 

「あと、白野もシグナーだ…さっき痣を見た…」

 

「「えっ!?」」

 

「もしかして白野って…」

 

「ああ…あいつは『鋼の騎士』だ…オレも驚いたんだが…」

 

「「え、えぇぇぇ!?」」

 

 

 

 

ネオドミノシティに双子の叫び声が響き渡ったのだった…。


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