転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話 作:S,K
「…ここ…は…?」
意識が覚醒する、全身が鈍い痛みを放っている…確か俺はディヴァインに殺されかけて…でも今いる場所は元の病室…?
「遊海…目が覚めたか、何故貴様は面倒事にばかり巻き込まれるのだ…?」
「海…馬社…長…ど…して…?」
ベッド横に海馬社長が座っていた、声がうまく出ない…たしかディヴァインに喉の辺りも踏まれてたな…
「無理に喋るな、傷はほとんど治っているようだがそれでも重傷だ…今、オレの知っている事を話してやる」
海馬さん曰く、バクラの襲撃を受けた俺の覚醒を聞いて病院に向かうと病室には包帯と血を残して俺の姿が無い、何かがあったと直感し携帯の通信記録から俺の居場所を特定しようとすると翠を抱えた龍…トフェニが病室に戻ってきた、少し医師達がパニックになったが急いで翠に治療を施したそうだ…。
そして消滅直前のトフェニから俺の危機を聞いて急いで埠頭の倉庫に向かうも大量の血痕を残して中はもぬけの空…携帯の電波を追うもアルカディアムーブメントの近くで電波が途切れたらしい。
そしてアルカディアムーブメントへの突入準備を進める中シティで地震と火事が発生…そして巨大な蜥蜴と鳥のモンスター…地縛神がビルを囲むように出現、さらにそのタイミングで携帯の電波が復活、ブルーアイズジェットで急行すると元プロデュエリストの氷室達に保護されている俺を発見…急いで病院に搬送してくれたらしい…。
「結果的にアルカディア・ムーブメントは半壊、幸いにも死者は0、ただしシグナーの一人である十六夜 アキが意識不明…総帥ディヴァインが行方不明だ、ビルも壊れている…生き埋めになっている可能性が高いだろう…」
「そ…ですか…翠…は?」
「翠は隣の病室で休んでいる、翠も多少なり怪我を負っていたからな…大丈夫だ、大事は無い」
「ありが…とう…ござ…います」
「…瞼が重そうだな…オレはゴドウィンに呼ばれているから行かなくてはならん、ゆっくり寝ていろ」
そう言って海馬さんは出ていった…この17年で一番お世話になっているのは海馬さんだろう、住民票のパーソナルの改変…俺でもできる仕事の提供…とにかく色々お世話になっている…考え事をしていると眠く…なって…
「ん…?」
「あっ!起きた…!白野!大丈夫…?」
「龍亞!白野は病人なんだから!」
目を覚ますと緑色の髪の男の子…龍亞が至近距離で俺を覗き込んでいた…他にも龍可や矢薙さんと氷室さんもいる…
「おはよう龍亞…少し久しぶりだな、みんなで俺を助けてくれたって聞いたよ…ありがとな…」
「白野…おれ何もできなかった、助けてくれたのは氷室のおっちゃんと矢薙さんだよ…」
「まったく…びっくりしたぞ?閉じ込められたと思ったら同じ部屋に瀕死のお前さんがいたんだから…」
「白野…お前は何者なんだ?アルカディアムーブメントにあそこまで痛めつけられるなんて…お前が『メタルナイト』だからか?」
「!?…どうしてそれを…」
遊海は驚きをあらわにする
「死体袋に入れられていたお前の身体を検めた時に見たんだよ…右腕の炎の痣を…だから正体に気づいた」
「死体袋って…はぁ…バレちゃったか、龍亞…ゴメンな?メタルナイトの正体がこんなガリガリで残念だろ?」
「ううん!メタルナイトはメタルナイト!白野は白野だよ!どっちもオレにとってのヒーローだよ!」
龍亞は俺の目をまっすぐ見ながら答えてきた…少し恥ずかしい気持ちだ…。
「ありがとう龍亞…そう言ってくれるなら俺も頑張ってきた甲斐があったよ、…そういえば俺、ものすごいボロボロだったと思うんだけど…誰が治療してくれたんだ?普通の医療技術じゃ無理だと思うんだが…?」
「その事なんだけど…黒いコートを着て仮面を着けた男の人が治してくれたの…たぶんカードの力を使っ…!?」ゾクッ
「「「!?」」」
その瞬間、4人は背筋が凍ったように感じた…それは遊海から放たれた殺気だった、骨と皮だけのような彼からどうしてそんな殺気が出せるのか誰もわからなかった。
「『ゲイザー』…貴様の目的はなんだ…!!」
遊海は布団を握り締める…17年前に死んだはずの人物が生きている、それだけでも不可解なのに…殺そうとした遊海を助ける…その意味がわからなかった。
ボガッ!
「痛てっ!?」
遊海の頭に拳大の石が落下する…
《白野!何をしておる!…幼子が怖がっているだろう…》
「あっ…みんなごめん…!」
気づくと龍亞は椅子から転げ落ち、矢薙は腰を抜かし、龍可は氷室に抱き着いていた…まともに立っているのは氷室だけだった…。
「…とりあえずアンタがただ者では無い事はわかったよ白野…それからソイツからの伝言だ『塩を送るのは一度だけだ、イレギュラーを倒せ』…だとよ、奴はお前の因縁の相手ってところか?」
「ええ、少しばかり因縁があって…すいません…」
その後は気を取り直し俺が鋼の騎士になった経緯を話したり…今回の事件の後遊星とアキがデュエルし親御さんと和解した事を話してくれた…なお事件から3日程経っているらしい。
「じゃあオレ達今日は帰るよ!ゆっくり休んでね白野!」
「お大事に!」
「ああ…ありがとう二人とも、また会おう」
そう言って龍亞達は帰って行った。
「さて…あとは隠れんぼしてる奴を連れてくるだけだな…アヤカ、フレア…!」
『『はい!ちょっと待っててください!』』
俺の呼びかけに答えた二人は部屋を飛び出していく…
ドタバタ…
『隠れてないで行きましょうよ!マスターは怒ってませんから!』
「アヤカちゃんちょっと待って…!」
『貴女の無事を確認しないとユウミも安心できないんですから!ほらほら!!』
「フレアちゃんまで!ちょっと本当に待って…きゃ!」
フレアに手を引っ張られ、アヤカに押される形で翠が歩いてくる…龍亞達がいる時からチラチラ見え隠れしてたんだよなぁ…。
「翠、無事でよかった…足も大丈夫そうだな…」
「はい…遊海さん…その…ごめんなさい!!」
翠は地面に土下座する…某語り部さんのような見事な土下座である…
「わ、私…遊海さんを刺して…!傷つけて…!」
翠によるとディヴァインに拉致・暴行され意識が朦朧とした時に暗示を掛けられたらしい…鍵は「人の背中」と「大丈夫」の言葉、その状況になった時にあらかじめ仕込まれていた「サイコソード」を実体化させ人を刺すように仕組まれていたようだ…なお翠はこの事を忘れていたがウィンダ達に魔法をかけてもらい思い出したらしい…。
「私が攫われなければ遊海さんは危険な目に遭わないで済んだのに…せっかく助けに来てくれたのに…私…わたし…!」
翠は頭を下げたまま涙を流す…
「私は…遊海さんの奥さん失格です…旦那さんを支えられない奥さんなんて…「翠…もういい…!」えっ…」
翠は体を抱き起こされる…遊海がベッドから降り翠の体を抱き上げたのだ…。
「翠…そんな事を言ったら俺も旦那失格だ…怪我や病弱になったのを理由に翠を助けられなかったんだ、俺がもっと警戒していればディヴァインの企みを阻止できた…今回は俺のせいで起きた事件だ…翠に責任はない…!」
「でも…でも…!」
「俺は翠が元気ならそれで良い…愛するお前が元気ならそれだけでいいんだ…!」
「遊海さん…ゆうみさぁ〜ん…!!うぇ〜ん!!」
「ヨシヨシ…今はたくさん泣いていい、そうすれば嫌な思い出も全部流れていくから…」
遊海と翠は抱きあいお互いに涙を流した、二人の絆を…愛を確かめるように…。
「…この事を伝えるのは明日の方がいいな…流石に水を差す事はできん…」
〜3日後〜
「ねぇねぇ!おれ達に用事って何なんだよ?」
『龍亞君…君を招待した覚えはありませんが?』
ゴドウィン邸の前にはシグナー4人+1人が集められていた…シグナーとダークシグナーについての説明のために呼び出されたのだ…。
『私が集めたのはシグナーのみ…君にはお帰り願いましょうか…』
「長官さん!わたし…龍亞と一緒じゃないと行かない!」
『…しょうがありません、許可しましょう…まだ人も揃っていませんしね…』
「この場にいるシグナーはオレ、アキ、ジャック、龍可の4人…あとはメタルナイトだけか?」
遊星はゴドウィンに問いかける
『その事なのですが…メタルナイトの痣は伝承には無いモノ…よって計6人のシグナーがいる事になります』
「6人目のシグナー…それがメタルナイトなら…5人目は?」
『彼は別の場所で待機しています…どうやら来たようですね…!』ヒュー
「「「「「えっ!?」」」」」
ドガァン!!
ゴドウィン邸の前の道路に人影が着地する…それは…
「俺が来た!…ってね!」
「メタルナイト…!」
上空から着地したメタルナイトだった…
『お待ちしていましたメタルナイト、これで揃いましたね…では…』
「ゴドウィン…ちょっと待ってくれ、俺から皆に話したい事がある」
『いいでしょう…話してください』
「メタルナイト!話とはなんだ?」
「…俺の正体についてだ、俺達は仲間になる…なら隠し事は少ない方がいいだろう?」
ジャックの問いかけに遊海が答える
「め、メタルナイト…いいの?」
「ああ…龍亞、もう隠す理由もないだろう…アーマーオフ!」
遊海は変身を解除する…そこにいたのは鎧を纏った戦士ではなく…病的に痩せ包帯を巻いた1人の青年の姿だった…。
「なっ…あなたは…!」
ジャックも驚き、呆然とする…彼にとっても恩人の1人であるからだ…。
「改めて名乗り直そう、メタルナイトこと『ドラゴン・フレイム(仮)』の痣を持つシグナー…岸波 白野だ、よろしくな!」
「…まさか貴方がシグナーだったとは…いつから痣を…?」
「だいたい17年前からかな…ゼロリバースの直前に腕に痣が現れたんだ、その頃から病弱になってね…」
「あなたがメタルナイトだったとは、ならばあの強さも納得できる…勝てる訳が無い…」
ゴドウィン邸の中を歩きながら遊星やジャックと言葉を交わす…サテライトで遊星やジャック達にデュエルの手ほどきをしたのは遊海だったりする…。
「メタルナイト…いえ白野、あの時はごめんなさい…私…」
「いいんだよアキ、全部『間が悪かった』だけさ…それより身体は大丈夫か?ダークシグナーに襲われコフッ!」
「「わぁ〜!?白野(さん)無理しないで!!」」
『オホン…そろそろ着きますが…大丈夫ですか?』
遊海が加わって若干カオスになりつつある空気を整えるように咳払いする…遊海達の目の前には巨大な祭壇があった。
『では…改めて説明しましょう、貴方達の腕にある「シグナーの痣」について…!』
そう言ってゴドウィンはシグナーについての説明を始めた。
シグナーとは数千年前から存在する赤き竜に選ばれた戦士である事
シグナーは惹かれ合い、この場にいる5人が集まったのも偶然ではなく必然である事
シグナーとは「生命」の力を扱う戦士であり、逆にダークシグナーは「冥府」の力を使う戦士である事
ダークシグナーはナスカに封印されていた邪神「地縛神」に選ばれた亡者であり、そのデュエルからは逃げる事が出来ずダメージが実体化する「闇の決闘」である事…などなど、ゴドウィンからは俺達が戦うのに必要な情報が提供された。
ジャックは「そんなオカルトが信じられるか!」などと言っていたが…一応全員が納得してくれたようだ。
『ダークシグナーとの戦いが始まるまで時間はありません…どうかよく考えて答えを出してください』
ゴドウィンはそう場を締め括りひとまずの解散となった。
「…鬼柳…」
遊星は一人ゴドウィン邸のバルコニーで悩んでいた、かつての親友が恨みを持って死に…ダークシグナーとして蘇った…遊星は彼を倒す覚悟が出来ずにいたのだ。
「悩んでるな遊星、大丈夫か?」
「白野さん…」
そんな遊星に遊海が声をかける
「鬼柳がダークシグナーか…お前にとっては戦い辛いんだろう?…いや、恐れているってところか?」
「白野さん…本当に鬼柳は救い出せないのか…?オレはあいつをもう一度…!」
「遊星…きっと鬼柳は苦しんでいる、それを開放できるのはお前だけだ…」
「鬼柳が…苦しんでいる…?」
下を向いていた遊星は遊海を見る
「鬼柳がお前を目の敵にするのはお前に裏切られたと思っているからだ、信頼していた仲間に裏切られた…それはあいつに強い絶望を与えたはずだ、でもな復讐は何も生み出さない…仮に鬼柳がお前を倒してもあいつは満足しない…きっと新たな破壊を始めるはずだ、終わらない破壊の輪廻…それを止められる、止めてやれるのはお前だけだ」
「白野さん…」
「もし…まだ迷いがあるならジャックの所に行ってこい、あいつなら答えを聞かせてくれるだろうよ」
「…ありがとう白野さん…もう少し考えてから行ってみます…!」
「まだ覚悟を決める時間はある…今のうちに悩んでおけ」
「はい…!」
遊星は俺に一礼して去って行った…。
「白野…少しいいかしら?」
「アキ?どうしたんだ?」
遊星の去ったバルコニーにアキが入ってくる
「謝らせてほしいの…ごめんなさい…!」
「…もう大丈夫だよフォーチュンカップの日の事は…」
「違うの…ディヴァインに…」
「龍可達から聞いたんだな…別に大丈夫だよ、この通り体は動くから…」
遊海は腕を曲げ伸ばしする…実際はまだ痛みが残っていたりする…
「私のせいなの…ディヴァインにあの日の事を話したから貴方は死にかけて…」
「君に罪はないよ…ディヴァインとは少し因縁があってね…過去に破壊活動をした奴をふっ飛ばした事があったんだ、それをずっと恨んでいた…それだけさ、まったく…あんな力があるなら人を助ける方に力を使えばよかったのに…アキ、君も強い力を持ってる…もう使い方を間違えないようにな?」
「わかったわ…ありがとう、あと…一つ聞いていいかしら?」
「なんだい?」
「白野って…何才なの?遊星とだいぶ長い付き合いみたいだけど…?」
「う〜ん…だいたい40才位かな?海馬社長と同い年だよ」
「…嘘よね?見た目が若すぎるもの…」
「さぁ?信じるか信じないかは貴女次第です…ってね!」
〜夜〜
「何なんだ…この映像は…!?」
「サテライトが…黒いドームに覆われて…!」
ダークシグナーと戦う覚悟を決めた俺達は緊急事態の知らせにより治安維持局へと呼び出された…そこで見せられたのは巨大な闇のドームに覆われたサテライトの映像だった…。
「ダークシグナーの侵攻が始まったみたいだな…!」
「こんなところでグズグズしていられん!今すぐサテライトへ向かう!」
ジャックはいても立ってもいられないという感じで叫ぶ
「アトラス様、ヘリの準備があります…明日の朝5時にヘリがでます!もう少し待ってください…!」
「ぬぅ…!歯痒い…!」
狭影さんに静止されるジャックなのだった…。
「翠、明日サテライトへ向かう…シティは頼んだ…!」
『わかりました…!気をつけて!…無事に戻ってきてください…!』
「ああ…少なくともバクラは絶対に倒してみせる!明日全てが終わったら会おう…!」
「はい…!!」
ピッ…
「ついに決戦か…対戦カードは確か…一応保険は賭けておくか…」
ピッポッパ…
プルル…プルル…ガチャ!
『もしもし!久しぶりだな先生!…どうしたんだ?』
「これから大きな戦いがある…精霊界に向かってほしい…!」
『また世界の危機って奴か?』
「ああ…精霊界で1人の女の子の手助けをしてほしいんだ…!」
〜翌朝〜
俺達はゴドウィン邸の屋上でヘリを待っていた…辺りは静寂に包まれている…。
『サテライトの謎の霧の中心地は旧モーメントのようです…やはり運命なのでしょう、旧モーメントの開発者不動博士の息子よ…シグナー諸君の目的は2つ、ダークシグナーの打倒…そして暴走しつつある旧モーメントの制御となります…!』
「えっ…?遊星がモーメント開発者の息子…!?」
「どういう事…?」
「二人共…話は後だ、迎えが来たみたいだ…!」
バラバラ…
遊星の言葉と共に迎えのヘリが現れる…そこに乗っていたのは…
「牛尾捜査官!只今現着しました!」
『ご苦労…』
「なんだ…お前か」
ヘリから現れたのはもちろんセキリュティとなった牛尾さんである…相変わらず遊星からの扱いが酷い…
「なんだとはなんだクズ野郎!お前達をサテライトまで送り届け……おい…嘘だろ?なんでアンタがここにいるんだ白な「チェスト!!」ムゴオッ!?」
「「白野!?何してるの!?」」
「いや…お腹空いてそうだったから…」
俺の事に気づいたらしい牛尾さんの口にオニギリをシュート!見事命中!
「(牛尾さん…俺の事はまだ秘密でお願いしますね?俺は岸波 白野です)」
「なっ…頭に声が…!?…わかったよ事情があるらしいな…」
「牛尾捜査官?彼と知り合いですか?」
「狭霧さん…ええ、高校時代の後輩なんです、久々に会ったもので…」
「…ちょっと待って、牛尾君40才超えてるわよね…!?」
「さ、さぁ!シグナーの出陣だ!行こう!サテライトへ!」
狭霧さんの疑問を掻き消すようにみんなに声をかける…見た目年齢若いからな俺達←見た目年齢20才
こうして俺達はヘリに乗り込み一路サテライトへと向かったのであった…。