転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話 作:S,K
皆さまは無事に令和を迎える事ができたでしょうか?新しい元号と共に心機一転頑張りましょう!!
それでは最新話をどうぞ!
〜3年前・サテライト〜
ここはサテライトのとある場所、そこで眠っている子供達を見守りながら話をする2人の青年の姿があった…。
「なぁクロウ、サテライトの伝説って知ってるか?」
「サテライトの伝説?そりゃダイダロス・ブリッジから飛び立った『伝説のDホイーラー』の事だろ?」
「いや、サテライトの伝説はもう1つあるんだ…サテライトとシティの間にある『希望の島』を知ってるか?」
「希望の島…確か昔にKCの遊園地があった無人島だろ?それが関係あるのか?」
「ああ…クロウ、不思議じゃないか?童実野町を2つに引き裂いたゼロ・リバース…その中であの場所では
「誰も…!?どうしてなんだ?」
クロウは相手の青年に尋ねる
「それが伝説なんだよ『人々を救った伝説の決闘者』のな…」
青年が窓の外を見つめる…
「クロウ、私はゼロ・リバースの時に海馬ランドに居たんだ…そして見たんだよ『伝説の決闘者』の姿を…」
「へぇ〜…で、どんな奴だったんだ?」
「見た目は普通の男なんだが、赤い帽子が特徴的だったな…あの人はいち早く災害の予兆を感じてスタジアムから飛び出して行った…そして『神』が現れたんだ」
「『神』?それってもしかして…!」
「黄金の翼竜…『ラーの翼神竜』、それだけじゃない…何体ものデュエルモンスターが実体化して海馬ランド中の人達をスタジアムに放り込んだ…そしてゼロ・リバースが起きた」
「それで…その伝説の決闘者はどうなったんだ?」
「…彼は行方不明のままだ、だが私は信じてる…絶対にあの人は生きてる、だから私は彼のようにみんなを助けたい…って言ってもできる事は限られてるけどな!」
「そんな事ねぇよピアスン…お前はこいつらのヒーローさ…」
クロウは子供の毛布をかけ直しながらもう1人の青年・ピアスンに話しかける
「ははっ、ありがとよクロウ…さて俺らも寝るか!明日からまたDホイール作りを頑張ろう!」
「ああ!…そういえばその伝説の決闘者の名前は?」
「ああ…彼はデュエルモンスターズ界の生きた伝説、かの『決闘王』の名を受け継いだ『最強の決闘者』その名は…」
「ハッ…!…なんだ、ずいぶん懐かしい夢を見たもんだな…」
ポッポタイムのガレージでクロウは目を覚ました…パソコンの周りでは遊星とブルーノがDホイールの調整をしている…。
「…まだ4時じゃねぇか、あの2人また徹夜しやがったな…そうか今日は…」
クロウは頭を掻きながら起き上がる、時刻は朝の4時…そしてカレンダーの日付はクロウにとって思い入れのある日になっていた。
「あっ、おはようクロウ!ごめん、起こしちゃったかい?」
クロウに気がついたブルーノが話しかける
「おはようさん遊星、ブルーノ…また徹夜しやがったな?WRGPまで時間がねぇとはいえ無理すんなよ?」
「おはようクロウ…すまないエンジンの調整がうまくいかなくてな…少し仮眠を取るか…」
「そーしろよ、悪りぃがブラック・バードに乗ってくぜ?少し用事があるんだ」
「わかった…だが注意してくれエンジンの調整が終わってないからな」
「ああ…あんまり弄くり回すなよな…」
クロウはブラックバードに乗りある場所へと向かった…。
「…今年も来たぜピアスン、早いモンだよなあれから3年なんてよ…」
旧サテライトのとある海辺…そこには「ロバート・ピアスン」と書かれた墓標があった。
「なぁピアスン…信じられるか?オレ、サテライトの伝説の2人に会ったんだぜ?しかも1人はオレと同じシグナーなんだ、本当に夢みたいだぜ…」
ロバート・ピアスン…彼はクロウの恩人だった人物だ、彼は「チーム・サティスファクション」が解散し目標を失ったクロウに新たな夢を希望を与えた人物だった…しかし3年前、彼は不慮の爆発事故により足1本を遺し死んでしまった…クロウの乗るブラック・バードはピアスンの形見であり、ピアスンの夢の結晶なのである。
「次に来る時はWRGPの戦勝報告だな!遊星とジャックと一緒に絶対に優勝してやるぜ!…だから待っててくれよピアスン…」
そう言ってクロウはブラックバードに乗るクロウ…しかし
プルル…パスン…
「なんだよ?ご機嫌ナナメってか?…まったく改良してるんだか壊してるんだかわからねぇぜ…」
エンジンがウンともスンとも言わないブラックバード…クロウは仕方なくブラックバードを押してポッポタイムへと戻ったのだった。
「『ブラッド・メフィスト』?」
「ええ…ピアスンの最期のデュエルでそのカードが使われたらしいの…何か知らないかしら?」
ポッポタイムに辿り着いたクロウは遊星とブルーノの修理を見ながら暇を持て余していた…そんな中、セキュリティの牛尾と狭霧が過去に起きたピアスンの事件についての新たな情報から捜査をするべく彼と親しかったクロウのもとを訪れていた…。
「『ブラッド・メフィスト』は昔に開発された危険なカード…具体的にはダメージが実際に発生しちまうらしい…ダークシグナーやゴーストの時みたいにな」
「幸い流通してしまったカードは少ないわ…だからこのカードを持っている人物を特定できればピアスンを襲った犯人に近づけるはずなの、一応遊海さんにも協力してもらってるんだけど…」
「そうなのか…そのカードを持ってる奴がピアスンを…!」ギリリ
クロウは拳を握りしめる、その脳裏にはブラッドメフィストの攻撃で吹き飛ばされ炎に包まれてしまうピアスンの姿がよぎっていた。
「…オレもピアスンと関係ある奴に聞いてみるぜ、絶対に犯人を見つけてやる…!遊星!ジャックのDホイールを借りるぞ!!」
「あっ!おいクロウ!?」
クロウはジャックのホイールオブフォーチュンに乗り、ある場所へと向かった…その後ろからジャックの叫びが響いたのは別の話である。
「(きっとあの人なら心当たりがあるはずだ…ピアスンの親友だったあの人なら…!)」
クロウが向かったのはシティ中心部に位置する大手Dホイールメーカー『ボルガー&カンパニー社』…その社長であるボルガーはサテライト出身であり、ピアスンの親友だった人物なのだ…そしてクロウはガードマンに追い返されかけたものの偶然に会社に帰ってきたボルガーによって会社に入る事ができたのだった。
『知らなかったとはいえすまなかったなクロウ、何か飲むか?』
「いんや大丈夫だよ…それにしてもすげぇな…流石は世界一のDホイールメーカーの社長だぜ…」
クロウはスーツを着たモヒカンの男・ボルガーにそう答える。
サテライト出身だったボルガーだがKCにその技術力を見出されてサテライトを脱出…今や世界有数のDホイールメーカーの社長となっていた。
『それで今日はどうしたんだ?遊びにきた訳ではないのだろう?』
「ああ、なぁこのカードの事を知らないか?」
そう言いながらクロウは牛尾から譲ってもらった「ブラッド・メフィスト」の写真をボルガーに見せる。
「ピアスンが死んだあの日、ピアスンと最期にデュエルしてた相手が使ってたんだ…心当たりはねぇか?」
『そのカードは…!』
カードの写真を見たボルガーは目を泳がせる
「何か知ってるのか!?このカードを使った奴がピアスンを殺したらしいんだ!何か知ってるなら教えてくれ!!」
クロウはボルガーに詰め寄るが…
『なぁクロウ…その事はもう忘れないか?そんな事をしてもピアスンは喜ばない』
「ボルガー…?何言って…!」
『それよりもクロウ、良ければ私の工場で働かないか?聞いた話だとお金に困っているんだろう?給料は弾む!』
「オイ、ボルガー!そんな事本気で言ってるのか!?まさかアンタがそんな事…ピアスンを忘れろなんて言うとは思ってなかったぜ!!…なるほどな、お偉い社長様には昔の事を気にしてる暇はねぇってか!?失望したぜボルガー!!!」
クロウはボルガーに向かって怒りを露わにして怒鳴り声をあげる…そしてそれはボルガーの琴線に触れた
『そこまで言われたら黙ってはいられないな!!…いいだろうクロウ、私とデュエルしろ!お前が勝ったら
「『ブラック・フェザー・ドラゴン』…!?待てよ!そのカードはあの日の火事で燃えちまったはずだ!」
クロウはボルガーの言葉を聞いて驚きを露わにした…『ブラック・フェザー・ドラゴン』…それはかつてピアスンのエースモンスターだったカードである。
『スターダスト』や『レッドデーモン』同様に世界に1枚しかないカードであり、ピアスンの死んだ際に燃えてしまったはずなのだ。
『隠す事はない…お前がピアスンの死の直前にブラック・バード号と一緒に託された事はしっている!』
「何言ってるんだよ!オレはそんな事知らねぇぞ!?」
クロウは嘘をついてはいない、確かにクロウはブラックバード号をピアスンに託され火事の中から救い出した…しかし「ブラックフェザー」の事は何も聞かされていないのだ。
『実は先の新型車を開発するのに無理をしてしまってね、少し資金難なんだ…融資を受ける為には「ブラックフェザー」が必要なのだ!』
「なっ…!?ボルガーお前…!」
『君の言いたい事はわかってるさ…だがピアスンが私と同じ立場なら絶対に同じ事をするはずだ…デュエルは2日後に我が社のライティングコースで行なう…異存はないな?』
「…わかったよ、受けてたってやるボルガー!!!」
ボルガーとクロウは火花を散らす…かたや資金を得る為に、かたや友の死の真相を知る為に…互いに負けられないデュエルとなった…!
「あ!おかえりなさいクロウ兄ちゃん!」
「白野さんが翠さんの作った杏仁豆腐を持ってきてくれたの!」
「ジャックと遊星も遊んでくれたんだ!」
クロウはボルガーと別れマーサハウスへと立ち寄った、そこでは遊海の持ってきた杏仁豆腐を食べたりジャック達と遊ぶ子ども達の姿があった。
「クロウ、牛尾や雑賀から事情は聞いた…どうだったんだ?」
遊星がクロウに話しかけるがクロウは首を横に振る
「ダメだった…何か知ってるらしいだが話しちゃくれねぇ、それでライティングデュエルで話をつける事になった…ありもしない『ブラックフェザードラゴン』を賭けてな…まったく訳がわからねぇ…」
「…クロウ、話してくれないか…ピアスンの事を」
「いいぜ、ピアスンはな…オレの恩人なんだ…」
遊星に尋ねられたクロウはピアスンについて話を始めた。
鬼柳が逮捕された事で解散となったチーム・サティスファクション…クロウは新たな目標を見つける事ができず子ども達を世話しながらぼんやりとサテライトで生活していた。
そんなある日、クロウが世話をしている子どもの父親がシティの人間に酷い目に遭わされ、クロウは彼らに思わず殴りかかった…結果は多勢に無勢、クロウは追い詰められてしまう…そしてそこにバイクに乗った青年…ピアスンが現れた。
「ピアスンはオレと同じ『BF』使いだった…あの人はデッキを使いこなして『ブラックフェザードラゴン』を出してシティの奴らを撃退したんだ…」
その後クロウはピアスン達と行動を共にする事になる。
ピアスンはクロウと同じく子供達を集めて世話をしていた、それだけではなくデュエルディスクの調整や機械修理を教える事で子供達の手に職を持たせて自立できるよう訓練をしていた…ピアスンは現在の遊星に匹敵するメカニックだったのである。
そしてピアスンには夢があった…それは『サテライトにある物でサテライト初のDホイールを作る事』クロウもそれに賛同し彼を手伝っていた…あの事件が起きるまでは…。
〜3年前〜
「ピアスン!!…そんな…どうしてこんな事に!!」
ピアスンの作業場は炎に包まれていた…ピアスンを救う為に自分を顧みず火事に踏み込んだクロウが目にしたのは鉄骨に押し潰され身動きの取れないピアスンの姿だった…。
「ピアスン!今助ける!」
『来るなクロウ…!これは私の個人的な問題だ…それに私は…もう助からない…ゴボッ…!それよりも…ブラックバード号を…!』
ピアスンの視線の先には今にも炎に包まれそうなブラックバード号があった…。
『クロウ…ブラックバードを…子供達を頼む…うぅ…』
それがピアスンの遺言となった…クロウは涙ながらに炎の中からブラックバードを運び出し…作業場は完全に炎に包まれ爆発したのだった。
SideOUT
「オレは遊星やジャックみたいにアタマがいい訳じゃねぇ…オレにできたのはセキュリティやタチの悪い奴らからカードを盗んで子供達を喜ばせる事だけだったのさ…けどボルガーはすげぇんだ、KCに技術力を買われて今や大企業の社長だ…ピアスンの遺志を継いで旧サテライトにも工場を立てて…オレのしてきた事は何だったんだろうな…単なる罪滅ぼしに過ぎなかったのか、ピアスンを見捨てたオレの……」
クロウは自信を失くし項垂れてしまう…
「そんな事ないさクロウ…お前は立派にピアスンの意思を継いでいる!」
「遊星…」
遊星はクロウを励まし元気づける…遊星だけではない、彼らも…
「お〜い!遊星!クロウ兄ちゃん!何話してるの〜?コッチ来てよ〜!」
「メタルナイトが来たんだよ〜!」
子供達が笑顔で遊星とクロウに呼びかける
「見ろあの子達の笑顔を…あの子達に希望の笑顔を与えたのはお前じゃないか…自分を恥じる事は無い、自分が正しいと思った道を進んでいけばいいんだ!」
「遊星…ありがとよ!さて…あいつらと遊んでやるとするか!」
「ああ、それでこそだ!」
遊星とクロウは子供達と戯れるメタルナイト(遊海)のもとへと駆け寄った…。
「(…そういえばメタルナイトがサテライトで活躍し始めたのはあの事件のあとだったな…あの人がもう少し早く動いてくれたら…)」
〜2日後〜
ついにクロウとボルガーのデュエルを行なう日がやってきた…会場はボルガー&カンパニーのテストサーキット、そこでクロウとボルガーが対峙する…そしてコースを見渡す制御塔には戦いを見届ける為に遊星とジャックが訪れていた…。
「遊星、彼奴…遊海は来なかったのか?」
「ああ、一応声を掛けたんだが…用事があるらしい、オレ達だけでも見届けよう…あの2人の決着を…!」
『本当にいいんだなクロウ!』
「ああ…オレはオレなりのやり方でピアスンの遺志を継いでみせる!!」
『いいだろう…勝負だ!クロウ・ホーガン!!』
ピアスンの真実を賭けたデュエルが今、始まる!
「『ライティングデュエル・アクセラレーション!!』」
デュエルダイジェスト クロウ対ボルガー
ついに始まったクロウとボルガーのデュエル、クロウはBF特有のモンスター同士の連携で速攻をしかけようとする…しかし立ち塞がるのはボルガーの操る「黒」のBFの対になる「白」のモンスター
『BFのモンスターは一体一体は脅威にはならないが仲間が仲間を呼び、連携する事で力を生み出すデッキ…ならばその「絆」を断ち切るだけだ!!』
さらにボルガーは「お互いのターンの終わりにそのターンに破壊されたモンスター1体に付き400のダメージを与える」罠カード「ヘブンズ・アロー」を発動しクロウを追い詰める…!
「(ならこのカードで『ホワイト・アウト』を無効にして…!)」
クロウは「トラップスタン」で逆転を図るが…相手は幾度となくデュエルしたボルガー…「WWー縄金票のスノー」と「宝盾のフォッグ」のコンボにより伏せカードを破壊されてしまう。
しかしクロウもただでは終わらない、「アームズ・ウィング」をシンクロ召喚したクロウは相手の「ヘブンズ・アロー」を逆手に取り「宝盾のフォッグ」を破壊しライフ2800までボルガーを追い詰める…!
「ボルガー!このデュエル、オレは負ける訳にはいかねぇんだ!!ピアスンを殺した奴を突き止める為に!!」
『なるほど…決意は固いらしいな、ならば教えてやろう!!』
追い詰められたボルガーは悪魔にその魂を売り渡す!
『私はレベル4の「鉄槌のヘイル」にレベル4の「縄金票のスノー」をチューニング!』
4+4=8
『心の闇より生まれし者よ…今、魂を引き換えに降臨するがいい!シンクロ召喚!脈動せよ!「ブラッド・メフィスト」!!』
ボルガーの場にシルクハットを被った黒い悪魔が現れる…そのモンスターこそは開発中止となったリアルダメージを相手に与える悪魔・ブラッドメフィストだった。
「なっ…!『ブラッド・メフィスト』だとぉ!?ボルガー!お前まさか…!!」
『ああ、そうさ…ピアスンを殺したのはこの私だ!だが仕方なかった…仕方なかったんだ!!』
そしてボルガーはあの日の事を語り出した。
当時、資金難によりDホイールの開発が難航していた事
Dホイール開発を聞きつけたシティの金持ちが融資を持ちかけたがピアスンがそれを断った事を…
『あいつにとって重要だったのはDホイールを完成させる事じゃなくて「サテライト初のDホイール開発者になる事」だったんだ!!許せる訳ないだろう!!』
業を煮やしたボルガーはピアスンからDホイールの設計図を強奪…それを止めようとしたピアスンとデュエルになり…ピアスンは炎へと消えたのだった。
『だが私は後悔していない!私のおかげで量産型Dホイールが完成した!旧サテライト地区の人々も気軽にライティングデュエルができるようになった!例え殺人犯になろうと…私は工場を守りきる!!』
ボルガーの理想は歪み果てていた…ボルガーの目は曇り、真実は見えていない…。
「そんな事信じられるか!!ピアスンがそんな奴だなんて…オレは信じねぇ!!」
『ならば力ずくだ!お前をピアスンと同じ目に遭わせようと…私は「ブラックフェザードラゴン」を手に入れる!!』
デュエルは続く、ブラッドメフィストの効果は2つある…1つは「1ターンに一度相手フィールドのカード一枚につき300ダメージを与える効果」、そして「相手がカードをセットするたびに300ダメージを与える」効果…しかもその両方にリアルダメージが発生する。
クロウも抵抗するがライフも体力も追い詰められ、残りライフ300となってしまう。
「(カードをセットすればオレの負け…オレはここまでなのか…?ピアスンの仇も取れずに、こんなところで…!!)」
『クロウ兄ちゃん!!負けないで!!』
『コッチ見て!クロウ兄ちゃん!!』
「えっ…!」
諦めかけたクロウの耳に聞き慣れた声が響く、コースを見渡す制御塔…そこにはブルーノが引き連れてきた子供達がプラカードを持って声援を送っていた!
『クロウ兄ちゃん!ボク達みんながついてる!!だから…負けないで!!』
「お前達…!」
子供達の声援がクロウの心に火をつける…さらに
「クロウ・ホーガン!!」
「っ…メタルナイト…?」
制御塔の上に遊海が現れ、激を飛ばす!
「クロウ!お前の守りたいものはなんだ!どうしてお前は戦い続けてきた!!それを思い出せ!!」
「オレの守りたいもの…」
その瞬間、クロウの脳裏に様々な光景がよぎる…マーサハウスの子供達、遊星やジャック達シグナーの仲間…その思いがクロウのオリジンを呼び起こす!
「守りてぇ…あいつらの笑顔を!あいつらに受け継がれるピアスンの遺志を!!!」
クロウは思いを叫ぶ…その思いは確かに届けられた!
「それでこそだ!さぁ…長き眠りから目覚めろ!!シグナーの新たな竜よ!!熱き思いに応え…その姿を現せ!!」
遊海が右腕を掲げる…それに呼応するようにクロウ達の痣が輝きを放つ!
「なっ…赤き竜の痣が…!なんだ!?」
ブラックバードのモニターにコードが表情され一枚のカードが射出される…それはブラックバードの解析不能だったブラックBOXに封印されしカード「ブラックフェザードラゴン」!
「何…!?これは一体どうなっているんだ!?」
「ブラックバードの中にカードが!?」
遊星達も驚きを露わにする…どんな天才でもDホイールにカードを隠すなど考えつかないだろう。
「『ブラックフェザードラゴン』…そうか、だからピアスンは…!!ピアスン!アンタの想い!確かに受け取ったぜ!!!」
クロウはピアスンの本心に気がついた…その思いをボルガーに伝える為に黒き翼は再び空に舞い上がる!!
「オレはレベル4の『黒槍のブラスト』にレベル4の『東雲のコチ』をチューニング!!」
4+4=8
「黒き疾風よ!秘めたる思いをその翼に現出せよ!!シンクロ召喚!舞い上がれ!『ブラックフェザードラゴン』!!」
黒き羽が舞い散り、鴉の姿をした黒竜が舞い上がる!!
「あれが…シグナーの5体目のドラゴン…クロウの新しいエースなのか!」
遊星達が決闘の成り行きを見守る中、クロウは「エンジェルバトン」で手札を補充しその効果を発動させる!
「オレはカードを一枚伏せる!!」
『血迷ったか!?ならば引導を渡してやる!やれ!「ブラッドメフィスト」!!』
ブラッドメフィストが魔力弾を放ちクロウのライフを消そうとするが…その攻撃はブラックフェザーに吸収される!
『なんだと!?』
「見たかボルガー!これが『ブラックフェザー』の効果!ダメージドレイン!戦闘ダメージ以外のあらゆるダメージを『ブラックフェザー』は攻撃力を糧に吸収する!!オレはさらに伏せカードを戻し400ダメージを受ける事で墓地の『精鋭のゼピュロス』を特殊召喚!さらに『ゼピュロス』はカードをセットする事で破壊され、オレは『ブラッドメフィスト』の効果で300ダメージを受ける!!」
『こ、これは…無限ループだと!?』
セット→ダメージ→バウンス→特殊召喚→ダメージ→セット→破壊→ダメージ→バウンス……そのループが繰り返されるたびにブラックフェザーの白き翼が赤黒く染まっていく…
『その身を盾にクロウを守り…その身を削っていく…』
「ボルガー!アンタだって本当はわかってた筈だ!ピアスンはDホイールをただ完成させたかったんじゃない!!子供達に伝えたかったんだ!『自分達にも何かが成し遂げられる事』を!シティの力を借りずに自分達の手で!だからピアスンは援助を断ったんだ!!!」
『なっ…!?まさか私は…思い違いをしていたというのか…!?』
クロウの言葉を聞いてボルガーの身体に電流が走った…ただ夢を追い続けたピアスン、金と疑念に支配されたボルガー…2人の些細なすれ違いがあの悲劇を生んでしまったのだ。
「そうだ!ピアスンは言っていた!『私には彼らの気持ちが痛い程解るんだ…親を失った彼らの心の痛みが…行き場を失い、自分が生まれた理由もわからない苦しみが…』…「ブラックフェザードラゴン」は痛みを吸収しその身を黒く染めていく…このドラゴンはピアスンと同じだ!サテライトの悲しみを…痛みをその身に背負ってサテライト初のDホイールを完成させる事で、サテライトの解放を目指したピアスンと…!だからこそ「ブラックフェザードラゴン」はピアスンの元に舞い降りた!!ボルガー!!この「ブラックフェザー・ドラゴン」の黒く染まった翼は、ピアスンがお前から受けた痛みだ!!お前もその痛みを感じろ!!『ブラックフェザードラゴン』のさらなる効果を発動!下がった攻撃力を元に戻す事で相手モンスターの攻撃力をその数値分ダウンさせる!!ブラック・バーストォ!!」
ブラックフェザードラゴンの攻撃力は2800…そしてゼピュロスにより400、ブラッドメフィストにより300…計700ポイントずつ下がり攻撃力は0、そしてブラッドメフィストの攻撃力は2800、黒き翼の怒りを受けた悪魔は苦しみの呻き声をあげる!!
「『ブラックフェザードラゴン』で攻撃力0となっている『ブラッドメフィスト』を攻撃!ノーブル・ストリーム!!」
赤黒い炎の玉が悪魔、そしてボルガーを飲み込んだ…。
『ピアスン…お前がそこまで子供達の事を思っていたとは…!名声に目が眩んでいたのは…私の方だった…すまない…!』
ボルガーLP0
クロウWIN!
「やった〜!やったねクロウ兄ちゃん!!」
「『ブラックフェザードラゴン』かっこよかったよ!!」
ライティングが終わり子供達と遊星がクロウに駆け寄る
「クロウ…いいデュエルだった」
「ああ、ありがとよ遊星…」
遊星とクロウは拳を突き合わせた…
『クロウ…私は自首するよ…自分の犯した罪を償わなければな…すまなかった』
「ボルガー…それはピアスンの墓に言ってやってくれ」
ボルガーは項垂れながら謝罪する…親友の真意を知り彼は深く傷ついていた…。
「その必要はないぞボルガー…直接謝ればいい」
『えっ…』
「メタルナイト…?」
「何を言って…?」
クロウ達のもとに遊海が現れる
「何を言っているんだ、ピアスンは死んでいる…直接謝るならば冥界にでも行かなければ無理だろう、今は冗談を言っていい場面ではないぞ!」
ジャックが遊海に正論を叩きつける
「ジャックにしては正論をいうな…だが
「なんだと?まさか…!」
「俺を誰だと思ってるんだ?この町を守る正義のヒーローメタルナイトだ!…さて、感動の再会といこうか…ピアスン!!」
『あ〜…その…久しぶりだなクロウ、ボルガー…』
「「「『はっ!?』」」」
メタルナイトが少し避ける…その後ろには火傷の跡が残り、右足が義足になっているものの元気な姿のロバート・ピアスンその人が立っていた。
「ピ、ピアスン!?本当に本物なのか!?」
『そんな…お前は作業場の爆発で…!』
あまりの事態に動揺するクロウとボルガー…死んだはずの人間が出てくれば無理もないだろう…。
『いや…私も流石に死んだと思ったんだが…この人が…な?』
ピアスンは頭を掻きながら遊海を指差した…。
〜3年前〜
「ゴホッ…酷い火事だな…!」
《急いでくださいマスター!要救助者1名です!》
クロウがブラックバードを脱出させた直後、まだ名の知られていなかった遊海とアヤカがピアスンの火事現場へと救出に赴いていた…。
《要救助者発見!広範囲に火傷を負っています!急ぎましょう!!》
「わかってる!どりゃ!!」
遊海は鉄骨を投げ捨てピアスンを救出する
「おい!大丈夫か!俺がわかるか!?」
『うぅ…』
「まだ息がある!足は駄目だが命は助かりそうだ!急いでKCの病院へ連れて行くぞ!来い!『閃光竜』!!」
《キュオオオン!!》
遊海は閃光竜に乗り飛翔する…その風圧により作業場は完全に崩壊した…。
SideOUT
『それでシティに連れていかれた私はずっと治療を受けていたんだ…すまなかった2人とも…』
『ピアスン…謝るのは私だ!すまなかった!!お前の想いを私は…!』
ボルガーはピアスンの前に跪く
『ボルガー…気にしないでくれ、これからは一緒に最高のDホイールを作っていこうじゃないか…!』
ピアスンはボルガーの肩に手を置いて彼を許した…本来なら果たされる事のなかった友情が再び結ばれたのだ。
「ピアスン…オレ…オレは…グスッ!」
『泣くなよクロウ…悪かったなマーカーもこんなに増やして…だけどお前の叫びは聞こえたよ、やっぱり「ブラックフェザードラゴン」はお前にこそ相応しいドラゴンだ…』
「えっ…?」
ピアスンはクロウの頭を撫でながらブラックフェザーを譲り渡した。
『あのカードはな、ブラックバードに乗ったデュエリストが本当に強い願いを口にした時に取り出せるようにしてあったんだ…「子供達の笑顔を守る」、その願いを忘れるんじゃないぞ…クロウ』
「ああ…ああ!忘れねぇよピアスン!!オレはもっと強くなる!そして子供達の笑顔を守る決闘者になるんだ!」
クロウは涙を拭いピアスンをまっすぐ見つめた…
『ああ、応援してるよクロウ!』
「でも…その前に1発殴らせろピアスン!!心配かけやがって〜!!」
『おいおい!?怪我人に暴力はやめてくれ!?』
そしてクロウとピアスン…2人の朋友は黒き羽の下で再会を果たしたのだった…。
「…もはやなんでもアリか」
「ジャック、考えるだけ無駄だ…あの人に常識は通用しないさ…」
あまりの超展開に思考を放棄した遊星とジャックなのだった。
数週間後…
カチャカチャ…ギュイイン…!
ボルガー&カンパニー社改め「ボルガー&ピアスン・カンパニー」の工場にて運び込まれた遊星号とブラックバードの新たなエンジンの積み込みが行われていた。
「ピアスン社長代理!リック副社長!新型エンジンの積み込みが完了しました!ブルーノ君のプログラムとの相乗効果で出力が200%アップしています!これならどんな相手とも闘えるでしょう!これがシュミレートとテスト走行の結果です!」
『うん、ありがとう!どうだい?クロウ、遊星?』
作業員が端末をピアスンへと渡す…2人の隣では遊星達4人と遊海がその様子を眺めていた。
「想像以上だピアスン…これならオレ達のプログラムも最大限に活用できる…!」
「でもいいのかよリック?ボルガーがパクられて経営が苦しいんじゃ…」
新たなエンジンの出来に目を輝かせる遊星…クロウはその様子を見て心配そうに副社長のリックに話しかける。
ボルガーはライティングデュエルのあとにセキュリティに自首した…容疑はピアスンに対する
「ええ確かに社長が逮捕された事で我が社の信頼は落ちてしまいましたが…社長たっての願いです、問題ありませんよ!」
ボルガーは自首する前に『ピアスンとクロウ達にせめてもの罪滅ぼしを』と言う事でピアスンを臨時社長に、遊星達に新しいエンジンを提供したのである。
「ん?…ボルガーを社長から解任しないのか?」
遊星がもっともな疑問を口にする…しかしそれを聞いたリックは柔らかい笑顔でこう答えた。
「確かに社長は罪を犯しました…それは紛れもない事実です、しかしそれ以上に私達社員は社長がDホイールに懸けてきた熱意を…愛を知っています、社長が罪を償うまで私達…そしてピアスンと共に会社を守っていきます!」
『それに遊海さんのおかげで海馬社長との繋がりもできたからね!人の噂も75日というだろう?地道に活動して信頼を取り戻していくよ!』
実はピアスン、治療を受けながらKCの研究所に通い詰めさらなる知識と技術を手に入れていた、死にかけてもただでは起きない…不屈のメカニック魂である。
『それに私は所詮「夢追い人」…経営の方はからっきしでね、リックやボルガーに頼らないと少し危ないからね!』
「ハッ…アンタらしいぜピアスン!」
「ありがとうピアスン、リック…オレ達はその思いを無駄にはしない!必ず勝利を掴んでみせる!」
遊星とピアスン、リックは固い握手を交わす…こうしてWRGPの準備が整ったのだった。
『そういえば遊海、翠さんの「ヴァイオレット・キュイラッシェ」の調子はどうだい?なんなら新型エンジンつけようか?』
「いや、まだ完全に乗りこなした訳じゃないから今度でいいよ…それにしてもよかったなピアスン…頑張れよ!」
『ああ、貴方のおかげで私は仲間達との時間を取り戻す事ができた…本当にありがとう…!私はボルガー達と一緒に新たなDホイールを開発していくよ!』
遊海とピアスンは固い握手を交わす…この後ボルガー&ピアスン・カンパニーは再び人気を取り戻し、真の世界一企業になったのはそう遠くない未来の話である。
──────────────────────
そしてところは代わり遊星達の拠点・ポッポタイムのガレージ…そこには遊星やジャック、クロウ、龍亞&龍可にアキ…そして遊海にブルーノ、シグナーメンバーが勢揃いしていた。
なお、遊星やクロウはライティングスーツを新調していた…日頃の節約の賜物である。
「うわ〜!カッコいい〜!!」
「遊星!新しいスーツ似合ってるわよ!」
「ああ、ありがとうアキ」
「フン、馬子にも衣装だな!」
「ハッ…オメェはいつもと変わらねぇじゃねぇか!」
「俺は常にライティングスーツだ!これ以上のデザインなどありはしない!」
既に準備は万端…遊星達は気力に満ち溢れていた…。
「えっと…5D's…?これがチーム名なの?」
龍可が遊星達のライティングスーツとDホイールに貼り付けられたステッカー見て尋ねる
「ああ…ってもジャックが言い出したんだけどな?」
「貴様が提案した『噴水広場仲良し連合』よりはマシだろうが!!」
…クロウ達の命名センスは皆無だった。
「5D'sって事は5つの『D』でしょ?デスティニーのD…デストロイのD…デスのD…ダークのD…デッドヒートのD…デビルのD…それからみんな大好きブルーノちゃんのあいたぁ!!?」
盛大なボケを披露したブルーノの頭にジャックの鉄拳が炸裂する!
「馬鹿者!5D'sは赤き竜の基本形の5つの痣と5体のドラゴンから取った『D』だ!!…俺達は赤き竜の痣により集められた絆で結ばれている!その象徴が『5D's』だ!」
「いい名前じゃないかジャック、お前達の絆を象徴するいいシンボルだ」
遊海はそのチーム名に賛成する
「フッ…流石だな遊海、目の付けどころが違う」
「確かにおれには痣はないけど龍可の痣のおかげで皆に会えたんだもんな〜」
「龍亞、お前は龍可と二人で1人前だ!」
「「え〜!?そんなぁ!」」
「ジャック!僕の名前も入ってないよ!どうせならチーム5D'r withブルーノちゃ、あいたぁ!!?」
「お前は黙っていろ!」
再びの鉄拳が炸裂した!
「冗談なのに〜…そういえば遊海は?彼もシグナーの仲間だろ?仲間外れは酷いんじゃないかい!?」
「「「あっ」」」
ブルーノの疑問を聞いた龍亞兄妹てアキが声をあげる…遊海を入れれば6D's(7D's)になるが、それでは語呂が悪いだろう…
「いいんだよブルーノ…俺は伝承には無い『イレギュラー・シグナー』だ…そもそも痣があるだけでシグナーなのかもわからないしな…」
遊海は自分の痣を見つめる…遊海の痣は先日の騒動もあり未だに赤く腫れている。
「遊海さん…その件について話があるんだ」
「遊星?どうしたんだ?」
遊星が真剣な顔で遊海に話しかける…。
「遊海さん…いや、『決闘王』白波遊海にお願いしたいんだ…どうか、オレ達『チーム5D's』と共にWRGPで戦ってほしい…!」
「えっ…!?」
「「「「「えぇ〜!?」」」」」
ポッポタイムに5D'sの叫びが響き渡った…。