転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話   作:S,K

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こんにちは!S,Kです!お待たせしました!WRGP編の開幕です!

それでは最新話をどうぞ!


第3章 後半 決闘疾走混沌都市 WRGP
開幕!WRGP! VSチームユニコーン〜忍び寄る闇〜


〜???〜

 

ここは時空の果て、生命の存在しない暗黒の世界…その場所に叫び声…否、咆哮が響く

 

『ガアアアアアアア!!!!』

 

痛み、そして苦しみを背負い破壊の限りを尽くす一人の男…血の涙を流し、その身をボロボロにしてなお、その狂乱は鎮まる事はない…。

 

 

『グウアアアア!!!…オオオオオ!!!』

 

拳の一撃で大地が砕け、手刀でビルの残骸が真っ二つになる…そして世界は紫の極光に包まれた…。

 

 

 

 

 

 

 

『ハァ…ハァ…』

暴れ続ける事数日…男は平静を取り戻した、しかしその周囲は草木1本生えない死の土地に変貌していた…だが、男の背後に人影が現れる。

 

『何故…ついてきた…ゾーンの…指示か…?』

 

「違う、今は感覚共有はしていない…でも貴方が心配だったから来た…」

現れた人影…銀髪の少女は男にコートを掛ける、男の身体はボロボロ…服もボロ布になっていた…。

 

『心配…か、アンドロイドに心配されるなんて…オレも落ちたものだ…』

 

「身体から異常なエネルギーを計測…何故こんな事を…?」

 

『レイン恵…これから話す事はゾーンを含め誰にも話すな…いいな』

 

「はい」

 

『いい子だ…さて、何処から話したものか…オレの背負った【罪】を…』

 

 

…………

 

 

 

「痛い…私の中の、ナニカが…」

 

男から話を聞かされた銀髪の少女・レイン恵はアーククレイドルのあてがわれた部屋で胸を抑えていた。

 

 

「この話をマスターが聞いたら、きっと…とても悲しむ…でも…私は…」

男は自分に堅く口止めをした…話せば自分はきっと解体されてしまうだろう…レインはそう結論した…だが…。

 

「私は…貴方に死んでほしくない…」

レインはアーククレイドルのデータベースにアクセスする、これは誰からの命令でもない…「レイン恵」が思考し行動している…彼女が『心』を獲得した証だった。

 

 

「これは…この力なら…!」

レインは膨大なデータの中から一つの可能性を見つけだした、それは僅かな…本当に小さな光だった。

 

「マスター…どうか、私の勝手な行動を許してください…マスターの友を救う為に…!」

レインは決断し準備を始めた…これは、誰にも気づかれてはならない極秘任務…その名は…。

 

 

 

『ミッション・ファントムスナッチ』

 

 

 

 

 

──────────────────────

チーム5D 's結成から1週間が経った、そしてWRGPまで残り5日…今日は予選グループの発表、そしてデュエルレーンの練習走行…プラクティスの日である。

遊海と翠は遊星達と共に発表会場を訪れていた。

 

 

「聞いてはいたけど…参加チームが多いな…」

 

「本当ですね〜…」

遊海はモニターを見ながら呟く…参加チームは全32チーム、それを4チーム1ブロックとしてA〜Hの8ブロックに分け総当たり戦を行う…そして各ブロック上位2チーム計16チームが本戦トーナメントに進めるのだ。

 

 

「それにしても…最初の相手が『チームユニコーン』だなんて…」

 

「まったくだぜ…ツイてねぇなぁ…」

5D'sは予選Aブロック…最初の相手はレセプションパーティーで出会った、チーム・ユニコーンだった。

 

 

「アメリカのアトランティス大会や数々の大会で勝利している強豪チーム…今回の優勝候補だ…!」

 

「フン…優勝候補だろうがなんだろうが…俺達の前に立ち塞がるなら叩き潰すだけだ!」

遊星の説明にジャックは強気に応える

 

「フッ…ジャック言う通りだ、優勝を目指すなら必ず強豪と当たるからな…」

 

ピンポンパンポーン…

 

【お知らせします、まもなくプラクティス交代時間です…次のチームは準備をお願いします、チーム・5D's、チーム・ダイナソー&ビークル、チーム・カタストロフ……】

 

「おっと!遊星、プラクティスの時間だぜ!」

 

「プラクティス?」

クロウの聞き慣れない言葉に龍亞が反応する

 

「ええ、Dホイールの走行練習の事なの、マシンの調子やコースの走り具合を確かめられる時間よ!」

 

「その通りだアキ、よく勉強しているな!」

 

「ありがとう遊星!私もチームの一員だもの!」

 

 

 

 

 

ところは代わりスタジアム…遊星達3人はデュエルレーンに、アキと龍亞兄妹、遊海達は観客席でその様子を眺めている…そこに見知った顔が現れる。

 

「よぉ!お前達!遊星達の応援か?」

 

「あ!牛尾のおっちゃん!どうしたの?セキュリティの制服着て…?」

デュエルレーンから牛尾が声をかける、普段のYシャツ姿ではなくセキュリティの制服を着ている。

 

 

「ああ、今回の大会はDホイールのオートパイロットは禁止だからな、トラブルがあっちゃ困る…だからこうして昔の格好で引っぱり出されてるのさ!」

 

「なるほど〜」

牛尾は胸を叩く

 

「大変ですね牛尾さん…」

 

「ん?なんて事はねぇよ遊海、それよりお前は走らなくていいのか?お前も『メタルナイト』名義で出るんだろ?」

手にした端末でメンバー表を確認した牛尾が遊海に問い掛ける。

 

「ああ…一応俺は『秘密兵器』ですから、なるべく人目に触れない方がいいでしょう…」

 

「なるほどな…の割には普通に出歩いて大丈夫なのか?いくら活躍したのが18年前とはいえ、お前の顔を覚えてる奴もいるんじゃないか??」

 

「それが…不思議と大丈夫なんですよ、どうも『赤帽子』を被ってないと『白波遊海』として認識されないみたいで…」

今の遊海の格好はスニーカーにジーンズ、上は長袖Tシャツにレザージャケット、頭には何も被っていない…この姿だと親しい人間以外にはどこにでもいる若者に見えるのだ…。

 

「不思議な事もあるもんだ…ま、出るのを楽しみにしてるぜ!じゃあな!」 

 

そう言って牛尾は去って行った、他の場所の見回りに行ったのだろう…。

そうして時間は過ぎていく…ボルガー社製のエンジンにピアスンが改良を加えた新エンジンの加速、そして遊星とブルーノの新プログラムのマッチングは凄まじく、その性能は飛躍的にアップしていた…。

 

 

ピンポンパンポーン…

【お知らせします…まもなくプラクティス交代時間です、次のチームは準備をお願いします…チーム・フォーチュンアーク、チーム・ユニコーン、チーム・太陽、チーム・レッドアイズ……】

 

 

「お前達〜!そろそろ戻ってこ〜い!」

 

「もう時間か…ジャック!クロウ!ピットに戻ろう!」

遊海に声を掛けられた遊星が2人に呼びかける。

 

「うむ、そうしよう!クロウ!戻るぞ!」

 

「ちょっと待ってくれ!あと1週だけ回ってくる!」

 

「おい!クロウ!?」

クロウはスピードを上げてレーンに戻る…ピアスンとボルガー、そして自分の手で完成した新ブラック・バードに乗っていたいのだろう…だが、そこで事件が起きる…クロウがスピードを上げた瞬間、ピットからDホイールが飛び出してきたのだ!

 

「っ!?ヤベェ!!」

 

クロウはハンドルをきるが間に合わずに接触、相手のDホイールは転倒し大破して…

 

 

 

 

 

 

 

 

『タイム…タイラント!!!』

 

 

 

《グオオオオン!!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ…!?」

 

「…監督のいう事は聞くもんだぞクロウ…危なかったな」

気づけばブラックバードは遊海に受け止められていた、しかもピットとレーンの合流地点の直前で…

 

 

「あれ、オレ…今ぶつかって…??」

 

『おい!?なんだよ今の!?!?俺今アンタとぶつかったよな!?』

路肩にDホイールを停車させたDホイーラー…チーム・ユニコーンのブレオが駆け寄ってくる…。

 

「お前…チームユニコーンの!?すまねぇ!オレも何がなんだか…!」

 

「「クロウ!!」」

 

『『ブレオ!!』』

 

遊星とジャック、そしてユニコーンのアンドレとジャンも駆け寄ってくる…

 

 

「お前達…今、接触しなかったか!?」

 

『オレもぶつかる所を見てたぜ、だが…傷1つねえ…メタルナイト…アンタ何したんだ!?』

赤髪のアンドレがDホイールを検めてから遊海に尋ねる…

 

「すまないなチーム・ユニコーン、俺の友が迷惑をかけた…ちょっとしたマジックさ!()()()()()()()()()()()()()()!」

 

『あ、ああ…方法はどうあれアンドレを救ってくれたんだ、感謝する(まさか、見抜かれた…のか!?)』

ユニコーンの司令塔であるジャンは動揺する。

 

今の接触事故はジャンの指示のもとで起きた()()()()()()()だったのだ。

 

 

「すまない、久しぶりだなチームユニコーンの…」

 

『俺はアンドレ!金髪がブレオで黒髪がジャンだ!久しぶりだな遊星!…今のは流石に少しヒヤッとしたぜ…』

チームユニコーンが改めて自己紹介する

 

「すまねぇ…オレが終了時間を無視したから…」

 

『まぁ、良いって事よ!少し俺も早く出ちまったからな!それに怪我も破損も無いし!…いい突っ込みだったぜ?』

クロウはブレオに謝罪しブレオはそれを軽く受け入れた。

 

『それで…どうかな?今の騒ぎのお詫びと言ってはなんだけど…オレとデュエルしないか遊星?』

 

「えっ?」

アンドレの思わぬ提案に遊星は聞き返す

 

『今はチームユニコーンのプラクティスだ、別に問題は無い…それにオレも興味があるんだ、この街のキングの実力にね?』

アンドレはお茶目にそう伝える

 

「メタルナイト…」

 

「やってこい遊星、世界のレベルを知れるいいチャンスだ!ま、練習デュエルだな!」

 

「…わかった、相手になろう!」

 

『そうこなくっちゃな!』

遊海の後押しを受けた遊星はデュエルを受け入れ、アンドレとライディングデュエルを始めたのだった。

 

 

 

 

Sideチーム・ユニコーン

 

『おい、ジャン!話が違うじゃねぇか…!』

 

『すまないブレオ…メタルナイトがいるのは計算外だった…!』

アンドレと遊星のデュエルを観戦する為に観客席に上がったブレオとジャンは話し合っていた…。

 

 

『しかも…今の事故がワザとだと見抜かれたようだ…』

 

『なっ…!?な、何者なんだよ、メタルナイトは…!』

 

『…ブレオ、今はアンドレのデュエルに集中しよう、遊星の情報を集めるんだ…』

 

『ああ…』

 

 

『(メタルナイトから感じたあの感じ…以前に何処かで…?)』

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

「まったく…無茶をするなよクロウ、さっきのは中々大変なんだからな…?」

 

「す、すまねぇ遊海…助かりました…」

観客席に戻ったクロウは変身を解いた遊海に叱られていた…。

 

「だが遊海!お前はいったい何をしたのだ?俺達は相手がクラッシュした瞬間を見たぞ!?」

 

「うん、でも…その瞬間に時間が巻き戻ったというか…なかった事になったというか…?」

ジャックとブルーノは遊海に事の真相を尋ねる…

 

「ブルーノ、正解だ…()()()()()()()()()

 

「「「「「ええ〜っ!?」」」」」

その場にいた翠以外の人間は驚きをあらわにする…

 

「時間を巻き戻しただと!?そんな事どうやって!?」

 

「このカードの力を限定的に使ったのさ」

遊海はジャック達の見慣れない黒いカードを見せる…

 

「『超銀河眼の時空龍』…?何なのだこのカードは??」

 

「このカードは『時間の流れを支配する龍皇』…その力を使って()()()()()()5()()()()()()()()()んだ、その間にクロウの前に割り込んでブラックバードを止めたんだよ…」

 

「あなたって人は…本当に規格外ね、もう驚くのに疲れちゃったわ…」

アキは呆れたように呟く…

 

「でも…なんでそんな事できるのに使わなかったんだよ?その力があれば今までのピンチだって…」

 

「まぁ、そうなんだけど……あっ、ヤベ……」

 

ドッターン!

 

「「「遊海!!?」」」

話していた遊海は突如ふらついて仰向けに倒れてしまった…

 

「さ、流石に…無理が…、短時間なのに全部エネルギー持ってかれた……ダメだこりゃ……」

 

《…世界の時の流れを変えるのには相当なリスクが掛かります、連発はできないですし、しばらく身動きが取れなくなるんです…なので悪用する事は考えないでくださいね?》

 

「「「あ、ああ…」」」

遊海の言葉を引き継いだアヤカの言葉にジャック達は首を縦に振るしかなかった…。

 

 

「遊海さん…大丈夫…?」

 

「大丈夫よ龍可ちゃん!少し休めばよくなるから…もう、他にも方法がありましたよね?遊海さん…」

 

「と、咄嗟に使えたのがあれだけだったんだよ〜…」

翠はしばらくの間、目を回してしまった遊海を膝枕していたのだった。

 

 

 

 

 

 

アンドレと遊星のデュエルは白熱していた、遊星は連続スピードスペルや『ジャンクアーチャー』を召喚しアンドレを攻めるが…天性のプレイング技術を持ったアンドレは『おとぼけオポッサム』と『森の番人グリーンバブーン』のコンボ、『素早いモモンガ』からの『ベヒーモス』といったパワーデッキで逆に遊星を追い詰める…。

そしてデュエルは終盤…アンドレは攻撃力3000を誇る『ナチュル・ガオドレイク』を、遊星はエースである『スターダスト・ドラゴン』を召喚する!

 

 

『ようやくお出ましか!だが攻撃力は『ガオドレイク』には及ばない!』

 

「それはどうかな!リバース罠『シンクロストライク』を発動!『スターダスト』のシンクロ素材は『デブリドラゴン』・『スピードウォリアー』・『シールドウィング』の3体!よって攻撃力は4000となる!バトルだ!『グリーンバブーン』を攻撃!シューティングソニック!」

 

『なんだと!?うぉっ!?』

スターダストによってグリーンバブーンは破壊されアンドレのライフは残り100となる、そして『スピードワールド2』にはスピードカウンターを取り除いて手札のスピードスペルを捨て800ダメージを与える効果がある…勝負は決まったかと思われたが…

 

 

ピンポンパンポーン…

 

【プラクティスタイム終了の時間です、各チームはすぐにライディング、ライディングデュエルを終了してください…繰り返します…】

 

「なっ…!?時間切れ…!」

 

『プラクティスタイム終了…デュエルは中断だな、いいデュエルだったぜ遊星!』

決着の着く直前、無情にもプラクティスタイムは終了…デュエルは引き分けとなったのだった。

 

 

 

「…チーム・ユニコーン…恐ろしい相手だった…!予選…いや、本戦でもオレ達の最大のライバルになるかも知れない…!」

 

「フン、臆するな遊星!奴の速攻パワーデッキはこの俺が叩き潰してくれる!!」

デュエルが終わりチーム・ユニコーンは予選での再戦を約束し去っていった…遊星達はチームユニコーンの実力を確認し脅威を感じるが…。

 

 

「何を見てたんだ?お前達、…戦いは既に始まってるんだぞ?」

 

 

「白野さん…?それはどういう事ですか?というか大丈夫なんですか!?」

頭に冷えピタを貼った遊海が少しフラつきながら歩いてくる…。

 

「問題ない…遊星、お前達が見たのはあくまで『チームユニコーン』の『アンドレ』の戦い方だけだ…あいつらは世界で活躍するトップ『チーム』だ、今回見た事だけがあいつらの実力とは考えるなよ?」

 

「白野さん、つまり…オレは試されたという事ですか…?」

 

「ああ、更に言えば最初の接触事故もおそらく()()()()()()、チーム戦は情報戦だ…戦う前にどれだけ情報を集められるかが勝利を左右する事になる…それは覚えておいてくれ…わかったな?」

 

「はい…!」

 

「わかったならいいさ…さて、今日は戻ろう!大会に向けて体調を整えておけよ!」

遊海の話を聞いて遊星達は気持ちを引き締める…そしてその日は解散となったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ククク…「チーム・ユニコーン」が恐ろしい相手ねぇ?』

 

『羨ましいな…あいつらは本当の恐怖を知らないらしい…!』

 

『いずれ…真の恐怖を味わってもらうぜ?そしてあの若い男…アイツ曰く、奴は先に始末しないといけないらしいな…おい、準備は?』

 

『ああ、チンピラにカードを渡してある…いつでもいけるぜ?』

 

『ならいい…強い奴はさっさと潰すに限るぜ…!』

 

闇はそこまで迫っていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

「遊海さん、先に戻ってますね!」

 

「ああ!俺は海馬社長のところに行ってから戻るよ、出場の挨拶しとかないと!」

遊星達と別れた俺は海馬コーポレーションへと向かう…本来なら実名出場が原則のWRGPに『鋼の騎士』名義で出させてもらう挨拶に行くのだ。

 

 

 

「よく来たな遊海、今回の大会は実質お前の復帰戦となる…楽しみにしているぞ?」

KCを訪れた遊海は海馬と面会する、その顔は少し嬉しそうな表情を浮かべていた。

 

「ありがとうございます海馬社長!まぁ、俺はあくまで遊星達のサポートに回るつもりです…何事もなければですけど」

 

「…()()()()()()()

海馬は腕を組み遊海を見据える

 

「その可能性はあります…社長、大会により一層の警備をお願いします、俺も準備はしてますが…対処しきれるかわからないので…」

 

「フン…わかった、準備しておく…無茶はするなよ?」

 

 

 

 

「さて…用事も済んだし家に帰ろう!今日の夕飯は何かな?」  

 

《たしか今日はハンバーグだと言ってましたよ!》

 

「そっか!じゃあ早く戻らないとな!」

 

 

ブォンブォン! ドルルルル!!

 

 

「な、なんだぁ?」

 

海馬社長との面会を終えた遊海は夜のハイウェイを疾走する…そんな中、ハイウェイにけたたましい爆音が響く…遊海の後ろからは改造されたDホイールが迫ってきていた…。

 

 

「大会の前に一人暴走かよ…しょうがない、止めるか!」

遊海は少し速度を落とし改造Dホイールを走らせる男に声をかける

 

 

 

 

「おい!近所迷惑だからエンジン吹かすなよ!そんな爆音出してたらすぐにセキュリティに捕まるぞ?」

 

『うるせー!どんな走り方しようとオレっちの勝手だろ!止めたきゃ力づくで止めてみやがれ!!』

Dホイールの男は遊海にそう啖呵を切る…

 

「(先に鎧を着ておくべきだったか…しょうがない)なら力づくで止めてやるよ!デュエルだ!」

 

『かかってこいよ優男!オレっちの走りは止められねぇぜ!!』

 

 

【ライディングデュエルが開始されます、一般車両は退避してください…繰り返します…】

機械音声と共に海からデュエルレーンが迫り上がり、ルートが構築されていく…

 

 

 

 

 

 

『「ライディングデュエル!アクセラレーション!!」』

 

 

遊海LP4000

チンピラLP4000

 

特殊ルール

ライディングデュエル

 

スピードワールド2常時発動

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」SP0→1

「『闇竜星─ジョクト』を召喚!」 

瘴気に覆われた亀に似た竜が現れる ATK0

 

「そして『ジョクト』の効果発動!手札の『光竜星─リフン』と『魔竜星─トウテツ』を墓地に送り、デッキからそれぞれ攻撃力0と守備力0の竜星モンスターを特殊召喚する!現れろ!『水竜星─ビシキ』!『地竜星─ヘイカン』!」

水の竜脈から生まれた亀に似た竜と大地の竜脈から生まれた虎に似た竜が現れる DEF2000  ATK1900

 

「俺はレベル3の『ヘイカン』とレベル2の『ビシキ』にレベル2の『トウテツ』をチューニング!」

 

3+2+2=7

 

「魔を纏いし竜よ!その凶暴なる力で全てを薙ぎ払え!シンクロ召喚!『邪竜星─ガイザー』!」

闇を纏った破壊竜が現れる ATK2600

 

「カードを1枚伏せてターンエンド!」

遊海LP4000  SP1

ガイザー 伏せ2 手札2

 

 

 

『チィ!いきなりヤバめなモンスター出してくんじゃねぇよ!』

 

「ならさっさと降参しなよ!今ならセキュリティにも黙っててやるから!」

 

『嫌なこった!こちとら金もらってやってるんだからな!!』

 

「(金…?誰かに頼まれた…?)」

 

 

 

『オレっちのターン!ドロー!』

『オレっちのフィールドにモンスターがいない時!「インヴェルズの魔細胞」は特殊召喚できる!』

背中に悪魔のマークが刻まれたテントウムシが現れる DEF0

 

「『インヴェルズ』だと?…中々に珍しいテーマだな…」

 

『オレっちはさらに「魔細胞」をリリースする事で「インヴェルズ・ギラファ」をアドバンス召喚!このモンスターはレベル7だがインヴェルズモンスター1体のリリースで召喚できる!』

ギラファノコギリクワガタのハサミを持った捕食者が現れる ATK2600

 

『「ギラファ」の効果発動!インヴェルズモンスターをリリースしてこのモンスターを召喚した時!相手モンスターを墓地に送りオレっちはライフを1000回復する!プレデター・サクリファイス!』

 

「無駄だ!『ガイザー』は相手のカード効果の対象にならない!よって効果は不発だ!」

 

《ギャオオン!!》

ガイザーが恐ろしい咆哮を轟かせる…それに戸惑ったギラファは効果を中断してしまう。

 

『なら攻撃力で超えてやる!「Sp-スピード・エナジー」発動!オレっちのスピードカウンターは2!よって「ギラファ」の攻撃力がエンドフェイズまで400ポイントアップする!』

 

ギラファATK2600→3000

 

『バトルだ!「ギラファ」で「ガイザー」を攻撃!プレデター・キャノン!!』

ギラファの右腕からエネルギー弾が発射されガイザーに直撃する!

 

『どうだ!お前の切り札を破壊してやった《ギャオオン!!》なんだと!?』

爆煙の中から無傷のガイザーが飛び出す!

 

「悪いな!シンクロ素材となった『ヘイカン』の効果で『ガイザー』は戦闘破壊されないんだ!…まぁ、ダメージは受けるけどな?」

 

遊海LP4000→3600

 

『チッ!カードを2枚伏せてターンエンド!』

ギラファATK3000→2600

 

チンピラLP4000 SP2

ギラファ 伏せ2 手札1

 

 

 

 

 

「俺のターン!ドロー!」SP2→3

「『風竜星─リフン』を召喚!」

緑色の中華風の竜が現れる ATK0

 

「そして『ガイザー』の効果発動!『ホロウ』を破壊する事で『ギラファ』を破壊する!龍脈の影縛り!」

ガイザーの影が広がりホロウとギラファを引きずり込み破壊した!

 

『なっ!?オレっちの「ギラファ」が!?』

 

「そして『ホロウ』の効果発動!このモンスターが破壊された時、デッキから『炎竜星─シュンゲイ』を特殊召喚!さらにリバース罠オープン!『竜星の具象化』!自分のモンスターが破壊された事で同じくデッキから2枚目の『ヘイカン』を特殊召喚!さらに墓地の『光竜星─リフン』の効果発動!自分のモンスターが破壊された時、このモンスターを墓地から特殊召喚できる!現れろ!龍脈の化身達!」

炎の獅子竜、地の虎竜、光の魚竜が現れる ATK1900  ATK1900  DEF0

 

『ぎぇ…!一気にモンスターが!?』

 

「そして俺はレベル4の『シュンゲイ』とレベル3の『ヘイカン』にレベル1の『リフン』をチューニング!」

 

4+3+1=8

 

「星を流れる龍脈よ!その力を束ね輝く星を具象化せよ!シンクロ召喚!『輝竜星ーショウフク』!」

輝きを纏った虎柄の竜が現れる ATK2300→2800

 

 

『これ以上好き勝手にさせるか!リバース罠「奈落の落とし穴」!「ショウフク」は破壊して除外だ!』

召喚されたショウフクは異次元の穴に吸い込まれる!

 

「むっ!?やるな…だがダメージは受けてもらう!バトル!『ガイザー』でダイレクトアタック!龍脈の息吹!」

星の力を宿したブレスが直撃する!

 

『ぐおお!?』

 

チンピラLP4000→1400

 

「カードを1枚伏せてターンエンド!」

遊海LP3600 SP3

ガイザー 伏せ1 手札1

 

 

 

 

『つ、強い…!(オイオイオイ…!こんなヤベー奴を倒せって無理だって!?あのヤローなんのつもりだよ!?)』

このチンピラ、溜まり場でたむろしていた所に見慣れない男が現れ遊海(変装)の写真と金、そしてカードを渡され襲うように依頼されたのだ…。

 

「どうした?これで終わりか?」

 

『う、うるせぇ!まだ終わっちゃいねぇぞ!!』

 

 

 

 

『オレっちのターン!ドロー!!…このカードなら…!』

カードを引いたチンピラは笑みを浮かべる…

 

『オレっちは「Sp-エンジェルバトン」を発動!2枚引いて…手札の「インヴェルズ万能態」を墓地へ!そしてさらに「Sp-ヴィジョン・ウィンド」を発動!墓地のレベル2「インヴェルズ万能態」を特殊召喚!』

ミノムシ型の悪魔が現れる DEF0

 

『そしてリバース罠「侵略の波紋」を発動!ライフを500払って墓地から蘇れ!「インヴェルズの魔細胞」!』

再びテントウムシが現れる DEF0

 

チンピラLP1400→900

 

「リリース素材を揃えた…出てくるのは奴か…!」

 

『オイ!優男!オレっちの手にいれた切り札モンスターを見せてやる!!オレっちは「魔細胞」、そして「万能態」を2体分のリリースとして…出やがれ!全てを喰らい尽くす暴食の悪魔!「インヴェルズ・グレズ」!!』

《ゴオオオ!!》

2体の生け贄を噛み砕き、ヘラクレスオオカブトの意匠を持つ巨大なる悪魔が現れる ATK3200

 

 

「インヴェルズの切り札モンスター…!だがこの感じは…!」

召喚された悪魔を前に遊海は強い闇の気配を感じとる…

 

《マスター!そのモンスターに強い闇の力が籠められています!!既にソリッドビジョンではなく実体化しています!!》

 

「なんだと!?お前!そのカードを使うのをやめるんだ!!」

アヤカの分析を聞いた遊海はチンピラに叫ぶ!

 

『はっ…!今更ビビりやがったか!この攻撃で大人しく負けやがれ!!「グレズ」の効果発動!ライフを半分にする事で自身以外のカードを全て破壊する!!捕食王の雷!!』

 

チンピラLP900→450

 

「やめろぉぉぉ!!!」

 

《グガァァァ!!!!》

遊海の静止も間に合わずグレズの力が解き放たれフィールドにカミナリが降り注ぐ…そのカミナリはモンスターや伏せカードだけでなくデュエルレーンのアスファルトや防音壁にも降り注ぎ破壊していく、それだけではなく…

 

『な、なんだよこれ!聞いてな…ぎゃああああ!!?』ビシャーン!!!

 

《マスター!意図的にカードが暴走させられています!!》 

 

「ちぃ!やっぱり!!うぉ…!!」

降り注ぐカミナリを避けながら遊海は舌打ちする…闇のカードは生半可な決闘者では扱えない、もし使ってしまえばカードは暴走し、手に負えなくなるだろう…

 

 

「くっ…!はっ!だっ!!」ギャン! キキー!! 

遊海は降り注ぐカミナリを避け続ける…!

 

「くっそ…!精霊変し《ガアアアアア!!》しまっ…!」

精霊アーマーを纏い状況を打開しようとしたがグレズの力が増し…

 

ピシャアアアン!!

 

「がああああああ…!!!」 ギャン…ズガーン!!

 

《マスター!!》

カミナリは遊海に直撃…コントロールを失ったDホイールは壁に衝突しクラッシュした…。

 

 

双方決闘続行不可 

 

Duel Draw…

 

 

 

 

 

《オオオ……》

 

「ガッ…ゴフッ…!」

デュエルが強制終了されグレズは消え去る…あとに残されたのは破壊されたデュエルレーンと倒れ伏す2人の決闘者だけだった…。

 

《マスター!大丈夫ですか!気をしっかりもってください!!》

 

「ちく…しょ…奴ら…め…!卑怯な…!!」

遊海は薄れゆく意識の中、今回の黒幕に思い当たる…大方、正攻法では遊海を倒せないと考え力技で干渉したのだろう…。

 

「覚えて…やがれ…プラシ…ド…」

そのまま遊海の意識は闇に包まれた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side三皇帝

 

 

 

『何をしているのだ馬鹿者!!』

 

三皇帝のアジトにホセの怒号が響き渡る…それは同じく三皇帝の一人であるプラシドに向けられていた…。

 

『そう怒鳴るなホセ、オレは何もしていない…チンピラが手にいれたカードに()()()()データの不備があっただけだろう?』

プラシドは飄々とホセの怒りを受け流す…罪悪感は無いようだ。

 

 

『あれほどシグナーには手を出すなと言っただろう…!』

 

『フン…知らんな、だいたいオレ達はサーキットを浮かびあがらせる事が目的のはずだ…オレはその障害を排除しただけだ!』

 

『減らず口を…!ここにゲイザーがいればなんと言ったか…!』

 

『フン…いない奴の事を言ってもどうにもならないだろう?』

そう言ったプラシドは踵をかえす

 

『…何処へいく』

 

『フン…アンタには関係ないだろう』

プラシドはそのまま瞬間移動した。

 

『キッシッシ…プラシドは反抗期かな?』

 

『黙れ、ルチアーノ』

 

『おぉ怖っ…』

 

 

『(見ているがいいホセ…オレの完璧な計画でこの街をカオスに陥れてやるよ…!)』

 

 

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

「う…うぅ……」

 

「遊海さん…?遊海さん!!翠さん!遊海さんが!!」

 

「遊海さん!私がわかりますか!!遊海さん!!」

 

「遊…星、翠…ここ、は…」

意識が覚醒する、俺は…チンピラとデュエルして…傷はほぼ治ってるけど全身包帯だらけだ…

 

 

「ここはネオドミノ病院です!…デュエルレーンで倒れてる遊海さんともう1人が見つかって2日経ってます…いったい何が…!」

 

「暴走するチンピラを止めようとしたら…闇のカード使って来やがった…!アイツは…!『そっからは俺が話すぜ遊海』牛尾さん…」

遊海が身体を起こしかけたところでカーテンが開いて牛尾が現れる。

 

『相手のチンピラは別の病院だ…そいつ曰く、見知らぬ男に金とカードを渡されてお前を襲えって言われたらしいぜ、まぁ…そいつとお前のDホイールにデュエルログは残ってなかったらしい…いつかのゴーストの時みたいにな…』

 

「っ…そう、ですか…イタタ…」

全身を包む痛みと倦怠感に遊海は再びベッドに倒れ込む…

 

 

「遊海さん…それだけではないんだ…、クロウがクラッシュ事故を起こしてしまった…幸い怪我は翠さんが治してくれて大事はないんだが…ブラックバードの修理が間に合いそうにない…!」

遊星は悔しそうに遊海に伝える

 

「そうか…なら、俺が出るしかな《無理です、マスター…》アヤカ?」

 

《ホイール・フォートレスは先のデュエルで大破…修復には最短3日はかかってしまいます…何より機体がまだ治安維持局に…》

 

「な、なんてタイミングの悪い…!」

遊海は手で顔を覆う…こうなれば物語どおりにいくしかないだろう…

 

「遊星…アキに聞いてみろ」

 

「えっ…」

遊星は目を丸くする…

 

「まだ初心者とはいえアキも立派なDホイーラーだ…それに翠と一緒に特訓も積んでる…やってみる価値はあるだろう?」

 

「わかりました…!クロウとアキを説得してみます!!」

遊星は病室を飛び出していった…。

 

『遊星の奴、なんとかなりゃいいが…俺もセキュリティに戻るぜ?お前なら心配ないだろうが…早くあいつらを導いてやれよ?』

 

「ええ…ありがとうございます牛尾さん」

 

 

「遊海さん…」

 

「すまない翠、不覚だった…まさか一般のデュエリストに闇のカードを渡すなんてな…!」

遊海は布団を握りしめる…

 

「相手がその気なら…俺にも考えがある…!」

遊海の瞳には静かな怒りが宿っていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

3日後〜WRGP当日〜

 

 

ついにやって来たWRGPの開催日…会場となるスタジアムは熱狂に包まれていた、そしてお馴染みのピンクスーツに超デカイリーゼントを持つ男・通称MCが実況し始めた…。

 

 

『レディース&ジェントルマン!ついにこの日がやってきた!!第1回WRGP…ワールド・ライディングデュエルグランプリの開幕だ〜!!』

 

「「「わあああ!」」」

 

『そして大会の開催にあたり…KC社長・海馬瀬人氏の開会の言葉だ!!』

MCの言葉と共に会場の立体映像に海馬社長の姿が映し出される!

 

 

『よくぞ集まった!歴戦のライディング・デュエリスト達!18年前…この町は未曾有の災害に見舞われ2つに分断された…だが!長い時間をかけようやく復興を遂げた!!…そしてこのグランプリは全ライディングチームの頂点を決める戦いとなる!最強の称号を掴み取れ!新たな決闘者達よ!!!』

 

「「「オオオオオ!!」」」

会場がさらなる熱狂に包まれる…ここに戦いの火蓋は切って落とされた…。

 

 

 

 

『海馬社長!見事な演説をありがとう!…では早速予選を始めていくぞ!予選はこのスタジアムを中心にネオドミノシティ内4ヶ所で行われる!最初の戦いは注目の対戦カード!ネオドミノシティの英雄!チーム5D 's対今大会の優勝候補!チーム・ユニコーンだ!さぁ…準備を頼むぜ!!』

 

 

 

 

「遊星!ユニコーンの一番手はアンドレだって!」

 

「コッチはもちろん遊星だよね?」

情報収集をしていたらしい龍亞と龍可が遊星に尋ねる

 

「いや…一番手はジャック、二番手がアキ…そして最後がオレだ」

 

「えっ!?どうして!」

 

「いやな…オレは最初、アキを一番手にしようとしたんだけどよ…」

クロウが肩をすぼめる

 

「奴のパワーに対抗できるのは俺だけだ!」

 

「という事でジャックのパワーデッキでアンドレに対抗しようという訳さ!」

 

「なるほどー…」

ジャックとブルーノの言葉に龍亞が頷く

 

「遊…白野さんはそれでよかったの?監督さん的に…」

龍可が心配そうに包帯(見せかけ)を巻いた遊海に話しかける

 

「ああ…パワーにはパワー、悪くない選択だ…だが気をつけろジャック、相手は世界で戦ってきた決闘者だ…油断はするなよ?」

 

「うむ、そこで見ているがいい白野!ジャック・アトラスの完全勝利を!!」

 

「ああ、頑張ってこい!(…すまん、ジャック…治療はちゃんとするから…)」

 

「?」

苦笑いを浮かべる遊海を不思議そうに見つめる龍可なのだった…。

 

 

 

そして2人のDホイーラーがスタート地点に並び立つ!

 

『両チーム準備が整ったようだ!さぁ…ライディングデュエル…スタートだ!』

 

 

『「ライディングデュエル!アクセラレーション!!」』

 

 

 

 

デュエルダイジェスト ジャック対アンドレ

 

 

ついに始まったチーム5D 'sのファーストデュエル…先攻は一時的にスピードを底上げする『オーバーブーストシステム』によってアンドレが勝ち取った。

アンドレは攻撃を誘うように2体のモンスターを召喚…後攻となったジャックは挑発に乗って『レッドデーモンズドラゴン』を召喚、アンドレの『一角獣の使い魔』を攻撃する…しかしその攻撃は読まれていた、アンドレは『使い魔』の効果を発動し自分の場の『モノケロース』を除外する事で攻撃を回避…さらに自分のモンスターがバトル中に戦闘破壊以外で場を離れた時に発動できる罠カード『異次元のバリア─ロスト・フォース』により『レッドデーモン』の攻撃力分のダメージを受けてジャックのライフは大きく削られてしまう。

…アンドレのデッキはパワーデッキではなくジャック対策のパワーメタデッキだったのだ。

 

その後、ジャックはなんとか立て直しを図りアンドレのライフを2700まで削ったものの追い詰められ『スピード・ワールド2』の効果でダメージを受け、そのまま敗北…しかもそれだけではなくマシントラブルでタイヤがロックされクラッシュ…ジャックはデュエルレーンに投げ出されてしまう…!

 

ジャックLP0

 

 

「大変だ…!WRGPのルールブックによると周回遅れになる度に相手のスピードカウンターは増えてボク達のスピードカウンターは減っていく…そしてスピードカウンターが無くなったらボク達の負けだ!!」

 

「「「な、なんだって!?」」」

ブルーノの読み上げた文章に遊星達は騒然となる、既にジャックは満身創痍…ホイール・オブ・フォーチュンは自走不可…しかもレース中のホイーラーに他の人間が触れればその時点で失格となってしまう…!

 

 

「くそぉ!どうにもならないのかよ…!」

クロウが拳を握りしめる…

 

「ジャック!頑張ってくれ!!」

 

「お願い…ジャック…!」

遊星達は祈る思いでジャックに声援を送る…!

 

「白野さん…!ジャックが…」

 

「心配するな龍可…大丈夫」 

遊海は龍可を安心させるように優しく頭を撫でる…

 

「ジャックはこんなところで倒れる奴じゃない…それに…()()()()()()()()()()

 

「え…?あぁ!?」

龍可の視線の先…そこにはなんとかピットまで辿り着いたジャックの姿があった…。

 

 

 

 

Sideジャック

 

「(くそっ…!ジャック・アトラスともあろう男が…こんな敗北など…!)」

ジャックは朦朧とする意識の中Dホイールを押し続ける…

 

「(Dホイールが重い…!ここしばらく筋トレをサボったツケか…!まだだ…俺達の戦いはこれからなのだ…!!)」

たくさんの人々の声に混じって仲間達の声援が聞こえてくる…ジャックはその声援に応える為に足を進める。

 

「(遊海にあれほどの啖呵を切っておいて何というザマだ…!俺は…遊海を…決闘王を超える男だ!!)」グン!

 

ジャックはより一層力を込める…その時

 

「(…!Dホイールが少し軽くなった…!これならば…!力を貸してくれ…遊星!クロウ!アキ…!!)」

ジャックの思いが力となり速度が上がる…そしてジャックはスピードカウンターを2つ残しピットへと辿り着いたのだった…。

 

 

 

 

《(許せジャック殿…主からの指示だ…!)》

ジャックの頭上…そこには少しだけDホイールを持ち上げるトフェニの姿があった…。 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

なんとかピットに辿り着いたジャックはアキへとタスキを託し倒れ込んでしまう…

 

「ジャック!大丈夫か!!」

 

「っ…遊星、クロウ…」

 

「たく…ヒヤヒヤさせやがって…!」

 

「楽にしてろ、治療するから…」

 

「後は…頼む…!」

ジャックはそのまま気を失った…

 

 

 

 

 

 

 

アキ対アンドレ

 

ジャックからタスキを受け取ったアキはアンドレとのデュエルに臨む、先攻はアキが勝ち取った…先のオーバーブーストによってアンドレの速度が上がらなかった事でチャンスが回ってきたのだ。

先攻を取ったアキは『フェニキシアンクラスターアマリリス』を召喚し地道!アンドレのライフを削ろうとする…しかしアンドレはその天性のプレイングで『Sp-ダッシュ・ピルファー』を発動、自身の効果で守備表示となったいた『アマリリス』のコントロールを奪い、限定的な蘇生効果を内蔵した『ユニバード』と共に除外されアンドレのエースである『サンダーユニコーン』を呼び戻されてしまい、ライフを半分にされてしまう。

だがアキも負けてはいない、アキは自分のエースである『ブラックローズドラゴン』を召喚、さらに遊星から託された奇策によって『スターダスト・ドラゴン』を召喚する。

だが…アンドレの壁は高かった、『ブラックローズ』による攻撃は罠カード『次元均衡』により躱され、さらに『ブラックローズ』は除外され破壊した『サンダーユニコーン』が復活…さらに返しのターンで『Sp-スピード・エナジー』で攻撃力4600となった『サンダーユニコーン』によって『スターダスト』は破壊されてしまう。

そしてアキのライフは残り800…『スピードワールド2』のデッドラインとなってしまう…だが、アキはただでは終わらなかった、ダメージを受ける刹那『ウィキッド・リボーン』を発動…自分のライフを糧として遊星へと『スターダストドラゴン』を繋ぎ敗北した。

 

アキLP0

 

 

 

「ごめんなさい遊星…私、何もできなかった…!」

 

「アキ姉ちゃん!そんな事ないよ!」

 

「そう、龍亞の言う通りだよアキ」

 

「龍亞…ブルーノ…」

ピットに戻り落ち込むアキをピットクルーのブルーノ達が慰める、そしてアキの繋いだバトンは遊星へと繋がれる!

 

「アキ…お前の気持ちは受け取った…あとは任せろ!」

遊星はジャック、そしてアキの想いと共にデュエルレーンへと向かった…!

 

 

 

「遊星…ごめんなさい…!」

 

「アキさん、泣かないで…」 

遊星を見送ったアキはDホイールから動けなかった…自分の無力を痛感し悔し涙を流すアキ…しかし

 

 

「アキちゃん!お疲れ様!いいデュエルだったわよ!」

 

「翠、さん…」

観客席から降りてきた翠がアキに声をかける

 

「そうだぜアキ…観客席をみてみろよ!」

 

「クロウ…あっ…!」

顔を上げたアキが観客席を見上げるすると…

 

『うおぉぉ!アキー!よかったぞぉぉぉ!!』

 

『アキ〜!カッコよかったわよ〜!!』

 

 

「パパ…ママ…ありがとう…!」

観客席ではアキの両親が声を張りあげアキを労っていた…父の英雄に至っては巨大な「IZAYOI」旗を振り回している…その様子に心を打たれた観客やMCも惜しみない拍手をアキに送ったのだった。

 

 

 

 

 

遊星対アンドレ

 

「アキ…お前が『スターダストドラゴン』と共に残した思い…無駄にはしない!!」

 

そしてついに対峙するアンドレと遊星…遊星はアキの残した『スターダスト』、そして一時的に攻撃力を上げる事のできる『マックスウォリアー』で『サンダーユニコーン』を撃破する。

対してアンドレはカードを2枚フィールドに伏せただけでターンを終える、その目的はスピードカウンターのある状況で、お互いのフィールドのモンスターを全て破壊し1体につき300のダメージを相手に与える『Sp-ジ・エンド・オブ・ストーム』を仲間に残す為の布石だった。

しかし遊星はそれを見逃さない、遊星はフィールドの魔法・罠を墓地に送り特殊召喚できる『カードブレイカー』を特殊召喚し『ジ・エンド・オブ・ストーム』の破壊に成功する。

 

しかし…それすらもアンドレの作戦だった。

 

アンドレが伏せたもう1枚のカードは自分の伏せカードが破壊されるとお互いに2000ダメージを与える『マジック・マイン』アンドレは敗北こそしたものの遊星のライフを半分にしたのだ…!

 

アンドレLP0

 

 

「(なんとかアンドレは倒す事ができた…だが…ここからが正念場だ…!)」

遊星は気合いを入れ直す…アンドレを倒す事はできたがその表情は暗い、それはアンドレの今までの戦績に理由がある。

 

5D'sから1万ポイントのライフを奪ったアンドレ…その実力は凄まじいもので、なんと1人でライディングデュエル30人抜き、さらにチームユニコーンはアンドレ1人で100連勝している…それゆえにブレオとジャンのデータを集める事ができなかったのだ。

 

「(ここからは何が起きるかわからない…だが、オレは自分のデュエルをするだけだ!!)」

 

 

 

 

遊星対ブレオ

 

続いて始まったブレオとのデュエル…ブレオは遊星の攻撃を防ぎつつ、エースモンスターである『ボルテック・バイコーン』を召喚するが…『スピードワールド2』のスピードカウンターを10個取り除く効果で『バイコーン』を破壊してしまう、しかし…これがブレオの狙い、『バイコーン』が破壊された事で効果が発動…遊星とブレオのデッキが7枚も削られてしまう…ブレオのデッキは『デッキ破壊』デッキだったのだ。

 

デュエルは続く…遊星はブレオの思惑に気付き速攻で決着を着けようとするがブレオは『ボルテックバイコーン』を何回も蘇生…その後遊星は『スターダスト』を破壊されながらも『ジャンクデストロイヤー』を召喚、ブレオを撃破したが残りライフは1000、残りデッキ4枚まで追い詰められてしまった。

 

ブレオLP0

 

 

 

遊星対ジャン

 

そして…ついに訪れたジャンとのデュエル、ジャンは攻撃力2800を誇るチーム・ユニコーンの象徴『ライトニングトライコーン』を召喚し『ジャンクデストロイヤー』を破壊しようとするが、遊星は先ほど墓地に送られていた『シールドウォリアー』により戦闘破壊を防ぐ…だがジャンは『スピードワールド2』のバーン効果を使い遊星のライフを削り切ろうとするが…またも墓地から『ダメージイーター』のモンスター効果が発動し遊星はライフを1600まで回復する…墓地が第2の手札とはよく言ったものである。

 

返しのターン、遊星は『スピードワールド2』の破壊効果を使い『トライコーン』を破壊…ダイレクトアタックでダメージを与える事に成功するがジャンは罠カード『波動再生』を発動しダメージを半減、さらに『トライコーン』が復活してしまい、遊星は攻撃力1900以上のモンスターとの戦闘では破壊されない『ロードランナー』を召喚しターンを終えた。

しかしジャンは攻撃力1800の『ライノタウルス』を召喚し『トライコーン』と共に遊星のフィールドを一掃、さらに『ライノタウルス』の効果で2回目のダイレクトアタックを仕掛ける…だが遊星は罠カード『調和の結晶』を発動しエースである『スターダスト』を復活させジャンのライフを削る…そして遊星は返しのターンで『ライノタウルス』を破壊し、ジャンのライフを700まで削るが3回までライフを1000に戻す効果のある罠カード『サウザンドクロス』に阻まれてしまう。

そしてジャンの攻撃をなんとか凌いだ遊星だったが…残りデッキはあと2枚…遊星達の脳裏に『敗北』の二文字がちらつく…しかし、まだ諦めない漢がここにいた…!

 

 

「遊星!!この俺にいつまで腑抜けたデュエルを見せるつもりだ!!」

 

「ジャック…!」

遊海の治療により復活したジャックが声を張りあげる

 

「アキ!ブルーノ!お前達もだ!可能性があるのなら諦めるな!!俺達ができるのは遊星を信じる事だけだ!」

 

「ジャック…フッ、その通りだ!デッキがあるのならデュエリストはまだ戦える!諦めるな!限界を超えて勝利を掴め!遊星!!」

 

「ジャック…遊海…!そうだ!遊星頑張って!!」

 

「負けないで!遊星」

ジャックと遊海の言葉を聞いた龍亞が声をあげる…その声援は遊星の魂に熱い炎を灯す!

 

「(みんな……そうだ、これはオレ一人の戦いじゃない!オレ達みんなの戦いなんだ!オレ達の信じる勝利への可能性を……掴んでみせる!)オレのターン…ドロー!!」

遊星がカードを引く、そのカードは…

 

「(シンクロ召喚を超えたシンクロ…『アクセルシンクロ』……あの日からオレはずっとデュエルの新たな可能性を捜し求めて来た…アクセルシンクロの謎はまだ解き明かせてはいない、だが…これが俺の導き出した答えだ!)オレは『シンクロン・エクスプローラー』を召喚!その効果により墓地の『ジャンクシンクロン』を特殊召喚!そしてレベル2の『エクスプローラー』にレベル3の『ジャンクシンクロン』をチューニング!」

 

2+3=5

 

「集いし星が新たな力を呼び起こす!光さす道となれ!シンクロ召喚!来い!『ジャンク・ウォリアー』!」

遊星の場にもう1体のエースであり切り込み隊長である戦士が現れる!

 

「そして…これがオレの答えだ!『Sp-スピード・フュージョン』を発動!『スターダストドラゴン』!『ジャンクウォリアー』!お前達の力を…今こそ一つに!!」

 

『なっ…!融合召喚だと!?』

冷静沈着なジャンですら驚きをあらわにした…彼らのデータでは遊星はシンクロ召喚以外を使った事がなかった…想定外の出来事だったのだ…!

 

「融合召喚!!現れろ!『波動竜騎士ドラゴエクィテス』!!」

遊星の場に巨大な翼と槍を持った竜騎士が現れた!

 

 

そして遊星は『ドラゴエクィテス』で『トライコーン』に攻撃を仕掛けるがジャンは戦闘ダメージを相手に与える罠カード『リターンダメージ』を発動する…しかし、『ドラゴエクィテス』は効果ダメージを反射する効果がありジャンに2回目の『サウザンドクロス』の効果を

使わせる事に成功する。

対してジャンは遊星のデッキ切れを狙う事を諦め、『トライコーン』の効果によりデッキを削る『ボルテックバイコーン』を蘇生、自爆特攻で勝負を決めようとするが遊星の十八番である『くず鉄のカカシ』に阻まれる。

 

そして遊星のターン…デッキ最後のカードは『Sp-オーバー・スピード』、遊星は『スピードワールド2』の効果を使い『サウザンドクロス』の効果を使い切らせ『オーバー・スピード』の効果を発動…スピードカウンターを使い切ったが墓地から直接攻撃効果を持つ『ラピッドウォリアー』を手札に加えジャンに最後の攻撃を仕掛ける…だが攻撃はジャンの罠カード『波動障壁』に阻まれライフを900まで減らされてしまう、そこで遊星は無念のターンエンド…だが、その瞳は未だに勝利を諦めていなかった。

 

 

『オレのターン…ドロー!』

 

「リバース罠オープン!『サモン・タックス』!モンスターが召喚・特殊召喚された時、そのプレイヤーは召喚されたモンスターの攻撃力の半分のダメージを受ける!」

 

『このタイミングで『サモン・タックス』…もう1枚のカードは『リフレクトバリア』…何かを狙っている…?』

ジャンは遊星の行動に疑問を抱く、自分が何もせずにターンを終えればその時点で5D'sの敗北は決定する…しかし

 

『何を考えているかは知らないが…その作戦を潰させてもらう!私は『Sp-タイラントフォース』を発動し!さらに『スピードワールド2』の破壊効果を発動する!「サモンタックス」は破壊だ!』

 

「その瞬間を待っていた!!『ドラゴエクィテス』の効果発動!墓地の『スターダストドラゴン』の効果をコピーする!ヴィクテム・サンクチュアリ!!」

 

『なっ…!しまったぁ!』

『スピードワールド2』の効果は無効にされ『サモンタックス』は破壊を免れる、それだけではなく『ドラゴエクィテス』はエンドフェイズに帰還…そして『リフレクトバリア』の効果でジャンにダメージを反射する事でライフを削り切る事ができる…遊星は召喚への道を掴んだのだ…!

 

『迂闊だった…だがこれで終わりだ!「幻角獣ヒュプノコーン」を召喚!』

 

「『サモンタックス』の効果発動!700のダメージだ!」

 

『まだだ!「ヒュプノコーン」が相手フィールドにのみモンスターがいる時に召喚された事で「サモンタックス」を破壊!さらにリバース罠「連鎖旋風」を発動!カード効果でフィールドのカードが破壊された時!フィールドの魔法・罠カードを2枚破壊する!伏せられた「リフレクトバリア」「くず鉄のかかし」を破壊!さらに『タイラントフォース』の効果で合計900のダメージだ!』

ジャンによる怒涛の猛攻によって遊星のライフは300、フィールドには守備表示の『ラピッドウォリアー』のみの状況まで追い詰められてしまう…!

 

『(遊星をここまで追い詰める事ができた…だが…!)』

遊星のフィールドを蹂躙したジャンは遊星を見る…ヘルメットの隙間から見える遊星の目にはまだ勝利への希望があった。

 

『(コイツ…なんて目をしてやがる、フィールドには守備表示のモンスター1体、オレがターンエンドすれば勝利は確定する…しかし……オレは…!!)』

ジャンは迷っていた、このままターンを終えれば『チームユニコーン』は勝利する事ができる、しかし遊星は1人で絶体絶命の状態からチームをここまで追い詰めた…ジャンは思ってしまったのだ…遊星のモンスターを破壊する事で「完全勝利」をしたいと…。

 

『(不動遊星…オレはこんなにもデュエルで燃えた事は1度もなかった…今のオレにあるのはお前に勝ちたいという渇望のみ…!だが…それは…!)』

ジャンは『自分の勝利』と『チームの勝利』の間で揺れ動く…しかし、その葛藤はすぐに終わる事になった…それは…

 

 

『ジャン!!』

 

【Go!JDAN】

 

『アンドレ…ブレオ…!!』

ピットスペースからブレオがジャンの背中を押したのだ…いつも冷静沈着でチームの事を考えていたジャン…そのジャンの唯一のワガママを仲間である2人が後押ししたのだ…!

 

 

『ありがとう…お前達…!遊星!受けてみろ!オレの攻撃を!!』

 

「望むところだ!!」

 

『「ヒュプノコーン」で「ラピッドウォリアー」を攻撃!!』

 

『『いけ〜!!ジャン!!』』

ジャンの渾身の一撃が遊星に迫る…しかし、遊星もその背中に仲間達の想いを背負っている!!

 

「みんながオレに繋いでくれた最後の1枚…それがこのカードだ!!手札から『牙城のガーディアン』の効果発動!このカードを墓地に送り…『ラピッドウォリアー』の守備力を1500ポイントアップする!!」

 

ラピッドウォリアーの守備力は1700までアップ…そしてヒュプノコーンの攻撃力は1400、そしてジャンのライフは300…長きに渡ったチームユニコーンと5D'sの…遊星とジャンの戦いはここに決着を迎えたのだった。

 

 

ジャンLP0

 

チーム5D's WIN!!

 

 

 

 

 

 

『な、何という事だぁ!!12000ライフを削り、激戦に次ぐ激戦を潜り抜け最後までコースに立ち続けていたのは…!チーム・5D's!不動遊星!!まさか!まさかの!奇跡の大逆転勝利を掴み取った!!』

 

「「「わあああああ!!」」」

興奮したMCがチーム5D'sの勝利を伝える…観客席も歓声に沸いている!

 

 

「遊星!よくやった!!」

 

「ジャック!もう大丈夫なのか!?」

ピットに戻った遊星にジャックが駆け寄る

 

「うむ!お前の勝利と白野の治療で痛みなど吹っ飛んだ!」

 

「やったな!遊星!!」

 

「「遊星〜!」」

 

「クロウ…龍亞、龍可…!」

他のメンバーも遊星に駆け寄り勝利を喜びあう中…チームユニコーンがピットスペースに訪れる…。 

 

 

「ジャン…」

 

『オレ達はこの試合の為に万策を尽くしてきた、そして…アンドレもブレオも勝利の為に全力を尽くした、だがオレは最後の最後に…チームの勝利を忘れ「お前と勝負したい」という渇望に似た誘惑に負けた…策士が策士に徹し切れなかった!…これはチーム・ユニコーンの敗北じゃない、オレの敗北だ…』

 

「ジャン…」

敗北に落ち込むジャン…しかしそこに彼の仲間が声をかける…

『な~にカッコつけてんだよジャン!』

 

『気にすんな!勝負は所詮時の運…こんな事もあるさ!』

 

『ブレオ…アンドレ…すまない!オレはお前達の努力を無駄にした…!』

 

『無駄なもんか!このデュエルでお前は新しい経験をしただろう?』

仲間に謝罪するジャンだったが…ブレオとアンドレはまるで気にしていなかった…それどころか彼らは笑顔だった。

 

『お前はようやく出会ったんだろ?本当に勝ちたい相手に!』

 

『ああ…その通りだ…!』

この戦いは両チーム共に得る物がある戦いだった。

5D'sはチーム戦の大切さを…

 

ユニコーンはデュエルの楽しさを…

 

新たな事を学んだ両チームは大きな成長を遂げるだろう…。

 

 

「チームユニコーン!お前達はオレの出会った中で一番強いチームだった!また決勝で会おう!」

 

『ああ遊星…!望むところだ!!』

グランプリの予選は総当たり戦…ユニコーンとはまた戦う可能性があるのだ。

 

「チームユニコーンの健闘を祈って!」

『チーム5D'sとの再戦を願って!』

 

「『決勝で会おう!!』」

 

「「『『おー!!』』」」

 

2つのチームは円陣を組んでお互いの健闘を称え合った…こうしてチーム5D'sは勝利を掴んだのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Sideチームユニコーン

 

 

『いい奴らだったなジャン!』

 

『ああ…次は正々堂々決着を着けたいものだ…』

 

『そうだな!オレの連勝記録も切れちまった…次は取り返してやるぜ!』

 

戦いを終えて控え室に戻るジャン達…そこに…

 

 

「チームユニコーン…いいデュエルだったな!」

 

『アンタは…5D'sの…?』

通路で革のジャケットを着た青年がチームユニコーンを待ち受けていた。

 

「お前達に感謝する…これで遊星達はチームプレイの大切さを学ぶ事ができた、次はもっと手強くなるぞ?」

 

『ああ…望むところさ!そういえばなんでアンタがここに…?』

 

「なに…今の戦いの礼をしにきたのと…忠告するためさ」

 

『忠告…?なんの事だ?』

ジャンが青年に尋ねる

 

「お前達の次の相手はチーム・カタストロフだが…情報は知ってるか?」

 

『カタストロフ…5D'sと同じく新しいチームだが、目立った情報はないな、その相手がどうしたんだ?』

 

「奴らは『闇の力』を持っている可能性が高い…充分に注意してくれ」 

 

『闇の力…?』

 

『待て、なぜアンタがそんな事を教えてくれる?』

 

「言っただろ?『お礼』だよ…ありがとうな、遊星達の最初の相手がお前達でよかった!…じゃあな!」

そう言って青年は去っていった…。

 

 

『なんだったんだ…今の?』

 

『まさか…今の人は…』

 

『ジャン?どうしたんだ?今の奴を知ってるのか?』

アンドレがジャンに尋ねる

 

『気のせいかもしれないが…似た人を知っているんだ…ありえない話だがな…』

 

『ありえない…?誰なんだよそれ?』

 

『…伝説の決闘者…「赤帽子」』

 

『「赤帽子」〜?ありえねぇよジャン!あの人は死んだんだろ?』

 

『…そうだな…気のせいか…』

 

Sideout

 

 

 

 

 

「それじゃあ…5D'sの初勝利を祝って…カンパーイ!!」

 

「「「カンパーイ!!」」」

ポッポタイムのガレージでは遊星達の祝勝会が行われていた、メンバーは5D'sメンバーに何故か狭霧、カーリー、それから噴水広場のカフェのティファニーが混じっていた。

 

 

「でもジャックとアキ姉ちゃんが負けた時はハラハラしちゃったよ!」

 

 

「龍亞!貴様俺にケンカを売ってるのか!?」

 

「落ち着けよジャック!事実なんだしよ!」

 

 

「アキさん!カッコよかったよ!」

 

「ありがとう龍可…私ももっと頑張らなくちゃ…!」

 

 

「遊星!これを見て!これがマシントラブルの原因だよ…」

 

「これは…オレ達でなんとかなりそうだな!」

 

思い思いに歓談する遊星達…そこに…

 

 

 

『たった1回勝っただけでお祭り騒ぎね…5D's』

 

「シェリー!?」

突然、ガレージにシェリーが訪れる…

 

「貴女!何者よ!?」

カーリーがシェリーに尋ねる

 

『始めましての人もいるわね…私はシェリー・ルブラン、チームシェリーのDホイーラーよ…まぁ遊星と遊海に振られたせいでミゾグチと2人で戦うハメになったけどね?』

 

「なーんだ弱小チームじゃない!2人だとライフは8000だし負けちゃったのよね?」

 

「カーリー…ジャーナリストならしっかり情報の確認をしなくちゃな…チームシェリーは初戦をシェリーの3人抜きで勝利してるんだよ…おめでとうシェリー」

 

「えっ!?嘘でしょ〜!?」

遊海の言葉にカーリーは叫ぶ…ジャックを気にしすぎて情報を見ていなかったようだ。

 

『ありがとう遊海、私は負ける訳にはいかないわ…イリアステルの事を調べる為に…』

 

「イリアステル…!」

そして遊星とシェリーはイリアステルの情報を交換する。

 

ゴースト事件の首謀者やアカデミアに現れたルチアーノがイリアステルである事。

 

そして…遊星とシェリー達が飛ばされた先にいた者がイリアステルのボスかもしれないという事…遊星は危ない事に首を突っ込む事をやめさせようとするが…シェリーは首を横に振った。

 

『遊星、私は目的を果たす為に止まれないの…それに気になる事もあるわ…遊星、貴方も気をつけてね?』

そう言ってシェリーは去っていった…。

 

 

 

 

 

 

 

「オレはまだ…自分の限界を超えられた訳じゃない…でも、必ず辿り着いてみせる…!『アクセルシンクロ』に…!」

シェリーの話を聞いた遊星は改めてアクセルシンクロの習得を考え始める。

 

「(しかし…シンクロモンスター同士でのシンクロ召喚…そんなモンスターがいるんだろうか…?)」

 

 

「(悩んでるな遊星…大丈夫、お前なら必ず辿りつけるさ、だから…心配するな)」

悩む遊星…遊海はそれを影から見守っていたのだった…。

 


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