転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話 作:S,K
シティから少し離れた荒野…そこに近未来的な外観の建物が建っている。
その会社の名前は「モーメント・エクスプレス開発機構」…そこに向かう
「それじゃあ遊星、成功を祈る…何かトラブルがあったら手筈どおりにな」
「わかりました、もしもの時は頼みます…!」
「失敗なんてしないわ…必ずイリアステルの正体を暴いてみせる…!」
「心配しなくても大丈夫だよ遊海!天才の2人が行くんだ、必ず成功するさ!いってきま〜す」
3人の人影は車で建物へと向かった…。
イェーガーとのデュエルから4日後…俺は遊星、シェリー、ブルーノの3人と共にモーメント・エクスプレスの近くを訪れていた…目的はイリアステルに関する情報の奪取、その為に治安維持局のデータを調べ、ボルガー&ピアスンカンパニーの伝手を借りて新型エンジンの検査員として遊星達は潜入する事になったのだ。
なお、俺は万が一の際の救出要員である。
「無茶はするんじゃないぞ…遊星、ブルーノ、シェリー…」
Side遊星
オレ達はイェーガーから得た情報を頼りにイリアステルの正体、そして目的を探る為にイリアステルに関係を持つ会社、モーメント・エクスプレスに潜入した…この潜入でイリアステルの目的を暴いてみせる…!
『あなた方がボルガー&ピアスンカンパニーの検査員の方ですね?えっとミスター…』
「ダニエルです」
「ティモシーです」
「エヴァよ」
現れた白髪眼鏡の男に遊星達は偽名で答える、今回は敵地への潜入任務…正体は隠すのが賢明である。
また遊星にはマーカーが刻まれているが化粧上手なアキと翠による特殊メイクでしっかりと隠されている。
『私が社長のクラークです…ミスターボルガーの件は残念でしたが…御社のDホイールを待っている方々はたくさんいるはずです、これからもよろしくお願いします』
「優しい言葉をありがとうございます、社長代理のピアスンに伝えます」
ティモシーことブルーノがクラークに感謝を伝える
『ええ…ん?ミス・エヴァ…でしたか?何処かで顔を見た事があるような…』
エヴァことシェリーの顔を見たクラークが怪訝な顔するが…
「いいえ…?私は貴方とは初対面…のはずですが…?」
『そう…ですか、失礼な事を聞いて申し訳ない…それでは検査の方をよろしくお願いします、検査場に案内しましょう』
クラークは遊星達を連れて検査場へと歩き始めた…。
「(シェリー、彼と会った事があるのかい…?)」
「(わからないわ…でもあるのかもしれない…)」
ブルーノがシェリーに問い掛けるが首を横に振る…しかしシェリーの胸には僅かなモヤモヤが残った
キュィイン…バシューン!!!
「ん…?あの光は…?」
会社内を移動する遊星達…その時、隣の建物から光の柱が立ち昇る…
『ああ、あれは我が社で研究中の物質転送装置「インフィニティ」の光ですよ、道中なので少し案内しましょう』
クラークに連れられて遊星達が訪れたのは巨大なモーメントの設置された実験場だった。
『あれが「インフィニティ」です、モーメントの力を使って次元を歪ませてワーム・ホールを作り、物質を転送するのです…この実験が成功すれば何百億もかけてロケットを打ち上げずとも宇宙に行けるのです!』
「なるほど…(あの扉は…?)」
クラークの説明を聞きながら遊星は辺りを見回す…そこで遊星はLevel10と書かれた床の先に扉を見つけた。
「(あの先はセキュリティが厳しいらしい…もしかしたらあの先に…)」
………
「ダメね…調べられる範囲で調べたけど、目立った情報はないわ」
「うん、ハッキングもしたけど何も出なかった」
時間は流れてランチタイム…午前中のテスト走行を終わらせた遊星達はこれからについて話し合っていた。
「この会社が三長官…イリアステルと連絡を取っていたのは事実だ、あと調べられるのは…あの扉の先…『インフィニティ』だけだな」
「でも『インフィニティ』は企業秘密…厳重なプロテクトが掛かってた、調べるにはあの扉の先に行くしかないよ?」
「ああ、しかも扉を開くにはカードキーが必要だ…それを持っているのは社長と役員達だけ…」
「だったら丁度いいわ、クラークは役員達と昼食会だそうよ…社長室に行けば予備のカードキーがあるかも…!」
「勝負はランチタイムが終わるまで…やるぞ!」
遊星達は覚悟を決め、社長室へと向かった…。
「ここがクラークのオフィスか…」
遊星達は人目を避けつつ社長室に到着…そして目的のカードキーを発見する。
「よし…!これがあればシステムにアクセスできるはずだよ!」
「待って…大変!クラークがこっちに戻ってくるわ!?」
「「なんだって!?」」
クラークの机に設置されたモニターを見たシェリーが焦りをみせる、モニターには監視カメラの映像が映し出されておりクラークが部屋に戻る様子が写っていた。
「不味いわ…今部屋を出たら鉢合わせよ…!」
「どうしよう…!?」
焦るブルーノとシェリー…しかし
「いや、オレに考えがある!行くんだシェリー!ブルーノ!」
コツコツコツ…ウィーン…
『おや?あなたはミスターダニエル、どうしたのですか?』
「貴方を待っていたんですミスタークラーク、実は貴方が面白いデュエルをするとリックに聞いたもので…」
部屋に戻ったクラークが見たのは部屋にいた遊星の姿だった、ブルーノとシェリーは間一髪で通気口から脱出し、遊星が時間稼ぎを引き受けたのだ。
『ほう、リックから…いいでしょう、私もデュエリストの端くれ、勝負を受けましょう…ただし「神経衰弱デュエル」でね』
「神経衰弱デュエル?」
神経衰弱デュエル…それはクラークの得意とする変則デュエルの事である。
ルールはシンプル、自身のデッキを机の上に裏向きで広げる、そしてカードを表向きにする時にモンスター・魔法・罠を宣言し表向きにする、そのカードが召喚可能、または発動可能ならば発動できるが発動できなければ再び伏せ直す…まさに記憶力と運が試される神経衰弱である。
『そしてこのデュエルの勝者はデッキを勝者に譲り渡す…どうだね?』
「(デッキを賭けたデュエル…だがブルーノ達の時間を稼ぐには…!)その勝負乗った!始めましょう!」
「『デュエル!!』」
デュエルダイジェスト クラーク対遊星
「(こいつ…できる…!)」
遊星は追い詰められていた、慣れない変則デュエルにより実力を発揮できない遊星…しかしクラークは実力を発揮しデッキ破壊戦術を披露し遊星の残りデッキを10枚まで追い詰めてしまう。
「(しかし何かがおかしい…魔法カード『等価交換』を発動した後に『デカゴナイト』を3枚も引き当てるのは…普通ならばありえない…!何かタネがあるのか?)」
クラークが使った戦術は魔法カード『等価交換』を発動しデッキからレベル10の『デカゴナイト』を3枚墓地に送り遊星のデッキを30枚減らすというもの…しかし広げられたカードから同じカードを3枚当てるのはとてつもない低確率である…その時
チカチカ…バチン!
「明かりが…っ!?」
『ああ、心配しなくてもいい「インフィニティ」を起動するとよくある事だ…』
突如として部屋の明かりが落ちる…クラークは気にしていないがそれはブルーノ達のハッキングの影響だった、だが不慮の事態であるその出来事は遊星に勝利の道筋を照らした!
「(読めたぞクラーク…お前のした事が…!)」
そして明かりが復活しデュエルが再開する!
「オレのターン…モンスター召喚!」
遊星はカードをめくる、そのカードは「ジャンク・シンクロン」!
「『ジャンクシンクロン』の効果発動!墓地の『ロード・ランナー』を特殊召喚!そしてレベル4の『マックス・ウォリアー』とレベル1の『ロードランナー』にレベル3の『ジャンクシンクロン』をチューニング!」
4+1+3=8
「集いし星が新たに輝く星となる!光さす道となれ!シンクロ召喚!『スターダストドラゴン』!」
遊星の場にスターダストドラゴンが現れる!
「さらに罠カードを宣言!…罠カード『フューチャー・バトル』を発動!このカードの効果によりお前のデッキをめくり、そのカードがモンスターなら特殊召喚しバトルを強制する!オレが選ぶのは…そのカードだ!」
遊星は散らばったカードから一枚のカードを選ぶ…それは…
『なっ…!「デカゴ・ナイト」…モンスターカードだと!?』
現れたのは不気味な仮面を着けたモンスター…それはシューティング・ソニックによって破壊される!
「さらに『フューチャーバトル』にはさらなる効果がある!自分のモンスターがこのカードの効果で召喚されたモンスターを破壊した時もう一度効果を適用する!二枚目は…そのカードだ!」
『なんだと!?』
現れたのは再びのデカゴナイト、そして破壊される…
「もう一度『フューチャーバトル』の効果発動!3枚目は…それだ!!」
『ば、馬鹿なぁ!?』
現れたのは3体目のデカゴナイト…クラークのライフは削り取られた…。
クラークLP0
遊星WIN!
「その程度のイカサマはオレには通用しない…そのメガネでカードの絵柄を把握していたんだろうクラーク?まるで手品師みたいだな」
『まさか…あの停電の僅かな時間で見破るとは…!』
そう、クラークのメガネには仕掛けがしてありカードの絵柄を読み取っていたのだ、遊…星は僅かな反射からその事に気がつき、イカサマを逆手に取ったのだ。
『フッ…流石は不動遊星、完敗だよ』
「なっ!?(正体がバレてる!?)」
クラークの思わぬ言葉に遊星は驚愕する
『我が社のセキュリティは高性能でね…監視カメラに映った時点で君達の正体は分かっていたのさ…シェリーや名無しくんの事もね!少し遊んでやろうと思っていたが甘く見すぎたようだ…!』
「やはりお前達はイリアステルと…!」
『そんな事より…君のお友達はいいのかな?』
ウウゥゥゥ─!!
「っ─!?」
突如サイレンが鳴り響く…それは遊星達の侵入がバレたという事だった…遊星は慌てて社長室から逃げ出した。
『ククク…逃げられるとは思わない事だ…!』
「シェリー!ブルーノ!データは!!」
「バッチリよ!これは何の騒ぎ!?」
遊星はシェリー達と合流する…シェリー達は無事にデータを盗めたようだ。
「オレ達の潜入はバレていたんだ…!急いで脱出だ!」
「なんだって!?」
「急ぎましょう!!」
遊星達は会社内を走る…しかし
『侵入者は何処だ!』
『こっちだ!出口に向かっているぞ!回り込め!』
「くっ…凄まじい警備の数だ…!」
遊星達は隠れながら進むがたくさんの警備員が遊星達を探している…見つかるのも時間の問題である。
「どうすれば…!」
そして逃げ続けるうちに遊星はインフィニティの実験場に辿り着く…
「シャトルの中に隠れるのよ!!」
遊星達は止められていたシャトルに身を隠そうとする…しかし
ウィーン…ゴゴゴ…ガシャン!
「閉じ込められた!?」
「罠か…!オレ達はここに誘い込まれたんだ…!」
シャトルのハッチが閉まり、遊星達は閉じ込められてしまう…遊星達はクラークによりここに誘い込まれてしまったのだ。
「っ…!いったい何が起きてるの…!」
遊星達は運転席へと移動するがコントロールは効かずシャトルは自動的に移動していく…
『ご機嫌ようシェリールブランに不動遊星とお友達くん?まんまと私の罠に嵌まってくれたね…!』
シャトルのモニターにクラークが映し出される…
「クラーク…!」
「こんな事をするなんて…やはりあなたはイリアステルと…私の家族を傷つけた犯人を知っているのね!!」
『Drルブランか…懐かしい名前だ、そして忌々しい名前でもある…彼は優秀な人間だったが余計な詮索が多すぎた、彼にはインフィニティの制御カードを製造して貰っていたが…彼はインフィニティの本当の使用法に気がついてしまった』
「本当の使い方だと?」
『そう、インフィニティはただの物質転送装置じゃない、簡単に言えばインフィニティはタイムマシンだ…イリアステルの方々はインフィニティを使い歴史を改変してきたのだよ…!これは知られてはならない事実…だからルブランには死んでもらうしかなかった…それを知る家族諸共ね…でも、生きているのは予想外だったよ』
「あなた…!許さない!!」
真実を聞いたシェリーはクラークを睨みつける
『おお怖い…でもまったく意味はないな、君達には異次元に消えてもらうが…シェリー、君に一つ聞きたいな』
「何を…!」
『君は…
「えっ…?」
思わぬ言葉にシェリーは目を見開く
「貴様…!何を言っているんだ!!シェリーは生きている!死んでなどいない!!」
『それがおかしいんだ、私は眠っていた君の首を絞めたはずなんだけど…まぁ、あの時は
ゴゴゴ…バシューン!!
そしてシャトルは虹色の光に飲み込まれ遊星達の意識はブラックアウトした…。
Sideシェリー
苦しい…息が…できない…どうして…?
『悪いねシェリーお嬢さん…恨むならDrルブランを恨んでくれたまえ…!!』ギュ…!
苦しい…苦しい…!苦しい…助けて…パパ…ママ…──
『……小物め、余計な事を…まだ脈はあるな』
誰…?誰なの…?
『お前を死なせる訳にはいかない…今の事は悪夢だ、現実はさらなる悪夢だがな…さぁ…忘れろ…そして生きろ…オレは愚かな奴らを始末しなければならん』
待って…待って…あなたは──
Sideout
「シェリー!起きるんだシェリー!」
「うぅ…?私は…」
気絶していたシェリーは目を覚ます…傍らには遊星がいた、シャトルの外は不気味な黄色の景色が広がっている
「本当にワームホールに飛ばされてちゃったみたいだ!イリアステルはボク達の想像もつかない技術を持っていた…このままじゃボク達は異次元の藻屑になっちゃうよ…!」
ブルーノが制御盤を操作しながら悲鳴をあげる…
《シャトル制御不能…シャトル制御不能、至急制御カードを使用してください、至急制御カードを使用してください…まもなくシャトルは航路から外れます、繰り返します…》
無機質なシステムメッセージが鳴り響く、次第にシャトルの揺れは大きくなり外壁は剥がれていく─!
「制御カード!?そんなものないよ!?」
「制御カード…もしかしてお父様の残したこのカードなら!」
シェリーは胸から一枚のカード…『Z-ONE』を取り出し制御盤にかざす…すると…
《制御カード認識…軌道を再設定します…》
「やったぁ!!」
制御カードを認識したシャトルは姿勢を安定させる…しかしそれは一瞬遅かった。
バリン!ビュオオオ!
「なっ…!きゃああ!!」
「シェリー!!」
シャトルのガラスが割れシェリーが外に吸い出される…遊星は咄嗟に腕を掴んだが…徐々に窓に引き寄せられる!
「っ…!まだよ!まだ…私は…死ねない…!!」
「シェリー!絶対に手を離すな!ぐっ…ううう!!」
遊星は必死に踏ん張るが…吸引力は容赦なく襲いかかる…!
「遊星!あと10秒耐えて!すぐにシャッターが閉まる!!」
ブルーノが操作するが…間に合わない…
「遊星…お願い、私の代わりに仇を取って…!」
「諦めるなシェリー!お前が自分の手で果たすんだ!」
「(ごめんなさいお父様…親不孝な私を許して…!)」バッ…
シェリーは自分から遊星の手を離した…遊星を守る為に…
「「シェリー!!!」」
ガツン!!
「あぐぅ!?」
吸い出されかけたシェリーは何かに衝突する…それは窓を覆う壁だった
「ブルーノ!ナイスタイミングだ!」
「違う!ボクじゃない!それはシャッターじゃない!!何かがこのシャトルを捕まえているんだ!」
「なんだって!?」
遊星は周りを見渡す、確かにクレーンのようなアームがシャトルを掴んでいるのだ。
《危ないところでしたね皆さん!ご無事ですか?》
「遊星、よく頑張ったな!もう大丈夫だ!なぜって?俺が来た!」
「遊海さん!」
シャトルのモニターに司令室のような場所にいる遊海が映し出された。
Side遊海
「もぐもぐ…遊星達は大丈夫かな…?」
翠のお手製弁当を食べながら遊海は遊星達を待っていた。
《マスター…いくら何でも油断し過ぎでは…?》
「ゴクゴク…大丈夫だよ、元々遊星達は無事なんだ…俺はそれをもう少しいい方向にもっていきたいだけだよ」
遊海は異次元に送られた遊星、そしてシェリーを助け出すつもりでいた、原作ならばシェリーはゾーンに救われ、消滅したパラドックスの穴を埋める形で遊星ギアの番人として立ち塞がるが…今回はゲイザーがいる、これ以上の戦力増強を防ぐ為に遊海はシェリーを救おうとしていたのだ。
「(シェリーを助ければ俺の戦いは誰かに見られるかもしれない…だけど、お前は絶対に助けるよシェリー…)」
《!…マスター!次元湾曲を確認!ワームホールが開きます!!》
「わかった!アヤカ!次元間航行準備開始!目標不動遊星!」
《了解!アポクリフォート・キラー、ステルスモードで現界します!》
姿を消した状態でアヤカの真体である要塞が顕現する!
「よし、行くぞアヤカ!次元航行開始!」
《次元航行…開始!》
そしてアヤカに乗り込んだ遊海は次元の狭間へと向かった…。
Sideout
「遊海さん!それにこのアームは…まさかアヤカなんですか!?」
「そうだ!これが我が相棒『アポクリフォート・キラー』!その真の姿だ!」
「うわ〜…大っきい〜!」
シャトルを捕まえたアヤカを見てブルーノが声をあげる…キラーの大きさは街一つを覆う大きさなのだから無理もない、シャトルはキラーの捕獲アームに掴まれている…それがシェリーを救ったのだ。
「このままシティまで戻るぞ?ミッションコンプリートだ、よくやった!」
「遊海…ありがとう」
「礼はいいよシェリー、間に合ってよかった…アヤカ!次元航行の目標変更!ネオドミノシティに帰還する!」
《了解!目標……レーダーに生体反応を確認!何者かが追いかけてきます!?》
「馬鹿な!?ここは次元の狭間だぞ!?生き物がいるはずがない!」
アヤカの警告に遊海は動揺する
《凄まじい速度…そんな、パターンブラック…!?識別コード…「tierra」…!?》
「なっ…!?…お前か…お前なのか!!」
遊海は苦々しげに呟く…それと共にワームホールが黒く染まっていく…!
「アヤカ!遊星達の回収を急げ!俺が迎撃する!!」
《了解!ご武運を!》
遊海は外へと飛び出した…
「遊星!ワームホールの様子が変だ!」
「何が起きようとしてるんだ…!」
遊星達も窓から様子を伺う…そして、それは現れた
【ガアアァァァ!!!】
「黒い…悪魔…!?」
遊星がみたのは黒い翼を持つ不気味な悪魔の姿だった、悪魔は異次元にも関わらず凄まじいスピードで迫ってくる!
《皆さん!捕まっていてください!シャトルを回収します!!》
「うわわわ…!!」
「ぐぉ…!?」
「くぅ…!」
凄まじい速度でシャトルは引き上げられる…あまりのGに遊星達は床に押し付けられる…!
「アヤカ!あれは何なんだ!!」
《あれは……悪魔…破壊をもたらす破壊神です!今はマスターが迎撃しています!まもなく引き上げが終わります!すぐに私に乗り移ってくださ…ッ!?…マスター!!》
ガシャァァン!!
「「「うわああ!?」」」
爆発音と共にシャトルが激しく揺れる…その原因は…
「ガハッ…!貴様…!!そんな姿に堕ちても俺が憎い…のか…!!だけどな…こいつらは守りきる…!!」
「遊海さん!!」
クリフォートの鎧を半ば砕かれた遊海がシャトルの上で悪魔と睨み合っていた…
Side遊海
「来るか…!」
【ガアアァァァ!!!】
野獣のような咆哮をあげながら悪魔が迫ってくる…その姿は遊海にとって忌々しい姿だった。
「
遊海はクリフォートの鎧を纏い悪魔…ゲイザー変異体へと突撃する!
【ガアア!!】 「だりゃ!!」
ドガン!!
空中で悪魔の爪と遊海の拳がぶつかり激しいエネルギーが渦巻く!
「キラーナックル!!」
【ガア!…■■■■■■■!!!】
遊海の拳を避けた悪魔はカウンターで拳を遊海に叩きつける!
「ぐっ…!?(重い…!!17年前の時以上だ!!)カタストロフレーザー!!」
距離を取るために100%の威力の光線を放つ…が
【ガウ…!!】
「なっ…!?俺のレーザーを喰っ…【ガアアアア!!】ぐああああ!!!」
遊海のレーザーを喰った悪魔は力を倍加させ遊海に跳ね返す、虚を突かれた遊海に紫の光線が直撃し引き上げ途中のシャトルに叩きつけられる!
「ガハッ…!貴様…!!そんな姿に堕ちても俺が憎い…のか…!!だけどな…こいつらは守りきる…!!」
鎧が砕けながらも遊海は悪魔を睨みつける…
【ア"ア"ア"ア"─!!ニクイニクイ憎イ!!貴様ヲコロスコロス殺ロスゥゥ!!】
「ちぃ…バーサーカーかよっ…!!」
「遊海さん!!」
傷付いた遊海を見て遊星が遊海に呼びかける
「遊星!しっかり隠れてろ!ハアァァ!!…精霊達よ!俺に力を貸してくれ!究極変身!!」
遊海はその身に精霊の力を集中させる、そして現れるのは精霊アーマーの究極体…!
「コンプリートフォーム!!…クインテットバスター!!」
【ギィヤ…!?】
五色の光線が悪魔を吹き飛ばす!!
「お前との決着は今じゃない…!吹き飛べ!クインテットバスタァァ!!」
【オオオ…!シラナミ…ユウミィィ!!!ダークネスカタストロフィィ!!!】
遊海の五色の光線と悪魔の暗黒の光線が衝突する…拮抗した光と闇のエネルギーは凝縮され…
ドッカァァァン
大爆発を起こし…全てを飲み込んだ…
Sideout
Side遊星
『遊星…目を覚ませ…遊星…』
「っ…う…オレは…?なっ!?なんだこの風景は!?」
遊星が気づいた時、そこには地獄のような風景が広がっていた…世界は赤い炎に包まれ、大地には無数の石版となったデュエルモンスターズが散乱し空には不気味な螺旋を描いた城が逆さまに浮いている
『遊星…また逢えたな…』
「父さん…!どうして…!」
遊星が視線を移すとそこには遊星の父・不動博士が佇んでいた…
『遊星…あの島を近づけてはならない、アレは人類を破滅に導く最後のモーメント…遊星、戻るんだ…自分の世界へ…仲間達のもとへ…』
「どういう事なんだ…!待ってくれ父さん!」
不動博士の姿が薄れていく…
『遊星…お前が悲しみの連鎖を断ち切るんだ…頼むぞ…』
「父さん…父さん─!!」
遊星の意識は再び闇に包まれた…。
Sideout
Side翠
「遊星君達…大丈夫かしら…」
「心配してもしょうがないだろう翠…遊海まで付いているのだ、無事に決まっている!」
シティのチーム5D'sのガレージにて翠達は遊星の事を待っていた…しかし、そわそわして落ち着きがない…
『モーメントエクスプレスへの潜入…正体がバレてしまえばどんな目に遭うか…ああ〜!!髪の毛のセットが上手くいきましぇ〜ん…なんだか嫌な予感が…!』
5D'sと行動を共にしていたイェーガーは髪の毛が決まらずに悩んでいた。
「ふん!貴様の髪の毛と遊星達の運命を並べるな!心配ないと言ってるだろう!」
イェーガーの心配を一蹴しながらコーヒーを飲むジャック…しかし
「そうだぜイェーガー?あの人がいるなら大丈…あり?ピアスが外れちまった!?」
イェーガーのピアスが外れ…
ガシャン
「うわ!花瓶が!?」
「大丈夫龍亞!?」
掃除をしていた龍亞に突然花瓶が倒れ掛かりビショ濡れになり
「あっ…お皿が…!」パリパリ…ピシッ!
翠の拭いていた食器にヒビが入り割れる…
「あっ…!携帯が壊れた!?」
さらにはアキの携帯がフリーズした
「むむっ…俺には関係な(バシャ!)熱い!!?」
挙げ句の果てにジャックのコーヒーカップの取っ手が外れ、熱湯が股間に降り注ぐ!
「遊海さん…大丈夫…ですよね…?」
翠は片付けをしながら言い知れぬ不安に襲われる…その時…
ブゥゥン──!
「っ…!なんだコレは!?」
突然、ジャック達の持つシグナーの痣が輝き、赤いバリアが展開される…シグナーが部屋に揃っていたからか共鳴しガレージ全体を包み込む!
「い、今のは何事ですか!?赤い光と地震が!?」
買い出しに行っていたミゾグチがガレージに駆け込む
「今のは…赤き竜がわたし達を何かから守ってくれたの…?」
「い、いったい何が起きたんでしょう??」
シグナー達が状況を把握しかねる中で再び痣が輝く…
「この感じはなんだ?…遊星と遊海が…戻ってくる…?」
「でも何か変だわ…行ってみましょう!!」
ジャック達は痣に導かれるように外へと向かった…
「痣の導きではこの辺りだが…?」
痣に導かれたジャック達はドミノ埠頭へと辿り着いた…。
「ねぇ…アレなんだろう?太陽が2つ…?」
「本当だ…!太陽が2つある!?」
龍亞と龍可が空を指差す…そこには確かに2つの太陽があった、一つは普通の太陽…そしてもう一つは渦巻くように大きくなっていく…!
「待て!何か落ちて来るぞ!?」
「あれは…あの大きさは大きすぎるわ!ウェン!ウィンダ!!私達を守って!」
落ちてくるモノの大きさを見た翠はウィンダ達を呼び出す!
《任せて!ウィンドウォール!》
《私も!大いなる風よ!我らを護れ!風王結界!!》
2体の精霊が結界を張った刹那、空から巨大な鉄の塊…要塞が落下した!
ドッパーン!!!
「「「きゃああ〜!?」」」
「『「うわぁぁ!?」』」
要塞が落下した瞬間、周囲の水が津波となって押し寄せ埠頭と反対側の旧サテライトを蹂躙していくが…シグナー達は風の結界によって守られた…。
「な、なんだってんだよ!?いったい何が…この機械は…!」
「そんな…!アヤカちゃん!?いったいどうしたの!?」
その姿を見た翠が悲鳴をあげる…落下してきたのは遊海の相棒であるアポクリフォート・キラーだったのだ…。
《翠…さん…早くゆ 星達 マスター を…》
「えっ…!あれってロケット!?」
「任せて!お願い『ブラックローズドラゴン』!」
《ギュリリリ!》
アキは精霊の力を使いブラックローズを召喚…水面に浮いていたロケットを岸に引き寄せる…
「っ…!遊星!ブルーノ!シェリー!いるのか!!」
ジャックがシャトルに呼びかける…
パシュー…
「うっ…イタタ…ジャック…みんな…?戻ってこれたのか…!」
「「「遊星!!」」」
開いたハッチから顔を出した遊星にシグナー達は駆け寄った…。
Sideout
「オレは…戻って来られたのか…!」
遊星は気づけば青空の下にいた…遊星は今まで起きた事を振り返る、モーメントエクスプレスに潜入し、正体がバレてシャトルによって異次元に送られ…ピンチやってきた遊海に助けられたが、突如として現れた異形の悪魔に襲われ…父親に会った、それが遊星の覚えている事だった。
「遊星殿!シェリーお嬢様は!?」
「そうだ…ブルーノ!シェリー!無事か!?」
ミゾグチの言葉に遊星は船内に呼びかける
「う〜ん…ボクは大丈夫だよ〜…あれっ?!シェリーは!?」
「そんな…まさかさっきの爆発で投げ出されたのか!?」
遊星はブルーノの無事を確認したが…シェリーを見つける事ができなかった…
「遊星!いったい何があったのだ!お前達はモーメント・エクスプレスに行ったはずだろう!何故空から落ちてくるのだ!?」
「話せば長くなる…簡潔に言えばモーメントエクスプレスはイリアステルの関係者だった、オレ達は見つかって異次元に放り出されて……そうだ!遊海…さん…遊海さんは!?」
遊星は周りを見渡す…そこに遊海の姿は見えなかった。
《主殿はこちらです…!》ザパ…
「トフェニさん!ああ…遊海さん!!」
海からトフェニがヨロヨロと飛び上がる…その腕には両腕を失い全身に傷を負った遊海が抱き抱えられていた…。
「遊海さん…!!そんな…どうして!?誰がこんな事…!」
「ああ…!遊海さん…!」
「そんな…!」
「見るな龍亞、龍可…見ちゃなんねぇ…」ギュ…
クロウは兄妹を抱き寄せる…
《主殿は…遊星殿を助けに異次元に侵入し、その先で…正体不明の魔物に襲われたのです…主殿は遊星達を守る為に必死に戦い…巨大なエネルギーのぶつかり合いで相討ちとなったのです、その余波で異次元から投げ出され、シェリー殿は…異次元に取り残されたと思われます…》
トフェニは無念そうに異次元での出来事を伝えた。
「遊海さん…すまない…!オレのせいでまた怪我を…!」
遊星は拳を握り締める…遊海が戦う中で遊星は何もできなかった…それが悔しいのだ。
「気に…する、な遊星…俺の、力不足…だ…」
「遊海さん…!意識が!」
遊海は辛うじて意識を取り戻すが…その瞳は光を映していなかった。
「謝るのは、俺だ…シェリーを、守れなか…た…」
「遊海殿…!」
ミゾグチは遊海の様子を見て涙を流す…
「俺の、事はいい…空を見ろ……あれ、がお前達の、倒すべき…ゴフッ…ゴボッ…!」
「ああ…!?遊海さんしっかりして!?」
血を吐き出す遊海に慌てて翠は回復魔法を使う
「空…そんな、あれは…!」
遊海の言葉に空を見上げる遊星…その先には夢と現実の狭間で見た螺旋の城が浮いていた…!
「な、なんだ!あの不気味な島は!?」
「逆さまに浮いてやがる!?」
遊星につられて空を見たシグナー達は驚きの声をあげる
「えっ?何かあるの?」
『何も…見えませんが…?』
対して痣を持たない龍亞とイェーガーにはなにも見えていない…
「もしかして…赤き龍の痣があれを見せているの…?」
「そんな〜…なんでおれには痣がないんだよ〜!?」
アキの言葉に龍亞は項垂れる…
「あれが…人類を破滅に導くモーメントだっていうのか…!」
遊星は父親に言われた言葉を思い出す…それを確かめる為に遊星達は再びモーメントエクスプレスへと向かった…。
「(くそ…ゲイザー…め、お前は必ず…俺が…止める…止めなくちゃ…ならねぇ……)」
薄れゆく意識の中、遊海は決意を改める…感じ取ったのだ、ゲイザーの強い憎悪…そして悲しみを…
「(この世界は…俺が…護る…!)」
「そんな…!モーメントエクスプレスが…!?」
「消えてる!?建物も…人も!確かにさっきまであったのに!?」
モーメントエクスプレス…跡地を訪れた遊星達、そこはなにもない荒野に様変わりしていた…。
「そんな馬鹿な!建物が一瞬で消えたというのか!?」
「見ろよ!地図アプリにもネットにも『モーメントエクスプレス』が出ねぇ!」
クロウがネットで調べるがモーメントエクスプレスの存在自体が消えてしまっていた…それはイリアステルが過去改変を行なった証だった。
「前にもこんな事があった…アカデミアにルチアーノが編入した時やパラドックスの過去改変があった時も人々からその記憶が消えていた…これがイリアステルの力だっていうのか!」
ガレージに戻った遊星達は頭を抱える…そこに…
『み、皆さん!これを見てください!大変な事になっているのです!!テ、テレビに三長官が!?』
「「「なんだって!?」」」
イェーガーの言葉に遊星達は慌ててテレビを点ける…そこにはWRGP優勝候補筆頭チーム、『チーム・ニューワールド』として脚光を浴びる三皇帝の姿があった。
「堂々と姿を現しやがった…!」
「まさか…!ブルーノ!対戦表を出してくれ!!」
「わかった!…そんな…対戦表が変わってる!『チーム・シェリー』が消えちゃってるよ!!」
「そんな…!これがイリアステルの力だっていうのか…!?」
ブルーノの言葉にクロウは驚愕する…
「もしかしてさっきの赤いバリアがおれ達を守ってくれたのかも…」
「…そういう事だろうな、これがイリアステルか…!!」
遊星はイリアステルの力を前に立ち向かう敵の大きさを改めて理解する、遊星達が挑むのは…人類の未来そのものなのである。
「だが…イリアステルはこれ程の力を持ちながら何故GPに出場する…?過去改変で何もかもを改変できるなら俺達を消していてもいいはずだ」
「可能性は2つある…一つはオレ達が赤き竜に守られているから…そしてもう一つは…オレ達に何かの役割があるから…という事だ、そうでなければわざわざ奴らは表舞台には出てこないだろう…!」
ジャックの言葉を聞いて遊星は冷静に分析する…
「こうなったらGPで勝ち抜いて奴らに直接聞くしかないだろう…オレ達は絶対にこの街を守るんだ!」
「ああ!奴らが何を考えていようと…全て捻じ伏せてやる!」
「この街を守るのはオレ達だ!」
遊星達は決意を固める…必ずイリアステルを倒し、この街を守る事を…WRGP本戦の開幕はそこまで迫っていた…。
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「うっ…ここは…?」
シェリーは一面に白が広がる不思議な空間で目を覚ました…
「私は…爆発で異次元に投げ出されて…ここは死後の世界なの…?」
【いいえ、ここはまだ現世ですよ…シェリー・ルブラン】
「えっ…?お父…様?病院にいるはずじゃ…?」
シェリーの前に人影が現れる、それは未だに病院で眠り続けるルブラン博士…シェリーの父親だった。
【残念ながら私はドクタールブランではありません…貴女の望む姿が私に写し出されているのです…】
「貴方は…何者なの?」
シェリーは父親に似た人物に問い掛ける…
【私はこの世界の「真実を知る者」、真実を知りたいのであれば教えてもいい…何故、貴女の家族は襲われたのか…何故、貴女は彼に救われたのか…そして…世界の全てを…しかし、それを知れば貴女の運命は大きく変わるでしょう…】
「かまわない…教えて…!いったい何が起きているのかを…!」
【いいでしょう…時間はたっぷりとあります、教えましょう…この世界の未来を…】
シェリーは真実を知る者…Z-ONEの手をとった、そして彼女は知る事になる…世界に迫った残酷な運命を…。
『ぐ…うぅ…派手に殺られたな…まさかこの場所に奴が来るとは…だが、おかげで思考がはっきりした…あとは時を待てばいい…首を洗って待っていろ…白波遊海…』
四肢を失い、傷だらけになり次元の狭間を漂う男は目を閉じる…全てはその目的を果たす為に…。
しかし彼は気づかなかった、膨大なエネルギーの激突により次元の境界が揺らぎ、異物が紛れ込んだ事に…
『…ここは何処だ…?融合次元ではないな…遊矢はいったい何処にいるのだ…?』
あり得ざる来訪者がネオドミノシティに現れた…。
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