転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話 作:S,K
「遊海さん!しっかりして!遊海さん!!」
「っ…あ……」
何処ともしれない場所…翠は傷だらけで倒れた遊海を抱き起こす…遊海は口から血を流し浅い呼吸を繰り返している…。
「だめ…起きて…!」
「…ごめん……みど…り…」パタッ
遊海は翠の顔に僅かに触れ…力尽きた…
「いや…いやぁぁぁぁ─!!!」
翠の悲しみの叫びが虚しく木霊した…。
「うわぁぁぁ!!…あっ…?」
「zzz……スゥ…」
「…ゆ、め…?」
翠は飛び起きる…時間はまだ早朝、遊海は隣で静かに眠っているが…翠は全身に冷や汗をかき、涙を流していた…。
「………夢で、よかった…遊海さんの、馬鹿…!夢でも私を置いていかないで…」ギュ…
「んむぅ…スゥ…」
翠は静かに遊海に抱きつきもう一度眠りに落ちた…悪い夢見を打ち消すように…。
「あっ!翠さ〜ん!」
「アキさ〜んお待たせ〜!」
とある休日の昼下がり、とあるカフェテラスで翠とアキが待ち合わせをしていた…。
「髪型変えたのね!」
「はい!どうですか?」
アキは今までサイコパワー制御装置を兼ねた髪留めをしていた…しかし、アーククレイドルの一件の後にサイコパワーが完全に消失…制御装置を使う必要がなくなった事でカチューシャで髪を纏めている。
「もちろん似合ってるわ!前よりお淑やかに見えるかな?」
「はうっ…!お淑やかなんて…似合わない、かな…」
翠の言葉にアキは赤面する…
「あ…、そういえば…シェリーから連絡があったんです!両親共に目覚めて快方に向かってるって!」
「本当!?よかった〜…これでひと安心ね!」
アーククレイドル事件の後にシェリーは急いで故郷へと戻った…それは病院からの知らせでルブラン夫妻が意識を取り戻した事を知ったからだった。
襲撃事件のあったあの日、ルブラン夫妻の魂はダークネスに囚われており…遊海がダークネスを倒した事で目覚めたのだ。
「そういえば…今日はどうしたの?相談があるって聞いたけど…」
「はい、実は…」
アキ曰く、一週間後にアカデミア高等部の試験があり、その中にデュエルの実技試験があるらしい…。
「遊星や5D'sのみんなは忙しそうだし…遊海さんはまだ無理はできないと思って…」
「それで私にデュエルの相手を頼みに来たのね…私でよければ相手になるわ!」
「ありがとうございます!」
そして会計を済ませた2人はデュエル場へと向かった…。
『いらっしゃいませ岸波様、いつもご利用ありがとうございます』
「お世話になってます!3時間コースでお願いします!」
『承りました、3番のデュエルコートへどうぞ』
「み、翠さん…ここって…」
アキが翠に連れられて訪れたのは厳重なセキュリティの施されたデュエル場だった…。
「ここはKCとI2社直営のデュエルコートよ!遊海さんが海馬君や他のプロデュエリストとデュエルする時に使ってるの!私もたまには思いっきりデュエルがしたいと思ってね!」
「すご〜い…(年会費どれくらいなんだろう…考えないでおこう…)」
「準備はいいかしら?」
「はい!よろしくお願いします!」
「『デュエル!!』」
翠LP4000
アキLP4000
「私のターン!ドロー!」
「魔法カード『
《まっかせて〜!久しぶりの出番だよ〜!》
影の風竜に乗るウィンダが現れる ATK2200
「そしてカード効果で墓地に送られた『ファルコン』の効果発動!自分を裏守備で特殊効果!さらに『ヘッジホッグ』の効果でデッキから『シャドール・ビースト』を手札に加えるわ!そしてモンスターをセット、カードを1枚伏せてターンエンド!」
翠LP4000
ミドラーシュ 裏ファルコン セットモンスター 伏せ1 手札2
『すごい…1ターンでモンスターが3体も…!』
「ふふっ、『ミドラーシュ』がいる時はお互いにモンスターの特殊召喚は1ターンに1度しかできないから気をつけてね?」
『嘘っ!?なんてロック能力なの…!?』
翠にミドラーシュの効果を聞かされたアキは動揺するが…
『でも…この状況を越えられれば…活路はある!いきます!!』
『私のターン!ドロー!』
『よし…!「ローンファイア・ブロッサム」を召喚!』
火山地帯に咲く花が現れる ATK500
『「ローンファイアブロッサム」の効果発動!自身をリリースする事でデッキから植物族モンスターを特殊召喚できる!来て!「
ブロッサムの蕾が破裂…快活そうな向日葵の植物姫が現れる ATK2800
『バトル!「マリーナ」で「ミドラーシュ」を攻撃!』
《そんな〜!?もう出番終わり〜!?》
マリーナが強い光を放ちミドラーシュを破壊する!
翠LP4000→3400
「ごめんねウィンダ!『ミドラーシュ』の効果発動!墓地の『影依融合』を手札に加えるわ!」
『私はカードを2枚伏せてターンエンド!』
アキLP4000
マリーナ 伏せ2 手札3
「いい判断ね!じゃあ次はどうかしら!」
「私のターン!ドロー!」
「魔法カード『手札抹殺』を発動!お互いに手札を捨てて同じ枚数ドローする!」
『っ…!』
翠の魔法で手札がリセットされる!
翠 捨てたカード
影依融合
シャドールドラゴン
ビースト
アキ 捨てたカード
返り咲く薔薇の大輪
フレグランス・ストーム
ガード・ヘッジ
「『シャドールビースト』の墓地効果発動!1ドロー!『シャドールドラゴン』の墓地効果発動!アキちゃんの右側の伏せカードを破壊するわ!」
『その瞬間!リバース罠「植物連鎖」発動!「マリーナ」に装備する事で攻撃力500アップ!』
発動された罠が影糸で切り裂かれる!
『装備された「植物連鎖」が破壊された事で効果発動!墓地の「ローンファイアブロッサム」を特殊召喚!』
再び火山の花が現れる DEF1400
「うまく避けられちゃったわね…なら…!『シャドールファルコン』を反転召喚!」
鳥型の影人形が現れる ATK600
「『ファルコン』のリバース効果で墓地の『ビースト』を裏守備で特殊召喚!そしてリバース魔法『
巨大なる影の女王が降臨する ATK2800
『大きい…!これが翠さんの切り札…!』
「いくわよ!『ネフィリム』の効果発動!デッキの『シャドール・ハウンド』を墓地に送る!そして効果発動!『ローンファイアブロッサム』を攻撃表示に変更!」
『しまった…!』
影糸が火山花の表示形式を変更する DEF1400→ATK500
「そして『シャドール・リザード』を召喚!」
トカゲ型の影人形が現れる ATK1800
「バトルよ!『ネフィリム』で『マリーナ』を攻撃!影糸の斬糸撃!」
『「ネフィリム」と「マリーナ」の攻撃力は互角…相討ちです!』
「残念!「ネフィリム」は特殊召喚されたモンスターと戦う時にそのモンスターを破壊するわ!」
『そんな!』
マリーナは影糸に切り裂かれ破壊される!
『それなら墓地の「
巨大な薔薇の花が現れる DEF1300
「『リザード』で『ローンファイアブロッサム』を攻撃!」
トカゲが火山花を切り裂く!
『くっ…!』
アキLP4000→2700
「カードを1枚伏せてターンエンド!」
翠LP3400
ネフィリム リザード 裏ビースト 伏せモンスター 伏せ1 手札1
『(翠さんの場にはモンスターが4体…伏せてあるモンスターはドロー加速の「ビースト」…それなら…!)』
『私のターン!ドロー!』カーン☆
『「レッド・ローズ・ドラゴン」を召喚!』
身体から薔薇を生やした小さなドラゴンが現れる ATK1000
『私はレベル4の「返り咲く薔薇の大輪」にレベル3の「レッドローズドラゴン」をチューニング!』
3+4=7
『冷たい炎が世界の全てを包み込む…漆黒の花よ!開け!シンクロ召喚!現われよ!「ブラック・ローズ・ドラゴン」!』
アキのシグナーのドラゴンたる黒薔薇のドラゴンが現れる ATK2400
「来たわね…!」
『シンクロ素材になった「レッドローズドラゴン」の効果発動!デッキから「ブルー・ローズ・ドラゴン」を特殊召喚!』
小さな青い薔薇のドラゴンが現れる DEF1200
『そしてこのカードが「ブラックローズドラゴン」のシンクロ素材となった事でさらなる効果発動!デッキから「漆黒の薔薇の開花」を手札に加える!そして「ブラックローズドラゴン」の効果発動!フィールドのカード全てを破壊するわ!ブラックローズ・ガイル』
薔薇の花吹雪が2人のフィールドを蹂躙する…!
「やってくれたわね…!」
『そして破壊された「ブルーローズドラゴン」の効果発動!墓地の「ブラックローズドラゴン」を特殊召喚!』
再び黒薔薇が咲き誇る! ATK2400
「なら私も効果を発動するわ!まず『ビースト』の効果!1ドロー!そして『ネフィリム』の効果!墓地の『影依融合』を手札に!さらに破壊された伏せカード『影依の源核』の効果!墓地の『神の写し身との接触』を手札に!さらに『リザード』の効果発動!デッキから2枚目の『ヘッジホッグ』を墓地に送って効果発動!2枚目の『ファルコン』を手札に加えるわ!」
『手札が5枚に増えてる…!バトル!「ブラックローズドラゴン」でダイレクトアタック!ブラックローズフレア!』
巨大な火球が翠に直撃する!
「きゃ…!」
翠LP3400→1000
『カードを2枚伏せてターンエンド!』
アキLP2700
ブラックローズ 伏せ2 手札2
「ふふっ…たまにはこういうデュエルも楽しいわねアキさん!とっても強くなってる!」
『ありがとうございます!』
「よ〜し…負けないわよー!」
「私のターン!ドロー!」
「スタンバイフェイズに墓地の『黄泉ガエル』の効果発動!自身を特殊召喚!」
白い羽と天使の輪の付いたカエルが現れる DEF100
「魔法カード『貪欲な壺』を発動!墓地の『ネフィリム』『ミドラーシュ』『ヘッジホッグ』『ハウンド』『ファルコン』をデッキに戻して2ドロー!…フィールド魔法『影牢の呪縛』を発動!」
フィールドの中心に蛇の装飾が施された杖が突き刺さる!
「さらに私は魔法カード『影依融合』を発動!手札の『メガロックドラゴン』と『ファルコン』を融合!影の翼よ!大地の力を受けて女王の玉座を呼び出さん!融合召喚!『エルシャドール・シェキナーガ』!」
アポクリフォートの玉座に座した女王が現れる ATK2600
「『影牢』の効果!シャドールモンスターがカード効果で墓地に送られた事で魔石カウンターを置くわ!そして『ファルコン』の効果で自身を裏守備で召喚!」
影牢 魔石カウンター0→1
「バトルよ!『シェキナーガ』で『ブラックローズドラゴン』を攻撃!」
『その瞬間!リバースカード『シンクロン・リフレクト』を発動!シンクロモンスターが攻撃対象になった時、その攻撃を無効にして相手モンスターを破壊します!『シェキナーガ』を破壊!』
「えぇっ!?」
シェキナーガの攻撃が弾かれ、ブラックローズの鞭がシェキナーガを破壊した!
「うまくやられちゃったわ…『シェキナーガ』の効果で墓地の『影依の源核』を手札に加えるわ!そして『影牢』に魔石カウンターを乗せる!…カードを2枚伏せてターンエンド!」
影牢 魔石カウンター 1→2
翠LP1400
黄泉ガエル 裏ファルコン 影牢(2) 伏せ2 手札2
『私のターン!ドロー!』
『「ブラックローズドラゴン」の効果発動!墓地の「ガードヘッジ」を除外して「黄泉ガエル」を攻撃表示に変更して攻撃力を0にする!ローズ・リストレクション!』
茨がカエルを締め上げて表示形式を変更する!
黄泉ガエル DEF100→ATK100→0
『バトル!「ブラックローズドラゴン」で「黄泉ガエル」を攻撃!ブラックローズフレア!』
「墓地の『超電磁タートル』の効果発動!このカードを除外してバトルフェイズを終了するわ!」
翠のフィールドに電磁バリアが展開し攻撃を防ぐ!
「でもこれで次は防げません!ターンエンド!」
アキLP2700
ブラックローズ 伏せ1 手札3
「ふぅ…!危ない危ない…!でもここからよ…シャドールの本領、見せてあげる!」
「私のターン…ドロー!」カンコーン☆
「勝利の方程式は全て揃ったわ!『シャドールファルコン』を反転召喚!」
再び鳥型の人形が現れる ATK600
「『ファルコン』のリバース効果発動!墓地の『ビースト』をセット!さらに『アイス・ハンド』を召喚!」
凍りついたマジックハンドが現れる ATK1400
「私はレベル1の『黄泉ガエル』とレベル4の『アイスハンド』にレベル2の『シャドールファルコン』をチューニング!」
4+1+2=7
「清廉なる花園に咲く孤高の花よ!月の雫を得て咲き誇れ!シンクロ召喚!『月華竜ブラックローズ』!」
花吹雪が舞い散り、聖なる光を纏う薔薇のドラゴンが現れる ATK2400
『「月華竜」…!という事は…!?』
「「月華竜」の効果発動!『ブラックローズドラゴン』を手札に戻してもらうわ!
薔薇の花吹雪がブラックローズドラゴンを吹き飛ばす!
「さらにリバース魔法『神の写し身との接触』を発動!手札の『ハウンド』と『ドラゴン』を融合!もう一度お願い!『エルシャドール・ミドラーシュ』!」
《まかせて〜!》
再びウィンダが現れる ATK2200
「バトルよ!『月華竜』でダイレクトアタック!
『まだ!リバース罠『
小さな黒薔薇が現れ焼き尽くされる DEF800
「『ミドラーシュ』でダイレクトアタック!」
《ストライク・エア!!》
濃密な空気の塊がアキに直撃する!
『きゃあっ…!』
アキLP2700→500
「そしてリバース罠『
龍頭のような髪を生やした核石が現れる ATK1450
『あっ…!』
「『源核』でダイレクトアタック!」
源核の一撃がアキのライフを削りきった…
アキLP0
翠WIN!
「負けた〜!翠さん強すぎですよ〜!」
「あと一手足りなかったわね!でもテストに合格するならバッチリよ!お姉さん花マルあげちゃう!」
「ありがとうございます!」
デュエルが終わり2人は健闘を讃えあう…
「……」
「…アキさん、一息入れましょうか!コーヒーとジュースどっちがいい?」
プシュ!
「ふぅ…デュエルのあとのコーラは格別ね!」
「はい!」
2人はベンチに腰かけ、汗を拭きながら飲み物を流し込む…
「…アキさん、もしかして私にデュエル以外の事で相談があるんじゃないの?」
「…えっ…どうして…?」
「ふふっ…これでもデュエルアカデミアの寮母さんを10年やってたのよ?悩みがある子の事はなんとなくわかるの…話せるなら話してみて、力になるわ」
翠はアキに優しく話しかける…
「………実は…遊星の事なんです…」
「遊星君の?喧嘩でもしたの?」
「その…遊星の事を考えると胸が苦しくなるというか…ほわほわするというか…」
「うん、『恋』してるわね〜…」
「恋…!?いやっあの…その…!?」ぼふっ!
アキの顔が朱く染まりとり乱す…
「隠さないでも大丈夫よ、アキさんが遊星君と一緒にいる時の様子を見ればわかるわ…解決するのはアキさんと遊星君の想い次第かな?」
「うぅ〜…それはそうなんですけど〜…!」
思いの他核心をつく翠の言葉にアキは顔を隠す…
「急がなくても大丈夫、遊星君は『プロジェクト・フォーチュン』に掛かりきりになってるし、アキさんもまだ高校生だし…ゆっくり考えればいいのよ?」
「はい…それは自分でもわかってるんです、それで…その…参考までに翠さんと遊海さんの馴れ初めを聞けたらな…と…」
「私達の?」
アキの言葉に翠はキョトンとする
「遊海さんと翠さんはすごいおしどり夫婦だから…きっといい出会い方をしたんだろうな…と思って…」
アキはチーム5D's、そして遊海達と過ごす中で仲睦まじい2人の様子を見てきた…それを少しでも参考にできればと思ったのだ…。
「話してもいいけど…参考になるかはわからないわよ?私と遊海さんの出会いはとっても特殊だから…」
「教えてください…お願いします!」
アキは頭を下げる…
「…それじゃあ教えてあげる!私と遊海さんの出会いを…」
「まず知ってるとは思うけど…私と遊海さんは違う世界からの転生者…私と遊海さんの出会いは前世まで遡るわ…」
「えっ…!?前世からの知り合いだったんですか!?」
「そうなの…あれは私が5〜6歳、遊海さんが7〜8歳の頃の話よ…」
そして翠はアキへと在りし日の事を語る…たまたま公園で遊んでいた遊海と出会い『デュエルモンスターズ』を教えて貰った事、そして遊海が引っ越す事になり、1枚のカードを預かった事を…
「それがさっき使った『メガロックドラゴン』のカード…それから10年以上私達は会う事ができなかった…私は…どうしても遊海さんの事を忘れられなかった…」
「そんなに…」
「でも、そんなある日…私は死んでしまった、そしてこの世界に転生したの…私は絶望したわ…本当に遊海さんと会えなくなっちゃったって…」
「でも…逢えたんですよね?」
「うん、再会のしかたは最悪だったけどね…」
神の手で遊戯王世界に転生した翠…彼女を待ち受けていたのは当時、治安が最悪だった童実野町の不良達…そこで不安定だった翠は暴走、そこに駆けつけた遊海と命懸けのデュエルとなった…。
「私は遊海さんに助けられた…そして怪我をしてしまった遊海さんの足代わりとして初代バトルシティに参加したの…そこで初めてお互いが誰であるかがわかったの…」
「なんだかロマンチック…!」
アキは2人の再会に目を潤ませる…
「ふふっ、ありがとう!…そして私と遊海さんは色々な事を経験したわ、三幻神とのデュエル…世界を滅ぼそうとした秘密結社との戦い…盗まれた三邪神を取り戻して…エジプトで名もなきファラオの最期を見送って…死にかけたり、怪我したり…色々あったけど楽しい生活だったわ…」
翠は少し遠い目をしながら昔を懐かしむ…
「それで高校を卒業した遊海さんが新設されたデュエルアカデミアに就職して…私も高校を卒業してアカデミアに就職したの…その頃だったなぁ、遊海さんからプロポーズを受けたの…」
「えっ…!遊海さんがプロポーズしたんですか!?」
「そうなの!アカデミアの夕日が綺麗な場所でね…」
Side翠
「わぁ…!ここがデュエルアカデミアなんだ…!大きい!!」
高校を卒業した翠は以前の約束通り、デュエルアカデミアへと採用された…時期は新学期前の夏休み、人の姿はまばらだった。
「お〜い!翠〜!」
「あっ…!遊海さん!!」
「おっと!?…遅くなってごめんな、よく来たな…」
校舎の前にいた翠に遊海が声をかける…翠はその声を聞いて遊海に抱きついた…。
「はい!これでずっと2人で一緒にいられますね!」
「ああ、とりあえずオシリス・レッドの寮に荷物を置きに行こう、そしたらアカデミアを案内するよ」
「ふぅ〜…アカデミアって広いんですね〜」
「ああ…もう次の場所で最後だよ」
アカデミアを一通り回った遊海達は森の中を進む…そして…
「よし…着いた!」
「わぁ…!綺麗な夕日!」
辿り着いたのは夕日の見える海辺だった…辺りは赤く染まり、潮騒の音が心地よい音色を奏でている…。
「俺がデュエル場とレッド寮の次に気にいってる場所なんだ…どうかな?」
「はい!私も大好きです!」
翠は綺麗な風景に目を輝かせる…
「…翠、こっちを向いてくれるか?」
「どうしたんです…えっ?」
遊海の声に夕日を背に振り返る翠…その足もとには片膝をつき、小さな箱を手に持った遊海の姿があった…。
「翠…俺はケジメを着けたいと思う…俺と、結婚してください」
遊海が箱を開く…そこには七色に輝く小さな宝石のあしらわれた指輪があった
「遊海、さん…」
「俺はこれからこの世界を救う為に…そしてお前を守る為に命を懸ける…俺と一緒に…俺の隣で俺を支えてほしい…!」
それは遊海の心からの…全てを振り絞った愛の言葉だった…。
「…答えは決まってますよ、遊海さん…ふつつか者ですが…よろしくお願いします!」
「ああ…ありがとう、翠」
そして2人は夕日をバックに口づけを交わした…。
Sideout
「きゃ〜!!ロマンチックー!!」
「そ、そんなに大声出さないでアキさん!恥ずかしいから…」
2人の馴れ初めを聞いたアキは少しだけ翠をからかう…今度は翠の顔が朱く染まっていた…。
「…大丈夫よアキさん、私達だって一緒になれたんだから…焦る必要はないわ、ゆっくり考えてね」
「はい…ありがとうございます!話したらなんだか胸が軽くなりました!」
翠に恋の相談をしたアキの顔は晴れやかだった…。
「でもいいな〜…遊海さんみたいな人が旦那様だったら悩み事も少ないですよね…」
アキから見て遊海は完璧に近い人物に思えた、翠に気を使い、後輩である遊星達を導き、人々を守る…まさにヒーローのように見えた…。
「うん…でも、そうでもないのよ…」
「えっ…?」
アキの言葉を聞いた翠の顔が曇る…
「確かに遊海さんは強くて優しい人よ?その力でたくさんの人達を守ってきた…でもね、遊海さんが守る人の中には…
「あっ…」
翠の言った事にアキは思い当たる事があった…遊海は誰よりも戦いの前線に立って闘ってきた、その分遊海は誰よりも傷を負い…誰よりも苦しんできたのだ…。
「私、怖いの…いつか遊海さんが戦いの中で…─」
「翠さん…」
アキには小さく呟いた翠の言葉が聞こえていた、翠の唯一の悩み…それは「遊海を失う事」だった。
「…翠さん、その…私には翠さんがどれくらい遊海さんを心配しているかはわかりません…でも、私なら…遊海さんに真正面からぶつかってみようと思います…あの時の遊星みたいに…」
アキの脳裏に浮かんだのはダークシグナーとの戦いの前…当時の心の拠り所であったディヴァインを失い、サイコパワーを暴走させた自身を真正面から相手にして心の闇から救いだしてくれた遊星の事だった。
「翠さんも真正面から遊海さんにぶつかってみたらどうですか?きっと…遊海さんなら翠さんの想いも受け止めてくれると思いますよ?」
「…そっか…その手があったか〜…そうよね、真正面からぶつかればよかったのよ…!ありがとうアキさん!解決する方法を思いついたわ!!よ〜し…頑張るぞー!!」
翠はアキの言葉を聞いて吹っ切れたのか…鼻息荒く立ち上がる!
「えっと…何をするつもりですか…?」
アキは不安げに翠に問いかける…
「それはもちろん…!」
「私とデュエルしてください!遊海さん!!」
「待て、いきなりどうした!?!?」
To be continued…