転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話   作:S,K

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史上最大の夫婦喧嘩〜愛するが故に〜

時は少し遡る…

 

 

 

 

「よし…体調もだいぶ戻ったな…!」

遊海は身体の調子を確かめるように体を動かしていた…地道に行ってきた筋トレとストレッチによってようやく調子が戻ったのだ。

 

「翠はアキと会いに行ってるから少し遅くなりそうだな…久しぶりに料理でもするか」

 

《いい考えですね遊海!翠も喜ぶと思いますよ!》

 

「ああ!よし、さっそく買い物だ!」

 

………

 

 

「よし、これで夕食の材料は揃ったな…」

 

《ふむ…何を作るのだ?》

 

「鶏のモモ肉と玉ねぎを使った鶏のお好み焼き風だよ…父さんの得意料理だったんだ、ポン酢をかけて食べると美味しいんだよ、とりあえず下準備だけして翠が帰ってきたら焼こう!」

メガロックに見守られながら遊海は調理を進める…モモ肉と玉ねぎを刻み、卵に片栗粉を溶かして隠し味を少々…それだけの簡単な料理だ。

 

「炊飯器の予約を19時にセットして…よし!」ピッ!

調理を終えた遊海は時計を見る、時間は16時半…まだ余裕がありそうだ…。

 

「デザートも作っておくか…えっと、牛乳と寒天とバニラエッセンスと砂糖と…フルーツの缶詰…」

 

《あっ!牛乳寒天のアンニンドウフですね!》

 

「正解!牛乳に材料を混ぜて…軽く沸騰させて…寒天を溶かして…」

しばらくして牛乳寒天ができた。

 

 

 

「よし…少し休憩だな」

遊海はインスタントコーヒーを淹れてソファに腰かける。

 

《お疲れ様ですマスター、夕食が楽しみですね!》

 

「ああ、ここしばらく翠には大変な思いをさせちゃったからな…喜んでくれればいいけど…」

遊海は今までの事を思い返す…ゼロ・リバースの後遺症で病弱となり、ダークシグナーとの戦いやイリアステルとの戦いでの度重なる怪我…その度に自分を献身的に看病してくれた翠…遊海は翠に感謝してもしきれない程感謝していた…。

 

 

()()()と『フォーチュン』が完成して一段落したら旅行にでも行こうか?前にフレアと約束した祭り巡りもできてないし…」

 

《良さそうですね!前に言っていた牛追い祭りやチーズを転がす祭りに行ってみたいです!》

 

《世界一周旅行だな!お前達の休暇には丁度いいだろう!》

 

《然り、主達はよく頑張られた…次の戦いまで英気を養うべきでしょう》

 

「そうだな〜…、翠が帰ってきたら相談しよう!」

のんびりと精霊達とこれからの相談をする遊海…その顔はとても楽しそうだった…。

 

 

ガチャ バタン! パタパタ…

 

 

「おっ、噂をしたら影かな?おかえり!み─」

 

バタン!

 

「ただいま帰りました!早速ですけど私とデュエルしてください遊海さん!!」

 

「待て、いきなりどうした!?!?」

リビングに入るなりいきなりデュエルディスクを構えた翠に面喰らう遊海なのだった…。

 

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

「落ち着くんだ翠、デュエルするのは構わないけど!とりあえず深呼吸、深呼吸だ…!」

遊海は鼻息荒くデュエルを挑んでくる翠を落ち着かせようとする…

 

「大丈夫です遊海さん!私はじゅ〜ぶん冷静ですから!」

 

「いや!全然冷静ではないでしょ!?(アヤカ!翠をサーチ!洗脳とか変なモノに憑かれてないか!?)」

 

《(……サーチ結果オールグリーン、興奮している以外は健康体です…本当に翠の意思でデュエルを挑んでいるようです…!)》

 

「(嘘だろ!?)」

翠のあまりの剣幕に遊海は以前のような洗脳を疑うが…当然ながら問題は見つからなかった。

 

 

 

「み、翠…突然にどうしたんだ?俺、なんか翠に怒られるような事したか…?」

遊海は翠を刺激しないように優しく問いかける…

 

「今日という今日は遊海さんに言いたい事があります!!…少しは自分の体を大切にしてください!!!」

 

「へっ…?」

翠の思わぬ言葉に遊海は目が点になる…

 

「いつもいつも怪我ばっかりして…!遊海さん自身が納得していても…私は辛いんです…!!貴方が神の炎に焼かれた時も…銃で撃たれたり、モンスターに殴られた時も!破壊神に身体を乗っ取られた時も!…ゼロ・リバースの時も……私は遊海さんを見て、看病する事しかできなかった…!!」

 

「翠…」

 

「たしかに私達は不死身の身体を持っています!…それでも…それでも、ラプラスは死んでしまったんです…!!」

 

「っ……」

翠の言葉に遊海は思い返す、未来の自分たるラプラス…彼はゾーンとのデュエルに敗北し、その命を散らした…それを見た翠は意識してしまったのだろう…愛する人の「死」を…

 

 

「私は貴方の妻です…!もう少し、私を頼ってください!遊海さん!!」

それが翠の本心だった、たしかに遊海は翠に頼る事もある…しかし、基本的に遊海は自分でどうにかしようとしてしまう…それが遊海の長所であり、短所だった。

 

 

「……翠、お前の言いたい事はよくわかった…たしかに俺はいろんな無理・無茶をしてきた…でも、それは必要な事だった…俺がいる事で起きたイレギュラーをなるべく無くす為に…」

遊海は自分がいる事で起きたイレギュラーな事態を自覚していた…バトルシティへの参加…記憶編でのNPC化、アカデミアに潜入した事での三幻魔とのデュエルやキース・アヌビスの乱入、魔神化…ダークシグナーに追加されたゾーク、そして介入してきた未来の自分…挙げればキリがないが…遊海はそれらを乗り越えてきた…自分が傷つく事を代償として…。

 

 

「でも、俺はこれからも戦い続ける…この世界を、なにより…お前を守る為に」

 

「…ですよね、遊海さんならそう言うと思ってました…!でも、遊海さんは忘れてます!いつも傷ついた貴方を見ている事しかできない私の悲しみを!!だからデュエルです!!私が勝ったら…もう、無茶はしないで…!!」

翠は涙目でデュエルディスクを構える…遊海を思うが故に遊海を守る為に彼女は剣を取る…!

 

「…それは翠のお願いでもできない相談だなぁ…わかった、お前が決闘で納得してくれるなら…この決闘を受けよう!」

遊海と翠は庭へと飛び出した…。

 

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

ドタバタ…ガチャ!!

 

「お邪魔します!!あっ…翠さん!?遊海さん!?やっぱりこうなってる…!」

 

《アキ殿…?どうしてこちらに?》

トフェニが家に駆け込んできたアキに問いかける…アキが目にしたのは庭で睨み合う遊海と翠の姿だった…。

 

「ご、ごめんなさい!私が翠さんに『悩みがあるなら遊海さんに正面からぶつかってみれば』って言ったら…『遊海さんとデュエルでぶつかる!』って飛び出しちゃって…!!」

 

《そういう事ですか…ウィンダ、ウェン…なぜ止めなかったのです?》

 

《ごめん…まったく聞く耳持ってくれなくて…》

 

《猪突猛進…》

申し訳なさそうにシャドール組が頭を下げる…

 

 

「どうしよう…まさかこんな事になるなんて…!?」

 

《落ち着いてくださいアキさん…とりあえず氷嚢を用意して貰えますか?》

 

「えっ…?」

アキはアヤカの言葉に首を傾げる。

 

《…おそらく()()で勝負が決まります》

 

 

 

 

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

翠LP4000

遊海LP4000

 

 

 

 

『私のターン!ドロー!』

『手札からスケール5の「智天の神星龍」とスケール1の「宝竜星─セフィラフウシ」をセッティング!』

翠の両隣に光の柱が立ち上る!

 

『さらに魔法カード「揺れる眼差し」を発動!Pゾーンの2枚を破壊!効果で遊海さんに500ダメージを与えてデッキから「秘竜星─セフィラシウゴ」を手札に加えます!!』

 

「ぐぅっ…!?」

雷撃が光柱を破壊し、遊海にダメージを与える!

 

遊海LP4000→3500

 

 

『さらに私はフィールド魔法「セフィラの神託」を発動!効果処理としてデッキの「オルシャドール─セフィラルーツ」を手札に加えます!そしてスケール1の「剣聖の影霊衣(ネクロス)─セフィラセイバー」とスケール7の「覚星輝士(アステラナイト)─セフィラビュート」をセッティング!』

再び翠の両隣に光の柱が現れる!

 

『私は「セフィラセイバー」と「セフィラビュート」でペンデュラムスケールをセッティング!神樹の加護よ!私に力を貸して!ペンデュラム召喚!手札から「セフィラルーツ」!「セフィラシウゴ」!エクストラデッキから「セフィラフウシ」!!』

それぞれに黒と青の宝玉を持ったドラゴン達と虹色のコアを持つ聖邪の力を宿す戦士が現れる DEF2600 DEF0 DEF1950

 

 

『ペンデュラム召喚に成功した事で「セフィラシウゴ」の効果発動!デッキの「セフィラの神意」を手札に加えて効果発動!デッキの「竜星因士(イーサテライト)─セフィラツバーン」を手札に加えます!そしてフィールドの3体のモンスターをリリース!エクストラデッキから現れて!「智天の神星龍(セフィラ・トーラ・グラマトン)」!』

《グオオォン!!》

聖邪の力を宿せし救星の龍が咆哮を轟かせる! ATK3450

『「神星龍」の効果で私はもう1度ペンデュラム召喚ができる!ペンデュラム召喚!もう一度お願い!「セフィラルーツ」!「セフィラシウゴ」!「セフィラフウシ」!「セフィラツバーン」!』

先ほど現れた3体のモンスターと竜の鎧を纏う赤いコアの戦士が現れる DEF1950 DEF2600 DEF0 DEF2100

 

 

『「セフィラフウシ」の効果発動!自身をチューナーにします!そしてレベル6の「セフィラシウゴ」にレベル3の「セフィラフウシ」をチューニング!』

 

6+3=9

 

『星に選ばれし龍達よ!今こそその力を開放せよ!シンクロ召喚!「幻竜星─チョウホウ」!』

神々しい鳥の頭を持った鳳凰のような龍が現れる ATK 2900

 

 

『シンクロ素材となった「セフィラフウシ」は自身の効果でデッキの一番下に戻ります…そしてフィールド魔法「セフィラの神託」の効果発動!シンクロ召喚に成功した事で「セフィラフウシ」をデッキトップに!さらにレベル4の「セフィラルーツ」と「セフィラツバーン」でオーバーレイ!』

2体のモンスターが銀河に飛び込む!

 

『2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!!闇に冒されし英雄よ…永き眠りから目覚め、輝動せよ!エクシーズ召喚!「暗遷士カンガルゴーム」!』

瘴気を纏い狂気に侵された金剛石の英雄が現れる ATK2450

 

 

『私はこれでターンエンド!』

翠LP4000

神星龍 チョウホウ カンガルゴーム  Pスケールセフィラセイバー セフィラビュート セフィラの神託 手札0

 

 

 

 

「こ、これが翠さんの本気…!?」

アキは翠のフィールドを見て絶句する…翠のフィールドにはペンデュラムを駆使して並べられた高攻撃力モンスターが遊海を見下ろしている…!

 

「いくら遊海さんでもこの状況じゃ…!?」

 

《アキさん…これから起きる事は他言無用でお願いします…》

 

「えっ?」

アヤカはデュエルを見つめながら、アキにお願いをする…

 

《それからどうかマスターを軽蔑しないでください…マスターは意外に不器用ですから…本気で翠を倒すでしょう…自分の信念を曲げない為に…》

 

 

 

 

 

「俺のターン、ドロー!!」

「『魔境のパラディオン』を召喚!」

 

『え"っ』

大きな杖を持った小柄な魔導師が現れる ATK400

 

 

「…?翠さん、なんであんなに慌ててるの…?」

現れたモンスターを見て動揺する翠を見てアキは首を傾げる…

 

《見ていればわかります…(-_-)》

 

 

 

「現れろ!光のサーキット!アローヘッド確認!召喚条件はパラディオンモンスター1体!俺は『魔境』でリンク召喚!現われろ!『マギアス・パラディオン』!」

赤い鎧を纏う魔術師が現れる ATK100↓

 

 

「リンク…モンスター…?異世界のデュエルモンスター?」

 

『あわわ…遊海さん!それは大人げないんじゃないですか〜!?』

 

「問答無用!!翠に譲れない想いがあるように…俺にも曲げられない思いがある!『マギアス』のリンク先に『神樹のパラディオン』を守備表示で特殊召喚!」

緑の髪のエルフが現れる DEF1800

 

「リンク先にモンスターが特殊召喚された事で『マギアス』の効果発動!デッキから『星辰のパラディオン』を手札に加える!さらにリンク1の『マギアス』と『神樹』でリンク召喚!現れろ!『レグレクス・パラディオン』!」

炎の鬣を持つ白き獅子が現れる ATK1000↕

 

 

「さらにリンク先に『星辰のパラディオン』を特殊召喚!」

優しい顔をした青いドラゴンが現れる DEF2000

 

「さらに俺はリンク2の『レグレクス』と『星辰』でリンク召喚!現われろ!戦いを乗り越えし絆の勇者!『アークロード・パラディオン』!!」

人馬一体となった聖騎士が現れる ATK2000↙↑↘

 

「さらに手札から『天穹のパラディオン』と『百獣のパラディオン』を特殊召喚!」

輝く鎧を纏う戦士と雄々しき黒獅子が現れる DEF1000 DEF1600

 

 

□□□□□

□暗神チ□

 □ ア

□□天□百

□□□□□

 

 

 

「『アークロード』の攻撃力はリンク先のモンスターの攻撃力の合計分アップする!よって攻撃力は…」

 

アークロードATK2000→7700

 

 

「攻撃力7700!?(待って…この強さなら『究極時械神セフィロン』を倒せるんじゃ…!?)」

アキは遊海の召喚した勇者の強さに驚愕した…ともすればチーム5D'sの絆でようやく倒した神を倒せるのではないかと思う程に…

 

「バトル!『アークロードパラディオン』で『智天の神星龍』を攻撃!ボンド・オブ・パラディオンスラッシュ!!」

絆の力を束ねた光の斬撃が救星の龍を飲み込んだ…。

 

『みゃぁぁぁ〜!?』

 

 

翠LP0

 

遊海WIN

 

 

 

 

 

 

 

「きゅうう〜…」

 

「おっと…!あぶないあぶない…」

あまりのダメージに目を回して倒れ込んだ翠を遊海が受け止める…

 

「ごめんな翠…お前が俺を心配してくれてるのはよくわかった…少し頭を冷やしてもう一度話し合おう…」

翠を横抱き…お姫様抱っこした遊海は家へと戻る…。

 

 

 

「ん…来てたのか、アキ」

 

「えっと…お邪魔してます…あの、コレ…」

 

「おっ、氷枕か…ありがとう」

遊海は今更ながらアキが来ていた事に気づく…遊海はアキから氷枕を受け取るとソファに翠を優しく寝かせた。

 

 

「…すごい、デュエルでしたね…まさか1ターンキルなんて…」

 

「驚かせて悪かったな…強かっただろ?ゾーンを倒せそうなくらいに…」

 

「…はい…」

アキは遊海の言葉に頷く…しかし、何も言葉を続けられなかった…遊海がとても寂しそうな顔をしていたから…。

 

 

「アキ…俺はな『欲張り』なんだ…」

 

「えっ…?」

アキは遊海の言葉を疑問に思った…遊海はマーサハウスや他の施設を支援し、さらにはヒーローとしてたくさんの人々を守り助けてきた…その遊海の何処が欲張りなのだろうと…

 

「俺は、みんなに笑っていてほしい…どんなに辛い事があっても、俺が護る…例え、俺がどんなに傷つこうと…みんなを守れればそれでいいと思ってた…だけど…」

遊海は拳を強く握り締める…

 

「だけど…一番身近な人を泣かせちゃ、ダメだよなぁ……」

 

「遊海さん…」

その時、アキは初めて遊海の『素顔』を見たような気がした、気絶した翠の頭を撫でながら一筋の涙を流す遊海の姿を……無双の英雄の「弱さ」を…

 

 

 

 

 

 

 

Side翠

 

 

 

「うぅ…ん…?」

意識を失っていた翠が目を覚ます…そして、辺りに香ばしい香りが広がっている事に気づく…

 

 

「おっ…目が覚めたな翠、夕ご飯できてるよ!今日は俺特製の鳥のお好み焼き風だ!」

 

「ゆうみ、さん……?わたし…?」

 

「まだ寝ぼけてるな…?1回顔洗ってきなよ、スッキリするから…」

 

「うん…」

翠はよろよろと顔を洗いに行った…。

 

 

 

「…私…あっ…!?」

顔を洗い、静かに鏡を見つめる翠…その脳裏に今日1日の事がフラッシュバックする…アキとデュエルして相談に乗ったあとに空回りして遊海にデュエルを挑んだ事を…。

 

「ど、どうしたのかしら私…なんであんな事…!?」

冷静さを取り戻した翠の顔が羞恥心で真っ赤に染まる…。

 

《大丈夫だよ翠、遊海は怒ってないよ…》

 

《うん!遊海兄もやり過ぎたって反省してるから…きっとストレスが溜まってたんだよ…》

翠を慰めるようにウィンダとウェンが現れる

 

「あう〜…やっちゃった…本当に辛いのは遊海さんの方なのに〜…!」

翠は自己嫌悪になり頭を抱える…

 

「翠〜ご飯冷めちゃうぞー!」

 

「は、は〜い…!」

遊海の声で我に返った翠はリビングへと向かった…。

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせしました〜…」

 

「うん、さぁ食べようか!」

翠がリビングに戻ると机の上には少し大きな白いお好み焼きとサラダとご飯がセッティングされていた。

 

 

「……翠、さっきはごめん…やり過ぎた」

 

「あっ…私もごめんなさい…!少しストレスが溜まってたみたいで…」

先に頭を下げたのは遊海だった、翠も続いて頭を下げる…。

 

 

「翠、俺はこれからも無理や無茶をする…でも、約束する!無謀な事はしないし、必ず帰ってくる…だから頼む、これからも俺の事を支えてくれないか?」

 

「…はい!わかりました!でも、少しは私の事も頼ってくださいね!」

 

「ああ、ありがとう…さぁ、冷める前に食べよう!ポン酢とマヨネーズをかけると美味しいよ!」

 

「はい!いただきま〜す!」

そうして2人は夕食を食べ始めた…幸せの味を噛みしめるように…。

 

 

 

 

 

「そうだ翠、今度なんだけど…実は…」

 

「え、えぇ〜!?」

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

「あった…これだな」

 

夫婦喧嘩(?)の翌日、遊海の姿はシティのとある神社にあった…その目の前には小さな地蔵が表通りを通る人々を見守っている。

その地蔵は誰が呼んだか『デュエル地蔵』…カードを供えて祈れば欲しいカードが手に入るという都市伝説のあるお地蔵さんだ。

 

「……」パンパン!

遊海は柏手を打って祈りを捧げる…そしてその視界は光に包まれた…。

 

 

 

『よくきたの遊海、しばらくぶりじゃ』

 

「お久しぶりです神様、少し相談があって来ました…!」

遊海が目を開けるとそこは一面の白い世界、そして髭を蓄えた神様の姿があった…。

 

 

 

『まずは茶でも飲みなさい、話はそれからじゃ』

 

『はい!どうぞ!』

 

「ありがとうございます、女神様」

遊海は神様の出したテーブルセットに座り、お茶を飲む…

 

 

『まずは遊海…5D'sの物語をよくぞ乗り越えた、満足に力を使えない中で冥界の邪神を倒し…平行未来世界からやってきた自分を倒し、物語をハッピーエンドに導いた…見事だった』

 

「…やっぱり知っていたんですね、ラプラスが未来の俺である事を…」

 

『そうじゃ…19年前の時点でワシはあやつの正体を見抜いておった…神様じゃからの』ズズッ…

神様はそう言ってお茶を啜る

 

「…ありがとうございます、俺達の事を思って言わないでいてくれたんですよね?」

 

『まさか礼を言われるとはの…恨み言の1つ位言われると思っておったが…』

 

「もし、あの時点で俺がラプラスの正体を知っていたら…俺は奴を倒せなかった…そう思います」

 

『そうじゃの…お主達は優し過ぎる、あの時に真実を伝えていれば…お主はラプラスを倒したとしても見逃し…ダークネスの復活が早まっていた…そこに奴の仕組んだゼロ・リバースが重なれば……世界は滅びていただろう』

神は無情な真実を告げる…遊海の選んだ道…それが正解だったと慰めるように…。

 

 

『ワシらは基本的には地上に干渉できん…できてお主達の周りの事だけと決められておる…辛い思いをさせてすまなかった』

神は遊海に頭を下げる…それほどまでに遊海に辛い人生を歩ませてしまったと思ったのだ。

 

「俺なんかに頭を下げないでください神様…たしかに辛い時間でしたが…世界を救う事ができました…それで充分です」

 

『成長したの…遊海』

神は遊海を見つめる…その目は孫を見る祖父のように優しげだった…。

 

 

「ただ、1つだけ教えてください…死んでしまったラプラスと…もう1人の翠の魂はどうなりましたか…?」

 

『…わからん、おそらくは他の人間達と同じく遊戯王世界の輪廻の輪に向かったはずじゃ…既にワシらの管轄からは外れておるから確かな事は言えんが…』

 

「そうですか…わかりました」

遊海は残念そうに顔を伏せた…。

 

 

 

 

 

『そういえば相談があるんだったの?どうしたんじゃ?』

 

「ああ、そうでした…実はこれからの戦いに備えて自分のステータスを確認したくて…あればですけど」

 

『ステータス?そりゃまたどうして…』

神は遊海の言葉に問いかける

 

「いや…この30年近く生きてきて…どうも怪我をしやすいような気がして…」

それが遊海が神様のもとを訪ねた理由だった、遊海の転生人生は怪我との戦いと言っても過言ではない…闇のデュエルをする度に怪我を負っていては身体が保たない…そう思ったのだ。

 

『ふむ…たしかにおかしいのぅ…少し待っていなさい、えっと…神文字はお主には読めんから…見やすいように直して…』

神は遊海の人生の記録簿を取り出して手元を弄る…

 

『よし、変換完了じゃ…お主の目の前に映すぞ、おまけに翠の分もじゃ』

 

「ありがとうございます!」

神の声と共にステータス情報が開示される…

 

 

──────────────────────

 

 

白波遊海 転生決闘者 善・中立

 

筋力A+ 耐久EX 敏捷B+ 魔力EX  幸運A+ 

 

 

 

白波翠 転生決闘者 善・混沌

 

筋力B+ 耐久A- 敏捷B 魔力A 幸運B+

 

 

──────────────────────

 

 

 

「うへっ!?(なんだこの高ステータス!?某聖杯戦争に呼ばれたら最強レベルじゃん!?)」

遊海は開示されたステータスに変な声が出てしまう…

 

『すごいじゃろう?お主達が遊戯王世界に適応できるように最善を尽くした…はずじゃが…』

 

「う〜ん…『耐久EX』…?」ポチッ

遊海は自身の耐久の項目を確認する…

 

 

──────────────────────

耐久:EX

 

どんな状態でもデュエル中であれば決闘を続ける事ができる、精神性と肉体の耐久力の合計数値。

…ただし、肉体自身の耐久ランクはC--である…恐ろしきは白波遊海の精神力の強さ、例え何度傷付こうと彼は世界を救う為に止まる事はない。

 

──────────────────────

 

「………神様?」

 

『………うん、間違えてたみたい…(汗)』

 

ちょっとぉ〜!?

 

遊海の叫びが神の世界に響き渡った…

 

 

──────────────────────

 

白波遊海 転生決闘者 善・中立

 

筋力A+ 耐久B+(EX) 敏捷B+ 魔力EX  幸運A+

 

──────────────────────

 

 

『ホッホッホッ…これで心置きなく戦えるの!』

 

「(ジト目)」

 

『(ラプラスの件より怒っとる…よほど昨日の夫婦喧嘩が効いたらしい…)』

ステータスの修正を終えたものの遊海の機嫌は最悪だった…それはそうだろう、自身の怪我のしやすさが神の設定ミスだったと知れば無理もない…。

 

 

『また何かあったら来るといい…いつでも待っておるよ!さらばじゃ!』

 

「ありがとうございました」

 

遊海の視界は再び光に包まれた…。

 

 

 

 

 

 

「……まったく…とことん、おっちょこちょいな神様だな…」

遊海はデュエル地蔵の前に戻る…既に日は西に傾いていた…。

 

《おかえりなさいマスター!…なんだか覇気が増したような?》

 

「ああ、もう戦う事に憂いはないよ…これで翠に心配をかけなくて済む…さぁ、帰ろうか!」

 

《はい!》

遊海はアヤカと共に家路に着く…1通の招待状を手にしながら…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「遊星!いるか!!」

「ん?ジャック!久しぶりじゃないか!?何処に行っていたんだ!?」
とある休日…ガレージで久々にデッキの調整をしていた遊星のもとにジャックが現れる…

「フン、武者修行だ!…それどころではない!!これを見ろ!!」
ジャックは1通の封筒を遊星に見せる…

「封筒?それがどうし……なにっ!?」
遊星もその文面を見た瞬間、驚愕する…!

「お〜い!遊せ…ジャックもいるじゃねぇか!丁度いいぜ!イェーガーからこんなの渡されたんだ!遊星の分もあるぜ!」
クロウが2通の封筒を持って現れる…、その文面にはこのように書かれていた…。


………

招待状


不動遊星殿

さる○月■日、ネオドミノシティの復興を祝うエキシビジョンデュエルを開催する事となった。
お前達が戦う相手は歴戦の決闘者達…チーム5D's、お前達はこの壁を乗り越える事ができるか?
真の最強の称号が欲しくば…かかってくるがいい!


海馬コーポレーション社長 海馬瀬人


………


「海馬社長直々の招待か…これは断るわけにはいかないな…!」

「最強の称号が欲しいならかかってこい…か、いいだろう!乗ってやる!!」

「ああ…!燃えてきたぜ!!チーム5D'sの強さ…見せてやろうぜ!!」


「「「おう!!」」」


遊星達は拳を合わせる…再びチーム5D'sの戦いが始まる…!

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