転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話 作:S,K
…落ちる…落ちる…墜ちる…どこまでも落ちる………墜ちていく──
オレは死んだ、落ちるほどに自分を形作っていた心が、記憶が、魂が…燃え尽きていく…。
──ああ…それでも、たとえ全てが燃え尽きようと…この「光」は…この「後悔」だけは───
「………ここ、は…?」
わたし…ぼく?…おれ…は目を覚ました、ここは何処だろうか?私は何故ここにいる?…そもそも名前は…?
「………」
…わかる事はただ1つ、拙は死んだ筈…という事だ、なんで死んだのかは覚えていない…事故か、病死か…殺されたのか…それすらもはっきりしない………ただ、一つだけ思い出した事がある…僕は「誰か」を探していた…。
「誰か」を探してワタシは命を懸けた…そうオレの魂が囁く……自分で言っていて泣きたくなる、記憶に無い「誰か」を探すなんて…不可能だ。
カチャ…
『目が覚めましたか?よかった…長い間眠っていたので心配しました…』
「…!?」
寝かされていた部屋の扉が開き人が入ってきた…その人物は…まるでお伽噺の精霊や妖精のように綺麗な女性だった、全身が青白い穏やかな光に包まれていて見た目だけで優しい人物だという事がわかる…。
『…驚かせてしまったようですね、私の名前はエナ…海岸に倒れていた貴方を見つけ、ここに運び込んだのです…自分の名前はわかりますか?』
「……わからない、オレは…何も覚えていない、覚えているのは『誰か』を探していた…という事だけだ」
『そう、ですか…きっと、それは貴方の大切な人なのでしょう…手を触ってもいいですか?』
「?…ああ」
『失礼します…これは…!』
キィン─…
私の手を取ったエナさんの身体の輝きが増す…
『貴方は…とても強い「カオス」を宿しています、この世界に来る魂では珍しい…貴方は死してなおその方を守ろうとし…そして求めているのですね…』
「…そうらしい…オレはその為に命を懸けた…のだと思う、オレ、は…あれ…?」
僕の目から涙が零れ落ちる…名も顔もわからない「誰か」、その人の事を考えると胸が締めつけられ、穴が空いたように痛くなる……そうか、オレは──
「守れなかった、のか…!おぉ…おおおぉぉ─…!!」
男は大粒の涙を零し咽び泣く…
『(優しい人…この人なら、この世界を変えられるかもしれない…!)…よければお手伝いしましょうか?』
「…えっ…?」
『この世界は人間界で生を全うした人々が辿り着く世界…もしかしたら貴方の探し人もこの世界にいるかもしれません…!』
「本当か…!!」
『はい、ですが…その代わりに私達を助けてほしいのです…!』
「俺が…貴女達を助ける…?」
エナの申し出にオレは首を傾げる
『この世界は高すぎる理想のせいで力を失いつつあります…私達はその影響で命を繋ぐ事がやっと…でも、貴方の持つ正しいカオスなら…この世界を救い、変える事ができるかもしれません…!』
「……世界を変える…か、何故だか懐かしい響きだ…わかった…!オレでよければ力を貸そう!」
『ありがとうございます…!えぇと…』
エナの様子が少しおかしくなる…そうか、名前か…
「探す者……探索者…シーカーと呼んでくれ、エナ」
『シーカー…ええ、わかりました…改めてよろしくお願いしますシーカー、この「アストラル世界」を救ってください…!』
「ああ、やれるだけやってみよう…!」
オレはエナに連れられて部屋を出る…そこには眩く清廉で幻想的な青の世界が広がっていた…。
「…まずは仲間集めだな、人の集まるところに連れて行ってくれるか?最低でも…4人は仲間が欲しい」
『わかりました、ついてきてください!』
オレはエナと共に歩き始めた…衰退しつつあるというこの世界を救う為に…。
「待っていてくれ…名も知らぬ「君」…必ず、みつけてみせる…!」