転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話 作:S,K
5D's編が完結してすぐなのに…久しぶりに筆が乗りました!断章スタートです!
…ノリで書いたらなんだか劇場版みたいな感じになってしまった…まぁ、いいか!
注意!
この話では既存キャラに関係するオリキャラが出ます。
英雄の敗北─目覚めし魔神─
「っ…うぅ…(身体中が、痛い…どうして、こんな事になった…!)」
遊海は地面に倒れ伏していた…辛うじて繋ぎ止めた意識で状況を整理しようとする…。
「(…まさか、
時は少し前に遡る…
──────────────────────
「ただいま〜……疲れたぁ…」ぼすん
「おかえりなさい!遊海さん!お疲れ様でした!」
「ああ、人気者は…辛いよ…」
ふらふらになって帰ってきた遊海はソファに倒れ伏す…。
伝説の「チーム5D's」の解散から2年が経った、俺は相変わらず世界中のプロリーグのゲストや対戦相手に招待されて引っ張りだこ…今回は約2週間ぶりに家に帰る事ができたのだ…。
「あっ!龍亞君から手紙が来てますよ!イギリスに引越して大学卒業まではイギリスにいられるそうです!」
「そうか…それはよかった!なら次のイギリスリーグ出張の時に会いにいこうか?」
「そうですね!きっと身長も伸びてるだろうな〜」
5D'sの仲間達はそれぞれの場所で活躍している。
遊星は父と同じくKCに入社、低価格・高性能の新たなDホイールをボルガー&ピアスンカンパニーと共同開発に成功…次は子供でも乗れる量産型Dボードの開発を目指している。
クロウは新たなプロライディングチームに所属し連勝を重ねている、先日はチームユニコーンを1人で倒してしまったらしい…。
ジャックは世界一のシングルプロリーグ・ライドAでその力を見せつけている…再び「キング」の称号を手に入れる日も近いだろう。
アキはアメリカの医大で外科医を目指して勉強を続けている…翠とのメール文通の様子では元気そうだ。
龍亞と龍可は両親と共に楽しく暮らしている、この前も家族4人の元気な写真が送られてきた…そして、意外な事に龍亞は順調に学校での成績を伸ばしているらしい…この街での経験が龍亞を成長させているのだろう。
「さて、明日からはしばらくオフだな…どうかな翠、久しぶりに旅行でも行かないか?」
「あ!いいですね〜!温泉でも行きますか?」
「そうだな〜、久しぶりに温泉にゆっくり浸かるのも良さそうだ」
《ユウミ!何か忘れていませんか?》
「ん?どうしたフレア?」
遊海の肩に実体化したフレアが遊海に声をかける
《いつか「世界のお祭り」を見に行こうって約束しましたよね!》
「あ…そんな事もあったなぁ…」
それはフレアとの20年近く前の小さな約束だった…約束の後に様々な事があった事で長い間忘れられていたのだ…。
「うーん、今回の休みだとそこまで時間は取れないなぁ…でも、わかった!次は長い休みをとって世界のお祭りを見に行こう、今回はちゃんとした『約束』だ!だからあと少しだけ待ってくれるか?」
《わかりました、約束ですよ!ユウミ!》
「ああ!指切りしておくか?」
《はい!ゆびきりげんまん〜》
フレアの小さな足が遊海の小指を掴んで振り回す
「ふふっ、それじゃあ今回は温泉旅行ですね!何処にしましょうか?」
「そうだな〜近いのは…(ピリピリピリピリ!)電話…?はい白波!」
『こんばんは遊海!いま大丈夫かな…?』
「遊戯?久しぶりじゃないか!どうしたんだ?」
電話の相手は遊戯だった…心なしか声が暗いような気がした。
『実は少し相談したい事があるんだ…明日、時間取れるかい?』
「明日?ああ、わかった!いつもの場所でいいか?」
『うん、ありがとう…また明日ね!』プツン…
「遊戯さんからですか?」
「ああ、相談に乗って欲しいって…どうしたんだろうな…?」
Side遊海
カランカラン…
「よ!遊戯、待たせたか?」
「ううん、ボクも少し前に来たところだよ」
翌日、俺はシティの繁華街から少し離れたカフェに来ていた…ここのマスターは口が堅く、さらにカフェが静かだから遊戯や時々遊びにくる有名人と話すにはピッタリの場所なのだ…。
「…で、今日はどうしたんだ?」
カフェオレを注文して俺は遊戯に用件を尋ねる。
「実は…
「遊奈ちゃん?一人娘の?」
本編世界ではわからないが…この世界では遊戯と杏子の間に生まれた一人娘がいる、その名は武藤遊奈…ゼロ・リバースの後遺症もあり、俺が彼女に会ったのは小さい頃に会ったきりだった…。
「遊戯〜、俺は子供関係の相談は得意じゃないぞ〜?相談するなら舞さんとかにすれば…」
「いや、そういう事じゃないんだ…一度遊奈に遊海の…いや、世界トップレベルの決闘者の姿を見せて欲しいんだ」
「??…どういう事だ?たしか遊奈ちゃんはアカデミア本校で主席を取っている強いデュエリストじゃないか?」
遊奈はアカデミア本校の3年生…勉学は親の遊戯に似ず高成績、デュエリストとしては少なくとも当時のカイザー亮やエドに匹敵するレベルのはずだ…。
「それが…将来の事で悩んでるみたいでね…」
遊戯曰く、卒業を控えた遊奈には既にたくさんのプロリーグからオファーが来ているらしい。
…しかし、彼女はもう一つの夢を抱いていた…それは母と同じダンサーになる事…遊奈は2つの夢を迷っているらしい。
「だから遊海に遊奈の事を試して欲しいんだ…決闘者の道を進むのか、それともダンサーになるのか…きっとキッカケがあれば…」
「そういう事か…でもさ遊戯、無理に決めさせる事もないと思うぞ?」
「うん…本当はそうなんだけど…悩み過ぎてあまりご飯も食べてないってアカデミアから連絡が来たんだ…」
「なるほどな…じゃあ会いに行ってみるよ、丁度明日は日曜でアカデミアの授業も休みだからな!連絡はしといてくれよ?」
「ありがとう遊海!君は本当に頼りになるよ!」
遊戯は俺の手を取って礼を言う
「気にすんなよ、俺とお前の仲だ─…ッ!!」
ドクン!
「ッ…ゴホッ!!?」
「遊海!?」
《マスター!?》
突然、遊海は吐血する…突然の事態にアヤカが実体化する!
「遊海!どうしたの!?」
「不味い…アカデミアの『結界』が…三幻魔の封印が破られた…!!」
「なんだって!?」
遊海の言葉に遊戯の顔色が青褪める…三幻魔を封印する七精門…その上に掛けた遊海の六重結界が破壊され…そのフィードバックが遊海に襲いかかったのだ…。
「以前の事もあってさらに堅くしたはず、なのに…!行かなければ…!遊戯、海馬社長に連絡を!俺はアカデミアに向かう!!」
「わかった!気を付けて!!」
「…マスター!騒がせてごめん!来い!閃光竜!!」
キィン─!
《キュオオン!!》
遊海に残された赤き竜の痣「ドラゴンフレイム」が輝き、白きドラゴンが召喚される…遊海はそのままアカデミアへと飛び出した…。
「クロノス校長─!!」
「この声はセニョール遊海!来てくれたノーネ!」
音速を越えて飛ぶ事10分…遊海はアカデミア本島…封印の祭壇近くにいたクロノスのもとに到着する!
「状況は!誰が三幻魔を!」
「信じられない事に犯人は生徒…しかも…
「そんな、まさか…!!」
遊海はクロノスの視線の先を見る…そこにいたのはオベリスク・ブルー制服を着た、毛先が赤い茶色のショートカットに金髪のメッシュが混じった女生徒…
「遊奈ちゃん…!?どうして君が!!」
『………邪魔を、しないで…!』
遊戯の娘…武藤遊奈本人だったのだ…。
「(どういう事だ…!いくらあの子でも俺の結界が破れるはずがない…!しかも彼女は見た限り
遊海はレイン恵による三幻魔強奪未遂を受けて結界にさらなる強化を施していた、それこそ自分の最強フォームであるコンプリートモードの一撃でも傷つかないほどの堅固さを持つ結界を構築した…。
しかし、現に結界は破られ三幻魔は遊奈の手にあるのだ…!
「セニョール遊海…!貴方の結界はセニョリータ遊奈が触れると同時に消し飛んでしまったノーネ!」
「なっ…!?そんな馬鹿な…!アヤカ、彼女をサーチしろ!」
《既にやっています!…っ!?》
「どうした…!」
遊海はアヤカの動揺を見て問いかける。
《三幻魔との適合率90%以上…さらに彼女から…以前に出会った『No.39』と同種のエネルギー反応を確認!!》
「ナンバーズ…嘘だろ…!?」
『私は…もっと、強くならなくちゃダメなの…!強く…強く…強く!!』ゴウッ!!
遊奈の身体から禍々しいオーラが溢れ出す…!
「セニョリータ遊奈!落ち着くノーネ!!いつもの明るい笑顔の貴女はどうしたノーネ!?」
「クロノス校長は下がっていてください!…今の彼女には何を言っても届かない…!決闘で無力化します!!」
遊海はデュエルディスクを構える…!!
『私の邪魔を…するなあああああ!!!』
『「デュエル!!」』
遊海LP4000
遊奈LP4000
「俺のターン!ドロー!」
「手札の『ブリューナクの影霊衣』の効果発動!このカードを墓地に送り、デッキから『影霊衣の術士シュリット』を手札に加える!さらに儀式魔法『影霊衣の降魔鏡』を発動!手札の『シュリット』をリリースする事で現われろ!レベル8!『ヴァルキュルスの影霊衣』!」
太古の悪魔の装備を纏った壮年の魔術師が現れる ATK2900
「そしてリリースされた『シュリット』の効果発動!デッキから戦士族の影霊衣儀式モンスター『トリシューラの影霊衣』を手札に加える!さらに『ヴァルキュルス』の効果発動!手札の『影霊衣の戦士エグザ』をリリースして1ドロー!さらにリリースされた『エグザ』の効果発動!デッキからドラゴン族儀式モンスター『ディサイシブの影霊衣』を手札に加える!さらに魔法カード『儀式の準備』を発動!デッキからレベル3の儀式モンスター『クラウソラスの影霊衣』を手札に加え、さらに墓地の『影霊衣の降魔鏡』を手札に戻す!」
「す、凄まじいスピードで手札が入れ替わっていくノーネ!?これが決闘王の本気なノーネ!!」
遊海の行う凄まじいタクティクスにクロノス校長も圧倒される…!
「待ってろ遊奈…すぐにその呪縛から開放してやる!!儀式魔法『影霊衣の万華鏡』を発動!エクストラデッキのレベル12『F・G・D』を墓地に送り!手札からレベル合計が12になるように儀式召喚を行なう!現われろ!レベル3『クラウソラスの影霊衣』!レベル9『トリシューラの影霊衣』!」
緑色の鎧を纏う鳥の戦士、そして最強の氷龍の力を纏う戦士が現れる! DEF2300 ATK2700
「カードを1枚伏せ、ターンエンド!!」
遊海LP4000
ヴァルキュルス クラウソラス トリシューラ 伏せ1 手札2
「凄まじい展開なノーネ…!」
「(やれる事はやった…幻魔の弱点は展開スピードの遅さ…次のターンで決着をつける!)」
油断なく遊奈を見据える遊海…しかし、遊奈は…
『あなたも、私の事を見てくれないのね…!どうして…どうしてどうしてどうして─!!!』
『私のターン!!ドロー!!』キィン─!!
「っ…!闇の力が強く…!!」
カードをドローした瞬間、遊奈を覆う闇の力が強くなる…!
『魔法カード「成金ゴブリン」を発動!相手のライフを1000回復させて1ドロー!さらに「手札断殺」を発動!お互いに手札を2枚捨てて2枚ドローする!!』
「なに!?」
遊海の手札が切り捨てられる!
遊海LP4000→5000
捨てたカード
影霊衣の降魔鏡
ディサイシブ
遊奈 捨てたカード
暗黒の召喚神
カオス・コア
「(『暗黒の召喚神』を墓地に落とした…!『死者蘇生』か何かで蘇生して…幻魔を呼び出すつもりか…!!)」
『そしてフィールド魔法『失楽園』を発動!さらに魔法カード「次元融合殺」を発動!手札の「幻魔皇ラビエル」「降雷皇ハモン」「神炎皇ウリア」を除外して融合!!降臨せよ…「混沌幻魔アーミタイル」!!』
「なっ…!?」
アカデミアの周囲が暗雲に包まれ、落雷が降り注ぐ…そして遊奈の背後に禍々しき混沌の悪魔…アーミタイルが現れる…!! ATK0→10000
「馬鹿な…後攻1ターン目で幻魔どころか『アーミタイル』を呼び出すだと!?そんな神引きまるで…!」
『「アーミタイル」は自分ターンの間だけ攻撃力が10000になる!バトルよ!!「アーミタイル」で「トリシューラの影霊衣」を攻撃!全土滅殺─転生波!!』
【ガギャアアアアン!!!】
禍々しいエネルギーがアーミタイルに収束する!
「まだだ!リバース罠『貪欲な瓶』を発動!!墓地の『F・G・D』『万華鏡』『儀式の準備』『シュリット』『ブリューナク』をデッキに戻して1ドロー!!」
『吹き飛べ─!!!』
キィィン─ドオォォン!!!
凄まじい爆発が周囲を覆い尽くした…
「ぐっ…何が、どうなったノーネ…!」
衝撃で失神していたクロノス校長が意識を取り戻す…周囲の木々は薙ぎ倒され、辺りには土煙が充満している…。
『……しぶといわね、アンタ』
「そりゃ、そうだ…俺は『決闘王』、だからな…!」
「ゆ、遊海!!無事なノーネ!?」
土煙が晴れた先…遊海はまだ立っていた、モンスターもフィールドに残っている…。
「手札の『ヴァルキュルスの影霊衣』の効果…墓地の『エグザ』を除外し、このカードを墓地に送る事で攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了した…っ…!」
遊海は膝をつく…その足下には10mほどの轍が刻まれている…。
『しつこい人は嫌われるわ……私は『失楽園』の効果発動!フィールドに『アーミタイル』がいる事でカードを2枚ドローする!…カードを2枚伏せてターンエンド』
アーミタイルATK10000→0
遊奈LP4000
アーミタイル 伏せ2 手札2
「…なんとか、耐えきった…!これなら!!」
遊海は足に力を入れて立ち上がる!
「頑張るノーネ!『アーミタイル』の攻撃力は0!今なら勝てるノーネ!!」
「俺のターン!ドロー!!」
「『ヴァルキュルス』の効果発動!手札の『クラウソラスの影霊衣』と『影霊衣の舞姫』をリリースして2ドロー!さらに『舞姫』の効果で除外されている『エグザ』を手札に加える!…そして手札の『カタストル』の効果発動!このカードを墓地に送り、墓地の『ディサイシブ』を手札に加える!!バトルだ!『トリシューラ』で『アーミタイル』を攻撃!」
氷龍の戦士が混沌の悪魔に跳躍する!
「さらに手札から『ディサイシブ』の効果発動!このカードを墓地に送り!『トリシューラ』の攻撃力を1000アップする!悪魔を穿て!!
ディサイシブの幻影に支援を受けたトリシューラが三叉槍を投げ放つ…槍は悪魔の頭部に直撃し身体を凍らせていく…しかし!
『無駄よ、「次元融合殺」で召喚したモンスターは戦闘ダメージを受けない!』
「なに!?」
ピシ…ピシ…バキン!!
【ガアアアアアア!!】
アーミタイルは氷を割り砕き、咆哮を轟かせる!!
「………ターンエンドだ」
遊海LP5000
トリシューラ クラウソラス ヴァルキュルス 手札3
「…クロノス校長、頼みがあります…
「遊海、何を…」
クロノス校長は遊海の突然の言葉に聞き返す…
「今の俺の状況では、彼女を止められません……後を頼みます…!トフェニ!校長を連れて撤退しろ!!」
《っ…御意!!》
「な、何をするノーネ!?遊海…遊海─!!」
トフェニに抱えられクロノス校長が離脱していく…
『私のターン…ドロー!』
『速攻魔法『異次元からの埋葬』を発動!除外された『ラビエル』『ハモン』『ウリア』を墓地に戻す!そして永続罠「ハイパー・ブレイズ」を発動!手札の「暗黒の招来神」を墓地に送り…召喚条件を無視して蘇れ!「幻魔皇ラビエル」!!』
青き悪魔が混沌の悪魔に並び立つ ATK4000
「っ…!!(身体が、震える…!どうして、こんな事になった…!!何故…!!)」
『バトル!「ラビエル」で「トリシューラ」を攻撃!天界蹂躙拳!!』
青き幻魔の拳がトリシューラを粉砕する!
「ぐあぁぁ…!!」
遊海LP5000→3700
『「アーミタイル」で「ヴァルキュルス」を攻撃!!全土滅殺転生波!!』
全てを蹂躙する破滅の嵐が遊海を飲み込んだ…。
遊海LP0
遊奈WIN…
──────────────────────
「……(何かが、おかしい…あんなコンボが、成立するなんて…ありえ、ない…)」
アーミタイルの攻撃が直撃した遊海は全身に酷い怪我を負い、地面に倒れていた…遊奈は既に姿を消している…。
《マスター!しっかりして…!意識を─!》
「(こんな負け方するなんて…何年、振りだ…?油断はなかった…慢心もない…でも、
小さな違和感を覚えつつ、遊海の意識は闇に沈んでいった…。
──どうして、誰も「私」を見てくれないの…?私は「私」…!「決闘王」の子供でも…「世界一のダンサー」の娘でもない…!!私は──!
少女の叫びが、聞こえたような気がした──