転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話 作:S,K
「なぁアストラル〜!さっき白野と何話してたのか教えてくれよー!」
(大した事は話していない、私の疑問の確認と「No.93」について聞いていただけだ)
「だーかーら!そのお前の疑問を教えてくれって!」
遊海と別れた遊馬達は対戦相手を探しながらハートランドを歩いていた…しかし、時刻は夕食時…そして残っている決闘者も半数近くになっている為に中々相手が見つからなかった…。
「遊馬…今日はもう終わりにしない?もう時間も時間だし…パトカーも多くなってきたし…」
「ん…?たしかにパトカーが多いなぁ…」
小鳥の言葉に遊馬は辺りを見回す…先程からハートランド中にパトカーが走り回り、厳戒態勢が敷かれている…。
ピコーン!ピコーン!
「ん?姉ちゃん?どうしたんだ?」
『遊馬!アンタ今どこにいるの?』
遊馬のDゲイザーが着信を知らせる…その相手はデュエル飯を握る明里だった…。
「どこって…ハートランド学園の近くだけど…」
『ちょうど良かったわ!今すぐにハートランド駅前の広場に行ってちょうだい!今すぐに!!』
「今すぐ!?どうして…」
『その広場にチャーリーっていうカウボーイハットを被った男がいるはずよ!私が広場に行くまで逃げないように捕まえておいて!!』
「わ、わかった─!!」
姉の凄まじい剣幕に遊馬は慌てて駅前へと向かった…。
「『潜航母艦エアロシャーク』の効果発動!ORUを1つ取り除き、手札の枚数×400ダメージを与える!!」
『うわあぁぁ!!』
遊馬が駅前広場に到着する…そこでは凌牙が対戦者相手にパーフェクトゲームで勝利していた…。
「シャーク!やっぱりWDCに出てたんだな!」
「遊馬…ああ、やらなきゃならねぇ事ができたんだ…!だから…目的を果たしたらリタイアするつもりだ」
「目的…?なにかあったのか?」
思いつめた様子の凌牙に遊馬は問いかける…。
「…白野さんから聞いてるだろ?俺が全国大会で負けた相手…Ⅳがこの大会に姿を現した…!そいつは俺を罠に嵌める為に…無関係の人間を…!!!」
凌牙は悔しげに拳を握り締める…!
「俺はそのケリを着けなきゃなんねぇ…!」
「シャーク…お前も白野さんの弟子ならわかってるだろ?デュエルにぶつけていいのは純粋な思いだけだって…だから…」
「お前に言われなくてもわかってる…俺は奴を一発ブン殴りたいだけだ…!それより…お前は何しにきたんだ?ハートピースは集めは終わったのか?」
「いや、それが姉ちゃんにカウボーイハットのチャーリーって男を捕まえとけって言われてさ…シャークは見てないか?」
「カウボーイハットの男…?あそこの上にいる奴じゃねぇか?」
凌牙は駅前広場のペデストリアンデッキ*1※を指差す…その手すりにカウボーイハットを被り、ポンチョを身に着けた男がいたのだ…。
「あの人か…?サンキューシャーク!助かったぜ!」
「ああ…俺も行ってやる、捕まえとけっていうのも物騒な話だしな」
「お〜い!あんたがチャーリーか?」
『ん?なんでお前がオレの名前知ってんだ?』
「俺は九十九遊馬!明里姉ちゃんの弟だ!姉ちゃんからアンタを捕まえておけって言われたんだ!」
『一馬先生の息子!?』
遊馬の話しかけたポンチョの青年…チャーリー・マッコイは驚いた表情をみせる…。
『オレを捕まえておけって…お前の姉ちゃんらしいなぁ…』
苦笑いを浮かべるチャーリー…その時だった。
『おい!カウボーイハットの優男!ハートピースを賭けてデュエルしやがれ!』
「WDCの参加者か…」
チャーリーに対して不良風の男が声を掛ける…WDCの参加者は挑まれたデュエルは断る事ができない…!
『やれやれ…しょうがねぇ、オレは参加者じゃねぇんだが…そこの少年のハートピースを賭けてデュエルといこうか!』
「ちょっ…!?勝手にオレのハートピースを賭けるなぁ!?」
チャーリーのあまりに身勝手な言葉に遊馬は驚愕する…。
『心配すんなよ、オレはこのカードの
そう言ってチャーリーはデュエルを始めてしまった…。
『ライフ・イズ・カーニバル!!太陽が真っ二つにならない限り…オレの運が尽きる事はない!』
「なに言ってんだこの人…まだ勝つつもりでいるのかよぉ…」
「絶体絶命の状況でここまでだと…逆に呆れるぜ…」
デュエルはチャーリー不利で進む…相手の場には『ダイガスタフェニクス』『サンダーエンドドラゴン』『カチコチドラゴン』の3体が並び、チャーリーの場には伏せカードが2枚のみで残りライフ100…まさに絶体絶命の状況…しかし、チャーリーは不敵に笑っている…!
『さぁ、いくぜ!魔法カード「リロード」を発動!手札3枚を戻して3枚引く!そしてリバース魔法「トリプルエース」を発動!手札のレベル1の同名モンスター「ダイスロットセブン」3体を特殊召喚!』
「えっ…!?今のドローで引き当てたのか!?」
「馬鹿な…!デッキが混ざってなかったんじゃねぇか!?」
チャーリーの場に3体のモンスターが現れる…だが、まだ終わりではない…!
『「ダイスロットセブン」はサイコロを振って出目の数字分レベルアップする!ダイスロール!』
3つのサイコロのARビジョンが転がる…その出目は3つとも『6』だった…!
(サイコロを3回振って6を出す確率は216分の1だ…!普通ならばありえない!)
「ありえない事が起きる…それってもしかして…!」
アストラルの言葉で遊馬はその可能性に気づく、ありえない事が起きるなら…
『オレはレベル7の「ダイスロットセブン」3体でオーバーレイ!』
07
『あらわれろ!「No.7ラッキー・ストライプ」!』
《ラッキー…セブン!!》
チャーリーの場に縞々のルーレット型オブジェが現れて変形…「07」の数字が刻まれたステッキを持つナンバーズが現れる!
(「「「ナンバーズ!?」」」)
チャーリーの召喚した「ラッキーストライプ」に遊馬達は驚愕する…!
『そしてオレは魔法カード「ドリームダイス」を発動!サイコロを振って6が出れば相手のモンスターの攻撃力は0になり、6以外ならオレの場のモンスターの攻撃力が0になる!ダイスロール!』
再びダイスを振るチャーリー…その出目はまたしても6!
『さらに「ラッキーストライプ」の効果発動!ORUを使ってサイコロを振る!このカードの攻撃力はその出目×700の数値になる!ダイスロール!』
再び振るわれるサイコロ…出目は6!
(ここまで連続で6が出るのは7776分の1の確率だ!)
アストラルが瞬時に確率を計算する…そのままチャーリーは相手に勝利してしまった…。
「おい!!どうしてアンタがナンバーズを持ってるんだよ!?」
『あん?それはなぁ…』
デュエルが終わり、チャーリーに詰め寄る遊馬…その時だった…!
『チャーリー・マッコイ!!博物館からカードを盗んだ容疑で逮捕する─!!』
「「えぇっ!?」」
チャーリーを包囲するようにたくさんの警察官やパトカー、ヘリコプターが集結する…チャーリーの持っていた「No.7」はハートランドの博物館に収蔵されていたモノ…チャーリーはそれを盗み出していたのだ…!
『しょうがねぇな〜、オレは大人しくするけどよー…
手を頭の後ろで組み、観念するチャーリー…その時…!
キィン─! ビュオオオー!
「な、なんだぁ─!?」
ナンバーズが光った瞬間、チャーリーを中心に竜巻が発生…警察官の装備や看板…そして…!
「うわっ!?『ビックアイ』が!?」
「っ!?『エアロシャーク』!!」
周囲にいたデュエリストのカードケースが風圧によって開き、
『だから言っただろ?
吹き飛ばされたカード達は吸い寄せられるようにチャーリーの手に収まる…!
『遊馬!明里の奴が来たら謝っといてくれ!じゃあな!!』
「あっ!?待ちやがれ!ナンバーズを返せぇぇ─!!」
混乱する周囲を尻目にチャーリーは逃走する…遊馬達は慌ててチャーリーを追い掛けたが…人混みに紛れてすぐに見失ってしまった…。
「クソ…!あのふざけた野郎は何処に行った!!」
「逃げ足が速すぎだぜ…!」
「まさかナンバーズを持ってたなんて…!」
遊馬達は見失ったチャーリーを探す…
ブルルル! キキーッ!!
『遊馬!この騒ぎ…チャーリーの仕業ね!?』
「姉ちゃん!!」
遊馬達の前に1台のバイクが現れる…それはライダースーツを身に纏った明里だった…!
『あの男はチャーリー…お父さんの大学の教え子でトレジャーハンターを気取ってる男よ…!久々に顔を見せたと思ったら─!!』
明里は遊馬達に事情を説明する、遊馬達の父である一馬の教え子でありトレジャーハンター…そしてチャーリーの手にしていたカードは『持ち主が絶対的強運を手にする』という曰く付のカードで博物館から盗まれたらしいという事だった。
『いいアンタ達!絶対にチャーリーを捕まえるわよ!』
「おう!カードを盗まれてるのに…このまま逃してたまるか!」
盗まれたカードとナンバーズを取り戻す為に九十九姉弟は気合いを入れるが…
「待て、あいつが何処に逃げたかわからねぇ…闇雲に探してたら時間の無駄だ…!」
凌牙が声を上げる…ハートランドシティはそれなりに広い、それこそ街の外に出られたら探しようがないだろう…。
(…ライフ・イズ・カーニバル…チャーリーが言っていた言葉……私はその言葉を見た事がある、たしか以前に遊馬とモノレールに乗った時…ベイエリアの建物だ!彼はそれを目にしたのではないか?)
「ベイエリアの文字…!今は手がかりがそれしかねぇ…!みんな!ベイエリアのモノレールだ!あそこの終点は街の外への乗り換え場所だ!」
アストラルの言葉を聞いた遊馬は急いでベイエリアへと向かった…。
『へぇ…!よく此処に来るってわかったな…!流石は一馬先生の息子だ!』
結果的に遊馬とアストラルの推測は当たっていた、チャーリーは「No.7」の効果を使って警察から逃れたあと、雷によって走り出したモノレールへと乗り込んできたのだ…!
「おいテメェ…!俺達から奪ったカードとナンバーズを返しやがれ!」
『おお怖い…!返して欲しけりゃ…オレとデュエルしてもらおうか!』
「「なんだと!?」」
チャーリーに凄む凌牙…そんな彼らにチャーリーはよりによってデュエルでの決着を提案したのだ…!
『実はこのモノレール…
「テメェ…盗人猛々しいにも程があるぜ!」
「そのデュエル…乗った!!」
「「遊馬!?」」
遊馬はチャーリーの提案を受け入れる…!
『いいねぇ!!ライフ・イズ・カーニバル!!全ては運次第だ!さぁ、デュエルを楽しもうぜ!!』
「小鳥!シャーク!オレが時間を稼ぐ!このモノレールを止める方法を見つけてくれ!!」
場所をなぜかモノレールの屋根へと移したチャーリーと遊馬はナンバーズを賭けて戦いへと臨む!!
『「デュエル!!」』
デュエルダイジェスト 遊馬対チャーリー
Side凌牙
「チィ…!緊急停止装置も動かねぇ!これじゃあどうしようも…!デュエルはどうなってる!?」
「大変な事になってるわ…!チャーリーのライフが10万まで上がってる…!」
「くそっ…!俺達ができる事はねぇのか…!?」
凌牙と小鳥は焦っていた…遊馬がチャーリーとデュエルしている間にモノレールを止めようとしていたが…緊急停止装置もインターホンも作動しない…!唯一動いていた行き先表示のディスプレイがあと約10分で終点に着く事を知らせている…!
「…シャーク!白野さんに連絡して!!それしか方法はないわ!!」
「っ…!?なんでそこであの人が出てくる!」
小鳥な言葉に凌牙は驚きの表情をみせる、たしかに白野は人にはできない事ができる…だが、モノレールを止める事はできない…凌牙はそう思っていた。
「………白野さんは、メタルナイトなの!あの人の力だったら止められる!!」
「なに!?どういう事だ!?」
「説明はあとでするわ!!お願い!!」
「っ〜!後で色々聞かせてもらうぞ!!」
凌牙は疑問を飲み込みながら白野へとコールする…。
『ジジ…もし、もし…?』
「白野さん!凌牙だ!今何処にいる!」
『凌、牙…?どうし、たんだ…?』
白野が電話へと出る…電波の悪い場所にいるのか声が途切れて聞こえてくる…。
「遊馬がナンバーズ持ちの奴とベイエリアの暴走モノレールに乗ってデュエルしてる…!このままじゃ、あと10分もしないで終点の駅に激突する!」
凌牙は簡潔に白野へと用件を伝える…!
『…わか、た……すぐ──行く…!!』ブチン
「遊馬…!あとはお前次第だ…!!」
凌牙はモノレールの天井を見上げた…。
SideOUT
Side遊馬
07
『現れろ!「No.7ラッキー・ストライプ」!』
《ラッキー!セブン!!》
「出てきたな…!」
遊馬とアストラルは追い詰められていた、ナンバーズの力によって周囲の人間の「運」を吸収し所有者に強運を齎す「ラッキーストライプ」…チャーリーはその力を使いこなし、魔法カード「バイバイゲーム」の効果によりライフ10万、さらに遊馬の場にはモンスターがいないという状況まで追い詰めていた…!
『わかったか遊馬!お前の親父さん…一馬さんは俺にとって憧れの存在だった!あの人は全てを持っている人だと思っていた…だが、たったひとつ持っていないものがあった!それが運だ…!ほんの少し運があれば…あの人は行方不明になんてならなかった…!人にはここぞという時に絶対に負けられねえ勝負がある運に縋ってでも勝って…オレには行かなきゃならん場所がある!!『ラッキーストライプ』の効果発動!ダイスロール!」
再びサイコロを振るチャーリー…その出目はやはり6!
『バトルだ!「ラッキーストライプ」でダイレクトアタック!これで終わりだ!!』
「まだだ!リバース罠『奇策』!手札の『ズババナイト』を墓地に送って『ラッキーストライプ』の攻撃力を1600ダウンさせる!」
間一髪で遊馬は攻撃を躱す…そこに明里からの連絡が入る…!
『遊馬!アンタ「ラッキーストライプ」に苦戦してるんでしょ!あのカードには言い伝えがあるの!「太陽が2つに分かれる時…その力、風となりて去らん」…それが「ラッキーストライプ」の運を無くす方法なの!!』
『だから言ってるだろ!ライフ・イズ・カーニバル!!
チャーリーの言ってるいる言葉は正しい…今は太陽の沈んだ夜…朝にならなければ太陽は現れず、ましてや2つに割る事など不可能だからだ…!
『諦めろよ遊馬!用が終わったらこのカードは返してやる、だからサレンダーしろ!』
「断る!!オレは…最後まで諦めねぇ!!」
遊馬はチャーリーの言葉を一蹴する…ライフが無くならない限り、決闘者は立ち上がる事ができる…!
39
「現れろ!『No.39希望皇ホープ』!『ラッキーストライプ』を攻撃─!」
返しのターン、遊馬は切り札である『ホープ』を呼び出して攻撃を仕掛ける…しかし、またしてもチャーリーの運が襲いかかる…!
『リバース罠「ダイス・クライシス」発動!相手が攻撃してきた時!サイコロを振って6ならそのモンスターのコントロールを得る!出目は…当然6だ!』
「『ホープ』!!」
チャーリーの罠によって「ホープ」のコントロールが奪われる!
『諦めろ遊馬!もう終点も近い!お前じゃ…オレの運には勝てない!』
「うるせぇ─!運が無くたって全ての力を出しきって戦う!それがデュエルだ!それが父ちゃんの教えてくれた事だ!父ちゃんは運になんて頼ってない!自分の力で道を切り拓いて来たんだ…!だからオレも…オレは絶対に諦めねぇ─!!」
遊馬は吼える…父の教えを胸に刻み、最後まで諦めはしないと…!
『わかったよ…なら終わらせてやる!オレのターン!ドロー!』
「罠カード『剣の采配』!フィールドに光属性・戦士族のモンスターがいる時!ドローフェイズに相手がドローしたカードを確認する!そのカードが魔法か罠ならばドローしたカードかフィールドの魔法・罠を破壊できる!!」
遊馬は逆転を賭けた1枚を発動させる!
『…なるほどな、「ダイスクライシス」を破壊して「ホープ」を取り戻すつもりか…だが、甘いぜ!オレの引いたのは永続魔法「太陽の祭壇」!「ホープ」を取り戻したとしてもこのカードを発動してサイコロで6が出れば相手のモンスターは全て破壊される!オレの運は尽きない!
「くそ─!!!」
チャーリーの言葉に遊馬は無念の叫びをあげる…だが、それは決して無駄ではなかった…!
(太陽を切る…真っ二つ…「
「アストラル!…『剣の采配』の効果発動!『ホープ』!『太陽の祭壇』を切り裂け─!!」
アストラルの言葉を聞いた遊馬が…「ホープ」が太陽の祭壇を斬り捨てる…そして、変化は起きた…!
キィン─パリーン─…
『な、なにぃ─!?』
「太陽の祭壇」が破壊された瞬間、チャーリーの身体から光が抜け出していく…それはチャーリーを守っていた「ラッキーストライプ」の特殊能力が効果を失った証だった…。
『そ、そんなはず…そんなはずはない!!「バイバイゲーム」の効果発動!ダイスロール!!』
動揺したチャーリーはサイコロを振る…出目は
『ば、馬鹿なぁぁー!?』
「バイバイゲーム」のデメリットによりチャーリーのライフは4000に戻る…絶対的強運はついに失われたのだ…!
(遊馬!今だ!)
「おう!オレのターン!ドロー!魔法カード『カムバック』を発動!戻って来い!『ホープ』!」
運が失われた事で戦意喪失したチャーリーを倒す為…遊馬は友情の切り札を呼び醒ます!
39
「カオスエクシーズチェンジ!現れろ!『CNo.39希望皇ホープレイ』!!」
混沌を光に変える剣士が降臨する!
「いっけぇ!『ホープレイ』!ホープ剣カオススラッシュ!!」
『っ…うわああああ…!!』
自身の効果で攻撃力を4000まで上げた『ホープレイ』によってデュエルは遊馬の勝利で決着した…。
チャーリーLP0
遊馬&アストラルWIN!
「まだよ遊馬!!もう終点まで時間がない!ぶつかっちゃう!!」
「な、なんだって〜!?」
小鳥の言葉で遊馬はモノレールの先を見る…そこにはもうそこまで迫った終着駅が見えていた…!
「ダメだ間に合わねぇ!!全員何かに掴まれぇぇ─!!」
凌牙が声を上げる…時速100キロ近くで進むモノレール…それを止める方法は…
『かっとビングよ─!わたしぃぃ!!』
「姉ちゃん─!?」
その時、モノレールと並走していたバイクに乗った明里がモノレールの前に飛び出す…明里はバイクをモノレールに当てて挟ませる事で止めようとしたのだ…だが!
『(ダメだ…!スピードが速すぎる…!轢かれる!!)』
明里の予測より勢いのついていたモノレールは止まらない…!モノレールは線路に着地した明里に迫り─
「絶対零度」
『えっ…?』
明里は目を開ける…その目の前には凍りついて停止するモノレール、そして…。
「あまり、無茶を…するな……かっとビングにも、限度が、ある…」
『メタル…ナイト…!』
明里を庇うように前に立つ鋼の戦士の姿があった…。
「白…メタルナイト!来てくれたのか!」
「ああ、遊馬…お前も、濃い一日だった…みたいだな…」
モノレールの車両を飛び移ってきた遊馬が遊海へと声を掛ける…。
「早く、降りて、来い…警察…来る…ぞ……」
「わかってる!チャーリーからナンバーズを回収して……なぁ、大丈夫か?声が…」
「……大丈夫、では…ない、か…な……」フラッ
『メタルナイト!!』
遊海はそこで完全に意識を失った…。
『真由美!!』
「おじちゃん…!来てくれたの…?」
『ああ…手術、頑張るんだぞ?ほら…お守りのカードだ…かっとビングで頑張るんだぞ?』
「うん…!かっとビングでがんばる…!」
「…まさか『No.』をお守り代わりに渡そうとするとはな…やる事がデカ過ぎるぜ…」
「なんでも…難しい手術らしいからな、『運』に頼りたくなる気持ちもわかるぜ…」
少し時間が経ち、遊馬達は病院にいた…チャーリーがナンバーズを求めた理由、それは難手術に臨む知り合いの少女を救う為だったのだ…。
(君に免じて「ラッキーストライプ」をあの子に渡したが…本当に大丈夫だろうな…?)
「まぁ、大丈夫だと思うぜ?あの子のお母さんにも返してもらうように伝えたし…それより問題は……」
「白野さん…!誰がアンタをこんな目に…!!」
遊馬達は1つの病室に入る…そこには全身を包帯で巻かれた遊海が眠っていた…。
「遊海君、凌牙君…教えてくれてありがとう、助かったわ…」
遊海の枕元には翠が座っている…凌牙からの緊急連絡を受けて駆けつけたのだ…。
「助けられたのは俺達の方だ…白野さんが身体を張ってモノレールを止めてくれたから…しかも、こんなにボロボロの体で…」
モノレールを停止させた遊海はそのまま気を失った…全身が痣と切り傷だらけ…まるで何かの爆発に巻き込まれてしまったようだった…。
《…マスターは…ルドガーとの戦いの後に再びナンバーズ持ちとの戦いに巻き込まれたのです…勝利したもののその後に気を失って…凌牙からの連絡を受けてなんとかあそこまで辿り着いたのです…》
「そうだったのか…ありがとうアヤカ」
「…白野や翠さんが精霊使いか…やっぱりそうだよな…なんだか見られてる気がしたんだ…」
遊馬と凌牙はアヤカから説明を受ける…最初は凌牙も驚いていたが…自分の養父母の真実を受け入れて納得している…。
(アヤカ、そのナンバーズは回収できたのか?)
《いいえ…回収する前に逃げられてしまいました…気をつけなさいアストラル、WDCには私達の想像し得ない陰謀が隠されているかもしれません》
(忠告、感謝する…胸に留めておこう)
「…今日はもう遅いわ、明日も予選は続くから…早く休んでね!」
「「はい…!」」
そうして遊馬達は帰路についた…言いしれぬ不安を感じながら…。
「…アヤカちゃん、遊海さんは…」
《バイロン…トロン、並びにⅤと接触しました…マスターは「紋章」の力で魂まで損傷を受けています…目覚めるのに少し時間がかかるかもしれません…マスターは、兄弟を守れなかったと泣いていました…》
「…遊海さん…」
その日…翠は遊海の横で夜を明かした…遊海と同じアークライト兄弟への想いを抱きながら…。