転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話 作:S,K
「イタタタ…身体が、固まってる…」
《しょうがないですよマスター…昨日どれだけの無茶をしたと思ってるんです?》
凌牙が平静を取り戻してWDCに戻った後、遊海はベッドの上で軽く上半身のストレッチをする…体はガチガチに固まっていた…。
「…正直、トロンと戦った後から記憶がない…気づいたらベッドの上だし…」
《やれやれ…重症だな、凌牙からの連絡以降はほとんど無意識に動いていたらしい…》
『無意識って訳じゃねぇぞ…たくっ、仮にも父親が息子を助けない訳にはいかねぇだろ?』
「そういう事か…ありがとなユウスケ」
遊海の隣に半透明のユウスケが現れる…気を失った遊海に代わってユウスケがモノレールを止めたようだ…。
『たくっ…痛みには慣れてるけど過労は別モンだ!あんまり無理すんじゃねぇ!!ここぞって時にぶっ倒れたら意味ねぇからな?』
「…反省してます…」
ユウスケに叱られた遊海は肩を落とす…
《まったく…まだ時間はある、今日はゆっくり休むべきだろうな》
「そうしたいのは山々なんだけどな…」
遊海は外の景色を眺める…優勝を目指して競い合う数多のデュエリスト達…空にはその様子を眺めるかのように飛行船が浮かんでいた…が!
ボォォン─!!
「そうも、いかないらしい─!!」
飛行船のジェットエンジンが火を吹く…遊海は痛む身体を押して再び街へと飛び出…─
ドンガラガッシャーン!!
「痛っ…てぇ…」
…飛び出そうとしてベッドから転げ落ちた…。
《………無理をしないでくださいマスター…昨日のダメージが抜けきってないんですから…》
「……鍛錬は、欠かしてないんだけどなぁ…」
《ソレとコレは…別モノだろう…行きたければ早く回復せい…》
『馬鹿は死ななきゃ治らな……死んでも治ってないな、このお人好しは…』
アヤカとメガロックとユウスケは深い溜息をついた…。
Side遊馬
「シャークの奴、大丈夫かな…」
凌牙と別れた遊馬は小鳥と共に道を歩いていた…Ⅳに痛めつけられた鉄男と委員長は特に大きな怪我もなく、自宅で休んでいる…。
「Ⅳの奴はデュエルで人を傷つけるひどい奴だった…それでシャークの因縁の相手で……デュエルをしたらみんな仲間…そのはずなんだよな…それなのに…」
遊馬は独り言を漏らす…デュエルで人を傷つけたⅣ…そしてⅣを目の敵にする凌牙…「デュエルをすればみんな仲間」という信条の遊馬にとって2人の関係は辛い事だった。
「…ねぇ!遊馬!少し気分転換しない?」
「気分転換?」
考え事をしている遊馬に小鳥が話しかける。
「WDCの期間限定で飛行船が飛んでるんだって!空からハートランドを見てみようよ!」
(飛行船…空を飛ぶ乗り物か、少し興味があるな)
「気分転換か…そうだな!ちょっと乗ってみるか!」
アストラルも興味を示した事で気になったのか…遊馬は小鳥の提案に賛成する!
「よーし!あと20分位で出るらしいから早く行きましょう!」
Dゲイザーで時間を調べた小鳥と一緒に遊馬は走り始めた…。
ピコーン!ピコーン!
「わわっ!?こんな時に電話かよ!わりぃ小鳥!先に行っててくれ!」
「えっ…もう、しょうがないなぁ…先に受付してるからね!」
遊馬のDゲイザーが着信を知らせる…時間も間近だった為に小鳥は先に飛行船へと向かった…。
「もしもし!どうしたんだよ姉ちゃん!?」
『遊馬!アンタ「速水秀太」って奴を知ってる!?』
「速水…?誰だよそれ?」
電話の相手は明里…バイクに乗りながら連絡しているらしく…少し焦っている…!
『速水はWDCの参加者よ!…彼にこれ以上事件を起こさせたくないの!』
「事件を起こす…?それどういう事だよ?」
遊馬は明里に問いかける…明里曰く、速水には「未来の出来事を写真に撮る」事ができるらしい…しかも、その出来事がことごとく
『アイツ曰くその力があるからデュエルでも負けないらしいわ!とにかく速水を見つけたらすぐに連絡する事!いいわね!?』
「わ、わかった…!」
(遊馬、明里の話が本当ならその男はナンバーズを持っている可能性がある…確かめてみる価値はありそうだ)
「そうだな…とりあえず小鳥を追いかけないとな!オレ一人じゃちょっと大変そうだ!」
明里の剣幕とアストラルの言葉を受けた遊馬は小鳥を追いかけて走り始めた…。
「お〜い!小鳥ー!どこだ〜?」
(…飛行船の姿もない、どうやら君を待ちかねて先に行ってしまったようだな…)
「そんなぁ…Dゲイザーで連絡してみるか?」
しばらく走った遊馬は飛行船の発着場に到着するが…飛行船の姿も小鳥の姿もない…先に出発してしまったようだ。
「あら?遊馬君どうしたの?」
「あっ…翠さん!?どうしてここに?」
困ったように頭を掻く遊馬…そこに翠が通りかかる。
「白野さんの着替えを取りに行くところだったの!それにフォウくんもついて来ちゃってたから…」
《フォウ!》
翠の髪の中からフォウが顔を出す
「それよりどうしたの?困ってるみたいだけど…」
「それが…小鳥とはぐれちまって…飛行船に乗っちまったみたいなんだ…」
「あら…飛行船のコースは…後30分もすれば戻ってくるみたいね!喧嘩でもしちゃったの?」
「いや…飛行船に乗る前に姉ちゃんから頼み事の電話がきて…小鳥に手伝ってもらおうと思ったら…」
(小鳥とはぐれてしまったのだ、明里からは速水秀太という男を探してほしいと頼まれている…その男はナンバーズを持っている可能性がある)
遊馬の言葉を引き継いでアストラルが事情を説明する…。
「そういう事ね…私も一緒に探す?」
(協力してもらえるならありがたい…だが、相手の姿がわからない…ナンバーズの気配を追うしかないだろう)
「勝手に話を進めるなって!…でも翠さんが協力してくれるなら百人力だぜ!」
「あらあら…頼られたからには頑張らないとね!」
遊馬に協力する事になった翠…その時だった…!
(遊馬、ナンバーズの気配だ!近いぞ!)
「なんだって!?」
アストラルの感覚がナンバーズの気配を察知する…遊馬達は急いでその方向へと向かった…。
「っ…!?あれは!?」
25
辿り着いた裏路地…そこではデュエルが行われていた、相手はハンチング帽を被った少年とガラの悪そうな男…そしてハンチング帽の少年の場には「25」の数字が刻まれたカメラ型のモンスターが佇んでいた…!
『僕の撮る写真には未来が写る…!その未来には逆らう事ができない!必殺影キル・ショット!』
『うわぁぁ─!?』
デュエルはハンチング帽の少年の勝利に終わる…そして少年はデュエル前に撮ったのであろう写真を相手に投げつける…。
『ほらみろ…僕の撮った写真の未来は変える事はできない…必ず予言は「現実」となる!』
「カメラ…写真…予言…!アイツが速水か!!」
(やはり、ナンバーズ使いだったか…!)
投げつけられた写真を見た遊馬が明里から聞かされた速水の特徴を思い出す…そして、遊馬は速水の行動を見て怒りを抱く…!
「どうしてデュエルをこんな風に使うんだ…!デュエルは…本当は楽しいもののはずなのに…!!」
「…遊馬君、あなたの怒りは正しいわ…デュエルは楽しむもの、それがデュエルの本質…これ以上あの子に好き勝手にさせてはダメよ!追いかけましょう!」
「おう!!」
遊馬達は急いで速水を追いかけた…。
「待て!速水秀太!!」
『ん?君は…さっきのデュエルを見ていた少年か?』
遊馬はしばらく進んだ先の広場で速水に追い付いた…そして問いかける…!
「なんでデュエルであんなに酷い事ができるんだ!デュエルは楽しむもの…デュエリストはみんな仲間だろ!?」
『フン、何故あんな事をするのかって…もちろん全てのナンバーズを集める為さ…!今まで当たった事はないけどね…僕は良い写真を撮りたい!!その為にナンバーズを集めるのさ!!』
「っ…!完全にナンバーズに取り憑かれてやがる!!」
速水は狂気を宿した表情でナンバーズを集める理由を語る…写真に熱中する思いが強すぎてその力の虜になってしまっている…!
『君はナンバーズを知ってるのかい?』
「ああ、持ってるよ!!」
『そうですか…ならそのナンバーズを奪わせて…』
ドルルル…ギュイーン!!
「ようやく見つけたわよ─!!」
「姉ちゃん!?」
「明里ちゃん!」
にらみ合う遊馬と速水…その2人の間に生垣を突っ切りながら1台のバイクが乱入する…それは明里だった…!
「遊馬!見つけたらさっさと連絡しなさいって言ったでしょ!?…速水秀太!私を覚えてる?…いいえ、私を覚えていなくてもあなたの写真をことごとくボツにしたネットニュースの編集長は覚えているはずよ…!」
『ええ…覚えてますよ…!「君の報道写真にはインパクトが足りない」と言われた事をね…!』
速水は明里を睨みながら言葉を返す…その目は狂気に歪んでいる…!
「その編集長がアンタと独占契約したいなんて言ってるけど…私は認めない!人の命を危険に晒してまでスクープ写真を取ろうとする奴なんて……私は絶対に認めない!!」
明里は拳を握り締めながら速水に詰め寄る…記者でありジャーナリストでもある明里のプライドは速水の写真を認めていない…!
『心外だなあ…僕はただ、良い写真を撮りたいだけですよ?』
「その為に怪しげな力を使って未来をねじ曲げているっていうの?…さっきの事故、あなたが起こしたんでしょ?未来を思うがままに操る力があるとか言ってたわね…!!」
「未来を操る…?」
明里は1枚の写真を速水に見せつける…そこには工事現場で事故に巻き込まれるデュエリストの姿が写っていたが…その事故は不自然な状況で起きた…まるで
『…ええできますよ!ナンバーズの力でねぇ!!』
「「「っ…!!」」」
速水の言葉に遊馬達は警戒を強める!
『見てたのなら信じて貰えますよね?…その写真は差し上げますからとっととこの場からいなくなってくれます?編集長にあげればきっと喜びますよ?何せ僕は多忙の身なんでね…僕はこれからデュエルをしなきゃならない、そこの少年とね?』
速水は遊馬を睨みつける…!
『貴女も記者ならこんなところで油を売っている暇はないでしょう?貴女にもう一枚取って置きのスクープ写真をあげましょう…ホントはすごく惜しいんだけど、貴女をこの場から去らせるには仕方がありません」
そう言って速水は1枚の写真を明里に投げ渡す…そこには…
「小鳥ちゃん!?」
「小鳥─!?」
(この写真は…!)
その写真に写っていたのは飛行船に乗っている小鳥の写真だった…だが、ただの写真ではない…そこに写っていたのは煙が充満しパニックに陥った船内で幼い少女を抱きしめる小鳥の姿だったのだ…!!
『おや?君達は彼女の知り合いだったのか…なら急いだ方がいい…間もなくハートランドシティ上空で飛行船のエンジントラブルによる事故が起きる…その写真は墜落寸前の船内を撮った大スクープ写真だ…!!』
「っ─!!小鳥!返事をしてくれ!小鳥!!」
『遊馬?ごめん!遊馬が来るの遅いから先に飛行船乗っちゃった!すごい良い景色よ〜!』
遊馬はDゲイザーで小鳥に呼び掛ける…通話に出た小鳥は無事そうだが…
「小鳥!なんか異常はないか!?周りで変な事は起きてないか!」
『えっ…異常って─』
ドドォォン!!
『きゃあぁぁぁ─!?』
「小鳥─!?」
爆発音と共に通信が乱れる…飛行船のエンジンが発火したのだ!!
「遊馬!飛行船は私がなんとかする!!コイツから目を離さないで!!」
明里はバイクを飛ばしてその場を離れる…!
『やれやれ…やっとうるさいのがいなくなった…あなたはどうするんですか?紫髪の美人さん?』
速水は自身を睨みつける翠に問いかける
「…速水秀太君、あなたは間違ってる…カメラは『真実』を切り取るもの…絶対に『ねじ曲げた未来』を撮るものじゃないわ!」
『貴女もそんな事言うんですか…これは現実です!僕が写した未来は変わらない!!』
「そう…偶然ね、私は…私達は
気合いと共に翠の身体を闇が包む…闇が晴れた時、そこには機械のドレスを纏った妖艶な翠の姿があった…!
『なっ…!?姿が変わった!?』
(白野と同じように精霊の力を纏ったのか…!)
「遊馬君!私が飛行船が落ちないように時間を稼ぐわ!だから…」
「わかってる…!ナンバーズ使いをデュエルで倒してナンバーズを取り上げれば正気に戻る…オレがアイツを倒せば歪んだ未来は消え去るはずだ!!」
翠の言葉に遊馬は頷く、ナンバーズ使いの持つ異能はナンバーズを取り上げれば消え去る…それが事実だったからだ!
「…お願いね、遊馬君!!」
翠は飛行船を守る為に飛び上がった…!
「『デュエルディスク!セット!Dゲイザー…セット!』」
遊馬と速水はデュエルの用意を整える!
『写してあげるよ…君の未来を!』
パシャ!パシャ!!
速水はデュエルディスクに内蔵されたカメラで遊馬の写真を撮る…!
『予言しよう…君は僕に敗北し、ナンバーズは僕のものになる!!』
「そんな予言なんて信じるか!!オレはお前に勝つ!!」
偽りの未来を砕く為…遊馬は戦いを挑む!!
「『デュエル!!』」
Side翠
「見つけた…!」
精霊正装を纏った翠はハートランドシティの空中を駆ける…そして左エンジンから火を吹くクジラ型飛行船を発見した!
「遊海さんはまだ動けない…私が少しでも被害を減らす!!…でも、正体はちゃんと隠さないとね!」
翠は紫色の魔女帽を目深に被ると両手に力を集中させる!
「まずはエンジンの火を消火しないと…!全てを包む水の魔力よ!
魔力を宿したシャボン玉がジェットエンジンの火を鎮火させる!
「ウィンダ!ウェン!広い場所まで飛行船を誘導して!」
《わかったわ!風王結界!》
《了解!ウィンドバリア!》
シャドール姿のウェンとウィンダが飛行船を風の膜で包んで保護する!
《翠…!この飛行船すごく重い…!!何かの力で上から押さえられてるみたい…!!》
杖を持つ手を必死に持ち上げながらウィンダが翠に報告する…!
「ナンバーズの魔力ね…!無理に上昇させようとしないでいいわ!少しでも被害が少なくなるように広い場所に誘導するのよ!」
SideOut
Side小鳥
『小鳥ちゃん!聞こえる!?』
「翠さん!」
左エンジンが爆発し、パニックに陥る飛行船…そんな中、翠が小鳥に対して連絡する!
『落ち着いて聞いて…!その飛行船はナンバーズの力で事故が起きるように仕組まれてしまっているの…!遊馬君がその相手と戦ってるわ!』
「遊馬が…!飛行船はどうなるんですか!?」
『大丈夫…!遊馬君なら絶対に勝てる!それに明里さんに私もいる!とりあえず左エンジンの火は消したから安心して!』
「えっ…あ!?」
翠の言葉に小鳥は外を見る…たしかに左エンジンの火は消えており…その近くに紫の機械のドレスを纏った人影が空中を駆けている…。
『白野さんと同じように私も精霊の力を纏う事ができるの…このまま安全な場所まで誘導するわ…!だから安心して!』
「お願いします…!翠さん!」
小鳥は泣きじゃくる子供達を宥めながら遊馬の勝利を祈った…。
SideOut
デュエルダイジェスト 遊馬対速水
(彼が写真に写した未来が本当に現実となるならば…私達に勝ち目はない…!)
アストラルは焦った様子で呟く…遊馬とアストラルは追い詰められていた…速水の写真によって遊馬に齎された予言は「5ターン目に『希望皇ホープ』を召喚する」「6ターン目に速水のナンバーズによってホープが破壊され遊馬が敗北する」という未来…その時は確実に迫っていた!!
『さぁ、運命の
「ッ…!!」
デュエルは進み、ついに遊馬のターン…5ターン目…速水は1枚の写真を遊馬に見せつける…そこには攻撃を受けて破壊される『希望皇ホープ』の姿が写っている…!
『君はこのターンで「希望皇ホープ」を召喚し、6ターン目で僕に負ける…それはもう変えられない事実だ!』
「小鳥ッ…!!」
遊馬は街頭のスクリーンを見る…そこには速度はゆっくりだが、少しずつ墜落する飛行船が映っている…!
「オレのターン!!」
『そのドローカードは…「ゴゴゴジャイアント」だ!!』
「っ…!?」
速水が遊馬のドローカードを言い当てる…本来の遊馬なら「ゴゴゴジャイアント」を召喚、そして2ターン目に破壊された「ゴゴゴゴーレム」を蘇生し「希望皇ホープ」を呼ぶ…それが遊馬の敗北の未来だと言うのだ…そしてさらに遊馬は追い詰められる!!
ドドォォン!!
『きゃあああ!?』
「小鳥!?どうした─!」
開き放しになっていた小鳥との回線から小鳥の悲鳴が聞こえる!
『み、右側のエンジンが…!翠さんが火を消してくれてるけど…!ど、どうしよう!?』
「…!!待ってろ小鳥…!今、速水の奴をぶっ飛ばして必ず助けてやるからな!!」
『えっ…!?遊馬が戦ってるナンバーズ使いって…速水先輩なの!?』
「えっ…!?知り合いなのかよ!?」
小鳥の思わぬ言葉に遊馬は驚愕する…速水秀太は小鳥の先輩…彼女と親しい人物だった…!
「速水の奴はナンバーズに取り憑かれて『未来を自由にできる力』を持ってる…!そのせいで飛行船が墜落しかけてるんだよ!そしてその力であっちこっちの事故のスクープ写真を撮ってたんだ…!!」
『そんな…!?先輩はそんな人じゃない…!先輩が撮る写真はいつも優しくて、見る人を幸せに…スクープ写真の為にそんな酷い事をするなんて…信じられない!』
小鳥は速水の悪行を信じられないと呟く…きっと、小鳥の知る本来の速水は善良な男なのだろう…だが、ナンバーズによって欲望を引き出された彼は…もはや別人だった…。
「お前…小鳥が飛行船に乗るって知ってて…知っててあの写真を撮ったのか!!」
『イメージしただけさ…!これは僕にとっても悲劇なんだよ…僕のイメージがそのまま写真になる、そしてそれは必ず現実化する…小鳥くんには悪いけどあの時、頭に浮かんだイメージをカメラマンとして見逃す訳にはいかなかった…昔の僕とは違うんだよぉ!僕は人を和ませる写真よりもよりインパクトを与える衝撃的なスクープ写真を撮る事に目覚めたんだ!!ナンバーズを手にしたあの日から僕は生まれ変わった!僕はスクープ写真を思いのままに撮れるようになったんだ!もっともっと社会に衝撃を与えるスクープをものにしたい…!ナンバーズ1枚でこれだけの力があるのなら…たくさん手にすれば世界一の報道カメラマンにもなれる!!WDCに参加したのもその為なのさァ!』
速水は遊馬達に捲し立てる…そこに小鳥の知る穏やかな速水の姿はない、そこにいたのはナンバーズに飲まれたただの狂人だった…。
「うるせぇ…!!馬鹿言ってるんじゃねぇ!!」
速水の身勝手な言葉に遊馬は怒りを露わにする!
「お前は間違ってるぜ!デュエルは復讐や欲望の為の道具じゃねえ…自分の未来を決められるのは自分だけだ!お前に…オレ達の未来を決められてたまるか─!!」
『ククク…!どうせナンバーズは奪われるんだ、いくらでもわめくがいい…君は僕の敷いたレールの上を進むしかない!言っておくがサレンダーは認めない!!君はあくまでデュエルで僕に敗北するんだ!さぁ「希望皇ホープ」を召喚しろ!ナンバーズを僕へ渡せ!!』
速水は遊馬へと圧力をかける…その時だった!
(…焦るな遊馬、焦ったら立ち止まれ…そして道を見つけるんだ)
「アストラル…?」
アストラルが遊馬に語りかける
(急がば回れ…ということわざがあるらしい、彼に勝利する為には冷静にならなければならない…そして、彼に勝つ可能性が一つだけ残されている…)
「あるのかよ…そんな方法…!」
(それは…
「予言に…従わない…?」
アストラルの突然の言葉に遊馬は問い返す
(予言の通りに動けば私達は敗北する…だが従わない事で新たな未来が生まれるかもしれない…だが、そうする事でどんな未来が待ち受けているかは…私にも分からない…しかし、自分の未来を決めるのは自分だけだと言ったのは…君だ)
「自分の未来は自分で決める…父ちゃん…!」
遊馬は皇の鍵を握り締め…自分の進む道を定める!!
「オレは『ゴゴゴジャイアント』を召喚!そして効果で墓地の『ゴゴゴゴーレム』を守備表示で特殊召喚!そして『ゴゴゴジャイアント』自身も守備表示になる!」
遊馬の場に2体のモンスターが並び立つ!
『さぁ…『希望皇ホープ』を呼べ…!呼ぶんだ!!」
「オレは…呼ばねぇ!!お前の予言になんて従ってたまるか─!!オレは…ターンエンドだぁぁ!!」
『な、なんだと─!?』
遊馬は『予言』を跳ね除ける…自分の未来は自分で決めるください遊馬は自分の未来を選んだ!!
『ターン、エンドだと!?…勝手な事をするな!言っただろ、この写真の通りに『ホープ』を召喚して次のターンでぼくに破壊される!!ナンバーズを奪われる君の未来は決まっているはずだ!』
「写真なんて関係ねぇ…!どんな未来が待っていようとオレはオレの道を行く!」
狼狽える速水に遊馬はきっぱりと言い返す!
『おのれ…おのれぇぇ─!!お前は僕のレールの上を進んでいればいいんだ─!!』
25
『現れろ!「No.25重装光学撮影機フォーカス・フォース」!!』
速水の場についにナンバーズが現れる…それは巨大なカメラ型のモンスターだった…!
『バトルだ!「フォーカスフォース」で「ゴゴゴゴーレム」を攻撃!!』
「無駄だ!守備表示の『ゴゴゴゴーレム』は1ターンに1度戦闘では破壊されない!!」
『「フォーカスフォース」の効果発動!相手モンスターの効果が発動した時!ORUを一つ使い、その効果を無効にする!魂幻像ソウル・デベロップ!』
「フォーカスフォース」のシャッター光が「ゴゴゴゴーレム」の守りを無効化する!
『そして「フォーカスフォース」の攻撃!必殺影キル・ショット!!』
カメラから放たれたビームがゴゴゴゴーレムを粉砕する!
『どうだ…!これが「フォーカスフォース」の力だ!!あはは…あははは!!』
高笑いする速水…だが、彼は自分が致命的ミスを犯した事に気付いていない…。
「なぁ、アストラル…これって…」
(ああ、これで予言は外れた…言ってやれ、遊馬)
「おう!!…おい!速水!『ゴゴゴゴーレム』を破壊してどうする!?モンスター1体じゃ…『ホープ』を呼ぶ事はできねぇ!」
『あははは……あ…?』
遊馬に自分のミスを指摘された速水は顔色を変える…!
(思った通りだな…彼はあらかじめ敷かれたレールの上を走っていただけの事、彼自身のデュエルタクティクスは驚異に値しない…彼が勝ち進む事ができたのはナンバーズの予知、そしてその予知を相手に繰り返して聞かせる事で相手に
「つまり…速水!お前には未来を決定する力なんてねぇ!!」
『嘘だ…!!僕のイメージした未来以外はありえるはずがない!!』
速水は狼狽える…確かに「No.25」には
「そんな写真に意味はねぇ!!未来は…変わったんだ!!」
『黙れ!!ナンバーズはナンバーズでしか破壊されない!君は…僕には勝てない!!』
(それはどうかな?見せてやれ遊馬!君が掴んだ未来を!!)
「おう!!いっくぜぇぇ!!」
ナンバーズの力を振り払った遊馬は攻勢に転じる!
「オレのターン!『オーバレイ・オウル』を召喚!!」
遊馬の場に赤いマントを羽織って杖を持ったフクロウが現れる!
「『オーバレイオウル』の効果発動!ライフを600払ってエクシーズモンスターのORUを一つ墓地送る!」
『無駄だぁ!「フォーカスフォース」の効果で─!』
「どっちにしたってORUは無くなるんだよ─!!」
『し、しまったぁぁぁ!?』
自身の浅はかさを露呈させた速水…彼に待つ未来は…
39
「現われよ!『CNo.39希望皇ホープレイ』!!」
『「ホープ」が…進化しただとぉ─!?』
遊馬の場に混沌を光に変える剣士が降臨する!
「『ホープレイ』の効果発動!ORUを3つ使って自身の攻撃力を1500アップさせ、『フォーカスフォース』の攻撃力を3000ダウンさせる!オーバレイ・チャージ!!」
ホープレイに希望の光が宿り、大剣を振りかざす!
「バトルだ!『ホープレイ』で『フォーカスフォース』を攻撃!ホープ剣カオススラッシュ!!」
『う、うわあああああ!!?』
速水に待つ未来…それは希望の剣士による裁きの一撃だった…。
速水LP0
遊馬&アストラルWIN!
(よし…ナンバーズは回収したぞ!)
「姉ちゃん!小鳥!飛行船は!!」
『ダメよ…!おかしな力が消えても…飛行船が落ちるのが止まらない!!』
「そんな…!!」
ナンバーズを回収した遊馬だったが…飛行船に変化は起きない、ナンバーズの影響が無くなったとはいえ急に機械が直る訳ではない…!!
『ごめん…!飛行船がだいぶ重たいわ…!私達も限界が近いわ…!このまま安全な場所に不時着させる…!!』
「翠さん…!」
翠が遊馬達の通信に割り込む…飛行船の重さは約200t前後…魔法を使って浮かばせるにも限界がある…その時だった…!
『えっ…飛行船の後ろから…!』
「姉ちゃん!?どうしたんだ!?」
(遊馬!空を見ろ!)
アストラルの言葉に遊馬が空を見上げる…そこにはグライダーを背負い空を飛ぶ少年の姿があった…!
「か、カイト─!?」
Side翠
《翠姉!後ろから誰か飛んで来るよ!?》
「あれは…ナンバーズハンターのカイト君だわ!」
ウェンの言葉に翠が後ろを振り向く…その先にはグライダーを背負い空を飛ぶ少年の姿があった…。
『おい!この飛行船を支えているのはお前か!?』
カイトは飛行船に手を翳し空を駆ける翠に問いかける
「ええ、そうよ…!でもそろそろ限界が近いわ…飛行船の舵をお願い!私の力でサポートするわ!!」
『言われるまでもない!!』
言葉少なにカイトは飛行船の操縦席へとガラスを割って飛び込む!
『オービタル!出力全開だ!このままハイウェイに不時着する!!』
《カシコマリ!!》
カイトは道幅の広い高速道路に向かって舵をきる!!
「ウィンダ!ウェン!できる限りスピードを遅くして!!」
《やってみる─!!》
オービタル7の逆噴射、そして3人の魔法行使で飛行船は順調に降下していく…だが…。
「っ…!まだ車が…!!」
カイトが着地地点に選んだハイウェイ…そこにはまだ車が取り残されている…!
「よく頑張った…あとは任せろ!」
「えっ…今の声…!」
聞き覚えのある声が聞こえた瞬間、翠達の感じていた重さが軽くなっていく…
【アポクリフォート・キラー…ステルスモードで現界完了…!このまま飛行船発着地点まで飛行船を運搬します!】
《これは…超高エネルギー反応を確認…!?カイト様!!》
「…オレが出るまでもなかったか…鋼の騎士」
姿は見えない…だが、カイトは感じていた…圧倒的力を誇る…最強のヒーローの力を…!
「遅くなって悪かったな!俺が来た!!」
…その日、ハートランドシティを緊急事態が襲った…街の上空を遊覧飛行していた飛行船にエンジントラブルが発生、墜落の危機に陥った…だが、奇跡的に負傷者・死者は0、街への被害も最小限で収まった…。
要因は3つ…1つは飛行船の側に現れた「紫の魔女」によってエンジンの消火が為された事、2つ目はハングライダーの男が舵をきり飛行船の姿勢を保った事…そして最後に…ハートランドシティを守護する最強のヒーローが飛行船を支え、無事に着陸させた事である…。
SideOut
「小鳥!大丈夫か!?」
「遊馬!心配掛けてごめん!助けてくれてありがとう…!」
飛行船の発着場…そこで遊馬と小鳥は再会する、周囲には同じように再会を喜びあう家族が大勢いた…。
「オレはナンバーズ使いを倒しただけさ…礼を言うなら…カイト!!」
『……』
遊馬は人影に声をかける…それは無愛想に遊馬を睨むカイトだった。
「ありがとな!やっぱりデュエリストはみんな仲間だな!」
『…勘違いするな、飛行船が墜落して街がパニックになればWDCが中止になる可能性があった…それを避けたかっただけだ…それに…オレもたいした事はしていない』
「そんな事いうなカイト少年、君が飛行船の角度を整えてくれたから俺も間に合ったんだからな!」
『…メタルナイト、貴方と馴れ合うつもりはない』
カイトの隣に遊海が降り立つ!
「そんな事をいうなよ…頑張った少年にはご褒美だ、手を怪我しているぞ?」
『っ…!』
カイトは右手を隠す…操縦席に突入する時に切ってしまったのだろう…。
「傷は男の勲章とはいうが…それではデュエルしにくいだろう?『ディアンケト』よ、傷を癒せ…」
『これは…(傷が塞がっていく…身体の調子まで…)』
カイトを緑色の光が包む…手の傷は塞がり、カイトを蝕む副作用の影響も少し軽くなる…。
「俺は精霊使いでね、余計な事だったかな?」
『…感謝する、いくぞオービタル!』
《カシコマリ!》
カイトはそのままバイクで走り去っていった…。
「ハク…メタルナイト!身体は大丈夫なのか?」
「おう!心配掛けて悪かったな遊馬!万全とはいかないが大丈…イテテ…」
「全然ダメじゃん…(汗)」
カイトが去ったあと、遊馬は遊海に声をかける…元気をアピールしようとする遊海だったが…全身筋肉痛のような痛みに襲われて顔を歪める…。
「翠も大丈夫だから心配しないでくれ、少し無理したから先に家に帰ってる…俺もこのまま病院に戻るよ…ハートピースはどうだ?」
「あっ…!!速水から受け取るの忘れてた!?」
「まったく…サッサと行ってこい!」
「ああ!じゃあなメタルナイト─!また後で行くからなー!」
「あっ…待ってよ遊馬─!!」
遊馬と小鳥は慌ただしく走っていった…。
「…やれやれ…さて、身体も痛むし…戻るとするか…!」
遊馬を見送った遊海もジャンプしてその場を後にしようとした…その時!!
『見つけたぞ…メタルナイト─!!』
ピシュン!!
「えっ!?どわぁ─!?」ドガッシャーン!!
《マスター!?》
遊海の足首に何かが巻き付いて地面に叩きつける!!
『な、なんだよいったい…デュエルアンカー…?』
起き上がった遊海は足首に巻き付いたものを確認する、それはデュエルアンカーだった…。
『オレはアンタとデュエルする為にWDCに参加したんだ…オレとデュエルしろ!!』
「えっと……どちら様…かな?」
遊海の前に赤と白のキャップを被った少年が現れた…!