転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話   作:S,K

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傷だらけの英雄

「ええっ!?白野が行方不明─!?」

 

「そ、それってどういう事ですか!?」

 

 

ハートランドの病院に遊海と小鳥の叫びが響く…今日はWDC3日目…最後のハートピースを集める為に街へと繰り出した。

 

Ⅴの思わぬ言葉…「父親がアストラル世界で生きている」という事実を伝えられた遊馬は一時はWDCを諦めて一馬を探しに行こうともした…けれどデュエルの師匠である六十郎とのデュエルと語らいによって改めてWDCに挑む事を決め、さらに3日目から大会に参加した「エスパーロビン」こと奥平風也と大会委員を辞めて参加者となったゴーシュの熱いデュエルを見て「デュエルの楽しさ」を思い出した遊馬…彼はその決意を遊海へとお見舞いがてら伝えに言ったのだが…病院に遊海の姿はなく、行方不明なのだと看護師に伝えられたのだ…。

 

 

「み、翠さんはこの事知ってるのかしら…!?」

 

「い、行ってみようぜ!!」

遊馬と小鳥は慌てて遊海の家へと向かった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

ピンポン!ピンポーン!!

 

 

「は〜い…あら!遊馬君、小鳥ちゃん…どうしたの?そんなに焦って…」

 

「み、翠さん…白野さんが…病院からいなくなったって…!」

遊馬達は息を切らせて遊海の自宅へと辿り着いた…チャイムを鳴り翠が出てくるが…その様子は普段と変わらなかった…。

 

 

「あ……れ、連絡しないでごめんね!白野さんったら、病院が嫌だからって勝手に退院しちゃったのよ!今は上で休んでるから…また、明日来てくれる…?」

 

「な、なんだ〜心配して損したぜ…白野さんに伝えてくれ!オレは精一杯デュエルを楽しんで…それでWDCで勝ってみせるって!!」

遊海の無事を知って安心した遊馬は翠に伝言を頼む。

 

「わかったわ!あの人も遊馬君と戦うのを楽しみにしてるから…頑張ってね!遊馬君!」

 

「おう!かっとビングでハートピースをゲットしてやるぜ!!」

 

「あっ…待ってよ遊馬─!!」

翠に元気付けられた遊馬は駆け出して行った…。

 

 

「…ごめんね、遊馬君…」

 

 

 

「よ〜し!残り1個のハートピースを見つける為にかっとビングだー!!…って、どうしたんだ?アストラル?」

遊海の家から離れた遊馬はアストラルへと声をかける…アストラルは空中で深く考えこんでいた…。

 

(遊馬…人間とは…()()()()()()()()()()()()()()()()()()?)

 

「はぁ!?…そんなの死んじまうに決まってるだろ?!何怖い事考えてんだよ!?」

遊馬はアストラルの突飛すぎる疑問に驚く…!  

 

(…すまない、昨日の「エスパーロビン」で身体が半分に別れる敵が出てきたのを思い出したんだ…気にしないでくれ)

 

「お、おう…まったく、びっくりさせやがって…」

 

((…私は、窓から見てしまった…大丈夫なのか…白野…!))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《キャウ…キュー…》

 

「遊海さん…」

遊馬達が去った後、翠は遊海の寝室にいた…ベッドの上では苦しげな表情で遊海が眠っている…その身体はあます事なくボロボロであり、右足の一部を残して()()()()()()()()()()()()…。

 

《…我が身を犠牲にしてでも…マスターを守るべきだった…!私は…マスターのパートナーなのに…!!》

 

《…気にするでないアヤカ…元は遊海の無茶が原因だ、遊海も責めはしまい…》

 

《私が悪いのです…!ユウミは…私を庇って…!!》

 

《…主殿に何があったのです…!主がこんな傷を負うなど…!》

自責の念に駆られるアヤカとフレア…2人に遊馬の護衛として別行動をとっていたトフェニが問いかける…。

 

 

《私達は…マスターも、彼を甘く見ていました…復讐に飲まれた…トロンの漆黒の意思を…!》

 

 

 

 

 

 

時は昨夜まで遡る…。

 

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

 

 

 

「…見たか、トロン…これが、『兄弟の絆』の、力だ…!!」

 

【まさか…ハルトにあんな力が残っていたとはね、力の八割は奪ったはずなんだけどなぁ…】

ハルトの最後の力を奪い損ねたトロンは投影された映像を見る…そこには『超銀河眼の光子龍』によって吹き飛ばされるⅢとⅣの姿が映し出されていた…。

 

 

【もともと彼らには期待してなかったけど…ここまでとはね、Ⅴ…ハルトをカイトに返してきてくれるかい?】

 

『…わかりました』

トロンの指示でⅤはハルトを抱き上げ、部屋を出ていく…。

 

 

 

【ねぇ…どうして君はここに来たんだい?】

 

「助けを求める声が…聞こえたからさ…!ハルトの…そして、お前の息子達のな…!!」

 

【声が聞こえた…ねぇ…?冗談も程々にして欲しいかなぁ!!】ギィン!! バチバチバチバチ!!

 

『がっ…────!!!!』

トロンの紋章が輝き、遊海に対する攻撃が強くなる…遊海は声にならない悲鳴をあげる…!

 

《貴様…!!ユウミを離しなさい!!》ボゥ!!

フレアが火球をトロンに向けて放つ!!

 

【君が何の精霊かは知らないけど…甘く見ないでほしいな!】ギィン!!

 

《なっ…!?》

フレアの火球はあっさりとトロンに受け止められる!!

 

【ボクは今までの私じゃない…ハルトの持つ力を取り込んでその力は数倍になった…!力を発揮できない精霊なんて敵じゃないんだよ!!】

ギィン!ジャラジャラジャラ!!

 

 

《ぐっ…!?》

 

《フレア!!》

トロンの紋章から鎖が飛び出しフレアを雁字搦めに拘束する!!

 

 

「き、貴様─!!」

 

【…ああ、忘れてた…もう拷問はこれでいいね】パチン

 

「ぐっ…がは…!」

 

《マスター!!》

トロンが指を鳴らすと紋章は消え、宙吊り状態だった遊海は地面に叩き付けられる…。

 

【岸波白野…君には本当に感謝してるんだ、私がいない間に幼いⅢやⅣを親身に支えてくれたそうだね…そして君達が彼らに家族愛を教えてくれたから…あの子達は私についてきてくれる…でも、復讐の為には君はもう邪魔なんだよねー】

 

「…何度だって、邪魔…してやるよ…!クリス達を…助けるまではな…!」

 

【へぇ…まだ立てるんだ、意外にタフだねぇ】

遊海はトロンを睨みながら立ち上がる…身体は焼け焦げ、感覚もほとんどない…そんな中でも遊海は気合いだけで立ち上がる!

 

 

【ねぇ?白野、ボクのお願い…一つだけ聞いてくれないかな?】

 

「断る!!」

 

【つれないなぁ…大丈夫!簡単な事だからさ…()()()()()()()()()()()

 

ギィン─!

 

「っ─!!」

無邪気な笑みのままトロンが言葉を発した瞬間、トロンの腕から赤紫色の禍々しいエネルギーが発生する!!

 

《マスター!逃げてください!!》

巨大化していくエネルギーと遊海の間にアヤカが割り込む…だが…!

 

「ダメだアヤカ!!マスター権限において命ずる!()()()退()!!」

 

《マスター!?待っ─!》

遊海の言霊の載せられた言葉によってアヤカの姿がかき消える、遊海は思い出したのだ…ハルトの力は鋼鉄ですら削り取る程の力、それが紋章によって強化されているなら…精霊であっても無事では済まないと…!

 

「っ…!!フレア─!」

 

《っ…!鎖が…外れない…!!》

そして遊海は刹那の間に見た…マスター権限で緊急撤退させたはずのフレアが…鎖によって拘束されたままなのを…!

 

【ばいば〜い白野、恨むんなら…ボクをこんな目に遭わせた…Dr.フェイカーを恨むんだね!】

 

 

バリバリバリ…ガオン!!

 

 

巨大化したエネルギーは呆気なく遊海を飲み込んだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドサッ…

 

 

 

 

「…くそっ…しくじ…った……」

 

《あ…あああ…!ユウミ!!私のせいで!!》

 

《マスター!!》

 

遊海は辛うじて生きていた…空間を削り取るエネルギーに飲まれる寸前、保険として持っていた「強制脱出装置」を起動し、命を繋いでいたのだ…だが、その代償は大きかった。

飲まれる寸前にフレアを庇った事で脱出が少し遅れ、右腕と右胸が消滅し右足も辛うじて繋がっている状態…遊海が不死の体でなければ…既に死んでいただろう…。

 

 

「まさか…あんな、躊躇なく…殺しに、くるとは……あれが復讐に飲まれた男、の…ゴボッ…!?」

 

《マスター喋らないで…!すぐに治療を!!》

 

「…ここじゃ、ダメだ…トロンに…半分、力…盗られちまった……回復、できねぇ…」

 

《そんな…!》

朦朧とする意識の中で遊海は理解していた…紋章の魔力によって遊海の持つ精霊の力の半分近くが奪われ…トロンに吸収されていた事に…。

 

「D…ゲイザー…を…」

 

ピピピ…ピピピ…

 

『遊海さん!目が覚めたんですか!?心配して…えっ…!?』

すぐに連絡に反応した翠は絶句する…病院で眠っているはずの遊海が血まみれで連絡してきたのだから…。

 

 

「翠…すま、ん…しくじった…たす、け…─」

 

『遊海さん!?今何処に…遊海さん!遊海さん─!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

「…トロン…!私は…貴方を許さない…!」

翠は拳を握り締める…翠は知っている、遊海がどれほどクリスやトーマス、ミハエルを心配していたのか…そして璃緒を傷付けられどれほど怒ったのか…それ故に翠は怒りを抑えられない…!

 

 

《怒りに飲まれてはなりません、ミドリ…今回は、私の失態です…!》

 

「フレアさん…」

 

《私が力を抑えずに全力を出せば…すぐにあの少年を助け出せて、ユウミもこんな怪我をしなかった…!》

フレアは涙を流しながら反省する…翠は静かにフレアを抱き寄せる…。

 

「ううん…それは違うわ…遊海さんはきっと、そんな事思ってない…きっと遊海さんも覚悟はしてたはずよ…満身創痍でトロンの所に行ったら怪我をするって…それでも、遊海さんはハルト君を助けに行った…それが自分のできる事だと思ったから…!…少し休んで、遊海さんを治療しましょう…きっと…遊海さんは自分の手で決着を着けたいはずだから…」

 

《そうしましょう…!マスター自身が弱っていても以前のように回復が阻害されているわけではありません…!トロンとの決着の為に…マスターを必ず治しましょう…!》

翠達は部屋を後にする…残されたのは眠り続ける遊海の枕元で頬を舐めるフォウだけだった…。

 

《フォウ…キュー…》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…夢を見ている…穏やかで、楽しかったひとときの夢を…

 

 

 

「凌牙、璃緒…しばらく一緒に暮らすトーマスとミハエルだ!よろしくな!」

 

「おれは凌牙!よろしくな!」

 

「私は璃緒よ!この子はフォウくん!」

 

《フォウ!フォーウ!》

 

『オレはトーマスだ…なぁ、そいつ…ネコか?』

 

『僕はミハエル!フォウくん抱っこしてもいい?』

 

「いいよ!」

 

《フォウ!》

 

 

 

…………

 

 

 

「トーマス!凌牙!喧嘩するなよ…まったく、ホットケーキは2つとも同じサイズだって…」

 

「トーマスの方が大きい!!」

 

『凌牙の方がデカイ!!』

 

「まったく…いつも喧嘩ばっかり…これだから男の子は…」

 

『あはは…』

 

 

 

 

………

 

 

 

「お〜い!?誰だフォウをライオンみたいにしたのはー!?」

 

《キャウ…フォ〜ン!!》

 

「ハハハ…カッコいいよ?フォウ」

 

『兄さま〜?』

 

『♪〜』

 

「バレバレよ…」

 

 

 

………

 

 

 

「白野さん…トーマス達が、いなくなっちゃった…!」

 

「怖い顔をしたクリストファーさんと一緒に…!!」

 

「っ!?」

 

 

 

 

………夢を見た、俺が救えなかった…子供達の夢を…

 

 

 

 

 

「白野さん…決勝の相手…!」

 

 

「トーマス…!やっと見つけた…!」

 

 

…………

 

 

「璃緒…リオォォ─!!」

 

 

「私の事…心配しないで…勝って、凌牙…!」

 

 

 

……………

 

 

 

「オレは…デュエルする資格も…ねぇ…!!」

 

 

 

 

 

 

………俺は、何ができたのだろう…何も、できなかった…見守る事しか、できなかった…!

 

 

 

 

─遊海、お前はそれでいいんだ…お前が全て背負う必要はない…─

 

 

 

 

…─懐かしい声がする…

 

 

─お前は優しい奴だ…大丈夫、お前はお前のできる事をすればいい…それがきっと…お前にとっての正解なんだ─

 

 

…ありがとう

 

 

─遊海、お前の行く先に光は生まれる…忘れるな…─

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし…!遊海さんの治療を始め…あら…?治ってる…少ししか経ってないのに…あれだけの傷が…」

準備を終えて遊海のもとを訪れた翠が見たのは重傷がほぼ完全に治癒した遊海の姿だった…遊海自身は穏やかに寝息を立てている…。

 

《身体はとりあえず大丈夫みたいですね…でも、突然どうして…?》

 

《…(本当に…貴方はお節介焼きですね)》

フレアは枕元に置かれた1枚の写真を見つめる…そこに写った1人の青年が笑ったような気がした…。

 

 

「…遊海さん、きっと目覚めたら…また戦いに行くんですよね…でも、今だけは…ゆっくり休んでくださいね」

治っていなかった怪我の治療を終えた翠は眠っている遊海へと話し掛ける、傷は癒えたが遊海は酷く衰弱している…闇のデュエルには耐えられないかもしれない。

…それでも、遊海は戦いに飛び込むだろう…背負った使命を果たす為に…。

 

 

 

 

「さてと…私も少し眠くなっちゃった、アヤカちゃん…遊海さんをお願いね?」

 

《はい!…と言いたいのですが…問題があるんです》

 

「?…どうしたの?」

 

《トロンの力に飲み込まれた時にマスターのデッキの一部が異次元に放り出されてしまったのです…》

 

「ええっ!?それって大丈夫なの!?」

アヤカの言葉に翠は驚愕する…デッキは決闘者の命…数多のデッキを持つ遊海にとってもそれは変わらない…。

 

 

《幸いにも反応は追えています、それを回収しに行きたいのです…トフェニ、手伝って貰えますか?真体になると細かい動きが取れないので…》

 

《承った…だが、遊馬殿の護衛は…》

 

《それは問題ないでしょう、ユウマも決闘者として強くなっています…今日はトロンも動けないでしょう、ハルトの持つ力とユウミから奪い取った力を安定させる為に…》

 

《…おのれ、卑怯な真似を…!遊海が本調子であれば…歯牙にもかけず跳ね返したはず…!!》

フレアの言葉にメガロックは床を踏みしめる…仮に、遊海が全力状態であれば「紋章」を跳ね除け、ハルトを助ける事は簡単だっただろう…しかし、それも巡り合わせが悪かったとしか言えない…。

 

 

「『たら』、『れば』の話をしてもしょうがないわ…今は私達にできる事をしましょう…!お願いねアヤカちゃん、トフェニさん」

 

《はい!》

 

《御意!》

アヤカとトフェニは部屋から飛び出していく…。

 

 

《遊海はワシが見ていよう…フレア様、貴女も少しお休みください》

 

《…そうさせてもらいます、私も少し無理をしすぎました…やはり機械であるアヤカには敵いませんね…おやすみなさい…》

メガロックの言葉を聞いたフレアは遊海の枕元で眠りに就いた…紋章を解除する為に負担をかけ過ぎたようだ…。

 

「…私も少し休むわ、何かあったら…すぐに起こしてね」

翠も疲れた様子で自分の部屋へと戻っていった…。

 

 

《まったく…遊海はこの何日かでどれだけの厄介事に巻き込まれておるのだ…翠に疲れが出るのも無理はない…おや?フォウは何処へ行ったのだ…?》

メガロックはあたりを見回す…先程まで遊海のベッドの上にいたフォウの姿が消えていたのだ…。

 

《あ奴も気分屋だからな、すぐに帰って来るだろう…》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《フォウ!フォーウ!!》

 

 

『えっ…フォウ…?なんでこんな所にいるんだい…!』

 

《フォウ…クルル…》

 

 

『…ごめんよ、今は君に構っていられない…確かめなきゃならない事があるんだ、九十九遊馬の事を知る為に…!』

 

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