転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話   作:S,K

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こんにちは!S,Kです!

間もなく緊急事態宣言が解除されるそうですね…でも!油断せずにコロナと戦っていきましょう!

それから…Fgoの新イベの為、更新が少しかかるかもしれません、気を長くしてお待ちくださいm(_ _)m


それでは最新話をどうぞ!


復讐者の迷い〜家族の為に〜

「バトルだ!『弦魔人ムズムズリズム』でダイレクトアタック!」

 

『うわぁー!?』

 

 

青年 LP0

 

遊馬WIN!

 

 

 

 

 

『なかなか強いじゃないか…はい、ハートピース!』

 

「サンキュー!…ダメだぁ、またハマらない…」

 

 

 

 

(…先程のデュエリストで3人目だが、なかなか集まらないものだな…)

 

「くっそ〜!諦めてたまるかぁ─!!」

 

 

遊海の家をあとにした遊馬はハートピースを集める為にデュエルを挑み続けていた…だが、大会も最終日…残っているデュエリストも少なく、なかなか最後のハートピースに巡り会えずにいた。

 

 

 

「苦労してるみたいだな、遊馬」

 

「あっ…シャーク!」

失意の遊馬に話しかけてきたのは凌牙だった…たまたま近くを通りがかったのだろう…。

 

 

「最後の1個が集まらなくてさー…シャークはどうなんだ?」

 

「…さっき、最後の1個を手に入れた所だ…たくっ、最後の最後に徒党を組んでデュエルを挑んできやがって…」

凌牙の右手には完成したハートピースがあったが…反対の手には膨らんだ袋が握られている…おそらく、凌牙狙いでやってきたデュエリスト達を返り討ちにして手に入れたのだろう…。

 

「本当は…ここまでやるつもりじゃなかったんだけどな、Ⅳの野郎と決着を着ける為には…しょうがねぇ…!」

 

「シャーク…」

凌牙は静かに拳を震わせる…凌牙から見てⅣは妹の仇であり…養父を悲しませた許せない男だからだ…。

 

 

「…シャーク、せっかくの大会なんだから楽しんでデュエルしようぜ!…たしかにⅣはヤベー奴だってオレも知ってる…でもさ!だからこそデュエルを真剣に楽しんで…あの勘違い野郎をぶっ飛ばしてやろうぜ!!」

 

「……相変わらずのデュエル馬鹿だな…いいだろう、Ⅳの野郎は俺が倒す…そして遊馬!お前との決着は決勝で着ける!…予選落ちなんてするんじゃねーぞ?」

 

「ああ!わかってる…!かっとビングだ!オレ─!!」

凌牙と遊馬は再戦を約束して別れる…2人の顔は共に笑顔だった…。

 

 

 

『馬鹿な…シャークが、ナンバーズの力に飲まれていない…!?いったいどうして…!』

…そんな2人の様子を困惑しながら見つめる者がいた、それはトロン一家の1人…Ⅲだった。

 

『シャークの心にはナンバーズの欠片が残っているはず…トロンはそのナンバーズの欠片がシャークの心を憎しみで染めると言っていたのに…!』

Ⅲは動揺する…凌牙はトロンの策略によって「No.32海咬龍シャーク・ドレイク」を手に入れている、そしてⅢとのデュエルでナンバーズの力に飲まれかけた凌牙は精神力でナンバーズをねじ伏せ従えた…だが、それは完全ではなかった。

凌牙の心には「シャークドレイクの爪」…ナンバーズの欠片が残っている…トロンはそれを見抜き、凌牙がⅣへの復讐心によって再びナンバーズの力に飲まれる…と思っていた、だが…凌牙はナンバーズの力に飲まれる事なく、その瞳に影は無い…。

 

『凌牙の精神力がトロンの予測より強かった…?…いや、違う…彼の…九十九遊馬の影響なのか…?』

Ⅲは小鳥と共に歩く遊馬を見つめる…最初はカイトのデュエルに巻き込まれた一般人だと思っていた…しかし、その正体はナンバーズ使いであり、ナンバーズのオリジナル…アストラルと共に戦う決闘者だった。

…そして、Ⅲにはもう1つ気になる事があった。

 

 

『…九十九遊馬…彼のデュエルは僕達とは違う…憎しみで戦ってきた僕達とは…』

Ⅲは自分達のデュエルと遊馬のデュエルは違うモノだと感じていた…Dr.フェイカーへ復讐する為の手段としてデュエルをする自分達…そして、純粋にデュエルを楽しみ戦った相手すらも笑顔にしてしまう遊馬…Ⅲはそんな遊馬の事を調べる為に彼を尾行していたのだ。

 

『…彼の家に行ってみよう、きっとそこに手掛かりが……ん?』

遊馬の家へと向かおうとしたⅢ…その足元に白い毛玉のような生き物がじゃれつく…

 

《フォウ、フォーウ!!》

 

『えっ…フォウ…?なんでこんな所にいるんだい…!』

Ⅲの足元にじゃれついたのは、短い時間だったが父を失ったⅢ…ミハエル達兄弟を世話してくれた恩人…岸波白野のペットであるフォウだった…。

 

 

『…久しぶりだね、フォウくん…元気にしてたかい?』

 

《フォウ!》

ミハエルはフォウを抱き上げる…思い出すのは父を失った悲しみ…そして、それを癒やすように愛情を向けてくれた遊海と翠…そして凌牙達兄妹の事だった…。

 

《キュ〜…?》

 

『……ごめんよ、今は君に構っていられないんだ…確かめなきゃならない事がある、九十九遊馬の事を知る為に…!』

Ⅲはフォウを地面に降ろすと歩き始める…遊馬の事を知る為に…。

 

《キュ…フォウ、フォーウ!!》

 

 

 

 

 

 

 

「だぁぁ〜!!誰かハートピースを持ってる奴はいねぇのか〜!?」

 

(これは…完全に手詰まりだな)

 

「諦めないで参加者を探しましょう!まだ間に合うわ!」

遊馬は追い込まれていた、デュエリストを探して街を走り回ったが参加者はほとんどいなかった…飛び入り参加したゴーシュやドロワ達にあらかた倒されてしまったようだ…。

 

ピピピ…ピピピ…

 

「誰だよ、こんな時に…」

気が急く遊馬のDゲイザーが着信を知らせる、その相手は…

 

『遊馬、ちょっといいかい?』

 

「ばあちゃん?どうしたんだ?」

 

『遊馬の知り合いだって子がウチに来てるんだけど…心当たりはあるかい?』

着信の相手は春…遊馬は首を捻る…

 

「オレの知り合い…?どんな奴なんだ?」

 

『桃色の髪で…首にスカーフを巻いた優しい顔の男の子だよ』

 

(桃色の髪、優しい顔…?遊馬…!それはⅢの事ではないか?!)

 

「な、なんだってぇ!?す、すぐに帰る!!」

アストラルの言葉で最悪の可能性に気付いた遊馬は急いで自宅へと引き返した…。

 

 

「はぁ…はぁ…!よし、もうちょっと…あれ?フォウ?」

急いで家へと戻る遊馬…そして到着直前、見覚えのある白いネコが玄関にいるのを見つける…。

 

《フォウ!》

 

「フォウ!悪いけど今急いでるんだ!ちょっと退いてくれ─!」

 

《キャウ!?》

遊馬はフォウを飛び越えて玄関へと飛び込んだ…。

 

 

 

ドタドタ…ガチャ!!

 

「いた…!てめえ何してやが─うおぉ!?」

家に入ってすぐ自室に飛び込んだ遊馬、そして見覚えのある背中に声を掛けて…仰天した。

振り向いた少年は巨大なお面を被っていたのだ…。

 

『あっ…遊馬!!すごいよ…すごい!これは、アステカ遺跡から出土した仮面!あれは、2000年前の磨製石器…!こっちはヒッタイトで作られた鉄の鏃!ああ!インカの首飾り!どれもすごいものばかりだよ!!』

仮面を取った少年…Ⅲは興奮気味に捲し立てる、厳しい面ばかり見せていたⅢ…実は生粋の『オーパーツ』オタクだったのだ…。

 

『それにこれを見てよ!僕の大好きなカードも同じなんだ…ほら!』

そう言いながらⅢは1枚のカードを遊馬に見せる…それは遊馬の持つ仮面と同じイラストのモンスター「先史遺産─アステカ・マスク・ゴーレム」だった。

 

 

「あっ…本当だ…!Ⅲはオーパーツが好きなのか?」

 

『そうだよ、僕が使ってるのは『先史遺産』デッキっていうんだ!オーパーツって、この世界と異次元とがつながっている証拠なんだよ!この世界には、たくさんの次元が重なってて《フォウフォウフォーウ─!!》わばっ!?』

 

「フォウ─!?」

喜々としてオーパーツについて語るⅢ…その顔にフォウが飛び付いた!!

 

《フォーウ!フォウキャウウ─!!!》(君はこんな所で何をしてるのさ!遊海が君達の事をどれだけ心配してると思ってるんだ─!!)

『フォウくん!?なんでここにって…どうしてそんなに怒ってるんだい─!?』

 

《キャウ…キャウ─!!》(遊海は君達を助けようとして大怪我してるんだぞ─!)

フォウは何かに怒った様子でⅢの顔をポカポカ叩き続ける…。

 

「よくわからないけど…落ち着けよフォウ!白野に怒られるぞ?」

 

《ンキュ…!?キュウ〜…》(ウッ…遊馬の言うとおりだ…ごめんよ)

遊馬の言葉にハッとした様子のフォウは叩いていたⅢの顔を舐める…。

 

『び…びっくりした…ごめんよフォウくん、僕には君の言葉がわからないんだ、でも…ごめんね、きっと僕を心配してくれてるんだよね…』

Ⅲは悲しげな表情でフォウを撫でる…。

 

 

(遊馬、彼はフォウとは顔見知りのようだ…つまり、白野を知っているのではないか?)

 

「っ…!…なぁ、お前Ⅲって言ったよな…白野さんと知り合いなのか?」

 

『えっ…?遊馬も白野さんを知っているの?あの人は…僕達兄弟の恩人なんだ…!』

 

「白野はオレのデュエルの先生なんだ…なぁⅢ、白野の事を知ってるならわかるよな…あの人は人を傷付ける事が一番大嫌いなんだ…!それなのに…お前達はハルトを!!」

遊馬は怒りながらⅢへ詰め寄る、それに対してⅢは…

 

『ごめん!ハルトのことは…本当にすまなかった…!!』

 

「えっ…?」

素直に頭を下げたⅢに遊馬は驚く…

 

『でも、僕はああするしか…なかったんだ…!』

 

「Ⅲ…」

 

『遊馬…僕は、復讐のために…ずっと憎しみの力で戦ってきた…でも、君のデュエルを見てそれとは違う力があるのかもしれないと思ったんだ…ねぇ、どうして君は、あんなに人のために必死になれるの?君の力は…一体なんなの?』

 

「オレの…力…?」

 

『そうだよ…君は僕とは違う、君は…どうしてあんなふうに戦えるの?』

Ⅲは遊馬に問いかける…復讐の為にデュエルをする自分達…そして復讐の為ではなく、怒りに飲まれる事なくデュエルをする…遊馬の力の源を…。

 

 

「オレの力…ちから?う〜ん…うーん??…そんな難しい事わかんねぇ!」

 

『えぇ…?』

頭を捻り、考えぬいた末に遊馬はⅢにそう答える…遊馬は難しい事を考えるのは苦手だ…故に、遊馬が信条とするものは一つだけである。

 

「とにかくかっとび…かっとビングだよ!!どんな時も諦めずにチャレンジする気持ちを忘れない…父ちゃんにそう教わったんだ!」

 

『かっとビング…君のお父さんの…』

 

かっとビング、それが九十九遊馬という男を形づくる一番大切なモノ…どんな時も諦めず、一歩前に進む為の合言葉…それがかっとビングだった。

 

「父ちゃんは冒険家でさ…ここにある物も全部父ちゃんのなんだ…冒険をしてて危ない目にあった時、父ちゃんはいつもかっとビングで乗り越えて来たんだ!」

 

『すごい人なんだね…君のお父さん』

嬉しそうに父の話をする遊馬…その様子を見ながらⅢは自分の父の事を想った、そんな時…。

 

 

「遊馬ー?お昼ご飯できたわよー」

 

「姉ちゃん!?」

明里が遊馬の部屋へと顔を覗かせる…時間はちょうどお昼時だった。

 

「小鳥ちゃんもそっちの子も一緒にどうぞ?」

 

 

 

 

 

SideⅢ

 

 

 

「(…なんで、こんな事になったんだろう…)」

思わぬ事態にⅢは困惑していた…遊馬の事を探る為に彼の家に潜入した彼は…どういう訳か遊馬達一家と昼食を共にしていた…。

 

「遊馬、少し落ち着いて食べるんだよ」

 

「そんな事言ったって(ムシャムシャ)腹が減ったらデュエルはできないだろ?」

 

「喉に詰まらせても知らないわよ?」

食卓に積み上げられたおにぎり…デュエル飯へと美味しそうにがっつく遊馬…

 

 

「フォウくんには…キャットフード代わりのササミね!ヤケドしないように食べるのよ?」

 

《フォウ!フォーウ!!》

明里に出された鶏肉を食べるフォウ…

 

 

《ユウマ、オ茶、ヘタクソ》

 

「ありがとよオボミ…ってオレはヘタクソじゃね…アッチィ!?」

 

『…フフッ』

あまりに普通な…家庭的な食卓をみたⅢは思わず吹き出してしまう、復讐の為に家族である事を捨てたⅢにとって…それはあまりに眩しい光景だった。

 

 

「あっ…笑ってんじゃねぇよ!?」

 

「遊馬!少しは大人しく食べなさい!デッキ取り上げるわよ?」

 

「ちょ…それは勘弁してくれよ姉ちゃん─!?」

 

 

 

 

─兄様!カード返してよー!─

 

 

─やーだよー!─

 

 

─2人とも、やめなさい…お父様が帰ってくる、いい子にしていたら…今度の休みにデュエルを教えてあげるよ─

 

 

─やったー!─

 

 

 

 

 

『っ…ごめんなさい…!失礼します!!』

 

「あっ…Ⅲ!何処に行くんだよ!?」

 

《フォウ!?》

他愛のない姉弟…家族の会話…それは、復讐に身を委ねたⅢにとって眩し過ぎる光景だった…。

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

「おい!待てよⅢ─!!」

 

《フォーウ!!》

昼食の最中、九十九家から飛び出したⅢ…遊馬は慌てて後を追いかけ、ようやく彼に追いつく…。

 

 

『遊馬!…君の家族を見て、よく分かったよ…君の力、君のかっとビングは…家族や仲間の笑顔を守るためのもの…でも、僕は…僕の家族は…君たちとは違う!!』

 

「Ⅲ…!」

Ⅲは遊馬へと告げる…デュエルを純粋に楽しむ遊馬と復讐に身を焦がす自分達の違いを…!

 

 

『復讐のために戦うと誓ったときから僕たち家族の笑顔は消えた…!けれど、復讐が終わればきっと、笑顔を取り戻してくれる…でも、遊馬!君がいる限り、復讐は果たせない…!だから僕は家族のために…君を倒さなきゃいけないんだ!』

Ⅲは遊馬をにらみつける…その瞳に強い決意を宿して…!

 

「Ⅲ…!お前、復讐って…その為にハルトをあんな目に遭わせたのか…!!」

 

『あれは、僕たち家族の意思だ!…今の僕には…憎しみの感情以外は無い!』

そう言うとⅢは1枚のデータディスクを遊馬に投げ渡す!

 

『遊馬!…今日の夕方、そこで待っている!君と僕で勝負だ!!』

 

そう言ってⅢは姿を消してしまった…。

 

 

(…遊馬、本当に彼とデュエルするつもりか?…彼は強いぞ)

Ⅲが去った後…アストラルは遊馬に問いかける…。

 

「ああ…!オレはアイツともっと話したい…Ⅲの本当の気持ちを知りたい!だからオレは…デュエルを受ける!!」

 

《…フォウ…》

 

 

 

 

 

Sideトロン一家

 

 

 

『ただいま戻りました…!』

 

『Ⅲ…!』

トロン一家のアジトにⅢが帰ってくる…その瞳に強い決意を宿して…。

 

【よく帰ったねえ、Ⅲ】

 

『トロン…僕は…!』

 

【何も言わなくていいよ、僕には分かっている…力が欲しいんだね?彼に勝つための『力』が…!】

 

『はい…!』

Ⅲの目を見たトロンは妖しく笑いながら問いかける…Ⅲはトロンの言葉に頷いた…。

 

【それじゃあ君に力を与えよう…ただし、全ては君次第だ…!】

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

ピンポーン!

 

 

《は〜い!…あら?遊馬君に小鳥ちゃん!…フォウ君!?遊馬君の所に行ってたの?》

 

「おっすウィンダ!だから送りに来たんだ…ほらフォウ」

 

《フォ〜ウ…》

 

デッキ調整を終えた遊馬はフォウを送り届ける為に再び遊海の家を訪れた…出迎えたのは若草色のワンピースを着たウィンダだった。

 

《ありがとね!メガロックさんが心配してたのよ…ジュースでも飲んでいく?》

 

「ああ!」

 

 

 

《ごめんね…翠も昨日の疲れが出ちゃったみたいで休んでるの…はい!私特製のフルーツジュース!》

 

「ありがとうございますウィンダさん!」

いつものようにリビングに通された遊馬達はウィンダの作ったフルーツジュースを飲む…。

 

(遊馬…この写真を見ろ)

 

「えっ…あぁ!?」

アストラルが遊馬へと声をかける…そこには野原でピクニックをする遊海と翠…そして幼い凌牙と妹の璃緒、そして…幼いⅢとⅣ、そしてⅤらしき少年の姿が写っていた…。

 

 

「ウィンダ…この写真…!?」

遊馬は写真を見せながらウィンダに走り寄る

 

《ん?…ああ、凌牙君達の小さい頃の写真…あの頃はまだ凌牙君も素直な子だったんだけど…》

 

「違う違う!!この3人って…!」

 

《あっ…クリストファー君にトーマス君、それにミハエル君ね…白野さんが少しの間お世話して─…!?》

そこまで話してウィンダは口を抑える…ウィンダはうっかりⅢ達の本名を話してしまったのだ…。

 

 

(ウィンダ、詳しく話してもらえるか?遊馬はこのあとミハエル…Ⅲと戦う事になっている、彼らについての情報を知りたい…!)

 

「教えてくれウィンダ!Ⅲの奴…復讐の為のデュエルをしようとしてる…オレはそれを止めたいんだ!!」

 

《あわわ…ごめん、ちょっと待ってて!!》

ウィンダは遊馬達を待たせて2階へと駆け上がった。

 

 

 

《翠!ごめん起きて…!!》

 

「うう…ん…どうしたのウィンダ…?誰か来たの…?」

 

《ごめん…クリス君達の事、遊馬君達に話しちゃったの…!!》

 

「…─ええっ!?」

ウィンダの言葉に翠はベッドから飛び起きる!

 

《それにミハエル君が遊馬君とデュエルするらしいの…どうしよう…!》

 

「…話しちゃったならしょうがないわ…遊馬君も当事者よ、伝えられる事は教えてあげましょう…」

軽く身支度を整えた翠は遊馬達のもとへと向かった…。

 

 

 

「待たせてごめんね、遊馬君、小鳥ちゃん」

 

「翠さん…」

 

「翠さん、教えてくれ…Ⅲ…ミハエルはどうして復讐なんてしようとしてるんだ…!?」

現れた翠に遊馬は問いかける…。

 

「遊馬君、まずは貴方の知ってる事を教えてくれる?そうしたらあの子達の事を教えてあげる…」

 

 

 

………

 

 

 

「…ありがとう遊馬君、それじゃあ私の番ね」

遊馬の知るⅢ達についての事を聞いた翠は遊馬達に語り始める…。

 

「全ての始まりは遊馬君のお父さんの事…一馬さんが行方不明になった時、どんな仕事をしてたか知ってる?」

 

「うん、Dr.フェイカーって奴をある遺跡でガイドしてたって六十郎のじっちゃんが言ってた…父ちゃんはその遺跡で行方不明になったって…」

 

「そう、その遺跡にはもう2人の同行者がいたの…それがⅤ…クリス君とそのお父さん…バイロン・アークライトさん…彼は一馬さんと一緒に行方不明になったの…遺跡から戻ったのはDr.フェイカー、そして遺跡の外で待っていたクリス君だけだった…」

 

「Ⅲも父ちゃんが…」

遊馬が顔を沈ませる…父がいなくなる悲しみ…それは遊馬が一番よくわかっていた。

 

 

「…お父さんがいなくなってクリス君の弟…トーマス君とミハエル君は施設に預けられる事になったの…でも、その前に白野さんが2人の事を引き受けた…そしてしばらくの間2人はウチで凌牙君と璃緒ちゃんと一緒に暮らしていたわ」

 

「シャーク達と一緒に…!」

 

「それって…本当に家族みたい…」

小鳥は当時の事を想像する…写真の様子からきっと彼らの仲は良かったのだろうと…。

 

 

「そして…彼らはある日突然に姿を消してしまったの…書き置きを残して…そこには行方不明だった父親が帰ってきた事…そしてDr.フェイカーに復讐するって書いてあったわ」

 

「Dr.フェイカーへの、復讐…!それがⅢ達の目的…!!」

 

(もしや…以前に白野が言っていたやりたい事とは…!)

 

「…白野さんは凌牙君から3人がこの街に戻って来た事を聞いていたの…そしてWDCに参加しながらあの子達の事を探していたわ…復讐を止める為に…!」

 

「白野…」

遊馬は思った、復讐に駆られる子供達を見て…彼はどんなに悲しみ、どんなに悩んだのだろうと…。

 

「遊馬君、ミハエル君を止めてあげて…!復讐であの子が壊れてしまう前に…!」

 

「…止められるかはわかんねぇ、でもミハエルが…Ⅲが良い奴だって事はわかる!!オレは…デュエルでⅢと分かり合ってみせる…!」

遊馬は決意を固める…優しい少年であるⅢにこれ以上復讐に手を染めさせない為に…。

 

 

「…翠さん、白野に会わせてくれないか?」

 

 

 

《むっ、遊馬か…よく来た、フォウを見つけてくれたそうだな…感謝する》

 

「メガロック…白野は…」

 

《心配するな…少し疲れているだけだ》

翠との話を終えた遊馬は遊海の寝室を訪れる…カーテンの閉じられた部屋で遊海は静かに眠っている…。

 

「白野…オレ、これからⅢ…ミハエルとデュエルするんだ…オレは白野に全然勝てないし、Ⅲよりも弱いかもしれねぇ…でも、待っててくれ…!かっとビングでⅢに勝って…アイツと分かり合ってみせる!!」

眠り続ける遊海を前に遊馬は勝利を誓った…!

 

((…白野が昨日会った時以上に衰弱している…?いったい、何があったのだ…?))

…アストラルは感じていた、眠る遊海の力が著しく弱っている事に…。

 

 

 

 

 

SideⅢ

 

 

 

『あ…ぐあああああ─!?』キィン─バリバリバリ!

 

【耐えるんだⅢ…この痛みを耐えた先に…君はさらなる力を手にする事ができる…!!】

同じ頃…Ⅲはトロンにより『紋章』の力の強化を受けていた、しかし…それは激痛を伴う苦行…Ⅲは叫び事を上げながらその痛みに耐えていた…。

 

 

『(今の僕じゃ、遊馬には勝てない…!僕は、強くなる…!強くなって…君に勝つ…!!)』

 

 

─ミハエル、お前は優しい子だ…きっとお前ならいいデュエリストになれる─

 

 

『(白野…さん…)』

激痛で朦朧とする意識の中、Ⅲは遊海に掛けられた言葉をふと思い出す。

 

 

─近所にお前に近い歳の男の子がいるんだ…今度会ってみないか?その子も…─

 

 

『(ああ、そうだったんだ…あの人が会わせたかった子…遊馬の事だったんだ…僕達は、その前に姿を消してしまった…ごめんなさい、白野さん……僕は家族の為に…復讐の為に…優しさを、捨てます…!!)』

 

Ⅲは覚悟を決めた、遊馬を倒し、Dr.フェイカーへの復讐を果たした先に…あの時のような家族が戻る事を信じて…。


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