転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話   作:S,K

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こんにちは!S,Kです!

大変長らくお待たせしました!ついにぶつかりあう遊馬とⅢ…遊馬はこの戦いを乗り越えられるのか!!

そして…いつの間にかお気に入りが500件を突破してました!ハーメルンの読者の皆様…本当にありがとうございます!!

それでは最新話をどうぞ!


対決!優しき復讐者・Ⅲ!〜黄昏の決闘〜

『…翠、遊海は大丈夫なのか…!』

 

「…大丈夫、きっとすぐに…目を覚ましてくれるはず…きっと…!」

 

夕暮れの白波家…遊海の眠るベッドの側に2人の人影があった。

1人は妻である翠…そしてもう1人、それはカイアの起した騒動でハートランドを訪れていたジャック・アトラスだった。

 

 

『病院から姿を消すのはいつもの事だが…大怪我をしてデッキを失くすとは…貴女達はいったいどんな敵と戦っているのだ!!』

ジャックは翠を問い詰める、ベッドに眠る遊海…その体は傷こそ治ったが酷く衰弱し、本来の遊海とは比べる事ができないほど力も弱まっていた。

 

「…今の相手は『復讐鬼』…復讐心のせいで感情を失くして…自分の家族も『家族』と思えなくなった男…それが遊海さんの戦っている相手よ…」

 

『復讐鬼だと?そんな奴に遊海が遅れを……海亜の、せいか…?海亜が「スカーレッドノヴァドラゴン」を暴走させ…遊海の力を削いでしまったからか…!?』

 

「違う…違うのジャック君…!この数日、遊海さんはとても疲れていたの…!それに相手は闇の…異世界由来の特殊な力を使う相手…その力で遊海さんは嵌められたのよ…」

罪悪感を感じるジャックの言葉を翠は否定する…。

遊海が仮に普段の状態であればトロンはなす術はなかっただろう…だが、WDCに参加した事による連戦…ナンバーズを賭けた闇のデュエルにトロンの襲撃…それらが重なった事で遊海には疲労とダメージが蓄積していたのだ…。

 

 

 

『…わかっていても、歯痒いものだな…!老いた俺では遊海の力になる事もできんとは…!!』

 

「そんな事ないわジャック君…貴方が来てくれている…それだけでも遊海さんは心強いはずだから…」

自分の無力さに拳を握り締めるジャックを翠は優しく慰める…その時だった…!

 

キィィン─!

 

『遊海の痣が…!また、何かが起きようとしているのか!?』

 

「まさか…遊馬君!!」

遊海の赤き竜の痣が強く輝く…それは新たな事件を伝えるものだった…!

 

 

『じいちゃん大変だ!空にいきなり黒い雲が!!』

 

『それに風が…空気が震えてるんだ!何か恐ろしい事が起きようとしてる!!』

寝室にカイアと流星が駆け込んでくる…2人も何かを感じ取ったようだ…。

 

 

『海亜、流星…ここにいろ!この場所がこの街で一番安全な場所だ…!翠、孫達を頼む…!』

 

「ジャック君!?」

孫達を翠に預けたジャックは暗雲の広がるハートランドの空を睨みつける…!

 

 

『…本来であれば遊海の為すべき事だろう…しかし、それは叶わん…!孫の不始末…俺が責任を取る!我が荒ぶる魂に懸けて!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待たせたな…Ⅲ!!」

 

『よく来たね…遊馬!!』

黄昏時のハートランドシティ…その建設途中の海上道路の工事現場…そこでⅢと遊馬は相対する!

 

 

『遊馬、僕は君を倒す為に新たな力を得た…!』

 

「新たな力…?」

 

(気をつけろ遊馬…彼から感じる力が以前より強くなっている…!)

アストラルはⅢに宿る力を感じ取る…精霊の力とは違う異質な力…それがオーラとなってⅢを覆っている…!

 

『君に会って…君の家族を見て、僕は確信したんだ…!僕の家族を取り戻す為に…君達を倒すしかないと!!』

 

「Ⅲ…オレさ、ここに来る前に白野達に会って来たんだ…そして頼まれたんだ…!お前達を止めてくれって…これ以上お前達が傷付く前に復讐を止めてくれって!!」

 

『っ…!!』

遊馬の予想だにしない言葉にⅢは驚き、それを悟られないように唇を噛みしめる…遊馬に弱みを見せないように…。

 

「Ⅲ…オレはお前の本当の気持ちが知りたい…だから!オレはお前と戦う!デュエルをしたら仲間になれて、ソイツの全部がわかる…それがデュエルなんだ!!」

遊馬はⅢに向かって話ながら後ろを振り返る、そこには小鳥…そして鉄男や等々力達ナンバーズクラブのメンバー達が遊馬の予選最後の戦いを応援する為に駆けつけていた…。

 

「ここにいる皆もデュエルで絆を作った奴ばっかりだ!…そしてオレはお前ともデュエルをした!だから…オレはお前との間にも絆があるって信じる!!…いくぜ…Ⅲ!!」

 

『来い!遊馬─!!』

復讐を果たす為に本心を押し殺すⅢ、そしてデュエルを通じてⅢを救いたい遊馬…2人の負けられない決闘がついに始まる!!

 

 

 

『「デュエル!!」』

 

 

 

 

 

 

Sideトロン

 

 

 

【始まったみたいだね、Ⅲの決闘が…】

 

『……』

トロンはアジトにしているホテルのバルコニーからⅢの戦っているであろう海辺の方角を見つめる…その隣には沈んだ表情のⅤの姿があった。

 

 

【浮かない顔をしてどうしたんだい?】

 

『…アストラル世界の使者の力…侮れません…』

 

【君は心配症だねぇ…心配ないよ、Ⅲは必ず勝つ…彼は苦しみに耐えた分の力を得た…それにオマケで()の力の一部も分けてあげたからねぇ…!】

 

『っ…!!』

トロンの言葉にⅤは彼に気付かれないように拳を握り締める…恩人である白野を傷付けるばかりか、その力を奪ったトロンへの怒りを押さえる為に…。

 

『………それほど強力な力…Ⅲに御する事ができるのですか…?』

 

【フフフ…フフフフフフ…!】

Ⅴの問いにトロンは妖しく嗤うだけだった…。

 

 

 

 

 

 

 

デュエルダイジェスト 遊馬対Ⅲ

 

 

 

『先攻は僕が貰うよ!!…僕のターン!ドロー!!』

 

キィン─ 

 

デュエル序盤、先攻を取ったⅢはDゲイザー代わりになっている紋様と左目を妖しく輝かせる…!

 

『(トロンの力を貰った今の僕なら…アストラル、君の姿がはっきりと見える!!)』ギィン─

Ⅲの視線の先…そこには遊馬の近くに浮遊するアストラル…その姿がはっきりと見えている…!

 

『アストラル…君が遊馬の力になっているんだろう?けど、君がいたって…僕は負けない!!僕はフィールド魔法「先史遺産都市バビロン」を発動!!』

 

「うわっ…な、なんだ!?」

フィールド魔法の発動によって周囲の景色が塗り替わる…そこは「世界七不思議」の一つに数えられる「バビロンの空中庭園」をモチーフとした浮遊都市だった…。

 

 

『さらに!フィールド魔法が発動している事で手札の「先史遺産─トゥーラガーディアン」は特殊召喚できる!さらに「先史遺産─ゴールデン・シャトル」を召喚!自身の効果でレベルを1つアップする!』

 

(レベル5のモンスターが2体…来るぞ!!)

 

33

 

『現れろ!「No.33先史遺産─超兵器マシュ=マック」!!』

 

「こんなにはやく『マシュ=マック』を…!」

Ⅲの頭上に巨大な空中都市が降臨する…あまりにも速いナンバーズの登場に遊馬は気を引き締める…!

 

 

『さぁ…僕を倒してみろ遊馬!!君のデュエルで!!』

 

「Ⅲ…!誰かを傷付ける為にするなんて…そんなのデュエルじゃねぇ…!そんなんじゃねぇんだ!!デュエルは…オレが父ちゃんから教わった『かっとビング』は!!」

遊馬はⅢに呼びかける…だが、その想いはⅢには届かない…。

 

『かっとビング…残念だけど…()()()()()()()使()()()()()()…!』

 

「っ…?いくぜ…Ⅲ!!」

Ⅲの言葉に首を傾げながら遊馬は自分のターンを開始する…だが、…

 

(焦るな遊馬!彼の場には既に「マシュマック」がいる…今は守りを優先するべきだ)

 

「うぇ…?」

いつも通りに突っ走ろうとする遊馬にアストラルが待ったをかける…アストラルはⅢから以前とは違う雰囲気を感じ取っていた…。

 

(今は闇雲に攻撃するだけでは勝てない…タイミングを窺うべきだ)

 

「っ…わかってる!モンスターをセット!カードを伏せてターンエンドだ!」

遊馬はアストラルの言葉を聞いて守りを固める…だが、Ⅲはさらなる一手を繰り出す…!

 

 

『僕のターン!魔法カード「バレンケの石棺」を発動!自分の場にオーパーツと付くカードが存在する事で2ドロー!さらに自分が魔法カードを発動したターンに「先史遺産─アステカ・マスク・ゴーレム」は特殊召喚できる!』

 

「あのモンスターは…Ⅲのフェイバリットカード…!」

Ⅲの場に仮面の顔を持つゴーレムが現れる…それはⅢが父から貰ったお気に入りのカードだった…。

 

『バトルだ!「アステカマスクゴーレム」でセットモンスターを攻撃!ベレンケ・ブロー!!』

 

「セットモンスターは『ゴゴゴゴーレム』だ!!」

 

(「ゴゴゴゴーレム」は守備表示の時には戦闘では破壊されない、さらに攻守は互角…引き分けだ!)

「アステカマスクゴーレム」から放たれたエネルギーを「ゴゴゴゴーレム」がガッチリと受け止める!

 

『…そうだと思ったよ…だけど、僕の目的は()()()()()()()!バトルフェイズを終了!「先史遺産─カブレラの投石機」を召喚!』

 

「なっ…!?バトルをしないで…攻撃力0のモンスターを召喚!?」

遊馬はⅢの思わぬ行動に動揺する…「マシュマック」の攻撃を捨ててまで新たなモンスターを召喚した真意…それは──

 

『「カブレラの投石機」の効果発動!自分のモンスターをリリースする事で…相手モンスターの攻撃力をエンドフェイズまで0にする!』

 

「なにっ!?」

 

『呪いを受けろ…「ゴゴゴゴーレム」!!』

「投石機」のマジックハンドが「アステカマスクゴーレム」を掴み上げ弾丸にして「ゴゴゴゴーレム」へと投げつける…直撃を受けた「ゴゴゴゴーレム」は村の鎖で拘束され、力を奪われてしまう!

 

(っ!?まずい…このコンボは─!!)

 

『気付いたってもう遅いよ…!この瞬間に「マシュマック」の効果発動!モンスターの攻撃力が変動した時!ORUを一つ使う事でその変化した数値分だけ相手にダメージを与える!1800のダメージを受けろ!インフィニティ・キャノン!!』

 

ドドドドドド!!

 

(「うわあああ─!?」)

 

「マシュマック」に設置された砲台が火を噴き、遊馬とアストラルは大ダメージを受けて吹き飛ばされる!!

 

『効果を発動した「カブレラの投石機」は守備表示になる…僕はこれでターンエンド!』

 

 

「ぐっ…この、痛みは…!」

 

(ナンバーズによるダメージだけではない…!もっと、強い力が…!)

吹き飛ばされた2人はなんとか立ち上がる…だが、遊馬の体はARデュエルでは考えられない強いダメージを受けている。Ⅲや遊馬達は知るよしもないが…トロンによって奪われた遊海の力によってこのデュエルは闇の決闘へと変化し、遊馬達に痛みとして襲いかかっているのだ…!

 

「Ⅲの奴…前のデュエルの時とまったく違う…!いったいどうして…!」

 

(だが…これが彼の切り札なのならば策はある…!)

 

「…待ってくれアストラル…これはオレのデュエルだ…!このデュエルは…()()()()()()()で勝たなくちゃダメなんだ…!!」

 

(遊馬…)

アストラルの言う通り『勝利する』だけなら方法はある、だが…遊馬にとってはそれだけでは納得できなかった…『Ⅲを救う』…その為に遊馬は戦っているのだ…。

 

 

 

 

「オレのターン!『ガガガマジシャン』を召喚!」

 

(遊馬、装備魔法を発動して『ガガガマジシャン』の効果を発動だ)

 

「わかってるつーの!装備魔法『バウンド・ワンド』を『ガガガマジシャン』に装備!さらに『ガガガマジシャン』の効果で自分のレベルを8にする!」

 

(さらに装備魔法『バウンドワンド』の効果により装備モンスターの攻撃力は自身のレベル✕100ポイントアップする!攻撃力2300だ!)

赤い宝石の付いた杖を構えた「ガガガマジシャン」の攻撃力が上昇する!

 

「よし!…でも、これじゃあ『マシュマック』の効果が…」

 

(『マシュマック』の効果を発動してもダメージは僅か…ⅢはORUを温存するはずだ…遊馬!攻撃だ!)

 

「バトルだ!『ガガガマジシャン』で『カブレラの投石機』を攻撃!!」

Ⅲの戦略を見抜いた遊馬は攻撃を仕掛ける…だが、Ⅲも黙って見ているだけではない!

 

 

『その攻撃は読めてるよ…!罠カード「コスタリカン・ストーン・ボール」を発動!相手モンスターの攻撃を無効にし、次の相手ターンにそのモンスターは攻撃できなくなる!』

 

「くそっ…!!」

『ガガガマジシャン』に石の重りの付いた鎖が巻き付き、身動きを封じる!

 

 

(読まれていたか…遊馬、カードを伏せるんだ)

 

「あぁ〜もう!!お前が邪魔するから!!カードを伏せてターンエンドだ!」

思う通りに動けない焦りともどかしさをアストラルにぶつけながら遊馬はターンを譲り渡す…。

 

 

 

『僕のターン!フィールド魔法「先史遺産都市─バビロン」の効果発動!墓地の「ゴールデンシャトル」を除外する事で墓地の「アステカマスクゴーレム」を特殊召喚!そして「カブレラの投石機」の効果発動!「アステカマスクゴーレム」をリリース!!』

 

「っつ─!Ⅲ!!お前どうしちまったんだよ!?あんなに好きだって言ってたオーパーツ達をこんな風に使って…お前はなんとも思わないのかよ!!」

遊馬は叫ぶ…Ⅲのデュエルを何回も見たからこそ遊馬にはⅢがどんなに自分のモンスターを大事にしているかがわかっていた…だが、いまのⅢはその大切なモンスターを遊馬を倒す為の「駒」として使い潰してしまっているのだ…!

 

『…僕は変わった…!どんな犠牲を払ってでも、君を倒す!!「カブレラの投石機」の効果!「ガガガマジシャン」の攻撃力を0にする─!!』

 

 

 

「や、やばいウラ!『マシュマック』とのコンボでダメージを受けて…『マシュマック』の攻撃を受けたら!!」

 

「トドのつまり遊馬君の負けです!!」

 

「遊馬─!!」

仲間達の焦りの声が響く…現在の遊馬のライフは2200…コンボをかわせなければ敗北は決まる…だが、遊馬()の戦いはまだ終わらない!!

 

 

(この瞬間を待っていた!遊馬!『ガガガラッシュ』だ!)

 

「そうか!!リバース罠『ガガガラッシュ』発動!『ガガガ』モンスターがモンスター効果の対象になった時!その効果を無効にして破壊する!」

 

(さらに『ガガガラッシュ』の効果によって破壊されたモンスターの攻撃力か守備力…どちらか高い数値分のダメージを相手に与える!)

 

「『カブレラの投石機』の守備力は1800!お返しだぜ!Ⅲ─!!」

 

『ぐっ!?うわああ…!!』

戒めを破った『ガガガマジシャン』が投石機を破壊…Ⅲに大ダメージを与える!

 

 

 

「やったぜ!…アストラル、まさかお前…最初から…?」

 

(…いまの彼は勝利にこだわり過ぎている、それ故に慎重……めちゃくちゃなデュエルをする君よりも戦術は読みやすい)

 

「…一言多くねぇか?」

 

(フッ…このまま勝つぞ、遊馬!)

 

「おう…!!」

2人は軽く笑いあいながらⅢへと向き直る…ライフはこれで五分…だが、Ⅲのターンはまだ終わっていない…!

 

 

『ぐっ…遊馬の「かっとビング」に…アストラルの高等戦術…!2人の力は僕の上を行くというのか…!』

 

「Ⅲ…自分のモンスターを…オーパーツ達を犠牲にするなんて…そんなのお前のデュエルじゃねぇ!!」

 

『っ…!!』

立ち上がったⅢに遊馬が叫ぶ、Ⅲは明らかに無理なデュエルをしている…そう感じたからだ…。

 

 

『…君にはわからないさ…仲間に囲まれて、幸せでいる君には…!家族がバラバラになってしまった僕達の辛さは!!』

 

「っ…!お前達の父ちゃんが行方不明だってのは翠さんから聞いた!でも…写真の中のお前達は笑ってたじゃねぇか!白野達がお前達が少しでも寂しくないように一緒に居てくれたんじゃねぇのかよ!!」

Ⅲは自分の心中を吐露する…バラバラになってしまった家族の辛さを…だが、遊馬は知っている…写真の中で笑っていたⅢ達兄弟の優しい笑顔を…。

 

 

『…白野さんには感謝してる、施設に預けられるはずだった僕達を引き取って…家族の暖かさを教えてくれた…僕達を慰めてくれた…!…でも!!僕達は知ってしまったんだ!!父様がどんなに酷い裏切りを受けたのか!!…ようやく取り戻した本当の家族は壊れてしまった!!本当の…あの時の家族を取り戻せるのなら…僕はどんな事だってやってやる!!』

 

「Ⅲ!!復讐なんてやめちまえよ…!そんな事をするのが…本当に家族の為なのかよぉ!!」

 

『うるさい…黙れ!!遊馬…ウザいんだよ…目障りなんだよ!!君のいちいちが…君の()()()()()()の精神が!!』ギィン─! 

Ⅲは涙を浮かべながら怒りを露わにする、暖かい家族への憧憬…復讐へ飲まれた自分の家族への悲しみ…自分の家族をバラバラにされた怒り…負の感情が頂点に達した時、Ⅲに与えられた「紋章」が強く禍々しい輝きを放つ!!

 

 

「Ⅲ─!!」

 

(っ…!Ⅲの纏う力が強くなっていく…!!)

 

『君にはもう…かっとビングは《《使わせない》…!!』

光が収まった時、Ⅲの姿は大きく変化していた…赤い貴族服から金色の甲冑と赤いマント…まるで古代の戦士を思わせる姿へと変貌していたのだ…!

 

【…闇に落ちろ…!遊馬ぁぁぁ!!】

 

ギィン!!

 

「えっ…!?うわあぁぁ─!?」

 

(遊馬─!?)

Ⅲの紋章から放たれた実体化したエネルギーが遊馬を吹き飛ばす!!

 

(大丈夫か!?遊馬!)

 

「うぅ…あっ…皇の鍵、が───…」

 

ドクン

 

(っ!?遊馬!どうした!?しっかりするんだ!!)

吹き飛ばされた遊馬はなんとか起き上がるが…突如として異変が起きる…瞳から光が消え、先程までの闘志が嘘のように霧散していく…そして…!

 

 

「…怖い…痛い…!どうして…()()は、こんなデュエルをしてるの…?」

 

(遊馬…!?)

 

 

 

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

 

「父ちゃん…!無理だよ…こんな崖…登れないよ!!」

 

『諦めるな遊馬!お前ならできる!』

気付けば幼い姿の遊馬は崖を登っていた…少し上には父・一馬の姿もある、これは遊馬の原点…父から「大切な言葉」を教えられた運命の日…だが……

 

『登って来い遊馬!かっとビングだ!』

 

「えっ…父ちゃん?なんて…言ったの?」

遊馬にその()()は届かない…これはあり得た可能性…遊馬が諦めない精神…「かっとビング」を知らない可能性での遊馬の人生だ…。

 

 

 

「怖い…怖いよ…!!」

 

「…九十九君?あなたはチャレンジしないの?」

 

「イヤだよ…怖いもん…あんなの…跳べるわけない…」

かっとビング…諦めず挑戦する心を失った遊馬は体育館の隅で小さくなっていた、目の前では同級生達が跳び箱やプールに飛び込み台から飛び込んだりしている…だが、遊馬は「挑戦しない」…怪我をするのが怖い、痛みが怖い…失敗が怖い…恐怖心が遊馬の心を縛っているのだ…。

 

「…九十九君、チャレンジしてみないとわからないよ?」

 

「わかるよ…やらなくたって…ボクには跳べない…跳べないんだ…!!」

 

 

 

 

 

 

「バトルだ!弱虫遊馬にダイレクトアタック!!」

 

「う、うわあ〜!!」

 

 

遊馬LP0

 

鉄男LP4000 WIN!

 

 

 

「やったぜ!パーフェクトだ!!」

 

「うぅ…」

 

かっとビングを失った遊馬はデュエルにも負け続けていた…本来の遊馬もアストラルと出会うまでは連戦連敗だったが…それはかっとビングによって相手の伏せカードやブラフを気にせずに攻撃した故のいわば「勝ちを目指した敗北」だった。

…だが、かっとビングを失った遊馬は相手のブラフやモンスターを恐れ攻撃できない「恐怖ゆえの敗北」…同じ敗北でもその意味は大きく違うものだった…。

 

 

「まったく…こんな意気地なしに勝っても嬉しくないぜ…デュエリストの恥さらしが!」

 

 

「九十九君…」

 

「怖い…怖いんだ…!!」

この遊馬に友人はいない…いるのは彼を心配する小鳥だけ、両親を失い…鉄男達ともデュエルによる友情を築ないただの弱気な少年…それがこの世界の遊馬だった…。

 

 

  

 

 

 

ドン!!

 

「うわ…!?ご、ごめんなさい!ごめんなさい!!」

道を歩いていた遊馬は誰かとぶつかり尻餅をつく…。

 

『すまなかったな少年…怪我はないか?』

 

「えっ…?」

遊馬はぶつかった相手を見上げる…その相手は何処かで見た事のある()()()の青年だった…。

 

『立てるか?よそ見をしてしまってな…悪かった』

 

「いえ…!ボクが悪いんです!ごめんなさい!すいません!!」

青年に引っ張られて立ち上がった遊馬は青年に謝罪する。

 

『…厄介な術に掛かったな…欠片の俺ではどうする事もできない…』

 

「えっ…?」

 

『…諦めるな九十九遊馬…お前の心の強さは俺が一番知っている…!かっとビングだ…ぐっ!?存在が、保てない…!』 シュゥゥン…

 

「えっ!?だ、大丈夫ですか─!?」

足元から消えていく青年を見た遊馬は慌てふためく…

 

『諦めるな遊馬…お前は…1人じゃな─…!』

 

「待って…行かないで…!ボクを1人にしないで!白野さん─!!」

 

 

 

 

 

青年の姿が掻き消える、そして遊馬は…大切なモノを失った。

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

 

「怖い…!無理に決まってる…ボクがデュエルに勝てるわけがない…」

 

(遊馬…!Ⅲ!!君は…遊馬に何をした!!)

明らかに正気を失っている遊馬を見たアストラルが吼える…遊馬に異変が起きたのはⅢの力を受けた後…原因はそれしか考えられない…!

 

 

【遊馬の心から「かっとビング」を消した…遊馬には君も首のペンダントも見えていないはずだ】

 

(っ─!紋章の力…!!遊馬!!邪悪な力に飲まれるな!!気をしっかりもつんだ!!)

アストラルは必死に遊馬に呼びかけるが…遊馬は応えない…。

 

【アストラル…君にもこれ以上邪魔はさせない…!】

 

ギィン─! ゴゴゴ…!

 

(な、なんだと…!?)

 

紋章の輝きと共にⅢの背後に巨大な石造りの塔が現れる…!

 

【アストラル…この紋章には君を封印する力もあるんだよ…!!消えて貰おうか!!】

 

ギィン!!

 

(ぐあああああ─!?!?)

再び放たれた紋章の力がアストラルに直撃する…アストラルの姿はその場から消え去り、石塔の壁に鎖によって拘束されてしまう…!

 

 

【遊馬…君の心から「カッとビング」は消えた…!カッとビングが戻らない限りアストラルの姿も、君のお守りのペンダントも見えない…つまり、君は僕の敵じゃないのさ!!バトルだ!「マシュマック」で「ガガガマジシャン」を攻撃!!】

 

「ぐっ…うわああ…!」

「マシュマック」の天辺から放たれた雷撃が「ガガガマジシャン」と遊馬を吹き飛ばす!!

 

(遊馬!!っ…ぐあああああ!!?)バリバリバリ!!

吹き飛ばされた遊馬へと叫ぶアストラルに紋章による電撃が襲い掛かる…遊馬がダメージを受ければアストラルにも痛みが襲う…!

 

【遊馬…君には絶望の中で消えてもらうよ…フフフ…ハハハハハ…!!】

Ⅲは嗤う…彼の心は壊れかけている、復讐と良心の狭間で揺れ動く心…覚悟を決めてしまったⅢは何もかもを捨てて遊馬へと襲い掛かる…!

 

 

 

 

 

Sideナンバーズクラブ

 

 

 

「ねぇ…!なんだか遊馬の様子が変じゃない…?」

 

「ああ…!こんなの遊馬のデュエルじゃねぇ…!!」

遊馬のデュエルを応援していた仲間達が遊馬の異変に気が付く…遊馬は明らかに動揺し、手が震えている…それは普段の遊馬では考えられない事だった。

 

【さあ遊馬!君のターンだ!!】

 

「怖い…痛い…!!」

性格と姿が豹変したⅢが遊馬を追い詰める…遊馬はオドオドするばかりで反応を示さない…。

 

「っ─!!遊馬!何してやがる!!お前のターンだ!カードをドローするんだ!!」

 

「ひっ!?…ボクのターン…ド、ドロー…」

鉄男の声に驚きながら遊馬は弱々しくカードを引く…だが…!

 

「ぼ、ボクは……()()()()()…する…」

 

「「「「なんだって!?」」」」

遊馬の思わぬ宣言に仲間達は驚愕する…サレンダーは「自ら敗北を認める」事…普段の遊馬なら絶対に言わない言葉だったからだ…!

 

 

【ふ、フハハハハ…!まさか「かっとビング」を失った君がこんなに臆病だったとはね…!!】

 

「えっ…カッとビングって…どういう事だよ!?」

 

「遊馬とアストラルに何をしたの!?」

Ⅲの嘲笑を聞いた仲間達がⅢを問い詰める…!

 

【ククク…!遊馬の「かっとビング」の記憶とアストラルを封印したのさ…あれを見るがいい!!】ギィン─

 

「あ…!?アストラル!!」

 

「塔に捕まってるウラ!!」

Ⅲが再び紋章を光らせる、それによって小鳥達にアストラルの姿が見えるようになる…アストラルは苦しげな表情で鎖で拘束されていた…!

 

 

【かっとビングとアストラルを失った遊馬に残っているのは恐怖心だけ…】

 

「そんな…!?」

 

「テメェ…!卑怯だぞ!!」

 

「ヒドすぎます!!」

Ⅲの言葉に仲間達が怒りの声を上げる…たしかに多少の盤外戦術はデュエルには付き物ではある、だが…Ⅲの行った妨害は決闘者でも許せるものではないだろう…!

 

 

【……なんとでも言うがいいさ…!遊馬!!君のサレンダーは()()()()!!君は僕に敗北して全てを奪われるんだ!!】

 

「そんなの…嫌…だ…!」

 

【大丈夫さ…僕がすぐに楽にしてあげる…!九十九遊馬…君はここで破れ去る!!】

決闘者としての力を失った遊馬にⅢが無情な攻撃を仕掛ける…!!

 

 

 

【僕のターン!「先史遺産─マッド・ゴーレム・シャコウキ」を召喚!】

Ⅲの場に細身の遮光機土偶が現れる!

 

 

「ま、まずいわ!遊馬があんな状態で攻撃を受けたら…!」

 

「っ…!まだだ!遊馬の場には戦闘破壊されない『ゴゴゴゴーレム』がいる!このターンは耐えられるはずだ!」

 

【確かに「ゴゴゴゴーレム」は戦闘じゃ破壊されない…でも、僕は甘くはない!!「マッドゴーレム・シャコウキ」で「ゴゴゴゴーレム」を攻撃!このモンスターは守備モンスターを攻撃した時、貫通ダメージを与える!!ジョーモン・レーザー!!】

 

「う、うわあ〜!?」

 

「「遊馬!!」」

貫通ダメージによってが吹き飛ばされる!

 

【まだだ!速攻魔法「石の心臓」を発動!オーパーツモンスターが相手モンスターを戦闘破壊できなかった時!そのモンスターはもう一度攻撃できる!「ゴゴゴゴーレム」を粉砕しろぉぉ!!】

 

「うわああああ─!?」

Ⅲの攻撃が再び遊馬を吹き飛ばす…遊馬を守るものは無くなってしまった…!

 

 

【これで終わりだ!遊馬ぁぁ!!「マシュマック」でダイレクトアタック!ヴリルの火!!】

 

「あ、あの攻撃を受けたら…トドのつまり終わりです─!?」

 

「逃げて…避けて!!遊馬─!!」

 

「うっ…あぁ…!」

Ⅲのダメ押しの一撃…天罰の業火が遊馬に迫る…!遊馬は恐怖と痛みで身動きが取れなくなってしまっている!!

 

 

(ぐっ…!遊馬…!!これが私の…最後の力だ!!)

苦しみの中…絶体絶命の遊馬を見たアストラルは自身に残された最後の力を振り絞る!!

 

(遊馬…思い出せ…!かっとビングを─!!)

 

キィン─!!

 

【なに!?】

 

「うわっ…!?」

アストラル渾身のエネルギーが遊馬へと直撃する…!

 

「(これは…なんだ…?この記憶は…)」

その瞬間、遊馬は僅かに記憶を取り戻す…アストラルとの運命的な出会い…そして2人の絆がもたらした伝説の戦士の姿を…!

 

「っ─!!ぼ、ボクは手札の『ガガガガードナー』の効果発動!!ダイレクトアタックを受ける時に特殊召喚できる─!うわああ…!」

 

【なんだと!?】

アストラルの力で僅かに勇気を取り戻した遊馬はギリギリで『マシュマック』の攻撃を耐える!!

 

【馬鹿な…っ〜!!よくも邪魔してくれたな…アストラル─!!】ギィン─バリバリバリ!!

 

(ぐぅ!?ぐあ"あ"あ"あ"…!!)

 

「アストラル─!!」

横槍を入れられた事に怒ったⅢがアストラルを紋章の力で攻撃する!

 

 

【消えろ…!消えてしまえ!アストラルゥゥ!!!】

 

ギィン!!

 

(あ"あ"あ"…!!遊馬…諦めるなぁぁ─!!!

 

…それがアストラルの最期の叫びだった、紋章の力によってアストラルは消滅した…遊馬へと最後の希望を託して…。

 

「今…何が起こったんだ…?いきなり爆発が…うわっ!?」ズルッ!

 

「「遊馬!!」」

遊馬にはアストラルの言葉は届いていない…だが、アストラル消滅の際の爆発に驚いた遊馬はバランスを崩して崖へと倒れこんでしまう!!

 

 

「やべぇ!!遊馬─!!」

 

「鉄男君!?何を慌てて…」

 

「馬鹿委員長!!遊馬の後ろは…()()()()()()()だぁ!!」

 

「あ…ああ─!?」

デュエルに熱中していた彼らは忘れていた…この場所は工事中の海上道路…落下すれば命はない!!

 

「うぐ…!あああああ!?」

 

「「「遊馬─!!!」」」ガシッ!!

落下しかけていた遊馬の腕を鉄男が掴み取る!!

 

 

「しっかりしろ!遊馬!!」

 

「な、なんで君が…」

 

「当たり前だ!!俺達は仲間だろ!!」

 

「ボクが…君達の…仲間…?」

鉄男の言葉を聞いた遊馬は鉄男…仲間達へと問いかける…遊馬を掴んでいる鉄男の後ろには彼を支える小鳥や等々力、徳之助、キャッシーの姿があった。

 

「当たり前よ!!」

 

「「「俺/私達は仲間だ!!」」」

仲間達の力で遊馬は引き上げられる!

 

 

 

「遊馬、お前…本当に何もかも忘れちまったのか!?お前はいつだって諦めなねぇ奴だったろ!?どんなピンチにも立ち向かう勇敢な男…それが九十九遊馬って男だ!!」

 

「ボクが勇敢…?君達の…仲間…?」

鉄男の叱咤に遊馬は戸惑う…いるはずのない「仲間」…その声が遊馬の心を…魂を震わせる…だが…!

 

【おしゃべりはそこまでだ、君達がいる事を忘れていたよ…!ハッ!!】

 

ギィン─!

 

「「「「うわあああ!?」」」」

 

「みんな!?」

Ⅲの力によって仲間達が弾き飛ばされ…さらに電撃を帯びた岩の結界に閉じ込められてしまう!

 

 

【そこにいる限り君達の声は届かない…遊馬、僕は君の全てを奪ってやる!!】

 

「くそっ…!!俺達にできる事はないのかよ!?」

鉄男は拳を握り締める…かっとビングとアストラルを失い、仲間達の声も届かなくなった…遊馬は完全に1人になってしまったのだ…。

 

「遊馬…!!私に…私にできる事はないの…あっ?」

遊馬の絶体絶命の危機に小鳥もまた拳を握り締める…そして、手の中に何かを握っている事に気が付く…!

 

「これ…皇の鍵…!それに…白野さんのお守り…!」

小鳥が握っていたのは先程の攻撃で弾き飛ばされた遊馬の皇の鍵…そして、翠から渡されていた銀色のカルトゥーシュだった…。

 

「(お願い…!一馬さん…!白野さん…!!遊馬を…助けて…!!)」

小鳥は祈る…その祈りは奇跡を引き起こす…!

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

Side???

 

 

 

『バイロン…お前はここまで汚い手を使って来るのか…』

皇の鍵の異空間…そこに1人の男が現れる、それは行方不明になっているはずの遊馬の父・一馬だった…。

 

『今回は…遊馬一人の力だけじゃ無理そうだな』

そう言うと一馬は皇の鍵の建造物…飛行船の上に立ち、大きく息を吸い込む!

 

『遊馬!!一番大切な事…忘れてんじゃねぇぞぉぉぉ!!』

 

キィン─! バシューン!!

 

一馬の一喝と共に飛行船から一筋の閃光が放たれる、その光が照らすものは───

 

 

 

SideOut

 

 

 

キィン─!

 

「えっ!?キャ…!」

小鳥の握り締めていた皇の鍵が強く光を放つ!

 

 

キィン─バシューン!!

 

 

【なっ!?ぐあ─!?】

 

ギ─バリーン!!

 

皇の鍵から放たれた閃光がⅢへと直撃…紋章の力を打ち砕く!!

 

ドクン!!

 

「あっ…!!」

紋章が砕かれた瞬間、遊馬にたくさんの記憶が流れ込む…。

 

 

アストラルと出会った事

 

アストラルと共に「No.」と戦ってきた事

 

デュエルを通じてたくさんの決闘者と出会った事

 

 

「遊馬!受け取って─!!」

 

「あっ…これ、は…!」

 

 

小鳥から投げ渡される「皇の鍵」…そして遊馬は一番大切な「言葉」を思い出す…!

 

キィン─!

 

─思い出せ、遊馬…俺が教えた事を…思い出せ、俺が教えた言葉を…!─

 

「父ちゃん…ボクが…おれが…!オレが忘れていたのは…!!」

脳裏に響く父の声…その言葉が悪しき力を打ち砕く!!

 

 

「オレが忘れてたのは…かっとビングだぁぁぁ!!」

 

 

【馬鹿な…トロンの紋章の力を打ち砕いただと!?】

遊馬は正気を取り戻す…そこに先程までの弱々しい遊馬はいない、そこにいるのは紛れもなく勇敢なる()()()…九十九遊馬だった…!!

 

 

「やった…!遊馬が復活したぞ─!!」

 

「「やった〜!!」」

復活した遊馬の姿を見た仲間達は喜びあう!!

 

 

「Ⅲ…!お前紋章の力で…そこまでやるとはな…!」

記憶と闘志を取り戻した遊馬は皇の鍵を結び直しながらⅢを睨みつける…!

 

【うるさい…!君が1人なのは変わらない!!君も…アストラルの所に送ってやる!】

 

「アストラル……アストラル─!?」

Ⅲの言葉でアストラルの不在に気付いた遊馬は辺りを見回す…だが、アストラルの姿は…気配は消えてしまっていた…。

 

 

【残念だけど、アストラルはもういない…僕が紋章の力でアストラルを消滅させたからね…!】

 

「っ…嘘だ…!嘘だ!!」

遊馬はⅢの言葉を否定するが瞳から涙が零れ落ちる…認識できなくとも遊馬の記憶には…アストラル消滅の瞬間がはっきりと残っていた。

 

【往生際が悪いぞ遊馬!アストラルは死んだ…僕は家族を守る為なら…手段は選ばない!!デュエルを再開する!僕はフィールド魔法「先史遺産都市バビロン」の効果発動!墓地の「アステカマスクゴーレム」を除外して「カブレラの投石機」を守備表示で特殊召喚!】

デュエルを再開したⅢは再び古代の投石機を呼び出す…!

 

 

【僕はこれでターンエンド…遊馬、君のライフは残り400…君をかっとビング諸共捻じ伏せてやる!!】

Ⅲは遊馬を追い詰める…その時、遊馬は…泣いていた。

 

 

「許さねぇ…!Ⅲ…お前は絶対に許さねぇ─!!」

遊馬は叫ぶ…アストラルを失った悲しみ、アストラルを守れなかった自分への怒り…その強い思いが遊馬の魂に火を点ける!!

 

 

「かっとビングだ…!オレぇぇ!ドロー!!」

 

─考えろ遊馬…「今」何をすべきなのかを…!─

 

「(アストラル…!そうだ、お前はオレの心の中にいる…!思い出せ…アイツの言葉を…!)」

遊馬の脳裏にアストラルとの日々が蘇る…アストラルは仮に自分が消えてしまっても大丈夫なように「デュエルの心得」を伝えていた…それを遊馬は思い出す…!

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

(遊馬、私達は以前、白野に敗北したな?)

 

「ああ…あの時は『ホープ』を手に入れたばっかりで浮かれてたからなー」

 

(それだけではない、あの時の君は白野の『狙い』に気付く事ができず、彼のペースに持っていかれてしまった…どんなに強いデッキを作ってもペースを得られなければ…勝利を掴む事はできない、あの時の白野は次のターンのエクシーズ召喚を見据えてモンスターを守っていた…あの時の『正解』は「ゴゴゴゴーレム」を攻撃表示で召喚し…『アルトリウス』の攻撃を『燃える闘志』でカウンターするべきだったのだろう…)

 

「…よくそこまで覚えてるな…ていうか『ホープ』を出したのはお前の指示じゃ…?(汗)」

 

(…コホン、とにかく…敵の狙いを見極め、それを阻止しろ…あとは…)

 

「あとは…?」

 

(フッ…君らしく「かっとビング」すればいい…!)

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

「Ⅲの狙いは『カブレラの投石機』と『マシュマック』のコンボ…それを阻止するには…どちらかを破壊するしかねぇ…!!」

アストラルの言葉を思い出した遊馬はフィールドを見渡す…Ⅲの場には相手の攻撃力を下げる『カブレラの投石機』に攻撃力が変動した時にダメージを与える『マシュマック』…どちらかを破壊しなければ、遊馬は負けるだろう…だが、遊馬にはまだ…『希望』が残っている!

 

キン─

 

「これは…!?」

遊馬のエクストラデッキが光を放つ…そこに()()()()()が残っていた…!

 

「ありがとよアストラル…いくぜ…!お前との記憶がオレの血だ!オレの肉だ─!」

アストラルの残した希望と共に遊馬は戦いに臨む!!

 

 

「オレは装備魔法『ガガガリベンジ』を発動!墓地の『ガガガマジシャン』を特殊召喚してこのカードを装備!さらに『フルエルフ』を召喚!そして効果発動!手札のレベル2モンスター『オーバーレイ・イーター』を墓地に送る事でレベル2の『フルエルフ』のレベルは2から4にアップする!!」

 

【なに…まさか!?】

 

「そのまさかだ!!オレはレベル4の『ガガガマジシャン』と『フルエルフ』でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!」

 

39

 

「現れろ!『No.39』!『希望皇ホープ』!!」

 

《ホォオオープ!!》

遊馬とアストラル…2人の思いを背負い、希望の戦士が現れる!!

 

 

【馬鹿な…「ホープ」だと!?】

 

「こいつが…アストラルの残してくれた最後の希望だ─!!」

現れた「ホープ」にⅢが驚愕する、基本的に遊馬はアストラルが近くにいなければナンバーズを使う事ができない…だが、アストラルが消滅の間際に最後の希望として遊馬のデッキに残していたのだ…!

 

【…希望だって…?まだそんなものがあると思っているのか!?】

 

「ああ、あるさ!!オレの心の中に!!決して消えない『希望の炎』が…アストラルが残してくれたかっとビングだ!!装備魔法『ガガガリベンジ』のさらなる効果発動!このカードを装備したモンスターがエクシーズ素材となった時!そのエクシーズモンスターの攻撃力を300アップする!」

アストラルが残し、遊馬が継いだ希望が炎となって『ホープ』を包み込む!

 

「バトルだ!『ホープ』で『マシュマック』を攻撃!ホープ剣ツインブレード・シュート!!かっとビングだ─!!!」

 

【なにっ─!?ぐあぁぁ─!?】

「ホープ」がホープ剣を投擲する…投げ放たれた希望の剣は「マシュマック」を直撃…古代都市を撃ち落とした!!

 

 

【馬鹿な…アストラルがいないのに、ここまでのデュエルを…!?】

 

「理屈なんかじゃねぇ…これがオレとアストラルの力だぁぁ!!」

アストラルのいない状態で「マシュマック」を撃破した遊馬…アストラルと共に戦い抜いた数多の決闘の経験が遊馬を1人の決闘者として成長させていたのだ。

 

【許さない…許さないよ!遊馬!!僕の力は「マシュ=マック」だけじゃない!!】

Ⅲは怒りを露わにする…そしてついにトロンから渡された切り札が遊馬に牙を剥く!!

 

 

06

 

【これがトロンから受け継いだ…僕の新しい力だ!現れろ!「No.6」!「先史遺産─アトランタル」!!】

 

「でかい…!これが、Ⅲの新しいナンバーズ…!?」

Ⅲの場に巨大な山岳型のオブジェが現れて展開…右肩には巨大な火山、そして灼熱を纏う手足を持つ超弩級ナンバーズ…「アトランタル」が現れる!

 

 

【「アトランタル」の効果発動!このカードがエクシーズ召喚に成功した時!墓地の「No.」モンスターを装備し、その攻撃力分自身の攻撃力をアップする!!】

 

「なんだって!?」

墓地から引きずり出された「マシュマック」が「アトランタル」の腹部にある窪みにはめ込まれる…その攻撃力は…5000…!!

 

 

【バトルだ!「アトランタル」で「ホープ」を攻撃!ディヴァイン・パニッシュメント!!】

 

「させるかよ!『ホープ』の効果発動!ムーンバリア─!!」

アトランタルの火山から放たれた『天罰』の名を冠する竜巻をホープが受け止める!!

 

【まだだ!「アトランタル」のさらなる効果発動!ORUを1つ使い!相手のライフを半分にする!!オリハルコン・ゲート!!】

 

「っ!?うわああ!!?」

 

「遊馬─!!」

アトランタルの巨大な拳が遊馬を殴りつける…残りライフは…僅か200…!

 

 

【これで君のライフは残り200…今度こそトドメを刺してやる!】

 

「さ、させるかよ…!オレは…絶対に諦めねぇ!!」

痛む体を引きずりながら遊馬が立ち上がる、どんなにボロボロになろうと…遊馬は諦めない!

 

 

「オレのター…っぐ…!腕が…!」

カードを引こうとした遊馬が顔をしかめる…先程の攻撃で右腕を捻ってしまったようだ…!

 

「これくらいの、痛みで…!諦めて、たまるかぁ…!」

遊馬の魂の炎は消えていない…だが、身体が悲鳴をあげる…その時だった。

 

キィン─

 

「あっ…お守りが!」

小鳥が握っていたカルトゥーシュが彼女の手を離れ、遊馬のもとへと飛んでいく─

 

「っ…!これ、白野のペンダント…!どうして…?」

キィン…

 

遊馬は目の前に現れたペンダントを手に取る…するとペンダントから優しい光が放たれて遊馬の傷を癒やしていく…

 

【なっ…!マジックアイテム…?白野にそんな力が…!】

 

「…ありがとよ白野…!アンタの応援…無駄にはしねぇ!」

右腕の痛みが取れた遊馬は「アトランタル」へと戦いを挑む!

 

 

 

「オレのターン!見てろよアストラル…ここからが…オレの本当のデュエルだ!!オレは『ホープ』1体でオーバーレイネットワークを再構築…カオスエクシーズチェンジ!!」

 

39

 

「現れろ!『CNo.39』!混沌を光に変える使者…『希望皇ホープレイ』!!」

 

【ついに現れたか…!】

遊馬の場に漆黒の希望の剣士が現れる!!

 

 

「(『ホープレイ』…お前の力なら、きっとⅢの目を覚ましてくれる!!)さらにオレは墓地の『オーバーレイ・イーター』の効果発動!このカードを除外して『アトランタル』のORUを『ホープレイ』に吸収する!!」

現れたカメレオンの幻影が『アトランタル』のORUを奪い取り『ホープレイ』に投げ渡す!

 

「これで『アトランタル』の効果は発動できない!さらに『ホープレイ』の効果発動!ORUを1つ使うごとに自身の攻撃力を500アップし、相手の攻撃力を1000ダウンさせる!オレはORUを3つ使って効果発動!オーバーレイ・チャージ!!」

『ホープレイ』の体が眩い光を纏い、希望の大剣を構える!

 

 

「バトルだ!『ホープレイ』で『アトランタル』を攻撃!ホープ剣カオス・スラッシュ─!」

 

【くっ…!アストラルがいないのにここまでの強さを…だが!これくらいの展開は読んでいたさ!リバース罠「雷雲の壺(サンダー・ポット)」を発動!オーパーツモンスターへの攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了する!】

 

「なんだって!?」

Ⅲのフィールドに現れた壺から電撃が飛び出し、「ホープレイ」の攻撃を中断させる…!

 

【「ホープレイ」の攻撃でも…僕には届かなかったようだね?】

 

「まだだ…まだオレは諦めねぇ!!カードを伏せてターンエンド!」

遊馬はカードを伏せてターンを終える…!

 

 

【諦めが悪いね遊馬…!『ホープレイ』の効果はターンが終われば消え、「アトランタル」の攻撃力は再び5000に戻る…!もう君に勝ち目はない!!僕のターン!ド──】

 

ズキン!

 

【っぐぅぅ…!?これ、は……!】

カードをドローしたⅢの胸に痛みが襲う…それは強力なナンバーズである「アトランタル」を操る為の副作用だった…。

 

 

 

 

Sideトロン一家

 

 

 

『ああああ…!!』

遊馬との決闘前…トロンによって紋章の力の強化を受けるⅢ…その最中、トロンがⅢへと語り掛ける。

 

 

【いいかい?Ⅲ…この紋章の力を得る事によって君は『No.6先史遺産─アトランタル』を操る事ができるようになる…だが、このカードは君に強大な力を与える代わりにキミの精神と肉体に大きな負担を与える…構わないね?】

 

『は、い…かまいません…!僕は遊馬に勝って、貴方の期待に…!!』

Ⅲは苦しみながらトロンへと答える…。

 

「キミは強い子だ…君ならきっと『アトランタル』を制御できる…その助けになるように()()()()力をあげよう…!」

 

キィン─!

 

『それ、は…?』

トロンの手の上に小さな赤い光の玉が現れる。

 

「これは()()()()()の力のカケラさ…なかなか強い力を持っていたから()()()()()()()んだ、この力は()()()()()()を制御する力…きっとキミの力になるはずさ…!」

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

【(これがナンバーズの力の代償…!でも、このくらいの、痛みなら…!)僕は…トロンの期待に…!答えなきゃならない!!「アトランタル」の効果発動!自分のスタンバイフェイズにORUがない時…!お互いのライフを半分にする!!】

 

ドドド…ドオォォン!!

 

「なっ!?うわああー!?」

 

【ぐあぁぁ…!】

Ⅲの宣言と共に「アトランタル」の火山が噴火…灼熱の噴石が両者のライフを削る…だが、それだけではなかった…!

 

 

「っ…!Ⅲ…!まだ、オレのライフは残ってるぜ…!」

吹き飛ばされた遊馬はなんとか立ち上がる…残りライフは僅か100となってしまった…!

 

【っ…はぁ、はぁ…ぐっ…!?】

 

ギィン─

 

「Ⅲ…!?その姿は…!!」

同じく吹き飛ばされたⅢもなんとか立ち上がる…だが、彼の顔にはオレンジ色の紋様が刻まれ…苦しそうにうめき声を漏らしている…!

 

【僕に、構うな…!これは…僕が得た力の代償…!でも、この身が引き裂かれようと…僕は家族を守る!!】

 

「Ⅲ…お前…そこまでして…!」

 

【遊馬…この攻撃で君に勝つ!!「アトランタル」で「ホープレイ」を攻撃!!ディヴァイン・パニッシュメント─!!】

 

「まだだ!!リバース罠『バトル・ブレイク』!!バトルを強制終了させ…そのモンスターを破壊する!」

 

【罠カード…!!(このカードを使うしかないか…!)】

Ⅲは自身の伏せカードを見る…それは「アトランタル」と共にトロンから()()()として渡された切り札…Ⅲは一瞬、その使用を躊躇したが…

 

 

【僕はどんな手を使っても…遊馬に勝つんだ!永続罠『アンゴルモア』を発動!!装備魔法となっている「マシュマック」を破壊する事で罠の発動を無効にし…破壊する!!】

 

「なにっ!?『アトランタル』の攻撃力を下げてまで…!?」

「バトルブレイク」のカードが砕け散る…!

 

【君のライフは残り100…この一撃で十分だ!!攻撃を続行しろ!「アトランタル」─!!】

 

「諦めて…たまるかぁぁ!!罠カード『ハーフ・アン・ブレイク』を発動!『ホープレイ』の戦闘破壊を無効にし!受ける戦闘ダメージも半分にな…うわああ─!!」

 

「「遊馬!!」」

『ホープレイ』を泡のバリアが包み込みダメージも半減した…だが、遊馬は再び激しく吹き飛ばされる…!

 

 

【遊馬…君は、まだ…っ!?ぐあああああ!?!?】

遊馬のしつこさに苛立つⅢ…その肉体を「アトランタル」の副作用が蝕み、全身を激痛が包み込む!!

 

 

【ぐぅぅ…!まだ、だ!本当の、僕の力をみせてやる…!】

 

「やめろ…やめろよⅢ!!オレ達は友達になれたんじゃないのかよ!!」

遊馬はⅢへと叫ぶ…デュエルをして、一緒にご飯を食べた…それを「友達」と言わずしてなんと言うのかと…。

 

【僕に、友達なんて必要ない…!】

 

「オレはもっとお前と話したい!!お前や白野と一緒に…お前の家族やオレの父ちゃんの事を!!…白野と会うのが怖いなら一緒に謝りに行ってやる!!それが『友達』だ!!」

 

【遊馬…ありがとう…】

遊馬の心からの言葉を聞いたⅢは一筋の涙を零す…どんなに傷付こうとⅢとわかり合おうとした遊馬…その熱い心が…「かっとビング」の精神が閉ざされていたⅢ…ミハエルの心を開いたのだ…だが、それは…

 

()()()()()()()()()…】

 

ギィン─!

 

「なっ…!?空に紋章が…!!」

Ⅲの言葉と共に空が暗雲に覆われ、紫色に輝く紋章が展開される…!!

 

【「アンゴルモア」のもう1つの効果…次の僕のターン、お互いに「アンゴルモア」の効果で破壊された装備魔法を装備していたモンスターの攻撃力が変化した分のダメージ…つまり「マシュマック」の攻撃力分、2400ダメージをお互いに受ける…このデュエルは相討ちになる】

紋章が紫色の光の玉となり「アトランタル」の腹部に収められ、明滅する…まるで時限爆弾のように…

 

【相討ちといってもただではすまないだろう…ナンバーズ同士があれだけ戦いを繰り広げたんだ…下手をすればこの周辺が吹き飛ぶだろう…】

 

「なっ!?なんだって!?」

Ⅲの言葉に遊馬は驚愕する、異世界の力であるナンバーズ同士がぶつかりあった結果で生じたエネルギー…それは核に相当する力となっていてもおかしくない…!

 

【僕はそれでも構わない…!僕の犠牲で家族が元に戻るなら…】

 

「Ⅲ…お前…」

Ⅲは穏やかな表情で遊馬に告げる…だが、事態はそれ以上の影響をもたらし始める…!!

 

 

 

「な、なぁ…!なんだか、やばくないか…?」

 

「闇が迫ってきてる…!?」

デュエルの行方を見守っていた鉄男達が声を上げる…紋章が出現した直後から周囲の景色が闇に飲まれ…消滅するように消えてしまっているのだ…!

 

「な、何を言っているんですか…!これは『AR』ですよ?現実ではこんな事…こんな……えっ…?」

あまりの恐ろしい光景に等々力はDゲイザーを外すが…()()()()()()()()()()、空は暗雲に覆われ、「アトランタル」と「ホープレイ」が睨み合い…闇が全てを飲みながら迫り来る…そんな絶望的な光景が広がっていたのだ…!

 

「嘘、だろ…!?こんな事…ありえねぇ!!」

 

「ゆ、遊馬!!大変よ!これはARビジョンじゃないわ!本当に闇が迫って来てる─!!」

 

「な、なんだって!?」

小鳥の言葉を聞いた遊馬も慌ててDゲイザーを外す…Dゲイザーを外しても…本当に風景は変わらなかった…!

 

 

「おい!Ⅲ!!」

 

【お、おかしい…!僕にはカードを実体化させる力はない…!それに闇なんて…まさか、次元の扉が開こうとしてるのか!?…止まれ!!「アトランタル」─!!】

 

ギィン─! ギン─!!

Ⅲも緊急事態を感じて「アンゴルモア」の制御を試みる…だが、その力は制御しきれない!!

 

【そんな…!!いくらなんでもこれは…!トロン─!!】

Ⅲは叫ぶ…自分がどうなってもⅢは家族を守ろうとした…だが、まさか()()()()()()にする程の力とは思っていなかったのだ…!

 

 

ゴゴゴ…ガラガラガラ…!!

 

 

【「「「う、うわああああ─!?」」」】

闇はついに遊馬達の足場を飲み込み…遊馬達は次元の狭間へと落下した…。

 

 

 

 

 

 

 

Sideトロン

 

 

 

【…どうやら、Ⅲはあのカードを使ったようだね】

 

『まさか…「アンゴルモア」をⅢに渡したのですか!?』

トロンの言葉にⅤは驚愕する…「アンゴルモア」はトロンの力の一部を使って作られた「禁断のカード」…その力は…!

 

【「アンゴルモア」はバリアン世界への扉を開くカード…発動すれば止める事はできない、しかも…ふふっ、白野の力と相性が良いようだ…!!】

トロンは笑う…世界を滅ぼす力を前にして…その瞳は狂気に塗れていた…。

 

 

 

SideOut

 

   

 

 

 

 

「おい!?これはどういう事なんだⅢ─!!」

突然の急展開に考えが追いつかない遊馬は落下しながらⅢを問い詰める…!

 

【…このデュエル、このままでは異次元への扉が開いて…全てが吸い込まれる…!僕達だけじゃない…人間界の全てが…異次元に飲み込まれてしまう!!】

 

「「「なんだって─!?」」」

Ⅲは冷静に状況を遊馬達に伝える…。

 

 

【僕は…僕は、世界が世界が滅びる事なんて望んでなかった…!!許してくれ…遊馬…!】

Ⅲは遊馬に謝罪し涙を流す…世界を滅ぼす力の前になす術は…ない

 

 

 

「かっとビングだぁぁ!!」

 

 

 

【えっ…?】

突然、遊馬が声を張り上げる…その言葉は不屈の合言葉…遊馬はまだ諦めてはいない!!

 

 

「Ⅲ、このままじゃ次元の扉が開くって言ったよな…なら!オレがお前に勝ってそいつを止めてやる!!」

 

【無理だ…!「アトランタル」は僕のライフが1000以下の時に戦闘では破壊されず…バトルダメージも無効になってしまう…もう、僕達は終わりなんだよ…!】

 

「っ…!?」

Ⅲから語られる「アトランタル」の効果の全貌…その強力さに遊馬はたじろぐ…だが、それは一瞬の事…遊馬はⅢを見つめながら叫ぶ!

 

「冗談じゃねぇ!!まだデュエルは終わってねぇ…だからオレは諦めない!!白野やアストラルだったら…絶対に最後まで諦めない!!絶対に勝つ気で……あっ─!?」

絶体絶命の窮地…その瞬間に遊馬は1つの可能性を思い出す、ドローカードを創造する事で勝利への道を照らす絆の奇跡…その名は…

 

 

「ゼアルだ…!」

 

【ゼアル…?】

 

「オレとアストラルが起こした奇跡の力…その力なら、この状況を乗り超えられる…でも、アイツは…」

遊馬とアストラル…2人の絆によって誕生する「最強のデュエリスト」…だが、アストラルがいない今、その力を使う事はできない…だが、Ⅲが思わぬ言葉を口にする…!

 

 

【…遊馬、本当に僅かな可能性だけど…アストラルを呼び戻せるかもしれない…!!】

 

「本当か!?」

Ⅲの言葉に驚く遊馬…Ⅲは自身の「紋章」を遊馬に見せる。

 

【アストラルはこの「紋章」の力で消えた…なら、この力をアストラルと繋がりのある遊馬に流し込めば…アストラルは復活できるかもしれない…!】

 

「Ⅲ…やってくれ!アイツが本当に戻って来るのなら!!」

 

【…これは大きな賭けだ…!君が「紋章」の力を制御できるとは限らない…下手をすれば力に取り込まれて…命を落とすかもしれない…!】

 

「構わねぇ!!アストラルが帰って来るなら…オレはどんな事だってやってやる!!」

遊馬は覚悟を決める…アストラルを取り戻す為に遊馬は命を懸ける!!

 

 

【(…遊馬に紋章の力を与える事ができたとしても…僕は()()()()()()()()…それでも僕は…遊馬を、()()を助けたい!!)いくよ、遊馬!!】

 

「Ⅲ…頼む!!」

落下し続ける中…遊馬とⅢは手を繋ぐ、そして…

 

 

ギィン─バリバリバリバリ!!

 

 

「う、があ"あ"あ"あ"あ"あ"!?!?」

 

遊馬へと激痛が襲いかかった…!

 

 

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

「(痛い…いたいいたいいたいイタイイタイ痛い─!!!!)」

Ⅲによって遊馬に紋章の力が流し込まれる…しかし、それは想像を絶する激痛…雷に打たれ続けるような…全身を炎に包まれるような痛みが遊馬を蹂躙する!!

 

「(痛い…!!でも、アストラルが帰ってきてくれるなら…!!こんな痛み─!!)」

痛みを耐える遊馬の脳裏にアストラルとの日々が蘇る、突然の出会い…危険と隣り合わせのデュエル…喧嘩しながらも支えあって掛け替えのない「友」となったアストラル…彼を救う為に遊馬は苦しみに耐え続ける…!

 

キィン─

 

─力に抗うな、エネルギーの流れを意識して…呼吸を整えろ─

 

「白、野…?」

本当ならいるはずのない遊海の声が遊馬の脳裏に響く…

 

─少しだけ力を貸そう、お前ならこの力を制御する事ができる…あとは「想い」だ…叫べ、遊馬…取り戻したいものの名を…!!─

 

「オレは……!もう一度…!お前に会いたいんだ…!だから…こんな紋章の力になんて…負けてたまるかあぁぁ!!」

夢か現か…痛みに慣れた遊馬は呼び掛ける…掛け替えのない友の名を─!

 

 

「かっとビングだあぁぁ!!戻って来い…アストラル──!!」

 

次元の狭間に遊馬の叫びが響いた─…。

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

Side???

 

 

 

キィン─…

 

 

(ここ、は…?私は…)

アストラルが目を覚ますとそこは見慣れた青の世界…皇の鍵の異空間だった。

そしてアストラルは思い出す…自分はⅢの紋章の力によって消えてしまったはずだと…。

 

 

(なぜ…私は生きている…?)

 

『…アストラル』

 

(っ!?貴方は…!)

自分以外がいないはずの異空間に優しげな男の声が響く…そこにいたのは行方不明になっているはずの九十九一馬だった…。

 

『アストラル…俺の息子が呼んでいる、助けてやってくれ…お前達ならきっと乗り超えられるはずだ』

 

キン─

 

(あっ…待って…!)

アストラルが声を掛ける間もなく、一馬は姿を消す…そして…

 

─戻って来い!アストラル─!!─

 

(遊馬…!)

異空間に遊馬の叫びが響く…そしてナンバーズを通してアストラルは遊馬の状況を知る…!

 

(いま行くぞ…遊馬!!)

 

青の閃光となったアストラルは飛び立つ…自分を待つ、仲間達のもとに…!!

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

キィィン─!

 

 

「あ…皇の鍵が…!!」

遊馬の叫びと共に皇の鍵が眩い光を放つ…そして─

 

(…遊馬)

 

「アストラル…!お前…!!」

光の粒子と共に光を纏う人影が現れる…それは紛れもなく遊馬の相棒…アストラルだった…!

 

 

(君の声が聞こえた…勝つぞ!)

 

「グスッ…!お前…いっつも、偉そうに─!!」

いつもと変わらない調子のアストラルに遊馬は涙を拭う…最強コンビがついに揃った!!

 

 

「やった!アストラルが…アストラルが帰ってきた!!」

 

「「「やったぁぁ!!」」」

 

【遊馬…これが君の力なんだね、デュエルを決して諦めず…仲間と共に戦う、絆の力…!】

遊馬達の様子を見たⅢは理解した、遊馬の持つ全てを照らすような「光」…その源である「かっとビング」の強さを…。

 

 

ギィン─バリバリバリ…!

 

【っ…!うあ"あ"あ"あ"!!!】

 

「Ⅲ!!」

遊馬達を見守っていたⅢに対して「アトランタル」が攻撃を仕掛ける…!遊馬に「紋章」の力を譲り渡した事で「アトランタル」の制御が不可能になり暴走を始めてしまったのだ…!!

 

 

【遊馬…アストラル…!僕に、構うな…!!「アトランタル」を止めてくれ─!!】

ナンバーズの力に囚われながらⅢは叫ぶ…残された最後の希望を信じて─

 

 

(彼の思いを無駄にしてはならない…遊馬、ZEXALだ!!)

 

「おう!!行くぜ!アストラル!!」

世界を…Ⅲを救う為に遊馬とアストラル、2人の絆が奇跡を起こす!!

 

 

オレは!オレ自身とアストラルでオーバーレイ!!オレ達2人でオーバーレイネットワークを構築─!!

 

「遊馬!?アストラル!?」

遊馬とアストラルが赤と青の閃光となって次元の狭間を駆け巡る!!

 

遠き2つの魂が交わる時…語り継がれし力が現れる!!

 

 

エクシーズチェンジ!ZEXAL!!

 

 

遊馬とアストラル…その魂が、体が1つとなる…現れるのは赤き鎧を纏う伝説の戦士…「ZEXAL」!

 

 

 

「遊馬とアストラルが…合体しちゃった!?」

 

「ま、マジかよ!!」

仲間達はZEXALの姿を見て驚愕する…これがZEXALが始めて人の目に触れた瞬間だった…。

 

『行くぜ…アストラル!』

ZEXALはデッキトップに手を掛ける!

 

最強デュエリストのデュエルは全て必然!ドローカードさえもデュエリストが創造する!!シャイニングドロー!!

 

光の軌跡と共に「勝利の方程式」を完成させるカードがドローされる!!

 

『来い!!「ZW─不死鳥弩弓(フェニックス・ボウ)」!!』

紅蓮の炎を纏いながら機械仕掛けの不死鳥が飛翔する!

 

『このモンスターは手札から装備カードとして『ホープレイ』に装備できる!チェンジ!フェニックス・ボウ!!』

不死鳥が巨大な弓へと変化し、ホープレイに装備される!

 

『このカードを装備した「ホープレイ」が攻撃する時!戦闘ダメージを無効にして相手モンスターを破壊し!1000ダメージを与える!!バトルだ!「ホープレイ」で「アトランタル」を攻撃!!』

ホープレイが不死鳥弩弓にホープ剣を装填し、全身を使って弦を引き絞る!!

 

『いっけえぇ!!フェニックス・フィニッシュ──!!』

 

紅蓮の矢となったホープ剣がアトランタルへと放たれる…アトランタルは巨大な拳で迎撃するが、紅蓮の一撃はアトランタルの拳を粉砕…『アンゴルモア』の核ごとアトランタルを粉砕…大爆発を起こす!!

 

 

(この爆発は…まずい!!威力が大き過ぎる!!)

 

『っ…!?小鳥!みんな─!!』

 

遊海の力によって強化された『アンゴルモア』…そのエネルギーは想定以上の強さとなって遊馬達に襲いかかり──

 

 

 

 

 

王を迎えるは三賢人!紅き星は滅びず!ただ愚者を滅するのみ!荒ぶる魂よ…天地開闢の時を刻め!現れろ「スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン」!!

 

 

《ゴオオオァァァ!!》

 

 

 

 

 

 

Ⅲ LP0

 

遊馬&アストラル WIN!!

 

 

 

 

 

 

 

Sideトロン

 

 

 

【馬鹿な…!Ⅲが、負けた…だと?】

 

『トロン…!』

トロンは紋章を通してⅢの敗北…そして『アンゴルモア』によって開いた次元の扉が砕けた事を知る…。

 

【何故だ…!Ⅲには充分過ぎる力を与えたはず…!九十九遊馬…!一馬の息子…!!】

トロンは遊馬への認識を改めた…明確な邪魔者の1人として…。

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

「っ…うぅ…オレは…」

意識を失っていた遊馬は目を覚ます…そこは普段の景色へと戻った海上道路だった、近くには仲間達の姿もある…。

 

 

「みんな!大丈夫か!?」

 

「遊、馬…?」

 

「ここは…元の場所ウラ!!」

 

「助かったんだ!…やった〜!!」

遊馬の声で目覚めた仲間達も無事に目覚めお互いの無事を喜びあう!

 

 

「オレ…勝てたのか…?」

 

(ああ、私達の勝利だ…少し予期しない事もあったがな)

 

「アストラル!」

遊馬の側にアストラルが現れる…。

 

「予期しない事って何があったんだ…?オレ達は『アトランタル』の爆発に巻き込まれて…」

 

(…爆発に巻き込まれる直前、巨大なドラゴンが私達を守ってくれたのだ…私も一瞬しか見えなかったが…)

 

「そうだったのか…あっ…そうだⅢは!?」

遊馬は辺りを見回す…Ⅲは少し離れた場所に倒れていた…。

 

 

「Ⅲ!大丈夫か!?」

 

『遊馬…ありがとう、「アトランタル」を止めてくれて…』

遊馬はⅢを助け起こす…多少の怪我をしているがⅢは満足気な表情をしていた…。

 

 

『遊馬、君はありのままの僕を認めてくれた…僕の最初で最後の友達だ…』

 

「Ⅲ…」

 

『遊馬、頼みがあるんだ…僕の家族を救ってくれないか?』

 

「えっ…?」

Ⅲの言葉に遊馬は驚く…Ⅲは穏やかな表情で言葉を続ける…。

 

『君のかっとビングなら、復讐で変わってしまった兄様達を…父様をきっと…─』

 

キィン─

 

そう言うとⅢはいつかのようにワープホールの中に消えてしまう、彼のいた場所には2枚のナンバーズ…そしてハートピースが残されていた…。

 

 

「…Ⅲ、お前の思い…無駄にはしないぜ…!」

遊馬はハートピースを拾い、自分のハートピースと合わせる…その形は見事にハート型へと完成した…!

 

 

「決勝進出だね、遊馬」

 

「やったな!!」

 

「みんな…」

仲間達が遊馬の勝利…そして決勝大会への出場を祝福する、遊馬は「夢」の実現に1歩近く事ができたのだ…!

 

「ああ…!やってやるぜ!!デュエルカーニバル!かっとビングだ!オレ─!!」

遊馬は完成したハートピースを掲げながら勝利を喜んだ…。

 

 

 

 

(…先程私達を守ったドラゴン…あれは紛れもなく実体化していた…遊海ではない、荒々しい力…いったい誰の…?)

 

 

 

 

 

Sideジャック

 

 

 

『…フン、俺の手を貸すまでもなかったな…手間を掛けた「スーパーノヴァ」』

 

《グオォン…》

遊馬達を見守る1人の男…それはハートランドに起きた異変を感じ取り、解決に赴いたジャックだった。

 

 

『あれが遊海が目に掛けている九十九遊馬か…荒削りだが…フン、WDCが楽しみになったな…だが…』

遊馬とアストラルの姿を見て微笑んでいたジャックが表情を険しく変える…。

 

『相手の小僧の使った奇妙な力…僅かだが…いや、気のせいか、遊海がやすやすと力を奪われる訳がない』

首を振ったジャックはホイール・オブ・フォーチュンに乗ってその場を後にした…。

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

Sideトロン

 

 

 

『ごめんなさい、トロン…』

 

【…いいんだよⅢ、もう休みなさい】

トロンのアジト…そこでⅢはベッドに横たわっていた、その傍らにはトロンの姿もある…。

Ⅲの身体は強すぎる紋章の力によって蝕まれ…限界を迎えていた…。

 

 

『トロン……父様、手を握ってくれませんか…?ずっと、握っていて欲しいんです…』

 

【…大丈夫だよⅢ…ボクはここに居る】

トロンはⅢの手を優しく握る…幼子を寝かしつけるように…。

 

 

『ありがとう…おやすみ…なさい─』

僅かな温もりを感じながらⅢ…ミハエルは眠りに落ちた、楽しかった家族の思い出を夢みながら─…。

 

 

 

 

 

 

【…感情は、失ったはずなんだけどな…これは…『悲しみ』か…?ごめんね、()()()()…ゆっくり眠りなさい】

トロンはしばらくの間、ミハエルの手を握り続けた…。

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