転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話 作:S,K
次なる戦いはカイト対Ⅴ…!師弟が再び激突する!
そしてリクエストアンケートは7月1日までとなっております…リクエストがある方は活動報告へ!
それでは最新話をどうぞ!
……暗い…身体に力が入らない…
…俺は負けた、のか…
…すまない、翠……凌牙、遊馬…あとは、頼む──
「っ─!?」
『む…?どうしたのだ?翠』
《フォーウ…?》
地下セクションの様子がモニターに映らなくなってしばらくが過ぎた時、翠は悪寒を感じた…胸に穴が開くような…氷水を浴びせられたような…何かを失ったような感覚を…
「胸騒ぎが、するの…嫌な…予感が…」
《…残念だけど、その予感は当たってるよ》
『っ…!お前は…ユベル!?』
翠とジャックの前に十代の相棒であるユベルが現れる…。
《探したよ翠…悪い知らせだ、遊海が…負けた》
「えっ─…」
《フォ…!?》
『なん、だとぉ…!?』
ユベルの思わぬ言葉に2人は固まる…。
《詳しい事は後で話す…急いだ方がいい》
「っ─!!遊海さんの、馬鹿…!」
翠の瞳から涙が零れ落ちた…。
Side???
『おや、遊海君は負けてしまったのか…ずいぶんと肉体と魂を酷使していたからねぇ…』
何処とも知れぬ花園…その中心の塔でローブを被った男がため息をつく…。
『君は少し休んでいるといい…「彼」には成長する為の経験が必要だ、完成された「英雄」とこれから「英雄」になる少年…君達ならきっと大丈夫…』
ローブの男は目を細めて遠くを見つめる…。
『君達の紡ぐ物語はこれからなのだから──…』
SideOut
Side遊馬
「うおおぉぉ─!!誰かいねぇのかああ─!」
「ちょ…遊馬!落ち着きなさいよ〜!?」
「落ち着いてなんていられるかぁぁ!」
地下セクションの線路を全速力で疾走する遊馬…遊海と別れたあと、遊馬は一騎討ちの相手を探し回っていた…。
「白野の事だったり、トロンの事だったり…頭の中がぐるぐるする…でも、今はこのステージを勝ち抜かねぇと─!」
「だから落ち着け─!?」
小鳥の制止も聞かずに遊馬はデュエルコースターを走らせる、師匠である白野…伝説の決闘者・遊海の敗北…さらにその「魂」を奪われてしまった事で遊馬は焦っていた…。
(遊馬、小鳥の言う通りだ…今の君は冷静になるべきだ、冷静にならなければ勝てる勝負にも勝てなくなってしまう)
「アストラル、でも…!」
(先程のデュエルで白野…いや、遊海は冷静さを欠いていた…おそらく、彼本来の力の半分も出す事ができていないだろう…彼は君に「希望」を託した、それを無駄にしてはならない…!)
「…すまねぇ、少し頭が冷えたぜ…」
アストラルの忠言を聞いた遊馬はコースターのスピードを緩める…。
「ねぇ、遊馬…ここ何処…?」
「わからねぇ…無茶苦茶に走り過ぎたぜ…」
辺りを見回す遊馬…マップを確認しようとしたその時…
ドオオォォン!!
「きゃ!?何なの…!?」
「誰かが罠に引っ掛かった…うわっ!?」
《ギョエエ〜!?》ドッシーン!
遊馬達の頭上で爆発が起きる…それと同時に何かが遊馬達のコースターへと落下してきた!!
「お前…オービタル!?」
《ンンッ…?お前は元祖カシコマリング!?》
コースターへ落下してきたのはカイトの相棒・オービタル7だった、彼は地下セクションでの様子がわからなくなったカイトを心配して地下セクションへと飛び込んで来たのだ。
「だ、大丈夫?壊れてない…?」
《…飛行ユニットが壊れてしまったでアリマス…カイト様の所へ行かなければならないのに…!》
「オービタル…」
沈んだ表情を見せるオービタルに遊馬は同情する…弟の為にナンバーズ狩りを続けているカイト…その相棒である彼は本当に彼の事を思っているのだと…。
「…オービタル!カイトの居場所はわかるのか?」
《もちろんでアリマス!》
「なら送ってやるよ!旅は股ずれだ!」
(遊馬、それを言うなら「旅は道連れだ」…)
遊馬はオービタルの案内でカイトのもとへと向かった…。
SideOut
『カイト…いつか、君と戦うときが来ることは分かっていたあの真実を知った日、私の心は憎しみと復讐に囚われてしまった…あの日から…!』
「…アンタはハルトを傷付けた…!その懺悔はしてもらう!!」
宇宙空間を模した「コズミック・フロンティア」…そこでカイトとⅤは対峙する!!
「『デュエル!!』」
デュエルダイジェスト カイト対Ⅴ
09
『…現われよ「No.9」!星雲の王者にして機構の覇者よ…!日輪を覆え!「 天蓋星ダイソン・スフィア」!!』
「なに…!?」
先攻となったⅤは切り札であるナンバーズを呼び出す…だが、カイトには召喚されたナンバーズが
「Ⅴ…お前のナンバーズは何処だ!?」
『フッ…!さて、何処にいるのだろうな…?』
Ⅴは不敵にカイトを見つめている…!
「(奴がモンスターを召喚したのなら…見えなくとも
戦闘機型のモンスターを召喚したカイトは不可視のナンバーズへと攻撃を仕掛ける…だが…!
ギュウゥゥン…
「なに─!?」
モンスターがいるであろう場所に放たれたミサイルは次元の歪みに掻き消される!!
『残念だが、君の攻撃は私には届かない…私のターン!「ダイソンスフィア」で「フォトンデルタウィング」を攻撃!』
キィーン…バババババ─!!
「なっ!?ぐああぁあぁあ─!?」
続いて放たれた「ダイソンスフィア」による攻撃…それは無数の光線となってカイトの場を蹂躙する!!
「いったい、何が起きている…!?」
『…理解できないだろうな、今の私のデュエルは…君の想像を超越している…!!』
Ⅴは吹き飛ばされたカイトを見下ろす…その時だった…!
「遊馬!スピード出し過ぎよ─!?」
《トンマ!スピードを落とすでアリマス─!》
「そ、そんな事言ったって操縦が効かな─うわあああ!?!」
ドッシャァァン!!
『なんだ…?』
騒がしく叫びながら1台のデュエルコースターがカイトとⅤの間へと落下する…その正体は…
「イテテ…あっ、カイト!!」
「貴様ら…ここで何をしている」
カイトは呆れたように闖入者へと問い掛ける…それは遊馬と小鳥、そしてオービタル7だった…。
「なにって…オービタルをお前に届けに来たんだよ!お前を心配してここまで飛び込んできたんだ!」
《カイト様!ご無事で何よりでアリマス─!》
「オービタル…勝手な事を…」
カイトへと縋り付くオービタル…カイトは呆れながらも彼を叱りはしなかった…。
『九十九遊馬…一馬さんの息子…こんな所で役者が揃うとはな…これも「運命」か…』
「お前は…!」
歩みよってきたⅤを遊馬は睨みつける…!
「お前にも聞きたい事がある!!父ちゃんは…父ちゃんは何処にいる─!」
『…いいだろう、デュエルは中断だ…君には知る権利がある、私の知っている事を全て話そう』
詰め寄られたⅤはデュエルディスクを下ろし、遊馬達を見つめる。
「ふざけるな…!オレはお前の話に興味は…」
『カイト、君にも関係がある事だ…なぜ、私達がWDCへと姿を現したのか…そしてなぜ君達兄弟…いや、カイトの
「なっ…!?カイトの父ちゃんが…Dr.フェイカー─!?」
Ⅴの思わぬ言葉に遊馬は驚愕する、ハートランドシティの実権を握るフェイカー…その息子がカイト達兄弟だと言うのだ…!
『これからするのは5年前の話…私達の父親が…フェイカーに裏切られた顛末だ…!!』
─決闘中断─
Ⅴ曰く、5年前…Dr.フェイカーとクリス達の父・バイロンは共同で「異世界への扉」の研究をしていた…都市伝説として語られるデュエルモンスターズの「精霊世界」とは違う…高次元世界へと至る扉、それをフェイカーは
そして「扉」探しが完全に手詰まりとなった矢先…バイロンはとある人物に協力を求めた、それが遊馬の父・一馬だった。
一馬はフェイカーの「富も名誉もいらない…ただ扉を見つけたい」という言葉を信じて彼らに協力する事となった、そして一馬はフェイカーの行なっていた世界中の21ヶ所の次元の歪みから次の場所を予測する「21次元方程式」を見直し新たな仮説「23次元方程式」を提唱した…。
『こうして我々は新たな計算式を元に一つの結論に達した…そして父達3人は次に異世界の扉が出現すると思われるある場所へと向かった…私が直接見ていたのはここまで…ここから先は、私の父が話してくれた記憶…あの遺跡で何が起きたのか…!!』
そしてⅤは話を続ける…裏切りの真実を…!
5年前…
「ここで行き止まりか…?」
長旅の末フェイカー達は遺跡へと辿り着いた…そして遺跡に仕掛けられた数々の罠を抜けた遺跡の最奥…そこは小さな祭壇らしきもの以外、何も存在しない場所だった…。
「おかしい…何かがあるはずだが…?」
『確かに…何かが不自然だ』
バイロンと共に周囲を探索する一馬…その時だった…!
ギィン─! バリバリバリ!!
「なっ!?これはっ…うわあああ!!」
突然、一馬達の足元が光りはじめ、電撃が一馬達に襲い掛かる!!
【ククク…ハハハハ!!ついに、ついにこの時が来た…!!】
『フェイカー…!?いったい、何を…!』
遺跡に笑い声が響く…それは一馬達の様子を離れた場所で見守っていたフェイカーのものだった…。
【君達には悪いと思っているよ、君達の立つ床にはこう書かれている…「2つの魂を捧げし時、大いなる扉が開かれる」とな…!!】
『まさか…我々を生け贄にするつもりなのか…!フェイカー!!!』
バイロンの怒号が遺跡に響く…フェイカーは極秘調査で異世界の扉を開く為には生け贄が必要である事を知り、一馬達2人をその生け贄にしようとしていたのだ…!
「フェイカー!バイロンは親友ではなかったのか!?」
【親友…?くだらん!!もし本当に親友だというのなら…喜んで私の犠牲になってくれバイロン─!!】
『フェイカー…!』
バイロンは裏切られた…その瞬間、祭壇が崩れ落ち…足元に異次元への扉が開く…!
『うわあああ!!』
「バイロン─!!」ガシッ!
落下する直前…一馬はバイロンを掴み、崖っぷちで踏み止まる…!
『手を離せ一馬…!このままでは君も!!』
「かっとビング…ですよ…!やんちゃ坊主曰く…!デュエルをすればみんな、仲間になれる…!私にとって
力を振り絞って崖へと掴まる一馬…だが、無情にも崖は崩れ落ちた…。
「っ…!!うわあああ─!?」
『この怨み…忘れんぞ!!フェイカァァ─!!!』
バイロンは怨嗟の叫びと共に異次元へと放り出された…。
「(やはり、こうなるのか…だが、俺は諦めない…!遊馬…遊海…!この世界を頼む…!!)」
SideOut
『フェイカーに裏切られた父は異世界へと放り出された…だが、父は戻ってきた…!異世界の狭間を彷徨いながら、復讐だけを心の糧として…!』
Ⅴは怒りに震えながら語り続ける…。
『確かに父は帰ってきた…!だが、代償としてその姿は変わり果ててしまった…それが我が父…今の
「なんだと…!?」
「っ…!」
カイトは驚愕する、前夜祭に乱入した少年…それが異世界を彷徨った影響で幼児化したバイロンだという事実…それは到底信じられないものだった…。
『全ての元凶は、Dr.フェイカーにある!その報い…必ずや受けてもらう!』
「…オレにあるのはハルトだけだ…Dr.フェイカーのした事には興味はない…!!」
Ⅴの怒りを受け止めたカイトもまた怒りを露わにする…今のカイトにとってフェイカーは父ではない…否、「父と思いたくない」存在だった。
「デュエルを再開する!どけ遊馬!オービタル!!」
ハルトを傷付けられた怒りを燃やしながら…カイトはデュエルを再開させる!!
─決闘再開─
「闇に輝く銀河よ…希望の光になりて我が僕に宿れ!光の化身、ここに降臨!現れろ!『銀河眼の光子竜』!!」
《ギャオオオン!!》
『現れたか、「ギャラクシーアイズ」…!』
再開するデュエル…カイトはついに切り札である「ギャラクシーアイズ」を呼び出す!
「(さっきオレは攻撃力1800の『デルタウィング』を破壊され1000のダメージを受けた…つまり、見えない敵の攻撃力は
自身の受けたダメージから攻撃力を推察したカイトは「ギャラクシーアイズ」で攻撃を仕掛ける!
『…愚かな』
ギュウゥゥン…
「なっ…!?」
「攻撃が消された!?」
破滅の閃光は再び掻き消される…!
『いいだろう、カイト…見せてやろう、私のナンバーズを!』
09
Ⅴの背後で光の爆発が起きる…そしてさらなる変化が起きる…。
宇宙空間に輝く太陽…その背後から巨大な
「デカすぎる…!!」
(あまりに巨大過ぎて視認できていなかったのか…!)
遊馬達はあまりに巨大な「ダイソンスフィア」に圧倒される…その大きさのあまり、遊馬達の周囲全てが覆われてしまっている…!
『「ダイソンスフィア」は、太陽をも覆い尽くす宇宙コロニー!その能力はまさに無敵…カイト、お前の攻撃など無駄だ!』
「馬鹿な…攻撃が通じないだと…!?」
『そうだ、「ダイソン・スフィア」はORUがあるとき、相手の攻撃を無効にすることができる!』
Ⅴは「ダイソンスフィア」の効果の1つを明かす、それはORUを持つ限り攻撃を無効にできる強力な効果だった…!
「攻撃が効かなかったその為か…!だが、効果がわかれば…!」
『果たしてそうかな…?君のやることは手に取るように分かっている、なにしろ…君にデュエルを教えたのはこの私なのだから…!」
(なに…!?)
「Ⅴが…カイトの師匠!?」
Ⅴの言葉に再び遊馬達は驚愕する…凄まじいデュエルタクティクスを持つカイト…そのデュエルを教えたのはⅤだったのだ。
『トロン…いや、父がいなくなり、私の家族はバラバラになりかけた…本当なら幼い弟たちは施設に引き取られる…そんな時、弟達を白野さんが引き受けてくれた…そして私は、父が消えた事件の真相を知るためにDr.フェイカーの元に残った…研究の忙しさで弟達に会える時間は少なかったが…あの人達には感謝している、白野さんのおかげで弟達の心の傷は小さく済んだ…』
「Ⅴ…」
遊馬は知っている…遊海の家に飾られた写真、その中で笑いあう兄弟達の姿を…。
『だが…やはり弟達に会えない時は寂しかった…そんなとき、私は君たち兄弟と出会った…君たち兄弟の姿に、私は自分の兄弟を重ね見ていたのだ……君は強くなりたがっていた。弟を守るための力を欲しがっていた……だから私は君にデュエルを教えたのだ』
Ⅴの脳裏に浮かぶのは病弱なハルトへ献身的に世話をするカイトの姿…そして、子供達へあまり目を向けないフェイカー…その姿に自分達兄弟の姿を重ねたⅤは彼へと戦う手段を教えた…。
『…それが、こんな形で戦うことになるとは…だが!私の邪魔をするのなら、君であろうと容赦はしない!』
「Ⅴ…!」
カイトとⅤは睨み合う…そしてⅤによる攻勢が始まる…!
「ダイソンスフィア」にはさらなる効果…ORUを使う事でダイレクトアタックできる効果があった…Ⅴはその効果によって直接攻撃を仕掛けるが…カイトは罠カード『光子化』によって攻撃を無効にする…だが、Ⅴは罠カード『スペース・ゲート』を発動…『
『お前のライフは残りわずか200…もはや勝負は決まった、諦めろカイト!お前に私は倒せない!』
「ぐうっ…!」
カイトは歯を食い縛りながらⅤを睨みつける…Dr.フェイカーへの怒りが乗ったⅤの攻撃はカイトの肉体を傷付けていた…。
「カイト!立てぇ!!」
「っ…遊馬…?」
追い詰められたカイトへ遊馬が叫ぶ!
「こんな所でお前が倒れたら…誰がハルトを助けるんだよ!」
「…ハルト…!」
カイトの脳裏に最愛の弟の姿がよぎる…トロンによって力を奪われてしまったハルトはいまだに眠り続けていた…。
「カイト!!」
「黙っていろ遊馬…!お前に同情される筋合いはない…!!」
傷ついた体でカイトは立ち上がる…!
『意外だな遊馬、君がカイトの味方をするとは…』
2人の様子を見ていたⅤが遊馬に問い掛ける。
『カイトは一馬さんを裏切ったDr.フェイカーの息子…そして何より「ナンバーズハンター」だ!カイトが生き延びるということは…君もいずれ狩られるかもしれないのだぞ?』
「…ああ、わかってるさ!!でも、オレはカイトと
Ⅴの問いに遊馬はまっすぐ答える、「デュエルをすればみんな仲間」…それは例え敵対する相手であっても変わらない!
『…仲間、か…一馬さんも大切にしていた、だが…その想いもDr.フェイカーは踏みにじり、裏切った!君は許せるのか?そんな奴の息子を─!全ての真実を知ったそのとき…私は…!』
Ⅴは思い返す…父から真実を告げられた直後、彼はハートランドを去った…事情を知らずにⅤを追いかけて来た幼いカイトへさえも憤怒の眼差しを向けながら…。
そして…兄弟達を守ってくれた白野達に事情を直接告げぬまま…彼は復讐へと身を落としたのだ…。
「戯言はもういい…!オレはお前を倒し、ナンバーズを回収する!!」
『所詮、我々の恨みなど…分からぬのだろうな…!』
「黙れ─!!」
カイトは再びⅤへと剣を向ける…ハルトを救う為に全てを切り捨てながら…!
(「『ダイソンスフィア』は攻撃を無効にする効果とダイレクトアタックできる効果を持ち、その効果は一見無敵に見える……だが、弱点はある!」)
奇しくもカイトとアストラルは同じ事を考え、同じ結論を出した、無敵の「ダイソンスフィア」…その弱点は─
「オレは魔法カード『オーバーレイ・ブレイク』を発動!相手モンスターのORUを全て取り除き、戦闘では破壊されない効果を無効にする!!」
(…流石だカイト…!『ダイソンスフィア』の唯一の弱点を突くカードを引いたか…!)
『ダイソンスフィア』の弱点、それは力の源であるORUを無くす事…カイトは土壇場でそれを可能にするカードを引いたのだ…!!
「これで『ダイソンスフィア』は巨大な鉄くず!いけ!!『ギャラクシーアイズ』!破滅のフォトン・ストリーム!!」
『…残念だが、その一手も想定内だ!』
「なに…!?」
『「ダイソンスフィア」がORUがない状態で攻撃された時!墓地のモンスター2体をORUに変換する!それにより「ギャラクシーアイズ」の攻撃は無効となる!』
『ダイソンスフィア』第三の効果…それによってカイト渾身の一撃は再び阻まれる…!
『無駄だ、カイト…「ダイソンスフィア」は何人たりとも破壊できない!』
「強すぎる…!!」
攻撃無効化・直接攻撃・ORUの補充…強力な効果を持つ『ダイソン・スフィア』…無敵の要塞を倒せる手段は…今のカイトには無かった…。
『私のターン!』
「っ…!ダイレクトアタックが来る!!」
遊馬達は身構える…ORUを持った「ダイソンスフィア」はダイレクトアタックができる…だが、Ⅴが選んだのは…。
『装備魔法「
「なにっ…?」
(何故…彼はこんな手を…?)
カイトとアストラルは困惑する…ただ勝利するだけなら「ダイソンスフィア」の効果を使い直接攻撃をすればいい…だが、Ⅴはあえて「ギャラクシーアイズ」を破壊する一手を打ったのだ…。
『カイト、お前なら分かるはずだ…勝つだけでは
「ぐっ…!」
Ⅴが求めたのは『完全勝利』…!カイトの魂である「ギャラクシーアイズ」をも破壊する事で全ての決着をつけようとしているのだ!!
『やれ!「ダイソンスフィア」─!!』
「まだだ…!罠カード『ミラー・シェード』!!ライフを半分にする事で戦闘ダメージを0にする…ぐああぁぁ!!」
《カイト様─!!》
無数に降り注ぐ光線の豪雨…「ギャラクシーアイズ」を破壊されながらもカイトは耐えきったが…その体は満身創痍だった。
『カイト…苦しかったろう、辛かったろう…だが、もういいんだ、君はここで全ての苦しみから…開放される、ナンバーズハンターの使命からも、ハルトの苦しみからも…それが君にかけてやれる最後の情けだ…』
倒れ伏したカイトにⅤは優しく語り掛ける…。
「違う…」
『むっ…?』
カイトは静かに立ち上がる…その瞳に強い信念を宿して…!
「オレは今まで…ハルトを俺の苦しみだと思った事など…一度もない!!」
『っ…!?』
カイトの言葉にⅤは静かに驚く…Ⅴはカイトにとってハルトは負担になっていると思っていたからだ。
「あいつは…ハルトはオレの全てだ…!生き甲斐だ!!あいつはオレに希望を与え続けてくれた…だから、俺は諦めない!」
だが、カイトはそれを否定する掛け替えのない弟を救う為に…カイトは立ち上がる!
『カイト、何故そこまでハルトの事を…』
「Ⅴ…覚えていないのか?貴方が教えてくれた
『えっ…?』
カイトの思わぬ言葉にⅤは驚く…彼にその心当たりはなかったからだ…。
「…かつて、ある街に1人のヒーローがいた…彼はどんなに傷付こうと人を助け、人を護り…悪を倒し続けた…鋼の鎧を纏いし伝説のヒーロー……貴方がハルトにくれた絵本に書かれていた…」
「それって…!」
(…彼もまた、遊海に憧れていたという事か)
遊馬とアストラルはすぐ気付いた、カイトの憧れた英雄の正体を…。
「オレは彼のように全てを守る事はできない…だが!オレはハルトの為のヒーローであり続ける!!」
それはカイトの憧憬…全てを守るヒーロー、その姿がカイトの心を支えている!
『そうか、いいだろう…!…来るがいい!!』
Ⅴはカイトの覚悟を受け止め、迎え撃つ!!
「オレの…ターン!!(この、カードは…)」
カードを引いたカイトは引き当てたカードを見て考えを巡らせ…発動する!!
「これがオレの運命─!魔法カード『未来への思い』発動!!」
『なに…!?なんだそのカードは?お前が…私の知らないカードを…!?』
カイトが1枚の魔法を発動する…すると虹色の光が周囲を照らす!
そしてそのカードはカイトと何度も戦ったⅤの記憶にはないカードだった…!
『そんなカードがお前のデッキにあったとは…!』
「いくらオレの手を知り尽くしたアンタでも…このカードの事は知る訳がない…何故なら、このカードは人生でたった1枚!
『なっ…!?』
「カイトの親父…Dr.フェイカーから!?」
Ⅴは驚愕した、父を嫌っていたカイト…そのカードが1枚でも「父から貰ったカード」を入れているとは思わなかったのだ…。
「…オレはただの一度もこのカードを使った事はない」
『馬鹿な…!父を憎むお前が…そんなカードをデッキに入れていたというのか…!?』
「あたりまえだろ!!」
動揺するⅤに向けて遊馬が叫ぶ!
「誰だって家族を守りたい!アンタ達が家族を守ろうとするようにな!!だからカイトもそのカードを持っていたんだ…!自分の家族にだって…希望があるって思ったからだ!!」
『家族の、希望…』
カイトは自分から父を嫌った訳ではない…ハルトを「物」のように使いアストラル世界を破壊するフェイカー…それを見たカイトは父を嫌うようになった、だが心の何処かで思っていたのだ…「父との関係を変えたい」と…その思いが『未来への思い』に込められていたのだ。
「黙れ遊馬…お前にオレの気持ちを代弁してもらうつもりはない!『未来への思い』の効果発動!墓地に眠るレベルの違うモンスター3体を特殊召喚する!蘇れ!『銀河眼の光子竜』!『フォトン・スラッシャー』!『フォトン・パイレーツ』!!…ただし、この効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力は0になる!」
虹の光と共に3体のモンスターが現れる!
『無意味だなカイト!攻撃力は0!しかもレベルが違うモンスターで…何ができる!』
「果たしてそうかな…!」
『なに…?』
カイトは不敵な笑みを浮かべる、カイトの勝利の方程式は…既に完成している!!
「魔法カード『シフトアップ』を発動!自分フィールドのモンスターのレベルをもっともレベルの高いモンスター…『ギャラクシーアイズ』と同じレベル8にする!…オレはレベル8の『ギャラクシーアイズ』『フォトンスラッシャー』『フォトンパイレーツ』の3体でオーバーレイ!!」
3体のモンスターが閃光となって銀河へと飛び込む!!
「3体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!!」
銀河から赤い光が弾け…カイトの手に巨大な槍が現れる…カイトは槍を銀河に投擲する!
「逆巻く銀河よ!今こそ怒涛の光となりてその姿を現すがいい!降臨せよ…我が魂!!『超銀河眼の光子龍』!!」
《ガオオァァァン!!》
光と共に現れるのは瞳に銀河を宿すカイトとハルトの絆の結晶…究極のギャラクシーアイズが咆哮を轟かせる!!
「さらにフィールド魔法『コズミックフロンティア』の効果!エクシーズ召喚に成功した事で1ドロー!!…さらに『超銀河眼』の効果発動!エクシーズ召喚に成功した時!自身以外のモンスター効果を無効にする!フォトン・ハウリング!!」
《ガオオァァァン!!》
『なっ…!「ダイソンスフィア」!!』
咆哮と共に放たれた音波が「ダイソンスフィア」に直撃する、それにより「ダイソンスフィア」のシステムが機能不全を起こし停止…その輝きを失っていく…!
「そしてオレは魔法カード『ビックバン・パニック』を発動!その効果により相手フィールドに表側で存在する魔法・罠をORUに変換する!さらに変換した数だけ『超銀河眼』の攻撃力を800アップする!!さらに『超銀河眼』の効果発動!ORUを1つ使い!相手のエクシーズモンスターのORUを全て吸収…1つにつき攻撃力500アップし連続攻撃できる!!」
『攻撃力6800の…連続攻撃だと!?』
カイトの手にした究極の力…Ⅴはそれに驚愕する…。
「(Ⅴ…オレはあの日からアンタに追い付こうとしていた…今、やっと…!)」
『そうか…(それがお前の強さか…カイト)』
カイトの眼差しを見たⅤはデュエルディスクを降ろした、弟子の成長を見届けた師匠として…その一撃を受け入れる為に…。
「『超銀河眼の光子龍』で『ダイソンスフィア』を攻撃!アルティメット・フォトン・ストリィィィム!!」
放たれた息吹は「ダイソンスフィア」の制御ユニットを貫く…コントロールを失った機械要塞は爆発と共に宇宙の塵と消えた…。
Ⅴ LP0
カイト WIN!
『復讐の先にあるのは、虚しさだけだ…そんなことは、私にも分かっていた…』
「Ⅴ…いや、クリストファー・アークライト…」
『…その名前で呼ばれるのは、久しぶりだよ…』
デュエルが終わり、カイトとⅤ…クリスは向かい合う、そこで初めてカイトはⅤを本名で呼んだ…。
『私達は父とともに自分たち家族の名を捨てた…カイト、私は父を救いたかった…だが、異世界から戻ってきた父の心はすでにDr.フェイカーへの復讐に取り憑かれていた…私には、それを止められなかった…だが、それが親子ってものだろう?』
クリスは自分の本心を吐露する、歪み果てた父を救いたい…それがクリスの本心だった…だが、クリスはその想いを抑え、トロンの右腕として動いていたのだ…。
「違う…オレは違うぞ、クリス…」
『えっ…?』
「オレは親に『抗う』為に闘っている…いつか、ハルトの事が解決した時、自分の手でDr.フェイカーとの決着をつける為に…!」
「カイト…」
カイトはクリスの言葉を否定する、自らの手でDr.フェイカーを糾す…それがカイトの目標だった…。
『…そうか、君は…そんなに強くなったのか…』
「クリス…アンタの想いはオレが受け継ぐ…!オレが代わりにトロンとのケリをつける…!!」
『カイト…もう、
「なに…?」
クリスは穏やかな表情で首を振る…まるで
『トロンはメタルナイト、私達の恩人…白野さんと戦っているはずだ…あの人は一度トロンに勝っている、きっと…父を復讐から解き放ってくれるはずだ…』
「メタルナイトと…?」
カイトは一度だけ戦った…その強さは凄まじいものだった、だが…。
「Ⅴ…ダメ、だったんだ」
『なに…?』
遊馬が歩み出る、唇を噛み締めながら…
「オレ、ここに来る前にトロンと白野のデュエルを見て来たんだ…白野は……メタルナイトは、トロンに負けちまった…!!負けて魂を取られちまったんだ!!」
『「なんだと…!?」』
遊馬の思わぬ言葉にクリスとカイトは驚愕する、彼らの知る限り最強の決闘者でさえ…トロンに敗北してしまっていたのだ…。
「アストラルが…白野はあまりに怒り過ぎて、冷静さを失ってた…それが原因だって…」
『白野さん…!すまない、私の…私達のせいだ…!!』
クリスは涙を浮かべ崩れ落ちる…自身の漏らした弱音が遊海を追い詰めてしまっていた事に気付いたのだ…。
「クリス…」
『遊馬…頼みがある、翠さんに伝えてくれ…!「すみません」…と…!!』キィン─
「Ⅴ!!」
遊馬に伝言を頼んだクリスはワープゲートへと消えた…自身のナンバーズを残して…。
「…戦う理由が、増えたな…!」
カイトはナンバーズを拾いながら呟く…静かに怒りを込めながら…!
「カイト…メタルナイトはオレの師匠なんだ、だからオレが…!」
「お前の指図は聞かん…オレは、ハルトの為に戦うだけだ…行くぞ、オービタル7」
遊馬の言葉を切ったカイトはオービタルに声を掛ける。
《カシコマリ!っと…飛行ユニットの修理をするので少々お待ちを…!!》
「フン…早くしろ」
オービタルが応急処置を終えるとカイトはグライダーでその場を去っていった…。
「……トロンにDr.フェイカー…許せねぇ…!」
カイトの背中を見送りながら遊馬は拳を握り締める…。
(遊馬、私は2人が動き出した時にこの世界へと送り込まれた…ならばそれはアストラル世界にいる君の父親の意志なんだろう…)
「父ちゃんはきっと…オレとアストラルで2人を止めろって言ってるんだ…!やってやる…!オレがガツンと言ってやる!!自分勝手な大人達に─!!」
「遊馬…!」
遊馬は決意する…自分の子供達を復讐や陰謀に巻き込む身勝手な大人達を絶対に倒すと…!
「待っててくれ、遊海…!まずはトロンを倒してアンタを助けてみせる─!!」
Sideクリストファー
『っ…ぐぅ…!?』
ギィン─!
アジトへと戻ったクリスは倒れ込む…それはⅢと同じ紋章の副作用…遠退く意識の中でクリスは涙を流す…。
『すみません、白野さん…!私の、せいです…私が余計な事を言わなければ…!』
クリスは遊海へと謝罪する…その声はアジトの闇に吸い込まれるように消えていった…。