転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話   作:S,K

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こんにちは!S,Kです!

激しい戦いを終えた決闘者達は決戦を前に束の間の安息を過ごす…。


それでは最新話をどうぞ!


決戦前夜〜それぞれの夜〜

「シャーク!」

 

「…遊馬」

 

WDC本戦が終わった夕方、遊馬と凌牙は遊海の家の前で再会した…待ち合わせをした訳ではない、その証拠に凌牙はリュックを背負っている…。

 

 

「…小鳥の奴はどうした?」

 

「いや、ちょっと喧嘩しちゃってさ…それよりどうしたんだよ?リュックなんて持って…」

 

「翠さんに着替えを持ってから来いって言われたんだ…行こうぜ」

 

「おう!」

少し沈んだ様子の凌牙と遊馬は遊海の家へと入っていった…。

 

 

 

 

『あっ…遊馬!決勝進出おめでとう!』

 

「流星!…と、誰だ…?」

凌牙の合鍵で遊海の家に入った遊馬達…最初に出会ったのは以前に出会った流星、そして金髪の少女だった。

 

 

「遊馬、こいつらは誰なんだ?」

 

「あっ…紹介するぜ!こいつは不動流星!あの不動遊星の孫なんだ!流星、こっちはシャ…神代凌牙!遊海の息子なんだ!」

 

「養子だけどな…だが、まさかあの『ネオドミノシティの英雄』の孫か…やっぱり、父さんはすごいな…」

 

『遊海さんの息子か…よろしく!』

遊馬の紹介で凌牙と流星は握手を交わす…そこに金髪の少女が思い詰めた表情で近付いてくる…。

 

 

『ごめん…!!遊海さんがあんな目に遭ったのはアタシのせいなんだ!!本当にごめんなさい!!』

 

「っ!?いきなりなんだ!?」

出会い頭に謝罪してきた少女に凌牙は驚く…

 

『海亜、自己紹介が先でしょ?…この子は海亜・アトラス、僕の幼馴染で実はWDCの参加者だったんだけど…遊海さんとのデュエルの最中にモンスターを暴走させちゃったらしくて…そのせいで遊海さんが全力を出せなかったんじゃないかって気に病んでたんだ…』

 

「そういう事か…」

流星の紹介で凌牙は納得する、遊海は飛行船墜落事故の後から再び寝込んでいた…その原因が彼女だったのだろうと…。

 

 

(シャーク、遊海が全力を出せなかったのは彼女のせいではない…トロンが彼を罠に嵌め、その力を削いでいたのだ)

 

「……そうか、アンタは悪くねぇ…だから頭を上げてくれ、父さんもアンタを責める事はねぇよ」

 

『本当にごめん…』

アストラルの言葉を聞いてか凌牙は海亜を責めなかった…だが、少し苦しげに胸元を握り締めている…。

 

 

「流星、翠さんと…遊海さんは?」

 

『…2階の寝室にいる、会いに行ったら喜ぶよ』

 

「サンキューな!行こうぜ、シャーク!」

 

「ああ…!」

 

 

 

 

コンコンコン!

 

『入れ、扉は開いている』

 

「…入るぜ」

 

「っ…!」

 

(……彼らは…!)

聞き慣れない男の声を聞きながら遊馬達は寝室に入る、そこいたのは椅子に腰掛けた白いコートと白い中折れ帽が特徴的な壮年の紳士、窓際に座りバスケットの中で眠る金色の小鳥の看病をする赤い学生服の青年…そしてベッドで傷付いて眠る遊海と汗だくになりながら治癒魔法を掛け続ける翠の姿があった…。

 

 

 

 

 

 

Side翠

 

 

 

「父さん…!」

 

「…凌牙君…遊馬君…アストラル君…」

傷付き眠る遊海に回復魔法を掛け続けていた翠はその手を止める、入口へと目を向ければ動揺した様子でこちらを見つめる凌牙達の姿があったからだ…。

 

 

「お帰りなさい…!2人とも決勝進出おめでとう!」

 

「…ありがとう、母さん…俺…おれ…!!」ギィン─

 

「…おいで、無理しなくていいわ」

凌牙達に声をかけた翠は凌牙の胸で禍々しく輝く欠片に気付き、凌牙を抱き寄せる…。

 

 

(遊馬、部屋の外で待っていよう…彼らの時間を邪魔してはならない)

 

「…ああ」

遊馬とアストラルは一端、部屋の外に出る…傷付いている凌牙の邪魔をしないように…。

 

 

「母さん、ごめん…!俺の、俺のせいで父さんが…!!」

 

「…今は泣いて大丈夫…泣けばすっきりするから…ね?」

凌牙は静かに泣き始める…翠は彼を抱きしめ、泣きやむまで背中を擦っていた…。

 

 

 

 

 

 

『改めて自己紹介といこうか!オレは遊城十代!岸波白野…いや、「2代決闘王」白波遊海の教え子だ!』

 

『俺はジャック・アトラス!言うまでもないが…元「3代決闘王」であり、遊海の友だ!お前が遊海の息子だな?』

 

「…神代凌牙だ、妹の璃緒もいるが…病院にいる」

 

「オレは九十九遊馬!凌牙の友達で、遊海の弟子だ…です!」

凌牙が落ち着いたあと、ジャック達と遊馬達は改めて自己紹介を交わす…遊馬と凌牙は伝説の決闘者を前に少し緊張気味である。

 

 

(私はアストラル、流浪の調停者と決闘王に会う事ができて光栄だ、貴方達にも聞きたい事はあるが…今は一番の目的を果たそう…シャーク、先程渡した『No.93』を遊海の胸元に置くんだ)

 

「ああ…」

凌牙は胸元に大事に持っていた「No.93」のカードを眠っている遊海の胸元に置く…すると静かにカードの絵柄が消えていく…。

 

『カードの絵柄が…消えた?』

不可解な現象にジャックは片眉を上げる…。

 

 

「っ…うぅ…全身、痛ぇ…」

 

 

「「「『『遊海!!/さん!!』』」」」

カードの絵柄が消えると共に遊海は息を吹き返した…!

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

 

 

Side遊海

 

 

 

意識を取り戻した俺が最初に感じたのは気が狂いそうな全身の痛み、体を動かせない程の倦怠感…そして胸に穴が空いたような()()()だった。

目を開けば翠に遊馬と凌牙、ジャックと十代が俺を心配そうに覗き込んでいた…。

 

 

「遊海さん!私がわかりますか!?」

 

「…みど、り…心配かけ、て、ごめん…」

喉から出た声は驚く程掠れていた…声を出す為の動きすら億劫になりながら、俺は状況を把握しようとする…。

 

 

 

『WDCは…どうなった…?』

 

「決勝に出るのはオレとシャークにカイト…それからトロンだぜ、Ⅴはカイトが…Ⅳはシャークが倒した!」

 

「そう、か…2人とも、よく頑張った……俺だけ、無様なところを、見せちゃった…な…コフッ…!?」

 

「わわっ!?無理して喋らないでくれぇ!?」

少し血を吐いた俺を遊馬が慌てながら止めようとする…。

 

 

「大丈夫、今ので…少し楽に、なった……心配かけて悪かった、な…」

 

「遊海…」

 

(…遊海、聞きたい事がある…貴方の魂はトロンによって握り潰されてしまったはずだ…何故、ナンバーズに宿る事ができたのだ…?)

 

「『『っ…!?』』」

アストラルの言葉に翠達の顔色が変わる、遊海が敗北した上で魂をも破壊されかけた…それは遊海の強さを知る3人にとっても異常事態だったからだ…。

 

 

「…簡単な話、だ…俺は自分の中に魂…心を2つ持っていた…俗に言う二重人格だ…もう一人の俺、ユウスケが…魂が砕かれる寸前に『俺』を切り離した…そのおかげで、お前達に渡した『No.93』…いわば、俺の魂の欠片に…宿る事ができた……その代わり、俺はもう絞りカスだ…ギリギリ、お前の声が聞こえるくらいの、力しかねぇ……トロンに根こそぎ、力を奪われちまった…」

 

(っ…!!)

アストラルは予想以上に酷い容体の遊海に言葉を失う…。

 

 

(遊海、貴方に感謝を…貴方が命を懸けてトロンと戦ってくれた事で相手の手の内の一部を知る事ができた…!それは決して無駄にはしない…!!)

 

「アストラルの言う通りだ!遊海の想いは…オレがトロンの奴にぶつけてやる!!」

 

「頼もしいな…頑張れ、遊馬…今日は帰って、しっかり休め…いいな…?」

 

「おう!!かっとビングで…絶対に勝ーつ!!」

遊馬は元気に声をあげて帰っていった…。

 

 

 

「…父さん、ごめん」

 

「凌牙…謝るのは、俺だ…ずっとお前達に本当の事を隠していて、ごめんな…驚いた、だろ?」

 

「知ってたんだ…ずっと…書斎の写真を見てから…」

 

「そう、か…隠し事が下手だからな、俺は…」

遊海はそう言うと凌牙の頬に手を当てる…その手は氷のように冷たかった…。

 

 

「ごめんな、凌牙…トロンとは、俺の手で決着を着けたかったが……お前達に、任せるしかないようだ…」

 

「…父さん、俺はトロンを許せねぇ…!父さんを、璃緒を…トーマス達を傷付けたアイツを!!」

凌牙は拳を握り締める…その瞳には強い怒りの炎が揺らめいている…!

 

「…奴の前で、冷静さを失くした俺が言えないが…落ち着け…凌牙、お前の抱いた怒り…憎しみ、悲しみは俺もわかってる、復讐心に飲まれるな…トロンの思うツボだ……お前の心には、ナンバーズの『カケラ』が残ってる…抜いてやりたいが…今の俺には、無理だ…」

遊海は凌牙の胸に手を移す…残された力の一部でも、凌牙の胸に刺さった爪ははっきりと見えていた…。

 

 

「凌牙、今のお前はトロンに…狙われている、かもしれない…今日は家に泊まっていけ……いいな…?」

 

「…わかった…」

 

「いい子だ…お前もしっかり休んで、明日に備えるん、だぞ…」

 

「…うん…母さん、シャワー浴びてくる」

 

「…わかったわ、ゆっくりしててね!すぐにご飯作るから!」

凌牙は少し名残惜しそうに部屋をあとにした…。

 

 

 

 

 

 

 

「遊海さん…大丈夫、ですか?」

 

「…全然…大丈夫、じゃ、ない…子供達がいなかったら…叫び、出しそうだ…!」

凌牙が部屋を出た後…遊海は苦しげに顔を歪める…子供達の手前、なんて事ないように振る舞っていたが、内心では全身の痛みを我慢するのに必死だった…。

 

 

「あんなに、冷静じゃなくなったのは…ラプラスと戦った時、以来だ……完敗だ、フレアの力まで…借りたのに…」

 

『遊海…』

遊海は涙を流しながら窓際に目を向ける、そこでは籠のベッドで消耗したフレアが寝かせられている…。

そして、あまりに憔悴した様子の遊海を見てジャックは言葉を失う、数十年付き合ってきた中でここまで弱った遊海を見た事がなかったからだ…。

 

 

「…色々言いたい事があったんですけど…やっぱりやめておきます!今はゆっくり休んでください、遊海さん…」

 

「そうしたいが…少しでも保険はかけておこう…メガロック」

 

《…わかっておる、遊馬の護衛だな?》

少し呆れたような表情をしながら半透明のメガロックが現れる…。

 

「…頼めるか…?」

 

《うむ、トフェニのようにはいかんが…やってみよう、フォウよ、遊海とフレア様を頼んだぞ!》

 

《フォウ!》

メガロックはいつの間にか遊海の枕元にいたフォウに後を託すと遊馬のもとへと向かった…。

 

 

 

 

『先生、これから何が起きるか…わかってるんだろ?』

十代は遊海に問いかける…。

 

「……明日の対戦カードは天城カイト対トロン、遊馬対凌牙の組み合わせになって…決勝は遊馬とトロンが、戦う事になる…」

 

『…それだけで終わるとは思えんな、地下セクションでの不自然な映像障害…そして、「No.」なるカード……フォーチュン・カップと似たキナ臭いものを感じる』

 

「正解だ、WDCは…隠れ蓑だ、世界に散らばった100枚のナンバーズ…その半分近くを…奪おうとする者がいる…!」

 

『…Dr.フェイカーか、この街は奴が創り上げたものだ…あの小僧が狙われるのか?』

ジャックは遊海の言葉から隠された陰謀を看破する。

 

 

「遊馬と一緒にいたアストラルは…ナンバーズの本当の持ち主なんだ…だが、それはあいつらが自分で解決できるはず……ジャック、会場を頼めるか?」

 

『…わかった、WRGPの時のように無関係の観客を守ればいいのだな?流星とカイアにも手伝わせる…いいな?』

 

「…すまん」

 

『フッ…気にするな!本来ならば貴方1人で出来る事を3人でやるのだ!問題はない、まかせておけ!』

ジャックは遊海の手を握り仕事を引き受ける!

 

『先生!オレは何すればいい?』

 

「十代…翠と一緒に凌牙を、頼む…あの子は、トロンに、狙われている…!」

 

『りょーかい!任せておいてくれ!』

十代は胸を叩く!

 

 

《…遊海、1つ聞いてもいいかい?》

 

「ユベル…か、どうしたんだ…?」

十代の傍に現れたユベルが遊海に問いかける。

 

《…お前の息子…本当に()()()()()()?》

 

『ユベル!?お前なんて事を聞いてんだよ!?』

ユベルの思わぬ質問に十代が咎める…。

 

《あの子供から強い力を感じた、ナンバーズを持っているだけじゃない、闇でも光でもない…いわば『混沌(カオス)』の力…潜在能力だけでも……君以上じゃないか?》

 

「…あの子は、人間だよ…俺達の大切な子供だ…例え、()()()()()()()()()()()…それは変わらない…!」

鋭い目つきのユベルに遊海はまっすぐと答える…。

 

《…そういう事か、わかったよ…今の質問は忘れてくれ》

何かを察したユベルは静かに姿を消した…。

 

 

 

 

 

 

「…翠…俺は、弱いな…肝心な時に…役に立たないなんて…」

 

「遊海さんは1人で背負い過ぎなんですよ、昔から…」

 

《フォウ!!》

 

「…フォウにまで怒られちゃ、立つ瀬がないな…ゴボッ…」

ジャックと十代が部屋を去り、2人と1匹になった寝室で遊海は弱音を漏らす…。

 

 

「…せめて、クリフォートか…シンクロン、パラディオンデッキがあれば……俺のデッキ…何処に行ったんだ…?」

 

「…トロンの攻撃を受けた時にデッキの幾つかが異次元に飛ばされてしまったみたいです…アヤカちゃんとトフェニさんが探してくれてます…そんな状態で戦いに行くなんて…!」

 

「…アヤカがいないのは、そういう事か…とことん、運がないな…はぁ…」

翠から手元にないデッキの真相を聞いて遊海は嘆息する…。

 

 

《フォウ、フォーウ!キャウ?》

 

「えっ…?寝ている時に夢を見たか…?花園にいる夢を見たけど…どうしたんだ…?」

 

《ッ〜!!フォウフォウフォウ─!!?》

 

「ちょ…フォウくんどうしたの!?」

遊海の言葉を聞いたフォウはベッドをポカポカと叩き始める…。

 

《フォウ!フォウフォウ!!》

 

「花の夢に気を付けろ?…次に会ったら殴れ…?…聞き間違いかなぁ…?フォウはこんな口の悪い仔だったかなぁ…?」

 

《キュー…》

 

「…聞き間違いとかあるんですか…?」

相変わらず意思疎通の出来るフォウと遊海の様子を見て首を傾げる翠…その時だった。

 

 

キィィン─!

 

「む…?アヤカ、か?」

遊海の真上に小さな次元の扉が現れる…それはアヤカが時空移動に使うものだった。

 

 

「……遊海さん、なんだか嫌な予感が…」

 

「奇遇だな、翠…俺も──」

 

 

《マスタァァァ!!》

 

 

ドッスーン!!

 

 

「おっごおぉおぉおぉぉ!?!?」

 

「遊海さーん!?」

 

次元の扉からコア状態のアヤカが飛び出す…だが、よほど超特急で戻ってきたのか…止まる事ができず、遊海の鳩尾の辺りに轟音と共に落下した…。

 

 

「………なんて、日だ…

 

《フォ〜ウ…》

 

とどめの一撃を受けた遊海の意識はブレーカーが落ちるようにブツリと途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Sideトロン

 

 

 

 

【ほら…ボクの言う通りになったでしょ?計画は順調…明日で全てのナンバーズがボクのモノになる…】

 

トロン一家のアジト…そこで豪奢な椅子に座ったトロンは何者かと話していた…否、相手は人間ではない…異次元の扉の先に広がる異世界「バリアン世界」の人物と交信しているのだ。

 

 

【だけど…Ⅲ・Ⅳ・Ⅴという犠牲も払ったさ…今は隣の部屋で眠っているよ、彼らは良くやってくれた…流石はボクの息子達だ…】

デュエルに敗れた兄弟達は目覚めぬ眠りに落ちている…その様子を見てもトロンは笑みを崩さない…。

 

【邪魔者も殺した…あとは()をフェイカーへの刺客にするだけさ…明日が楽しみだよ…!フフフ…アハハハ!!】

暗闇のアジトにトロンの笑い声が響いた…。

 

 

 

 

SideOut

 

 

 

 

Side遊馬

 

 

 

 

「…ハルト…!」

 

同じ頃、遊馬とアストラルはハートランドの中心ハートランドタワー…その最上階にあるハルトの部屋にいた。

 

何故、遊馬がその場所にいるのか…それは遊馬がデッキを紛失し、GPSでその場所を確かめた結果既に閉園したハートランド内にある事がわかり…紆余曲折の末にハートランド内に侵入、その時にアストラルがハルトの存在を感じ取り…その様子を見る為に遊馬はやって来たのだ…なお、階下では同行した小鳥と鉄男がガードロボットを相手にデュエルを繰り広げている。

 

 

 

(…どうやら…ハルトはあの日のまま意識が戻っていないらしい…)

 

「そんな…」

ハルトの様子を見たアストラルが呟く…未知の力を持つハルトはトロン一家に誘拐され、その力を奪われた…その結果、ハルトも目覚めぬ眠りに落ちてしまっていた…。

 

「…あのな…ハルト、オレ…まだWDCで勝ち残ってるだぜ?…必ずあのトロンをぶっ飛ばして…優勝してやるからな…!」

 

(……)

遊馬は眠っているハルトに語りかける…「話しかける事」で意識不明だった病人が意識を取り戻した…そんな事を以前に遊海に聞かされた事があったのを思い出したのだ。

 

「あっ…!そうなったらカイトとも戦う事になるけど…そんときは容赦しねぇ…だから、だからさ…ッ!」

 

(遊馬…)

遊馬の目に涙が浮かぶ…あの夜、もしハルトをⅤに引き渡さなければ辛い目に遭わずに済んだ…。もし、ハルトを引き渡さなければ遊海がトロンに負ける事もなかった…そんな後悔と自分への怒りを抑えられなかったのだ…。

 

「ごめんな…ハルト…!」

遊馬の涙がハルトの頬に零れ落ちる瞬間…思わぬ事が起きる!

 

キィィン!!

 

「へっ…?うわっ!」

 

(これは…!)

遊馬の涙と共にハルトの体が眩い光を放ち、遊馬達を飲み込んだ…。

 

 

 

─…遊馬…遊馬…!─

 

 

 

 

 

 

「ここは…?」

遊馬が気が付いた場所…そこは花びらの舞い踊る草原だった、その草原には赤い屋根の小さな家があった…。

 

 

『遊馬…アストラル…声が届いてよかった…!』

 

「ハルト…!?」

赤い屋根のテラス…そこには年相応の笑顔を見せるハルトの姿があった、ここはハルトの精神世界…遊馬の想いがハルトの心と共鳴する事でこの世界に招かれたのだ…。

 

 

『来てくれると思ってた…お願いがあるんだ…』

 

「お願い…?」

 

『兄さんを…助けてほしいんだ、兄さんはとっても疲れてる…でも、僕には兄さんを助けられない…ここから、出られないんだ…』

 

「出られない…?」

ハルトは遊馬達に唯一の願いを託す…無理をし続けるカイトを救ってほしいと…。

 

 

『お願い…兄さんを助けてあげて…!』

 

キィン─

 

「ハルト!!」

願いを伝えたハルトが再び輝く…そして、遊馬達は再び光に包まれた…。

 

 

 

 

 

 

 

「今のは…」

光が収まった時、遊馬は再びハルトの部屋へと戻っていた…。

 

 

(…今のは本当のハルトの意識…おそらく、ハルトの意識は心の奥に封じられている…もし、意識を開放する事ができれば…ハルトは元に戻るかもしれない…)

 

「っ…!どうすればいいんだ!?」

アストラルの言葉に遊馬は振り返る…ハルトを救う手がかりを得る為に…。

 

(可能性は2つある…1つは…カイトに全てのナンバーズを渡す事だ)

 

「えっ…?」

遊馬はアストラルの思わぬ言葉に固まってしまう…。

 

 

(カイトがナンバーズを集める事とハルトを救う事は繋がっているはず…ならば、それが1つ目の可能性となる)

 

「っ…!!オレがナンバーズを集めればハルトは治らねぇ…でも、カイトがナンバーズを集めたらアストラルが…!!どうしろって言うんだよ!?」

遊馬は頭をかきむしる…ハルトを救うか、アストラルを死なせるか…どちらも遊馬には選べない…まさにジレンマだった…。

 

 

(焦るな遊馬、可能性はもう1つある…遊海だ)

 

「えっ…?遊海が、可能性…?」

 

(彼は千年アイテムを持っている…ナンバーズから得た知識によると千年アイテムには心や魂に干渉する能力があるらしい…彼の力ならハルトを救う事ができるかもしれない)

 

「そ、そうか!!…でも…」

アストラルの言葉を聞いた遊馬は目を輝かせるが…すぐに表情を曇らせる…。

 

(そうだ、今の彼はトロンに力を奪われ、動く事もままならない…ハルトを救う為には…トロンを倒す必要がある)

アストラルが可能性の問題点を伝える、遊海はトロンに力を奪われ行動不能…だがアストラルは確信していた。

紋章の力によって消滅した自分は紋章の力によって蘇った…ならば、トロンを倒し紋章の呪縛を解く事で…失われてしまった力を取り戻せるはずだと…!

 

 

「…なら、オレに…オレ達にできる事は1つだな、アストラル!」

 

(ああ…それは…)

 

(「かっとビングだ!!」)

遊馬とアストラルは拳を突き合わせる!

 

「オレがトロンを倒せば全部解決できる…!カイトとは…絶対にわかりあってみせる!!」

 

(私は君の思いを尊重する…勝つぞ、遊馬!)

遊馬とアストラルは決意を固めた…。

 

 

 

ピシッ…ピシッ…バリバリ…!

 

 

「っ…!?なんだ!?」

決意を固めた遊馬達の周りに電流が走る…!

 

 

『フフフ…ハハハハハ!!』

 

(この男は…!)

遊馬達の前に立体映像の人影が現れる…!

 

 

 

『私の名は…Dr.フェイカー!』

 

「こいつが…ハルトとカイトの父ちゃん!?」

遊馬達の前に現れた男…それはトロンと一馬を陥れた黒幕…Dr.フェイカーだった…!!

 

『よくこの部屋へ辿り着いたな、九十九一馬の息子…そして()()()()()()()()()()()!』

 

(私の事が見えている…!)

フェイカーの目は常人では見えないアストラルの姿を見抜く…それだけでもフェイカーは普通の男ではない事がわかる…!

 

 

(私が見えているのなら…聞かせろDr.フェイカー!何故お前はナンバーズを集めている…!ナンバーズは私の記憶ではないのか!?)

アストラルは全ての黒幕を問い詰める…!

 

 

『私はアストラル世界と並ぶもう一つの異世界…バリアン世界と取引をした!私はアストラル世界を滅ぼす事で最強の力を手に入れる事が出来る…!この世界の支配者となるのだ─!』

 

「っ…!!ふざけんなぁ!!」

フェイカーの言葉を聞いた遊馬は怒りの声を上げる…!!

 

 

「そんな…そんな事の為にカイトにナンバーズ狩りをさせてたのか!?そのせいで…にカイトやハルトがどんだけ苦しんでいるか!!二人とも…お前の子供じゃないのかよ!!」

 

『些細な犠牲だ…最強の力を手に入れる為に犠牲はつきもの、カイトもハルトも…そして、九十九遊馬…お前の父一馬もなぁ…』

 

「てめぇ…!!」

フェイカーを一言で表すならば…まさに「邪悪」…自身の欲望の為に、家族でさえも犠牲にする…その所業をトロンとまったく同じだった…!

 

 

『…人とは常に何かを捨てながら生きていくもの…オリジナル、そして九十九遊馬…明日の決勝大会、楽しみにしているぞ…!』

 

 

ガコン!!

 

 

「へっ…!?うわあああ─!?」

 

(遊馬!)

遊馬の足下の床が抜け落ちる…遊馬はそのまま暗闇へと落下していった…。

 

 

 

 

 

 

『………ハルト、もう少し…もう少しだからな…!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「うわあああぁぁ!?」」」

 

 

ドッシーン!!

 

 

 

 

「イテテ…あっ!?小鳥!鉄男!!」

 

「遊馬!無事だったか!」

 

「も〜う!!また人をゴミ扱いして〜!!」

 

落下した先…再びのゴミ置き場で遊馬達3人は再会する、そして遊馬の手元には…

 

「…これ、オレのデッキ…!?」

 

(…どうやら、私達はおびき寄せられたようだな…)

遊馬とアストラルは察する…Dr.フェイカーは遊馬達を誘い出す為に遊馬のデッキを盗んでいたのだと…。

 

 

「Dr.フェイカー…待ってろよ…!絶対に、お前は許さねぇ…!」

遊馬はデッキを握り締め、静かに怒りを燃やす…。

 

 

 

 

そしてついに…因縁渦巻く決勝トーナメントの幕が上がる…!




一方その頃…



《マスター…本当にごめんなさい…》←(「私は急ぐあまり瀕死のマスターに突進したダメパートナーです」と書かれた札が掛けられた籠に入れられている)

「(死〜ん…)」←アヤカによる会心の一撃で意識不明

《主殿…力になれず申し訳ない…!》←回復魔法行使中のトフェニ


「…これ、どんな状況なんだ…?」←状況のわかっていないシャワー終わりの凌牙

「気にしないであげて…少しアヤカちゃんがドジしちゃっただけだから…」←回復魔法全力行使中の翠



《フォウ、キャーウ…》(特別意訳:泣きっ面に蜂って…こういう事を言うんだね…遊海は大丈夫かなぁ…)

《ZZZ…》←フレア睡眠による回復中
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