転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話 作:S,K
ドンガラガッシャドッシーン!!
「いっ!?痛ってぇ〜…」
とある朝の白波家にけたたましい落下音が響く…それはリハビリを兼ねて階段を降りて来た遊海が階段を転げ落ちた音だった…。
「…父さん、朝から無理するなって…朝飯は部屋に持ってくから…」
「いや…早くリハビリして、バリアンに備えようと思ってな…」
「…また身体を壊したら意味ないぜ…?」
無茶ばかりする遊海を助け起こしながら凌牙は溜息をついた…。
「おはよう父さん!…なんだかすごい音がしたけど…」
「おはよう璃緒!大丈夫、階段から落ちただけだから…」
璃緒は腰を擦りながらリビングにやって来た遊海に朝の挨拶をするが…
「…小さい頃から思ってたけど、父さんって体が強いのか弱いのか…時々わからなくなるわ」
「ハハッ…決闘が関わらなければ、そんなに怪我しないんだがなぁ…」
「…やっぱり、父さんはツイてないよなぁ…」
《…リョウガ、ユウミの怪我体質は今に始まった事ではありませんから…しょうがないですね》
凌牙の呟きにフレアは苦笑した…。
《フォウ…キャーウ?》
「心配してくれてありがとなフォウ…大丈夫、だいぶ痛みは引いたから…そんな心配そうな顔するなよ?ほら、コチョコチョ〜」
《ファー!?キャウキャウ〜!!》
凌牙達の登校を見送った遊海は久々にフォウと戯れている、ようやく足のギプスは外れたが…未だに動きはぎこちなかった…。
《遊海…しかし、今回はどうなる事かと思ったぞ…トロンとの戦いから…ずっと戦いが続いているが、大丈夫か?》
日光浴をしていたメガロックが心配そうに問いかける。
「…正直な話…ちょっと、大丈夫じゃない……メガロック、お前にはまだ話してなかったな…俺の
《…聞こう》
遊海の口から語られたのは自身の状態…そして、
………
《やはり、そうだったか…死者の蘇生などという奇跡…代償が無い筈はない…翠は知っているのか?》
「ああ、もう話してある…だいぶ叱られたけどな…」
メガロックの言葉に遊海は頷く…その瞳は揺れていた…。
《…
「怖くない…と言ったら嘘になる、それは俺が
《遊海、死は誰にでも訪れるものだ、昔…我の出会った賢者はこう言った…「命とは終わるもの、生きる事は苦しみを積み上げる旅なのだ」…とな》
「…俺も似た言葉を聞いた事がある、『死』は決して断絶ではない…残した想いは必ず繋がるってな…ありがとうメガロック、少し気持ちが楽になったよ」
《お前が弱音を言うとは珍しい…だが、悲観するな…案外、ヌメヌメ・コード?の力であっさり蘇るかもしれんぞ?》
「『ヌメロン・コード』だからな、メガロック…」
《ハッハッハッ…爺の言い間違いだ!笑って流せ!》
《ファーウ…》
バリアンとの戦いからしばらく…遊海は久しぶりに笑顔を取り戻した…。
「翠〜少しフォウと散歩に行ってくるよー」
《フォーウ!》
「遊海さん!気をつけてくださいね?何かあったらすぐに行きますから!」
「大丈夫だって、アヤカは連れていくし…それにデュエルでそう遅れは取らないさ…行ってきまーす!」
「いってらっしゃーい!」
「ふぅ…ふぅ…やっぱり、少し動かないと、体力が落ちてるな…」
《フォウ…フォーウ…》
《あまり無理はしないでください…まだ、完全にダメージが消えた訳ではないんですから…》
遊海は近くの公園のベンチで息を切らせていた、約2週間に及ぶ入院…そしてダメージでだいぶ体力が落ちていたのだ…。
「精霊界で療養しようとも思ったけど…来週には学園祭だからなぁ…まぁ、のんびりリハビリするしかないか…」
《フォウ!フォーウ!!》
「ん?璃緒の演劇が楽しみだって?…ペットは入れるのかなぁ?」
《キャウ…!フォーウ!!》ペシペシ!
「アタタ…ごめんごめん!冗談だって!」
額をフォウに叩かれながら遊海は穏やかな時間を過ごしていた…そんな時、遊海のもとに訪れる男がいた。
『あっ…!お〜い!白野ー!』
「ん?…なんだ鉄男じゃないか、どうしたんだ?遊馬達は一緒じゃないのか?」
遊海に声をかけてきたのは遊馬の仲間達『ナンバーズ・クラブ』の1人であり、遊馬の幼馴染の鉄男だった…珍しい事に1人である。
『いや、その…白野…さんに用があって…』
「俺に?珍しいな…どうしたんだ?」
《フォウ…?》
鉄男の珍しい言葉に遊海は首を傾げる…遊馬を通じて鉄男とも顔見知りではあるが…彼は特に遊海にデュエルを習う事もなかったからだ。
『えっと…まずはコレ!ナンバーズクラブの特別会員証!遊馬の奴に作って欲しいって頼まれたんだ!』
「おおっ!?コレを手作りしたのか!?」
鉄男が遊海に手渡したのはナンバーズクラブの特別会員証…番号は「00」番となっている。
『白野さんは「No.∞」ってカードを使うんだろ?「∞番」っていうのは言い難いから…「0」を2つ並べてみたんだ!2つ合わせれば「∞」に見えるだろ?』
「うん、なかなかいいセンスだ!意外と手先が器用なんだなぁ」
『ヘヘッ…ありがとうございます!』
遊海には素直な称賛を受けた鉄男は頭を掻く…。
「それで…まだ何かあるんだろ?」
『はい…!その…白野さん!オレと、デュエルしてください!!』
《ドフォーウ!?(マジで言ってるの─!?)》
「ほう…俺の強さは遊馬や小鳥から聞いてるはずだな?」
鉄男の意外な願いを聞いた遊海は静かに問いかける。
『はい…!オレ、
鉄男は瞳に炎を宿しながら遊海をまっすぐ見つめる…!
「…なるほどな、いいだろう…丁度デュエルのリハビリをしたいと思っていたんだ…相手になろう!」
『あ、ありがとうございます─!!』
鉄男の願いを見抜いた遊海は…彼の壁になる為に立ち塞がる!
『「デュエル!!」』
遊海LP4000
鉄男LP4000
「俺のターン!ドロー!」
「魔法カード『汎神の帝王』を発動!手札の『真源の帝王』を手札から捨て、2ドロー!さらにフィールド魔法『真帝王領域』を発動!」
周囲の景色がギリシャ調の神殿に変化する!
「そして『冥帝従騎エイドス』を召喚!」
黒い鎧を纏う魔法騎士が現れる! ATK800
「さらにフィールド魔法『真帝王領域』の効果発動!1ターンに1度、手札の攻撃力2800守備力1000のモンスター『烈風帝ライザー』のレベルをターン終了まで2つ下げる…よって、レベル8の『ライザー』のレベルは6になり、リリース1体でアドバンス召喚できる!さらに『エイドス』を召喚したターン、俺は追加でアドバンス召喚できる!『エイドス』をリリースし、『烈風帝ライザー』をアドバンス召喚!!」
疾風を纏った風の帝王が現れる! ATK2800
『先攻1ターン目から攻撃力2800!?』
「俺はこれでターンエンドだ」
遊海LP4000
ライザー 真帝王領域 手札3
『っ…!(負けるな鉄男…!璃緒さんとシャークに認められる為に─!!)』
『オレのターン!ドロー!』
『よし…!「ブリキンギョ」を召喚!』
ブリキでできた金魚のオモチャが現れる! ATK800
『「ブリキンギョ」の効果発動!手札の2体目の「ブリキンギョ」を特殊召喚!』
2体目のブリキの金魚が現れる! DEF2000
『そしてオレは魔法カード「アイアン・ドロー」を発動!自分のフィールドに機械族モンスターが2体いる時、カードを2枚ドローできる!』
鉄男の右手に鋼鉄のグローブが装着され、カードをドローする!
『よし…!!さらに魔法カード「エクシーズ・レセプション」を発動!自分のフィールドにいるモンスターと同じレベルのモンスターを攻撃力・守備力を0にして特殊召喚できる!来い!「アイアイアン」!』
小さなシンバルを持ったアイアイのオモチャが現れる!
DEF0
『オレはレベル4の「ブリキンギョ」2体と「アイアイアン」でオーバーレイ!!』
鉄男のフィールドのモンスター達が光となって銀河に飛び込むが…
ゴツン!!
『えっ!?なんで!?』
盛大な衝突音と共にモンスター達が激突…目を回しながらフィールドに落下する!
「残念だったな、『真帝王領域』の効果だ…俺のフィールドにアドバンス召喚されたモンスターがいる限り、相手はエクストラデッキからモンスターを特殊召喚できなくなる!」
『なっ…!?…オレはカードを1枚伏せて、ターンエンドだ…!』
鉄男LP4000
ブリキンギョ ブリキンギョ アイアイアン 伏せ1 手札2
「俺のターン!ドロー!」
「ふむ…魔法カード『帝王の深怨』を発動!手札の『天帝アイテール』を公開し、デッキから永続魔法『帝王の進撃』を手札に加え、発動!さらに速攻魔法『帝王の烈旋』を発動!このターンにエクストラデッキからの特殊召喚ができなくなる代わりに、自分がアドバンス召喚をする時に1度だけ…相手のモンスターをリリースできる!」
『なんだって!?』
「俺は再び『真帝王領域』の効果発動!手札の『天帝アイテール』のレベルを2つ下げる…そして鉄男のフィールドの2体目の『ブリキンギョ』をリリース!『天帝アイテール』をアドバンス召喚!!」
ブリキンギョが消え去り天空から光が降り注ぐ…そして聖なる力を纏った帝王が光臨した! ATK2800
「さらに『アイテール』の効果発動!デッキの『汎神の帝王』と『連撃の帝王』を墓地に送り…デッキから『冥帝エレボス』を特殊召喚!」
天帝の導きによって冥界の帝王が降臨する! ATK2800
『こ、攻撃力2800のモンスターが3体─!?』
目の前に立ち塞がる3体の帝王を見て鉄男は後ずさる…。
「バトルだ!『アイテール』で『ブリキンギョ』を、『エレボス』で『アイアイアン』を攻撃!さらに『真帝王領域』のさらなる効果発動!アドバンス召喚されたモンスターが相手モンスターを攻撃する時!その攻撃力を800アップさせる!」
『なっ!?うわああ!!』
2体の帝王達が鉄男のモンスターを粉砕する!
アイテールATK2800→3600
鉄男LP4000→1200
「『ライザー』でダイレクトアタック!!」
『まだだ…まだ負けられない!!リバース罠発動!「くず鉄のかかし」!「ライザー」の攻撃を無効にする─!』
風帝の前に鉄のかかしが立ち塞がるが…ライザーはそれを
『えっ…!?』
「永続魔法『進撃の帝王』の効果…俺のエクストラデッキからの特殊召喚を封印する代わりに、アドバンス召喚されたモンスターは効果の対象にならず…効果では破壊されなくなる…残念だったな」
ライザーの翻したマントの風圧が鉄男を吹き飛ばした…。
鉄男LP0
遊海WIN!
『つ、強すぎる…!これが、璃緒様とシャークのお父さんの力…!』
「少し大人げなかったか…大丈夫か?」
『は、はい…』
遊海は吹き飛ばされた鉄男を助け起こす…。
『ありがとう、ございました…良い経験になったぜ…』
「ならよかったが…ふむ…」
意気消沈した様子の鉄男を見て遊海は考え込む…。
「鉄男、1つ言っておこう…
『えっ…!?』
遊海の言葉に落ち込んだ様子の鉄男は顔を上げる。
「璃緒の事、好きなんだろ?」
『────!?!?!?』ボフン!!
遊海の1言で鉄男の顔色が真っ赤に染まる!!
「ハッハッハッ!図星か!おおかた凌牙に『父さんに勝てる奴になって来い!』…とでも言われたんだろ?俺は別に止めやしないさ!付き合う相手を選ぶのは璃緒自身だからなぁ!」
『あ、あのそのオレは…つっ〜〜!?!?』
鉄男は羞恥心から顔を隠して右往左往する…。
「1つ助言をするなら…男は顔より『心』!だが…もう少しカッコよくなる努力をするといい…そうすれば璃緒も振り向いてくれるさ!」
「あ、ありがとうございまぁぁす!!」
夕暮れのハートランドに鉄男の声が響いた…。
《フォウ…フォーウ?(…本当に振り向いてくれるのかなぁ?)》
「もう…!聞いてよ父さーん!凌牙のせいで学校で酷い目に遭ったのよぉ!」
「こら璃緒!あれは俺のせいじゃねぇよ!!盗み聞きしてた奴らのせいだからな!?」
「ハハハ…聞いたぞ?校内新聞で…」
「わーわー!言わなくていいから─!!」
翌日の夕方、白波家は少し騒がしかった…とある早とちりをした馬鹿2人のせいで『九十九遊馬と神代璃緒がカップルになった!』と校内新聞で報じられてしまったのだ。
…真実は鉄男が璃緒への好意を伝える為にまずは凌牙に認めてもらおうとデュエルを挑みに行った結果『せめて遊馬レベルの強さになるか、父さんに勝てるようになってから出直して来い!』と突っぱねた…のを盗み聞きした2人のせいで間違った形で広まってしまったのだ。
「そう怒るなって…人の噂も七十五日、すぐに忘れられるさ…」
「むぅ〜…」
遊海に頭を撫でられ、宥められながら璃緒は頬を膨らませる。
「ったく…あいつらのせいで酷い目にあったぜ…」
「そう言うなって…たまには騒ぐのも悪くないだろ?」
「…まぁな…」
遊海の言葉にそっぽを向きながら…凌牙は頬を掻いた…。
「遊海さん!十代君が話したい事があるって…」
「ん…わかった、俺の部屋に通してくれ」
「そうか…デュエリスト暴走事件はだいぶ減ったか…」
『ああ、先生が怪我した日からかな…1日に2〜3件ぐらいにいきなり減ったんだ…』
夕食前、遊海は訪ねて来た十代と件の事件について話し合う…ハートランドでの決闘者暴走事件は遊海の負傷後、急激に数を減らしていた…。
「やはり、俺が狙われてた…とみるべきか…」
《確実にそうだね、被害に遭うデュエリスト達もサイコデュエリストでも精霊の力を持つ者でない奴が多くなった…おそらく、キミを痛めつけ…邪魔をするのが目的だったんだろうさ》
『先生個人を狙うなんて…卑怯な奴だぜ…!』
ユベルの言葉を聞いた十代は拳を握る…必死に世界を護ろうとする遊海を傷付け、狙う者を許せなかったのだ。
「いや…狙われたのが
『怪我してんのに、そんな殺気を出さないでくれよ…治りが遅くなるぜ?』
《まったく…本当にお前はヒーロー…いや、父親になったんだねぇ…》
怒りと殺気を滲ませる遊海を見た十代は…逆に冷静になったのだった…。
『でもよぉ…やっぱり犯人はあのオレンジの奴…ベクターって奴じゃないのか?先生もアイツが一番怪しいと思ってるんだろ?』
十代は核心を突く問いを遊海に投げかける、だが…遊海は首を振った。
「奴が全ての黒幕だっていうのは確かだが…
『えっ!そうなのか!?初めて聞いたぜ!?』
遊海の思わぬ言葉に十代は驚愕する…。
「俺が病院で寝てるだけかと思ったか?…アヤカの力を借りて事件が起きた時刻とベクター…真月のアリバイを調べてたんだよ」
《その結果、事件発生時には…ベクターは学校、または遊馬と一緒にいたのです…夜間は除きますが…》
《主殿の命で真月をずっと見張っていたが…奴は遊馬達から離れると瞬間移動で消えてしまい、それ以上の足取りは追えなかった…用心深い事だ…》
『先生達の捜査でも無理って…やべぇな…でもさ、他に仲間がいるとか?』
アヤカとトフェニの言葉を聞いた十代は仲間がいる可能性を出す。
「ありえない話…ではない、だけど…俺が知る限り、今のバリアンで戦えるのは5人…だが、ベクターが他の奴に頼るとは思えない」
『根拠は?』
「順を追って説明する、まずはバリアンの戦士は『7人』…バリアン七皇と呼ばれている、まずはお前が出会ったアリト…彼は誰かを洗脳せず、自分の力でナンバーズを奪おうとした…だから除外、次はギラグ…奴は他人を洗脳してナンバーズを奪おうとしたが…彼は『RUM』を介した洗脳…俺達が戦った人の中に『RUM』を使った奴はいないから…除外だ」
『ふんふん…』
「次に遊馬とカイトが戦ったミザエル…彼は俺を狙う理由がない…というより、狙うなら『銀河眼』を持つカイトを狙うはず…だから除外、そして俺が戦ったドルベ…彼は生粋の『戦士』だ…卑怯な手は好まない、それに彼は『そんな指示はしていない』と言った…だから除外、そしてベクターは…限りなくシロに近いグレー…と言ったところか…」
《今ので…5人、残りの2人はどうしたんだい?》
遊海の話を聞いたユベルが残り2人の七皇について問い掛ける…。
「残り2人は
遊海はそう言いながら…子供達の写った写真立てを見つめた。
『……先生、まさか…!?』
《…そういう事か、お前が父親になった訳は…》
「…頼む、2人とも…この事は、まだ瀬人や…遊星達には黙っていてくれ……あの子達自身も…まだ知らない、
『先生…』
遊海はとても悲しげな…そして苦しそうな様子で十代へと頭を下げた…。
《よかったのかい?》
『ああ、あれは先生の…いや、『父親』の覚悟だ、オレ達が口を出していい事じゃないさ…』
遊海の家を後にした十代にユベルが問い掛ける…十代は遊海を信じ、約束した。
《キミがそう言うならボクは何も言わない…それに…遊海の奴は『正義の味方』…だからね》
『ああ、そうだな!さ〜て…先生が動けない分、オレ達が頑張って犯人を探さないとな!!』
そう言って仮面を被った十代はハートランドへと飛び出した…。
─もしもの時は…俺が、ケジメをつける…!─