転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話 作:S,K
『………』
「父さん…その子は…?」
天馬の遺跡を攻略した遊馬達…その後、白波家を訪れたのだが…遊海と一緒にいたのは見慣れない4〜5才くらいのゴシックドレスを着た少女だった…。
「驚かせてごめんな、この子は「迷子」なんだ…ちょっと縁があってウチで預かる事にしたんだよ」
遊海は頭を掻きながら事情を話し始めた…。
…時は遊馬達がハートランドを出発した頃まで遡る。
「すまん、待たせたな」
「先生!……なんか老けたな?」
「うぐっ……心にグサッときたなぁ…」
遊馬達の乗った飛行船を見送った遊城十代は遊海に呼び出され、海浜公園に来ていた…。
《アンタ…異次元の戦いでまた無理したね?…もう、取り返しはつかないよ?》
「手厳しいな、ユベル…覚悟の上さ…ようやく、あいつを救えたからな…」
「先生…」
アゴール…バリアンとなってしまったディヴァインの魂を救った遊海は少し窶れたものの、表情は晴れやかだった。
「…で、オレはどうすればいい?」
「ああ…十代、俺の代わりに英雄の子孫達に声をかけて…戦える者を募ってほしい」
「…やっぱり、一番大きな戦いがあるんだな?」
「ああ、バリアンの神が目覚めた…規模で言えばダークネス並みの戦いになる…!」
そして遊海は十代にこれから起きる戦いの顛末を伝える…。
「バリアン七皇の復活に…100万枚のナンバーズ…バリアン世界の融合…やべぇな」
遊海から語られる世界…否、次元規模の戦い…それを聞かされた十代は冷や汗をかく…。
「俺達にできる事はそう多くない…でも、少しでも良い未来が掴めるように万全を期したい…頼めるか?」
「…わかった!…でもさ、先生は…本当に大丈夫…なのか?」
「……俺は…世界を護る者だ…昔も…今も…これからも……それだけは、変らない」
「悪い…変な事聞いちまった…じゃあちょっと行って来るぜ!」
「ああ、頼んだ!」
遊海に頼みを任された十代はハートランドシティを離れた…。
「あとは瀬人にも連絡を取って…遊星にも…やる事はいっぱいだな…」
ハートランドの海を見ながらこれからの事を考える遊海…そんな時だった。
《…主殿、少し気になる事が…》
「ん?どうしたトフェニ」
《あのベンチに座っている少女…先程からずっと…ずっと1人なのだが…》
「むっ…?」
遊海の傍らに現れたトフェニが海浜公園のベンチを指さす…そこには黒いゴシックドレスを着た白い髪の少女が1人で座っている…周りに他の子供や、大人の姿はない…。
「…気になるな、声をかけてみよう」
遊海は少女に声をかける為に近付いた…。
「こんにちは!お父さんか、お母さんは一緒かな?」
『…………』
しゃがみ込んで少女に声をかける遊海…だが、少女は答えない…黒い瞳で静かに遊海を見つめている。
「…あー…キャンユースピークイングリッシュ?」
『………』
「……弱ったな、言葉が通じてないか…?」
遊海は頭を掻く…今までたくさんの子ども達を見てきたが…ここまで表情を変えない子どもを見た事はなかった…。
「…ごめんな、ちょっとピリッてするぞ?」
遊海は少女の頭に手を当てて記憶を読もうとするが…。
「………記憶喪失か…?しょうがない、ハートランド警察に任せ──ん…?」
『(ギュ…)』
少女の記憶を読めなかった遊海は立ち上がろうとするが…ジャケットの袖を少女が掴んだ…。
《…マスター……大丈夫ですよ、その子は普通の女の子です…邪なモノは感じません》
「そうか…とりあえず、Dr.フェイカーに頼るか…」
アヤカの言葉を聞いた遊海は少女を抱き上げた…。
「…っていう訳で、警察とDr.フェイカーと海馬コーポレーションに依頼して親探し中なんだ…まったく、ひどい親もいるもんだ」
「なるほどな…父さんらしいぜ」
遊海はすっかり懐いた様子の少女を膝に抱えて経緯を説明する…なお、少女は無表情である。
「でさ、親を見つけたらどうするんだ?」
「…マインド・クラッシュ叩き込む」
「「「「それはダメ!!」」」」
真顔で怖い事を言う遊海に子ども達は思いっきり突っ込んだ…。
「遊馬君、小鳥ちゃん!よかったら夕食一緒にどうかしら?」
「あ〜…今日は帰るぜ!なんだか遊海達も大変そうだし…」
「私もそうします!」
翠に尋ねられた遊馬て小鳥は立ち上がる。
「そう…じゃあお土産に包んであげるから少し待っててね!」
そう言うと翠はパタパタと台所に向かった…。
(…遊馬、遊海に遺跡の事を聞くのではなかったか?)
「あ、ああ!!忘れてた〜!?」
白波家からの帰路…遊馬は肝心な事を聞くのを忘れていた…。
「もう…相変わらずドジなんだから…明日また聞きに行きましょう!翠さんのハンバーグ楽しみ〜!」
「そうだな〜…ところでさ、遊海の髪って…あんなに白かったっけ?」
「う〜ん…オシャレしたくなったんじゃないかな?」
((……遊海から感じる覇気がまた小さくなった…彼は、何かを隠している…それも、遊馬達に心配をかけないように…))
アストラルだけは…遊海の異変に気付いていた…。
「「「「いただきます!」」」」
遊馬達が帰った後、遊海達は夕食を囲む…今日はハンバーグとコーンスープにご飯である。
「まったく…それにしても今日は酷い目にあったぜ…」
「本当にハラハラしたわ…」
「そうだろうなぁ…あの遺跡は大変だった…」
「えっ…父さん、やっぱり行った事あるのか?」
夕食を食べながら遺跡の愚痴を零す凌牙達…遊海はそれとなくその問いに応えた。
「その遺跡は一馬と未来…遊馬のお母さんに連れて行かれた事があってな…俺が罠の方に入っちゃって……俺じゃなきゃ死んでたぞ…」
「「(まさかの逆だった!?)」」
…実は遊海、行方不明となる前の九十九夫婦と共に天馬の遺跡を訪れていたのだが…間違えて青のエリアに入ってしまい、大変な目に遭っていたのだ…。
「一馬はデュエルが強い訳じゃなかったから……俺じゃなきゃ5回は死んでたぞ…最後の最後で壁画壊しちゃったし…『強制脱出装置』で無理矢理遺跡から飛び出したんだ…」
「最後のピンチは父さんのせいかよ!?」
「遊馬さんのお父さん…なかなか破天荒な方だったのね…」
遊海の苦労を感じ取った凌牙と璃緒は苦笑いするしかなかった…。
なお…遺跡からの脱出後、一馬に大笑いされて拳骨したのは余談である。
「…ん?なんだ、食欲ないのか?」
『………』
遊海は迷子の少女に目を向ける…彼女は食事に手を付けていなかった…。
「しょうがないな…はい、あーん」
『……?アー…ぱくっ』
遊海はハンバーグを小さく切り分け、少女の口元に運ぶ…首を傾げていた少女はハンバーグを口にする…すると…
『(。>﹏<。)!!』
「ははっ!そうか!美味しいか!良かったなぁ〜!」
「ふふっ…父さんも嬉しそう!」
ハンバーグを口にした少女は可愛らしい笑顔を浮かべた…。
「そういえば…この子は何て名前なの?」
「…たしかになぁ…ずっと「迷子ちゃん」じゃかわいそうだしなぁ」
食事が終わり、璃緒は遊海に少女の名前を問う…遊海は頭を捻るが…
「じゃあ…雪みたいに白い髪だから『雪ちゃん』にしましょう!」
「流石翠…ネーミングセンス抜群だな!君もそれでいいかな?」
『……!』
少女…雪と名付けられた少女は小さく頷いた。
「気に入ってもらえてよかった…じゃあ雪ちゃん!翠と一緒にお風呂入ろうか?」
『……』
「嫌なのか?じゃあ璃緒は…そういうの苦手そうだな…俺でもいいか?」
『……!』
「そうか、じゃあ洗ってやろうな…翠、子ども達を頼む」
「はい!」
遊海は雪と一緒にお風呂場へと向かった…。
「なんだか懐かしいな…俺も父さんにああやって入れてもらったっけ…」
「私は母さんと…ああやって支えられて私達は成長してきたのね…」
「………」
遊海の背中をみた凌牙達は小さい頃を思い出し、懐かしんだ…。
カポーン…
「さて…寝る場所は…俺のベッドでいいか、ごめんな…パジャマは璃緒お姉ちゃんのお古だ」
『………』
雪をお風呂にいれた遊海は彼女の髪を梳かす…。
ピリリ…ピリリ…
「むっ…ちょっとごめんな…もしもし!」
『遊海、俺だ…今は大丈夫か?』
「瀬人…ああ、大丈夫…何かわかったか?」
遊海に連絡してきたのは瀬人だった…遊海は『電子生命体』でもある彼に雪の素性探しを依頼していたのだ。
『取り急ぎ国内を調べたが…合致するデータはない、他の支社にも連絡して捜索願いを調べている』
「そうか…まったく、こんな子を1人にするなんてなぁ…」
遊海は雪の頭を撫でながらため息をつく…。
『……遊海、もしやとは思うが…その子どもは
「ないない!アヤカやフレアに見てもらっても大丈夫だったし…変なモノも持ってなかったしな!」
瀬人の危惧に遊海は笑って答える…万全には万全を期して遊海は検査・調査をしていたのだ…。
『フン…まぁ、お前なら心配はないな!何かわかれば連絡する…とにかく、お前はしっかり休息して体調を戻せ!いいな?』
「りょ〜かい!おやすみ瀬人」
『ああ、さらばだ』
《フォウ…フォーウ…(遊海…その子…)》
「ん?どうした?フォウ」
遊海の部屋にやってきたフォウは雪を見て首を傾げている…。
《…フォウ!(ごめん!気のせい!)》
「ん…?そうか…よ〜し、雪ちゃん…一緒に絵本読みながら寝ような〜」
『………!』
遊海は自分のベッドに雪を寝かせ、古い絵本を取り出す…その本を読み聞かせながら夜は更けていった…。
『起きろ!!今すぐ起きるんだ!遊海くん!!』
「ん……花の、お兄さん……いや、お前は…!」
遊海が気づくとそこは風が吹き荒れる花畑…そしてローブの青年が立っている、そして遊海は花のお兄さんの正体に気付いた…!
「花の魔術師…マーリン…!?なんで…なんで俺の夢の中に!?」
『ああ!?あまりに焦って「幻術」をかけ忘れてしまった…って…!私の事はどうでもいい!!』
花のお兄さん…否、アーサー王伝説に名高い世界一のキングメーカーにして『花の魔術師』の異名を持つ、伝説の魔術師・マーリンは普段ではありえないほど動揺している…!
『遊海くん!起きろ!目覚めろ!緊急事態なんだ!!このままでは…このままじゃキミは!
「う、うわあああああ!?」
そう言うとマーリンは杖を振るう…そして暴風が遊海を吹き飛ばした…。
「(…なんだ、今の夢…なんで、Fateのマーリンが、俺の夢に今更…)」
眠っていたらしい遊海は目を覚まし…寝起きの頭で先程の夢について考える…。
「(俺が、戦えなくなる……夢は、脳の情報整理っていうけど…そのせいで変な夢を見たのか…?)」
遊海は夢で異常事態に遭った経験は少ない…とりあえず起きようとした遊海だったが…。
「(……!?
横向きに寝ていた遊海…その体はピクリとも動かない…完全に固まってしまっている…!
「(バミューダの戦いの影響か…!?ああ、声も出ない…!)」
初めての事態に困惑する遊海…そして、ある事に気づく…!
「(雪がいない…?何処に行った…!)」
隣で寝ていたはずの雪がいない事に気付いた遊海は辛うじて動く目を動かして少女を探す…そして…
『…………』
「(な、なんだ…俺に寄り添って……待て、何か変だ…!?)」
雪は遊海にピタリと寄り添っていた…しかし、様子がおかしい…右腕を下にして眠る遊海…その首の下に顔を埋めていたのだ…!
ジュル…ジュル……
「(っ…?この、音は…それに、首元の痛み……まさか…!?)」
部屋に静かに響く
『……6ede…!』
「(─────!!!?)」
遊海が目覚めた事に気付いたのか、雪が遊海の顔を覗き込む…その瞬間、遊海の全身は総毛立った…。
愛らしい笑顔を浮かべる雪…その小さな口元は
「(吸血鬼…いや、吸血種だと!?俺が…俺がそれを見抜けなかったのか!?そんな馬鹿な!!)」
遊海の体を衝撃が突き抜ける…それは遊海の人生史上、最大の恐怖だった…!
『ジュル…ジュル…』
「(不味い…!!なんで、なんで
部屋を見回せば窓際でフレアが…ベッド下ではメガロックが眠り、枕元にはアヤカもいる…なのに、誰も
「(力が…生命力が、抜けていく……なんで、なんでこんな事が…!!)」
必死に体を動かそうとする遊海…だが、体はいう事を効かず…意識が遠のいていく…。
「(くそ……こいつ、は、いった…い……)」
《ドッフォーウ!!(遊海から…離れろぉぉ!)》
『ギ─!?』ドッターン!!
「ゴホッ…!!フォ、ウ…!」
諦めかけた遊海を救ったのは…小さな体を精一杯使って飛び掛かったフォウだった…!
《む…ん…?なんですかこんな夜中……ユウミ!!!》
最初に異変を感じたのはフレアだった、物音で目を覚ませば…顔色を真っ青にした遊海が血を流していたのだ…!
《メガロック!アヤカ!トフェニ!起きなさい!敵襲です!!》
《ふがッ…!?遊海!何があった!!》
《えっ!?マスター!?》
《主殿!!》
フレアの怒声で飛び起きる精霊達…遊海は必死に声を振り絞る…!
「ゆ、き…敵だ、た、吸血…!ゴホッ!!」
《グルルル…!!》
『m4rbd q@zqki…』
精霊達はフォウが唸る先に目を向ける…そこには暗がりから赤い眼を輝かせ、不気味な笑みを浮かべる雪…否、怪物の姿があった…!
《この…!よくもマスターを!!》
『f7e…!』
ガッシャーン!
アヤカが怪物へと突進…窓を割り砕き、怪物を突き飛ばした…!
「精霊、変身…!!」
遊海もなんとか起き上がり、鋼の鎧を纏って外へと飛び出した…!
「貴様、いったい…何者だ…!」
『………』
遊海は地面に叩きつけられた怪物を睨む…!
『/qm.26ーp@…!』
立ち上がった怪物が何かを呟く…そして怪物の姿が変わっていく…白い髪は赤紫色に染まり、手足が伸び…黒いローブを纏う…さらに、両眼を覆うように眼帯が装着される…眼帯には…バリアンの紋章が刻まれていた…!
「新手の、バリアンだと…!?」
遊海は新たな敵の出現に困惑する…!
「遊海さん!いったい何が!?」
「父さん!!」
「翠!凌牙!コッチに来るな!敵襲だ─!!」
深夜の住宅街に遊海の怒声が響いた…。
Side凌牙
ドッスーン!
「ん…?父さん、またベッドから落ちたのか…?」
深夜、眠っていた凌牙は物音で目を覚ました…その音は遊海の部屋の方向から…たまに遊海はベッドから落ちる為、その音だと思っていた…。
「───!!?」
「!!!」
バリーン!!
「なんだ…!?何か変だ!」
言い争うような声に何かが割れる音…異変を感じた凌牙は慌てて飛び起きた!
「父さん!…な、何だよこれ!?」
遊海の部屋に飛び込んだ凌牙が見たのは…血に染まったシーツ…そして割れた窓だった…!
「遊海さん!!っ─!?」
少し遅れて翠もやってくるが…部屋の惨状に絶句している…。
《フォウ!フォーウ!!》
「っ…!遊海さんは外ね…!今いくわ!」
「母さん!俺も!!」
窓の外を示すフォウに状況を察した2人は外へと飛び出した…。
Sideout
「父さん!!」
「翠!凌牙!コッチに来るな!敵襲だ!!」
外に飛び出した凌牙と翠…彼らが目にしたのは街灯に照らされた鋼の鎧を纏う遊海…そして、暗がりでバリアンの紋章を輝かせる少女の姿だった…。
「雪の正体は…バリアンだった…!俺の一生の不覚だ…!!不甲斐ない!!」
「そんな…!」
油断なく怪物を睨む遊海…その様子を見た翠は絶句する…。
『b\dw3:@.…』
遊海達に聞き取れない言葉を呟いた怪物の手に身の丈以上の大きさの鎌が現れる…!
「翠…凌牙を頼む…!ゼアッ!!」
「遊海さん!!」
遊海は戦闘態勢を取り、怪物に向けて飛び出した!
『ギッ…!』
「っ…止められた…!」
怪物に拳を叩き込む遊海…だが、怪物は鎌の柄を使い攻撃を受け止める…!
『───!!!』
「シィッ!!」
凄まじい膂力で遊海を押し返した怪物は鎌を振るい遊海に斬りかかるが、遊海はバク転して刃を躱す…!
「体が、重い…!カタストロフ・レーザー!!」
『──!!!』
力を吸われてしまい、思うように動けない遊海は無数の光線・魔力弾を撃ち放つ…だが、その光線は鎌によって斬り裂かれ、弾かれる!
「なら…!モード・トリシューラ…絶対氷結!!」
『──!?ギイッ…!!』
「やった…!動きを止めた…!!」
氷龍の鎧に換装した遊海が冷気を解き放つ…全てを凍らせる力は怪物の足を凍りつかせる!
「哀しき魂よ…神の炎によって浄化せん!太陽神の──」
遊海は太陽神の鎧を纏い、浄化の炎を解き放つ…!
ドクン…!
バキッ…
「う、がっ…!?」
「遊海さん!?」
浄化の炎によって決着をつけようとした遊海…だが、突然襲いかかった激痛で太陽神の鎧を保てず、膝をついてしまう…!
「(ぜ、全身が、痛い…苦しい…!!いきなり、何が…!?)」
遊海に襲いかかったのは人生で経験した事ない、全身が軋む程の激痛と苦痛…そして目眩だった。
「遊海さん!前─!!」
『───!!』
ザン─!
「っあ…!!」
「父さん!!」
凌牙の絶叫が響く…怪物が投擲した大鎌が回転しながら遊海の身体を斬り裂いたのだ…!
「
「すま、ん…!」
翠は即座にシャドールのバトルドレスを纏い、影糸で遊海を回収する…。
「影糸乱舞!!」
『────!!!』
翠は凌牙と遊海を守る為に力を奮う…怪物に無数の影糸を差し向けるが、拘束の解けた怪物は鎌を回収し、糸束を斬り捨てる!
「取った!!せぇい…りゃあああ!!」
『ギィ─!?』
だが、翠は糸の一本を怪物の右腕に絡ませ、空中に放り投げる!
「みんな!今よ!!」
《よくもマスターを…!喰らいなさい!》
《富嶽岩弾!》
《ゴッド・ブレイズ・キャノン!!》
《ハアッ!!》
ドン!!
翠は遊海と怪物の流れ弾を処理していた精霊達に叫ぶ、そして空中に投げ出された怪物に破壊の極光・魔力の息吹・岩の弾丸・神の炎が直撃…深夜のハートランド上空で大爆発が起きた…。
《っ…反応ロスト…逃げられたようです…!》
《手応えはありました…深手は負ったはず…!おのれ…!!》
怪物の反応を辿ったアヤカが結果を伝え…フレアは怒りを滲ませた…。
「父さん…!しっかり…!しっかりしろ!!」
「あ…が…痛、い…!こんな、苦しみ…は…ぐああ…!!」
「父さん!?いったい何があったの!?」
戦闘音で飛び起きて来た璃緒が見たのは胸に切り傷を受けて倒れ込む遊海…そして遊海に回復魔法を使う翠と遊海に声をかけ続ける凌牙の姿だった…。
「璃緒…バリアンだ…!父さんの助けた迷子が…バリアンの刺客だったんだ…!!」
「そんな…!!」
璃緒は凌牙の言葉を信じられなかった、遊海に懐いていた少女…それがバリアンとは結びつけられなかった…。
キィン─バチバチ…!
「どうして…!どうして傷が塞がらないの!?」
「っ…あ…がぁぁ…!?」
必死に遊海に回復魔法をかけ続ける翠…だが、鎌で傷付けられた胸の傷は塞がる気配を見せなかった…遊海の顔色はほとんど真っ白になってしまっている…。
「みど、り……こども、たちを、たの…む……!バリアンから、まも…れ…!」
キィン─!
「っ─!?遊海さん!!ダメ…!しっかりして!」
遊海は最後の力を振り絞り…赤き竜の痣の一部を翠に譲渡する…。
「(いったい、あの子は、何者…なんだ…?……ちくしょう……────)」
「父さん…!父さぁぁん!!」
璃緒の悲鳴が響く…何が起きたのか理解できぬまま…英雄は目覚めぬ眠りに落とされた…。
「…そんな、なんで…!なんで遊海がこんな目に…!!」
「遊馬…」
翌朝、遊馬と小鳥はKC系列の病院…その特別病室にいた…凌牙から遊海がバリアンの襲撃を受けたと聞いて駆け付けたのだ。
その病室では無数の管を繋がれ、呼吸器を装着された遊海が眠っている…表情は時折苦しそうに歪み、胸元の包帯からは血が滲んでいる…。
(…まさか、あの少女がバリアンの刺客だったとは……遊海は十分に注意を払っていたはず、その警戒を掻い潜って…)
《……おそらく、私やフレアの眼を掻い潜るほどの隠匿が為されていたのでしょう……そのせいで、マスター…は……私の、せいで……!》
《アヤカ…これは、誰の責任でもありません……相手が一枚上手だったのです…(おそらく、ドン・サウザンドの力……卑劣な…!!)》
アヤカは声を震わせながら罪悪感に打ちひしがれる…そんなアヤカをフレアは慰める事しかできなかった…。
『…入るぞ』
「瀬人さん…」
悲しみに包まれる病室に1人の男が現れる、それはハートランドでの活動用機体を介した瀬人だった…。
『検査の結果が出た…現在、遊海の身体は未知の
「「「毒…!?」」」
「そんな…でも、私達は毒に対して耐性が…!」
瀬人の言葉に項垂れていた翠が反応する…遊海達は特典の一部として「毒耐性」を持っている…それはアルコール以外の毒物ならば…人間界のあらゆる毒物を無害化できるほどである…。
『それはオレも承知している…この毒は遊海の首元から注入されたモノ…それが、全身を侵している…成分としてはヘビ毒に似たモノ…としか、わからなかった』
「蛇…」
『そして塞がらぬ「胸の傷」…それに関しては…
(回復不可能のダメージに…毒による永続ダメージ…そのせいで遊海は眠り続けているという事か…)
遊海に起きている異常事態をアストラルはデュエルモンスターズに例えて遊馬達に説明する…。
『九十九遊馬、お前達は「遺跡のナンバーズ」とやらを集めるらしいな』
「あ、ああ…」
瀬人は遊馬に今後の目的を確認する…。
『重々気をつけろ…遊海が…世界最強の男が敗れるほどの相手だ……もし狙われたなら、すぐに逃げろ…いいな!!』
「…オレは、逃げねぇ…!バリアンからは、絶対に逃げない!!」
「遊馬…!」
傷付いて眠る遊海を前に瀬人に警告された遊馬は拳を握り締め、瀬人をまっすぐ見つめる…!
「相手がどんなに強敵だろうと…オレは、絶対に逃げない!!オレの信じるデュエルで…絶対にそいつを倒す!!」
『…そうか…ならば、翠…お前のすべき事はわかっているな…!』
「…遊海さんは…倒れる直前に、子ども達を託しました…そして、この痣も…!」
翠は右腕をたくし上げ、いまだに熱を持つ炎の痣を見せる…。
「私は、子ども達を守る為に戦います!!」
煮え滾る怒りを飲み込み…翠は子ども達を守る事を誓った…!
『そうだ…それで良い!KCは急ぎ血清の開発を進める…!必ず、遊海を救ってみせる!だから、お前達も必ずナンバーズを手に入れろ!若きデュエリスト達よ!』
「「「「はい!!」」」」
瀬人の号令のもと…遊馬達は結束を強めた…!
「遊海さん…必ず子ども達は守ります…!だから…だから…」
遊海の回復を祈り、遊海の手を握りしめる翠…その声が聞こえたのか…遊海の目から一筋の涙が零れた…。