転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話 作:S,K
……暗い…
…何も見えない…
…何も聞こえない…
…動けない…
…おれは、どうなった、んだ…?
……翠……凌牙……璃緒……
……ぶじで……いてくれ……
英雄の目覚め…未だ遠く…
──────────────────────
「こらぁ!遊馬!!今まで何処に行ってたの!?いつもいつも自分勝手にいなくなって!!私とおばあちゃんがどれだけ心配したと思ってるの!?それに小鳥ちゃんや凌牙くんまで巻き込んで─!!」
「いや、その…これには山より高くて、海よりも深い訳が…」
凌牙達が翠と再会している頃、九十九家に明里の怒鳴り声が響き渡っていた…さしもの遊馬もタジタジである。
なお…遊馬は毎度の事であるが、家族にはナンバーズ関係の事は話していない。
「遊馬の事じゃから…デュエルの事情って奴じゃろう…ズズッ」
「そう!そうなんだよ!ばあちゃん!デュエルを巡る大冒険だったん──」
「なーにが大冒険よ!!少しは反省しなさい馬鹿遊馬─!!」ギチギチギチ!!
「あっぎゃあああ!?コブラツイストはやめてぇぇぇ!?」
「明里さーん!?」
遊馬は怒り心頭の明里に絞め技をかけられる…書き置きも無しに3日間も帰らなければ心配するのは当たり前である。
「ア・ン・タは…!白野さんが倒れてる時に…!本当に…どこ行ってたの─!!」
「アダダダダ!?遊んでた訳じゃないんだって─!?」
「明里、それぐらいにしてあげなさい…ズズッ」
『春さーん!遊馬ー!見とるかぁー!!』
「「「「へっ?」」」」
「六十郎じいちゃん!?」
遊馬に関節技を極め続ける明里、それを中断させたのは…テレビから聞こえてきた遊馬のデュエルの師匠の1人、六十郎の明るい声だった…。
『あはは…コホン、今回は決闘庵で発掘された「戦国武将」喜楽荘八の石像についてお話を聞く為、決闘庵の住職・三沢六十郎さんにお越し頂きました!』
六十郎が出演していたのは情報番組の特集コーナー…アナウンサーの紹介によると戦国武将の貴重な石像が発掘されたらしい…。
「…あれ?この顔…何処かで見た事があるような…?」
「えっ…?……ああああ!?」
「「ギラグ!?」」
映し出された石像の顔…その顔に既視感を覚えた遊馬と小鳥は頭を捻り…そして彼らは思い出した、石像の顔が…なんとギラグの人間体の顔にそっくりだったのだ…!
『六十郎さん、喜楽荘八とはどういった方だったのでしょうか?』
『うむ、喜楽壮八は戦上手でな!並み居る武将達と戦い、戦で得た富は全て領民達に分け与えていた…なのに、自分は徹底して質素倹約し、この地では伝説の名君だったんじゃ…』
「…伝説…」
六十郎が語る喜楽の「伝説」…それを聞いた遊馬は確信した、ギラグは喜楽荘八の転生した姿なのだと…!
『六十郎さん、今回は石像以外にも様々な品が見つかったそうですが…』
『そうなんじゃよ!今回の発掘で…ホレ!喜楽様のお宝がこんなに!』
「あっ!?父ちゃんのコイン─!?」
六十郎の隣に控えていた闇川が手にしていたケースをカメラに見せる、そこには翡翠の勾玉や首飾り、小判に鏡…そして一馬の残した『覇者のコイン』があった!
(そうだ、間違いない…ナンバーズの位置を示す飛行船のマップも決闘庵の近くを示していた)
「げっ!?なんでそれを早く言わねぇんだよぉ!?」
「あっ!?待ちなさい遊馬!!」
アストラルのあまりに遅い補足を聞いた遊馬は決闘庵へ向けて走り出した…。
Side凌牙
「えっ…?どうやってネームレスを倒したのか覚えてないの?」
「そうなの…私、決闘中に気絶しちゃって…目が覚めたらもう…」
「不思議な話もあるんだな…」
病院で翠から事件の話を聞いていた凌牙達…だが、翠は肝心のネームレスを撃退した時の事を覚えていなかった。
「でもね…ずっと遊海さんが傍にいてくれた気がしたの…きっと、遊海さんの『想い』が私を守ってくれたんだと思うわ…」
「母さん…」
翠は手にしていた『No.∞』を優しく撫でながら、眠り続けている遊海を見つめる…。
遊海は以前にも無茶を押して翠や仲間達を守った事があった…きっと、その時と同じような事があったのだろうと確信に近いものがあったのだ…。
ピコーン!ピコーン!
「…遊馬から?…どうした?」
『シャーク!次の遺跡の場所がわかったんだ!決闘庵でギラグに似た石像が見つかったんだ!きっと決闘庵の近くに遺跡がある!』
「なんだと!?」
凌牙のDゲイザーが着信を知らせる、その相手はバスで移動しているらしい遊馬から…遊馬は早口に次の遺跡の場所を伝える…。
『今、オレと小鳥で決闘庵に向かってる!シャークは来られるか…?』
「……悪りぃ、遊馬…今は手が離せねぇ……俺達のいない間に…父さんと母さんがネームレスの襲撃を受けた…!」
『なんだって!?遊海達は大丈夫なのか!?』
凌牙の思わぬ言葉に遊馬は驚愕し、遊海達の安否を確かめる…。
「心配すんな、父さんも母さんも無事だ…母さんはネームレスとのデュエルで怪我してるけどな…」
『…わかった!ナンバーズはオレとアストラルでなんとかする!回収が終わったらお見舞いに行くぜ!』
そう言うと遊馬は通話を終えた…。
「凌牙君…よかったの…?」
「大丈夫さ…遊馬ももうガキじゃねぇ、アストラルと一緒ならすぐに帰ってくるさ」
遊馬の事を心配する翠に凌牙は心配ないと答える…その表情だけでも凌牙が遊馬の事を信頼しているのがわかるようだった…。
「遊馬さん達の事よりも…母さんは自分の事を心配して!…何かできる事はある?」
「……あ…璃緒ちゃん…フォウくんに、ご飯あげてくれる…?昨日の夜から食べてないと思うの…」
「えっ!?そうなの!?」
「フォウ…お前、ご飯が食べたくて病院まで来たのか…?」
《フォッ!?ドッフォーウ!!》
「アダッ!?なに怒ってんだよ─!?」
何故だか怒ったフォウにペシペシと叩かれる凌牙なのだった…。
Sideout
「伝説の主がバリアンだとしたら…やっぱりギラグも…」
「しっかし…ギラグが戦国武将だったなんて想像つかないぜ…」
遊馬と小鳥は決闘庵に向かう長い石段を登りながらギラグについて話し合う。
ギラグはたくさんの決闘者達を洗脳して遊馬達に差し向けて来た…だが、その作戦はなんとなく間の抜けたモノが多く、遊馬達に決定打を与える事はなかった…そのせいなのか遊馬の中ではギラグと喜楽のイメージが結び付かなかった…。
「戦国武将って…頭が回ったり、器用なイメージがあるんだけど…う〜ん…なんだかなぁ…」
「きっと石像を見れば何かわか『危ない!!避けて─!!』えっ!?」
話していた遊馬達は叫び声を聞いて上を見上げる…すると石段の上から何かがすごい速さで転がり落ちて来たのだ!
「んなっ!?小鳥危ねぇ!!ぐわっ!?」
「遊馬ぁぁ!?」
遊馬は咄嗟に小鳥を茂みに突き飛ばし、自分は転がってきた何かに巻き込まれてしまった!!
【「《うわああああああ!?!?》」】
ゴロゴロゴロゴロ…ドッシーン!!
遊馬と転がって来た何かは数十段の石段を転がり落ち、中程の踊り場に叩きつけられたのだった…。
「遊馬!大丈夫!?」
「痛ってぇぇ…!?何なんだよいったい〜!?」
小鳥は階段を駆け降り、遊馬の無事を確かめる…遊馬は生来の頑丈さ故なのか、特に大事はないようだった…。
『遊馬君!小鳥ちゃん!大丈夫!?』
「龍可ばあちゃん!?どうしてここに!?」
『遊海さんに用事があって六さんに宿を借りてたの!』
続いて降りて来たのは龍可だった、KC病院の事件の後、決闘庵に泊まっていたのだ…。
『私も事情がわからないんだけど…その男の子(?)が喜楽の石像に近付いたら、石像が急に動き出したのよ!』
「男の子……って…ギラグ!?」
龍可の言葉に転がり落ちて来たモノの正体を確かめる遊馬…それはTVに映っていた「喜楽荘八の石像」、そして人間体のギラグ本人だったのだ…!
《うぅ…はっ!?こ、これは…!やっと自由になれただ
「っ…!?ギラグ!お前も遺跡のナンバーズを手に入れに来たのか!」
《ポン…?》
遊馬は起き上がったギラグに声をかける…だが、その様子はどことなく変だった…。
「ポン…??お前、ギラグ…だよな…?オレだよ!九十九遊馬だ!」
《むっ…?それはそれは…その節はお世話になっただポン…オイラはこれで失礼するだポン》
「えっ!?ちょ…?待てよギラグ!?」
ギラグ(?)は遊馬に対して丁寧に頭を下げ、その場を去ろうとする…その時だった。
【待てやゴラァ!!
「「『石像が喋ったぁ!?』」」
石段に響く怒号…それと共に喜楽像が起き上がり、叫び声を上げる!
【石像じゃねぇ!俺は
(ナンバーズの精霊だと!?)
石像ギラグの言葉に驚愕するアストラル…人の魂が石像に封じられる…それは非現実的にも程がある話だった…。
どうしてこんな事になったのかを語るには…少し時を戻す必要がある…。
Sideギラグ
『本当に俺そっくりだ…いったいこの像は何なんだ…?』
ドルベに遺跡のナンバーズの捜索を課されたギラグは再び人間界に戻っていた…そんな中、たまたま目にしたTVで自身によく似た石像が発掘された事を知り、その正体を確かめに来たのだ…。
キィン─!
『なっ…カードが……こりゃあ、ナンバーズじゃないか!?』
ギラグが石像に向かい合った時、石像の口から光を纏うカードが現れる…それは『遺跡のナンバーズ』だった…!
『あら?お客さんかしら?』
『不味っ!?誰かいたのか!?』
ギラグの声を聞きつけた龍可が石像の安置してある部屋へ訪れる…ナンバーズを手に入れたギラグは即座に撤退しようとしたが…。
ギィン!
【喜楽…!】
『えっ…!?』
石像の目が光り、恐ろしい表情で喋り始めたのだ…!
【喜楽…喜楽!!】
『うわあああ!?石像が喋ったぁぁぁ!?』
【待て…待てぇぇ!!】
予想外の事態に腰が砕けてしまったギラグは慌てて建物の外へ逃げ出し…石像は飛び跳ねながらその背中を追い掛けた…!
『えっ!?石像が喋っ…動いて…!?えぇっ!?どうなってるの─!?』
龍可もまた動揺しながらも2人の背中を追い掛けた…。
Sideout
「えっ…?石像がギラグで…ギラグが精霊で…??」
【っ〜!九十九遊馬!俺はお前の事だったら何でも知ってるんだぞ!お前!いつもその女の弁当のおかずを盗み食いしてただろ!?バリアンの情報網舐めんじゃねぇ─!!】
「げげっ!?」
ギラグと石像を交互に見て混乱する遊馬…ギラグは遊馬の隠し事を伝える事で自身がギラグである事を証明しようとする…。
「どおりでお昼にお腹いっぱいにならないと思った─!!」
『2人とも!喧嘩してる場合じゃないよ!?』
それは遊馬の隠していた小さな悪行…小鳥はそれを聞いて遊馬に詰め寄る…。
「そ、そんな事知ってたってお前がギラグだって証拠にならねぇよ!?」
【俺とのデュエルを忘れたのか!?『ジャイアント・ハンド』の秘孔・死漠無惚を『希望皇ホープ』に喰らわせただろうが!?】
「「ああっ!?」」
それはギラグとのデュエル内容…あの場にいたのは遊馬・小鳥・鉄男・
《フッフッフッ…そうだポン!入れ替わっただポン!!今日からはオラが喜楽荘八だポン!!》
「入れ替わった…!?じゃあ、お前がナンバーズの精霊!?」
観念したのか…ギラグと入れ替わったナンバーズの精霊が声を上げる…!
《オラは石像の中でずっと待ってたポン…!もう1度自由になれる日を!そうしたら…!喜楽荘八がオラの前に現れただポン!!》
(やはり…伝説の武将・喜楽荘八はギラグだったか…!)
ミザエルとジンロンの事からアストラルは喜楽=ギラグであると確信した…!
【ゆ、遊馬!頼む!アイツにデュエルで勝って、俺の体から追い出してくれぇぇ〜!】
「なんでオレがお前の為に〜…?」
精霊とギラグの言葉を聞いた遊馬は半ば呆れながらギラグに問い掛ける…一応、ギラグと遊馬は敵同士…遊馬に頼むギラグもギラグである。
【いいのかよ!?アイツは遺跡のナンバーズを持ってるんだぞ?!】
「ええっ!?」
(遊馬、彼がナンバーズを持っているのなら…やるしかあるまい…)
「ああ…!何が何だか分からないけど…やってやる!!」
アストラルの言葉で遊馬は気持ちを切り替え、ギラグの体を乗っ取った精霊を睨みつける!
《面白いだポン…!オラの自由を奪う奴は…誰だろうと許さないポン!!》
自由を手に入れる為にナンバーズの精霊は遊馬に襲いかかる!
「《デュエル!!》」
デュエルダイジェスト 遊馬対遺跡の精霊・偽ギラグ(仮)
64
《現われろ!「No.64」!混沌と混迷の世を切り裂く知恵者よ!世界を化かせ!「古狸三太夫」!!》
「コイツが…この遺跡のナンバーズ…!!」
先攻を取った偽ギラグの場に茶釜型のオブジェが現れ変形…赤い甲冑を纏った狸武者が現れる!
《「古狸三太夫」の効果発動!ORUを1つ使い、「影武者狸トークン」を特殊召喚するポン!「影武者狸トークン」の攻撃力は召喚された時にフィールドで一番高い攻撃力を持つモンスターと同じになるポン!》
印を結んだ三太夫がデフォルメされたタヌキを呼び出す、さらにその姿は色違いの三太夫に変化する!
《さらに「影武者狸トークン」がいる限り、「三太夫」は攻撃されなくなるポン!》
「くっ…!?でも、攻撃力は1000…影武者なんか怖くないぜ!!」
《影を舐めるなポン…影を!オラはこれでターンエンドだポン!》
「影…?」
2体のモンスターを前に強がる遊馬…だが、偽ギラグはそんな遊馬を不敵に睨んだ…。
「オレのターン!…いくぜ!オレはカードをセット!!」
《む…?あのカードは…?》
ターンの回ってきた遊馬はいきなりカードをセットする…その姿に違和感を覚えた偽ギラグは思わぬ言葉を取る!
バサッ
《ポ♪…ポッポッポッポッポッ…♪》
「な、なんだ!?」
何処からか日の丸の描かれた扇を取り出した偽ギラグは舞を踊り始める…!
《ポッポッポッポッポッ…ポン!!》
キィン─!
『っ!?いけない!!避けて遊馬くん!!』
「えっ!?………ぁ…?」
何かを感じた龍可が叫ぶ…しかし、その警告は間に合わず、遊馬の意識は暗転した…。
(遊馬…?どうした!?)
《ポン♪》
突然項垂れてしまう遊馬…彼が再び顔を上げた時、その頬には可愛らしいヒゲが生えていた…!
Side遊馬
「ん…ああ…?なんで、
一瞬の暗転の後、遊馬は意識を取り戻す…だが、違和感を感じた。
…普段よりも高くなった視点、がっしりとした体…なにより、
「えっ…!?ああ!?お前!なにオレのカードを見てやがる─!?」
《へへへ…!》
身体を入れ替えられた事に気付いた遊馬は自分…偽遊馬に叫ぶ!!
《(伏せカードはこれで…手札は……なるほど…!)自分フィールドにモンスターがいない時!「トイナイト」は特殊召喚できる
(……ポン?)
「あ、アストラル!!小鳥!!そいつはオレじゃない!!
「えっ…??偽ギラグ…何を言ってるの??」
急に変わった遊馬の口調に首を傾げるアストラル…遊馬(体はギラグ)が自分の存在をアピールするが他人には伝わらない…
『アストラル!気を付けて!遊馬君は精霊に身体を乗っ取り…入れ替えられてるわ!!』
(なんだって!?)
【あ、アイツ!?またやりやがった─!?】
龍可だけはすぐ遊馬の異常に気が付いた…
「こ、この偽者野郎!!オレの体を返せ〜!?」
《フッフッフッ…気付いた所で遅いポン!!フィールドに伏せカードがある事で手札の「ドドドウィッチ」は特殊召喚できるポン!》
遊馬の体を乗っ取った偽遊馬(?)はバイキング風の魔女を呼び出す…そのレベルは4、本来なら『希望皇ホープ』を呼ぶ所だが…。
《オイラは2体のモンスターを生け贄に!守備力3000の「ドドドガッサー」を攻撃表示で生け贄召喚だポン!!》
(ああ!?なんて事を!!)
偽遊馬はエクシーズ召喚をする事なく、三度笠を被った旅人のドドドモンスターを呼び出してしまう…その攻撃力は0である。
《そしてオラは魔法カード「死者蘇生」を発動!墓地の「トイナイト」を特殊召喚!さらに魔法カード「ガード・プラス」を発動!「トイナイト」をリリースして、「ドドドガッサー」の守備力を200アップするポン!!》
「や、やめろぉぉ!?攻撃表示じゃ意味ないんだよ─!?」
偽遊馬の蛮行は続き…ついに遊馬の手札を全て使い切ってしまった…なお、人間界では肉体を持てないアストラルは見ている事しかできない…。
《バトルだポン!攻撃力0の「ドドドガッサー」で「影武者狸トークン」を攻撃だポン!!》
「くっそぉ!!でも、ダメージと衝撃を受けるのはお前だ!!」
《アハハ…!それはどうかな?ポン♪》
「へっ…!?」
偽遊馬の言葉と共に…再び遊馬の意識は暗転した…。
Sideout
「へっ…!?ああ─!?」
再び意識を取り戻す遊馬…自分の身体に戻ったもののそれが意味する事は…!
《「影武者狸トークン」で「ドドドガッサー」を返り討ちだポン!!》
「しまっ!?ぐああああ─!?」
ドドドガッサーが影武者狸に両断され、爆発…遊馬はダメージを受けながら吹き飛ばされる…。
偽ギラグは遊馬の場を好き勝手に荒らした上で、遊馬にダメージを与えるという卑怯な手段を使ったのだ…!
《オラ、やっぱり喜楽の体がいいだポン!》
「くっそ…!やい!偽者ギラグ!!なんでこんな事するんだ!?」
《フン…オイラは喜楽荘八の
「影武者!?」
《何が「名君」だポン!何が「伝説」だポン!全部、オイラが戦で勝ったからだポン!!》
おどけた様子の偽ギラグに遊馬は叫ぶ…それを聞いた偽ギラグが語り出したのは喜楽の伝説であり、自身の生い立ちについてだった…。
《喜楽はオラのおかげで伝説になったポン!!全部!
「た、タヌキ!?お前…タヌキだったのか?!」
「そういえば…ポンポン言ってたし…」
【デッキはタヌキデッキだった…】
(タヌキが、ナンバーズの精霊になっていたのか…?)
偽者ギラグのカミングアウトに騒然となる遊馬達…そして、偽ギラグは語り始めた…自身の狸生の全てを…。
《喜楽との出会いは戦場だったポン…激しい戦いの中、戦場に迷い込んだ子タヌキのオイラをアイツは助けてくれただポン…》
………
戦場で保護された子タヌキ…彼は昔話のように喜楽に恩返しする為に妖術を使って喜楽の「影武者」となった。
それだけではなく、野生の勘を持つ彼は指揮に優れ喜楽の代わりに戦い…次々に戦いに勝利し、喜楽と共に自国を強くしていった…。
…だが、ある時…喜楽はタヌキを追い出した…!
………
《喜楽はオイラの才能に嫉妬しただポン!それから喜楽の馬鹿殿はすぐに戦に負けて死んだポン!…オラが戦えば、絶対に勝てたのに!!……そしてタヌキのオイラは寿命で死んだポン…でも、気づいたらあの喜楽の石像に魂が閉じ込められていたポン!!今度は死者の影武者だポン!!》
偽ギラグ…影武者タヌキは悔しげに拳を握り締める…。
《もう、影はうんざりだポン!!オラが…今度はオラが本物になるんだポン!!》
影から「本物」になる…それがタヌキの目的だった…だが、怒りを滲ませる彼に声をかける者がいた…。
『タヌキくん…それは、違うと思うわ…』
《なんだポン!おばあちゃん!喜楽は裏切り者だポン!!オイラはアイツが許せないポン!!》
「龍可ばあちゃん…?」
タヌキに優しく声をかけたのは…龍可だった…。
『タヌキくん…私の知ってる人にね、とっても強い決闘者がいたの…彼に勝てるのは世界に1人か2人…そんな彼には唯一信頼していた「親友」がいた…』
《親友…》
怒っていたタヌキは龍可の話に引き込まれる…彼女の纏う雰囲気が怒りを忘れさせているのだ…。
『彼と親友は何十年も一緒に戦い続けた…他の仲間達が死んでしまっても…彼だけは親友と共に歩み続けた……そして彼は戦って闘って…戦い抜いた先で最期の戦いをする事になった…その相手は…「親友」だった』
《ポン…!?》
(龍可…?)
「なんだろう…この話…聞いた事が、あるような…?」
龍可の語る「決闘者」の話に遊馬達も引き込まれていく…。
『「親友」の寿命は尽きかけていたの…その前に彼は「大きな決断」をしようとしていた…「親友」の迷いを振り払う為に…「決闘者」は……「親友」に討たれる事を望んだ…!!誰よりも信頼していた「親友」に喝を入れる為に!!………タヌキくん、きっと喜楽荘八も貴方の事が大切だった…だから、貴方を追い出したのも…必ず理由があると思うの…!貴方は…そんな彼の気持ちを考えた事はある…?』
【(な、なんだ?この婆さんの言葉は…?心が…心がザワつく…!)】
龍可の隣で話を聞いていた石像ギラグ…彼は龍可の瞳を潤ませながら語られた物語によって魂を揺さぶられていた…。
《う、うるさいポン!!オイラは…オイラは喜楽を許さないんだポン─!!》
『タヌキくん…』
タヌキは首を振り叫ぶ…彼は数百年に渡る孤独の中で喜楽への憎しみを抱き続けていた、その怒りは…生半可なものではない…!
(…遊馬、ギラグの魂が体に無い今…彼を倒せばナンバーズを手に入れる事ができる)
「わかってる…けど、アイツに言いたい事がある…!」
龍可の話…そしてタヌキの叫びを聞いた遊馬は彼に向き直る…。
「なぁ、タヌキよぉ…お前が言うようにオレの知ってるギラグは卑怯な所がある、セコい所もある…嫌な野郎だ!!」
【んな!!テメェ─!言い過ぎだぞぉ!!】
遊馬の物言いに突っ込む石像ギラグ…だが、遊馬は言葉を続ける。
「でもさ…!オレはギラグを
(遊馬…)
それは遊馬の心からの言葉…確かに、ギラグと遊馬は敵同士…だが、遊馬は何処か抜けているギラグという男を憎む事ができなかったのだ…!
《そんな事、ないポン!あんな奴…十分憎めるだポン─!!》
遊馬と龍可の言葉を振り払い、タヌキは決着をつけるべく動き出す!
《オラのターン!「古狸三太夫」の効果発動!ORUを1つ使い、2体目の「影武者狸トークン」を特殊召喚するポン!!そしてバトルだポン!「古狸三太夫」でダイレクトアタックだポン!》
「ぐあっ…!?」
三太夫の狐火ならぬ狸火の吐息が遊馬のライフを削る!
《さらに「影武者狸トークン」でダイレクトアタック!》
「ぐあああっ!!」
影武者狸の炎が遊馬のライフを削る…残りライフは…1000!
《これで終わりだポン!2体目の「影武者狸トークン」でダイレクトアタックだポン!》
「それは、どうかなぽん!!」
《なにっ!?》
傷だらけになった遊馬は不敵な眼差しでタヌキを睨みつける!
「リバースカード発動!『バースト・リバース』!!自分のライフを半分払い、墓地の『ドドドガッサー』を裏守備表示で特殊召喚だ!!」
《ポン!?(しまった!『ドドドガッサー』の守備力は3000!)攻撃はお預けだポン─!!》
それは遊馬の起死回生の一手…タヌキは『ドドドウィッチ』を召喚する為だけの伏せカードと思っていたが…それにさらなる使い方があったのだ…!
《(でも、オイラにはこのカードがある…!)カードを伏せ、ターンエンドだポン!絶対に勝つんだポン…今度はお前が…オイラの影武者になるんだポン─!!》
「オレ達だって…負ける訳にはいかねぇんだ!!いくぜ、アストラル!!」
(ああ!!)
遊馬とアストラル…2人はタヌキへ最後の攻撃を仕掛ける!
「オレのターン!オレは『ドドドガッサー』を反転召喚!」
《っ!?攻撃力0を攻撃表示!?》
再び現れる三度笠の旅人…彼には隠された効果が眠っている!
(『ドドドガッサー』が反転召喚された事で効果発動!このカードの攻撃力は自分と相手のライフの差分アップする!よって攻撃力3500だ!)
《なんだって!?》
「そして『ガッサー』のさらなるリバース効果発動!このカードがリバースした時!相手フィールドのモンスター2体を破壊する!2体の『影武者狸』を破壊!!」
ドドドガッサーがオーラを纏い、刀で影武者狸を斬り裂く!
「バトルだ!『ドドドガッサー』で『三太夫』を攻撃!!」
《今だポン!!罠カード「千畳敷返し」を発動!自分の狸モンスターがバトルする時!相手モンスターを破壊し、その攻撃力分のダメージを与えるポン!これで、オラの勝ちだポン─!》
それはタヌキの奥の手…だが、遊馬達は諦めない!
「そうはいくかあ!!手札から『チャウチャウちゃん』の効果発動!!」
《な、なんだポン!?そのカードは─!?》
それは遊馬が土壇場で引き当てたカード…それが決着の一手となる!
「このカードを墓地に送り、発動した相手の罠を…オレの罠として扱う!つまり、破壊されるのは『古狸三太夫』だ─!!」
《なぁぁぁ!?》
遊馬の場に現れたチャウチャウ犬がタヌキの罠を奪い、三太夫を粉砕する!
「カッとビングだ!オレ!『ドドドガッサー』でダイレクトアタック!三度笠旋風!!」
《う、うわああああ!!》
ガッサーの投げ放った三度笠がタヌキに直撃…そのライフを0にした…。
【あ、ああ…!?
遊馬の勝利を告げるブザーが鳴り響く中…ギラグの叫びが木霊した…。
ポン太 LP0
遊馬WIN!
《…オラは…影じゃ、ないだポン…》
【そうだ…お前はポン太だ…懐かしいなポン太】
《殿様…!?》
「じゃあやっぱり…」
「ギラグは…喜楽…?」
デュエルに負け、項垂れるポン太…彼に声をかけたのはギラグだった。
…彼は、戦いの中で記憶の一部を取り戻していたのだ…。
《殿様…なんで、なんでオラを捨てただポン…?》
【…あの戦は、初めから負けが決まっていた……領民ばかりに富を与えるワシを気に入らなかった家臣達が寝返っていたのだ】
《そんな!?そんなのって…!?》
それはギラグから語られた真実…自身は質素な暮らしをしていた喜楽は同じ暮らしをするように家臣達に伝えていた…その結果、家臣達が喜楽を裏切っていたのだ…。
【気付いた時にはどうにもならなかった…せめてワシは…ポン太、お前だけでも逃がそうと考えたのだ…あの婆さんの言う通り……ワシはお前が大切だったのだ…】
《そんな…!なんで言ってくれなかったポン!?オラは…オラは殿様とずっと一緒にいたかったポン!!一緒に、戦いたかった…!!》
「グスッ…ポン太…!」
ポン太は石像ギラグに縋り付く、その目から涙を溢しながら…それはポン太の心が数百年振りに救いを得た瞬間だった…。
《遊馬…ナンバーズはお前達が使ってくれだポン…せめてもの罪滅ぼしだポン…》
「アストラル…」
(ああ)
タヌキは自身のナンバーズをアストラルに譲り渡す…そして変化が起きる…。
キィン─
《喜楽様…》
「ポン太…!」
ナンバーズという「楔」を失ったポン太はギラグの体から離れ、本来のタヌキの姿となる…。
《喜楽様…いくポン、オイラ達のいるべき場所へ──》
ポン太はギラグへとその小さな手を差し出し…。
【んなわけ…ねぇだろうがああああ!!】
バキバキ…バキーン!!
「なっ─!?ギラグ!!!」
禍々しい叫びを上げたギラグが石像を粉砕しながら魂だけでポン太の魂を掴み取る!!
《うぐっ─!?殿様、なんで…!》
そして、ギラグは口を大きく開き…─!
「や、やめろぉぉ!!!」
《正しき者に祝福を…悪しき者に裁きを!エターナル・サンシャイン!》
キィン─!!
【ぐあっ!?】
《あうっ…!?》
「「エンシェントフェアリードラゴン!!」」
ポン太の魂がギラグに飲み込まれようとしたまさにその時、聖なる光が決闘庵を照らす…それはバリアン世界の人間であるギラグを怯ませ、肉体に叩き戻した!
『チィ…!
「ギラグ!!」
ギラグは瞳を紅く輝かせながら遊馬達を睨みつける…彼は今の話を「自分が思い付いた嘘」と思っているのだ…。
『覚えてろ九十九遊馬…次はお前を倒すからな─!!』
そう捨て台詞を残してギラグはワームホールに消えていった…。
《殿様…どうして…どうしてなんだポン…!》
「ポン太…」
ギラグが撤退した後、ポン太は落ち込んでいた…取り戻したはずの「絆」は…他ならぬギラグの手で粉々に砕けてしまったのだ…。
《ポン太…今は眠りなさい、貴方の力が…きっと彼を闇から救う時が来るでしょう…》
《ポン…》
エンシェントフェアリーの優しい光に包まれたポン太…彼は再び「No.64」の中で眠りに就いた…。
《遊馬…アストラル…あのギラグという者…彼には強い『闇の力』を感じました…それが彼の崇高な魂を穢し、闇に貶めているのです》
(闇に…貶める…?その『闇』とは…?)
エンシェントフェアリーの言葉にアストラルは問い掛ける。
《それは…私が語るべき事ではありません、貴方達が自ら見つけるべき真実だからです…2人とも…決して、諦めてはいけませんよ…》
「エンシェントフェアリー…」
遊馬達に声をかけた彼女は静かに消えていった…。
『遊馬くん、怪我は大丈夫?私も少しなら回復の魔法が使えるから…』
「あ、ありがとう龍可ばあちゃん…」
ギラグが撤退し、喜楽像の破片を集め終えた遊馬は龍可に回復魔法をかけてもらう…。
「ギラグ…アイツ、卑怯な奴だったけど…あんな事する奴じゃなかったのに…」
『遊馬くん…』
遊馬はギラグの姿を思い出して落ち込む…ギラグは確かに卑怯で小細工も使う…だが、アリトの為…友の為に戦える熱い魂を持っている…遊馬はその姿を知っていた…。
「…そうだ、龍可ばあちゃん…さっき、ポン太に話した『決闘者』の話…あれって誰の事なんだ?」
回復を受けながら…遊馬は気になった事を問い掛ける…。
『うん…遊海さんからは何も聞いてないみたいね……なら、名前だけ教えてあげる、落ち着いたら遊海さんか翠さんに聞いてみて…彼の名前はラプラス、イリアステル滅四星の1人…善を知り、それでも悪を貫き通した、誇り高き「善知の悪魔」…それが彼の名前よ』
「ラプラス…」
(『全知全能の魔物』…そしてイリアステルは…アポリアの仲間という事か…?)
『…彼の事を語るには私じゃダメなの…でも、遊馬くん…心の隅に覚えていて、人間は憎しみや悲しみ…怒りのあまり…「悪魔」になってしまう事があるって…』
「人が…悪魔になる…?」
龍可の悲しげな呟き…それは夕暮れの空へ消えていった…。