転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話 作:S,K
「………」
「……」
「…」
─ああ、よかった…ようやく見つけた…本当に消えちゃったかと思ったよ…─
「───」
─キミは…キミの魂は怪物に喰われ…消滅した、長い時を経て命の終わりに辿り着いた……それでも、揺るぎない『意思』は虚無の世界に残っていた……それでも…キミが成すべき事は、まだ残ってる─
─……だから、「お疲れ様」とは言わないよ……
「…」
─…懐かしいね、
─……ボクは人間にとって、すこし困った性質を持っていた…人間同士の競争や成長…妬みや悔しさを「糧」として…相手より「強くなる」…「災厄の獣」キャスパリーグ……違う世界では『霊長の殺人者』や『
─ボクは人間社会にいなければ『無害な動物』でいられる…だから、
─そうしたら…驚いたよ、世界は『魔術の札』…デュエルモンスターズが広がって人間達の『競争や成長』に満ち溢れていた……ボクは困った…このままでは『災厄』になってしまうと…─
─そんな時、ボクはキミ達と…遊海と翠に出会った……「大丈夫か?何処から来たんだ?」って…そう声を掛けて、ボクを優しく抱き上げてくれたね─
「……」
─でも、ボクは申し訳ない気持ちでいっぱいだった…きっと、この2人がボクの最初の
─でも、そうはならなかった……君達は純粋に『楽しむ為』にデュエルモンスターズを使っていた……例え負けても相手を妬む事なく、感じた悔しさも自分達の糧としていたから…ボクはそれ以上、成長しないで済んだんだ─
「………」
─君達との暮らしは本当に楽しかった…遊海のデュエルを見たり…翠と美味しいご飯を食べたり、凌牙と一緒に寝たり、璃緒におめかししてもらったり…精霊のみんなと遊んで、笑って………なんて事のない『普通の日常』……でも、ボクにとっては…本当に「美しいもの」だった!─
「……ふぉ…う……?」
─…君は迷惑に思うかな…でも、「善意は基本、押し売りするものだ」とあの夢魔も言っていたし…君も結構お節介が好きだから…それに倣うとしよう─
─ボクが数百年溜め込んだ魔力を使って…魔法やアストラルが使おうとしている「ヌメロンコード」ですら到達し得ない「奇蹟」をこれから起こす、それは『消滅した魂の復活』…─
─「ヌメロンコード」は事象を書き換えて、その人の未来を変える奇跡の力…でも、ボクはそうじゃない…チカラを使って「世界の外側」に弾き出され、消えかけた遊海の「魂」を現実世界に呼び戻す…そうすれば、キミ自身の力で蘇る事ができる…─
─…その代わり、ボクはただの「獣」になる…知性も特性も無くなってしまうだろう…もしかしたら…君との「会話」もできなくなるかな……キャットちゃんは……よく分からないや!─
─寂しい気持ちもあるけど…最後にお礼を言わせて欲しい─
─ありがとう、遊海…そして翠…君達との暮らしは本当に楽しかった、たいてい醜悪な姿に変わっていたボクが『この姿』でいられたほどに─
「…フォウ…くん…」
─きみ達と遊馬の旅路が教えてくれた…刃を交えずとも、倒せる悪はあり…血を流さなかったからこそ、辿り着けた答えがあった…─
─おめでとう、善き決闘者達……『あり得た災厄』はきみ達によって倒された─
世界の外側…「無」の世界に虹色の光が広がっていく。
それは祝福の光
光は世界の「壁」を無理矢理に押し開き──
『英雄』の魂をあるべき場所へと導いた。
──────────────────────
「…ここ、は……」
遊海はゆっくりと目を覚ました、最初に目にしたのは夕日が照らす穏やかな夕焼けの空…そして、涙を溜めた紫髪の少女の逆さまの顔だった。
「遊海さん…良かった…!戻って、もどって…きてくれた…!!」
「翠……俺は、どうなって…?……俺は、ネームレスに……」
「アストラルが…ヌメロン・コードで生き返らせてくれたんです…!良かった…よかったぁぁ…!!」
「……そうか、戦いは…終わったのか…」
遊海は泣き崩れる翠の膝枕から起き上がる、そこは始まりの場所、ハートランドの駅前広場…そこでは泣き笑いの笑顔の遊馬が蘇った元『バリアン七皇』やカイトとの再会を喜び合っていた。
「…なんだか、とても悲しい夢を見ていた気がする………寂しくて…でも、祝福に満ちた夢を…」
遊海はネームレスと対峙した後の事は覚えていない…しかし、その魂には…何か暖かな「余韻」が残っていた…。
《フォウ!フォーウ!》ピョン!
「…おはよう、フォウ………
《フォーウ?》
遊海が起き上がったのを見たフォウが軽やかに遊海の肩に跳び乗る、そして…遊海はフォウを優しく撫でながら感謝を伝えた、何故か分からないが…言わなければならないような気がしたのだ…。
「翠……ごめん、今回はだいぶ無茶をした…」
「ぐすっ……いつも、いつも遊海さんは無茶をし過ぎなんです!!今回は…今回は本当に許さないんだから──!!」
「本当にごめん……無事で、よかった…!」
そして…遊海と翠はお互いに涙を流しながら抱き締め合う、お互いの無事を…愛を確かめ合うように…。
『遊海さん……翠さん……』
「……凌牙…璃緒…」
しばらく泣き続けた遊海達に声を掛ける人影があった、それは…申し訳なさそうな顔をした凌牙と璃緒だった。
その後ろでは遊馬やドルベ達が固唾を呑んで様子を伺っている…。
『俺達……遊海さんや、翠さんを…遊馬を……みんなを、傷つけて……俺──』
「……それ以上は言うな、凌牙……だが、これだけは言わせてくれ」
「私からも…」
遊海と翠は凌牙と璃緒と向かい合う、そして……
「おかえり、よく帰ってきた…!」
「心配したんだから…!!」
『『あ…』』
遊海は凌牙を…翠は璃緒を強く抱きしめ、そう語りかけた……言葉はそれだけで充分だった…。
『ただいま……ただいま!父さん!母さん!!』
『ごめんなさい…本当にごめんなさい─!!』
凌牙と璃緒は大粒の涙を溢しながら遊海達に抱きつく…断たれてしまった4人の絆は…いま再び結ばれた…。
「へへっ……よかったな…シャーク…遊海……サンキューな、アストラル」
泣き崩れる遊海親子の再会を見届けた遊馬は静かに空を見上げる…ハートランドの空には輝く一番星が瞬いていた…。
『うんうん…最高のハッピーエンドだ!良かったね…遊海君!』
それは何処かにある『理想郷』…その中心部に立つ塔の中、千里眼で地上の様子を見ていた花の魔術師・マーリンは嬉しそうな顔で笑っていた…。
『こんなハッピーエンドを見れたのなら、ボクも幽閉塔を抜け出した甲斐があったよ…キャスパリーグも「美しいモノ」に触れて無害化できたし、いやぁ〜良かった良かった!さぁ、遊海君!次はどんな物語を見せてくれるのかな?楽しみにしているよ〜!』
「…マーリン、また何かしていると思えば…余程、善い人間を見つけたのですね…」
穏やかな風が吹き抜ける理想郷に明るい声と小さく苦笑する人物の声が融けていった…。