転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話   作:S,K

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幕間〜反逆の牙と反逆の翼〜

『おかえりなさいませ!社長!理事長!』

 

「うむ…マルコ襲撃事件の詳細を聞かせろ」

 

『はい…』

遊勝塾から撤退し、LDS内の『司令室』へ戻って来た零児は発生したトラブル…LDSの講師・マルコへの襲撃事件について説明を求める。

 

 

『はい、事件が発生したのは舞網市のNLD-38地区…午後17時54分の事です、強力な()()()()()()()の反応を検知しました…!』

 

「エクシーズ…」

現場責任者の言葉を聞いた零児は眉間に皺を寄せる…これ程強力なエクシーズ召喚を使える者はエクシーズ次元の人間のみ…その時、凌牙は気を失っていたはずであると…。

 

 

「……マルコの()()は?」

 

「かなりの重傷です…レオ・コーポレーションの系列病院で治療中との事です……また『黒い翼』と言葉を残したと……」

 

「黒い翼……凌牙もその病院にいるはずだな?話を聞きに行くぞ」

 

『社長、お待ちください!…もう1つ、ご報告が…』

秘書である中島の言葉を聞いた零児は踵を返す…だが、それを止めたのは司令室の責任者だった。

 

「どうした?」

 

『襲撃事件の前、午後16時30分…市内のある場所で()()()()な程強力なエクシーズ召喚の反応…並びに舞網市で()()()()()()()4()相当の揺れを確認しました…その発生元はRIS-40…社長達もその場所にいたとお聞きしました……いったい何が…?』

 

「計測不能……か……」

責任者の言葉を聞いた零児はその時に行われていたデュエルを思い出す…荒ぶる海神と水晶の斧剣の衝突を…。

 

 

 

「その件は私に預けろ…私が直接、話を聞く……システムのアップグレードを急げ」

 

『……承知しました』

責任者にそう伝えた零児は病院へと向かった…。

 

 

 

 

Side???

 

 

 

コンコンコン

 

 

『……開いてるぜ』

 

「失礼する…目が覚めたようで何よりだ、凌牙」

凌牙が目を覚ましてしばらくした頃、零児が病室にやって来た…。

 

 

『……遊勝塾はどうなった?』

 

「トラブルが起きてね、恥ずかしながら撤退したよ…もう少しで勝てたのだが…」

 

『ハッ、そうかよ……それで、俺は失格か?デュエルには勝てなかったしな』

 

「いいや、合格だとも…あれ程のデュエルを見せられてはな」

 

『そりゃどーも』

遊勝塾の顛末と試験の結果を訊ねる凌牙…零児は彼に合格を告げると、眼鏡を掛け直す。

 

 

「それより、君に聞きたい事がある…君がエクシーズ次元から連れて来た仲間に『黒い翼』を連想する者はいるか?」

 

『黒い翼………ああ、いるぜ……何かやらかしたか?』

 

「LDSの融合コースの講師を襲撃し、重傷を負わせた」

 

『……マジか……あの馬鹿…やっぱり、あの()()を渡さなくて正解だったぜ』

零児の言葉を聞いた凌牙は思わず頭を抱える…。

 

 

『俺はエクシーズ次元から2人の仲間と一緒に来た…1人は沢渡って奴と戦ったユート、そしてもう一人が…黒咲隼、鳥獣族モンスターの使い手だ』

 

「黒咲隼……君達は融合次元の侵攻に対するレジスタンスだと聞いた、何故LDSの講師を襲った?」

襲撃犯の正体を聞いた零児は凌牙に問いかける。

 

 

『……知っての通り、融合次元の奴らは「融合モンスター」をリアルソリッドビジョンで実体化させ、エクシーズ次元に攻め込んできた……そのせいでエクシーズ次元の人間は「融合召喚」そのものを嫌ってる……そして黒咲は……アカデミアに()()()()()()

 

「っ…!!」

凌牙の証言に零児は息を呑む、リアルソリッドビジョンを使った『戦争』…その様子がすぐに想像できてしまったからだ…。

 

 

『俺達がこのスタンダードに来たのは…「アカデミアとスタンダードが繋がっているらしい」って情報を得たからだ……そして捕らえたアカデミア兵のデュエルディスクを鹵獲・解析して…片道切符の次元転移装置でスタンダードに来た……まぁ、帰ろうと思えば()()()()()なるんだが……話が逸れたな……とにかく、黒咲は妹を奪ったアカデミア、そして「融合召喚」に強い敵意を持ってる…一応は説得しておいたんだが……悪かった』

 

「君が謝る必要はない……それは私の()の犯した罪によるものだ……すまない」

 

『……謝るのは俺も同じだ…すまねぇ、黒咲の奴は俺が止める』

 

「…そうしてくれるとありがたい、その黒咲という男もなかなかの実力のようだからな…」

お互いに謝罪しあう零児と凌牙…2人は黒咲の凶行を止める事を合意した…。

 

 

 

「……ところで、君にもう1つ確認したい事がある」

 

『なんだ?』

 

「君は……()()()エクシーズ次元の人間なのか?」

 

『ふっ…なんだよ?いきなり…』

零児は一転、鋭い目を凌牙に向ける…!

 

 

「先程の榊遊希とのデュエルで君が召喚したモンスター…その召喚エネルギーはレオ・コーポレーション最新鋭の機械でも計測しきれなかった……明らかにあのカードはこの次元…いいや、おそらくはどの次元にも存在しない程の力を持っている……君は()()だ?」

 

『……悪いな、それは()()話せねぇ……お前達には融合次元の対処に集中して欲しいからな』

 

「……融合次元以上の()の存在が…?」

 

『敵……いいや、そうじゃねぇ…とにかく融合次元を止めれば()()()()()は避けられるってだけだ……()()は世界を救う為にこの世界に来た…それは嘘じゃねぇ』

 

「……その言葉、信じるぞ」

零児の問いに意味深な事を伝える凌牙…その瞳は揺らがず…零児はその言葉を信じるしかなかった…。

 

 

 

 

『それから…頼みがある』

 

「なんだ?」

 

『榊遊希…あの人を、これ以上傷付けるような事はしないでくれ』

 

「……まさか、知り合いなのか?彼は記憶喪失だ…エクシーズ次元からやって来た、と?」

 

「あの人は俺の……俺達()()にとって1番大切な人……かも、しれねぇんだ」

 

『……?』

初めて穏やかな表情を見せた凌牙…零児はその瞳に『希望』を見たような気がした…。

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

『さて…と、とりあえず協力関係は締結できた……一旦、合流だな』

遊勝塾の戦いの翌日、退院した凌牙はとあるビルの屋上でデュエルディスクの通信機能を起動する。

 

 

『こちら凌牙!ユート、黒咲、聞こえるか?』

 

『聞こえるぞ』

 

『…なんだ』

通信に2人の少年が応える…だが、明らかに片方は機嫌が悪かった。

 

 

『LDSに関する情報を共有したい…埠頭の倉庫に集合してくれ』

 

『了解した』

 

『…わかった』

凌牙の呼び掛けに2人の少年は頷いた。

 

 

 

………

 

 

 

『なんだと…!?LDSと同盟を!?』

 

『ああ、あいつらは()()だ…融合次元とアカデミアとはまったく関係ない……むしろ、融合次元と戦う為の部隊を組織しているそうだ』

 

『信じられるか…!!融合召喚を使う奴らだぞ!?』

 

『落ち着け!隼!』

舞網市の倉庫街…そこで3人の少年達が話し合っていた…1人は凌牙、もう1人は紫色のメッシュが入った黒髪の少年、ユート…もう1人は長身のでフードを被ったような髪型をして、赤いスカーフで口元を隠した男…黒咲隼だった。

 

 

『黒咲、融合召喚を使うからって必ずしも「悪」ってわけじゃない…この次元に来る前に伝えたはずだ、そして…この次元の人々はまだ「戦争」を知らないと…』

 

『ああ、そうだろうな…!昨日、蹴散らした融合使いからは鉄の意思も、鋼の強さも感じなかった…!!この次元の奴らは腑抜けばかりだ!!』

 

『……それで良いんだ、本当の意味の「戦争」なんて知らないほうが良い……知るのは戦う()()がある奴だけで十分だ』

 

『…貴方が言うと説得力が違うな、凌牙……流石はレジスタンスの()()のリーダーだ』

『融合召喚』を使うと言うだけでLDSを敵視する黒咲を凌牙が宥め…ユートはその言葉に頷く…。

 

 

『そして…LDSの科学力はなかなかのモンだ…力を借りれば()()()()されちまった人達を助ける近道になるはずだ……分かってるだろ?』

 

『くっ…』

 

『隼…』

凌牙の言葉に黒咲は顔を歪める。

 

 

『人間のカード化』…それが融合次元の齎した1番の災厄なのだ…。

 

 

『カイ……天城に研究を任せるのも限界がある……これより、俺達レジスタンス代表はLDSの「対融合次元部隊」に合流、来るべき戦いに備える!』

 

『くっ…分かった…!』

 

『了解だ』

凌牙の言葉に黒咲は渋々…ユートは静かに頷いた…。

 

 

 

 

 

「お願い!!私に融合召喚を教えて!!」

 

「えぇっ!?ここで!?」

 

「お願い…!強くなりたいの!!」

 

 

 

 

『『っ…この声は…!?』』

話が纏まったその時、倉庫街に少女の声が響く…その声を聞いた黒咲とユートは顔色を変える…!

 

 

『瑠璃…!瑠璃─!!』

 

『っ…!待て!黒咲!!』

 

『この声…しまった、柊柚子か…!!』

血相を変えて飛び出して行く黒咲…その行動を見た凌牙はその()()に気が付いた…。

 

 

 

 

Side柚子

 

 

 

「お願い…!私も、遊勝塾を守る為の力になりたいの…!!あの光津真澄に勝ちたい!」

 

「だから…同じ融合使いのボクから融合召喚を習いたいの…?」

 

「そうなの…!お願い!!」

 

同じ頃、とある倉庫で柚子が年下である素良に頭を下げていた…遊勝塾防衛戦で役に立てなかった柚子、彼女は真澄へのリベンジ…そして遊勝塾を守る力を手にする為、融合使いである素良に修行を頼んでいた…。

 

 

「ど、どうしようかな…ボクが教えたら()()()()()()()()()()…」

 

「それなら良いじゃない!お願い!!」

柚子に頼まれるも、何故か渋る素良…その時だった!

 

 

ガラガラガラ!! 

 

 

『瑠璃!!』

 

「「えっ?!」」

倉庫の扉が勢いよく開き…明らかに不審者と思われる男が姿を現した!

 

 

『瑠璃…!なぜ、ここに…!逃げたのか?自力で脱出を…!?』

 

「えっ…?だ、誰…!?」

不審者…黒咲はスカーフとゴーグルを取って柚子に歩み寄る…その様子は探していた大切な人を見つけたようだった…だが、柚子は()()()()()()…事態に戸惑っていたその時───

 

 

ゴスッ!

 

 

『かはっ…!?』

 

『落ち着け、黒咲…その子は()()()()じゃない…!』

 

「あ、あなた…LDSの…!?」

 

「(今の動き…()()()()()()()…!?)」

 

その時、柚子を庇うように現れた人影が黒咲の腹に拳を叩き込む……その人物は遊勝塾とLDSの戦いの際に遊希と戦った人物……凌牙だった。

 

 

『悪かったな、コイツの()()()だ……コイツの妹が…お前とよく似た顔をしてるんだ』

 

「あ…そうなん、ですか…?」

失神した黒咲を支えた凌牙が柚子に理由を告げる…その表情はデュエルの時と違い、穏やかなものだった。

 

 

『凌牙!隼!大丈……きみは…!』

 

「あっ…!?あの時のエクシーズ使い!?」

続いてやって来たのは沢渡と戦ったエクシーズ使い、ユート…2人は思わぬ再会を果たした…。

 

『……ユート、黒咲を連れてBポイントへ行け…お前がいると話がややこしくなる』

 

『……わかった、説明は任せる』

凌牙から黒咲の身柄を受け取ったユートはすぐにその場を離れた…。

 

 

『……柊柚子、それに…紫雲院素良…だったな、見ての通り、2人は俺の仲間だ……この前は危ない目に遭わせて悪かったな……あの人は……榊遊希はどうしてる?』

 

「……遊希さんは……まだ、病院で眠ってるわ」

 

『……そうか……俺達はLDSに所属する事になった…そのうち、また会う事もあるだろう……()()()()()

 

「えっ…?」

凌牙はそう語りかけて踵を返す…。

 

 

『もし、困った事があれば……あの人を頼れ、あの人はきっとお前達を助けてくれる──』

そう言うと凌牙は姿を消してしまった…。

 

 

「いったい、なんだったの…?」

 

「(あの3人、明らかにこの世界の人じゃないね……気を付けようか……)」

突然の事に戸惑う柚子…そして素良は彼らへの警戒を強めていた…。

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

『凌牙、聞きたい事がある……少し嬉しそうに見えるが…気の所為か?』

 

『ん……ああ、ちょっとな…』

少し時間が経ち…黒咲を看病していたユートが凌牙に訊ねる。

 

 

『前に少し話しただろ?「1人で融合次元を相手にできるデュエリスト」がいるってさ……』

 

『まさか、見つけたのか!?』

 

『ああ……でも、記憶も力も…全部失っちまってた……でも、きっとあの人は戻ってくる…!俺のデュエルで、きっと…!』

ユートに『希望』を見つけた事を伝えた凌牙は拳を握る…。

 

 

 

『(父さんが目指した『最善』…俺が少しでも助けになる…!次は舞網チャンピオンシップスの融合次元襲来…それまでに、なんとか…!)』

『1つ目』の運命を変えた凌牙…最善を目指す()()の戦いは始まったばかりである…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キィン─

 

 

《フォウ、フォーウ!》

 

『おっ…来てたのか、フォウ……あの人は病院にいる……頼んだぜ』

 

《フォウ!》

 

そして…『英雄』の愛猫がこの次元へと足を踏み入れた…。

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