転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話 作:S,K
「素良…」
「……大丈夫だ、LDSには優秀な医療チームがあると聞いてる…」
「デュエルで、こんな事になるなんて…」
夕暮れの舞網市…LDS内にある保健室、黒咲とのデュエルに敗れた素良はそこに担ぎ込まれた…。
治療の為に面会謝絶状態であり、廊下では遊矢・柚子・権現坂・修造塾長、そしてジュニアコースの3人が心配そうな顔で待っていた…。
「遊矢…遊希さんは…?」
「さっき、母さんから連絡があったよ…とりあえず、大丈夫だって…」
「素良と黒咲のデュエルを見て、体調を崩したと言っていたが……確かに、あのデュエルは……」
そして、もう1つの心配の種…それは家で体調を崩した遊希の事だった。
素良のデュエルが終わった直後、洋子の端末に緊急連絡が入る…それは城之内から遊希が倒れた事を知らせる連絡で…洋子は飛ぶような早さで家に帰っていた…。
「……黒咲、隼…なんで、素良にあんな事を…!」
遊矢は何もできないまま、黒咲に対する怒りで拳を握り締めた…。
………
「じゃあ、俺は子供達を送ってくるから…素良の事、頼んだぞ?」
「うん…」
夜の帳が落ちた舞網市、修造はジュニアの子供達を送り届ける為に素良を遊矢達3人に任せ、LDSを離れていった…。
「……どう思う?黒咲が、素良をあれだけ痛めつけた事…」
「彼は…『融合』を憎んでいた……それは仲間を救う為だって、ユートが言っていたわ…」
「ユート…オレに似てる、黒い服の…」
修造が去った後、遊矢は今回の出来事について2人に問いかける…黒咲の「融合」に対する憎しみ、素良の豹変と「狩り」と言う言葉……遊矢達にはあまりにも情報が少なかった…。
「ユートに関しても、何か変だ…柚子のブレスレットが光ると消えるなんて」
「うん…私、最初は遊矢が変装してるのかと思ったもん……遊矢はエクシーズを使わないから
遊矢と柚子はまず、ユートについて考える…沢渡から柚子を守る為に姿を見せたユート…彼は柚子のブレスレットが光を放つと「消えてしまう」という特徴を持っていた。
「そして…次に起きたのは、LDSの融合コースの講師が襲われた事件…あの時、LDSは勝負を捨ててまで帰っていったな……」
「なぁ、もしかしてなんだけど…その講師を襲ったのって…黒咲だったんじゃないか?」
「えっ…どうしてそう思うの?」
権現坂の言葉に遊矢は突飛の事を言う遊矢に柚子が問いかける。
「ほら、LDSの理事長が言ってただろ『沢渡を襲った件は相手方から謝罪があった』ってさ…つまり、ユートはLDSを襲わない…それで、仲間らしい凌牙は遊希兄とデュエルしてダウンしてた……それで、黒咲は…何かで講師が『融合』使いだって知ったから襲いかかった……とか?」
「待て、それでは話が合わん!それでは仲間内の連絡が取れていないようではないか?仲間なら…」
「それは…黒咲は、怒りすぎてて…融合使いを見境なく襲おうとしてた……とか…?」
「あ…それ、あり得るかも…凌牙が黒咲の事を殴って止めてたし…」
「う〜む、そんなもんか…?」
遊矢の予想に柚子は頷く…黒咲は柚子を「妹」と見間違え、凌牙の拳で止められていたからだ。
そこから…黒咲は決めたら止まらない性格だと予想したのだ。
「それで…凌牙はユートや黒咲のリーダー格、だったのだな?」
「うん…ユートが彼の言葉を聞いてたから…間違いないと思う」
「それに、気になる事があるんだ……遊希兄とのデュエルの時、少しだけ凌牙の様子がおかしくなかったか?」
「あっ……たしか、ペンデュラム召喚が終わった時…何か詰め寄ってたような…」
「あの時、遊希は……胸元のペンデュラムを凌牙に見せていたな………まさか、凌牙は記憶を失う前の遊希を…知っていたのか?」
「でもそれじゃあ……あんな激しい攻撃をした理由が……」
「遊希さんに強いショックを与えて……記憶を戻そうとした、とか…?」
「「それだ…!」」
そして話題は凌牙の件に移る、遊勝塾を賭けた4番勝負でぶつかった凌牙と遊希…その時の凌牙の様子は明らかにおかしかった、そこから凌牙と遊希が知り合いだったのでは?という仮説が生まれる……『三人寄れば文殊の知恵』…その言葉通り、遊矢達は少しずつ真実に近付いていく…。
「とりあえず、遊希と凌牙の件は置いておく……素良と黒咲のデュエル中の話を総合すると…ユート・黒咲、そして凌牙は『エクシーズ塾』の所属で…素良達『融合塾』が彼らに危害を加えた…と言う話だったが…」
「融合とエクシーズ…でも、なんだろう?塾同士の争いにしては規模が大き過ぎる……もっと、大きな力が動いているような…」
「ぬああああ!わからん!!この権現坂、デュエル以外で頭を使うのは苦手なのだぁ!!」
「こんな時、遊希さんがいてくれたら…あの人なら、きっともっといい答えを見つけてくれるのに…。」
しかし、彼らはまだ中学生…真実を追求するにはまだ幼すぎた…。
「とにかく、素良が目を覚ましたらもう一度聞いてみよう…黒咲達との間に、何があったのか…」
「そうね…」
話し合いの末、遊矢達は素良に話を聞く事を決めた…その時──
『おい!彼らは何処に行った?!もう外に出てしまったのか!?』
『すぐに本社に連絡を!紫雲院素良が逃げ出した!!』
「「「なんだって!?」」」
にわかにLDSのエントランスが慌ただしくなる…それは、素良の脱走のせいだった…!
Side???
キィン──
「よし、こんなモンだな…痛みは取れたか?黒咲」
「ああ、元々かすり傷だ…治してもらう程ではない」
「そう言うなって…まだ大会は続くんだからよ…」
LDSに設けられた凌牙達の部屋、そこで黒咲は凌牙による治癒を受けていた…素良との激戦の中、上手く受け身はとっていたが黒咲も大小の傷を受けていた…。
「奴は……融合の手先はどうなった?」
「今は治療室で応急処置中らしい…幸いにも傷は浅いらしいから、すぐにレオ・コーポレーションに身柄を移すって零児が言ってたぜ」
「融合の手先め…必ず、瑠璃や仲間達の行方を…!!」
「……落ち着け、黒咲……アイツはおそらく潜入担当……あまり情報を知らされてねぇかもしれねぇ、とにかく零児の尋問待ちだな…」
「くっ…!」
凌牙は融合の手先…素良から情報を聞き出そうとする黒咲を宥める、潜入スパイはあまり情報を持っていない事が多いと知っていたからだ。
「……そういえば、ユートはどうした?さっきから姿を見ないが…」
「ん…?確かに、夕飯の時はいたが……ユート!聞こえるか?」
黒咲の言葉に凌牙はユートへと連絡を取ろうとする…。
『っ…凌牙、すまない!紫雲院素良を逃した!!』
「なっ…!?お前、何をやってんだよ!?」
通信の向こうでユートは息を切らせながら凌牙に謝罪する…!
『人気のない内に、融合次元と仲間達の行方を聞き出そうとしたんだが!黒咲に再戦を挑むと、LDSを飛び出して行った!!』
「っ─たくっ!お前も猪突猛進系だって忘れてたぜ!!」
LDSによる尋問より前に素良から情報を聞き出そうとしたユート…凌牙は普段、おとなしい故に忘れていた…ユートの抱く『怒り』もまた、大きい事を…!
「黒咲!お前はレオ・コーポレーションの司令室で待機!指示があるまで後方支援を頼む!!俺はユートと紫雲院を追う!!」
「っ…!?何を言っている凌牙!奴が望んでいるのは俺との!」
「
「っ…!!」
威圧が込められた凌牙の言葉に黒咲は押し黙る…その眼は歴戦の勇士の眼光を宿していた…。
「……黒咲、俺はお前を信頼しているから
凌牙はそう言い残すと部屋の窓から
101
「っ…凌牙、ユートを……友を頼む…!!」
夜闇に紛れるように現れた黒き槍術士と共に凌牙は空を駆け、ユートの信号を追い掛けた…。
Side Out
『もう…!しつこいな!!ボクはアイツを倒さなきゃならないんだ!!黒咲隼を!!』
「そんな体で、隼と戦おうと言うのか?」
『そうだ!今度は、絶対に負けない!!エクシーズの奴は、みんなボク達に狩られる運命なんだ!キミも黒咲も!
「っ…」
『本気でやれば、ボクの方が上だって証明してやる!!アイツを庇うつもりなら…容赦しない!!』
ユートは黒咲の姿を探して街を走り回っていた素良を舞網中央公園へと追い詰める…だが、エクシーズに負けた事で殺気立っている素良は…その矛先をユートに向ける…!
『キミ達が探してる奴が何処にいるかは知らない…たぶん、カード化されちゃってるんだろうけど…戻す方法は1つだけある…それは
「貴様…!」
故郷や奪われた人々を貶す素良…ユートはその考えを諌める為に、剣を取る!
『まずはキミから…そして黒咲も!凌牙も!!この世界のエクシーズ使いは、ボクが滅ぼしてやる!!』
「そうはいかない…!瑠璃を救う為、まずは貴様を止める!!」
「『デュエル!!』」
融合とエクシーズ…2つの次元のデュエリストの衝突が始まった…。
「素良…それに、ユート…!!」
デュエルが始まってしばらく…素良を探していた遊矢がついに素良、そしてユートのいる場所へ辿り着く…そこで行われていたのは…。
デュエルダイジェスト ユート対素良
『バトルだ!「デストーイ・シザー・ベアー」で「幻影騎士団ブレイク・ソード」を攻撃!!』
「ぐあっ…!?だが、この瞬間『ブレイクソード』の効果発動!フィールドを離れたとき、このカードのエクシーズ素材となったモンスターをレベル4として特殊召喚する!蘇れ!『幻影騎士団サイレントブーツ』『幻影騎士団ダスティローブ』!幻影騎士団は斃れない…何度打倒されようと甦る!これが、オレ達レジスタンスの闘いだ!!」
『フン…!「シザーベアー」の効果発動!破壊した「ブレイクソード」を装備し、その攻撃力分強くなる!キミのエクシーズモンスターなんて、所詮ボクのモンスターの栄養にしかならないんだ!』
「素良…!」
目の前で繰り広げられるのは楽しい『デュエル』ではなく…互いの誇りを、怒りをぶつけ合う『決闘』…その鬼気迫る様子に遊矢は動揺する…。
そして、反逆の『牙』が目を覚ます!
「漆黒の闇より…愚鈍なる力に抗う、反逆の牙!!いま、降臨せよ!エクシーズ召喚!!現れろ!『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』!!」
光の爆発と共に、エクシーズの名を背負う反逆の龍が現れる!!
「ダーク・リベリオン、エクシーズ・ドラゴン…!」
『フン…たかが攻撃力2500のモンスター出してどうなるの……まさか…!』
咆哮を轟かせる反逆の牙をあざ笑う素良…だが、思い出してしまった…面白半分で見ていた遊希とのデュエルで見せた力を!
『「ダークリベリオン」の効果発動!ORUを1つ使い、相手モンスターの攻撃力を半分にし、自身の攻撃力をその数値分アップする!トリーズン・ディスチャージ!!』
翼から放たれた紫電がクマの魔物を拘束、その力を奪い去る!
『(ま、マズい!もう1つのORUを使われたら!?)』
「
『なにっ!?うわああああ!?』
ダークリベリオンはニ回目の効果を使わずに攻撃…素良は爆発に吹き飛ばされる!
「この、衝撃…!?リアルソリッドビジョンのフィールド内じゃないのに…!?」
「オレはカードを伏せ、ターンエンドだ」
攻撃の余波を受けた衝撃に遊矢は動揺する…そして、ユートはそのままターンを終える…。
「っ…素良!素良!!大丈夫か!?」
『っ…!あっちいけ!遊矢には関係ない!!』
「な、何を言ってるんだ!?病院で休んでなきゃいけないのに…!」
『うるさい!!』
そして遊矢は思わず、倒れ込んだ素良に駆け寄る…だが、返ってきた答えは──拒絶だった。
『あいつ、ボクに手加減なんか…!馬鹿にしやがって!!絶対に許さない!!』
「素良!もう止めるんだ!!」
『うるさい!!ボクはまだ本気じゃない!ボクの方が強いんだ!』
「そんな事…!次の大会で、いつだってできるだろ!?」
『
必死に素良を説得しようとする遊矢…だが、素良は怒りに支配され…遊矢の言葉は届かない。
「……その通りだ、だが…敵とはいえ、これ以上傷付けるのは忍びない…おとなしくサレンダーするなら、身の安全は考慮しよう」
「お前…素良に、何をするつもりだ…!」
ユートの言葉に遊矢は素良を庇うように前に出る…黒咲も、ユートも…素良に対して危害を加えようとしていると感じたからだ…。
『……巨大な建物も、蟻の一穴から崩れると言う…キミには、融合と言う「壁」に穿つ小さな亀裂になってほしい』
「……これ以上、
遊矢はデュエルディスクを構える…かけがえのない、仲間を守る為に…!
Side???
「榊遊矢…!」
レオ・コーポレーションの司令室…零児・中島・黒咲、そして零児の義弟、零羅は監視カメラを通じて、デュエルの行く末を見守っていた…。
「ここで乱入してくるとは…紫雲院素良はアカデミアの情報を持つ、貴重な存在…このまま続けさせては…!」
「…いや、既に
中島のデュエルを止めるべきだと言う意見を聞いた零児はそう呟く…彼の知る
ビビーッ!ビビーッ!
「何事だ!」
『っ…市内臨海地区、倉庫街で強力なペンデュラム召喚反応、さらにそれを上回る
「なに…!?」
その時、司令室に警報が鳴り響く…オペレーターが強力な召喚反応の出現を伝える…!
「中島、沢渡のペンデュラムデッキは?」
「既に回収しています……まさか…!」
「………この街で、ペンデュラム召喚を扱えるのは…………カメラを!」
『っ……ダメです!回線破損!映像が出ません!!』
司令室がにわかに慌ただしくなる…零児はその意味を理解していた…。
Side Out
乱入デュエルダイジェスト ユート対素良対遊矢
PENDULUM!!
「ペンデュラム召喚!雄々しくも美しき二色の眼!『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!!」
ユートと素良のデュエルに乱入した遊矢は『星読みの魔術師』『時読みの魔術師』によってペンデュラム召喚…エースたる二色の眼の龍を呼び出す…。
ドクン…
「っ…?(なんだ?体が、
「っ…!」
その時、遊矢は嫌な熱さを感じ取る…怒りで頭に血が昇るような感覚ではない───
《グギャオオン!!》
《グオオオ…!!》
キィン─!
そして、呼応するように2体のドラゴンが咆哮する…呼び合うように、歓ぶように…!
「っ…バトルだ!『オッドアイズ』で『ダークリベリオン』を攻撃!」
「やらせない!永続罠『
遊矢はその「熱さ」を振り払うようにバトルを仕掛ける、それはペンデュラムモンスターであるオッドアイズの性質を利用した「相討ち」狙い…だが、それを霧の魔剣が阻む…!
「『時読みの魔術師』のペンデュラム効果!ペンデュラムモンスターを対象にした罠カードの発動を無効にする!インバース・ギアウィス!!」
「その瞬間、罠カード『ブービートラップE』を発動!セットされた『幻影霧剣』を相手に見せる事で、その効果を得る!」
「なっ…!?」
黒衣の魔術師の力で対処しようとした遊矢…だが、ユートは二の矢でそれを阻み、遊矢の攻撃を封じた…。
『っ…!!何もできないなら、あっちにいけ!!』
「素良っ…!?」
何もできずにターンを終えた遊矢を素良が突き飛ばす…そこにエンタメデュエルを楽しんでいた面影はない、今の彼は…怒りに囚われた駄駄っ子のようだった。
『奴はボクの獲物だ!ボクを馬鹿にして…手を抜いて!!遊矢は手を出さないで!!』
「獲物って…なんだよ、それ…!黒咲とのデュエルの時も…ハンティングゲームの獲物だって…!!柚子から聞いたんだ、お前の…『融合』の仲間が、黒咲の妹や仲間を連れ去ったって!!」
「っ…」
素良の異常な様子を見た遊矢は素良に問いかける…素良は、その仲間達は黒咲やユートに何をしたのかと…。
「柚子は、ユートから聞かされたと言った…!教えてくれ、ユート!!どうしてお前達はそんなに憎しみ合うんだ!!」
『ハッ…答えられる訳ないじゃん、自分達がいかに弱いか……そいつは
「エクシーズ、次元…?」
ユートに対しても問いかける遊矢…それに答えたのは素良だった。
ユート達は、異世界からやって来た人間なのだと…!
「それは違う!我々はまだ、制圧などされていない!!誇り高き勇士達が抗う中、オレは!黒咲は!凌牙は!『融合次元』に対抗する為に、この世界に来たんだ!!」
「融合、次元…?次元って、どういう事だよ!?」
2人の間で飛び交う『次元』という言葉…それは、遊矢には理解する事ができなかった…。
『フン…ユートも黒咲も、遊希と戦った凌牙もこの世界の人間じゃない、エクシーズ次元という
「別の、世界…!?」
『ボクの仲間達は誇り高く戦い、エクシーズ次元に勝った!ボクが負けたら、その仲間達の『栄光』に泥を塗る事になる!なにより…ボク自身が許せない!!アカデミアの特進クラスでもっとも優秀と言われた!特別任務に抜擢された、このボクが!!』
「……情報統制や、情報操作も…ここまでやるのか…!」
融合次元の…アカデミアとしての『誇り』を叫ぶ素良…だが、その姿は遊矢やユートからみれば…
『ボクが…ボクがエクシーズの負け犬なんかに負けるなんて、あり得ない──!!』
激情のままにデュエルを続け、ユートを倒そうとする素良…だが──。
キィン─!
『な、そんな!!まだ!せめて、このエクシーズ使いを倒すまでは!アカデミアに帰りたくな──!!』
バシュン!!
「そ、素良─!?」
『切り札』を召喚しようとした素良のデュエルディスクが突如として発光…その意味を知っていた素良は取り乱し、戦おうとしたが…粒子となって遊矢達の前から消えてしまった…。
「お、おい…!?どうなってるんだよ!?素良は!?」
「心配するな…奴は次元を越えた、奴の世界…融合次元に強制送還されたんだろう、紫雲院素良も…この世界の人間ではなかったのだ」
「自分の、世界…!?でも、あいつは怪我を!」
「アカデミアにも医者はいる…あちらで治療を受けるのだろうさ」
「アカデミア…素良が言っていた……」
「……アカデミアは、侵略者・融合次元の
「デュエル、戦士…!?」
素良が消失し、取り乱す遊矢…それを落ち着かせるように、臨戦態勢を解いたユートはアカデミアについて語った…。
「……ふぅ……紫雲院素良が消えた事で、今はオレのターンだが……戦う意義が無くなってしまったな…」
「えっ…」
ユートはそう言うと速攻魔法『非常食』を発動し、フィールドの『幻影霧剣』を消し去る…それは遊矢が攻撃できるようになったという事だが…。
「攻撃したいのなら…攻撃するがいい」
「っ…!!できる訳、ないだろ!?」
ユートの言葉に遊矢はデュエルを放棄…2人のデュエルは終了した。
デュエル終了
「ユート、お前は…素良を融合次元を滅ぼす為の、蟻の一穴にすると言った……だけど、素良が消えた事で…お前は
「榊遊矢…」
遊矢はデュエルの中でユートの事を少し知る事ができた…何度もあった素良を倒すチャンス、それを逃してまで…ユートは素良を気遣っていたからだ…。
「お前、本当は……戦いたくなかったんじゃ、ないのか?」
「……奴ら、融合次元は侵略者だ……エクシーズ次元、オレ達の故郷を蹂躙し、親友の妹を連れ去った…!オレ達の故郷は…奴らのせいで、戦場となった…!」
「エクシーズ次元が…!」
「戦うしかなかった」…そう暗に伝えるユート、彼はエクシーズ次元の現状について遊矢に語る。
平和だった故郷に突如として『アカデミア』のデュエル戦士が攻めて来た事。
突然の襲撃に抗う術を持たなかった人々は謎の力で「カード化」されてしまった事。
陥落する寸前、凄まじい強さを誇る
そして…一縷の望みに掛けて、エクシーズ次元からこの世界…遊矢達の世界に助けを求めに来た事を…。
「人がカードに…!?そんな…そんな事があるわけ…!?デュエルを使って、世界を侵略するなんて…!」
「遠い世界の自分には、関係ない事だ……と思うか?だが、キミの目に見える事だけが真実ではない…!見えない所では、様々な事が起きているんだ…!」
ユートの言葉を聞いてなお、遊矢は現実離れした「次元戦争」を受け入れる事ができない…しかし、ユートは現実を遊矢に突きつける。
「カード化にしても、そうだ…!オレ達の目の前で、何人もの人々がカードに変えられていった…!」
「っ…オレ達の知らない世界…融合…エクシーズ……本当に………はっ…!?」
自分の「知らない」世界で起きている戦争の痛ましさを知る遊矢…そして、1つ気付いた事があった。
「ユート、融合やエクシーズの名を持つ世界があるのなら…」
「確実に存在するだろうな…オレも知らない、
遊矢の指摘…シンクロ次元の存在を認めるユート…だが、ここでもう1つの「疑問」が生まれる。
「なら…オレのいるこの『世界』は、なんて呼ばれているんだ…?」
「融合次元の奴らは…この世界を『スタンダード』と呼んでいた、全ての基礎となる『中心』の世界…という事だろう」
「融合…エクシーズ…シンクロ……そして、スタンダード……世界は4つに分かれていて、融合次元はエクシーズ次元を攻めていて…いったい、なんでそんな事に…!!」
『スタンダード』…自分の住む世界の名を知った遊矢は困惑する、なぜ…融合次元はエクシーズ次元を襲撃したのかと…。
「……次元がどうのってのは、オレにはさっぱりわからない……でも、これだけは解る!!デュエルは……デュエルは
「遊矢…」
平和な世界で暮らしてきた遊矢にはあまりにもスケールが大きい事はわからない…しかし、デュエルは争う為の手段ではない事だけは分かっていた。
その記憶を中に…人々の歓声と共に、人々の心を一つにした父・遊勝の姿を思い出しながら…。
「やっと、最近分かってきたんだ!!近付いてきたんだ!オレの信じるエンタメデュエルに……オレは、デュエルで人を傷付ける奴を、許さない!!」
「お前…もしかして…?」
沢渡戦で感じた一体感…エンタメデュエルの姿を思い出した遊矢はユートへと叫ぶ、そこでユートは何かに気付いた……遊矢に似た事を教えてくれた人物の事を…。
だが、それを遊矢に伝える前に──
キィン─! ドォン!!
「な、なんだ!?」
凄まじい閃光と突風が2人へと襲いかかった…!
Side???
「どうした!?」
『わかりません!!回線が切断されました!!』
『周囲一帯のカメラも反応しません!?』
「なんだと…!?」
レオ・コーポレーション司令室、カメラで様子を窺っていた零児達だったが…突然の閃光によって状況を知る事ができなくなっていた…。
「中島、すぐに舞網中央公園へ向かえ…!」
「はっ!!」
零児はすぐに中島へと指示を出す…その時だった。
『っ…!?舞網市倉庫街で計測不能レベルのエクシーズ召喚反応を確にっ…うわあああ!?』
ボン!!
「っ…!?凌牙!!」
「待て、黒咲!…行く事は許さん…!」
倉庫街で計測不能の召喚反応を認識した瞬間、オーバーロードした計測機器が爆発する…黒咲はその反応は凌牙によるモノだと気付き、飛び出そうとしたが…零児が一喝する。
「我々は…報告を待つしか、ないのだ…!」
「っ…!」
黒咲も零児も…強く拳を握り締める、全ては…融合次元に対抗できる『槍』を得る為に…。
Side Out
「な、なんだ…!?」
『いっ…テテッ…!なんで、こんなモンが突っ立ってやがんだよぉ…!』
閃光が収まり、遊矢は辺りを見回す…そして、街灯を薙ぎ倒し、頭を押さえる…バイクに乗った何者かの姿を見つけた…!
『たくっ…また
「っ!?!?(オレに、そっくり!?)」
ライダーがヘルメットを外す…その顔は、ユート…そして遊矢にそっくりの顔をした、青い髪に跳ねた金色の前髪の少年だった。
「お前は…!?」
『アン…?オメェは…!!ここで会ったが100年目!!探したぜ…!』
そしてバイク…Dホイーラーの少年とユートは互いを認識した途端、臨戦態勢に入る…!
「オレに似た奴が、3人…!?ユート、知り合いなのか…!?」
『この前は余計な邪魔が入ってうやむやになっちまったが…サシなら負けるはずがねぇ!!今度こそオメェをぶっ飛ばす!!』
「いいだろう、相手になってやる!!
『何が融合だ!?俺の名前は
「ゆ、ユーゴ…?融合の手先…!?!?」
いきなり火花を散らすユートと
【デュエルモード、オン!デュエルモード、ステンバーイ!!】
『いくぜ、デュエルだ!!』
融合の手先(仮)のバイク…Dホイールのデュエルモードが起動、2人のデュエルが始まってしまった…!
デュエルダイジェスト ユート対
デュエルが進む、ユーゴが使うのはけん玉やメンコなどの玩具をモチーフとした『スピード・ロイド』…シンクロ召喚による連続攻撃でユートを攻めたてるが…ユートは何度でも立ち上がる『幻影騎士団』によってライフを削っていく…。
その中でユートはユーゴが瑠璃を攫った『融合の手先』である事…そしてユーゴもまた、ユートに『大事なモノ』を奪われた事を突きつけ、その戦いは進んでいく…そして、ユーゴは切り札を切る!
『その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て!シンクロ召喚!!レベル7!「クリアウィング・シンクロ・ドラゴン」!!』
「クリアウィング、シンクロドラゴン…!?」
ユーゴのエース、「シンクロ」の名を背負う翡翠の翼が咆哮する!!
『バトルだ!「クリアウィング」で「幻影騎士団ブレイク・ソード」を攻撃!!旋風のヘルダイブ・スラッシャー!!』
「ぬあああっ!?」
急上昇したクリアウィングが烈風を纏いながら突進…首なし騎士を粉砕し、ユートを吹き飛ばす!!
「ぐっ…『ブレイクソード』の効果発動!エクシーズ素材となっていた『ラピッド・グローブ』と『サイレントブーツ』をレベル4にして特殊召喚!!」
『そいつらが戻って来たなら…邪魔者には消えてもらう!魔法カード「ヒドゥン・ショット」を発動!墓地の「SRダブルヨーヨー」を除外し、『幻影騎士団ダスティローブ』を破壊する!!』
ブレイクソードの効果で立て直しを図るユート…そしてユーゴはユートのモンスター…レベル3の『ダスティローブ』を破壊する、その意図は…。
『さぁ…お前のドラゴンを出して来やがれ!!俺がここに来たのは、ドラゴンに導かれたからに違いねぇ!今度こそ決着だ!!』
「決着…望むところだ!!」
「ユート!!」
ユーゴの挑発…ユートはそれに応えてしまう…!
「エクシーズ召喚!!愚鈍なる力に抗う、反逆の牙!『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』!!」
そして、黒き反逆の牙が現れる…その時…!
《グオオオ…!》
《ギシャアアア!》
ドクン!!
「なんだ、これ…さっきより、胸が…熱いッっ!!」
2体のドラゴンが揃った瞬間、遊矢は強い熱さに胸を押さえる…!
「ぐっ……うゥ…!!」
『おっ…おォ…!!』
「ユート…!?」
向い合うユートとユーゴの様子が明らかにおかしくなる…その瞳は狂気を宿していた…!
「よかろう…!決着だ!!『ダークリベリオン』で、貴様を…全てを破壊する!!」
明らかに暴走するユートは反逆の牙へと指示を出す!
「『ダークリベリオン』の効果発動!ORUを1つ使い!『クリアウィング』の攻撃力を半分にする!トリーズン・ディスチャージ!!」
『「クリアウィング」の効果発動!レベル5以上のモンスターが効果の対象になった時!その効果を無効にして破壊する!ダイクロイックミラー!!』
『罠発動!「幻影翼」!その破壊を無効にし、「ダークリベリオン」の攻撃力を500アップする!!』
「か、躱した!!」
2体のドラゴンの効果の応酬の末、ダークリベリオンがクリアウィングを上回る!
「滅ぼす…貴様を……全てを!!」
『全てを破壊し、全てを焼き尽くし…!』
「『全てを消滅させる!!』」
「ユート!!やめろ…!これ以上、デュエルで憎しみをぶつけ合うのは!!」
共鳴し、狂気に支配されるユートとユーゴ…その様子を見た遊矢は…ユートへと叫ぶ…!
「いけぇ!!『ダークリベリオン』!!『クリアウィング』を攻げ…!!」
「や、やめろ!ユート!デュエルは、人を笑顔にするモノだ!人を幸せにするもの…!デュエルは、人を傷付けるモノじゃない!!お前だって、わかってるはずだ─!!」
「はーと、ランド……笑顔……おれは……オレは………───誰も、傷つけたく、ない…!!」
「ユート…!!」
攻撃を仕掛けようとするユートの前に遊矢が立ち塞がる…デュエルの楽しさを、デュエルの持つ力を信じる遊矢の言葉が、ユートの正気を呼び戻す…!
「オレは、これで…ターン、エンドだ…!ぐうっ…」
「ユート!?」
正気を取り戻し、ターンを終えたユートは膝をつく…だが…まだ、終わってはいない…!
『俺の、ターン…!手札から「SRシェイブーメラン」を、召喚!』
ユーゴの場にブーメラン型のモンスターが現れる…!
「っ…!やめろ!!止めるんだ!!」
『「シェイブーメラン」の、効果発動…!1ターンに、1度…自身を守備表示にして、モンスターの攻撃力を300ダウンさせる…!俺は、「クリアウィング」の攻撃力を、下げる…!そして…「クリアウィング」の、効果発動…!ダイクロイックミラー!!そして、破壊したモンスターの攻撃力を自身に加える!!』
「なっ──!?」
ユーゴは未だに狂気に呑まれたまま…クリアウィングが咆哮する!
『バトル、だ!「クリアウィング」で「ダークリベリオン」を攻撃!!旋風のヘルダイブ・スマッシャー!!』
烈風を纏った突進が反逆の牙を粉砕…その勢いのまま、ユートの位置にいた遊矢に襲いかかり…!
「遊矢っ!!」
「ユートッ!?」
正気に戻ったユートが遊矢を突き飛ばし…爆発の中に消えていった…。
ユートLP0
ユーゴWIN…
「っ…ユート!!」
「う、ぐ……」
遊矢は吹き飛ばされたユートへと駆け寄る…その時…。
キィン─!
「えっ…?」
ユートが手にしていた「ダークリベリオン」、そして「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」のカードが発光…周囲は光に包まれた…。
Side???
「ユート…!しっかりしろ!」
「遊矢……デュエルで、笑顔を……」
「えっ…?」
「きみの、力で……世界に、みんなに…笑顔を……」
「オレの、力で…?」
穏やかな光の中…満身創痍のユートは遊矢に自身の願いを託す、そして……
キィン─
全ては、光に包まれた……。
───やはり、こうなってしまうのですね……悪魔の
──しかし、策が無い訳ではありません──
──今は眠りなさい、どうか…悪魔の「狂気」に負けないで……──
光の中に金色の羽が舞い上がった…。
Side Out
「はぁ…はぁ…ユート…ユートがいたの…!?」
光が収まった中央公園に柚子が駆け付ける…ブレスレットの光が、彼女をここに導いたのだ…。
「ゆ、遊矢…?」
「………───」
「遊矢─!?」
そして、立ち尽くす遊矢の姿を見つけた柚子…だが、遊矢は糸が切れたように、地面に倒れ込んでしまった…。
Side???
【スタンダードの様子を探らせていた調査員の記憶を調べたところ…興味深い情報が得られた…】
そこは融合次元…その何処かにあるデュエル戦士養成所『アカデミア』、その玉座の間…。
肉体の一部を機械化した…壮年のスキンヘッドの男が、とある人物へと話しかける。
【おそらく、彼女が私が探し求めた『第4のピース』…名前は、柊柚子…】
玉座の間のモニターに1人の少女…素良の記憶から再現された柚子の姿が映し出される…。
【連れてきてくれるね?……ユーリ】
スキンヘッドの男…アカデミアの総帥、プロフェッサーは控えていた紫色の髪の少年に訊ねる…。
その少年は…ただ、静かに笑っていた…。