転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話   作:S,K

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Ep.19 悪意の戯れ〜飢えた毒龍〜

「ううっ…ここは…」

 

《フォウ!…キュウ〜…?》

 

「遊希!目が覚めたかい…良かった…」

 

「洋子さん…フォウくん……」

意識を失っていた遊希が目を覚ます、最初に目にしたのは心配そうな表情を浮かべた洋子、そしてフォウの姿だった…窓の外からは夕陽が射し込んでいる…。

 

 

「まったく、克也君から連絡を貰った時は驚いたよ…!いったいどうしたんだい?」

 

「…テレビで、素良君とLDSのデュエリストとのデュエルを見てたら…急に、胸が苦しくなって……」

 

「そっか…あの2人のデュエル、だいぶショッキングだったからね……会場のみんなも固まってたよ…」

遊希から当時の状況を聞いた洋子は納得する、黒咲と素良の『戦争』のようなデュエル…遊希はそのデュエルに強いショックを受け、体調を崩したのだろうと…。

 

 

「洋子さん…僕よりも、素良君は…?最後、リアルソリッドビジョンの瓦礫に…!」

 

「大丈夫、ちょっと頭を打っただけで済んでLDSの保健室で治療中だって遊矢から連絡があったよ……遊希は?痛い所とか、苦しさは無い?」

 

「はい…もう、大丈夫です……でも、ちょっとお腹が空いたかも…?」

 

「ふふっ…食べる元気があるんなら大丈夫だね!いま、お粥作ってあげるから!あっ!城之内君にちゃんと連絡するんだよ?すっごく心配してたからね!」

とりあえず、遊希が調子を取り戻した事で安心した洋子は食事を作る為に部屋を出ていった…。

 

 

………

 

 

 

『ったくよぉ!心配かけんじゃねぇって…本当に肝が冷えたぜ?』

 

「本当にごめん!自分でも驚いちゃって……もう大丈夫だから」

しばらくして、通話越しに城之内に謝る遊希…画面の城之内は呆れたような、安心したような表情だった…。

 

『舞網チャンピオンシップスだってまだ始まったばっかりだってのによ!オレと戦う前にリタイアってのは勘弁してくれよ?せっかく新し……いや、なんでもね!』

 

「克也の新しい切り札か…楽しみにしてる!」

 

『だあぁっ!?バッチリ聞かれてたぁ〜!!(良かった…いつも通りの遊希だ…)』

他愛のない話に花を咲かせる遊希と城之内…城之内も普段通りの遊希を見て安心していた…。

 

 

『それよりさ!大会ダイジェストで遊矢とLDSの沢渡って奴のデュエル見たけど…超凄かったな!ペンデュラム召喚とアクションカードの応酬…そして最後の大逆転!』

 

「ああ!あの時の遊矢は本当に遊勝さんみたいだった…きっと、遊矢も『理想のデュエル』だと思ってるはずだよ!帰ってきたらうんと褒めてあげなきゃ…でも……」

 

『ああ…その次の試合、素良って奴は大丈夫なのか?梁山泊塾の奴よりやべー感じだったぜ?』

 

「ああ…怪我は大した事ないって…でも、本当に…()()デュエルだったね…」

 

『それに…ダイジェストだとほとんどカットされてたけど、融合とエクシーズ……ハンティングゲーム……いったい、何の事なんだろうな?仕込みのデュエルにしたって…鬼気迫るって感じだったしよぉ…』

 

「…素良君が話せる状態になったら…話を聞いてみる、彼に何があったのか……どうして、あんな痛ましいデュエルをしたのか…」

そして、話題は今日の大会デュエル…人々を大いに沸かせた遊矢のデュエル、そして…その余韻を悪い意味で吹き飛ばしてしまった素良のデュエルに移っていく……画面を通して、最後しか見ていなかった遊希は…素良の気持ちがわからなかった…。

 

 

 

「とりあえず、今日はしっかり休んで…明日、話を聞くつもりだよ……克也のデュエルも明日だっけ?」

 

『おう!昆虫塾のインセクター羽蛾って奴が相手だ!お前に続いて1回戦突破してやるぜ!だから…待ってろよ?』

 

「ああ!がんばれ!克也!」

 

『おう!じゃあな〜!』

明日の試合に向けて気合いを入れる城之内…遊希は彼へとエールを送り、通話を終えた…。

 

 

「昆虫塾のインセクター羽蛾…たしか、トリッキーというか卑怯な戦い方をするって聞いたけど…大丈夫かな…?まぁ、克也の予想外の戦術と運があれば…きっと大丈夫だな」

対戦相手の嫌な噂を思い出した遊希だったが…城之内ならきっと乗り越えられると不安を振り払う…。

 

 

 

「さて…本当は遊矢が帰ってくるまで起きてたいけど、早めに休も──「なんだって!?素良が病室から逃げ出した!?」…えっ?」

そして、翌日の事を考えて早めに寝ようとした遊希…そこへ洋子の驚いた声が聞こえてきた…!

 

 

「洋子さん!?素良君が、どうしたんですか!?」

 

「遊希…遊矢からでね…素良が、LDSの病室から逃げ出したらしいんだよ…!怪我だってしてるのに…!」

 

「ええっ!?」

遊希は部屋から飛び出し、洋子に状況を聞く…それは素良が行方を晦ましてしまったというモノだった…。

 

 

「っ…僕も、探しに行きます!!」

 

「遊希!アンタは休んでな、本調子じゃないんだから…!」

 

「本調子じゃないのは素良君も一緒です…!リアルソリッドビジョンのデュエルであんな目に遭ったら…早く連れ戻さないと!」

 

「……わかった、アタシは遊矢と同じ中央公園の方に行くから…遊希は権現坂君の行った海の方!絶対に無茶しない事!!」

 

「わかりました!!」

遊希の身体を心配する洋子だったが…素良を心配する遊希の言葉に折れ、探しに行く事を許した…。

 

 

《ッ…フォウ!フォウ、フォーウ!》

 

「ごめん、フォウくん!今日はお留守番!!ついてきちゃダメだからね!」

 

《キュッ!?…フォーウ…》

肩に飛び乗ったフォウをキャットタワーに降ろした遊希は家から飛び出した…!

 

 

 

 

………

 

 

 

 

「権現坂君!!素良君は!?」

 

「ぬおっ!?遊希…!?体は大丈夫なのか?」

 

「本調子じゃないけど、大丈夫!」

素良の姿を探しながら街を駆けた遊希は海浜地区で素良の姿を探す権現坂と合流……権現坂は倒れたはずの遊希が現れた事に驚いている。

 

 

「権現坂君は、スタジアム方面をお願い!僕は倉庫街の方を見てみる!見つけたら教えて!」

 

「承知した!遊希、無茶はしないでくれ!」

 

「わかってる!」

そして2人は違う方向へと走り出した。

 

 

 

………

 

 

 

「素良く〜ん!いるんだったら返事してくれ─!…っ…はぁ…はぁ…!」

息を切らせながら遊希は倉庫街に呼びかける…柚子からこの場所を「特訓場所」として使っていた事を聞き、可能性が高いと思ったのだ。

 

 

「っ…素良君……なんで、逃げるなんて…海馬社長の力も借りなきゃダメかな…!」

汗を拭いながら素良の姿を探す遊希…KCの情報網に頼ろうかとも考え始めた時だった。

 

 

カラン

 

 

「っ…素良君!?」

おそらく、無人であるはずの倉庫街に空き缶の転がる音が響く…その音を聞いた遊希は思わず振り向き…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《フォウ…》

 

 

「あっ……フォウくん…?まったく……ついて来ちゃダメって言ったじゃないか?僕の事が心配だったの?」

 

《フォーウ》

その視線の先にいたのは…家に置いてきたはずのフォウだった、遊希の事が心配で抜け出して来てしまったのだ…。

 

 

 

 

「ごめん、僕も焦り過ぎたみたいだ…一度、家に帰ろうか?もしかしたら帰ってきてるかも──」

 

 

【おや…第一村人はっけ〜ん…!でも、なんだか傷だらけで気持ち悪いなぁ…】

 

 

「っ…!?」

 

《…!?》

フォウを連れて倉庫街を離れようとした遊希、その背中に声をかける者がいた、それは…黒いローブで正体を隠した少年だった。

 

 

 

《フォウ…フォウゥゥッ…!!》

 

「君…いったい何処から…いや、それより…僕に、何か用かな…?」

遊希は突然現れた少年に警戒しながら問いかける…その肩では、フォウが全身の毛を逆立てていた…。

 

【ん〜?用って程じゃないけどね〜…僕と()()()()()()()、キミ…デュエリストでしょ?】

 

「っ…?」

ローブの少年は遊希の腕のデュエルディスクを指差しながら、デュエルを申し込む…!

 

 

「申し訳ないんだけど…ちょっとデッキの調整ができてなくてね…よかったら、デュエルができる場所まで案内するけど──」

 

【勘違いされたら困るなぁ…キミに()()()はないんだよ】

 

シュピッ!

 

「うわっ…!?なんだこれ!?」

明らかな不審者を前にデュエルを断ろうとする遊希…だが、その腕にローブの少年のデュエルディスクから放たれた赤い光の縄が巻き付く!!

 

 

【それはデュエルアンカー、ボクとのデュエルが終わらないと外れないんだ…面白いだろ?】

 

「やるしか、ないか…!!フォウくん、離れて!!」

 

《フォウ!?》

赤い縄を巻き付けられた遊希は覚悟を決める…!

 

 

【さぁ、スタンダードのデュエリストの実力…見せてもらうよ…!】

 

 

 

 

「【デュエル!!】」

 

 

遊希LP4000

ローブの少年 LP4000

 

 

 

 

 

「先攻は、僕か…僕のターン…!」

「『EMドクロバット・ジョーカー』を召喚!」

ドクロのシルクハットを被った道化師が現れる! ATK1800

 

「『ドクロバットジョーカー』の効果発動!召喚に成功した時、デッキから『オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン』を手札に加える!そして僕は、スケール1の『オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン』とスケール8の『オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン』でペンデュラムスケールをセッティング!!」

 

 

PENDULUM!!

 

 

遊希の背後に仮面を着けた赤のドラゴンと一本角を持つ緑のドラゴンが浮かび上がる!

 

 

【ペンデュラム…?なんだい、ソレ…?】

 

「(ペンデュラムを知らない…?テレビでも放送されたはずなのに…?)…これで僕はレベル2から7のモンスターを手札から同時に特殊召喚できる!!揺れろ!魂のペンデュラム!全能の力よ、歴史を刻め!ペンデュラム召喚!手札から来い!レベル4『龍脈の魔術師』!そしてレベル7!二色の眼揺らめく幻影!『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』!!」

遊希の頭上で赤のペンデュラムが揺れ動き、光が弾ける…そして若き天才魔術師とエースたる幻影のオッドアイズが現れる! ATK1800 ATK2500

 

 

【へぇ〜!モンスターの同時召喚とは驚いたなぁ!この次元のデュエルは特徴がないって聞いてたけど…新しく生み出したのかな?】

 

「僕は…カードを1枚伏せ、ターンエンド!」

ペンデュラム召喚に驚くローブの少年を前に遊希は警戒しながらターンを終えた…。

 

遊希LP4000

ドクロバットジョーカー 龍脈 ファントム (P ペルソナ ミラージュ)伏せ1 手札0

 

 

 

【ふふっ…面白いモノを見せて貰ったお礼に…少しだけ、僕の力を見せてあげるよ…!】

 

 

 

【僕のターン…ドロー!】

【手札から永続魔法『プレデター・プランター』を発動!その効果により、手札から『捕食植物(プレデター・プランツ)スピノ・ディオネア』を効果を無効にして特殊召喚!】

少年の場に恐竜・スピノサウルスのような姿をした、背中にハエトリソウの捕食器を持ったモンスターが現れる! ATK1800

 

【さらに『捕食植物プテロ・ペンテス』を召喚!】

巨大な口を持つ、悪魔のような食虫植物が現れる! ATK300

 

 

【そして…僕は魔法カード『融合』を発動!フィールドの『スピノディオネア』と『プテロペンテス』を融合!】

 

「融合使い…!」

少年の背後に現れた渦に2体のモンスターが飛び込む!

 

 

 

【魅惑の香りで虫を誘う二輪の美しき花よ!今ひとつとなりて、その花弁の奥の地獄から…!新たな脅威を生み出せ!融合召喚!現れろ!飢えた牙持つ毒龍…!レベル8!『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』!!】

融合の渦から光が弾ける…そして、倉庫街の暗闇の中に無数の赤い玉が暗い輝きを放つ『融合』の名を背負う、闇に覆われた異形の龍が現れる!! ATK2800

 

 

 

「っ…!?(な、なんだ…!?あのドラゴン…!!震えが…震えが止まらない!!)」

 

《グルル…!》

そのドラゴンが召喚された瞬間、遊希は言い表せない『恐怖』を感じる…それに呼応するように、オッドアイズも謎のドラゴンを威嚇している…!

 

 

【『スターヴヴェノム』の効果発動…!このカードがフィールドのモンスターのみを素材として融合召喚された時、エンドフェイズまでその攻撃力に相手フィールドの特殊召喚されたモンスター全ての攻撃力を加える!】

 

「な、なんだって…!?」

異形の龍の翼から禍々しいエネルギーが吹き出す!!

 

スターヴヴェノム ATK2800→7100

 

 

【バトルだ…!『スターヴヴェノム』で『オッドアイズファントムドラゴン』を攻撃!!】

 

「っ…!!がああああっ!?!?」

夜空へと飛び上がった異形の龍の背後に血管のような禍々しいエネルギーが浮かび上がる…そして放たれた暗緑の閃光がオッドアイズを直撃、遊希は爆発に吹き飛ばされ……

 

 

ドゴン!!

 

 

ごはっ…!?

轟音と共に、倉庫街のコンテナにめり込む勢いで叩き付けられた…。

 

 

 

遊希LP4000→

 

 

 

 

 

 

「あ、が……!?(なに、が…起きた…?なんで、()()()()()()()…?リアルソリッドビジョン、じゃ、ない、はず…な、のに……)」

 

《キュッ…!!フォウゥウ─!!!》

フォウの悲鳴のような鳴き声が響く…叩きつけられた激痛で明滅する視界の中、遊希は困惑していた…衝撃を伴わないはずのソリッドビジョンのデュエルで…息ができないほどの痛みに襲われている事に…。

 

 

【おやぁ…?キミのライフは尽きたはずなのに…なんでデュエルアンカーは切れないのかな…?】

そんな中、少年はコンテナに()状態になっている遊希に問いかける、赤い縄は…まだ、遊希の腕に巻き付いていた…。

 

 

「……とらっぷ、カード…『体力増強剤』…『すーぱーZ』…2000いじょう、バトルダメージを受ける、前…4000……ライフ、回復……する…」

息も絶え絶えの状態の中、遊希は罠カードが起動していた事を少年に告げる…。

 

 

遊希LP4000→8000→3400

 

 

【ふーん、面白いカードを伏せてたねぇ…僕はカードを2枚伏せ、ターンエンド!】

 

少年LP4000

スターヴヴェノム プレデタープランター 伏せ2 手札0

 

 

 

 

 

「あ…ぐっ…うぅ…」

少年がターンエンドを宣言し…遊希は磔になっていたコンテナの壁からずり落ち、顔から地面に倒れ込んだ…。

 

 

「(なんだ、あの…デュエリスト……なんで、()()()()…?)」

遊希はブレる視界の中、こちらを見下ろす少年を見る…ローブのから垣間見える口元は、この惨状を前にして……笑みを浮かべていた。

 

 

【おーい…?倒れてないで、デュエルを続けてよ?これくらいで終わったら、つまらないじゃないか?】

 

「ぐ、う…!?」

少年は嗤いながらデュエルアンカーを引っ張る…それだけで、遊希は呻き声を洩らすほどの痛みに襲われる…。

 

 

 

《フォウ!フォーウ!!》

 

「ふぉう、にげ、ろ…!だれか…呼んで……うぐっ…」

 

《ッ…フォウ!!》

遊希は駆け寄って来たフォウに逃げるように伝える…「この少年を野放しにしてはならない」…そう直感したのだ、それを聞いたフォウは泣きそうな表情で駆け出すが…。

 

 

【行かせないよ?今日はまだ()()()なんだか…ら!!】

 

《ギャン!?》

 

「フォウ!!」

だが、少年はそれを許さなかった、フォウが走る方向に先回りし…あろう事かフォウを蹴り飛ばしたのだ…!

 

 

 

「うう…ああああ"あ"あ"!!」

 

《キャウ…》

 

【くふっ…!やればできるじゃないか!】

蹴り飛ばされたフォウの姿を見た遊希は、全身の痛みを無視して立ち上がる…()()()()が、今の遊希を奮い立たせる…!

 

 

 

「僕のターン…ドロー!!」

「揺れろ…!希望のペンデュラム!!ペンデュラム召喚!!エクストラデッキから現れろ!『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』!!」

赤のペンデュラムの軌跡と共に幻影のオッドアイズが復活する! ATK2500

 

 

【エクストラデッキから?面白いモンスターだね…!】

 

「さらに、魔法カード『融合』を発動!フィールドの『オッドアイズ』とペンデュラムモンスター『龍脈の魔術師』を、融合!!」

融合の渦に2体のモンスターが飛び込む!

 

「大いなる風の力よ!二色の眼持つ幻影に力を与え、嵐を巻き起こせ…!!融合召喚!『オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン』!!」

倉庫街に嵐が吹き荒れる…そして稲妻を降らせながら白き身体を持つオッドアイズが現れる! ATK2500

 

 

【なんだ、融合モンスターか…つまらないなぁ…罠カード『奈落の落とし穴』発動、攻撃力1500以上のモンスターが召喚された時、そのモンスターを破壊して、除外─】

 

「『オッドアイズボルテックス』の効果発動!相手が魔法・罠・効果モンスターの効果を発動した時!エクストラデッキのペンデュラムモンスター『龍脈の魔術師』をデッキに戻し、その効果を無効にし、破壊する!ボルテック・リフレクター!!」

 

【むっ…!?】

稲妻が少年の発動した罠を撃ち抜く!

 

「そして『オッドアイズボルテックス』のもう一つの効果発動!特殊召喚に成功した時、相手フィールドのカード1枚を手札に戻す!エクストラデッキに戻れ!『スターヴヴェノムフュージョンドラゴン』!」

 

【なにっ!?】

フィールドに竜巻が発生…異形の龍を吹き飛ばす!

 

 

 

「バトルだ!!『オッドアイズボルテックス』でプレイヤーにダイレクトアタック!迅雷のスパイラル・バー──!!」

 

【う〜ん、なかなか良いデュエルだったけど…運が悪かったね…!罠カード『融合霧散』を発動!相手の融合モンスターがバトルを仕掛けてきた時、バトルフェイズを終了させて…その融合モンスターをデッキに戻す!】

 

「なっ…!?」

攻撃を仕掛けようとした疾風のオッドアイズの姿が幻のようにかき消える…。

 

 

【そして墓地に融合素材一組が墓地に揃ってれば、特殊召喚できるんだけど……いないみたいだね?】

 

「く、そ…!『ドクロバットジョーカー』を守備表示に、変更……ターン、エンド…!」

 

ドクロバットATK1800→DEF100

 

遊希LP3400

ドクロバットジョーカー (P ペルソナ ミラージュ) 手札0

 

 

 

「はぁ…はぁ…う、うぅ…」

 

《キャウ…フォ、ウ…!!》

 

【見た目からして歴戦のデュエリストかと思ったけど…買い被りすぎだったみたいだね、いま楽にしてあげるよ…】

ターンが終わり、麻痺していた痛みに遊希が膝をつく…そして少年は呆れた様子でデッキトップに手を掛けた…!

 

 

 

【僕のターン、ドロー!】

【このスタンバイフェイズ、僕は『プレデター・プランター』の効果で800のダメージを受ける】

 

少年LP4000→3200

 

【そして『プレデタープランター』の効果発動!墓地の『プテロペンテス』を効果を無効にして特殊召喚!】

再び食虫植物の悪魔が現れる! ATK300

 

【そして装備魔法『捕食接ぎ木(プレデター・クラフト)』を発動!墓地から『スピノディオネア』を特殊召喚して、このカードを装備する!】

食虫植物のスピノサウルスが復活する! ATK1800

 

 

【さて、バトルだ…!『スピノディオネア』で『ドクロバットジョーカー』を攻撃!】

 

「くうっ…!?」

スピノディオネアがドクロバットジョーカーを惨たらしく喰いちぎる…!

 

 

【そして『スピノディオネア』の効果発動!このモンスターが自身以下のレベルを持つモンスターとバトルした後、デッキから『捕食植物』モンスター…『捕食植物ダーリング・コブラ』を特殊召喚!】

少年の場にコブラのような食虫植物が現れる! ATK1000

 

 

【そして『捕食植物』モンスターの効果で特殊召喚された『ダーリングコブラ』の効果発動、デッキから『融合』または『フュージョン』と名のつく魔法カード『プレデター・プライム・フュージョン』を手札に加える…そして『プテロペンテス』でダイレクトアタック!】

 

「がああっ…!!」

食虫植物の悪魔が体当たりで遊希を突き飛ばす!

 

遊希LP3400→3100

 

 

【そして!()()()()『プレデター・プライム・フュージョン』を発動!フィールドの『ダーリングコブラ』と『プテロペンテス』を融合!融合召喚!!再び現れろ!飢えた牙持つ毒龍『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』!!】

 

「……そん、な……」

遊希の必死の思いを嘲笑うように…再び毒龍が現れる! ATK2800

 

 

【これはバトルフェイズ中の召喚…よってバトルは続く!!「スターヴヴェノム」でダイレクトアタック!!】

 

ごっ……!?

 

《フォーウッ!!!》

毒龍の尾による一撃が遊希を直撃…悲鳴を上げる事もできず、地面を転がった…。

 

 

遊希LP3100→300

 

 

【僕は…これでターンエンド】

 

少年LP3200

スターヴヴェノム スピノディオネア 手札0

 

 

 

 

【さぁ…!ライフはまだ残ってるよぉ?僕をもっと楽しませてよ!!ハハ…アハハハハハ!!】

少年は倒れ込む遊希を嘲笑う…彼は()()()()()()の為に、あえて遊希にトドメを刺さなかったのだ…!

 

 

「………(……なん、で…こ…んな…こと……)」

嬲るような攻撃を受け続けた遊希は…少年の笑い声が響く中、意識を失った…。

 

 

 

 

 

【あらら…失神しちゃった?しょうがないなぁ…もう少し()()()()()()()んだけど……】

 

《フォウ…!?フォーウ!!》

意識を失った遊希を見た少年は落胆した様子でデュエルディスクを操作する…その様子を見たフォウが()()()()()()()()()()()に気づいて叫ぶが…遊希はピクリとも動かない…。

 

 

 

【おやすみ、名もなきデュエリストクン…!少しは楽しめ──】

 

 

 

 

『やめろぉぉ!!!』

 

 

 

【っ…?】

少年が遊希に『何か』をしようとした瞬間、倉庫街を震わせる怒声が響く…!

 

 

『貴様…!!許さねぇぇ!!!

 

【おやおや…お仲間かな?】

 

《フォ、ウ…キュー……!》

そして傷ついた遊希とフォウを庇うように人影が空から現れる、それは…凄まじい殺気を纏う凌牙だった…!

 

 

 

 

 

 

Side凌牙

 

 

 

「待ってろ、ユート…!」

黒き槍術士の手で地上に降り立った凌牙は舞網市の夜闇を駆ける…デュエルディスクで追っていたユートの信号はLDSから離れた舞網中央公園で止まっていた…。

 

 

「(本来の流れなら、この後ユートはシンクロ次元のズァーク…ユーゴって奴に倒されて…榊遊矢に取り込まれちまう…でも、そうでなきゃ…遊矢は……いや、()()()()()()()()…!奴らの手から…!)」

走りながら凌牙は情報を思い出す…ユートと一体化する事で新たな力を手にする遊矢、しかしそれは『悪魔』の目覚めを早めてしまう…『英雄』が不在の今、凌牙はそれを阻止しようとしていた…。

 

 

キン─!

 

 

「っ…指輪、が…!?」

その時、不意に右手の小指に着けていた指輪が光を放つ…その指輪は、彼の家族との絆を示す証──それが意味するのは…。

 

 

「父さんに、何かあったのか…!?くそっ──!!」

その光に嫌な予感を感じた凌牙は公園への道を外れ、駆け出した…!

 

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

 

乱入デュエル

 

 

 

凌牙LP4000

 

少年LP3200

スターヴヴェノム スピノディオネア プレデタープランター 手札0

 

遊希LP300 

(P ペルソナ ミラージュ)手札0

 

 

 

 

『俺のターン!ドロー!!』

『俺は「ランタン・シャーク」を召喚!!』

全身に発光器を持つ鮫が現れる! ATK1500

 

『「ランタンシャーク」の効果発動!このターン、エクストラデッキからエクシーズ召喚しかできなくなる代わりに!手札からレベル4の「スピア・シャーク」を特殊召喚!』

さらに頭が槍のように尖った鮫が現れる! ATK1600

 

 

【…エクシーズ…】

 

 

『そして自分の場に水属性モンスターが存在する時!「サイレント・アングラー」は特殊召喚できる!』

チョウチンアンコウ型のモンスターが現れる! ATK800

 

 

『俺は…レベル4の「ランタンシャーク」「スピアシャーク」「サイレントアングラー」の3体でオーバーレイネットワークを構築…エクシーズ召喚!!』

凌牙の頭上に現れた光の銀河に3体のモンスターが飛び込み、光の爆発が起きる!!

 

 

104

 

 

『現れろ!「No.104」!聖なる光を纏いし舞踏師よ、愚者を欺け!「仮面魔踏師(マスカレード・マジシャン)シャイニング」!!』

光の爆発の中から不気味な腕が飛び出した円柱が現れ、変形…チャクラムを持つ光の魔踏師が現れる! ATK2700

 

 

【へぇ…!】

 

『「シャイニング」の効果発動!1ターンに1度、このモンスターが攻撃できなくなる代わりに、相手のデッキトップのカードを墓地に送り、デッキをシャッフルする!』

 

【おっと…】

スターヴヴェノムと同様の威圧感を持つモンスターに笑みを見せる少年…凌牙はそれを無視し、効果を発動する!

 

 

【ふっ…運がいいね、墓地に送られたのは『捕食植物ビブリスプ』!その効果により、僕はデッキから『捕食植物フライ・ヘル』を手札に加える!…残念だったねぇ?敵に塩を送った気分はどうだい?】

 

『塩?違うな…!それはお前の、地獄への片道切符だ!魔法カード「RUM-バリアンズ・フォース」発動!このカードは自分フィールドのエクシーズモンスターをカオス化し、ランクアップさせる!俺は「シャイニング」一体でオーバーレイ・ネットワークを再構築…カオスエクシーズチェンジッ!!』

 

【『ランクアップマジック』…!?まさか、お前──】

フィールドの魔踏師がニュートラル体に戻り、銀河に飛び込み…闇色の大爆発が倉庫街を包みこむ!!

 

 

104

 

 

『現れろっ!「CNo.104」!!混沌より生まれし力よ…闇を纏いて舞い踊れ!!「仮面魔踏師アンブラル」!!』

闇色の爆発の中から巨大なコウモリの翼のようなモニュメントが現れ、変形…赤い外套を纒い、悪魔の仮面を着けた魔戦士が現れる! ATK3000

 

 

『「アンブラル」の効果発動!特殊召喚に成功した時、相手の魔法・罠カード1枚を破壊する!デストロイ・ステップ!!』

 

【くっ…!やるじゃないか…!】

アンブラルの炎の舞踏がプレデタープランターを破壊する!

 

 

『バトルだ!「アンブラル」で「スターヴヴェノムフュージョンドラゴン」を攻撃!!』

 

【ふっ…残念だけど、タダじゃ破壊されないよ…!『スターヴヴェノム』が破壊された時、相手フィールドの特殊召喚されたモンスター全てを破壊し、その攻撃力分のダメージを───】

 

 

『甘いのは…テメェだ!!『アンブラル』のさらなる効果発動!!相手がモンスター効果を発動した時!カオスORUを1つ使い、その発動を無効にする!!』

 

【なにっ!?】

魔踏師の杖から襲いかかった光線が毒龍を粉砕…さらに、その追撃を防いだ!

 

 

少年LP3200→3000

 

 

『さらに!相手の手札をランダムに墓地に送り!ライフを半分にする!!受けてみろ!ダーク・プランダー!!』

 

【ぐっ!?がああああっ!?】

そしてダメ押しの混沌の魔力が直撃…少年に初めての手傷を負わせる!!

 

 

少年LP3000→1500

 

『俺は…カードを1枚伏せ、ターンエンドだ…!!』

 

凌牙LP4000

アンブラル 伏せ1 手札0

 

 

 

 

 

 

【ああ…聞いた事があるよ…!エクシーズ次元を守ろうと足掻く、レジスタンス…その上位の奴らは『No.』というエクシーズモンスターを使って、アカデミアの邪魔をする……お前、その幹部の1人だろ?】

少年はローブの砂埃を払いながら凌牙へと問いかける…。

 

『そうだ、と言ったら?』

 

【どうもしないさ!面白い獲物が増えただけ……さて、本気で行こうか…!!】

凌牙の答えを聞いた少年はさらなる殺気を放つ…!

 

 

 

 

ピコーン…ピコーン…

 

 

 

 

【ん…?残念、呼び出しが掛かっちゃった…今日はお忍びだったからね、怒られる前に行かなきゃな】

倉庫街に無機質なアラームが響く、それを聞いた少年はデュエルディスクを下げ…遊希に結ばれていたデュエルアンカーを消し去る。

 

『っ…!逃がすと思うか!!』

 

【逃げるんじゃない、()()()()()()()()()…次に会ったら……叩き潰してあげるよ…!!】

 

『っ…!「アンブラル」!!』

ローブの下から紫の瞳を覗かせる少年…凌牙はアンブラルによって追撃したが、謎の少年の姿は消え去っていた…。

 

 

 

 

デュエル中断……

 

 

 

 

 

『くそっ…逃げられた…!!』

 

《ふぉう…きゅう…!!》

 

『っ…!父さん!フォウ!!』

乱入者…おそらくは融合次元の『ズァーク』を逃してしまった凌牙は拳を握り締める…だが、そこへ弱々しいフォウの鳴き声が聞こえ…慌てて遊希へと駆け寄る…!

 

 

『父さ…遊希!!しっかりしろ!!』

 

「………」

 

『くそっ…!!奴め、どうして…どうしてこんなデュエルをして平気でいられるんだ!!』

全身をズタボロにされ、口の端から血を溢す遊希を前に凌牙は怒りを露わにする…それは、病院に運ばれても治しきれない重傷だった…。

 

 

『俺の力で、回復しきれるのか…!?いや、やるしかない!!』

凌牙は全身全霊…自身の中にある混沌(カオス)を、全ての力を回復魔法に注ぎ込む…淡い緑の光が遊希の身体を包み込み、少しずつ遊希の傷が癒えていく…。

 

バチッ…

 

『っ…!?この、感じ…回復の一部が、弾かれてるのか…!』

しかし、遊希の全身の『傷』から僅かに赤い光が奔る…凌牙はその光景に覚えがあった…。

 

『この傷…きっと、ズァークに……!!父さん、ごめん…!父さんだけに、世界を背負わせて…ごめん!!』

凌牙は涙を溢しながら、回復を続ける…その時だった。

 

 

 

 

 

「っ…!!遊希!!何が、何があったのだ!?」

 

 

『お前は…四番勝負の時の…』

デュエルの余波で荒れた倉庫街に鉄下駄の音と驚愕の声が響く…現れたのはスタジアム周辺を捜索中、倉庫街の異変に気づいて駆けつけた権現坂だった…。

 

 

「おぬし、凌牙…!!遊希をこんな目に遭わせたのは貴様か!!」

 

『違げぇよ…!と……遊希がヤバい奴と戦ってるのを助けたんだ…!集中を切らせないでくれ、手元が狂う…!』

 

「っ…すまん…!?」

その場にいた凌牙を疑う権現坂だったが…凌牙の必死な様子に謝罪、そして異変に気付いた…。

 

 

「おぬし、いったい何をしている…!?遊希の、怪我が…!?」

 

『………俺は、ちょっとしたサイコデュエリスト………超能力者だ、カードの力をデュエル外でも使える…!他の奴には、言うなよ…?余計な混乱を生みたくねぇ…』

 

「し、承知した……舞網にも『サイキック塾』やら、『エスパー塾』もあるが…初めて見たぞ、本物の超能力は…!」

遊希の傷を癒やす凌牙を見た権現坂は動揺するが…凌牙の真剣な眼差しに口を噤む決心をする…。

 

 

 

「……凌牙、おぬしに聞きたい事がある…いいか?」

 

『なんだ?』

遊希の粗方の治療を終えた凌牙は膝に抱いたフォウの治療へと移る…そんな汗だくの凌牙に権現坂が問いかける。

 

 

「遊希は……おぬしの、顔見知り……いいや、『大切な者』なのではないか?」

 

『………なんで、そう思う?』

 

「お前が()()()いた……そう思う理由はそれだけだ」

 

《フォウ…》

権現坂は凌牙にそう訊ねる…遊矢達と導き出した「答え」は、確かに当たっていた…。

 

 

 

『………それを知って、どうする…』

 

「えっ…?」

 

『この人の…片目を奪ったのは、()だ……記憶を失ったこの人がそれを聞いて………どんな事を思う…?』

 

「っ……」

凌牙の手に、表情に力が入る……それは遊希を傷つけてしまった罪悪感…権現坂は俯くしかなかった…。

 

 

 

ピピッ…ピピッ…

 

 

 

「むっ…柚子…!どうした!?」

 

『大変なの!!遊矢が…遊矢が公園で、倒れて!!』

 

「なにっ!?」

 

『っ…!!』

そして権現坂の端末が通話を知らせる、その相手は柚子…それが意味するのは…。

 

 

ピコーン!ピコーン!

 

 

『凌牙!!何処にいる!?ユートが…ユートの反応が…!!』

 

『黒咲…!っ……すまねぇ…!!別の()()のせいで、間に合わなかった…!!すぐに、戻る…!』

 

《フォーウ…》

同じタイミングで凌牙のデュエルディスクが着信を知らせる…それはユートの消失を知った黒咲からの連絡だった…。

 

 

 

『……すまねぇ、フォウと遊希を頼む……しばらくすれば、目を覚ますはずだ………頼む』

 

「あ…待て!凌牙!!」

凌牙はフォウを優しく一撫でして、立ち上がる…権現坂は引き止めようとしたが、凌牙は常人離れした身体能力で舞網の夜闇に消えていった。

 

 

 

「……この街で、いったい何が起きようとしているのだ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──……ここは、何処だ…?我は……なぜ………──

 

 

 

 

 

 

 

──………ふん……どうやら、よからぬ事態になったようだな……なぁ?──

 

 

 

 

 

 

 

──英雄よ──

 

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