転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話   作:S,K

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Ep.20 不穏なる闘星

「……遊矢…あそこで……中央公園で、何があったの…?なんで……2日も、目覚めないの…?」

 

素良が行方を晦まして2日が過ぎた…舞網中央公園で意識を失った遊矢は未だに眠り続けていた、その傍らでは洋子と柚子が看病を続けていた…。

 

 

「素良も見つからないし……私、どうしたら…!このまま、遊矢が目を覚まさなかったら…!」

 

「……大丈夫、遊矢はそんなヤワじゃない…父親がいなくなってから3年、ずっと自分の『殻』に閉じ籠もってた…そんなこの子がストロング石島に勝ったように…きっと目を覚ます!前より強くなってね…!」

 

「洋子さん…」

眠り続ける遊矢を前に涙を溢す柚子…そんな彼女を励ますように、洋子が励ます…心配なのは彼女も同じ、だが…彼女は母親として息子を信じていた…。

 

 

 

 

いやぁぁ〜!?ダーリン!私を遺して逝かないでぇぇ!!

 

 

 

「わっ!?びっくりした!?」

 

「方中ミエル!?」

そんな湿っぽい空気を吹き飛ばしたのは、遊矢の部屋の窓に張り付いた少女の泣き声だった…。

 

 

 

『う〜!逝かせはしないわ!この私が来たからには〜!占いとまじないでダーリンを助けるんだから〜!!』

 

「ちょ…どうして貴女がここにいるのよ〜!?まさか占いで…?」

部屋の窓から入って来た異様なテンションのミエルに柚子が問いかける…遊矢が倒れた事を知っているのは、遊勝塾の関係者だけのはずだからだ…。

 

 

『占いで!と、言いたいんだけど…大会の会場で遊勝塾のジュニアの子たちが話してるのを聞いて……()()()()()()()()()()来ちゃたの!』

遊矢を助ける為の風水を施しながらミエルは語る…その様子に呆れていた柚子だったが、ある事に気が付いた。

 

 

「み、ミエル?何もかも放り出してって……大会を抜けて来ちゃったの!?」

 

「えぇっ!?」

 

『当然よ!今のミエルにはダーリンが1番大切なんだから!』

 

「「それは違うわ(よ)!!」」

大会の試合を放り投げてまでやって来たミエルに洋子と柚子は声を揃える…。

 

 

「遊矢はデュエリストよ!同じデュエリストとして、ミエルが勝つ事を望んでるはずよ!」

 

「勝利は何にも勝る()()!より良い運気をもたらしてくれるのは「勝利よ!!」」

 

『はっ…!?それは…そうかも!!ダーリンの為に、ミエル頑張る─!!』

 

「「(ほっ…)」」

2人でミエルに発破をかける柚子と洋子、2人の言葉を信じ込んだミエルは急いで会場に向かい……2人はほっと胸を撫で下ろしたのだった。(厄介払い的な意味で)

 

 

………なお、ミエルは試合には間に合ったものの…残念ながら、一回戦敗退であった。

 

 

 

………

 

 

 

 

「落ち着いたところで…柚子ちゃん、少しの間遊矢をお願いね?」

 

「あ、はい…」

ミエルの騒動を解決した洋子は一度、席を外す…彼女が向かったのは…。

 

 

 

 

「遊希、入るよ?」

 

「あっ、洋子さん…少し騒がしかったですね?ミエルさんの声が聞こえたような…?」

 

「ふふっ…そんだけわかってるなら大丈夫そうだね!」

安静にしながらデッキ調整をする遊希の部屋だった…。

 

 

 

 

時は少し遡る───

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

Side遊希

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──遊海君──

 

 

 

……誰かが、()の名前を読んでいる…

 

 

 

 

───遊海!デュエルだ!─

 

 

 

 

──遊海先生!──

 

 

 

 

──遊海さん──

 

 

 

 

───遊海!今度こそ勝ってやるぜ!──

 

 

 

 

……ああ、懐かしい……気がする…

 

 

 

 

──父さん!!──

 

 

 

──お父さん!──

 

 

 

 

──嫌だ…!遊海さん!遊海さん──!!──

 

 

 

 

 

………誰かが、泣いてる……オレのせいで…?

 

 

 

 

 

………ごめん…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ……?あ、れ……?」

遊希はふと目を覚ました……ぼんやりとした視界に写ったのは、見慣れた自室の天井だった。

 

 

「僕、いつの間に…家に帰って…?う、ぐ…!?からだが、痛い…!」

自室で寝た記憶の無い遊希は戸惑いながら体を起こそうとしたが…倦怠感とは違う、全身の鈍い痛みで起き上がる事ができなかった…。

 

 

 

「っ…!?そうだ、僕は…!?」

段々と意識がはっきりとしてきた遊希の脳裏に記憶が蘇る。

 

 

 

舞網チャンピオンシップで怪我をした素良が、何故か行方を晦ました事。

 

 

 

素良を探す為に無茶を押して探しに行った事。

 

 

 

…そして、倉庫街で異様な雰囲気を纏うデュエリストに───

 

 

 

 

「そうだっ…僕は……!フォウ!!」

 

《……フォーウ……》

 

「フォウ…!!ああ、よかったぁ……」

 

《キュウ…フォウ…》

意識を失う寸前までの記憶を取り戻した遊希は思わずフォウの名を呼ぶ…それに応えたのは、遊希のベッドの横に用意された籠の中で休んでいたフォウだった。

少し辛そうな様子だったが…遊希が目覚めたと知るとベッドによじ登り、遊希の頬を舐めている…。

 

 

「……でも、どうしてだ…?僕は…もう()()()と思ったのに…?」

落ち着いた遊希は胸元でフォウを撫でながら考える、意識を失う前に受けた傷…その痛みは「再起不能」のダメージだと思っていたからだ…。

 

 

「……確実に両足も、腕も…肋骨も……内臓だって……なのに、鈍い痛みだけ…?う〜ん…?」

 

《フォウ…キャウ…フォーウ!》

 

「……凌牙が、助けてくれた…?本当なのか?フォウ」

 

《フォウ!》

謎の現象に悩む遊希…その答えを教えてくれたのはフォウだった。

 

 

 

「………なんで、凌牙が僕を…?」

 

 

ガチャ!

 

 

「……むっ!?遊希!目が覚めたのか!!」

 

「あっ…権現坂君…?」

 

「こうしちゃおれん!洋子さんと柚子に教えなければ─!」

 

「あっ、ちょっ─!?」

凌牙が何故、自分を助けてくれたのか…そもそも、どうやって怪我を治したのか考える遊希…そこへ見舞いに来た権現坂がやって来て、止める間もなく飛び出して行った…。

 

 

 

 

………

 

 

 

 

「丸一日も寝ちゃってたんですね……」

 

「そうなんだよ…もう、アンタも遊矢も…いったい何があったのさ…!?服もボロボロだったし…!」

その後、遊希は部屋に飛び込んで来た洋子達に、何が起きたのかを聞かされる。

 

 

まずは遊矢…遊矢は素良を探しに行った舞網中央公園で倒れたところを柚子に発見され、未だに眠り続けている事…。

 

 

そして、素良は未だに行方がわからない事…。

 

 

……最後に自分、フォウと一緒に倉庫街で倒れていた所を権現坂に発見され…丸一日眠っていた事、そして着ていた服は交通事故か爆発に巻き込まれたようにボロボロになっていたという事を…。

 

 

 

「それに関しては俺が話そう……故に、洋子さんと柚子には一度、席を外してほしい…!」

 

「えっ…?どうして?」

 

「漢の事情というモノがあるのだ…頼む!」

 

「……しょうがないね、柚子ちゃん!遊希におじやを作るから手伝ってくれるかい?」

 

「あっ……わかりました!」

権現坂の言葉に洋子は何かを感じたのか…2人で部屋を離れていった…。

 

 

 

 

「さて…2人には、あまり聞かれたくない事なんだよね?」

 

「うむ…少し眉唾な事でもあるし、約束もしているからな…」

2人とフォウだけになった部屋、そこで権現坂は語り始める…。

 

 

「実は、俺よりも前に…遊希を救ってくれた者がいたのだ、それは……」

 

「LDSの凌牙君、だよね?四番勝負の時に僕とデュエルした…」

 

「っ!?意識があったのか!?」

真実を話そうとした権現坂は遊希の思わぬ言葉に目を見開く…!

 

 

「さっき、フォウが教えてくれたんだ……ヤバいデュエリストに襲われた僕を、凌牙が必死に助けてくれたって……なっ?、フォウ」

 

《フォウ、キューウ…》

 

「遊希…?フォウの…動物の言葉が、解るのか?」

 

「ニュアンスだけね…目が覚めてから、なんとなく……うん?これって、結構すごい…?」

フォウを撫でながら、聞いた事を伝える遊希…そこでようやく違和感に気が付いた…。 

 

 

「まぁ…遊希の目覚めた特殊能力の事は今は置いておく……俺が駆け付けた時、遊希は見たことのない程の大怪我をしていた……それを、凌牙が超能力……サイコデュエリストの力を使って、必死に治療してくれていたのだ…」

 

「そうだったのか…今度会ったら、お礼をしなくちゃ……サイコデュエリスト…あの戦いの時から普通の人ではないと思ってたけど…彼に、そんな力があったなんて…」

権現坂の話を聞いた遊希は納得する…あの大怪我を治療できるのは、本当に『魔法』でもなければ無理だと思ったからだ。

 

「それから…これは、凌牙に口止めされていたのだが……」

 

「……権現坂君、教えてくれ……彼は、何を言ったのか…」

遊希は言い淀む権現坂に優しく訊ねる…。

 

 

「……凌牙は、記憶を失う前の遊希の事を…知っているようなのだ」

 

「えっ…」

 

《………キュウ…》

権現坂の言葉に遊希は思わず固まってしまう。

……思い返せば、思い当たるフシはあった。

 

 

初めて出会った時、自分の持っている赤水晶のペンデュラムを気にかけ…何処か、悲しそうな表情をしていた事。

 

頭を打ち、暴れまわる自身を必死に止めようとしてくれた事…そして、謎のデュエリストに襲われた自分を守ってくれた事…それだけでも、凌牙と自分に『関係』があったと推し量るには十分だった…。

 

 

 

「凌牙は、遊希の光を奪ってしまった事をひどく悔いていた……だが、遊希なら…」

 

「うん、気にしてないよ……あれは、僕の弱さのせいだ……凌牙が気にする事じゃないのに……直接、伝えなきゃな…」

 

「……うむ、そう言うと思っていたぞ」

権現坂の言葉を聞いた遊希は…()()()()()()()左目に手を当て、そう呟いた…。

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

 

「遊希、調子はどうだい?」

 

「体はまだ痛むけど…調子自体はここ数ヶ月で一番良いかもしれないです!」

 

「良かったねぇ…権現坂君の言ってた助けてくれた人に感謝しないと」

洋子の問いかけに遊希は明るく応える、凌牙による不思議な治療のおかげか…体調はここしばらくで一番のベストコンディションとなっていた。

なお、本人は気付いていないが…凌牙戦で負った傷も、失明してしまった左目以外は治っていたりする……あまりにも元々の『傷』が多すぎて気付けないのだ。

 

 

 

「……そういえば、良いのかい?遊矢に伝えなくて…?」

 

「はい…これ以上、遊矢に心配掛けたくないですし…」

そして、2つ目の問いかけに遊希は静かに応える、未だに目を覚まさない遊矢…素良が消えてしまった事で彼が心配するのは想像に難くない。

故に、これ以上遊矢の負担を増やさない為に洋子や柚子には遊矢に自分が倒れた事を伝えないで欲しいと頼んだのだ…。

 

 

「……わかった、それじゃあ遊矢の看病に戻るから…何かあったら呼ぶんだよ?」

 

「わかりました!ありがとうございます……()()()

 

「…!!……ふふっ、ありがとう、遊希」

遊希の一言に洋子は久しぶりの笑顔を見せた…。

 

 

 

「……『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』…」

洋子が去った後、遊希は倉庫街でのデュエルを思い出す…暗闇の中に現れた、正体不明のドラゴン…そして、謎の少年…その強さは今の遊希を大きく上回っていた。

 

 

「……なぁ、()()()()……お前なら、どうやって倒した…?」

 

《フォウ…》

遊希は胸元に手を当てて呟いた…。

 

 

 

 

 

 

「う、うぅ……あ、れ?母さん、柚子…?」

 

「あっ…!遊矢!」

 

「…おはよう、遊矢」

それから少しして…丸ニ日眠っていた遊矢は目を覚ました。

 

 

 

………

 

 

 

「えぇっ…!?丸二日も…?」

 

「ジュニアユース選手権に出るまでの4連戦からデュエルしっぱなしだったからねぇ…疲れが溜まってたのさ」

 

「そうだったんだ…あっ、大会は…?」

目を覚ました遊矢は自分が2日も眠っていた事に驚く、そして舞網チャンピオンシップスの状況を訊ねる。

 

 

「今日でジュニアユースの一回戦が終わるわ…いま、占い塾の方中ミエルが──あれ?もう終わってる!?…風魔デュエルスクールの月影って人に、1ターンキル!?」

 

「ミエルが…!?今回の大会、レベル高いなぁ…オレ達が知らない実力者がたくさん出てるんだ…」

大会の状況を調べた柚子はミエルの思わぬ結果に驚く…それを聞いた遊矢はまだ見ぬ強者達に警戒を強める…。

 

そして、他にもジュニアクラスの2回戦でフトシが零羅の「シンクロ召喚」に敗れた事や遊希の体調が戻った事を聞かされ…そして、「あの日」に起きた事を思い出した。

 

 

 

「融合……シンクロ……エクシーズ……あの夜、オレ…ユートに会ったんだ」

 

「ユートに…!?」

 

「あいつは言ったんだ…この世界は4つの次元に分かれてるって…!」

 

「4つの、次元…!?それって、どういう事なの…!?」

そして、遊矢はあの夜に起きた事を柚子に伝える…世界は「スタンダード」「融合」「シンクロ」「エクシーズ」の4つの次元に分かれている事。

 

素良は融合次元、ユート・黒咲・凌牙はエクシーズ次元の人間である事…そして、2つの次元は戦争中…ユートと素良が戦い、素良は融合次元に戻されてしまった事。

 

その直後、自分に似た2人目の男…バイクに乗ったシンクロ使い・ユーゴが現れ、ユートと戦い……ドラゴン対決の末に──

 

 

「……この、カード…!『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』…!?なんで、遊矢が…!」

 

「あいつは…オレを庇って…!」

遊矢は異様な2人の戦いを仲裁しようとした…だが、それは叶わず…ユートは『デュエルで笑顔を』という言葉を残し、消えてしまった……それが遊矢が覚えている全てだった…。

 

 

「ユートが、どうなったのかはわからない…ユートは、なんでオレにこのカードを託したんだ…?わからない…!ユートだけじゃない、ユーゴの事も…!なんで、オレにそっくりなんだ…!?」

 

「遊矢…だけ、じゃないわ……私にも、そっくりな人がいる……黒咲が、私の事を「瑠璃」って子と間違ってたの……そうしたら、凌牙が…私と似た顔をしてるって…」

 

「えっ…!?」

自分に「そっくり」なユートやユーゴの事で思い悩む遊矢…そこへ柚子は凌牙から聞かされた自分に「そっくり」な少女について教える…それはますます謎を深めるものだった…。

 

 

「黒咲や、凌牙なら…何か知ってるかもしれない…!ユートの仲間で、瑠璃って子の兄さんなら……きっと次元の事も知ってるはずだ…!」

いくつもの「謎」…それを解き明かす為、遊矢は黒咲に会う事を決意…大会の会場の1つ、LDSのスタジアムに向かう事にした…。

 

 

 

 

「ん…?遊矢、出掛けて大丈夫なのか?」

 

「あっ、遊希兄…うん、もう大丈夫!」

身仕度を整えて玄関に向かおうとする遊矢…その時、たまたま開いていたドアからその姿が見えた遊希が声をかける。

 

 

 

「ティッシュにハンカチ、デュエルディスクにジュニアユースの参加カード…忘れ物は大丈夫か?」

 

「大丈夫だって!母さん以上に母親してるな〜…」

 

「ははっ…備えあれば憂いなしってね、今日の最終試合が終わったら、また組み合わせ抽選のはずだから…忘れないようにな!」

 

「わかった!いってきまーす!」

他愛のないやり取りをして遊矢は出掛けていった…。

 

 

 

「ずっと寝てるのも体に悪いな…リビングでジュニアユースの中継でも見ようか…」

 

《……フォーウ…》

 

 

 

 

………

 

 

「遊矢ぁぁ!!ようやく復活したかぁ!!この漢権現坂、こんなに嬉しい事はないぞ〜!!」

 

「あはは、暑苦しいなぁ…大袈裟だって…」

 

「いやいや、遊希の事も含めて…みんな、本当に心配してたんだぞ?」

少し時間は流れ、LDSのセンターコートで遊矢は修造塾長、そして権現坂と再会していた…権現坂に至っては遊矢をしっかりと抱きしめて嬉し涙を流している。

さすがの塾長と柚子も苦笑いである。

 

 

 

「「「遊矢兄ちゃーん!!」」」

 

「あっ…アユ!フトシ!タツヤ!」

 

「うん、これで療養中の遊希と…行方不明の素良以外は、全員揃ったな…」

連絡をもらって駆け付けたジュニアの3人と遊矢の再会を見ながら修造は呟く…伝手を使って探し続けているが、素良はまだ見つかっていなかった…。

 

 

 

 

『あっ…!!ダーリン!!目覚めたのね!私のお祈りが届いたのね〜!!』

 

「わっ!?ミエル…それに…」

 

『フン…』

再会を喜ぶ遊矢達だったが…そんな時、センターコートに黄色い悲鳴が響くと同時に遊矢に衝撃が襲いかかる、それは遊矢へとジャンピングダイブを決めたミエルのモノ…だが、遊矢の視線はその後ろにいた…LDSの3人組、北斗・真澄・刃に向けられていた…。

 

 

 

 

『榊遊矢…見に来てたのか?どうだい?僕の本当の力を──「黒咲か凌牙に、会いたい…話があるんだ」って、話を聞け!』

ミエルを軽くあしらった遊矢は自慢話をする北斗を無視して、要件を伝える…。

 

 

『話って…?』

 

「真澄…それは、私達から直接伝えたいの…」

 

『柚子…』

真澄が話の内容を訊くが…柚子がそれに答える…その表情から、真澄はその重大さを悟る…。

 

 

『う〜ん、無理だな…黒咲も凌牙も()()()()()で、オレ達も大会ノルマの戦い以来会ってねぇんだ』

 

「社長…零児の……!」

 

『会いたいのなら…遊希を頼ったらどうだ?海馬社長…KCの伝手があるんなら、コンタクトが取れるかもしれないぞ?まぁ、赤馬社長もなんだか忙しいみたいだけどさ…』

 

「そっか…」

遊矢の頼みに刃と北斗が答える…黒咲と凌牙はLDS内でも特別扱いされており、普通では会う事ができないのだ…。

 

 

『まっ、せっかく来たんだ!次の最終試合は見ていけよ!俺と去年の準優勝…梁山泊塾の勝鬨勇雄の戦いだ!損はさせないぜ!!』

沈んだ様子の遊矢に刃が明るく声を掛ける…一回戦の最後を飾るのは、彼の試合なのだ。

 

 

 

 

Side???

 

 

 

 

『……ユート……くそっ…!』

 

『…すまねぇ、黒咲……俺が、間に合わなかったせいだ』

 

「………」

レオ・コーポレーションの社長室、そこで黒咲は拳を握り締めていた…。

映像が見れなくなった直後、零児はすぐに秘書の中島を派遣した…だが、確認できたのは気を失った榊遊矢とその介抱をする柊柚子、そして残されたユートのデュエルディスクだけだった…。

 

 

「それより…その話は本当なのか?凌牙」

 

『ああ、昨日の夜…融合次元の手練れが1人、この世界に来てやがった……俺も()()を出さなきゃならないレベルのな…』

そして、零児は凌牙に交戦したデュエリストについて問いかける…凄まじい融合召喚反応、そして計測不可レベルのエクシーズ召喚の原因を…。

 

 

『アカデミアから離反・保護した奴ら曰く、アカデミアの中でも()()、自分の快楽の為なら相手をどれだけ傷付けても構わない…仲間すらも仲間とは思わない……プロフェッサー直属のデュエル戦士……ユーリ』

 

「ユーリ…何故、そんな男がなぜ、この世界に…?」

 

『戦った感じからして…()()()()だったんだろうな、たまたま…スタンダードに来て、新しい()()()()を探してた……そんな感じだ』

凌牙はユーリと戦った感想を伝える、あの時に戦ったユーリからは…気迫を感じなかったからだ。

 

 

『それより!ユートは何処へ行ったんだ!デュエルディスクは回収できても…あいつの魂のカード…!「ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン」が見つかっていないではないか!!』

 

「落ち着け、黒咲…召喚反応は探している、調査の続報を待て…」

 

『っ〜!少し、1人にさせてくれ…!!』

 

『黒咲…』

凌牙と零児の話を遮るようにユートの行方を訊く黒咲…だが、その行方は分からず…彼は怒りのままに去っていった…。

 

 

 

 

『………悪いな、黒咲にとって、ユートは家族同然だ……家族が急にいなくなったら……取り乱すのは、当たり前だ』

 

「そうだな……凌牙、君は…大丈夫なのか?……榊遊希の事は…」

 

『……大丈夫だ、やれる事はやった……あとは、あの人次第だ』

取り乱す黒咲をフォローする凌牙…そんな彼に零児は今回の()()()、遊希について訊ねる。

 

「記録写真は見せてもらった……あの被害からして、リアルソリッドビジョンの出力はスタンダードの一般的なデュエルの5()()()()、車に轢かれたように……全身骨折していても、おかしくはないはずだが…」

ユーリと遊希、そして凌牙による戦場となった倉庫街…そこは黒咲対素良戦とは違う意味で『次元戦争』を零児に実感させる現場となっていた…。

 

 

『あんなのはまだ()()とは言えねぇよ、本当の()()は……大地を砕き、空を裂いて…()()()()()()()………俺は、そんな戦いを経験してきた』

 

「……凌牙…?何を言って……」

凌牙の語る『決闘』の様子に眉を顰める零児…それに気付いた凌牙はハッとした様子を見せる……。

 

 

『……悪い、忘れてくれ……とにかく、遊希は大丈夫だ…それより、次のデュエルの相手だが…』

 

「ん…ああ、黒咲は『ナイト・オブ・デュエルズ』のデュエリストと…君は…『明晰塾』という塾のデュエリストの予定だ」

露骨に話を変えた凌牙は大会のデュエルの相手について訊ねる。

 

 

 

『…あの人……遊希の、相手は…?』

 

「榊遊希の相手は────」

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

 

ガッ!! ドガッ!! グシャ!! ゴッ!!

 

 

 

『があああっ!?』 

 

 

「や、刃殿─!!!」

 

「この、デュエルは…!?」

 

デュエルが繰り広げられているスタジアムに鈍い()()()が響く、それはモンスター同士による衝突……()()()()

 

刃が得意なはずのアクションフィールド『剣の墓場』で…対戦相手によって()()()、痛めつけられている音だった…!

 

 

 

刃 LP0

 

勝鬨WIN…

 

 

 

 

「これが、梁山泊塾のデュエル…」

デュエルが終わり、担架で運ばれる刃の姿を見届けた遊矢が呟く…。

 

「梁山泊塾」…それは数あるデュエル塾の中でも異端中の異端、デュエルに勝つ為には()()()()()()()()()という考えの下、アクションカードの取り合いで相手を傷付ける事やフィールドギミックを最大限に悪用する事も厭わない……超武闘派のデュエル塾である。

 

 

 

『こ、これにて!ジュニアユース選手権の一回戦は全て終了しました!引き続き、二回戦の組み合わせを発表します!勝ち上がった選手の皆さまは登録カードをデュエルディスクにセットしてください!』

重い空気が漂うスタジアムにニコの声が木霊する…そして、デュエリスト達はその指示に従って登録カードを準備する…。

 

 

「俺は…明日の第一試合、ビックリ塾の種賀島有蔵…」

 

「私は…2日目の第ニ試合、デュエルっ子倶楽部の斜芽美伎代とね…」

権現坂と柚子の次の相手が判明する、そして…遊矢は──

 

 

 

「明日の第二試合…梁山泊塾、勝鬨、勇雄…!」

 

「「「えっ…!?」」」

遊矢の相手…それは、残酷なデュエルを見せた勝鬨だった…。

 

 

 

「ユートは、オレに『デュエルで笑顔を』と言った…あいつが本当に伝えたかった事はわからない……けど、オレはオレの信じるデュエルをする!それが、ユートの思いに応える事になると思うから…!」

 

「遊矢……うん!」

かつてない試練を前に、遊矢は決意を固める…ユートの願いに応える為に、自分のデュエルをするのだと…!

 

 

 

『……?』

 

「(勝鬨勇雄…オレはお前のデュエルを認めない、デュエルはみんなを笑顔にするモノ…オレのデュエルで、お前の心に笑顔を取り戻して見せる!)」

そしてフィールドに残る勝鬨と遊矢は睨み合う…遊矢は彼にデュエルの『楽しさ』を思い出させる為に、戦おうとしていた…。

 

 

 

 

 

 

 

「……梁山泊塾、やっぱり…非道いデュエルだったな……」

 

「遊希…」

 

《フォウ…》

同じ頃、遊希は中継越しに見た勝鬨対刃の戦いを見て胸を痛めていた…そんな遊希を洋子は優しく肩を抱いて慰めている…。

 

 

「遊希、とりあえず…自分の対戦相手を確認したらどうだい?」

 

「……そうですね、さて…僕の相手は──」

洋子に促され、遊希は登録カードを読み込む…その対戦相手は……

 

 

 

 

 

 

 

 

【二回戦1日目 第三試合 梁山泊塾 松星炎司】

 

 

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