転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話   作:S,K

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──目に見えるモノだけが真実とは限らない──






──貴方が見てきた者は……『本物』か?──





幕間─カウントダウン─

「……遊希兄……どうして…!なんで…!!」

 

「…遊矢…」

夕方のLDS,その治療室…その前で遊矢・柚子・権現坂と修造、そして駆け付けた洋子は立ち尽くしていた…梁山泊塾の松星との戦いで『暴走』した遊希はデュエル直後に昏倒……治療を受けていた。

 

 

「梁山泊塾の蛮行…それに遊希の堪忍袋の緒が切れた、といった所か……人は怒りに飲まれれば、何もかもを見失ってしまうからな…」

 

「あの時の遊希さん……怖かった…いつもと、全然違ってた…」

 

《フォーウ…》

フォウを胸に抱きながら、柚子がデュエルの様子を思い出す、松星によって高所から突き落とされた遊希…だが、黒き鎧を纏って復活…水晶の大剣によって松星を粉砕し、勝利を収めていた。

…だが、その様子はあまりにも()()……先の試合で同じような様子を見せた遊矢が『嵐』だとするのなら──遊希の暴走は『天変地異』……遊矢以上の迫力に観客達どころかスタッフすらも、しばらく身動きが取れなかった…。

 

 

 

「……遊希兄って…何者、なんだろうな」

 

「えっ…」

 

「オレ…5年も一緒にいて、遊希兄の事…何も知らないんだ…優しくて、オレ達の味方で…いつもみんなの事を気にかけてくれてる……そんな姿しか、知らないんだ…!!」

 

「……それでいいのさ、遊矢……遊希だって、自分が『何者』なのか、なんて分かってない……遊希がどんな子だって…アタシ達の()()だって事は変わらない…!!」

 

「母さん…うん、そうだよな…!遊希兄は、オレ達の家族なんだ…!!」

遊矢は知らなかった遊希の一面を知って涙を流す…それを宥めたのは母である洋子だった、例え遊希がどんな人物であろうと──榊家の大切な『家族』だという事は…絶対に揺らがないと…。

 

 

 

「早く、目を覚ましてよ…遊希兄…!」

 

 

 

 

 

 

 

『………父さん……あんた、いったい()()()()()なんだよ…!?』

扉を一枚隔てた治療室内…遊希の治療を引き受けた凌牙は傷付いた彼を前に動揺していた。

 

治療台に寝かされた遊希は…酷い怪我を負っていた。

落下時に打ち付けたのか、頭からは血を流し…剣を握っていた右腕は()()()()()()()()()()()ズタボロ、さらに松星に殴られた事で肋骨が数本折れ、肺に突き刺さっていた…。

 

 

だが……凌牙にはそれ以上に困惑していた事があった。

 

 

『……あの時の姿()……あれは「NEXUS」だった、しかもドン・サウザンドをぶっ倒した時の……記憶を失って、ユウスケ父さんも眠ってるなら…エクシーズチェンジもできないはずなのに…!しかも…普通の人間相手に使うなんて、考えられねぇ…!!』

遊希が試合で垣間見せた姿…それは英雄の絆の象徴、ランクアップした魂の姿…何故、遊希がその姿に変わったのか…凌牙には分からなかった…。

 

 

『とにかく…治さねぇと…!融合次元が攻めてくるのも、時間の問題なのに…!!』

凌牙は再び回復魔法を行使する…その脳裏には、零児との会話が蘇っていた…。

 

 

 

 

Side凌牙

 

 

 

 

「凌牙、単刀直入に聞く……榊遊希とは、何者だ」

 

『………』

試合直後、レオ・コーポレーションの司令室…呼び出された凌牙と零児は1対1で向かい合っていた…。

 

 

「先ほどの榊遊希の『暴走』…あれは、リアルソリッドビジョンの範疇ではない……まるで、物語の中の『特殊能力』をそのまま現実世界に持ってきたような…理の外の力……あれは()()だ」

試合の様子を司令室で見守っていた零児…だが、映像越しであっても──空間を引き裂いた一撃の恐ろしさは、理解していた。

 

 

 

「今まで、君から聞いていた情報を総合すると…君にとって記憶を失う前の彼は大切な人物であり、次元戦争を解決する切り札になり得る存在だという……もう一度聞く、彼は…何者だ」

 

『…………榊遊希……その本当の名前は…「白波遊海」、俺達の世界で最強の決闘者(デュエリスト)であり英雄、デュエルモンスターズの精霊に愛された男………そして、俺の育ての()だ…!!』

 

「っ…!?」

凌牙の思わぬカミングアウトに零児は言葉を失う、凌牙の発した言葉…それはあまりにも情報量が多かった…。

 

 

 

『遊希は……父さんは、俺達の世界で「災厄」に立ち向かい、行方不明になった…!俺達は少ない手掛かりを集めて、この()()()に父さんがいる可能性を突き止めて……エクシーズ次元に不時着した……そして融合次元の侵攻に居合わせて…戦い続けてきたんだ…!』

 

「待て、その言い方は……凌牙、お前達は……いったい()()()()()()()()…!?」

 

()()()()()()…俺達は──俺達の世界を救う為に、戦いに来たんだ…!!』

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

『……つい、喋りすぎたかもしれねぇ…融合次元の事もあるのに…やっぱり()()()()()()()()()()()……くそっ、力が…足りねぇ…!』

零児との会話を回想していた凌牙は膝から崩れ落ち、苦しげに呼吸を整える……無尽蔵とも思える両親とは違い、凌牙の治療には限界があった…。

 

 

『せめて、璃緒を連れて来れれば……いや、融合次元の侵攻を考えたら…これが限界か……!』

中途半端な回復で力が尽きてしまった凌牙、その脳裏に妹の顔が浮かぶが…静かに首を振った。

 

 

ガラッ!

 

 

『邪魔するぞ……フン、酷い顔だな』

 

『っ…アンタ、は…!?』

その時、面会謝絶にしてあるはずの治療室の扉が開く……現れたのはシルバーのコートを纏い、鋭い目付きを持つ男──レオ・コーポレーションのライバルたる海馬コーポレーションの社長、海馬瀬人その人だった。

 

 

『そう警戒するな、()()()()……我が友の()()よ』

 

『なっ…!?なんで、俺の名前を…!?しかも、俺の事…!』

海馬の一言に凌牙は驚愕する…この次元に来て以降、凌牙は名字を名乗っていなかった…だが、驚くべきは───

 

 

 

『お前にだけ、話がある…お前の父を……『白波遊海』を──呼び戻す方法についてだ』

 

『……母さんの知る限り、この次元にはアンタはいないはずだ……その事も、教えてくれ』 

 

『いいだろう、お前ならば知る権利がある……()()が、何故()()()()に生きているのかを…!』

英雄の息子と英雄と共に歩んだ伝説の決闘者、決して交わらないはずの2人が……ついに邂逅した…!

 

 

 

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

 

 

「………どこだ、ここ…?僕は…デュエルをしてて……」

遊希はふと目を覚ました…だが、そこは見慣れない場所──廃墟となった石造りの教会のような場所だった。

 

 

「誰か……誰かいないのか!?」

遊希は声を張り上げる、返ってきたのは…反響した自分の声だけだった…。

 

「……探してみるしか、ないか…」

遊希は寝かされていた石段から起き上がり、歩き始めた…。

 

 

 

 

「なんだろう、この扉…?」

しばらく周囲を探していた遊希は教会の奥に続く、巨大な扉の前にいた…。

 

「……行ってみよう」

遊希は扉を力いっぱい押し開く…そしてギギギと重たい音と共に、扉は開いた…。

 

 

 

 

 

「……綺麗だな……」

扉の先…そこは祭壇のような場所だった、そこには時間を忘れさせる幻想的な光景が広がっている。

 

 

 

 

光に照らされた…巨大な神鳥、虹色の光、岩の竜、白き龍人が描かれたステンドグラス

 

そして…そのステンドグラスの光に照らされた祭壇の上には……巨大な水晶によって作られた──六角柱が鎮座していた。

 

 

 

 

 

「この水晶……何か、変だ」

幻想的な光景に圧倒されながらも遊希は水晶の柱の近くに辿り着く…そして、その異常さに気付いた。

 

 

透明だと思っていた水晶の中には封じ込められたように()()()()()が安置されている。

 

そして水晶には──黒色の棘のようなモノが突き刺さっていた。

 

 

「……誰が、こんな事──」

遊希は無意識に水晶へと右手を伸ばす、そして水晶に触れた瞬間……。

 

 

ゴウッ!!

 

 

「っぁ!?あ、あ…!があああっ!?!?」

右腕が炎に包まれた…!

 

 

 

「あ、アツイ熱いアツイ熱いィィ!?!?離れない!?なんで!?」

突如として燃え上がった右腕にパニックを起こす…咄嗟に地面を転がろうとしたが、()()()()()()()()()…少しずつ炎は燃え広がる…!!

 

「こ、このままじゃ、このままじゃ…っあああああ!!」

灼かれる痛みに苦しむ遊希…諦めかけたその時…!

 

 

 

ガッ!!

 

 

 

【愚かな…『好奇心は猫をも殺す』…そんな事も知らんのか?】

 

「ぐえっ…!?」

教会に響く低い男の声と共に、遊希へと衝撃が襲いかかる…転がった遊希が祭壇を見上げると…そこには遊希を蹴り飛ばしたらしい、ローブの男の姿があった…。

 

 

 

「貴方は、いったい…?」

 

【我か?我は……「番人」とでも名乗ろうか、榊遊希よ】

 

「番、人…?それよりも…僕の、名前…?」

遊希は『番人』と名乗った男に問いかける…遊希は男の声を知らなかったからだ。

 

 

【貴様は此処が何処かも解らぬようだな……此処はお前の精神の奥深く、俗に深層意識と呼ばれる場所だ……普通の人間ならば、認識する事もできぬだろうがな】

 

「深層意識…僕の……夢の、中…?」

 

【その認識でも良いだろう…大きくは変わらん、現実のお前は眠っているからな……】

番人の言葉から遊希はこの場所が『夢の中』だと認識する…番人は少し呆れているようだ…。

 

 

 

「番人……その水晶は、いったい…?」

 

【…此処はお前の無意識の中、理解しているはずだ……目を反らしている()()を】

 

「………僕の………白波遊海の、記憶…?」

 

【……()()()()、その通り…これは、お前がもっとも取り戻すべきモノであり───お前を()()()()()モノだ】

 

「なんだよ、それ……訳がわからない…」

 

【目覚めの時は近い、お前は決断を迫られる……()()()()()()()……精々、悔いのない選択をするがいい──】

 

「っ…まだ、はなし、は……」

意味深に遊希へと語りかける「番人」…少しずつその姿が、教会が薄れていく……否、遊希の体が目覚めようとしているのだ。

 

 

 

 

 

 

【さらばだ、()()()よ……お前の決断を…我は楽しませてもらおうか】

遊希が消えた教会で番人はフードを下ろす、そこには───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤と青の瞳が妖しく輝いていた…。

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