転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話   作:S,K

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こんにちは!S,Kです!

バトルロイヤルは終わり、生き残った者達は仲間の下へと帰還する…だが、彼らには新たな戦いが待ち受けているのだった…。


それでは、最新話をどうぞ!


Ep.32 ランサーズ結成!〜悪意射抜くは影の英雄〜

『舞網チャンピオンシップ・ジュニアユース選手権!24時間の激戦を勝ち抜いたバトルロイヤルの勝者達が今、LDSのセンターコートに戻って参りました!!どうぞ盛大な拍手でお迎えください!!』

夕暮れの舞網市、LDSのセンターコートスタジアム…ニコの実況が響く中、バトルロイヤルを()()()()()デュエリスト達が帰還する…だが、一様にその表情は暗かった…。

 

 

「あれ…?月影って人に負けたはずのミエルちゃんがいる…?」

 

「沢渡…?遊矢に負けたはずだろ?」

 

「遊希兄ちゃんがいない…柚子お姉ちゃんはいるのに…?」

入場してきたメンバーは遊矢・権現坂・黒咲・凌牙・月影・デニス・セレナ・沢渡・ミエルの計9人…だが、その中に本来ならばいないはずの者がいた事で遊勝塾のメンバー達や一部の観客達が首を傾げる…。

なお、セレナは柚子と服を交換しているせいで、完全に「柊柚子」として誤認され…遊海によってカード化を免れた未知夫・大漁旗・日影は辞退し、LDSにて治療を受けている。

 

 

 

「おい!沢渡!政治家の息子だからってなにやってんだよ!汚いぞ!!」

 

「っな!うるせぇぞテメェら!!オレはズルなんてしてねぇ!オレは赤馬零児から直々に敗者復活戦の権利を貰って勝ち残ったんだ!!そして『ランサーズ』として、この場に立っているんだ!!」

 

「「「ランサーズ??」」」

観客達のヤジに怒った沢渡がニコからマイクを奪い取り、自分は正当な理由でこの場にいるのだと告げる…観客達は『ランサーズ』なる言葉に困惑していたが…。

 

 

『突然ですが…大会主催者を代表して、重大な発表をさせて頂きます!』

その時、センターコートのモニター…そして舞網市中のモニターにLDSの理事長である赤馬日美香の姿が映し出される!

 

 

 

『舞網チャンピオンシップは本日の3回戦、バトルロイヤルをもちまして()()とさせていただきます…!』

 

「「「はぁ!?」」」

日美香の思わぬ言葉に観客や住人達は騒然となる…そして、混乱するスタジアムに向けて日美香が言葉を続ける。

 

 

『チャンピオンシップ中止の理由は…バトルロイヤルの最中、我々の世界に敵対する、敵対勢力が襲来してきた事にあります…それは想像を絶する()()()からの侵略者であり、彼らは我々が住むこの世界「スタンダード次元」への侵略を意図し、尖兵を送り込んできたのです……彼らは、デュエルモンスターズをリアルソリッドビジョンで実体化させ、武器として使用し…バトルロイヤルの参加者に襲い掛かってきました…!バトルロイヤルを中継できなかったのは、舞網市…そして世界にパニックを起こさない為の処置だったと…ご理解ください』

 

淡々と、しかし強い言葉で侵略者…アカデミアの脅威を訴える日美香…しかし、観客達はその事実を信じられずにいた…。

 

 

 

 

『信じられない方も多いかと思います…では、ほんの一部ですが…実際の映像をご覧ください…!』

そしてモニターに仮面を被ったデュエリスト…オベリスクフォースが参加者であるナイト・オブ・デュエルズ…そして、ユースのデュエリスト達を無慈悲にカード化する瞬間の映像が流される…その映像に観客達は思わず悲鳴を上げてどよめいてしまう…。

 

 

『……これが、彼ら…アカデミアの手口なのです…!デュエルで相手を倒し、戦う術を持たない人々をカードに変えてしまう…!しかし、ご安心ください!そんな残業な侵略者達はバトルロイヤルに参加した勇敢なデュエリスト達によって()退()されました!!』

映像が切り替わる…そこには黄金のドラゴンを従えた凌牙がオベリスクフォースを蹴散らす姿…そして、黒咲がオベリスクフォースにトドメを刺す姿…そして…遊矢が素良と戦う姿が映されていた…。

 

 

『彼らこそ、舞網市を守った()()!私は彼らにランス・ディフェンス・ソルジャーズ…すなわち「ランサーズ」の称号を贈り、彼らの栄誉を讃えたいと思います!!』

日美香の宣言と共に、スタジアムは瞬く間に「ランサーズ」コールに包まれる…だが、沢渡を除くメンバー達の表情は暗い。

……無理もないが…真実を知らされる事なく、無理矢理に戦わされた遊矢達が喜べるはずもなかった…。

 

『ランサーズ諸君の戦いにより、ひとまずの危機は去りました…しかし、敵はまた何時襲ってくるとも限りません…それに備える為にも、「自分の身は自分で守る」という気構えの下、より一層のデュエルの鍛錬に励んで頂きたい!!その為の場所は我がLDSが提供します!次のランサーズにはあなた方一人一人がなるのです!!』

 

 

 

………

 

 

 

「フン…くだらん事を……たかだか一企業に過ぎぬレオ・コーポレーション、レオ・デュエルスクールがスタンダード次元全てを守る事は不可能だ……赤馬はそれを理解できておらんらしいな……」

 

「まぁ…これ以上の混乱を広げない為には、ああ言うしかなかったんでしょう…赤馬零児にも釘を刺しておくよ」

一方、KCの社長室…日美香の芝居がかった演説を聞いていた海馬は呆れながら日美香の演説にダメ出ししていた…その横では再会の涙から復活した遊海が海馬を宥めている。

 

 

「遊海、これからどうするんだい?」

 

「とにかく…まずは赤馬零児と会って、俺の事情の説明と…カード化に関する解決策の提示、それから榊家に行って……ああ、いつ次元を越えるのかも確認しなきゃ………それから、できればエクシーズ次元に……」

 

「おい…大丈夫かよ?そんなに詰め込んで…?お前、まだ起きたばっかりなんだぞ?」

遊戯に今後の予定を聞かれた遊海は頭を抱えながら、計画を話す…そんな遊海を城之内が心配する…。

 

 

「…大丈夫、俺は今までずっと何もできなかったんだ……ここから挽回しなきゃ…!早く、翠に会いに行く為にも…!」

 

「遊海…」

遊海は静かに拳を握り締める…今も戦い続けているであろう、翠や遊馬達の事を思いながら…。

 

 

 

………

 

 

 

『諸君…世界は一変した、もう…昨日までの安穏とした平和は過去のモノとなった…!』

ランサーズへの期待でざわめくスタジアム…そのモニターに零児の姿が映し出される…!

 

 

『いまや、戦いの時代に生きている事を認識せよ…全世界のレオ・デュエル・スクール、LDSは…本日より「Lance・Defence・Soldiers」として、防衛の最前線に立つ!そして…この赤馬零児も此処にいるランサーズと共に打って出る!!()()()()とは馬を駆り、槍を構え…敵へと切り込む槍騎兵の事…我々は…必ず、敵を殲滅する事を此処に宣言する!!』

 

それは零児の決意を表す宣誓…此処に、ランサーズは結成された…!

 

 

 

 

Side遊矢

 

 

 

「遊矢兄ちゃん!柚子お姉ちゃんは?一緒じゃないの…?」

 

「遊希兄ちゃんは…スタジアムにもいなかったし……」

大会の説明が終わった後…遊矢と権現坂、そしてミエルは遊勝塾のジュニア達、そして修造と洋子と合流する…しかし、その場に柚子と遊希の姿はなかった…。

 

 

「……塾長」

 

「これは、柚子の…!?遊矢…なんで、お前が柚子の服を…!?」

 

「ごめん……オレ、柚子を、守れなかった…!!」

遊矢は泣きそうな…悔しげな表情で、修造にセレナから返された柚子の服を差し出す…。

 

 

「さっきまで、一緒にいたのは…柚子じゃない…!」

 

「あの子は、セレナって言うの…本当に良く似てるんだけど……柚子とは別人なのよ…」

 

「「「別人!?」」」

遊矢とミエルの言葉に事情を知らない遊勝塾の仲間達は困惑する…。

 

 

「バトルロイヤルで、2人は服を取り替えて入れ替わったのだ……セレナに、時間を与える為に…!」

権現坂も悔しげに語る、柚子の行動によってセレナはアカデミアの『嘘』を知る事ができた…だが、その代わり…柚子は行方不明となってしまったのだ…。

 

 

「っ…俺も、俺もアカデミアとやらに行くぞ!!何処にあるんだ!!柚子を攫った奴をぶちのめしてやる…!!」

 

「む、無理だよ……アカデミアは、俺達の世界とは別の次元にあるらしいんだ……」

 

「なっ…くそ…!くそぉ!!柚子──!!」

修造は遊矢に渡された服を抱えて泣き崩れてしまう…大切な一人娘を失った彼の悲しみは推し量れるものではない…。

 

 

「柚子は、別次元にいる……だから、オレ達…ランサーズが行くんだ…!」

 

「何が…何がランサーズだよ…仲間を守れないで…なにが英雄だよぉ!」

 

「遊矢兄ちゃんが付いてたのに…なんで柚子お姉ちゃんを助けられなかったの…!?」

 

「っ…お前達…」

悔しさを滲ませる遊矢に子供達が涙を流しながら詰め寄る…その脳裏にはカード化されてしまったデュエリストの姿が浮かんでいた。

 

 

「遊希は…遊希はどうしたんだい!?まさか……!!」

 

「遊希兄は………記憶を、取り戻したんだ…アカデミアとの、戦いの中で………でも、オレ達の事……オレ達と一緒に暮らした事、覚えてないって…!!」

 

「……そうかい……元気、なんだね?」

 

「うん…今は、海馬コーポレーションにいるみたい……あとで、家に来るって…」

洋子が遊希について訊ねる…遊希…遊海について何も知らない遊矢は無事である事を伝える事しかできなかった…。

 

 

「遊希兄は、もう帰ってこない……でも、柚子はきっと助ける!!どんな事をしても…!その為に、オレは…次元を越える!!赤馬零児と一緒に、ランサーズとして戦って…今よりもずっと強くなって!敵をやっつけて!!絶対に柚子を取り戻す!!」

 

「遊矢…敵をやっつけるって……その中に()()も入っているのかい?」

 

「あっ…」

敵を倒し、柚子を救い出すと決意を伝える遊矢…だが、洋子が思わぬ言葉を告げる……遊矢は、その問いに答える事ができなかった…。

 

 

「ちょっと来な…!」

 

「あっ、ちょ!?母さん!?」

言い淀む遊矢を見た洋子は…遊矢を引きずって歩き出す……そして…。

 

 

《キュオオン!!》

 

 

 

「えっ…?モンスター…?」

 

その頭上を白きドラゴンが飛び去って行った…。

 

 

 

 

 

Side???

 

 

 

 

「改めて…俺は白波遊海、決闘者(デュエリスト)だ」

 

『レオ・コーポレーション社長、赤馬零児だ…時間を取ってもらい感謝する』

夜の帳が落ちた舞網市、レオ・コーポレーションの社長室…そこでは2人の男が向かい合っていた。

1人は復活せし『英雄』、白波遊海…そしてレオ・コーポレーションの社長、赤馬零児…部屋には2人と凌牙、そしてフォウしかいない状態で会談が始まろうとしていた…。

 

 

『……単刀直入に聞こう……お前は何者だ?お前から感じる気配は私が知る「榊遊希」とはまったく違う、さらに…全身を覆っていた傷もなく、体も成長している……常人ではありえない』

 

「俺としては『榊遊希』としての記憶がないから、なんとも言えないんだが…俺本来の姿はこっちの方でね、お前が知る姿は……ちょっとした()()の結果なんだ、具体的には…まぁ、ビッグバンに巻き込まれたと思って貰えればいい」

 

『お前は…ずいぶんとジョークが好きなようだな?』

 

「嘘は言ってないんだがなぁ…」

遊海の正体を問う零児…遊海は少しの嘘を交えながら、正体をはぐらかす。

 

 

『凌牙からお前の事は聞かされている…お前がいれば、融合次元との戦況をひっくり返す事ができると』

 

「ああ、なんなら……今から融合次元に行って、アカデミアを攻略してこようか?数日あれば制圧できると思うが……それとも、エクシーズ次元への救援が先か?」

 

『冗談は程々にしてくれ…いくらお前が強いといっても、それは不可能……』

 

「父さんの……遊海さんの言ってる事は本気だぜ?その気になれば本当に1人で融合次元を制圧できる……まぁ、()()()()()()()()()だろうけどさ」

 

「ははっ…流石に殲滅まではしないさ、アカデミアのある場所が()()になるぐらいだな!」

 

『(なんだ?この男は…!?話のスケールが違い過ぎる…!凌牙が嘘を言っている…いや、だが…)』

 

この時点で、零児はまだ白波遊海という男を()()()()()()()…監視カメラでそのデュエルを見ようとしたものの、カメラにノイズが走った事で見る事が出来ていなかった。

さらに、その場にいた月影から話を聞いたのだが…『規格外』の一言しか聞く事ができなかったのだ。

 

 

 

「アカデミアは強いデュエル戦士を育成し、エクシーズ次元に侵攻したらしいが…まだデュエリストの範囲内だ、俺や凌牙のような決闘者にとっては敵にならない……まぁ、人海戦術が厄介なぐらいか…本当の意味での命の取り合いをしてないなら、どうとでもなる、人間のカード化もな」

 

『……それは、どういう意味だ?』

 

「カード化は解除できるって事さ…彩華」

 

「はい、マスター…カード化は解除・対策が可能です」

 

『っ!?何処から現れた!?』

遊海が指を鳴らす…すると、遊海の背後の空間が揺らぎ…銀色の髪に、灰色のスーツを着た女性が現れる…零児は突然の登場に警戒する…!

 

 

「私は彩華、マスターの相棒…パートナーです、これがアカデミアのカード化……いえ、『強制転送装置』の解析結果です」

 

『これは…レオ・コーポレーションでも、まだ分析しきれていないのに…!』

彩華がリアルソリッドビジョンの応用で解析結果を投影…その結果に零児は目を丸くする。

 

 

「アカデミアは次元移動の技術を悪用…対象者を強制的に転移させ、その際に対象を粒子エネルギー化…その状態で人々をアカデミアにある装置内に捕らえているようです、そしてカードそのものは『個人』を識別する為の座標……逆に言えば、カードさえあれば装置にアクセスし、その人物を復活させる事が可能…既に実証済です」

 

『……お前は…お前達は本当に何なんだ…?私達が頭を悩ませていた事を、こうもあっさりと……』

一番の問題をあっさりと解決した遊海、そして彩華に零児は脱力してしまう…。

 

 

 

「まぁ、年季と経験と技術力の違いかな?それで…お前達はいつ、融合次元に向かうんだ?」

 

『……まだ、融合次元には向かわないつもりだ……アカデミアに対抗する為、次元戦争の影響が及んでいない4つ目の次元……シンクロ次元に向かい、同盟を結び…戦力を整えた上でエクシーズ次元を開放、融合次元に向かうつもりだ……私は、勝てる勝負しかしない主義だからな……予定では、明日にでもと思っていたが…』

 

「そうか…なら、俺もついて行こう…ああ、次元移動に関しては心配するな()()で行けるから…座標を教えてくれればいい」

 

『……それは、ランサーズに協力する、という事でいいのか?』

 

「ああ、単独行動をしてもいいんだが…世話になった榊遊矢達を放ってはおけないからな、それに……ちょっと確かめたい事がある」

 

『確かめたい事…?』

ランサーズに協力を申し出た遊海は少し前の遊戯達との会話を思い出した…。

 

 

 

Side遊海

 

 

 

「俺のNEXUSの…力の欠片が散らばってる…?」

 

「うん、アテムとラーが散らばった欠片が他の冥界や()()()()自体に取り込まれて、遊海が知らないうちに影響を及ぼしてるんじゃないかって…」

KCの社長室、遊海は遊戯から自分達が『転生』する目印となった遊海の力の欠片…『絆の欠片』についての考えを聞かされていた…。

 

 

「確かになぁ…転生してきたのはオレ達8人だけのはずなのに、双六爺さんとか…羽蛾や竜崎、海馬のトコの磯野さんのそっくりさんがいるもんなぁ…」

 

「……もしかしたら、融合次元には天上院明日香や俺の生徒達が…シンクロ次元には…ジャックやそれ以外のそっくりさん……いや、並行存在がいるかもしれないって事か…」

城之内の言葉を聞いた遊海は「可能性」を考える……本来、「遊戯王ARC-V」には過去作からの所詮()()()()()()()()()が登場していた。

スタンダード次元にはいなかったが…シンクロ次元にはジャックにクロウ、イェーガー…エクシーズ次元にはカイト、そして融合次元にはエドに明日香、名前だけではあるが丸藤亮……それが、遊海の『絆の欠片』の影響を受けたのならば…。

 

 

「遊海、急いでエクシーズ次元に行きたいのは分かる……でも…」

 

「……分かってる、俺の力のせいで予期せぬ事が起きるなら……それを押さえるのも、俺の役目だ…!」

 

「そんなに力むなって…お前の絆の力に導かれたなら、そんな悪い事は起きねぇって!むしろ、お前や遊矢達を助けてくれるさ!」

 

 

 

Side Out

 

 

 

『……分かった、お前の分の座標カード「ディメンション・ムーバー」を用意しておく』

 

「ありがたい、さて…他に聞きたい事はあるか?」

 

『……いや、今は結構だ……全てを話してくれ、と言っても…私はお前からの信頼を得られていないようだからな』

 

「ん…別に、そういう訳じゃないんだが……まぁ、そのうち話すさ……それから、海馬社長から伝言だ…『次元防衛に関しては海馬コーポレーションも協力する、お前がいなくとも我らの世界は俺達が守る…気にせずに行ってこい』だってさ、それと…無闇に()()()()()()を育てようとするのは止めてくれ、本当の意味で()()のは……本当に()()がある人だけでいい」

 

『…………お前は優しいのだな……無辜の人々を守り、戦いの前線に立ち…人々の為に戦う……まるでヒーローのようだ』

 

「ははっ…まぁ、それが俺の生き方だからな!」

海馬社長からの伝言を伝え、LDSの在り方を諫める遊海…その在り方を見た零児はその姿に存在するはずのない、ヒーローの姿を重ねていた。

 

 

「それじゃあ…今日の所は戻らせてもらうよ、この後に榊家の人達に会いに行かない、と─────っ」

 

「っ…マスター!!」

 

「父さん!」

 

『おい!?』

椅子から立ち上がり、榊家へ向かおうとする遊海…だが、一歩踏み出したところでバランスを崩し、膝をついてしまった…。

 

 

「あー……ちょっと、起きぬけに頑張り過ぎたか…?そんなに無茶はしてないはずなんだが……」

 

「……マスター、疲労が溜まっているようです…少し休んでください」

彩華が遊海のバイタルを読み取って進言する、遊海が目を覚まして約半日…その間に2回のデュエルや城之内や遊戯達との再会などなど…様々な事があったせいで気付かぬうちに肉体的にも、精神的にも疲れが溜まっていたのだ。

 

 

「零児、仮眠室を借りるぞ…少し父さんを休ませてやりたい」

 

『ああ、使うといい』

 

「ありがとよ…父さん、立てるか?」

 

「すまん、凌牙…」

凌牙の肩を借りて、遊海は社長室を後にした…。

 

 

 

 

『………世界を救う()()()、か……一度、お前の力を見せてもらわなければな…』

遊海の背中を見送った零児は1人呟いた…。

 

 

 

 

「っ…やっぱり、信頼ないよなそりゃ…零児から見れば『急に現れためちゃ強い正体不明の男』だもんな、俺…融合次元のスパイとでも思われたかな…?」

 

「そこまでは思ってないとは思うけど……すごい警戒してたな」

仮眠室についた遊海は頭を抱えながら呟く…零児の警戒度が高いのは遊海も凌牙も分かっていた…。

 

 

「とりあえず、少し休んでなよ…なんか弁当買ってくるから…起きてから、なんも食べてないだろ?」

 

「ああ…ありがとう、凌牙」

そういうと凌牙は仮眠室を後にする…そして遊海は簡易ベッドに横たわった…。

 

 

「……遊矢は母親とデュエルしてる頃か?」

 

《…舞網市の臨海地区に反応有り、デュエル中のようです》

 

「そうか……アヤカ、デュエルが終わったら起こしてくれ」

 

《了解しました、マスター……良い夢を》

 

《フォウ、フォ〜ウ》

 

「ははっ…やっぱり、お前の毛並みは気持ちいいな、フォウ……すぅ…」

精霊体に戻ったアヤカに目覚ましを頼んだ遊海は…フォウを撫でながら、すぐに眠りに落ちてしまった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【(ここだ…奴が油断している間に、カード化して…アカデミアへの脅威を排除する…!)】

そして、遊海達が眠りに落ちた直後…ローブで身を隠した人物が仮眠室に現れる、それはLDSに潜入していた…()()()()()()()()()だった。

バトルロイヤルでの遊海の力を目の当たりにした潜入者は、アカデミアを守る為に遊海に襲撃をかけるタイミングを狙っていたのだ…!

 

 

【(アカデミアの為に…お前には消えて貰う──!)】

ローブのスパイはデュエルディスクを操作する…そして…。

 

 

 

 

 

『止めとけよ?お前らの技術じゃ…(オレ)達はカードにはならねぇ』

 

 

 

【っ!?】

仮眠室に呆れたような声が響く…スパイは慌てて周囲を見回すが、部屋には無防備に眠る遊海と小動物の姿しか見えなかった。

 

 

『せっかく、相棒が束の間の休息を取ってるんだ…邪魔はさせねぇよ』

仮眠室に闇が噴き上がる…その中から遊海に瓜二つな、黒い服に黒い帽子を被った男が現れる…!

 

 

【なっ…!?どこから!?】

 

『デケェ声出すんじゃねぇ、我らの戦いの舞台は此処にあらず…展開せよ、我らが闘いの場尋常なる決闘の地(コロセウム・デュエルフィールド)】!』

黒い遊海…英雄の影たるユウスケの詠唱と共に世界が塗り替わる、そこは森の中に存在する…誇り高き学び舎、デュエルアカデミアの校舎前だった!

 

 

【アクションフィールド…!?この部屋には投影器は無いはず!?】

 

『さぁ、肩慣らしに付き合ってくれよ()()()クン…!』

 

【くっ…!!】

殺気を放ちながらスパイを睨むユウスケ…そしてスパイはデュエルディスクを構えた…!

 

 

 

 

『【デュエル!!】』

 

 

 

ユウスケLP4000

スパイLP4000

 

 

 

『我のターン!』

『まぁまぁの手札だな…我は手札の地属性モンスター「怒気土器」「リバイバル・ゴーレム」「キャッスル・ゲート」の3体を除外し、「ブロックドラゴン」を特殊召喚!』

色とりどりのブロックでできた玩具のドラゴンが現れる! ATK2500

 

 

『我はモンスターをセット、ターンエンドだ』

 

 

ユウスケLP4000

伏せモンスター ブロックドラゴン 手札0

 

 

 

【いきなり攻撃力2500のモンスターを…だが…!】

 

 

 

【ボクのターン!ドロー!】

【『古代の機械猟犬』を召喚!】

機械仕掛けの猟犬が現れる! ATK1000

 

【『機械猟犬』の効果発動!相手の場にモンスターが存在する時、600ダメージを与える!ハウンド・フレイム!】

 

『むっ…!』

猟犬の火球がユウスケに直撃する! 

 

ユウスケLP4000→3400

 

 

【さらに『機械猟犬』の効果発動!手札の『機械猟犬』と融合召喚を行なう!融合召喚!現れろ!『古代の機械双頭猟犬』!!】

2つの頭を持つ猟犬が現れる! ATK1400

 

【さらに装備魔法『古代の機械仮面(アンティークギア・マスク)』を『双頭猟犬』に装備!これによって『双頭猟犬』は1ターンに一度破壊されず、守備モンスターを攻撃した時!その守備力を攻撃力が上回れば貫通ダメージを与え!さらに、相手モンスターを破壊した時!戦闘ダメージは倍になる!バトルだ!『双頭猟犬』で裏守備モンスターを攻撃!!】

 

『セットモンスターは「魔導雑貨商人」!守備力は700だ!』

 

【ならば…1400の貫通ダメージを受けろ!!】

 

『ふっ…!!』

猟犬の火球がバックパックを背負った虫人を焼き尽くし、ユウスケにダメージを与える…だが、ユウスケは腕を組んでガードする事で攻撃を受け止める!

 

ユウスケLP3400→2000

 

『「魔導雑貨商人」のリバース効果発動!デッキを魔法・罠カードが出るまでめくり、そのカードを手札に加え!それ以外は墓地に送る!』

 

 

墓地送り

 

ロストガーディアン

ギガストーン・オメガ

フォッシルダイナ・パキケファロ

ゴゴゴギガース

スモールピースゴーレム

磁石の戦士γ

ブロックドラゴン

剣闘獣ホプロムス

ロックストーンウォリアー

伝説の柔術家

超電磁タートル

ゴゴゴゴーレム

ロックストーンウォリアー

カオスポッド

守護者スフィンクス

災いの像

磁石の戦士マグネット・バルキリオン

タックルセイダー

磁石の戦士β

 

☆ 封魔の矢

 

 

『我は「封魔の矢」を手札に加える、さらに墓地に送られた「タックルセイダー」の効果発動!相手フィールドに表側表示で存在する魔法・罠を1枚手札に戻す!さらに、そのカードはこのターン発動できない!「古代の機械仮面」を手札に戻す!』

 

【くっ…!】

双頭猟犬に装備されていた仮面が弾き飛ばされる!

 

【ボクはカードを2枚伏せ、ターンエンド!】

 

スパイLP4000

双頭猟犬 伏せ2 手札2

 

 

 

 

『なんだ、アカデミアのスパイといっても、こんなもんか…信念も誇りもない一撃など…我には響きもしない』

 

【くっ…!!(挑発に乗るな…伏せカードは『古代の機械蘇生』に『古代の機械閃光弾』……大ダメージを与えてやる…!)】

ユウスケの物言いにスパイは唇を噛みしめる…!

 

 

 

『我のターン、ドロー!』

『そうか、お前も久々に暴れたいか……我は墓地の岩石族モンスター18体を除外!現れろ!我らが魂を守りし、岩石竜!「メガロック・ドラゴン」!!』

 

《ウオオオオ!!》

雄叫びを轟かせながら、巨大なる岩石竜が顕現する! ATK?→13300

 

 

【ハッ…!?攻撃力、1万超えだって!?】

 

『「メガロック・ドラゴン」の攻撃力・守備力は特殊召喚時に除外した岩石族モンスター1体につき700アップする!』

 

【だが…!『古代の機械双頭猟犬』の効果!相手がモンスターを特殊召喚した時!相手モンスターにギアアシッドカウンターを乗せる!】

メガロックの頭上に歯車が浮かび上がる!

 

 

『どんな小細工をしようが…圧倒的力には敵わん!バトルフェイズ!速攻魔法「封魔の矢」を発動!このターンが終わるまで、お互いに魔法・罠カードの発動を封じる!「メガロック・ドラゴン」で「双頭猟犬」を攻撃!』

 

【無駄だ!「双頭猟犬」の効果発動!ギアアシッドカウンターの乗ったモンスターがバトルを行なう時、そのモンスターを破壊──】

 

『残念だったな…「ブロックドラゴン」がフィールドに存在する限り、自分の岩石族モンスターは戦闘以外では破壊されない』

 

『はっ…?』

伏せカードを封じられ、メガロックの破壊を狙ったスパイ…だが、その作戦は…雄々しき岩石竜には通じない…!

 

 

《お前如きが我らが主達に歯向かうなど…百年早い!吹き飛べ!鳴動富嶽!!》

 

【ぐっ…!?ぐああああっ!?】

大地が隆起し、地面から岩山が飛び出す…アカデミアのスパイはあっけなく吹き飛ばされた…。

 

 

スパイLP0

 

 

ユウスケWIN!

 

 

 

 

 

『フン…力不足も甚だしい!力を隠して我達を倒せるとは思わぬ事だな…!』

 

【くそ…!】

デュエルの終結と共に、周囲の景色が遊海の眠る仮眠室に戻る…そしてフードから僅かに()()()()()()()をのぞかせたスパイは脱兎の如く、部屋から飛び出して行った…。

 

 

《……追わんでよかったのか?ユウスケ》

 

『別にいい…あいつもランサーズの一人だ、これで余計な真似はしねぇだろ』

メガロックに問われたユウスケはつまらなさそうに応える…アカデミアのスパイとエンタメデュエリストの二足の草鞋を履く()()()…それは遊海達にとっては大きな脅威ではなかった。

 

『しっかし…よく寝てるなぁ、今のデュエルでもまったく起きねぇとは………嫌な予感がするな……メガロック、アヤカ…ちょっと頼むぞ』

 

《うむ、任された》

 

《ユウスケ…ええ、マスターを頼みます》

デュエルが終わっても目を覚まさない遊海…その眠りの深さに違和感を覚えたユウスケは実体化を解き、遊海の精神の奥底に還っていった…。

 

 

 

 

 

Side???

 

 

 

「………ここは……俺の深層意識の…」

眠りに落ちた遊海は自分の深層意識……石造りの教会の中にいた、普段ならばユウスケが自分を呼び出したのかと思ったが…今日は違っていた…。

 

 

 

【ようやく目を覚ましたようだな…白波遊海よ】

 

 

 

「この声……まさか!?」

石造りの教会に威厳と畏怖を感じさせる声が響く…その声に聞き覚えのあった遊海は耳を疑うが、目の前で赤黒い炎が燃え上がる…!

 

 

 

【久しぶりだな…我を滅ぼした者よ…!】

 

「ドン・サウザンド…!?馬鹿な…!あの時、完全に倒したはず!!」

炎の中から現れたのは黒い肌に光輝く金色の髪、そして赤い前髪を持つ『混沌の神』……消滅したはずのドン・サウザンドが遊海の目の前に姿を現した…!

 

 

 

「っ…(どうする!?いくら俺でも…この状態で奴を相手にするのは…!?)どうやって、復活しやがった!!」

遊海は大量の冷や汗を流しながら、不敵な笑みを浮かべるドン・サウザンドに問いかける…。

 

【さてな…偶然が重なった結果、とでも言っておこうか……6年前、確かに我は貴様に倒され…我がナンバーズの力ごと、貴様に取り込まれた……だが、ほんの少し前…我は意識を取り戻した……貴様ではない貴様──榊遊希のおかげでな】

 

「っ……まさか、凌牙が…俺を治療した時…!?」

ドン・サウザンドの言葉に遊海は思い当たるフシがあった。

 

凌牙が語った出来事の中で榊遊希が融合次元のユーリによって瀕死の怪我を負い、凌牙が治療した事があったと聞いた……その際、「混沌の後継者」であった凌牙のカオスが遊希に流れ込み…封印していた「No.1000」に干渉……その結果、ドン・サウザンドの復活を許してしまったのではないかと…。

 

 

【フハハ…そう警戒するな、我は今の貴様達と()()()()()()()()()()

 

「なにっ…?」

ドン・サウザンドの思わぬ言葉に遊海は思わず聞き返す…。

 

 

【我と貴様には敵対する理由はない…何故なら、貴様らが()()()()()()()()()()()()()()()()のだからな……】

 

「……俺の記憶を読んだのか」

 

【そうだ、この世界には娯楽がないのでな…自己封印していたお前の記憶を読み取らせてもらった】

アストラル世界は…以前のアストラル世界ではない、アストラルとヌメロン・コードによって1つとなったアストラル・バリアン世界…e・ラー事件の後、融和はゆっくりと進み…2つの世界は和解した、それは…以前の「カオスを悪と断じ、排斥していたアストラル世界」が消え去ったという事になるからだ。

 

 

【一度は…正気を失ったお前の肉体を依代として現世に復活しようとも考えたが……()()()

 

「やめたんかい」

 

【お前が本当の意味で修羅に堕ちていたのなら簡単だったが、お前達は最後の最後で『光』を掴んだ……その過程が愉快だった故な】

 

「……(このドン千……なんか変だぞ?コイツ、こんなキャラだったか?)」

遊海は明らかに()()しているドン・サウザンドを注視する…そして気付いた、胸に輝く「ドン・サウザンドの紋章」…その中心は本来ならカオスを宿した「紅い光」が輝いているはずなのだが……穏やかな()()光が灯っていたのだ。

 

 

「(………一部のカオスが浄化されて…『混沌・悪』だったのが…『混沌・中庸』に傾いてる、のか…?)」

心当たりがあったのはドン・サウザンドの最期…遊海の決死の自爆によって吹き飛ばされたドン・サウザンド、その際に彼は『光』の暖かさを知った……それが影響して、性格が変わった…のではないかと…。

 

 

【しばらくは此処から…お前の活躍…いや、喜劇を見せてもらうとしよう…せいぜい我を楽しませてみせよ…!クハハハ…フハハハハ──!】

 

「なっ…!?ちょっと待て!さっさと出てけ……って、こんな奴開放したらダメだ!?これ以上の厄ネタは勘弁してくれ─!!」

笑い声を響かせながら消えていくドン・サウザンド……その身勝手さに遊海は思わず叫んでしまうのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

『おい!遊海なにがあった…って、この気配の残り香は…!?』

 

「………なんか、とんでもない事になっちゃった……どうすりゃいいんだ!?」

 

『我に聞くなよ!?』

 

そして、異変を感じて戻ってきたユウスケは遊海と共に頭を抱えるハメになったのだった。

 

 

 

 

【クハハハ…!ハハハハハハ!!】

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