転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話   作:S,K

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幕間〜家族〜

「父さん、少しは休めたか?」

 

「……ああ、ありがとう凌牙…だいぶ良くなったよ…」

 

「本当か?まだ疲れた顔してるぜ…?」

 

「だ、大丈夫さ…ちょっと()()が悪かっただけだから…」

 

《フォウ、フォーウ…(なんか、嫌な気配がする気がする…)》

 

30分程の仮眠を取った遊海は目を覚ました…のだが、その顔は疲れきっていた…。

自分の中で復活してしまった…かつてのラスボス『混沌の神』ドン・サウザンド……今の所は世界に牙を剥くつもりはないようだが、遊海にとっての頭痛の種である事には変わりなかった。

 

 

「(とにかく…ズァークの件を解決するまでは、みんなに…アヤカ達にもバレないようにしないと……次から次へと……勘弁してくれ……)」

遊海はドン・サウザンド復活の件を秘匿する事に決めた、そもそも…ドン・サウザンドはナンバーズと共に遊海の『魂』に取り込まれた状態でおいそれとは手が出せず、下手に討伐・開放すればカオスの影響で世界や不安定なARC次元にどんな影響を齎すか分からなかったからだ。

 

 

「(うぅ…転生してから初めて、胃痛を感じる……翠…璃緒…早く会いたい……)」

……久しぶりに強いストレスに苦しむ遊海なのだった。

 

 

 

………

 

 

 

《……マスター、榊遊矢と母親のデュエルが終わったようです》

 

「むぐ……そうか、ありがとうアヤカ」

凌牙の調達してきた牛丼弁当を食べていた遊海…そこへアヤカが遊矢のデュエルの終了を知らせる。

 

 

「座標は分かるか?」

 

《はい!》

 

「よし…凌牙、俺は……榊遊矢達に会いに行く、お前はどうする?」

 

「………俺は…残るよ、明日からの事もあるし……それとも、一緒に行ってほしいのか?」

 

「……いや、聞いてみただけだ……行ってくる!」

 

キィン─!

凌牙に一応の声掛けをした遊海は『紋章の力』でゲートを開く。

 

 

「……父さん、起きてから力を使いすぎじゃねぇか?」

 

「ああ…まぁ、今の俺が何をできて、何ができないのか把握しないといけないからな!順番に力を使ってるんだ……行ってくる!」

 

《フォウ!》

そう言うと遊海はフォウと一緒に次元ゲートに飛び込んだ…。

 

 

 

 

Side遊矢

 

 

 

 

「ああ…久しぶりにやったけど、やっぱり最高だね…デュエルは…」

 

『母さん…!』

 

 

「ふふっ…良い顔になったね、遊矢……ほら!餞別代わりに持ってきな…」

 

『「スマイル・ワールド」…これって、父さんと母さんの思い出のカードなんじゃ…!』

 

「いつか渡してくれって、言ってたんだ…遊矢が本当にこのカードを必要とする時にってね…きっと、今が()()()なんだよ」

 

『母さん…』

 

 

舞網市のとある廃ゲームセンター、遊矢はそこで母である洋子……否、レディースチーム『舞網クイーンズ』元総長である流れ星ヨーコは激しいデュエルを繰り広げ、遊矢が勝利を収めていた。

アカデミアに拐われた柚子を取り戻す為に憎しみと怒りを燃やしていた遊矢…そんな彼を諫める為に洋子は『敵を倒す事』を楽しんでいたレディース時代の格好をして遊矢へとデュエルを挑んだ…。

 

その中で遊勝との馴れ初めと『デュエルは楽しむモノ』というオリジンを遊矢へと伝えた洋子は思い出のカード『スマイル・ワールド』を過酷な戦いに挑む遊矢へと託した…。

 

 

「いいかい、何処に行っても笑顔を忘れちゃダメだよ?もし忘れそうになったら、そのカードを見て…今日の事や父さんの言葉を思い出す事!そして…必ず、やり遂げるんだ!きっと遊矢なら…柚子ちゃんを助ける事も、争いを止める事もできる!アタシはそう信じてる…!」

 

「うむ…!オレも信じているぞ!遊矢!!」

 

「おれも!」

 

「わたしも!」

 

「ぼくも!!」

 

『塾長…フトシ、アユ、タツヤ……』

そして、デュエルを見守っていた遊勝塾の仲間達が遊矢を信じて声をかける…遊矢ならば、必ず願いを叶えてくれると信じて…。

 

「みんなの望みは叶えられる…私の占いにもそう出てる!だから…貴方は自分を信じて!榊遊矢というデュエリストを…!」

 

『ミエル…ああ!オレは信じる!父さんから受け継いだエンタメデュエルを信じる!みんなを笑顔にして、必ず柚子を助けて…みんなの所に帰ってくる!!』

同じく、デュエルを見守っていたミエルの占いを聞いた遊矢は決意を固めた…エンタメデュエルの精神で争いを止め、必ず柚子を助け出すのだと…!

 

 

 

「……あれ…?何これ……『頭上に注意せよ』…?」

そんなかっこいい遊矢の姿を見ていたミエルが水晶玉の異変に気付く…新しい占い結果が浮かび上がっていたのだ、その時──

 

 

ガッシャーン!!!

 

 

「うおおおっ!?」

 

「「「「うわああああ!?」」」」

 

『いきなりなんだ!?』

 

突然、廃ゲームセンターの天井が崩落…遊矢達から少し離れた所に悲鳴と共に何者かが落下してきたのだ…。

 

 

『う、お……短距離移動で、これか……こりゃ、遊馬号も墜落する訳だ…』

 

《フォ〜ウ〜…(ひ、酷い目にあった…)》

砂埃が少しずつ晴れていく…そこにいたの赤い帽子を被った青年とジト目の白い子猫だった…。

 

 

『……遊希、兄……!』

 

 

 

Side遊海

 

 

 

「(っ〜…頭がクラクラする……流石に()()()から落ちたから、しょうがないか……)」

遊矢のもとへ向かおうと次元ゲートを潜った遊海…だが、その瞬間…遊馬達が遭遇したというズァークの力の余波による『時空嵐』に遭遇、乱気流のような環境から咄嗟に抜け出したものの……舞網市上空()()()()()()の場所に飛び出してしまい、フォウを庇いながらそのまま落下……遊矢達のいた廃ゲームセンターに墜落したのだ。

 

 

「(あの嵐じゃ次元間の通信も厳しい訳だ…しかも、嵐をどうにかしないと()()()()()にも帰れない……困ったな…)」

ズキズキと痛む頭を抱えながら遊海はそう予想した…ARC次元の不安定な状態を解決しなければ、嵐は治まらないだろうと…。

 

 

 

『遊希、兄…』

 

「ん……?そうか、座標自体は合ってたのか…」

その時、驚いたような声が遊海の耳を打つ…そこには驚いた様子の遊矢、そして柚子を除く遊勝塾メンバーとミエルがいた…。

 

 

「ゆ、遊希兄ちゃん…遊希兄ちゃんだ!!」

 

「傷がなくなってる!治ったの!?」

 

「帰ってきてくれて良かった──!!」

 

『あっ、みんな!その人は……』

 

「……どうやら、遊希は…子ども達に好かれていたみたいだな…」

そして一拍を置いてジュニアコースの子ども達が座り込んだ遊海に抱きついてくる…多少、姿が変わっても…彼らは遊海を『榊遊希』だと思ったのだ。

 

 

「……アンタ…貴方が、本当のお前なんだね…遊希」

 

「……ええ、初めまして…榊洋子さん、俺は…遊海、白波遊海といいます」

遊海の胸で泣く子ども達…そんな彼らの頭を撫でながら、遊海は改めて名乗った…。

 

 

 

………

 

 

 

「改めて……榊洋子さん、そして…遊矢、記憶を失っていた間の俺を守って頂き…ありがとうございました…!」

 

「頭を上げてくださいな…!アタシ達だって、貴方に支えてもらったんだから…!」

場所を移し、榊家のリビング…遊海はそこで遊矢と洋子に頭を下げていた…5年もの間、記憶を失っていた自分を守り育ててくれていた彼らに礼を伝えたかったのだ…。

 

 

『遊海、さん……本当に…本当に、オレ達の事、何も覚えてないのか…?』

 

「呼び捨てでいいよ、遊矢……俺の中には、この5年の記憶は残っていない……遊希とは完全に()()として、考えてほしい…俺がお前達の事を知ってるのは…海馬社長や凌牙に聞いたからなんだ」

 

『そんな…!』

遊海は遊矢の問いかけに優しく、静かに答える……悪意に呑まれ『災厄』として災いをもたらそうとした榊遊希、その人格…魂は遊海が目覚めるに当たって燃え尽きてしまった…。

 

 

「でも……この5年の記憶が無いなら、なんでフォウや海馬社長の事は分かるんだい…?フォウだって、この家に来て1ヶ月くらいなのに…?」

 

「フォウは…記憶を失う前から、俺の()()だったんだ……俺を探す為に、息子の凌牙と一緒に次元を渡って……」

 

『ち、ちょっと待って!?それが聞きたかったんだ!凌牙が、遊海の息子って…それに次元を渡って来たって…遊海も、別次元の…!?』

 

「……そうか、そこから話さないとダメか……実は──」

遊矢の言葉を聞いた遊海は自分の来歴の一部を伝える…。

 

 

自分が凌牙の育ての父であり、妻がいる事。

 

とある事故に巻き込まれたせいで次元の狭間に投げ出され、そのせいで記憶を失い…肉体年齢も逆行してしまった事。

   

凌牙が自分を助ける為に仲間と共に次元を渡り、ようやく記憶を失った自分を見つけ…フォウにその様子見を頼んでいた事。

 

バトルロイヤルの最中にオベリスクフォースや凌牙と戦った事で…本来の自分を取り戻せた事……少しの嘘を交えながらも、遊海はできる限りの真実を遊矢達に伝えた…。

 

 

 

「アンタも大変な目に遭ってきたんだね…」

 

「ええ…ですが、本当の戦いはここから……次元戦争を仕掛けてきた融合次元を止める為に、俺は遊矢達『ランサーズ』と共に次元を越えるつもりでいます……エクシーズ次元で戦ってくれている仲間を助ける為に…」

 

『遊海…』

粗方の話を伝えた遊海はまっすぐと洋子と遊矢を見つめながら決意を伝える…それは彼らの知る遊希ではなく……歴数のデュエリストとしての顔だった…。

 

 

「それで…1つ、お願いがあるんだ…」

 

「お願い…?」

 

「『榊遊希』の部屋を見せてほしいんだ」

 

 

………

 

 

「……此処が、俺が5年を過ごした部屋……」

洋子の許可を得た遊海は遊希の部屋を訪れていた、部屋の中は整頓され…学習机の上には数年前に遊勝達と撮った写真が飾られていた…。

 

 

「こうして見ると……本当に傷だらけだな……きっと、ずっと痛みに苦しんでいたはずだ…」

写真に写る遊希を見た遊海は呟く…ズァークによって刻まれた傷が残ったままスタンダード次元に流れついた遊希、その苦難は…()()である遊海には想像しきれない辛さだったろうと…。

 

 

《フォウ、フォーウ!(遊海!これ…)》

 

「ん…?これは……遊希のデュエルディスク、か…?」

そんな時、フォウがベッドの枕元を示す…そこには舞網チャンピオンシップの2回戦まで遊希が使っていたデュエルディスクが置かれていた…。

 

 

「これは……何かが録画されてる…?」

デュエルディスクを検めた遊海はデュエルディスクに映像が記録されている事に気付く…そして、再生すると…。

 

 

【コホン……初めまして、本当の僕…白波遊海……君が、この映像を見ているという事は……僕はきっと、記憶を取り戻したんだろう……】

 

「……榊、遊希…」

そこには…白髪にバンダナで左目を隠した傷だらけの少年の姿が映されていた…。

 

 

 

Side遊希

 

 

 

「よし…これでいいな」

舞網チャンピオンシップ、バトルロイヤル前日の夜…遊希は部屋で映像を撮る用意をしていた…限界を迎えつつある自分の体、そして…自分を浸食する「記憶」……遊希は自分が自分であるうちに、「本当の自分」へのメッセージを残そうと考えたのだ。

 

 

「初めまして、本当の僕…白波遊海……君が、この映像を見ているという事は……僕はきっと、記憶を取り戻したんだろう……なんだか、遺言みたいだな……ははっ……」

 

 

 

…………

 

 

【きっと、僕はこの先の戦いで記憶を取り戻す、と思う……その時の為に、僕は君にメッセージを残す事にする……僕は榊遊希、童実野高校の1年生で…五年前、有名なプロデュエリスト・榊遊勝に拾われた居候だ……遊勝さんは三年前、突然いなくなってしまった……それでも、僕はあの人が帰ってくる事を信じてる……次は榊洋子さん、彼女は遊勝さんの奥さんで…僕の大切な、もう1人の母さんなんだ───】

 

「……『榊遊希』としての記憶を失う前に、俺に宛てたメッセージを……」

デュエルディスクに記録された映像…それは遊希から遊海に宛てたメッセージ、自分の人間関係などを伝える為のものだった…。

 

 

 

 

 

【──うん、これでだいたいは伝えられたかな?君にとっては不要なメッセージかもしれない……それでも、()にとっては…本当に宝物のような五年間だった……それだけは、遺しておきたかったんだ】

30分程の時間が過ぎ、再生時間も僅かとなった頃…遊希は涙を溜めながら、遊海へと語りかける…。

 

 

【…白波遊海…もし…もしも、君がこの動画を見てくれたなら……僕の最後の()()を聞いてほしい】

 

「頼み…?」

画面の中の遊希は涙を拭い、遊海をまっすぐと見つめる…。

 

 

 

【もしも、君が───────────】

 

「………ああ、分かったよ…遊希、もう1人の『英雄』……お前の願いは、俺が果たす」

それは遊希の最後の『願い』…それを聞いた遊海はデュエルディスクを握り締めながら、その願いを果たす事を決めた…。

 

 

【……よし、これでいいや……明日からは大事な試合だから、早く休まないと……でも、できれば……この動画の出番が来ないといいなぁ……】

 

「………お前は良く戦ってくれた……だから、ゆっくり休んでくれ……」

動画を見終わった遊海は自分の胸へと手を当てながら、もう1人の自分を悼んだ。

 

 

 

 

「……もう、行っちゃうのかい?」

 

「ええ…まだやる事が残っているので」

遊希からの願いを託された遊海は榊家を後にしようとする……洋子はその背中を名残惜しそうに見つめていた…。

 

 

「榊遊矢…お前は、本当に次元を越えるのか?」

 

『……ああ!オレが信じるエンタメデュエルで争いを止めて、絶対にアカデミアから柚子を助け出すんだ!!』

そして遊海は改めて、遊矢へと覚悟を問う…その問いに遊矢はまっすぐに答える。

 

 

「これから俺達が向かうのは『スタンダード次元』とは違う価値観のある()()()……お前のデュエルは受け入れられないかもしれない、お前を叩き潰す程の強者がいるかもしれない……それでも、お前は『榊遊矢』を貫けるか?」

 

『っ…!!(なんだ、この圧力…!?零児や融合次元の奴ら以上の…!!)』

その答えを聞いた遊海はわずかに闘志を放ちながら、遊矢を睨みつける…その気迫に遊矢はたじろぐ…。

 

 

『オレは…オレを、貫いてみせる!!』

 

「ふっ……いい顔だ、本来の自分を取り戻せたみたいだな……お互いに頑張ろう、エンタメデュエリスト・榊遊矢!!」

 

『っ…ああ!!』

戸惑いながらも答えた遊矢…その様子を見た遊海は表情を和らげ、拳を突きだす……そして遊矢も拳を突き返した。

 

 

 

 

「……ズァークの欠片、エンタメデュエリスト…レジスタンス…D・ホイーラー…そして侵略者……対処はアカデミアとの戦いを終わらせてからだ……!」

鋼の鎧を纏い、夜闇を駆ける遊海…問題は山積み、それでも…遊海は止まる事はない……戦い続けている仲間達の──家族の為に…。

 

 

 

 

 

「翠…必ず、帰る……だから、もう少し待っててくれ…!」

気まぐれアンケート 遊海のBGMにするなら?(2回目)

  • 熱き決闘者達
  • 熱き決闘者達(DSOD Vr.)
  • 運命のテーマ
  • 5D'sのテーマ
  • 信念
  • 友情のデュエル(ZEXAL)
  • ディケイド(説教のテーマ)
  • それ以外
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