転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話 作:S,K
【ホワイト議長…もう一度言わせていただきます、彼らはコモンズを扇動し!シティで騒乱を起こそうと計画していたのです!!これは脱獄を手助けしようとした仲間の証言からも明らか…!彼らを即刻、拘束すべきです!!】
収容所での脱獄事件から数時間、輸送機によって護送された遊矢達ランサーズと長次郎、そしてクロウ・シンジ・デイモンを含めたコモンズ組はシティの最高権力機関・行政評議会の議場へと連れてこられていた…彼らの前では遊矢達の身柄を確保しようとするロジェが行政評議会の5人へと訴えかけている…。
「っ…黙って聞いてれば…!ふざけんな!オレ達はコモンズがどうこうっていう計画は知らねぇし、そもそも…捕まるような悪い事はしてねぇ!オレ達が何をしたって言うんだよ!?」
ロジェの演説を聞いていた沢渡が声を上げる…だが、ロジェは表情を崩さない…。
【セキュリティに対して抵抗した…それだけでも、充分な罪です】
「待ってよ!先に手を出したのはそっちだろ!?この次元に着いた途端、右も左も分からないのにいきなりセキュリティに囲まれて…!」
【
続いて反論する遊矢…ロジェはその言葉の揚げ足を取る…。
【彼の言葉をそのまま受け取れば…彼らは
……ロジェという男は口がうまく、弁が立つ…何も知らぬ者が彼の話を聞いたならば…例え、嘘であっても信じてしまうだろう…ただ、弱点があるとするならば───
「あんたなぁ…年端もいかない少年少女を追い詰めて恥ずかしくないのか?こいつらはまだ14やら17歳なんだぞ?」
【っ…貴様!!】
会議室に呆れたような声が響く、そこにやって来たのは肩に白猫を乗せた赤帽子の男…白波遊海だった。
「アンタ…脱獄の時の…!」
「おう、クロウ・ホーガン…さっき振りだな!さて…行政評議会の皆様、俺は白波遊海…スタンダード次元防衛隊、ランス・ディフェンス・ソルジャーズ…通称ランサーズのお目付け役…サポーターみたいな事をやらせてもらってる」
【ホワイト議長!この者こそ、今回の脱獄騒動の主犯!即刻逮捕すべき危険人物です!】
余裕を持った態度で評議会の議員達に挨拶をする遊海、その姿を見たロジェは遊海を危険人物と見做し、拘束するように進言する。
「危険人物とは失礼な…まぁ、否定はしないが……俺は無辜の罪で囚われた仲間を助けに行っただけだ、それより…他のコモンズの人々を含めて、逮捕状や取調べ、裁判も無しに収容所に連行するのもどうかと思うが…どう思う?」
【貴様…!セキュリティ!!この者を…!】
「ああ、お前の連れて来たセキュリティは
【はっ…?】
ロジェは遊海を捕らえようとするが…遊海の一言に思わず固まる。
「ここに来るまでにデュエルギャングを3つ壊滅、放火魔と宝石強盗犯、誘拐未遂犯とひったくりを確保…それから車両事故の救護と火災の消火…ああ、それからDホイール暴走族の抗争を止めて来た…その処理は居合わせたデュエルチェイサー003って人に任せてあるから、報告書を読んでくれ……コモンズ
「「「「何やってんの!?」」」」
遊海の言葉に思わずランサーズ達の声が重なる…遊星の家から行政評議会に向かうまでにいつもの
「それから…
「お前は……つくづく規格外…手に負えないな、あまり騒ぎを起こさないで欲しかったのだが…」
「心配すんな、顔は隠してる」
「っ!?零児!」
「……やはり無事だったか」
最後に遊海は会議室の一角に目を向ける…そしてVIP用と思われる階段から月影・零羅と共にランサーズのリーダー、赤馬零児が現れた。
【お前は…!】
「私は赤馬零児、ランサーズのリーダーだ…我々の目的は騒乱ではない、いまだに融合次元・アカデミアの侵略の手が及んでいないこのシンクロ次元を守り、同盟を結び…次元戦争に勝ち抜く為にやって来たのだ」
【ふ、はははは!!何を言い出すかと思えば…!次元戦争だと?そんな雲を掴むような話など、信じられるか!】
『ロジェ長官、話はそこまでだ…話は全て赤馬零児から聞いている』
『3つの次元が関わる戦争の事も』
『デュエル戦士、ランサーズの事も』
『ですな?議長』
『はい、その話はそこまでに』
【っ!?評議会は…こんな戯言を信じたと言うのですか!?】
零児から語られた次元戦争の話を信じないロジェ…だが、評議会の議員達は既に現状を把握していた…。
『戯言かはわからん、現に…異世界から来たという人間がいるのだから』
『貴方も別次元の存在を信じたから、彼らを捕らえて目的を調べようとしたのでしょう?』
【っ…彼らの目的こそが、我々の次元への侵略ではないのでしょうか…!】
「はぁ…聞き分けろよ、ロジェ長官…貴方の上司が一応とはいえランサーズを受け入れた…ならば、それを受け入れるのも長官として度量じゃないのか?俺達は好意でこの次元を守りに来たんだが?」
【守るのは我々セキュリティの役目だ!お前達ではない…!お前達が何者であるかはセキュリティが…!】
『いいえ、決めるのは評議会です…その為に全員を行政評議会の管理下に置いた』
行政評議会の決定に反対するロジェ…だが、評議会の決定は簡単には動かない。
「ち、ちょっと待て!全員って俺も疑われてるのかい!?俺は遊矢達と会ったのは数日前で…10年も収容所にいたんだぞ!?」
『例外はない』
「嘘だろ!?」
そんな中、想像を超えた話に戸惑っていた長次郎が声を上げる…「全員」の中には長次郎やクロウ達も含まれているのだ。
『君達が我々の味方だと言うのなら、それを証明してもらいたい』
「証明…?どうやって…!」
「
「「「フレンドシップカップ?」」」
「シティで行われる大規模なデュエル大会だ」
零児によってフレンドシップカップへの出場を伝えられるランサーズ…だが、その内容に首を傾げる。
「ランサーズが大会に出場し、デュエリストとしての腕前を見せるようにと」
「…零児、俺は
「むっ…?何故だ?遊海」
「俺が出たら…ランサーズの実力を見せるという目的が果たせなくなるからな!」
「「「あっ…(察し)」」」
「……遊矢、あの遊海って奴は強い…んだよな?この前も見たけど…」
「……うん、1人でアカデミアのエリート…オベリスク・フォースって奴らを12人倒してるんだ…」
「……やっぱりやべぇ奴なんだな、アイツ…」
零児の言葉を聞いた遊海はフレンドシップカップへの出場を辞退する、その理由にランサーズの声が重なる…なお、遊海の強さを把握していないクロウは遊矢に尋ねるが…その態度から察したのだった。
『白波遊海、貴方の事も赤馬零児から聞いています…貴方が規格外のデュエリストである事も、そうであればなおさらその実力を見せて欲しいのだが?』
「余所者が
『『『『!!』』』』
遊海に出場を迫る評議会…だが、遊海の言葉に議長を除く4人の表情が固まる。
「……大会の、趣旨?」
「フレンドシップカップ…その大会が始まるキッカケになったのは、貴方なんですよ…徳松長次郎さん」
「キッカケが、俺?」
『ええ、その通り…わし個人としても、貴方に出てもらいたい』
遊海の言葉をホワイト議長が引き継ぐ…十年前、トップスの陰謀によって表舞台を去ってしまった長次郎…その影響がコモンズに及び、若者達の暴動が激増した…行政評議会は新たにデュエルチェイサーズを発足させたが、焼け石に水…混乱は収まらなかった。
そこでトップスとコモンズの融和を目的としたデュエル大会・フレンドシップカップを発案…優勝者を『キング』として讃え、融和の象徴にしたのだと…。
「っ…何が双方のキングだよ!!ジャックの野郎、キングになったからってコモンズに顔も出しゃしねぇ…アイツみたいにトップスの見世物になるのはごめんだ!」
「クロウ…」
その時、クロウが忌々しげにフレンドシップカップを非難する…「融和の祭典」とはなっているが、全てのコモンズに受け入れられた訳ではないのだ…。
「こうなったらしょうがねぇよクロウ…まぁ、出場すればフランク達に元気な姿を見せられるぜ?」
「っ…くそ…」
しかし、シンジの言葉にクロウは顔を歪める…子供達の事を言われるとクロウは弱いのだ…。
「よっしゃ…!この俺が、もう一度表舞台に…!子分達に晴れ姿見せてやれるぜ!!」
「よ〜し、遊矢!オレ達のエンタメデュエルでシンクロ次元の観客達を沸かせてやろうぜ!!」
「うん…」
その横で純粋に出場を喜ぶ長次郎と沢渡…だが、遊矢の表情は暗かった…その理由は…。
「そんな事よりも、早く柚子を探しに行かないと…!遊海!柚子は、柚子は見つかってないの!?」
「悪いな、遊矢…俺は人探しは得意なんだが…一度会ってないと追えないんだ…」
「そんな…!」
遊矢が暗い理由、それは柚子が見つからないから…遊海も会った事がない柚子の居場所は追う事ができず、まだ会えていないのだ。
【ほう…やはり、柊柚子は貴方達の仲間でしたか】
「っ…!?まさか…!!」
【ふっ…まだ、捕まえてなどいませんよ…彼女もまたフレンドシップカップに出場する大事なデュエリストなのですから…!】
「ゆ、柚子が大会に!?」
そんな時、自分の想定外の事態に歯噛みしていたロジェが声を上げる…それは柚子がフレンドシップカップに出場するという衝撃的な言葉だった。
……実は、指名手配されているにも関わらず…ユーゴが堂々と本名で自分と柚子の出場書類を出してしまったのだ…。
なお、ユーゴに悪気はなく…自分の夢を果たす為と大舞台の方が「次元戦争」の脅威を伝えやすいと自分なりに考えた為である。
【そんなに心配なら…キミも早く、彼女に元気な姿を見せてあげるといい!ホワイト議長、彼らをフレンドシップカップに出場させる事は認めましょう…しかし、一つ提案させて貰いたい!】
『提案?』
【毎年、フレンドシップカップの前夜祭ではキングがエキシビジョンマッチするのが恒例、その相手を…榊遊矢!彼につとめて貰うのです!】
「俺が!?」
『何故、彼なのです?』
ロジェの思わぬ提案に遊矢は驚愕する…!
【私の見立てでは…ペンデュラム召喚と言う奇想天外な召喚法に最も精通しているのは彼、その実力をキングに見極めて貰うのです!】
『なるほど…よろしいですな?議長』
『はい、それで結構…赤馬零児、あなたは?』
「もちろん、異論はありません」
ロジェの提案を承認するホワイト議長、零児も異論は出さない……だが、一瞬…ホワイト議長・ロジェ・零児の視線がぶつかり合った…。
『では、今日はここまで……移動を願います、ランサーズの諸君』
「えっ…!?みんなを何処に連れていくつもりだ!?」
議長の一言でこの場は解散となる…だが、ランサーズ達と遊矢は使者によって分断されてしまう…!
『心配はいらない、危害を加えるつもりはない』
『君達はフレンドシップカップの出場者…例え、脱獄犯でも
『
『ええ、客人としてもてなしましょう…勝ち続ける限りは…』
意味深に『勝ち続ける限り』と言う評議会…その姿に遊矢は不安を覚える。
「とりあえず話は終わったな…なら、俺は戻らせてもらう」
『待ちなさい、白波遊海…例外はありません』
『出場者でなくとも…我々の命令には従ってもらいます』
「はぁ…悪いが、約束があるんだ」
「遊海!!」
そして同じく立ち去ろうとする遊海…だが、評議会の使者達に周りを囲まれる!
「遊矢、これが最初の試練だ、お前の信じる『エンタメ』を貫いてみせろ…後で会おう…それから零児、俺を縛れるのは……
キィン!
『『『『『消えた!?』』』』』
指を鳴らした遊海の足元に不可思議な紋章が現れる…そして遊海はフォウと共に一瞬で姿を消してしまった…。
【(デュエルディスクを使わない単独転移だと!?何なんだ、奴は…!?)】
《フォウ、フォーウ?(……遊海、大丈夫…?)》
「………(…無駄にカッコつけるんじゃなかった…でも、感覚は分かってきたぞ…)」
《やれやれ、世話が焼けるわい……引っ張るぞ〜》
《主殿が不死身でなければアウトだったな…》
コモンズ地区の裏路地…アスファルトの地面に犬神家状態で転移してしまう遊海なのだった。
「(シティの価値観は
しかし、その中で遊海は世界を変える為の一手を考えていた…。