転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話   作:S,K

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幕間〜アカデミアの影〜

『………ひとまずは決着がついたようですな……少し真面目な話をするとしましょうか、赤馬零児』

 

「ええ、伺いましょう」

黒咲対デニス戦直後の行政評議会…ホワイト議長は静かに零児へと声をかけた。

 

 

 

『キミも分かっていた通り、我々評議会は融合次元・アカデミアの存在は気付いておった……シンクロ次元にない技術──『リアルソリッドビジョン』を持ち込んだジャン・ミシェル・ロジェという存在を通じてな』

 

『10年前、エンジョイ長次郎が捕まってからトップスとコモンズの対立は激化…それを収めるには「融和」の象徴となるフレンドシップカップの開催…そして暴走を取り締まるセキュリティの強化が急務だった』

 

『そこへロジェの持ち込んだ技術はまさに渡りに船…我らはロジェを飼い慣らそうと考えた…例え、侵略に繋がる目的があったとしても──それがシティの社会秩序を守る為に必要だったのだ』

 

『そこへ…赤馬零児、貴方が率いるランサーズが現れ……そして「次元戦争」の脅威を訴えてきた』

 

「貴方方にとっては都合が悪かった、ロジェが『逃亡者』である事を知らなかった行政評議会から見れば……ロジェの報告でアカデミアの攻撃の矛先がシティに向くのではないかと…そうですね?」

 

『いかにも』

ロジェの存在から『侵略者』融合次元の存在に気付いていた行政評議会…彼らはシティの平穏を守る為にロジェとランサーズを天秤に掛けようと考えていた…。

 

 

 

『我らはロジェとキミ達を天秤に掛け、どちらに味方をするのか──どちらを取り込もうかと考えておった…だが、想定外の事が起きた』

 

「規格外の決闘者、白波遊海の干渉…」

 

『そう…まさに規格外、彼はシティの混乱を最小限に、次元戦争の脅威…ロジェの野望を白日の下に晒し、トップスとコモンズの手を取り合わせ、さらに大きな「脅威(冥界の王)」からシティを守ってくれた……であれば、我らが選ぶべき答えは1つしかない───赤馬零児、行政評議会はキミ達ランサーズを支持する』

 

「───それは…」

それは『行政評議会』の総意、シティに巣食った『闇』を打ち砕き、人々の心を繋ぎ、「脅威」を祓ったランサーズへの──遊海への感謝の対価だった。

 

 

 

「ホワイト議長…それは我々にとっても有り難い申し出です……ですが、まだ()()にして頂きたい」

 

『なんと…?』

───だが、零児はその申し出を保留にしてほしいと答えた…思わぬ反応にホワイト議長は驚いている。

 

 

『キミ達の目的は我々との同盟の締結のはず…何故、留保すると?』

 

「この同盟は──()()()()()ではないからです、これは白波遊海が()()()1()()()もたらした成果……こんな形で同盟を結んだとしても──我々はともかく、シティの人々は納得しないでしょう」

 

『むぅ…確かに、それも一理ある…』

零児はホワイト議長に告げる…シティを変えたのはランサーズではなく、遊海()()の力…ランサーズ自体の力を示せていない現状では、シティの人々を納得させる事はできないと…。

 

 

「私は…ランサーズのメンバー達を信じています、勝ち残った彼らの()()がフレンドシップカップを勝ち上がり──キングとのデュエルで同盟を結ぶに足り得る戦いを見せてくれると」

 

『そうか…それがランサーズの指揮官であるキミの判断ならば…それを尊重しよう』

零児の決意を聞いたホワイト議長は静かに頷く…その表情は穏やかなものだった。

 

 

『だが、同盟を結ぶ事とこれは別だ…ランサーズがシンクロ次元に滞在する間、行政評議会はキミ達をしっかりとサポートさせて貰おう、ですな?議長』

 

『はい、改めてよろしく…赤馬零児君』

 

「ありがとうございます」

同盟自体は先送りとなったものの…行政評議会とランサーズはしっかりとした協力体制を結ぶ事ができたのだった。

 

 

 

 

「では、ホワイト議長…先程拘束されたデニスとの面会許可を頂きたい…彼に確認したい事があります」

 

『分かりました、すぐに準備を──おや?デュエルチェイサー003、どうし──なんですと?』

 

「何か問題が?」

 

『────デニスが逃亡した、と…!』

 

「っ──!!」

協力体制を結んだ評議会に対し、零児はアカデミアのスパイであったデニスとの面会を求める…だが、それは一歩遅かった…!

 

 

 

 

Side???

 

 

 

「まったく…なんで遊海はこういうトラブルとばっかり関わるんだろうなぁ……次元戦争なんて、「未来人(イリアステル)」との戦いレベルの眉唾だぜ…」

黒咲とのデュエルに敗北したデニスは気絶したまま牛尾や評議会の使者達に護送されていた…そんな中で次元戦争の事を愚痴っていた牛尾だったが…。

 

 

パン!パン! バシュー!!

 

 

「んなっ…煙幕─!?デニスを守れ!!」

突然、爆竹の音と共に周囲が煙に包まれる、咄嗟にデニスを守る牛尾達だったが──

 

 

「くそっ…!?なんつう手際だ!?」

煙が晴れた時…デニスは連れ去られた後だった…。

 

 

 

…………

 

 

 

『っ…ぐ……ここは…?』

 

「ようやくお目覚め?」

 

『キミは─?』

気付いた時、デニスはシティの裏路地にいた…そしてその傍にはキャンディーを持った青髪の少年の姿があった…。

 

 

「僕は紫雲院素良、アカデミアのデュエリストさ」

 

『っ…そうか、思い出したよ…キミもアカデミアだったんだね』

 

「それは僕のセリフさ、キミもアカデミアで…瑠璃の件にも関わってたなんてさ」

 

『ははっ…ボクは任務を遂行しただけさ…』

お互いにほぼ初対面の素良とデニスは挨拶を交わす…。

 

 

『さて…あとは柚子とセレナをユーリに引き渡さなきゃ……イタタ…』

 

「──それは僕が()()()()、君はアカデミアに戻るんだ…」

 

『ちょっ、何を言ってんの!?』

デニスは素良の思わぬ言葉に驚愕する…デニスの任務は『セレナの監視』と『柊柚子の拉致』…その為にデニスはランサーズに潜伏し続けたのだ。

 

 

『キミ1人じゃヤバイって!?この次元にはあのバケモノみたいなデュエリスト…白波遊海がいる!アレを倒すのは不可能だよ!?』

 

「僕はセレナを連れ戻すように()()、プロフェッサーから命令されてる…これは僕の仕事だ、それに…僕が助けなかったら、君はもう捕まってた…その体じゃ、任務遂行は無理だよ──だから、早く戻るんだ」

 

キィン─!

 

『まっ…!?』

素良はデニスの言葉を無視してデニスを強制送還する…!

 

「アカデミアに戻ったらプロフェッサーに伝えてほしい、必ず任務はやり遂げるから──()()はいらないって」

 

『ちょっ、素良──!』

何かを言う前にデニスはアカデミアへと転送された…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──紫雲院素良、お前がもしも…アカデミアの理念が間違っていると思うなら…ここから逃げろ、そして()()──

 

 

──頼れ?誰を…?──

 

 

──()()()──

 

 

──英雄…?というか、貴方がそんな事言っていいの?みんなから……──

 

 

──誰になんと言われようと関係ない、俺は……あの人が来るまで()()()()()、デュエルアカデミアの誇りを…!──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………頼れ、って言われてもなぁ……何処にいるんだよ、その()()って…」

シティの裏路地で素良は小さくため息を吐いた…。

 

 

 

Side OUT

 

 

 

 

『フレンドシップカップ出場者達は!』

 

『移動中の黒咲以外は部屋に……彼らは無関係のようですな』

 

『赤馬零児、これは……』

 

「…別に潜伏していたアカデミアの人間に奪還されたと考えるのが妥当でしょう……じきに、オベリスクフォースがやって来る可能性があります…!」

 

『オベリスクフォース…アカデミアのエリート部隊、ですか…』

デニスの失踪を受けて行政評議会は周囲を捜索したが、デニスを見つける事ができない……そして零児は最悪の事態を予測した…。

 

 

『赤馬零児君、オベリスクフォースの戦力は……』

 

「基本は3人一組で行動し、デニスが見せた『古代の機械』モンスターによる連携、人海戦術を得意としています…能力的にはデュエルチェイサーズ3人以上、スタンダードでの経験を踏まえれば──2日以内に襲撃を仕掛けてくる可能性があると思われます」

 

『たった2日…!議長、どうします…!?フレンドシップカップを中止──』

 

「いえ、それは悪手かと……シティに大きな混乱を齎す可能性があります、それに『融和の祭典』が中断されれば──再びシティは()()()でしょう」

 

『ならば─キミはどうする?』

 

「予定通りに大会を続行…その上でデュエルパレス以外のスタジアムや学校をライブ中継会場として開放し、トップス・コモンズを問わない避難所を兼ねさせます……そして襲撃してきたオベリスクフォースを最大限の戦力で迎え撃つ…私はその方法でスタンダード次元を襲ったオベリスクフォースを撃退しました」

 

『なるほど、合理的な策…やはりキミは切れ者だ』

アカデミアの襲撃を前に慌てる行政評議会…だが、一度経験のある零児は最善の作戦を提示する。

 

 

『赤馬零児君、オベリスクフォースの目的は……』

 

「ランサーズのメンバー、セレナ…並びに柊柚子の確保、と思われます」

 

『わかった、二人のデュエルの際は近くにセキュリティを配置しよう…それから──白波遊海の行方は…?』

 

「……不明です、あのセルゲイ戦のダメージは無視できません……動ける状態かどうかも……ですが、彼がいなくとも──ランサーズは全力でオベリスクフォースに応戦します」

 

『……頼りにしています、シティを…必ず守りきるのです…!』

秘密裏に…行政評議会はアカデミアの迎撃準備を始める事となった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【帰還したデニスの報告により、シンクロ次元の街・シティにセレナと柊柚子がいる事が判明した……バレット、お前にはオベリスクフォースの準備が整い次第、シンクロ次元に向かってもらう】

 

『はっ…!汚名返上の機会を賜り、感謝いたします…!』

融合次元・アカデミア…玉座の間、プロフェッサー・赤馬零王はシンクロ次元への攻撃、セレナ奪還の指示をセレナの付き人であったバレットに下していた…。

 

 

【じきにユーリも合流する、彼と協力して──】

 

『いいえ、その前にセレナ様と柊柚子を捕らえてみせます…!』

アカデミアの切り札の1つ、ユーリを差し向けるプロフェッサー…だが、バレットはその前にセレナ達を確保すると豪語する。

 

 

【そうか…ならば、さらに1つ任務を追加する……場合によっては()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『はっ…!?その任務とは…?』

 

【それは────】

 

 

 

シティに混沌の影が伸びるまで…あと少し…。

 

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