転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話   作:S,K

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幕間〜逢瀬〜

「ぐう…ぐう………」

 

「ふがっ……もうたべられな……くか〜…」

 

 

 

「…………」

 

深夜、ほとんどの人々が眠りについたハートランド…権現坂のいびきや、沢渡の寝言が小さく聞こえる中、遊矢はテントの外で焚き火を見つめていた。

スタジアムで泣き疲れて眠ってしまい、目が冴えてしまったのだ…。

 

 

 

「………遊希兄……」

焚き火にあたりながら遊矢が呟いたのは、今はもういない『兄』の名前だった。

 

「榊遊希」……何らかの事故でスタンダード次元に流れ着いてしまった白波遊海が記憶を失っていた時の姿。

遊矢達と共に5年の月日を過ごした彼は舞網チャンピオンシップに乱入したアカデミア・オベリスクフォースへの怒りによって『厄災』へと変貌……駆けつけた凌牙によって倒され、遊海が記憶を取り戻した事で…その存在は遊海の中から消えてしまった、という…。

 

 

──また後で会おう!──

 

 

「何が、「また後で」…だよ…!遊希兄の、馬鹿…!全部、自分だけで抱え込んで…!」

遊矢の脳裏に蘇るのは最後に見た遊希の姿…不運が重なり、ボロボロの身体を引きずりながら…それでも明るく振る舞っていた気丈な背中だった。

 

 

 

 

「遊矢…?」

 

「あっ…柚子、ごめん…起こしちゃったか?」

 

「違うの、ちょっと眠れなくって…セレナはフォウくんとぐっすり……フォウくん、女の子の方が好きなのかな?」

 

「本当だ…いつの間に仲良くなったんだろ…?」

そんな時、女子に割り振られたテントから柚子が出てくる…彼女も眠れない様子だった。

なお、テントの中ではセレナがフォウを胸に抱いて穏やかな寝息を立てている…。

 

 

 

「……遊矢も、眠れないの?」

 

「……遊希兄の事、思い出してたんだ…」

 

「あっ…」

遊矢と一緒に焚き火にあたる柚子は遊矢が眠れない理由を聞いて思わず声が漏れる…。

カード化されてしまった人々は元に戻せる方法がある、だが…遊海が記憶を取り戻してしまった事で…榊遊希はもう戻ってこないと気付いてしまったのだ。

 

 

 

「いや、さ…遊希兄も『いつかは記憶が戻るといいな』って、いつも言ってたんだ……でもさ…!お別れを言う間もなく、いなくなっちゃうなんて、思わないじゃん…!」

 

「遊矢…」

目に涙を溜めながら、遊矢が呟く……もしも、遊矢達の目の前で遊希が記憶を取り戻す、という事があれば…遊矢も踏ん切りをつける事ができただろう。

 

だが現実は…遊矢達の知らない所で、普通なら経験しないであろう絶望、そして怒りと憎しみの中で…遊希は『災厄』と化して暴れ回った。

その最期は……優しかった遊希にとって、どれほど辛く…悲しい終わりだったのだろう…。

 

 

「……泣いちゃダメよ、遊矢……遊希さんは、遊矢の笑ってる顔が好きだったじゃない!自分の為に遊矢が泣いてるって知ったら……遊希さん、きっと…もっと悲しむと思う…!」

 

「柚子…」

落ち込む遊矢に柚子が語り掛ける…遊矢と同じように、目には涙を溜めていたが…いつも、誰かの為に頑張っていた遊希の姿を思い出し、遊矢を励まそうと思ったのだ。

 

 

「そうだ…!たしかデュエルディスクのアルバムに遊矢と権現坂のデュエルの後に撮った写真があったよね?」

 

「あっ…そういえば撮ったな、そんな写真…でも…これ、別のデュエルディスクなんだよな…」

そして柚子はとある写真の事を思い出す、熱戦となった舞網チャンピオンシップ出場を賭けた遊矢と権現坂のデュエル…その後に撮った思い出の写真の事を…。

 

ただ、遊矢のデュエルディスクはシンクロ次元に渡る際にLDS製の最新型に置き換わっている…最低限のデータ移行はしていたが、写真まで移したかは覚えていなかった…そしてデュエルディスクのメニューを開いて────

 

 

 

 

「───あれ…?メールが来てる…?日付は……バトルロイヤルの翌朝?全然気付かなかった…あの時はバタバタしてたもんな…差出人は─────遊希兄!?」

 

 

「えっ…!?」

遊矢はデュエルディスクの受信BOXにメールが届いていた事に気付く、その差出人は…その時点で記憶を取り戻し、白波遊海に戻っていたはずの遊希からだった。

 

 

「ど、動画が添付してある!なんで気付かなかったんだ…!?」

 

「と、とにかく見てみましょう!」

文面の無いメールに添付された『動画』…遊矢は震える指で再生ボタンを押した…。

 

 

 

『おはよう、遊矢!……このメールは準決勝?の日の朝に送信するように設定して……あ、決勝の日の方が良かったかな…?また撮り直せばいいか……設定はまた変えられるし…ぐだぐだだな…あはは……』

 

「遊希、兄…!」

映し出されたのは榊家の遊希の自室…夜らしく、窓の外は暗い。

そして全身傷だらけで失明した左目をバンダナで隠した白髪の少年──榊遊希が学習机の椅子に座った状態で写っていた。

 

 

 

『昨日の梁山泊塾の松星とのデュエル以来、なんだか変な予感がするんだ……この先の戦いで…僕が記憶を取り戻す、そんな予感が……遊矢は知ってると思うけど、記憶喪失には何種類かのパターンがある……記憶を失ったままの事、ある日突然に記憶を取り戻す事、そして……記憶を取り戻した時、記憶喪失の時の記憶を失ってしまう事……。

僕がどのパターンなのかは分からない、でも…お別れが言えなかった時の為に、この動画を撮っておく事にする……あ、やばい…今さら恥ずかしくなってきたぞ…!?メールにするか…?ああ、でも撮るしかない!!残さないと絶対後悔する!』

 

 

「ぷっ…ふふ…遊希さんらしいね…緊張するとあたふたしちゃうの…!」

 

「うん…いつもはクールぶってるのに、突然の事だとすっごい慌てるんだよな…!」

動画の中の遊希を見て思わず噴き出して笑ってしまう遊矢と柚子…あたふたしながらも動画の中の遊希は話を続けている。

 

 

 

 

『こほん……遊矢、洋子さん、そして…今はいない、遊勝さん……この5年間、本当にありがとうございました!何処の馬の骨かも分からない、傷だらけの僕を助けてくれて……「家族」にしてくれて、本当にありがとう!記憶を取り戻した「僕」……僕のデュエルディスクのデータによるとシラナミ ユウミって言うらしいんだけど…彼?僕?がどんな人間かは分からない……でも、この5年間は僕にとって本当に「宝物」みたいな時間でした!』

 

「遊希兄…」

動画の中で照れ隠しに笑いながら、遊希は遊矢…榊家の家族に感謝を伝える…その表情は本当に嬉しそうだった。

 

 

 

『遊勝さん、僕にアクションデュエルを…()()()のエンタメデュエルを教えてくれてありがとう!僕は少し恥ずかしがり屋で、上手くエンタメはできなかったけど…父さんの教えは、「デュエルで笑顔」をという言葉は、絶対に忘れない!……本当は、直接言いたかったんだけど……本当に、何処にいるんだろうなぁ…』

 

「遊希さん…」

少し寂しそうな表情で遊勝に感謝を伝える遊希…そして次は──

 

 

『洋子さん、いつも美味しいご飯を作ってくれてありがとうございました!あと…怪我が治りきってない時に包帯を変えてもらったり、熱を出した時に看病してくれたり……僕を貴女の息子にしてくれてありがとう、()()()……この前、母さんって呼んだら笑ってくれた時の笑顔……僕も嬉しかった!』

優しく強かった洋子へと感謝を伝える遊希…そして、最後は──

 

 

『そして……遊矢、僕をお兄ちゃんとして慕ってくれて、ありがとう……本当は、僕の方が年下かもしれないけど……身長は僕の方が高いから、兄でいいよね?……なんか、不安になってきたぞ……これで本当は遊矢より年下だったらどうしよう!?』

 

「遊希兄…しっかりしてくれよ……」

 

『───遊矢、()()()()?いま、絶対に笑ったよな?』

 

「えっ?」

動画の中から遊希が遊矢に問いかける…まるで、遊矢の表情を見透かすように…。

 

 

『笑ってくれたなら、良かった!梁山泊塾の勝鬨君とのデュエルの後から、ずっと表情が暗かったもんな……僕は、遊矢の笑顔が好きだから……だから、もし…この動画でお別れ…なんて事になっても、泣かないでくれよ?僕は死ぬ訳じゃない、()()()()()に戻るだけなんだ……だから、笑ってくれ!』

 

「「───」」

動画の中の遊希の言葉に遊矢と柚子は言葉を失っていた…自分も不安なはずなのに、遊矢の事を一番に考える遊希の優しさに…。

 

 

『遊矢、僕は直接見られなかったけど…沢渡君とのペンデュラムデュエル、本当にすごかった!まるで新しい時代のエンタメデュエルを見てるみたいで…本当に楽しかった!あのデュエルはきっと、遊矢の理想とするエンタメデュエルになったと思う!だから…遊矢はそのまま、エンタメデュエリストとして…みんなを笑顔にしてほしい!』

 

「遊希兄…!」

沢渡とのデュエルを例に出してエンタメデュエリストとしての遊矢にエールを送る遊希…そして…。

 

 

『遊矢、行方不明の素良君やユートの事…融合次元や次元戦争の事、不安な事はたくさんあると思う……でも、きっとなんとかなる!僕達のデュエルはみんなを笑顔にして、幸せにする為のモノだから!………だから、遊矢は………ああ、ダメだ……言葉が出なくなってきた………撮っといてあれだけど、この動画の出番…来ないでほしいなぁ……!!遊矢、頑張れ!お前のデュエルなら、きっと色んな事を変えられる!!記憶を取り戻しても──僕は、ずっとお前の味方だからな…!遊矢!!』

 

「っ…遊希兄…!!」

 

「遊希さんっ…!!」

泣き笑いの笑顔で遊矢へと最後のメッセージを伝える遊希…最後の最後まで、そのメッセージは遊矢達への『愛』に溢れていた…。

 

 

 

「……柚子、オレ…決めた…!オレのデュエルで、エドと語り合って…エクシーズ次元を救ってみせる!オレの、エンタメデュエルで…!」

 

「遊矢……うん!」

涙を拭いながら、遊矢は決意を新たにする…最後まで自分を信じてくれた遊希の想いに応える為に、エンタメデュエルでこの戦いを…次元戦争を終わらせるのだと…その決意に柚子も強く頷いたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…やっと、落ち着いたな…翠」

 

「はい…ふふっ…今日はお疲れ様です!遊海さん!えへへっ…」

遊矢が再び決意を固めていた頃、遊園地の難民キャンプから離れた場所で遊海と翠は二人っきりになっていた……璃緒や海亜達が気を利かせて二人の時間を作ってくれたのだ。

 

 

「遊海さん……ぎゅ〜って、してください!」

 

「ん?こうか?」

 

「えへへっ…やっぱり落ち着く〜…」

 

「子どもみたいだぞ?翠」

 

「体は子どもだも〜ん!」

胡座をかいた遊海の足の上に座って抱っこをせがむ翠…普段の彼女なら恥ずかしがるだろうが……子どもの体に引っ張られているのか、満足気な表情である。

 

 

「遊海さん…スタンダード次元から今まで何があったの?」

 

「ん…凌牙から聞いてるだろ?俺が復活した時の事は…」

 

「遊海さんの言葉で聞きたいの…遊海さんが私に会いに来てくれるまでの旅路を…」

 

「そっか……少し長くなるよ?」

 

「うん!」

翠にせがまれて遊海はスタンダード次元で目覚めてからの事…翠に再会するまでの「旅路」を語り聞かせる…。

 

 

 

 

舞網チャンピオンシップのバトルロイヤルの中で目を覚まし、世界を救えなかったと取り乱してしまった事。

 

 

凌牙から状況を聞いて「新世界」ARC次元の状況を把握…そして死に別れてしまった親友…克也と思わぬ再会を果たした事。

 

 

黒咲やセレナ達を襲っていたオベリスクフォースを蹴散らし、追加で派遣されたオベリスクフォースも粉砕した事。

 

 

遊矢と零児のデュエルを見届けた後、冥界から転生してきた遊戯や海馬社長、杏子や本田、舞、モクバや沙良と再会を果たした事。

 

 

記憶を失った自分──『榊遊希』として世話になっていた遊矢や榊洋子に感謝を伝え…ビデオメッセージで遊希から『願い』を託された事。

 

 

そしてランサーズの1人としてシンクロ次元へと渡り…牛尾哲や、ディヴァインと再会し…遊星の並行存在に出会った事。

 

 

収容所に囚われた遊矢達を救う為に脱獄を先導した事。

 

 

フレンドシップカップの前夜祭に乱入してジャックとデュエルで魂をぶつけ合い……その果てにシンクロ次元にいた遊星達6人がシグナーとして覚醒した事。

 

 

シティを変える為に遊星とアキの手でアカデミアのロジェを倒させた事…そして、シンクロ次元で目覚めた『冥界の王』とダークシグナー化したセルゲイと戦う事になり…勝ったものの3日間昏睡してしまった事。

 

 

昏睡から目覚めた直後にオベリスクフォースの襲撃が発生し、満身創痍のままで立ち向かって倒されかけ…シグナーとして『覚醒』を果たした龍亞や記憶を取り戻し、友人となったディヴァインに助けられ……『世界』から駆けつけたラプラスとブルーノのおかげで窮地を脱した事。

 

 

そして…遊矢の手でシティはあるべき姿を取り戻し、遊海はようやくエクシーズ次元に向かう事ができたのだという事を…。

 

 

 

 

「遊海さん…無理し過ぎです──!!」

 

「あたたた………いや、平常心じゃないと…やっぱりダメだなぁ…」

遊海の語る旅路を時に驚き、時に笑顔で、時に泣き顔で、時に血の気が引いた表情で聞いていた翠は遊海の胸ををポカポカと叩く……特に冥界の王案件とオベリスクフォース連戦はダメージが大きかったからだ…。

 

 

「ちょっとダメージは大きかったけど…今回の旅路に後悔はしてない、遊戯や克也、海馬社長…それに牛尾さんやディヴァイン…もう1度、みんなに会う事ができた……それだけで、俺の今まで全ての戦いは報われた…」

 

「遊海さん…」

晴々とした表情で遊海は翠に笑いかける…本来ならあり得ない『奇跡』の再会、それだけで戦いの苦労は報われたのだと…。

 

 

 

「さて……これで次はエクシーズ次元の開放なんだが……その前に、解決できる事から解決しようか……翠」

 

「うん…!」

粗方の旅路を話し終えた遊海は翠を見つめる、時空嵐によって幼児化してしまった可愛らしい姿の翠を…。

 

 

 

「アストラルの言葉が正しいなら、『ヌメロン・コード』の力は俺達には効かない…つまり、翠は()()で元に戻る必要がある………方法は()()()()()よな?」

 

「本当は、遊海さんが来る前にやろうと思ってたの…でも、()()()()……」

 

「そうだよな……でも、この方法しかないんだ……俺達にしかできない()()は…」

実は、翠だけは即座に肉体年齢の逆行から回復できる手段があった…しかし、それは強い苦痛が伴う……故に、翠は遊海が来るまでその方法を実行できなかったのだ。

 

 

 

「………フレア、頼む」

 

《ええ…翠、覚悟はできましたか?》

 

「……うん、遊海さんも頑張ったんだもん…!次は、私の番…!!」

遊海の肩に金色の小鳥…フレアが現れる、そして翠へと覚悟を問い──翠を元に戻す為の『儀式』が始まる…!

 

 

キィン─!

 

 

《キュアアアア─!!》

黄金の輝きと共にフレアが本来の姿──太陽神『ラーの翼神竜』として顕現する!

 

 

《翠、遊海…いきますよ…!!》

 

「はい…!!」

 

「頼む!!」

 

 

《我が身は太陽の化身…死と再生を司る、浄化の炎!ゴッド・ブレイズ・キャノン!!》

 

 

ゴウッ!!

 

 

「あうっ…────!!!!!

 

「っ…耐えてくれ、翠!!!」

太陽神の神炎が翠に向かって放たれ、翠の肉体は激しい炎に包まれる。

 

翠を元に戻す為の「儀式」…それは転生特典による肉体の『急速再生』を利用し、幼児化してしまった肉体を焼き捨てる事だった。

 

 

しかし、リスクもある。

 

 

例えば、遊海は幾度も致命傷の状態から急速再生による『復活』をしている為、激痛に慣れている…故に問題はない。

…だが、遊海が守り続けた事で翠は『致命傷』レベルの傷を負う事が少なく…痛みへの耐性が低い…。

 

その痛みに耐えられなかった場合、もう一人の『ミドリ』のように───

 

しかし、翠と遊海はこの試練を乗り越えなければならない…!

 

 

 

「あっ、ぐっ…うううう──!!」

 

「翠…!」

炎の中で必死に激痛による絶叫を押し殺す翠…それを見ていた遊海は上着を脱ぎ捨てると燃え盛る炎に腕を突っ込み──炎に包まれた翠の手を握り締めた…!

 

「あっ…!?ダメ、遊海さんまで…!!」

 

「言っただろ?もうお前を1人にしないって…お前が、ちゃんと元の姿に戻れるように…!俺は、絶対にお前の手を離さない!!」

 

「遊海さん…!」

炎に焼かれるというのは、想像を絶する苦痛を伴うという…無論、遊海は何度も経験している…翠に襲いかかるその激痛が少しでも和らぐように──そして元の姿に戻る道標となるように……遊海は自分の手が燃える事を気に掛けず、翠の手を掴んだのだ…。

 

 

「(私は、戻るんだ…!エクシーズ次元に来てからの私は、凌牙君や遊馬君達に守られてばっかりだった……だけど、私は「決闘王」の妻だから…!遊海さんの奥さんだから…!!)」

炎の中で翠はこの半年の事を思い返す。

 

 

不慮の事態で肉体年齢が逆行した事で混乱する遊馬達、そして襲い来るアカデミア…子供たちを守る為に咄嗟に振るった力はコントロールできずに街を大きく破壊してしまった。

そこからはデュエルや闘いに加わる事ができず、傷を負った遊馬達やレジスタンス、ハートランドの人々をひたすらに癒やす事に集中する日々だった…。

 

しかし、そんな日々もこの夜で終わる…力を封じられた『決闘王の妻』は──ここに力を取り戻す…!

 

 

「私は……遊海さんの隣に立つ、決闘者なんだから──!!」

 

キィン─!

 

炎の中で希望の光が輝き、変化が起きる。

 

 

炎の中に消えた翠の肉体が再生していく……それは、今までの幼い姿ではない。

 

遊海の肩より少し低いくらいの身長に、腰まで伸びた絹糸のような紫色のロングヘアー…そして穏やかな優しい紫の瞳。

 

 

決闘王の妻、白波翠はここに本来の姿を取り戻した…!

 

 

 

 

 

 

「はふぅ……怖かったぁ……」

 

「おっと…お疲れ様、翠」

無事に試練を乗り越え、本来の姿を取り戻した翠…だが、炎に灼かれたダメージでふらついてバランスを崩す…それを抱き留めたのは両腕を大火傷した遊海だった。

 

 

 

「おかえり、翠…よく頑張った、な……」

 

「はい!ありがとうございます遊海さん!あれ…?顔赤いですよ…?」

腕の火傷を再生させながら翠を労る遊海…だが、何故かその顔は耳まで赤くなっていた。

 

 

「翠、これ羽織ってて…………上着を脱いどいて良かった…」

 

「えっ……あっ///」

少し恥ずかしげな遊海の態度に翠は自分の状態に気付く…肉体は元に戻ったものの、()()()()()姿()だったのだ。

 

 

「たしか、賢者の鍵の中に翠の服の予備が…(ぎゅ)────翠?」

 

「…………はじゅかしい……この姿に戻ったら、子どもの姿になってた時の事が恥ずかしくなっちゃった…!!」

 

「あのねぇ……」

賢者の鍵の空間に服の予備を置いていた事を思い出した遊海…だが、扉を開く前に翠に後ろから抱き締められる。

どうやら、大人の精神に戻った事で子どもだった時の恥ずかしさがぶり返してしまったようだった…。

 

 

「翠?俺的には翠の今の姿の方がちょっと、その…困るから…早く服を………」

 

「み、見ないで…!今見られちゃうと色々思い出しちゃう…///」

 

「翠?翠さ〜ん……?」

 

「あうう〜…///」

 

 

 

 

 

 

《…とりあえず、人払いの結界を張っておきましょうか…》 

 

《目隠しの結界も張っておくね〜》

 

《まったく…結婚して何年経っていると思っているのやら……いい加減慣れればよかろうに…》

 

《ふふっ…それがあの二人の良い所ですよ、メガロック》

微笑ましい夫婦漫才を見ながら、精霊達は邪魔が入らないように気を使う……雲の切れ間からは穏やかな月の光が二人を照らしていた…。

 

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