転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話 作:S,K
VRAINS編開幕となります!この世界を最善に導く者…それは───
新章開幕…第一話を、どうぞ!
──パパ!えほんよんで!──
──ん?なんの本がいい?桃太郎か?金太郎?それとも一寸法師か?──
──ん〜ん!これ!──
──これか〜お前は本当にこの本が好きだなぁ──
夢を見ている、小さい頃の楽しい夢を…
──ママ…かけっこ、負けちゃった…──
──残念だったねぇ…でも1位になんてならなくていいの!
──むぎゅう──
夢を見ている、暖かな思い出を…
──お父さん!肩叩いてあげる!──
──おっ、ありがとな!後でお小遣いあげるからな〜──
──えへへ…やった〜!──
──遊海さ〜ん?あんまり甘やかし過ぎないでくださいね〜?──
──バトルだ!『ブラック・レイ・ランサー』でダイレクトアタック!──
──うわ〜!?…凌牙兄ちゃん強すぎだよ〜…──
──フッ…遊嗣、最強になんてならなくてもいい…でも、自分の事と自分の
──凌牙〜!?また遊嗣をイジメてるんじゃないでしょうね〜!?──
──いや、これは違っ…デュエルディスクを下ろせ璃緒!?──
──……璃緒姉ちゃんの方が怖い…──
──ガーン!!──
──フォウフォウ…──
暖かくて眩しくて…本当に大切な『家族』の夢を───
《フォウ、フォーウ…フォウ!》
「ん……おはよう、フォウくん……ふぁ……」
《フォウ!》
眠っていた少年は何かに頬を舐められる感覚で目を覚ました…それは少年の家の飼い猫、フォウによる目覚ましだった。
「もう…目覚まし時計よりも正確なんだから……う〜ん…!!」
枕元の時計の時刻は登校には充分余裕のある時間を示している、それを見た少年──白波遊嗣は伸びをしながら起き上がった。
「おはよう〜」
「あら!おはようユウくん!今日も早いわね〜」
「フォウが舐めてくるんだもん…」
「ふふっ…起こしてくれてありがとね!フォウくん!」
《フォウ!(特別意訳:遊嗣を起こすのはボクの仕事さ!)》
しばらくして遊嗣はリビングへと向かう、そこでは白いエプロンを着た紫色のロングヘアーの美しい女性──遊嗣の母である白波翠がお弁当と朝ご飯の用意をしていた。
「(母さん…やっぱり美人だよなぁ……外だと親子じゃなくて姉弟に見られるし……)」
「うん?ユウくんどうしたの?」
「んーん、なんでもない!顔洗ってくる〜」
………
「「いただきます!」」
《フォウフォウ!》
それはいつも通りの朝の食卓…
「もぐもぐ…ねぇ、母さん…父さんはいつになったら帰ってくるの?もう1ヶ月だよ?」
「うーん…ちょっと
「そんなぁ…まだ制服姿も見てもらってないし、入学祝いももらってないのに〜……」
「あはは…遊海さんも早く帰りたいって愚痴ってたわ…(まぁ、ちょっとしかたがない事情なんだけど……遊海さん、大丈夫かなぁ…無理してないといいんだけど…)」
遊嗣の父親──白波遊海はこの場にはいない、遊嗣の高校への入学式を前に
………
「じゃあ…いってきまーす!」
「あっ、待って遊嗣!忘れ物はない?お弁当は?宿題は?」
「大丈夫!宿題も昨日の夜に終わらせたから!」
そして身支度を整えた遊嗣は学校に向かおうとするが…心配性な母親に呼び止められる。
「じゃあ…いってきますのギューは?」
「母さん…もう子供じゃないんだから…(汗)」
「がーん!!…これが、反抗期…!?」
「いや、恥ずかしいんだって!いってきま~す!!」
「も〜う…いってらっしゃーい!!気を付けてね〜!」
翠の声を背に受けて遊嗣は高校に向かう…。
ここは「
Side遊嗣
僕の名前は白波遊嗣、市立デンシティ・ハイスクールに通う高校1年生なんだ!……僕、誰に自己紹介してるんだろ?
「おう!おはよう白波!」
「ああ、おはよう島君!」
校門を通った僕に声をかけてきたのは同じクラスの島直樹君、中々の事情通でリンク・ヴレインズ…ネットワークに広がるデュエル空間の事をよく教えてくれるんだ。
……ちょっと押しが強かったり、目立ちたがりなのが玉に瑕かな?
「あれ…?デュエルディスク変えた?」
「おう!SOLテクノロジー製の新型ディスクなんだぜ!デュエルをサポートしてくれるAIも搭載されてるし、リンクヴレインズにもアクセスしやすいんだ!どーだ!すごいだろ〜!」
「へ〜…僕も父さんに頼んでみようかなぁ…あっ、そろそろHR始まるよ!」
「おっと!?急げ〜!」
始業を知らせるチャイムが響く中、僕達は教室に向かった。
Side???
「ふぅ…遊嗣の学校が始まって一ヶ月、か……まったく…
《お疲れ様です、マスター…未だに敵の本拠地は不明のまま…2つの事件に同時に取り組むのは…流石のマスターでも厳しいかと…》
「そうだよなぁ…」
とある世界、某所…『英雄』白波遊海は頭を抱えていた…同時期に発生してしまった『2つの事件』…その対応に頭を悩ませていたのだ。
「極論を言えば…1つ目の『物語』は俺が干渉できる場所は少ない…あれは
《『ハノイの塔』事件ですね……マスター、やはり……》
「……ああ、遊嗣にも自衛できるだけの力は必要だ…だから、頼んだぞ」
──任せて、マスター…貴方の息子をしっかりサポートさせてもらうよ──
大切な息子…遊嗣が面倒事に巻き込まれても大丈夫なように、遊海はある決心をする…その言葉に答えたのはデュエルディスクに浮かんだ文章だった。
「遅くなってごめんな、遊嗣…お前への入学祝いだ…送信!」
『遊海!ネオ・アカデミアの奴らがシンクロ次元に!!』
「ああもう…!いい加減にしてくれ!!」
《次元回廊を開きます!》
息子へと希望を託した遊海は鋼の鎧を纏う…再び世界の平和を乱す悪党への怒りを燃やしながら…。
Side OUT
「ふぅ…終わったぁ…やっぱり、高校の授業は難しいなぁ…」
終業のチャイムが鳴る中、遊嗣は背中を伸ばす…高校入学から1ヶ月、特に進学校を選んだ訳ではないのだが…遊嗣は勉強に苦労していた…。
「なぁなぁ!白波!聞いたか!?今日はリンクヴレインズでカリスマデュエリストのGo鬼塚とブルーエンジェルのデュエルがあるらしいぜ!!」
「へぇ~!楽しみだなぁ!リンクヴレインズにログインしてみようかな…島君もログインするの?」
「いやいや!?そう気軽にログインできる場所じゃねぇって!強い奴らがいっぱいな神聖な場所だし、
「ハノイの騎士か…困った人達だよね…」
島の振ってきた話題に答える遊嗣…強い決闘者達がひしめくと言うリンクヴレインズ…だが、その世界を騒がせる者達がいた。
その名は『ハノイの騎士』…目的は不明だが、リンクヴレインズや他のネットワークを荒らし回る悪質なハッカー集団である。
「まぁ、運営のSOLテクノロジーも対策はしてるし…きっと大丈夫だよ!話題のPlaymakerも活躍してるしね」
「そうだよなぁ!1度でいいからPlaymakerに会ってみたいぜ…まぁ、とにかくカリスマのデュエルだな!楽しみだな〜!」
「うん!とりあえず、リンクヴレインズに行ってみるよ!じゃあね!」
「おう!あっ、
「藤木君…夜寝れてないのかな?」
「まぁ、なんとか起こすさ!」
そして帰り際、遊嗣はとある人物に目を向ける…そこでは青髪の少年が居眠りをしていた…。
………
「ただいま〜」
「おかえりユウ君!学校どうだった?少しは馴染んできた?」
「う〜ん…まぁまぁかな?友達?が少しできたくらい」
「ふふっ、それならよかった!」
学校から帰り、翠へと声をかける遊嗣…翠は無事に学校に馴染んだ様子の遊嗣を見て安心していた。
「あっ、母さん!ちょっとリンクヴレインズにログインするから、何かあったら声かけて!」
「リンクヴレインズに?…わかった!危なくなったらすぐにログアウトするのよ?」
「は〜い」
翠に声をかけた遊嗣は手洗いを済ませて自室へと籠もった…。
《フォウ、フォウ?》
「ははっ…フォウも一緒にリンクヴレインズに行けたら良いのになぁ?」
《フォーウ…》
フォウを撫でながらベッドに体を預ける遊嗣…デュエルディスクを着けた彼は仮想空間に入る為の合い言葉を口にする
「フォウ、また後でね!IN TO THE VRAINS!!」
その言葉を呟いた瞬間、遊嗣の意識は仮想空間に取り込まれ、その姿は別の自分───アバターへと変わる。
癖っ毛の黒髪は金髪に、高校の制服はどこにでもあるスーツに…アバターとなった遊嗣──アカウント名『
「わぁ…いつもより賑やかだなぁ」
VR空間『リンクヴレインズ』…そこには現実世界と遜色ない街並みや中世ヨーロッパを模した街並みなど、現実世界では再現しきれない世界が広がっている。
「デュエルは………夕方からか、少しぶらぶらしてよう……なんだか、SOLのパトロールAIが多いなぁ…?」
カリスマ達のデュエルの時間を確認した遊嗣は街中を歩き始める…空を飛び交うパトロールAIの多さを気にしながら…。
………
【みんな!盛り上がってるか〜!?これからリンクヴレインズで続々とカリスマデュエリスト達のデュエルが始まるぞ〜!】
「おお〜!」
夕方のリンクヴレインズに司会の実況が響く…遊嗣が楽しみにしていたカリスマ達のデュエルが始まろうとしていたのだ。
【1番エリアでは『剛鬼』デッキを操るリンクヴレインズ1番の暴れん坊!Go鬼塚のデュエルが!2番エリアではリンクヴレインズの看板娘!ブルーエンジェルのデュエルが予定されているぞ〜!】
「カリスマデュエリスト…すごいなぁ…!」
実況と共にモニターに映し出されるのはプロレスラーのような格好をした大男、そして青い天使の姿をした少女…2人はリンクヴレインズでもトップクラスのデュエリスト達だった…。
しかし、楽しい時間は突如として「悪夢」に変わろうとしていた…!
ズズーン!!
「っ…なんだ!?」
突然、VR空間であるはずのリンクヴレインズが揺れる…それは異常事態の始まりを告げていた…!!
《ギシャアアン!!》
「っ…ドラゴン!?まさか…ハノイの騎士!?」
恐ろしい咆哮がリンクヴレインズに響く、VR世界においてデュエル外でモンスターを出す方法は多くない、それが意味していたのは……ハッカーであるハノイの騎士の襲撃だった…!
『何処だ…何処にいる!出てこい!
「「「うわあああ!?」」」
ファイアーウォールを突き破って現れたのは禍々しい力を宿す異形のドラゴン…そのドラゴンを操るのは白いフードと仮面で正体を隠したハノイの騎士のアバター…彼はドラゴンにリンクヴレインズを攻撃させ、その炎が次々と一般人達のアバターを焼き尽くし、街を破壊していく…!
「大変だ…!ハノイの騎士に壊されたアカウントやデータは
暴れまわるドラゴンを見た遊嗣は慌ててログアウトしようとする…彼はヒーローでも、勇者でもない…その判断は当然の事だった。
「う、うぅっ…」
「っ…!?」
その時、彼の耳が細い呻き声を聞いた…その方向に目を向けると…そこには瓦礫の下敷きになってしまった薄桃色の髪の少女がいた…そのアバターにはノイズが走ってしまっている…。
「っ…大丈夫!?」
それを見た瞬間、遊嗣は駆け出していた…自分はヒーローでも勇者でもない。
…それでも、困っている人を見捨てられるほど…彼は薄情な人間ではなかった…!
「大丈、夫です…!私のことは、いいから…早く、逃げて…!」
「困ってるのに、放っておけないよ!早くログアウトするんだ!」
「はじめて、リンクヴレインズに入って…ログアウトの仕方が、分からないんです…!」
「っ…ちょっと貸して!ログアウトは──!」
瓦礫に挟まれた少女はVR初心者らしく、ログアウトに手こずっていた…それを聞いた遊嗣は彼女の手を取り、デュエルディスクを操作しようとするが──
『イグニス!出てこい!!』
《ギシャアアン!!》
「っ…!ハノイの騎士!!(不味い、避けられない!!)」
何かを探して暴れ回るハノイの騎士…再びその攻撃が遊嗣達に向けられる!
「っ…!逃げて!私のアカウントはまた作れます!だから…」
「逃げられないよ…!女の子1人を残して逃げたら…僕は兄さん達に顔向けできない!!」
遊嗣は少女を庇うように前に立つ…自分が守りたいと思ったモノを守る為に──!!
キィン─!!
《まったく、到着早々にとんでもない状況だね…きみに開封されるまで大人しくしていようと思ったけど、緊急事態だからね!》
「えっ…?」
『なにっ!?』
遊嗣と少女を飲み込むドラゴンの炎…しかし、その炎は遊嗣達のアバターを傷付ける事はない…何故なら、彼らの前に強固な防壁が展開されていたからだ…!
「えっ、今の声…何処から…?」
《ここだよ!ここ!ゆう…じゃなかった…Yu-Z!きみのデュエルディスクの中だよ!》
「へっ…?」
突然聞こえてきた声と防壁に戸惑う遊嗣…その声は彼のデュエルディスクから聞こえていた…!
「き、キミは?」
《ボクはマスター…きみの父上、遊海が作ったサポートAI、ロマンさ!よろしくね!》
「え、エーアイ!?父さんの!?」
「AIって…こんなに感情豊か、でしたっけ…?」
遊嗣のデュエルディスクに白い目のような模様が浮かび上がる…そして『ロマン』と名乗ったAIは遊嗣へと語りかけた。
『貴様、ハノイの騎士の邪魔をするつもりか…!ならば、デュエルで貴様をデリートしてやる!』
状況が把握できない中、自分の行動を邪魔されたハノイの騎士がデュエルディスクを構える!
「っ…ハノイの騎士はデュエリストとしても強い奴らだって聞いてるけど…!」
《心配ないよ、Yu-Z…キミは自分が思っているよりも
「父さんが…!」
デュエルディスクから飛び出す光…遊嗣はその光を掴み取る!
「ロマン、力を貸して!」
《もちろんさ、いこう!》
新たな光と共に…遊嗣は初めての試練へと立ち向かう!
「『デュエル!!』」
ハノイの騎士LP4000
遊嗣LP4000
・マスターデュエル
『俺のターン!』
『相手フィールドにモンスターが存在しない時、手札の「ハック・ワーム」は特殊召喚できる!』
身体に緑色の光が走る機械の芋虫が現れる! ATK400
『さらに!手札から2体目の「ハックワーム」を特殊召喚!』
2体目の芋虫が現れる! ATK400
『そして俺は「ハックワーム」2体をリリース!現われろ!「クラッキング・ドラゴン」!』
2体のモンスターがリリースされ、緑色の光球を纏う黒い機械竜が現れる! ATK3000
「いきなり攻撃力3000…!!」
『このモンスターこそ俺がリボルバー様から頂いた最強モンスター!このモンスターは自身のレベルである8以下のモンスターとのバトルでは破壊されない!俺はカードを1枚伏せて、ターンエンドだ!』
ハノイの騎士LP4000
クラッキングドラゴン 伏せ1 手札1
「レベル8以下のモンスターとのバトルでは破壊されない…つまり、レベルを持たないエクシーズモンスターか…リンクモンスターで戦う必要がある…でも、僕は…」
《知ってるよ…だから、その為にボクがいる!Yu-Z、恐れずにきみの力を見せてやれ!》
「わかった!!」
「僕のターン!ドロー!」
「……よし、こうだな…!『星杯に選ばれし者』を召喚!」
機怪虫の鎧を纏う少年剣士が現れる! ATK1600
『フン…!「クラッキングドラゴン」の効果発動!相手がモンスター1体を召喚・特殊召喚した時!このターンの間、そのモンスターの攻撃力はそのモンスターのレベル✕200ダウンし、相手はダウンした数値分のダメージを受ける!クラック・フォール!』
「くっ…!?」
クラッキングドラゴンの咆哮が遊嗣にダメージを与える…!
星杯に選ばれし者 ATK1600→1000
遊嗣LP4000→3400
《なるほど、レベルを持つモンスターへの耐性に加えて弱体効果…Yu-Z、どうする?》
「兄さんや父さんが言ってた…『ライフが0にならなければデュエリストは戦える』……短期決戦で突っ切る!」
《ふふっ、そう言うと思ったよ!続けよう!!》
「ああ!現れろ!希望を繋ぐサーキット!!」
強力な効果を持つクラッキングドラゴンを前に遊嗣はその手に宿す『光』を解き放ち…空中にリンクマーカーの魔法陣が浮かび上がる!
「召喚条件はトークン以外の通常モンスター1体!僕は『星杯に選ばれし者』でリンクマーカーをセッティング!リンク召喚!!来い!LINK-1!『星杯竜イムドゥーク』!!」
神器『星杯』の加護を受けた青き守護竜が現れる! ATK800 ↑
『チッ、リンクモンスターか…だが、攻撃力は「クラッキングドラゴン」には遠く及ばない!!』
「まだだ!『イムドゥーク』の効果によって僕は『星杯』モンスター1体を召喚できる!僕は『イムドゥーク』をリリースして『星遺物─「星杯」』をアドバンス召喚!!」
イムドゥークが粒子となって消え去り、神々しい光を放つ『杯』が現れる! ATK0
『わざわざリンクモンスターをリリースしてアドバンス召喚をするとは愚かな…「クラッキングドラゴン」の効果!』
「無駄だよ、『星杯』の攻撃力は0…ダウンする攻撃力がないから『クラッキングドラゴン』の効果は不発になる!さらに、リリースされた『イムドゥーク』の効果発動!このカードがフィールドから墓地に送られた時、手札から『星杯の守護竜』を特殊召喚!」
『ならば、そのモンスターに「クラッキングドラゴン」の効果発動!クラック・フォール!!』
「くっ…!」
可愛らしい青い仔竜が現れるが…遊嗣はダメージを受けてしまう…! ATK400→200
遊嗣LP3400→3200
「再び現れろ!希望を繋ぐサーキット!召喚条件は
《──あ、ちょっと待ってYu-Z!!そのカードはマズ──》
「リンク召喚!!LINK-2『星杯剣士アウラム』!!」
星杯の加護を受けた剣士が現れる…だが─── ATK2000↙↘
「
『貴様…!何故、サイバース族のカードを…!』
「えっ…?なんか、失敗しちゃった…?」
遊嗣が守っていた少女が戸惑いながら呟き、ハノイの騎士は驚愕する…そんな中で遊嗣だけは状況が分からずにいた…。
《……ごめん、Yu-Z…マスターの判断ミスだ…ハノイの騎士は理由は
「えっ、マジで!?」
デュエルディスクから聞こえる申し訳なさそうなロマンの声…その言葉で遊嗣は状況をようやく理解した。
《やってしまった事は仕方ない!隠蔽はボクがなんとかするから、デュエルを続けて!》
「わかった…!墓地に送られた『星杯』の効果発動!デッキから2体の『星杯』モンスター…『星杯の妖精リース』と『星杯に誘われし者』を特殊召喚!2体同時の召喚だから『クラッキングドラゴン』の効果は発動しない!」
思わぬ事があったものの、遊嗣は動揺せずに青白い妖精と長槍を操る戦士を呼び出す! ATK100 ATK1800
『さっきからうっとおしくリンク召喚を続けやがって…!』
「これが最後だ!魔法カード『星遺物を継ぐ者』を発動!墓地のリンクモンスター『イムドゥーク』を『アウラム』のリンク先に特殊召喚!」
星杯の加護を受けたドラゴンが復活する! ATK800
「もう一度現れろ!希望を繋ぐサーキット!召喚条件はリンクモンスター2体以上!僕はLINK-2の『アウラム』とLINK-1の『イムドゥーク』でリンクマーカーをセッティング!リンク召喚!!現れろ!LINK-3!『星杯戦士ニンギルス』!」
星杯の加護を受けた長槍使いの戦士が現れる! ATK2500←↑→
『フン…LINK-3のリンクモンスターを出そうとも、『クラッキングドラゴン』には及ばない!!』
「──それはどうかな…!『ニンギルス』の効果発動!1ターンに1度、自分と相手のカードを1枚ずつ選んで墓地に送る!僕は『星杯の妖精リース』と『クラッキングドラゴン』を墓地に送る!」
『なにィ!?』
ニンギルスが傍らに浮かんでいた妖精を槍にくくりつけ、その槍をクラッキングドラゴンに投げ放ち、粉砕する!
…なお、妖精は涙目であった。
「バトルだ!『誘われし者』でダイレクトアタック!!」
『ぐうっ!?』
長槍の戦士が石突でハノイの騎士の腹を打ち抜く!
ハノイの騎士LP4000→2200
「『ニンギルス』でダイレクトアタック!」
『ぐわぁああ!?!』
さらにニンギルスの槍がハノイの騎士を直撃…遊嗣の初めての試練は彼の勝利で終わった!
ハノイの騎士LP0
遊嗣 WIN!
「や、やった…!」
《流石だね、Yu-Z!マスターから渡されたデッキを初見でここまで扱うなんて…マスターもきっと喜ぶよ!》
「うん…ありがとうロマン」
ハノイの騎士が撃退された事で少女が歓声を上げ、ロマンが遊嗣を褒める…しかし、遊嗣本人は
『ぐっ…おのれ…!だが、サイバースはイグニス発見への手掛かり…!リボルバー様に報告せねば…!』
《させないよ…ハノイの騎士、キミは電脳世界で罪を重ね過ぎた…よって、我がマスターに代わってキミに罰を下す》
「わっ!?」
デュエルに敗れたハノイの騎士は情報を持ち帰ろうとログアウトを試みる…それを阻んだのは、遊嗣のデュエルディスクから飛び出した小さな人型だった。
その姿は白い肌に薄い灰色の光のラインが刻まれ、ポニーテールのような頭の形をした若草色の眼を持つ人型…サポートAIロマンのアバター姿だった。
『き、貴様!イグニ───』
《残念だけど人…AI違いだよ…懲罰術式・再現!マインド・クラッシュ!》
『ぎゃ!?』
ロマンの指先から放たれた光がハノイの騎士の額を穿つ…短い断末魔を上げたハノイの騎士は光の粒子になって消えていった…。
「えっ、あ…デリート、したの?」
《まぁ、それに近いかな?ハノイの騎士の意識データを強制的にバラバラにしたんだ…大丈夫、2〜3日すれば元に戻るから……まぁ、この戦いくらいの記憶は忘れてるだろうけどね!彼のアカウント情報は手に入れたから匿名で警察に伝えておこう、それで万事解決さ》
「う、う〜ん?」
突然消滅したハノイの騎士を見て戸惑う遊嗣に自身が何をしたか説明するロマン…だが、ネットワークに詳しい訳ではない遊嗣には理解しきれなかった…。
「あ、あの…」
《おっとお嬢さん!ごめんね、いま助けるから…よっと!》
手元で何かをいじるロマン…そのおかげか少女にのしかかっていたビルの残骸データが消失…彼女はようやく自由になった…。
「あの…助けていただいてありがとうございます!よかったら、名前を聞いてもいいですか…?」
「僕は遊……Yu-Z!通りがかっただけのデュエリストだよ」
《ボクはサポートAIのロマン、キミの名前…アカウントは?》
「私はマシュって言います!本当にありがとうございます!」
危機的状況を脱した3人はお互いに自己紹介をする…もちろん、アカウント名でだが…。
《お嬢さん…マシュ、申し訳ないんだけど…ボクの事は内緒にしてくれるかい?ボクはマスターに作られた特別製でね…あまり騒ぎを起こしたくないんだ》
「も、もちろんです!こんなに情緒豊かなAIって珍しいですし!」
《ありがとう、助かるよ》
口らしい部分に指を当てて自分の事を内緒にするように頼むロマン…その言葉にマシュは頷いた。
「でも…大丈夫かな?リンクヴレインズは常に中継されてるから…」
《それなら心配ないよ、ボクが飛び出した瞬間に妨害電波で周りを覆っていたし……それに、他の人達はそれどころじゃないだろうからね!》
「えっ…?」
生中継されている事を心配する遊嗣の不安に応えるロマン…その瞬間、リンクヴレインズに強い
「リンクヴレインズに風…!?これってまさか…都市伝説の!」
《そう…かつて、この世界に吹いていたデータの嵐───データストームさ…!》
吹き抜ける風に驚く遊嗣達…その時、都市伝説の『デュエリスト』が初めてその姿を現していた…!