転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話   作:S,K

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こんにちは!S,Kです!ちょっと間が空いてしまった…。

2月中は行事と用事が目白押しに……本当に申し訳ありません…。


それでは、最新話をどうぞ!


運命の再会〜その「光」を取り戻す為に〜

《おはよう遊嗣!そろそろ起きる時間だよ》

 

《フォウ、フォーウ!》

 

「ん〜…あと5分〜……」

 

《フォーウ!オキルフォーウ!!》

 

むぎゅ!?」

 

《フォウ…お手柔らかにね?》

遊嗣に穏やかな朝の挨拶とフォウの鳴き声が掛けられる、一瞬起きた遊嗣だったが…二度寝を決め込もうとしてフォウに顔を踏んづけられて目を覚ました。

 

 

 

「母さんおはよう〜」

 

「おはようユウくん!……ふふっ、ほっぺに肉球マークが付いてるわよ?」

 

「今日はフォウが厳しかった…ふぁ…」

 

《フォウ!》

それはいつも通りの朝の一コマ…変わった所は──

 

 

《遊嗣、今日は体育の授業があるみたいだよ?体操着を忘れないようにね》

 

「うん、ありがとうロマン」

父から送られたサポートAI・ロマンが()()として増えた事だろう…遊嗣のデュエルディスクに宿った彼はさながら遊嗣の秘書のようでもあった。

 

 

「遊嗣、ロマン…2人ともあまり目立たないようにね?今の若い子のデュエルディスクには普通にサポートAIが搭載されてるけど…ロマンは本当に特別なAIだから…」

 

「分かってるよ母さん、デュエルディスクのソリッドビジョンを弄って実体化できるAIなんて普通じゃないって…」

 

《ボクもできる限り目立たないようにするよ、見る人が見たら()()()になるだろうからね》

 

「うん、わかってるならよろしい!」

ロマンの()()()を理解している翠は2人に注意を促す…少しでも、2人に危険が及ばないように…。

 

 

 

「じゃあ、いってきまーす!」

 

「いってらっしゃい!気をつけてね〜!」

 

《フォウフォ〜ウ!》

翠とフォウの見送りを受けて遊嗣とロマンは学校に向かって行った…。

 

 

 

 

 

 

「お〜い!白波〜!!」

 

「あっ、おはよう島君!」

普段通りに校門をくぐる遊嗣…そんな彼に声をかけたのは少し息を切らせた島だった。

 

 

「お前、この前のハノイの事件の時大丈夫だったか!リンクヴレインズにいたんだろ!?」

 

「ああ…うん、アバターもアカウントも大丈夫だった!それに、プレイメーカーも近くで見れたんだ!」

 

「おまっ!?すげーじゃん!俺も広場で見てたけど…超カッコよかったよな!」

 

「うん!スピードデュエルもすごかったね!」

初めて表舞台に姿を見せたプレイメーカーの話題に花を咲かせる2人…特に、プレイメーカーのファンである島のはしゃぎようは子供のようだった。

 

 

「あ〜あ!俺もプレイメーカーみたいにかっこよくデュエルしてぇなぁ…」

 

「それにはしっかりデュエルと体力作りの特訓しないとね!」

 

「体力?デュエルに体力って必要なのか?」

 

「そうなんだ!体が強くないとデュエルが連続した時に集中力が途切れちゃうし───」

 

「へぇ~…」

そうしてデュエル談義をしながら2人は教室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

「えー、突然ですが!転校生がこのクラスに入る事になりました!」

 

「「「転校生?」」」

遊嗣のクラスの朝のHR…担任の思わぬ言葉に生徒達の声が重なる。

 

 

 

「本当はキミ達と同じく4月から入学のはずだったんだが…手続きに時間が掛かってしまったんだそうだ…入って来てくれ!」

担任の呼びかけと共に教室の扉が静かに開く、そして入って来たのは──デンシティハイスクールの制服を着た、眼鏡を掛け右目が()()()()に隠れた少女だった。

 

 

 

「可愛い…!」

 

「外国の子かな…?」

 

「メカクレキター!」

 

「──あれ、あの子…?」

可愛いらしい少女の姿をみたクラスの女子や一部の男子がざわつくなか…遊嗣は何処か既視感のある少女の顔に首を傾げる…。

 

 

 

「自己紹介はできるかな?」

 

『は、はい!最低限は覚えてきました!』

担任と言葉を交わした少女は黒板ホワイトボードに英語名と少し不慣れなカタカナで自分の名前を記す。

 

 

『えっと…マシュ・キリエライトです!父の仕事の都合で、イギリスからやって来ました!』

 

「マシュ…?もしかして──」

初々しく自己紹介をする少女──『マシュ』、その名前は遊嗣がリンクヴレインズで助けた少女と同じ名前で───

 

 

 

『日本語は不慣れですが───』

 

『「あ」』

遊嗣とマシュの目が合う…遊嗣の碧い瞳とマシュの桃色の瞳、それはアバターでも変わっていなかった。

 

 

「ん…?白波君?マシュさんと知り合いだったかな?」

 

「あ、えっと…」

 

『先日、初めてリンクヴレインズにログインして、困っていた私を助けてくれたんです!アバターと似ていたので…』

 

「おおっ!?そんな出会いがあるとは…!」

 

《運命の出会いって、本当にあるんだねぇ…》

遊嗣とマシュの関わりを聞いて驚く担任…その様子を見ながら、ロマンは小さく呟いた…。

 

 

 

………

 

 

 

『えっと…Yu-Zさん、じゃなくて…』

 

「遊嗣、白波遊嗣…それが僕の本当の名前だよ、マシュ」

 

『シラナミ、ユウジ…遊嗣さん!この前は助けてくれてありがとうございます!』

時間が過ぎて昼休み…遊嗣はマシュと共に中庭に座っていた。

それまでの休み時間は同級生達の質問攻めでタイミングがなかったのだ。

 

 

「いいんだよ、あれは僕が助けたかったからだし…それよりも、マシュとこうして再会できるなんて思ってなかった!」

 

『私もです!実は、あの日…ハイスクールに来る前に話題作りになると思ってリンクヴレインズに…』

 

「そうだったんだ…」

週明けに控えていた初登校を前に不安を抱えていたマシュ…その為、クラスのみんなの話題に入れるようにリンクヴレインズへとログインしていた…そこで運悪く、ハノイの騎士の襲撃に出くわしてしまったのだ。

 

 

『あの…ロマンさんは──』

 

《ここにいるよ!目立たないように目だけでね?》

 

『わっ…!びっくりしました…』

 

「ロマン、イタズラは程々に」

 

《ごめんごめん》

ロマンについて問いかけるマシュ…その時、白い目の模様が遊嗣のデュエルディスクに浮かび上がる…マシュは突然のロマンの登場に驚き、遊嗣はそれを見て注意していた。

 

 

《マシュ、キミのアカウント名とアバターは現実のキミそのままの姿だったけど…リンクヴレインズでは少しでも変えた方がいいよ?この街にはハノイの騎士が潜んでる…目をつけられると怖いからね》

 

『あ、アドバイスありがとうございます…!気をつけます!』

 

「そうだね…ハノイの騎士を倒しちゃったから、報復で狙われるかも…僕も気をつけないと…」

ロマンの忠告に頷くマシュ…それを聞いていた遊嗣も頷いた…。

 

 

 

『そういえば…遊嗣さんのファミリーネームって、昔のキング・オブ・デュエリスト…決闘王の()()()()さんと同じですね!もしかして…?』

 

「あっ違う違う!確かに同じ白波って苗字…ファミリーネームなんだけど、関係ないんだ!まぁ…白波って苗字の人は日本に100人ぐらいはいるらしいから、遠い親戚…えっと…レラティヴズ?かもしれないけど」

 

『そうなんですか…』

ふとした事から遊嗣の苗字の話になるが、マシュの問いかけに遊嗣は首を振る…小さい頃からこのやり取りは『お約束』になっている。

 

なお、遊嗣は『決闘王』白波遊海と自分の父である白波遊海が同一人物だとは夢にも思っていないのであった。

 

 

 

「マシュは白波遊海の事好きなの?もう80……100年近く昔の人だよ?」

 

『はい…!彼の残した「伝説」と偉業は本当にすごい事だと思うので!』

そしてマシュはすごい勢いで『白波遊海』の伝説を語り始める。

 

 

 

曰く、決闘黎明期に現れ、武藤遊戯と名もなきファラオと共に古代エジプトの邪神や世界を混乱させた秘密結社を倒した。

 

曰く、デュエルアカデミア本校で()()として数多のデュエリストを育て…島に封じられた『幻魔』を再封印した。

 

曰く、未曾有の災害…ゼロ・リバースから自分の体と引き換えに数多の人々を守り…後遺症でボロボロになりながらも、赤き竜の使者であるシグナー達を導き、『アーククレイドル事件』を解決に導いた。

 

時に『赤帽子の英雄』、または『鋼の騎士(メタルナイト)』…そして黎明期から全ての決闘の歴史を見届けた者──『決闘の観測者(デュエル・ゲイザー)』と呼ばれた伝説の『決闘者』であると…。

 

 

 

 

 

『凄い実力を持っていながらも、力をひけらかす事なく…それをデュエルモンスターズや人々を守る為に使い、戦い続けた現代の英雄…私がシャーロック・ホームズと同じくらい尊敬する方です!実は昔、イギリスでチーズ転がし祭りに参加したという逸話があって────』

 

「わぉ…マシュってけっこうオタ──アグレッシブなんだね…」

 

《よほど、彼の物語が好きみたいだね》

目をキラキラとさせながら白波遊海の伝説を語るマシュ…その様子は本当に楽しそうで──遊嗣にはそれがとても眩しかった。

 

 

 

『──はっ、すいません!つい話に夢中になってしまって…!』

 

「いいよいいよ…マシュが好きなモノが分かってよかった!」

 

《2人とも、そろそろ午後の授業が始まるよ?》

 

「あっ!急ごうマシュ!」

 

『は、はい!!』

楽しい時間はすぐに過ぎていく…2人は慌てて教室に戻っていった…。

 

 

《マスター…貴方の思いはしっかり、未来に受け継がれているよ》

 

 

 

  

………

 

 

 

 

 

「二進数とは………ハノイの塔というパズルが───」

 

「ハノイの塔…ハノイの騎士…」

午後の授業中…有名なパズルである『ハノイの塔』の話題を聞いた遊作は考えこむ…自身の仇敵である『ハノイの騎士』の事を…。

 

 

「(ハノイの騎士、リボルバー…そしてスピードデュエルに『ストームアクセス』…あの感覚をオレは()()()()()…1つ、Aiの存在…2つ、データストーム…3つ、ハノイの騎士…この3つはきっと関係している…)」

遊作は静かに考えをまとめる…自分が解決すべき、3つの事柄について…。

 

 

 

「(リボルバーにさえ行き着ければ、全てが分かるのか?オレや草薙さんの弟に起きた過去の事件の事も───)」

 

「なあなあ!この前のプレイメーカーの活躍見たか!?」

 

「ん……いいや」

 

「ええ〜っ!?お前、それでもデュエリストかよ!?」

自分が為すべき「復讐」について考え込む遊作…その思考を止めさせたのは、たまたま隣の席に座っていた島某だった。

なお、遊作達は教室の最後列に座っている為、教師は島が騒いでいる事を気にしていない。

 

 

「俺、広場でプレイメーカーの活躍を見てたんだけど超カッコよかったぜ!……って、あれ?お前、デュエルディスクは??」

 

「家に置いてきた、()()()は留守番だ」

 

「……デュエルディスクに留守番機能なんてあったか?」

プレイメーカーを初めて見た感激を楽しそうに語る島…そんな時、彼は遊作がデュエルディスクを付けていない事に気付く。

 

遊作はデュエルディスクに閉じ込めたAiがやかましいので部屋に放置していたのである。

 

 

「俺なんてさ!いつプレイメーカーが出てきても言いようにずっとリンクヴレインズの中継を───は、ハノイだ!?」

 

「ん?島君どうしましたか?今はハノイの塔の説明を──」

 

「ハノイの騎士がリンクヴレインズに現れた!!」

 

「「「ええっ!?」」」

隠れてリンクヴレインズの中継を見ていた島が驚く声を上げる…彼が持つ端末にはDボードの上で腕を組むハノイの騎士の姿があった。

 

そして…いつの間にか遊作の姿は教室から消えていた…。

 

 

 

………

 

 

 

「(っ…このタイミングでハノイの騎士が再び姿を現すか…今度こそ、ハノイの騎士の情報を…!)」

学校を抜け出した遊作は自宅へと向かっていた、デュエルディスクさえあれば何処でもリンクヴレインズには行けるのだが…自宅に置いていたのが仇になっていた。

 

プップー!

 

「遊作!忘れもんだぞ!」

 

「草薙さん!」

その時、自宅の玄関に辿り着いた遊作にクラクションと共にカード手裏剣が飛んでくる、事態を知った草薙が遊作のサポートにやって来たのだ…なお、渡したのは先日のハノイの騎士戦で遊作が手にした『デコード・トーカー』のカードである。

 

「ありがとう!行ってくる!」

 

「ああ、気をつけろよ!」

カードを受け取った遊作は草薙の見送りを受けながら自宅へと飛び込んだ…。

 

 

 

 

 

《う〜ん!ああ、ソコ!もうちょい右…!》

 

《静カニシテクダサイ、手元ガズレマス》

 

《ああもう!下手くそ!バカ!!》

 

《馬鹿ハ禁止用語デス…》

一方その頃、Aiは遊作の家のお掃除AIロボット・ロボッピを唆して何かをしていた…そんな時──

 

ガチャ

 

《アッ、ゴ主人様デス》

 

《え、えっ!?下校時間にゃ早すぎるぞ!?ロボッピ!!》

玄関が開く音で家主である遊作の帰宅に気付く2体…そして──

 

 

 

 

《よ、よぉ遊作!ずいぶんお早いお帰りで──》

 

「リンクヴレインズに行くぞ!ハノイの騎士が出た!」

 

《え〜っ!?また人質かよぉ!?》

間一髪で監禁されていたガラスケースに戻っていたAi…だが、すぐさま遊作に取り出され、説明もないままに隠し部屋のログインルームからリンクヴレインズに飛び込む事になった…。

 

 

 

 

 

『来たか、プレイメーカー』

 

「………?」

リンクヴレインズに飛び込んだプレイメーカーこと遊作、そんな彼を待ち受けていたのは『ハノイの騎士』として知られるアバターの男だった…だが、そんな彼から遊作は違和感を感じ取る…。

 

 

「お前…()()()()()()()()()()()?」

 

《あー…オレもそう思う》

 

『ククク…ハハハ!流石にバレるか…その通り!お前を誘い出す為にハノイの騎士を利用させてもらった!』

ハノイの騎士の姿が揺らぐ…その中から現れたのは短く揃えられた黄色い髪にレスラーのような服を着た大男──カリスマデュエリスト・Go鬼塚だった。

 

 

 

『俺はGo鬼塚!()()のヒーローがヒーロー気取りのお前の化けの皮を剥がしに来たぜ!!』

 

《Go鬼塚、検索……リンクヴレインズを席巻するエンターテイナー、現在カリスマデュエリストランキング1位…強敵じゃねぇか》

カリスマデュエリスト・Go鬼塚…その情報を検索したAiが声を上げる。

 

 

カリスマデュエリストGo鬼塚…彼はリンクヴレインズの『表』の顔とも言える実力者デュエリスト、そんな彼がプレイメーカーとの戦いを望む理由は3つある。

 

 

1つ、プレイメーカーからイグニス・Aiの強奪を狙うSOLテクノロジーの財前晃からの依頼があった事。

 

2つ、プレイメーカーと純粋な力比べがしたかった事。

 

3つ…これが彼にとって一番の戦う理由──先日のハノイの騎士との騒動で彼に奪われてしまった人々からの注目を取り戻す為。

 

 

Go鬼塚…本名、鬼塚豪は人格者だった…孤児院出身だった彼はリンクヴレインズで名を上げ、その稼ぎを孤児院の子供達の為に使う優しい男である。

…しかし、先日の騒動で表舞台に現れたプレイメーカーに子供達は目を奪われてしまった…その様子を見た鬼塚は子供達の瞳の中の『光』を自分に取り戻す為、財前の誘いに乗り…プレイメーカーと戦おうとしていたのだ。

 

 

 

「オレにはお前と戦う理由はないし、興味もない」

 

《あっ、そうなの?》

 

『むっ…!』

しかし、遊作はそんな事は知らずに鬼塚に背を向ける…彼が戦うべき相手は『ハノイの騎士』のみ…それ以外の相手とデュエルする理由は…彼には無いのだ。

 

 

「だが、ヒーローを自称するなら…1()()言わせてもらう──本当の英雄なら、自ら目立とうなんてしない…オレの知る英雄は──人助けをしても名乗りすらせず、光の中に去っていった」

 

《おお…プレイメーカー様、意外とロマンチスト?》

振り返った遊作はGo鬼塚に忠告を送る、その脳裏には鋼色の大きな背中の英雄の姿があった…なお、そんな遊作の様子を見たAiは少し驚いている。

 

 

 

『っ…お前に戦う理由がなくても…俺には、お前と戦う理由がある!!』

 

キィン─!

 

「これは…」

その時、電脳世界にプログラムが奔る…そして巨大な鉄檻が遊作と鬼塚の周囲を隔離した…!

 

 

 

《これは…気をつけろ、その檻のプログラムはリンクヴレインズからのログアウトを妨害するプログラムだ!》

 

『その通り…このプログラムは俺が倒された場合にのみ解除される』

 

「……誰に依頼された?」

 

『フン…ハッカーに教える義理はない!とにかく、俺はプレイメーカーより強いと証明できればそれでいい!!』 

 

「…仕方がないか…!」

リンクヴレインズからのログアウトを阻まれた遊作は鬼塚と対峙する…その裏にSOLテクノロジーの影を感じ取りながら…。

 

 

《奴は強いぞ…!気をつけろ!》

 

「オレは…負けない!」

 

《よしっ…風を掴め!プレイメーカー!!》

リンクヴレインズに風が…データストームが吹き荒れる、その流れの上で遊作と鬼塚のスピードデュエルが始まった…!

 

 

 

 

 

 

「『スピード・デュエル!!』」

 

 

デュエルダイジェスト 遊作対鬼塚

 

 

 

Go鬼塚が操るのは純粋なビートダウンデッキ、様々なプロレス用語や技の名を持つ戦士達のデッキ『剛鬼』…そのデュエルスタイルは豪快にして緻密…相手にも充分な活躍の機会を与えた上で、それをさらに上からねじ伏せるプロレス的なエンターテイメントデュエルだった。

 

『表』の世界において十分な実力を持つ鬼塚…しかし、そのスタイルに飽きてきた一部の観客達は世代交代を願っていた…そんな時に遊作…プレイメーカーは姿を現してしまったのだ。

 

 

 

 

『行くぞ、プレイメーカー!!現れろ!俺様のサーキット!!』

 

「来るか…」

プレイメーカーの攻撃を()()()受け、不利な状況を作り出した鬼塚…彼は逆境を覆す為の切り札を解き放つ!

 

 

『リンク召喚!現れろ、LINK-3!「剛鬼ザ・グレート・オーガ」!!』

現れるのは鬼塚のエース…獣の皮を纏い、巨大な戦斧を持つ戦士が堂々と現れる!

 

 

『これが俺の戦い方だ…!俺の尊敬するプロデュエリスト、ゴーシュ・ザ・スターマンをリスペクトしたプロレスデュエル、しっかりと味わってもらうぜ、プレイメーカー!!』

 

《ゴーシュ・ザ・スターマン?……覆面スタイルで活躍するプロデュエリスト、観客や相手をノリで盛り上げるデュエルスタイルを得意とする……よーわからん》

 

「…AIには分からないだろうな、奴のやり方は…それが『人間』って奴なんだ」

調子を上げていく鬼塚…彼は一気に反撃に移る!

 

 

『墓地に送られた3枚の「剛鬼」カードの効果で俺はデッキから3枚のカードを手札に加える…そして!「グレートオーガ」の効果発動!このカードが存在する限り、相手モンスターの攻撃力はそのモンスターの守備力分ダウンする!オーガ・プレッシャー!!』

 

《げげっ!?攻撃力下げてくるのかよ!?》

グレートオーガの咆哮が遊作の『サイバース・マジシャン』と『リンク・スレイヤー』の攻撃力をダウンさせる…!

 

 

『さらに俺は魔法カード「剛鬼再戦」を発動!墓地の異なるレベルの「剛鬼」モンスター2体、「剛鬼ライジングスコーピオ」と「剛鬼ツイストコブラ」を守備表示で特殊召喚!』

 

《リンク召喚を決めたと思ったら、守備まで固めてきやがった…派手なだけのエンターテイナーかと思えば…意外と抜かりがないな…!》

 

「……いいや、奴の狙いはそこではなさそうだ…!」

 

《えっ…?》

リンク召喚に加えてさらなるモンスターを展開する鬼塚…隙のない盤面を展開していく彼の姿を見たAiが感心するが、鬼塚の展開はまだ止まらない…!

 

 

『「ツイストコブラ」の効果発動!「ライジングスコーピオ」をリリースする事で「グレートオーガ」の攻撃力をその攻撃力分アップさせる!』

 

《攻撃力4900!?》

鬼塚は守りを固めたのではない…確実にプレイメーカーを倒す為の布石を打っていたのだ…!

 

 

『まだだ!手札の「ツイストコブラ」を墓地に送る事で手札から「剛鬼ヘッドバット」を特殊召喚!その効果で「グレートオーガ」の攻撃力はさらに800アップする!!』

 

《や、やべぇ!攻撃力5700!この攻撃を受けたらオレ達の負けだ─!?》

 

『受けてみろ!プレイメーカー!これが俺のフィニッシュホールドだ!!「グレートオーガ」で「サイバースマジシャン」を攻撃─!!』

最大限まで強化されたグレートオーガの一撃が遊作へと迫る!

 

 

「狼狽えるな!罠カード『サイバース・シャッター』を発動!『ヘッドバット』の効果による『グレートオーガ』の攻撃力の変化を無効にし、カードを1枚ドローする!!」

 

『っ…だが、残るライフは僅か100…!風前の灯火だ!オーガ・アックス!!』

 

「くううっ…!」

 

《うわああっ!?》

グレートオーガの一撃がサイバースマジシャンを粉砕、遊作達は大ダメージを受けてしまう…!

 

『どうだ…!俺はこれでターンエンドだ!』

 

 

 

《プレイメーカー!?どうして『サイバースシャッター』の効果を『ツイストコブラ』の効果が発動した時に使わなかったんだよ!?もっとダメージを減らせたじゃないか!》

 

「黙れ、オレにはオレの考えがある」

鬼塚のターンが終わり、Aiが声を上げる…彼から見れば『サイバースシャッター』の発動タイミングを間違ったように見えたからだ。

 

…だが、遊作は動揺を見せない…その瞳に諦めの色は見えなかった…!

 

 

 

「よしっ…!遊作!プログラムの抜け穴を作った!!すぐにデュエルを止めてリンクヴレインズからログアウトするんだ!!」

 

《おおっ!?プレイメーカー!あの穴から脱出できるぞ!》

 

「───」

その時、ログアウトを阻むプログラムを解析していた草薙が遊作に脱出路を開く…当然、遊作は脱出すると思われたが───

 

 

《えっ!?なんで脱出しないんだ!?》

 

「デュエルを受けた以上──逃げる事はできない!」

 

「遊作!?」

遊作はDボードの進路上に現れた「抜け穴」をスルー…鬼塚とのデュエルを続行する決断を下した…!

 

 

 

《…人間は時として意味不明な事をする…どういうつもりだよ!プレイメーカー様!?》

 

「…オレがこのデュエルを続けるのには3つの理由がある…」

遊作の判断に戸惑うAi…そんな彼に遊作は自分が戦う理由を告げる。

 

1つ、鬼塚が自分の持てる全ての技術やタクティクスを使い、観客や遊作を楽しませようとしている事に気付いたから。

 

2つ、鬼塚にはプレイメーカーを絶対に倒すという強い執念を感じたから。

 

そして3つ、この戦いの中で一流のデュエリストである鬼塚とのデュエルを……遊作自身が受けて立ちたくなったから。

 

それは合理性を優先するAIからすれば理解のできない理由…だが、それは…『復讐の為のデュエル』を続けていた遊作の魂に眠るデュエリストの()に火が点いたという事を示していた…!

 

 

 

そして…遊作には既に勝利への道筋が見えている!

 

 

 

「いくぞ…!ストーム・アクセスだ!!」

 

《あっ…その手があった!!》

それは遊作の逆転の為の一手…ストームアクセス!

 

 

 

《風を掴め!プレイメーカー!!》

 

「うおおっ!!ストームアクセス!!

データストームに突入した遊作は嵐へと右腕を突き刺す…そして、新たな力を手にした!!

 

 

「リンク召喚!現れろ!LINK-2!『リンク・バンパー』!」

 

「さらに現れろ!リンク召喚!LINK-2!『ハニーボット』!」

 

『3連続のリンク召喚だと!?』

それはサイバースデッキの強みを生かした連続リンク召喚…『リンク・スパイダー』『リンク・バンパー』『ハニーボット』の3体を召喚した遊作…そして、彼は切り札を解き放つ!

 

 

「リンクモンスターをリンク素材にする時、そのリンクマーカーの数の分の素材になれる!LINK-2の『ハニーボット』とLINK-1の『リンクスパイダー』でリンクマーカーをセット!サーキットコンバイン!リンク召喚!現れろ!LINK-3!『デコード・トーカー』!!」

 

『っ…!!』

それは怒涛の4連続リンク召喚…彼の切り札たる電脳剣士が現れる!

 

 

「そしてオレは装備魔法『サイバース・アナイレーション』を『デコードトーカー』に装備!さらに墓地の罠カード『サイバース・シャッター』を除外して効果発動!墓地の『ハニーボット』を特殊召喚する!」

 

『っ…一気に3体のリンクモンスターを…!だが、攻撃力は「グレートオーガ」には及ばない!!』

 

「バトルだ!『デコードトーカー』で『グレートオーガ』を攻撃!さらに装備魔法『サイバースアナイレーション』の効果発動!装備モンスターがバトルする時、その攻撃力は相手モンスターと同じになる!さらに『ハニーボット』のモンスター効果より、『デコードトーカー』はバトルでは破壊されない!!デコード・エンド!!」

 

『っ…!「グレートオーガ」がバトルで破壊される時、効果発動!フィールドの「剛鬼」モンスターを破壊する事でバトルでの破壊を無効にする!迎え撃て!オーガ・アックス!!』

青き剣士の剣と戦斧が激突…お互いに弾かれるが、破壊を免れて踏みとどまる…!

 

 

 

『「グレートオーガ」の効果で破壊された「ヘッドバット」の効果発動!デッキから「剛鬼再戦」を手札に加える!相討ち狙いは失敗だ!』

 

「いいや…オレの狙いは相討ちなんかじゃない!『リンクバンパー』の効果発動!『デコードトーカー』はフィールドに存在するリンクモンスターの数だけ攻撃できる!フィールドには3体のリンクモンスターが存在する!!」

 

『っ…!何度でも掛かってこい!!』

 

「ああ…お前がそう望むなら!!いくぞ!!」

それは究極の我慢比べ…剣士と戦士が衝突し、互いに弾かれる…そしてまた衝突する…それはまさに格闘技の試合のように…。

 

 

だが…()()は必ず訪れる!

 

 

「3度目の攻撃!!デコードエンド!!」

 

『負けてたまるか!「グレートオーガ」の効果っ…しまった!?モンスターが!!』

 

「そうだ…!お前のフィールドに『グレートオーガ』の身代わりになれるモンスターは存在しない!切り裂け!『デコードトーカー』!!」

3度目の衝突…先に膝をついたのは鬼塚…グレートオーガが両断される!!

 

 

「この瞬間、装備魔法『サイバースアナイレーション』のさらなる効果発動!装備モンスターが相手モンスターを破壊した時、

相手は破壊されたモンスターの攻撃力分のダメージを受ける!!」

 

『っ…!?うおおっ!?』

 

それは見事な逆転勝利…リンクヴレインズにプレイメーカーの勝利を讃えるゴングが響き渡った…。

 

 

 

鬼塚LP0

 

遊作Win!

 

 

 

 

 

 

『あ〜あ…ハハハ!負けちまった!強かったぜ、プレイメーカー!!』

スピードデュエルに敗北し、リンクヴレインズのビルの屋上に投げ出された鬼塚…だが、彼は──清々しく笑っていた…。

 

 

 

 

《なぁ、アイツは負けて嬉しそうで…お前は勝って嬉しそうじゃない……なんでだ?》

 

「……勝っても負けても、ずっと戦っていたい……そんなデュエルもある」

 

《……理解不能!》

鬼塚の事を振り返らずにデータストームの流れに乗ってリンクヴレインズを去る遊作…その表情は普段よりも少しだけ柔らかかった…。

 

 

 

 

 

『あ〜あ、負けちまった…あいつめ、余裕かましやがって…』

リンクヴレインズからログアウトした鬼塚は暗いプロレスリングのロープに凭れかかっていた。

スピードデュエルの反動で気怠い体…そして、プレイメーカーに負けた事によるSOLテクノロジーとの契約の破棄…鬼塚の気は重かった…。

 

『こんなんじゃ、子供達に合わせる顔が───』

 

「「「チャンピオン!!」」」

 

『うおっ!?…お前ら…』

落とされていたプロレスリングの照明が点灯する…そしてそこには──彼が支援する孤児院の子供達の姿があった…!

 

 

 

「チャンピオン!今日のデュエル、すっごくカッコよかった!!」

 

「プレイメーカーもカッコよかったけど…やっぱり、私達のヒーローはG()o()()()だよ!!」

 

『お前ら…デュエルで負けた俺を、チャンピオンだと言ってくれるのか?』

 

「当たり前だよ!負けたって、何度でも立ち上がる!それがGo鬼塚だろ!」

 

「だから…ずっと私達のチャンピオンでいてね!!」

 

『お前ら…』

負けた事で子供達からも見放されると考えていた鬼塚…だが、そうはならなかった。

確かに、彼らはプレイメーカーをかっこいいと思っただろう…だがそれでも──彼らは分かっているのだ、自分達の為に戦い続ける鬼塚の優しさと力強さを…それを示すように子供達は手作りのチャンピオンベルトを手にしていた…。

 

 

『お前達…ありがとうな…!俺は負けねぇぞ!うおおっ!!』

 

「「「わ〜!!」」」

子供達の手からチャンピオンベルトを受け取った鬼塚が雄叫びを上げる…これからも彼は戦い続けるだろう…大切な子供達の為に…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、遊作…なんですぐにログアウトしなかった」

 

「草薙さん……拗ねてるのか?」

 

「違わい!…気になっただけだ」

リンクヴレインズからログアウトした遊作は草薙の待つキッチンカーに乗り込む、そこでは抜け穴を使わなかった事で気を悪くしたらしい草薙が待っていた。

 

 

「……ごめん、もう少しアイツとデュエルを楽しみたくなったんだ」

 

「──そうか…Go鬼塚、手強い相手だったが……そのうち、俺達2人じゃハノイの騎士と戦うにも行き詰まるだろう…そんな時、一緒に戦えたらな……」

 

「……ハノイの騎士との戦いは命懸けになる、そんなデュエルにアイツは巻き込みたくないな…」

 

「そうか…」

久しぶりに楽しいデュエルをしたらしい遊作の様子を見た草薙が小さな願いを口にする…だが、それを聞いた遊作は首を横に振った…危険を伴う『復讐の戦い』に関係のない者を巻き込まない為に…。

 

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