転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話   作:S,K

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こんにちは、S,Kです!

よし…少しエンジンがかかってきた…!VRAINSの物語の根幹…復讐者のオリジンが明かされる。

GW中にもう1話ぐらいは投稿できたらいいなぁ…。

それでは、最新話をどうぞ!


葬り去られた(ロスト)事件─復讐者の原点─

「これが…SOLテクノロジーのマザーコンピューターの模式図…そして抜け穴のルートか…!彼女の技術は一流だな…」

cafe Nagiのハッキングルーム…そこで草薙は解析したデータを見て感心していた。

 

遊作がゴーストガールとのデュエルで勝ち取ったデータ…そこには迷路のような模式図で記されたSOLテクノロジー社のマザーコンピューターのデータ、そして監視網を抜けるルートが示されていた。

 

 

「遊作、お前の学校が終わるまでには準備しておく、帰りに寄ってくれ…夜中までにマザーコンピューターを攻略しよう…!」

 

「わかった…!」

草薙の言葉に遊作が頷く…真実を掴む為に2人は準備を進めるのだった…。

 

 

 

 

 

 

「………」

 

《なぁなぁ遊作?どうして学校を歩き回ってるんだ?》

 

「黙ってろ」

翌日、デンシティハイスクール…昼食を食べた遊作は何故か校舎内を歩き回っていた…まるで、誰かの姿を探すように…。

 

 

「………誰もいない、か…」

 

《お前、もしかして…ブルーエンジェルの事を探してるのか?》

そして遊作がやって来たのは無人のデュエル部の部室…そこでAiは遊作の目的に気付いた…遊作は財前葵を探していたのだと。

 

 

《学校の情報ならあいつに聞けば?ほら、あの太っちょ》

 

 

………

 

 

「えっ?財前?…ああ、あいつなら部活どころか学校にも来てねぇよ?退院したって話なら聞いたけど…」

 

「そうか、来てないのか…」

Aiの提案で同じデュエル部の島某に葵の行方を尋ねた遊作…しかし、島も大した情報は持っていなかった。

 

 

「僕も風の噂で聞いたんだけど…お兄さんが財前さんを叱ったらしいよ?それで療養を兼ねて外出禁止になってるんじゃないかって」

 

「へぇ〜そうなのか?あの財前が何をやらかし──あれ?藤木??」

 

「……藤木君も財前さんの事が心配なのかな?」

たまたま居合わせた遊嗣からの情報を聞いた遊作は一瞬で彼らの前から姿を消していた…。

 

 

 

「ブルーエンジェルもあの事件以来、リンクヴレインズに姿を見せていない」

 

《あのお兄様がアクセスさせないようにしてるんじゃね?デュエリストなんて止めろってさ…まぁ、()()()()があったんじゃ仕方ないけどよ…気になるのか?》

 

「彼女は強いデュエリストだ…このまま終わって欲しくない、そう思っただけさ…それよりも…今はデータバンクへの侵入が優先だ」

 

 

…………

 

 

 

「遊作、マザーコンピューターの中心にあるデータバンクに10年前の事件の手がかりがあるはずだ…しかし、そこに辿り着くまでには二重三重のトラップが設置してあるが…その対抗手段も既に構築してある」

 

「仕事が早いな…流石だ」

 

「ヘヘっ…任せておけ!」

放課後…Cafe Nagiに集まった遊作はついにSOLテクノロジーのデータバンクへと向かおうとしていた…。

 

 

 

《よーし、マザーコンピューターと繋がったぜ?……行かないのか?》

 

「……1つ、ゴーストガールのデータには信憑性がある…2つ、しかし…何故彼女がこのデータを渡してくれたのか…」

 

《今更何言ってんだ?データを渡してくれたのはデュエルで勝ったからだろ?》

 

「そうだとしても…3つ、ゴーストガールは自分のメリットにならない事はしない…」

 

《おいおい…今更怖気づいたのか?オレは最初から言ったぜ?()()()()()()()ってよ!》

 

「行かない、とは言ってないだろ」

マザーコンピューターへの突入を前に、遊作は今までの出来事を整理する…抜け穴データを渡したゴーストガールの行動の真意を考える為に…。

 

 

「まぁ、慎重になる事に越した事はないってことさ」

 

《人間って本当に面倒臭いなぁ…》

人間特有の慎重さを面倒臭いと言うAi…そして、遊作はついにマザーコンピューターへと飛び込んだ…。

 

 

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

 

 

《ここがSOLテクノロジーのデータバンク…そのコア部分か、ここで集まったデータを処理して放出してるんだな》 

マザーコンピューターの攻略開始から数時間…数々のトラブルを乗り越えた遊作とAiはついにデータバンクのある領域に辿り着いていた。

 

 

 

その道程はまさに苦難の連続…SOLが設置した攻性プログラムや機雷型のプログラムをゴーストガールのデータと草薙の開発した対策プログラムで潜り抜けた先でデータストームに遭遇、その中でジャミング波で感知を妨害していた命綱が破損…SOLテクノロジーのセキュリティ部門に気取られてしまう。

 

降格した財前の後釜でセキュリティ部長となった北村は開発中の最新鋭セキュリティ機構──AIデュエリスト2体を遊作へとけしかける…2体のデュエリストに追い詰められた遊作……そこに思わぬ助っ人が現れる、それはブルーエンジェルこと財前葵だった。

 

彼女は「プレイメーカーを倒すのは私」という建前で遊作にリアルダイレクトアタックを仕掛けていたAIデュエリストを引き受ける…その実、兄である晃からプレイメーカーに助けられた事を聞かされており、ゴーストガールの手助けもあって借りを返しに来たのだ。

 

そして2人はそれぞれに手札破壊とバーンに特化した「テンタクラスター」を操るAIデュエリストを撃破…ようやくデータバンクのあるエリアへと辿り着いた、のだが…。

 

 

 

 

「っ…誰かいる…!」

 

《えっ!?オレ達以外にマザーコンピューターにアクセスしてる奴がいるのか!?》

 

『……プレイメーカー…』

 

「財前とゴーストガール…!?何故、ここにいる…!」

遊作達よりも先にデータバンクに辿り着いていた人物がいた…それは遊作に抜け穴データを渡したゴーストガール、そして財前晃だった…彼らは別ルートでこの場所に辿り着いていたのだ。

 

 

 

「オレを待ち伏せしていたのか…!」

 

『ん〜…ちょっと違うかな?私達もここのデータに興味があったのよ、この場所は入り込むのが難しい場所だから』

 

「なるほど…オレ達は()だったという訳か」

 

《って事は……こいつらがここに入る為にわざと侵入経路のデータを渡したのか!……じゃあ、あのデュエルに負けたのは──》

 

『残念だけど…あのデュエルは()()で戦ったわ、まぁ…あのデュエルで勝てばあなたを貰えて…負けても()()()はできたから…どっちでも良かったのかな?』

 

《わっ…ズル賢い!》

 

『ふふっ…AIに褒めてもらえるなんて光栄ね』

データバンクに侵入した財前とゴーストガール…2人の目的は遊作と同じく、データバンクに収められたデータにあった…そこでセキュリティ部門をプレイメーカーに釘付けにする事で、安全にデータバンクに辿り着く為の囮にしたのである。

 

…なお、ゴーストガールの用意周到さにAiもドン引きしていた。

 

 

 

「そこを退け、財前」

 

『……申し訳ないが、キミをこの先に進ませる訳にはいかない』

そして遊作は目的のデータを手に入れる為にコアへと近づこうとする…だが、それを晃が遮る…その表情は何かを()()したように硬かった。

 

 

 

「何故、邪魔をする?…お前はそこに何が記録されているのか知っているのか?」

 

『……私も、先ほど初めて知った…10年前のSOLテクノロジー社で何があったのか…そして、キミに何が起きたのかも…!』

 

「……オレには、そこに記録された事を知る権利がある」

 

『───プレイメーカー、キミは…1()0()()()()()()()()()、だな?』

 

「──それがわかっているなら、そのデータを渡してくれ」

 

『…それは…できない』

 

《コイツ…!自分達だけデータを見て、オレ達には見せないって…セコい野郎だな!?あれだけ苦労して来たのに!!》

一足先に10年前の真実を知った晃…彼は頑なに遊作にそのデータを渡す事を拒否する。

しかし、それは保身や会社を守る為などの身勝手な理由ではなく…()()()()の事を思いやっての行動に見えた…。

 

 

『……お前がイグニスか』

 

《おうよ!オレ様がお前達の探してるイグニスだ!今はほとんど記憶が無くてイヌみたいな名前で呼ばれるがよぉ…その中にはオレの名前のデータも──『それはなかったかな?』ズコッ!?なんでぇ!?》

 

『(あれがAI…?これがリボルバーの言っていた『意思を持つAI』か…)』

そして晃はAiへと話しかける…そしてAIらしからぬ()()()()()反応を見てその()()さに気付いていた。

 

 

 

『プレイメーカー、私にそのAIを渡し…ここは手を引いてくれ…!必ず、この()()を世間に明るみにし…真相を追求してみせる…!!』

 

『一応、フォローしとくとね…晃はリボルバーの一件で失脚したのよ、それでも…()()()()()、その為だけに彼はここに来たの…彼の覚悟も本物よ』

 

《お〜…妹の為に出世を諦めるなんて…お兄ちゃんステキじゃん!》

遊作にこの一件から手を引くように諭す晃…彼は事件の真実を知り、プレイメーカー…遊作を守る為に動こうと考えていたのだ…。

 

 

 

「どんな理由があろうと…この事件を他人に任せるつもりはない…!1つ、この事件の真実はオレ自身の手で突き止める…!2つ、この事件はお前には関わりがない事だ…3つ、それでも関わると言うのなら──オレを従える方法は分かっているはずだ!!」

 

『……()()()()か?』

 

「そうだ、お前が勝てばお前の要求は全て呑もう…オレはお前を信じ、このAIを置いて立ち去る…だが、オレが勝ったら…お前達はここから立ち去れ!!」

 

『デュエルしかキミを止める手段はなさそうだな…よかろう、ここでキミにデュエルを挑む!!』

 

「受けて立つ!!」

 

《ああもう!またこのパターンかよぉ!?》

方や自分の手で真実を掴む為…方や、プレイメーカーを()()為…2人の信念がマスターデュエルで激突する…!

 

 

 

 

「『デュエル!!』」

 

デュエルダイジェスト プレイメーカー対財前晃

 

 

 

晃が操るのは「ティンダングル」デッキ…妹の葵の「トリックスター」と対になる悪魔族のリバースモンスターを主力としたデッキだった。

 

対する遊作はサイバースデッキの展開力によってエースである『デコード・トーカー』をリンク召喚し、短期決戦を狙うが…晃は中々の手練れだった…「ティンダングル・ベース・ガードナー」の効果によって現れた『ティンダングル・ハウンド』…その効果は『相手リンクモンスターのリンク先にモンスターが存在する時、1体につき攻撃力を1000ダウンさせる』というモノ…さらに永続罠「ルモワーヌの攻差点」によって裏守備モンスターへの攻撃を封じる、というリンク召喚メタ・攻撃ロック型のデッキだった。

 

だが、遊作も黙ってはいない…連続リンク召喚で新たなモンスター「フレイム・アドミニスター」を喚び出す事で「ティンダングル・ハウンド」の効果を低減し、さらに自身の効果で「デコード・トーカー」を強化する事で「ティンダングル・ハウンド」を撃破し、ダメージを与える。

しかし、晃も止まらない「ハウンド」自身の破壊をトリガーとして効果が発動…セットされていた『ティンダングル・エンジェル』のリバース効果が発動し、「ハウンド」がフィールドへと舞い戻り、バトルフェイズが強制終了する…盤面を握っていたのは晃の方だった…。

 

 

 

『プレイメーカー…キミは妹…葵と同じくらいの年齢なんだろう?』

 

「ん…!?」

 

『きっと、そうなんだな…10年前、キミに…()()()に起きた悲劇の辛さは私には分からない…だが、キミを失った人々の辛さなら、少しは分かる…』

 

《なんだ?アイツ…急に…》

 

「………」

そして晃は遊作に話しかける…彼がプレイメーカーを守ろうとする理由…その1つが彼の正体が()()()…16歳前後の子供だと分かった事…そして、晃の生い立ちが彼にシンパシーを抱かせていたからだった。

 

 

財前晃と財前葵は本当の兄妹ではない、彼の父と葵の母が再婚した事による義理の兄妹だった。

そんなある日、彼らの両親は不幸な交通事故に巻き込まれて命を落としてしまった…当時、晃は16歳…葵は6歳だった。

 

残された財産のほとんどが汚い大人達によって奪われ、2人の兄妹は辛い日々を過ごした…晃はその中でハッカーを始めとした後ろ暗い仕事をしながら必死に葵を守り育てたのだと…。

 

 

 

『………もしも、葵がきみのような目に遭ったのなら…誰かも分からない人間に()()()()のなら…!私の精神はどうにかなってしまったに違いない…!』

 

っ!!!

データを見て知ったのであろう()()について口にする晃…だが、その思いは…悲劇への()()は───

 

 

 

『プレイメーカー…!もう一度だけ頼む!私を信じ、全てを任せてくれ!!』

 

あんたに、オレの…

 

お前なんかに何が…!

 

「「何がわかると言うんだ!!!」」

 

『っ…!!』

遊作と通信越しにその言葉を聞いていた草薙…2人の復讐者の逆鱗に触れていた…そして、遊作は鬼のような形相で晃へと話しかける…。

 

 

「財前…アンタは、きっと()()()なんだろう…!だが、あんたは()()を知らない!!あんたが知っているのは虚構の世界のオレだけだ!!」

それは遊作の魂の咆哮…その魂を焦がす()()()を燃やしながら、遊作は事件の()()()である晃を突き放す…。

 

 

 

『プレイメーカー…どうしても、戦いを続けるのか?』

 

《あいつ…まだぐずぐず言ってますぜ?早くやっつけちまいましょうよ!プレイメーカーの旦那!》

 

『だが…私はそう簡単にやられる相手ではないぞ!キミ達が戦い続けると言うなら…私も覚悟を決めよう…!!』

 

《わっ!?急にやる気になった!?》

晃の目的…それは事件の真実から遊作を遠ざけ、彼の「復讐」を止める事…彼を守る為に容赦を捨てる。

 

 

「ティンダングル・エンジェル」と「ティンダングル・ハウンド」…天使を守る地獄の番犬…晃と葵、2人の絆を思わせる2体のモンスターが連携して遊作を追い詰めていく…。

 

だが遊作はついに切り札…「ファイアウォール・ドラゴン」を喚び出す事に成功…決死の攻撃で番犬と天使のコンボを突破、晃に大ダメージを与える事に成功した。

 

しかし、晃は罠カード『ティンダングル・ドロネー』を発動…切り札モンスターたる地獄の番犬『ティンダングル・アキュート・ケルベロス』を召喚する…その効果は墓地の「ハウンド」と「エンジェル」1体につき攻撃力を1500アップさせるという効果…返しのターンに攻撃力3000となった牙が「ファイアウォールドラゴン」へと襲い掛かる…だが、遊作は罠カード『ドップラー・フェーズ・コーティング』によって戦闘破壊を防いだ…。

 

そしてケルベロスにはさらなる効果…攻撃したバトルフェイズ終了時にリンク先に「ティンダングルトークン」を呼び出す効果とリンク先の「ティンダングル」モンスター1体につき攻撃力を500アップさせる効果を持っていた。

そこへさらに装備カードになる罠カード『ジュルゴンヌの終焉』を装備し、戦闘・効果による破壊と効果対象にならない効果と装備モンスターのリンク先全てにモンスターが存在する時、それらを破壊する事で装備モンスターの攻撃力分のダメージを与える効果を付与して万全の態勢を整える…。

 

 

劣勢を強いられる遊作…だが、彼の闘志が弱まる事はない、強力なケルベロス本体ではなくステータスの低いトークンを狙い、貫通効果を付与する魔法カード『アラートランサー』による決着を狙うが…晃はそれも折り込み済み──メインモンスターゾーンの「ティンダングル」モンスターの戦闘ダメージを0にする永続罠「モーリーの盾」によってダメージを防がれてしまう。

 

さらに返しのターン、晃は「ティンダングル」モンスターの戦闘・効果破壊を無効にし、与えるダメージを倍化する永続魔法『ナーゲルの守護天』を発動…遊作のライフはついに残り500になってしまった…。

 

 

晃の場に築かれた3枚のカードによる完璧な布陣…それを見たAiは大きく動揺するが…遊作の態度は揺らがない、絶体絶命の中でカードを引く………そして、そのカードを伏せてターンを終えた…。

 

 

 

『……どうやら、万策尽きたようだな…だが、それがきみの運命なのだろう……復讐など止めるんだ、私に全てを任せてきみは()()()()()に戻るんだ…!』

動きを止めた遊作に晃は説得を続ける…復讐の為に全てを懸けてしまっている遊作を止める為に…。

 

 

『それが一番、きみの為になる事だ…学校に通い、友と未来を語らい…青春という掛け替えのない時間を大事な仲間と過ごすんだ、きっとそれはきみの未来を支える財産となる…!過去に囚われ、瞬く間に流れていく尊い時間を──今、きみの前に流れている()()を逃がしてはならない!………この、私のように…』

 

「………」

晃の語る言葉…それは()()()言葉だった、復讐という『過去』に囚われるのではなく…輝く『未来』へと目を向けるのだと……それは身勝手な大人達のせいで『青春』を失った彼自身の魂の言葉だった…。

 

 

 

 

「──お兄様!」

 

『っ…葵!?何故此処に!?』

 

「ブルーエンジェル…」

その時、物陰から青の少女…晃の妹である財前葵が現れる、ずっと彼らのやり取りを聞いていたのだ。

 

 

「決着がつく前に…本当の話を聞かせて欲しいの…!10年前に何があったのか!プレイメーカー…貴方が現れてから、リンクヴレインズは大きく変わった…そして、今の私はなんの為にデュエルをするのか分からなくなった…だけど、今何が起きているのか…どうして貴方が戦っているのかを知れれば…私はまた前に進めるかもしれない…!だから、教えて!お兄様!プレイメーカー!」

 

『葵…』

 

《オレも聞きたいなプレイメーカー様よ…どうせ、あいつは全部知ってるんだろ?いずれにしても、お前の秘密はバレるんじゃないか?》

 

「………」

 

『私が話そう…10年前に何が起きたのか…』

プレイメーカーがなんの為に戦い続けるのか…その復讐の原点は何なのかを知りたい葵…その言葉を聞いた晃は静かに口を開いた…。

 

 

 

 

『10年前、ある事件が起きた…それは()()()()()と呼ばれていたらしい…その事件の内容は──ある組織による6人の少年少女の()()()()だった』

 

「誘、拐…!?」

 

『そして…その6人の子供の1人、それが…』

 

「プレイメーカー…あなたの事、なの…!?」

晃から語られた10年前の事件…それは大規模な誘拐事件について…そして、プレイメーカーがその被害者であると言う事実…それを聞いた葵は言葉を失っている…。

 

 

「財前、もういい…自分の過去を他人などに語られたくない」

そして遊作は自分の言葉で語り始める…自分の経験した()()の体験を──

 

 

 

何もない白い部屋

 

置かれていた1台のVRゴーグル

 

強制されたデュエル

 

敗北による電撃の痛み

 

少なくなっていく食事

 

デュエルによって管理された生活

 

終わりの見えない決闘地獄

 

 

それは…常人ならば1日と保たないだろうこの世の地獄…遊作はその地獄を()()もの間強いられたのだと…。

 

 

 

 

『──そして事件発生から半年後…きみ達は助け出された…しかし、犯人は分からず…事件の存在事態が隠蔽され、マスコミが騒ぎ立てる事もなかった…』

 

「……お兄様、そのデータでプレイメーカーの正体を…?」

 

『いいえ…彼の正体まではデータに記されていなかったわ…被害者の子供達には国家最高ランクの保護プログラムが適用されて守られていた…だから、データバンクにその情報はなかったの』

 

《ふぃ〜…危ない危ない…!ハッカーが正体を知られたら致命的だ…》

そして事件の顛末を語る晃とゴーストガール…データバンクには遊作達の正体は記録されていなかったのだ…。

 

 

「財前、オレ達は本当に救われたと思うか?……オレ達は何も()()()()()()!!事件が何の目的で行われたのか…オレにはその真実を知る権利がある!!」

財前の言葉を聞いた遊作が声を上げる…理由も分からないまま誘拐され、半年もの時間…否、人生全てを狂わされた遊作…自分には事件の真実を知る権利があるのだと…!

 

 

「1つ!オレの人生はあの事件で断ち切られた…!オレは真実を知り、断ち切られた自分の人生を繋げる!2つ!オレ達や家族はあの事件で心に大きな傷を負った…!中には、未だに事件のショックから立ち直れない者もいる!!そいつやその家族の為に、必ず真実を知る!そして3つ!あの地獄のような日々の中で、オレの心が挫けそうになった時、オレを励ましてくれた()()()…あいつは助けられた者の中には()()()()()!あいつが捕らわれているなら、オレは必ずあいつを助け出さなければならない!!オレにとって、10年前の事件は何一つ終わってないんだ!!」

断ち切られた時間を繋げ、真実を知り、捕らわれた()()を救う…遊作はその為に復讐者となった…彼の中でロスト事件は大きな傷となり、未だに生き続けているのだ…。

 

 

「財前…オレにはないんだよ…人生が途切れたオレには、友と語らう未来も…かけがえのない時間も…!どれだけ心の傷を癒やす治療を受けても…事件を忘れようとしても…!あの事件の出来事はオレの目に焼き付き、心臓に食い込み…抉り出せない血肉となっていた!それを悟った時、オレは運命に立ち向かう事を決めた!!復讐をくだらないと言うならそれでもいい!だが、運命には果たさなければ前に進めないモノもある!!」

 

それは遊作の魂の咆哮…全てを知るまでは静まらない「復讐の炎」が遊作の魂を焼き焦がす…全ては復讐の先にある『未来』へと向かう為に…。

 

 

 

「……オレは懸命に事件について調べ、そして探し当てた…!ロスト事件が別名『()()()・プロジェクト』と呼ばれていた事を…!」

 

「ハノイ、プロジェクト…!?それって…ハノイの騎士が事件に関係してるって事…!?」

 

「だからこそ…オレは()()()を追っているんだ」

 

《ハノイプロジェクト、か…》

 

「なるほど…きみが知っているのはそこまでのようだな」

 

「…どういう事だ?」

僅かな手がかりからロスト事件に関係するハノイの騎士に辿り着いた遊作…そして、それを聞いていた晃が口を開く…。

 

 

『データバンクには…ロスト事件の()()()の名前が記されていた…!』

 

「首謀者だと…!?それは誰だ!!答えろ財前!!」

ロスト事件に関するデータが記録されていたデータバンク、そこには遊作達が復讐するべき相手の名前が記されていた…その事実を聞いた遊作は再び鬼の形相となり、晃へと詰め寄る…!

 

 

『それを教えるわけにはいかない…それを聞けば、きみはさらに怨恨の炎を燃やす…!()()()()になってしまう!!それは、ここで終わりにするんだ…!』

しかし、晃は答えない…輝く未来があるはずの遊作を復讐鬼にさせないように…。  

 

 

《どうやら…どこまで行っても平行線だな、プレイメーカー様?》

 

「ああ、そうらしいな…」

 

《おっ!初めて意見が合った!》

真実を語らない晃を遊作は睨みつける…。

 

『きみは止まらないのだな…ならば、私がここできみを止める…!』

 

「止められるなら、やってみろ」

 

『今の戦況では、勝利の女神は私に味方している…きみを止めるぞ、プレイメーカー!!』

復讐の道を進む遊作とそれを止めたい晃…2人の譲れぬ思いを乗せ、デュエルは再開する。

 

 

晃はダメ押しとして自分フィールドに3体の「ティンダングル」モンスターが存在する時に相手の攻撃宣言を封じるフィールド魔法『オイラー・サーキット』を発動…そして遊作のライフを削り切るべく攻撃を仕掛ける。

だが、遊作は諦めない…伏せていた速攻魔法『サイバネット・バックドア』で「ファイアウォール・ドラゴン」を一時的に除外する事で、フィールドから離れた『ドップラーフェーズコーティング』の効果を発動してバトルフェイズを終了させて命運を繫ぐ。

 

 

 

「財前、これは()()を貫く為のデュエルだ…」

 

『そうだ、分かっている…だからこそ、私は勝たなければならない!この事件の闇を暴き、その責任を取らせてみせる!!』

 

「……いいや、お前は何も解っていない…正義を貫くデュエルだからこそ、勝つのはオレだと言う事が!!オレは──自分の正義以外は、何も信用しない!!」

絶体絶命の状況で遊作は吼える…己の信念を…自分の正義を貫く為に…!

 

 

そして…遊作の勝利の方程式は完成する。

 

1つ、「サイバネット・バックドア」の効果による「ファイアウォール・ドラゴン」の帰還

 

2つ、怒涛の3連続リンク召喚

 

そして…3つ、喚び出したリンクモンスター「セキュア・ガードナー」を喚び出した()()…それは──

 

 

 

《おいおい!何を考えてんだよ!?そこは怖いワンちゃんの真ん前じゃねぇか─!?》

遊作がリンクモンスターを喚び出した位置…それは「ジュルゴンヌの終焉」の効果を受けている「ケルベロス」のリンク先…!!

 

『自ら自滅の道を選んだか…!ならば「ジュルゴンヌの終焉」の効果発動!このカードと「ケルベロス」のリンク先のモンスターを全て破壊し、攻撃力分のダメージを与える─!!』

 

「『プレイメーカー!!』」

遊作に向かう地獄の炎…煙に包まれたフィールドに葵とゴーストガールの声が響く…そして──

 

 

 

 

『プレイメーカー…きみの復讐は終わっ──「それはどうかな?」なっ!?』

 

《じゃんじゃじゃーん!オレ達は無事だぜい!》

煙が晴れた先で…遊作達は無傷で立っていた!!

 

 

 

『馬鹿な、何故…!?』

 

「『セキュアガードナー』を召喚したターン、オレの受ける効果ダメージは0になる!そしてリンク先のモンスターを失った『ケルベロス』の攻撃力はダウンし、『オイラーサーキット』の効果が消滅する!!」

 

『しまった…!』

それは晃の油断…遊作はプレイングミスをしたように見せかけ、晃のプレイングミスを誘発したのだ!

 

 

《よっしゃ!これで『サイバネット・バックドア』の効果でダイレクトアタックできる『ファイアウォールドラゴン』の攻撃で終わりだ!》

 

「いいや…()()()

 

《ふへっ?》

晃のライフは残り1100…「ファイアウォールドラゴン」のダイレクトアタックで決着がつく…しかし、遊作はさらなる動きを見せる。

 

「『リカバリー・ソーサラー』の効果発動!相互リンクしていたリンクモンスターが破壊されたターンに1度だけ、そのモンスターを効果を無効にして特殊召喚できる!『セキュアガードナー』を『ファイアウォールドラゴン』のリンク先に特殊召喚!」

 

《おいおい!?何をやってるんだよ?怖いワンちゃんがいたってダイレクトアタックできるんだぜ?》

 

「デュエルはただ勝ち負けを決める()()じゃない…『ファイアウォールドラゴン』の効果発動!相互リンクしているモンスター1体につき1枚、自分・相手のフィールド・墓地のモンスターを手札に戻す!相互リンクしているモンスターは2体!よって財前の墓地の『ティンダングル・ハウンド』と『ティンダングル・エンジェル』を手札に戻す!エマージェンシー・エスケープ!!」

 

『っ…!?()()!?』

鉄壁の守護龍が効果を発動…晃の手札に2体のモンスターを戻す…そのプレイングに晃は戸惑っている…。

 

「……『ケルベロス』の攻撃力は墓地の『ハウンド』と『エンジェル』の枚数で変化し、0になる…バトルだ!『ファイアウォールドラゴン』で『ケルベロス』を攻撃!テンペストアタック!!」

 

『っ!』

攻撃力が0になったケルベロスに迫る天災の一撃…その時だった。

 

 

「お兄様!!」

 

『葵!ダメだっ!?ぐうっ!?』

 

『お兄様!?』

ケルベロスが破壊される刹那、ブルーエンジェルが兄を守る為に飛び込んでくる…それを見た晃は咄嗟にブルーエンジェルを抱き抱え…背中でその爆風を受けて倒れ込んだ…。

 

 

財前晃 LP0

 

プレイメーカー WIN!

 

 

 

 

「お兄様!ごめんなさい!!」

 

『大丈夫だ…すまない、葵…』

 

『流石ね、プレイメーカー…あの状況から逆転するなんて…もう、彼の復讐の炎は…誰にも消せないのかもしれない…』

飛び出してしまった事を謝る葵…彼女を安心させる為に身を起こした晃は彼女を抱き寄せる…。

そして、ゴーストはガールは遊作の強さに感服し…彼の復讐心の強さを悟っていた…。

 

 

「……約束通り、データはもらうぞ」

遊作は晃に声を掛けると…データバンクのコアである卵型のモニュメントに歩み寄る。

 

 

「Ai!思う存分食っていい…早くしろ」

 

《ん!?今、オレの名前呼んでくれた!?よ〜し!任せろ!オレ様が全部食べちゃうもんね〜!!いただきまーす!!》

そして…遊作に声を掛けられたAiが捕食形態に変化、張り切ってデータバンクのデータを食らっていき…。

 

 

《ふぅ〜食った食った〜!オラ満足ですだ〜!》

 

「……よくやった」

大量のデータを食べて満腹になり、人型でも大きな腹になったAiを連れて遊作は踵を返す…。

 

 

「財前、この件から手を引け…これ以上、オレに関わるな」

 

『っ…プレイメーカー!』

データバンクから去ろうとする遊作…その背中に晃が声をかける…。

 

 

『あの時、「ファイアウォールドラゴン」でダイレクトアタックすれば、それだけできみは勝っていたはず…なのに、何故あんな事をした…?』

 

「……『ティンダングル・ハウンド』と『ティンダングル・エンジェル』…互いを庇いあう力を持つそのカードこそ、お前と妹の化身そのもの…そんなお前達が、()()()()()()()()()()()()()……お前達は、オレの復讐に引きずられて闇に落ちる必要はない……お前達は、光の差す場所を歩いて欲しい…それだけだ」

 

『プレイメーカー…きみは…』

遊作は自分のプレイングにメッセージを込めていた…自分の復讐に巻き込まれ、涙を流し…傷付く者が生まれないように…新たな復讐者を生まない為に…。

 

 

 

 

『……プレイメーカー…今のきみの姿を見たら…きみを助け出した()は、いったいどう思うのだろうな…』

 

「っ……さらばだ」

 

《あっ、おいプレイメーカー?…そんじゃ、皆さん!バイバ〜イ!!なんてな!》

そして遊作は…晃の言葉に答える事なく、デュエルボードに乗って去って行った。

 

 

『……それじゃ、私も消えるわね!仲良くしてね、お二人さん!』

遊作の背中を見送ったゴーストガールが一足先にログアウトする…そして、データバンクに残された財前兄妹は…。

 

 

『結局、私は何もできなかったのか…』

 

「そんな事はないと思います…少なくとも、お兄様の気持ちは伝わった…それに、彼は誰が止めても自分の道を往く…お兄様が私を守ろうとしたように…そんな気がします!」

 

『葵…そうかもしれないな』

遊作…プレイメーカーを止められなかった事を悔やむ晃…しかし、その行動は…思いは無意味ではないと伝える葵…その言葉に晃は救われたのだった。

 

 

 

 

「そういえば…プレイメーカーを助けた()というのは…?」

 

『ああ…ロスト事件は何者かの通報によって明るみになり、警察が彼らの救出に向かった……しかし、それよりも早く被害者達を助け出した人物がいる…記録にはそう書かれていた』

 

「警察より早く…?それはいったい…」

 

『お前も名前だけは聞いた事があるはずだ……デュエル界に古くから伝わる伝説……弱きを助け、強きを挫く…現実に現れた英雄(ヒーロー)……鋼の騎士、メタルナイト…彼が、被害者達を救い出したんだ』

 

「メタルナイト…」

それはデータバンクに僅かに刻まれた英雄の痕跡だった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ…草薙さん!これだ!このデータだ!!」

 

「これが、ハノイプロジェクトの首謀者…!!」

一方、疲労困憊でCafe Nagiに帰還した遊作は疲れを押して草薙と共にAiの取り込んだデータを解析していた…そしてついに、晃の言っていた()()()の記されたデータを発見する…!

 

 

「Dr.鴻上…本名鴻上聖…!ハノイプロジェクトの立案・実行者…やはり、SOLテクノロジーの研究者か!!」

ついに見つけだした黒幕…それは髭を蓄えた壮年の男、鴻上博士という人物だった。

 

「鴻上博士が独断で事件を起こし、内部告発で発覚…責任を取る形で役員全員が辞職…事件の目的は…不明?」

見つけデータを読み進める遊作と草薙…そして、その末尾に書かれていたのは…衝撃の一文だった。

 

 

 

「っ…!?鴻上博士は……7年前に、()()…!?」

 

「なんだって…!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【この地から…新たなる戦いが始まるのですね、()()()

 

【そうだ、この種がハノイの実を実らせる時…それがリンクヴレインズ…いいや、ネットワーク世界最後の時…その本懐を遂げる為、私は冥府から蘇ったのだからな…】

 

 

そして…新たなる戦いの種は…今まさに芽吹こうとしていた…。

 

 

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