転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話   作:S,K

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こんにちは!S,Kです!

暗躍するハノイの騎士、不穏な動きをするSOLテクノロジー…そして、真実を知る為に復讐の道を歩み続ける遊作。


───しかし、それは彼らにとっては遠い世界の話

それでは、最新話をどうぞ!


束の間の平穏〜その想いは檸檬味〜

「おーい遊作!ずっとぶっ通しで作業してるだろ?ちょっと休憩したらどうだ?」

 

「ふぅ…そうするよ」

SOLテクノロジー社のマザーコンピューター攻略から数日後の休日…遊作は草薙と共にデンシティの海辺の公園へとやって来ていた。

なお、喧しいAiは遊作の自宅に放置されている。

 

 

 

「どうだ?ここは海がよく見えるだろ?」

 

「ああ…だが、こんな所に店を出して…売れるのか?」

 

「知らないのか?この場所はデンシティの()()なんだぜ?お前が作業に夢中の間にも1人買いに来たし、デートスポットでも有名なんだ!」

 

「……真面目に聞いたんだが」

 

「ははっ、真面目に答えてるさ」

穏やかに凪ぐ海を見ながら店の売上について尋ねる遊作…店には閑古鳥が鳴いているが、店長である草薙の表情は明るかった。

 

 

 

「そんな話をしていれば…お〜い!そこの()()()()()!美味しいホットドッグはどうだ〜い?」

 

「ん…?あっ!Cafe Nagiが開いてる!珍しい…食べてみる?」

 

「あ…はい!!」

 

「──ん?」

ぼんやりと海を見ていた遊作はふと声が聞こえてきた方向を見る…そこにいたのは──

 

 

「あれ…?藤木君?」

 

「お前達…白波と、キリエライト?」

 

「あ、ま、マシュでいいです!偶然ですね!」

遊作と同じ制服を着た2人の男女…遊嗣とマシュだった。

 

 

何故、2人がこの場所を訪れたのか…その理由は前日に遡る。

 

 

 

 

 

Side遊嗣

 

 

 

「財前さん良かったですね!」

 

「うん!次の休み明けから戻って来れるって聞いて安心したよ」

とある日の昼休み、遊嗣とマシュは学食の弁当を食べながら雑談をしていた。

その話題はしばらく学校を休んでいた同じくデュエル部員の財前葵について…デュエル部のグループメッセージに休日明けから登校すると連絡があったのだ。

 

 

「しばらく来てなかったから授業に追いつくの大変だろうな…でも、財前さんは頭脳明晰らしいし大丈夫かな?」

 

「そうですね…でも、困っていたら私も微力ながらお手伝いします!」

 

「そうだね…マシュはやっぱり優しいなぁ」

葵とは関わって日が浅い2人だったが…それでも同じ部活の仲間である事は変わらない。

そして、ようやく日常が戻って来る事に安堵していた…。

 

 

 

「休日と言えば…遊嗣さんは休みの日はどんな過ごし方をされてるんですか?」

 

「うん?僕?う〜ん…学校の課題を片付けて…リンクヴレインズに行ったり、プロデュエリストの中継を見たり…少し体を鍛えたりとか…」

 

《とか言って…マスター…父上が出張に行ってからは、ゴロゴロしてる事が多いんじゃないかい?》

 

「ちょっ、ロマン!?少しはカッコつけさせてよ!?」

 

「くすくす…」

マシュに休日の過ごし方を聞かれた遊嗣は自分らしい休日の過ごし方を答えるが…多少の嘘があったらしく、ロマンにツッコまれている…その様子を見たマシュは静かに笑っていた…。

 

 

「マシュはどんな感じなの?」

 

「私は…引っ越しの荷物を片付けたり、家の掃除をしたり…空いた時間に読書したり…充実した休みを過ごしているつもりです!」

 

「引っ越しの荷物…あれ?もう引っ越して来てからからずいぶん経つと思うけど…?」

 

「それが…今、私()()()()()なんです…」

 

「ええっ!?」

続いてマシュの休日の過ごし方を聞いた遊嗣…だが、マシュの思わぬ言葉に驚いている…。

 

 

 

「マシュって…お父さんの仕事で日本に来たって…」

 

「実は…私のお父さんも、遊嗣さんのお兄さんと同じ()()()()()()()()なんです…それで日本各地を転戦していて……お母さんはイギリスの家を守ってくれているので…」

 

「それ、初耳なんだけど…!?えっ、じゃあご飯とかは!?」

 

「恥ずかしながら、お料理は練習中で…お店のお弁当とか…お父さんが手配してくれた配食サービスを……」

 

《……マシュも苦労してるんだねぇ…》

 

「いや、苦労どころの話じゃないって!大変過ぎだよ!」

それはマシュの思わぬ苦労話…イギリスから新天地の日本へとやって来て、実質の一人暮らし…それは並大抵の苦労ではないと遊嗣は気付いていた。

 

 

「それじゃ…デンシティに来てから、遊びに行ったりとかは…」

 

「…遊嗣さんとリンクヴレインズに行ったり、帰り道の寄り道ぐらい……」

 

「Oh…」

 

《…なんだか、遊嗣の方がダメージ受けてないかい?》

デンシティに来てから大変な生活を続けていたマシュ…それを聞いた遊嗣は思わず顔を手で覆って天を仰ぐ…知らなかったとはいえ、マシュの苦労に気付けなかった自分が恥ずかしくなったのだ。

 

 

「き、気にしないでくださいね?お父さんが日本のリーグに移籍するのについて行きたいと言ったのは私なので…」

 

「いや…自分が情けなくなっちゃって…女の子が困ってるのに気付けなかったなんて、璃緒姉に小言を言われちゃうよ…」

 

《あはは…》

マシュの苦労を知って想像以上に落ち込んでしまう遊嗣…その様子を見たマシュ本人とロマンは苦笑いしていた…。

 

 

《……という事は、マシュはまだこの街の事をあまり知らないって感じかな?》

 

「そうですね…買い物のできるお店とかはナビで調べたのですが…時々迷いそうになる事も…」

 

《なるほど…遊嗣、どうかな?彼女をエスコートしてあげたらどうだろう?きみはこの街に住んで10年以上になるし、色んな場所を走ってるから案内できるんじゃないかな?》

 

「へっ…!?いや、それは…」

 

「あっ…もし、案内してくれるならありがたいです!」

 

「いや、僕は構わないんだけど…!?(それって世間では()()()って言うんじゃないかな─!?)」

 

そして…ロマンのお節介によって遊嗣とマシュはデンシティ案内という名のデートをする事になったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「か、母さん母さん母さん!!」

 

「あら、ユウ君おかえりなさい!どうしたの?そんなに慌てて…」

放課後、マシュと別れた遊嗣は電光石火の早さで帰宅…その慌てふためいた様子を見て、コーヒーを飲んでいた翠はきょとんとしている。

 

 

「ま、マシュと…マシュとデートする事になっちゃった…!!」

 

「へぇっ!?」

 

《フォウ!?(特別意訳:いきなりの急展開!?)》

そして遊嗣の思わぬ言葉に翠は驚くと共に顔が真っ赤になった…。

 

 

 

…………

 

 

 

「なるほどねぇ…マシュちゃんも大変だったんだ…」

 

「いや、案内するのは大丈夫だけど…ロマン〜!!」

 

《あはは…ごめんごめん、でも…彼女が困ってるのを見たら放っておけなくてね…まぁ、普通に友達と遊ぶみたいにすれば問題ないさ》

落ち着きを取り戻した遊嗣は経緯を翠へと説明する…その内容を聞いた彼女は静かに頷いていた。

 

 

「ん〜…遊嗣、どうせならウチで夕食を食べてってもらったらどう?マシュちゃん、お弁当が多いんでしょう?家庭の味が恋しいんじゃないかしら?」

 

「母さん!?えっ、いや…それは…」

 

「ふふっ、もちろんマシュちゃん本人に確かめてからで良いから!母さん、久しぶりに頑張っちゃうわ!」

 

「母さ〜ん…」

そして翠はどうせなら、と夕食をご馳走する事を提案する…それを聞いた遊嗣は再び顔が赤くなってしまうのだった…。

 

 

 

「(ふふっ…遊嗣、あなたが普通に生きて…青春を過ごす…それだけで、私はとっても嬉しいの……さて、料理は何がいいかしら?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Sideマシュ

 

 

 

「うぅ…やってしまいました…!遊嗣さんと()()()なんて、いきなり過ぎでしょうか…!!ああ〜!!」

一方その頃、自室のベッドの上でマシュは枕に顔を埋めて叫びながら、足をパタパタと打ち付けていた……言うまでもなく、自分の行動への恥ずかしさ故にである。

 

 

マシュ・キリエライトは白波遊嗣に()()()()()()

 

 

出会ってから僅か数週間…否、あの日…リンクヴレインズで()()()()()()から…マシュは遊嗣に()()()()してしまったのだ。

 

 

「(あの日、リンクヴレインズでハノイの騎士に襲われた時…私はとても心細かった…モンスターに襲われ、逃げていく人々…誰も助けてくれなかった……でも、遊嗣さんは…そんな私に手を伸ばしてくれた…見ず知らずの私を、助けてくれた…)」

 

それは今から思えば『吊り橋効果』というモノだったのかもしれない…知り合いのいない日本、家には誰もおらず、せっかく作ったアバターも炎に飲み込まれる寸前──

 

 

 

──大丈夫!?──

 

 

 

自分の危険も顧みず、遊嗣は瓦礫の下敷きになってしまったマシュへと手を伸ばした…その時、マシュは既に恋に落ちていたのだ。

 

 

「ネット世界の出会い一は一期一会…もう会えない、そう思っていたのに……」

リンクヴレインズはデンシティのみに展開された電脳世界…しかし、デンシティは広い…一目惚れの相手には会えないと思っていた…しかし、彼女達は運命に導かれるように再会する事ができたのだ。

 

 

「……遊嗣さんと、デート……えへへっ…」

恥ずかしさと嬉しさ…なんとも言えない甘酸っぱさを感じながら、マシュは笑っていた…。

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

「マシュ!ごめん、待たせたかな!」

 

「いいえ!時間ぴったりです!遊嗣さん!(楽しみ過ぎて予定の30分前には来てしまったのですが…黙っている事にします!)」

そして休日、デンシティの中央広場で2人は待ち合わせていた…なお、2人の服装は制服姿である。

 

 

「えっと…とりあえず、何処に行こうか?」

 

「遊嗣さん…おまかせしてもいいですか?この街の名所とかがあったらぜひ!」

 

「あっ…そういう感じね!了解!(マシュの前でかっこ悪い所は見せられない…!気合いを入れろ!僕!!)」

そうして2人は一緒に歩き出した…。

 

 

そして…遊嗣は様々な場所をマシュに案内していく。

 

困った時の役場や警察署、消防署や病院…美味しいお店やカードショップのある商店街…様々なモノが売っているショッピングモール、デンシティの象徴であるSOLテクノロジー社…様々な場所を巡る中、マシュが疑問を口にする。

 

 

 

「遊嗣さん、色々な場所を見て回りましたけど…なんだか、()()()()ですね?イギリスにいた頃に見た日本の本には…街中に木造のお寺や神社、オジゾウさんとか…歴史的な建物がある、と書いてありましたけど…」

 

「うん、そうだね…この街はちょっと()()なんだよ…大きな()()があったからね…」

 

「災害…日本の災害というとアースクエイク、地震でしょうか…?」

 

「次の場所で休憩しながら話してあげるよ、次の場所は海が綺麗な場所なんだ!」

マシュの疑問に答えながら2人は海辺の公園へと向かい…場面は冒頭へと戻る。

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

「おや?遊作の知り合い…同級生か?」

 

「あ、はい!藤木君の同級生で同じデュエル部の白波遊嗣といいます!」

 

「同じく同級生のマシュ・キリエライトです!イギリスからこの街に引越して来ました!」

 

「やっぱりそうか!俺は草薙、遊作のバイトしてるこの店の店長さ!」

 

「藤木君、バイトしてたんだ!?」

 

「……ああ」

海辺の公園で思わぬ出会いをした遊嗣達と遊作達はお互いに自己紹介を交わす…なお、遊作は普段の無愛想モードである。

 

 

「とりあえず注文からだな!何がいい?」

 

「それじゃ…普通のホットドッグをお願いします!」

 

「私も同じモノを…あっ、マスタード抜きでお願いします!」

 

「まいどあり〜♪」

 

 

………

 

 

「なるほど…イギリスから来たマシュさんにデンシティの案内をねぇ…てっきりデートかと思ったよ」

 

「で、デデデ、デートなんてそんな…!?!?」

 

「こ、今回は違いますので!!」

 

「ほ〜ん…(アオハルかぁ…羨ましいぜ)」

 

「(この2人、付き合ってたのか!?)」

草薙の作ったホットドッグを食べながら遊嗣達は事情を話すが…あまりに初々しい反応に草薙はニヤニヤとした笑顔となり、遊作は表情には出さないが…内心では驚愕していた。

 

 

「でも、デンシティの名所と聞いてここを案内するのは流石だ…ここから見える海は『スターダスト・ロード』と呼ばれてるんだぜ?」

 

「「スターダスト・ロード?」」

 

「ああ、発光するプランクトンが集まって海が星空のように輝いて見える事があるそうなんだ…まぁ、この場所でも珍しい現象なんだけどな…俺も直接は見た事はないんだが…あの崖の上に住んでる人なんかは見た事があるんじゃないか?」

 

「わぁ…ロマンチックですね!」

そして草薙はマシュと遊作にこの公園から見える海──「スターダスト・ロード」の由来を伝える…その光景を想像したマシュは目を輝かせている…。

 

 

「そういえば…遊嗣さん、この街が特殊というのは…?」

 

「ああ、そうだった…この街にお寺さんが少なかったり、『スターダスト・ロード』が見えるようになったのには昔の災害…いや、()()が関係してるんだ…1()7()()()のね」

 

「17年前…?」

 

「ああ──『覇王龍の乱』の事か…白波君、物知りじゃないか」

 

「覇王龍の乱…それって、デュエルモンスターズ史上()()()()()と言われた…!この街がその現場だったんですか!?」

 

「……草薙さん、覇王龍の乱ってなんだ?」

 

「ん?知らないのか遊作…って仕方ないか…お前達が生まれる前の事件だもんな…」

そして先ほどの遊嗣の言葉を思い出したマシュが彼に問いかける…そして彼の言葉を聞いてマシュは驚き、遊作は普段通り…事件については知らず、草薙に尋ねる。

 

 

「もう17年も前の話だ…世界で始めて開かれた『決闘王』を決める為の統一大会、ワールド・チャンピオン・シップス…その決勝戦で起きてしまった…別名『悪魔が生まれた日』と呼ばれた未曾有の大事件だ──」

そして草薙は『覇王龍の乱』について語り始めた…あまりにも悲劇的で、救いのない事件のあらましを…。

 

 

17年前、アドバンス・融合・シンクロ・エクシーズ…4体のドラゴンを操る1人のデュエリストがいた事。

 

そのデュエリストが対戦相手を傷付けてしまう事故が起きた事。

 

そこからそのデュエリストの戦い方は荒々しくなっていき…当時の強者達を蹴散らし、決闘王に王手を掛けたが…後の決闘王、九十九遊馬に敗れた事。

 

その男に期待を裏切られた観客がゴミを投げつけた事で、彼の精神のタガが外れ…リアルソリッドビジョンが暴走…そして、あろう事かその男と4体のドラゴンが融合し…『覇王龍』と呼ばれる化け物が誕生した…。

 

 

 

 

「その時に『覇王龍』が大暴れしたせいで海流の流れが変わったり…ほら、この公園の高台…あれの頂上もぶっ飛ばされたらしい…俺もガキだったけど、あの怖さはたまに思い出すよ…」

 

「そして…ある日突然、覇王龍はいなくなったんだ…この街の半分を大きなクレーターに変えて…綺麗さっぱりとね」

 

「消えた…?覇王龍は何処に行ったんだ?」

 

「様々な説があるみたいです…自分の強すぎる力に呑まれて自爆してしまった…デュエルモンスターズの神の怒りを受けた……あるいは()()()に逃げた…なんて突拍子もない説まで、真実は明らかになっていないそうです」

 

「別世界…本当に突拍子がないな…」

そして、世界を揺るがした「覇王龍の乱」はあまりにも突然に解決し…真相は一部の英雄達が知るのみとなった…。

 

 

「そして…この街が更地になった事を利用して海馬コーポレーションや天城カイト博士、そしてSOLテクノロジー社…たくさんの企業や人々が協力してこの街を『近未来ネットワークモデルシティ』として復興させて、今のDen Cityになったんだ」

 

「なるほど…だから、街が新しいと感じたんですね…」

思わぬ形でデンシティの成り立ちを知ったマシュ…そして遊作も自分が生まれる前の事件を知って関心を持ったようだった…。

 

 

………

 

 

「草薙さん!長居しちゃってすいません!ありがとうございます!」

 

「良いって事よ!それより、学校で遊作の事頼んだぜ?コイツって意外と寂しがりだからさ、仲良くしてやってくれ!」

 

「草薙さん!?」

 

「ふふっ…店長さんと藤木さん、本当に仲が良いんですね!」

そして遊嗣とマシュは公園から立ち去る…その間際に草薙がお節介な事を言った事で遊作は心なしかむくれていた…。

 

 

 

「ははっ…丁度いい気分転換になったな?遊作…そういえば、さっきの作業の結果はどうだった?」

 

「ああ…10年前のSOLテクノロジー社の役員の行方を追ったんだが──」

ひと時の談笑を終えた草薙と遊作は再び表から裏へと潜る、首謀者が死んだとしても…事件の真相を知るまで、彼らの復讐は終わる事はないのだ…。

 

 

 

………

 

 

 

「遊嗣さん!今日はありがとうございました!本当に楽しかったです!」

 

「こちらこそ…マシュと一緒に色んな場所に行けて良かったよ!」

時刻は夕暮れ…中央広場へと戻ってきた遊嗣とマシュはベンチに座りながら語り合っていた…このデートのおかげでマシュが道に迷う事はなくなっただろう。

 

 

「マシュ、この後は?」

 

「今日はこのままスーパーでお弁当を買って帰ろうかと…」

 

「そうなんだ…(遊嗣、勇気を出せ…!別に、恥ずかしがる事じゃないんだから…!!)」

 

「……遊嗣さん?」

そして…マシュの予定を確かめた遊嗣は気合いを入れ、呼吸を整えてマシュに話しかける…。

 

 

「実はさ、母さんにマシュの事を話したら…良かったら晩御飯をウチでご馳走しようか?って言ってくれたんだけど…どうかな?」

 

「ええっ!?そんな、申し訳ないですよ!!」

 

「ああ、まぁ…僕の母さん、料理上手でさ…今ごろ張り切って料理してると思うんだ…もし迷惑じゃなかったら寄っていってよ」

 

「(いきなりのお家デート…!?いえ、きっと遊嗣さんは純粋に私の事を()()してくれてる…ここは──)ありがとうございます、お邪魔してもいいですか…?」

 

「う、うん!じゃあ案内するよ!(わ、わあ〜!誘っちゃった─!!)」

心の声で大騒ぎしながら…2人は白波家に向けて歩き出した。

 

 

 

 

「ただいま!」

 

「お、お邪魔します!!」

デンシティ中心部から少し離れた住宅街…そこにデンシティでの白波家はあった。

 

 

《フォウ、フォーウ!》

 

「あ、フォウくん!ただいま〜!お客さんだよ?」

 

「あっ…可愛い…!」

帰って来た遊嗣を一番に出迎えたのはふわふわとした子猫、フォウだった…彼は嬉しそうに遊嗣の肩に飛び乗り、それを見たマシュが声を漏らす…。

 

 

「フォウくん、同級生のマシュだよ」

 

「マシュ・キリエライトです!よろしくお願いしますねフォウさん!」

 

《フォーウ…フォウ!(特別意訳:あっ、この子タイプ…よろしく〜!)》

 

「わぷっ!?」

 

「フォウがいきなり誰かに馴れるなんて…マシュ、すごいね!」

 

「あはは…ありがとうございます?」

遊嗣に抱き抱えられてマシュと出会うフォウ…彼は一目でマシュを気に入ったらしく、彼女の胸に飛び込んだ…。

 

 

「あら〜!いらっしゃ〜い!貴女がマシュちゃんね?はじめまして!遊嗣の母です!」

 

「あっ…マシュ・キリエライトです!今日はお招きいただき、ありがとうございます!」

 

「ふふっ、そんなに固くならないで?さぁ入って!入って!」

 

「お邪魔します!」

そして…ついにマシュは翠と顔を合わせる、マシュは緊張しながらもしっかりとした挨拶をして、家の中に招かれた…。

 

 

「(マシュって名前で気付いたけど…本当に()()とそっくり…マーリンさんの事もあるし、私達は()()()()()()と出会う運命なのかな?…遊海さんがいたらびっくりしちゃいそう!)」

そして翠はマシュの姿を見て…別の世界で戦う「盾の少女」の事を思い出していた…。

 

 

 

「わぁ…!日本式のカレーライスですね!」

 

「ふふっ、唐揚げとかハンバーグとかも考えたんだけど…温かい料理が良いかなって!お口に合うと良いんだけど…」

 

「おいしそー!」

本日の献立はカレーライス(チキン)と紅生姜に生野菜のサラダというオーソドックスなメニュー…温かな料理にマシュも目を輝かせている。

 

 

「それじゃあ…いただきます!」

 

「「いただきまーす!!」」

 

《フォウ!》

そして三人は明るく食卓を囲む。

 

 

 

「美味しい…!ポテトもホクホクで…チキンも柔らかくて…付け合せのジンジャーのピクルスがアクセントになって…こんなに美味しいカレーは初めて食べました!」

 

「喜んでくれてよかった!おかわりもしてね!」

 

「ありがとうございます!」

 

「(マシュが喜んでくれて良かった、母さんも喜んでくれてるし……僕も心がぽかぽかしてる気がする)」

 

《(空気を読んで1日黙っていたけど…みんなが笑顔で良かった!ちゃんと記録を残しておかないとね!)》

翠の美味しい料理を食べながら談笑する遊嗣達…そんな幸せな光景をロマンはしっかりと記録に残していた…。

 

 

 

〜〜〜〜

 

 

 

「すいません…お皿洗いも手伝わないで…」

 

「いいのいいの!明日からまた学校でしょう?ゆっくり休んでね」

楽しい時間ほど時が流れるのは早い…しっかりと食事を楽しんだマシュは帰路につこうとしていた。

 

 

「母さん、マシュを中央広場まで送ってくるよ」

 

「うん、気をつけてね?マシュちゃんには…はい、お土産!残り物だけど、温めるだけで食べられるようにしてあるから!」

 

「わぁ…!何から何まで…本当にありがとうございます!」

 

「もう…母さんはお節介なんだから…」

マシュを送る為に靴を履く遊嗣…そして翠は数品のおかずを包んだ紙袋をマシュへと渡した…。

 

 

 

 

「遊嗣さんのお母さん、すごく綺麗で…若々しい方ですね!」

 

「ははっ…母さんっていわゆる()()()なんだよ…もう五十代のはずなんだけど…」

 

「ごじゅ…!?本当に若く見えますね!?」

広場に向かう帰り道、他愛もない話で盛り上がる遊嗣とマシュ…この1日で2人の距離はずっと縮まっていた…傍目から見れば付き合っているように見えてしまうほどに…。

 

 

 

「遊嗣さん…今日は本当に楽しかったです!ありがとうございました!」

 

「うん!僕も楽しかった!…そうだ、今度は一緒にスターダスト・ロードを見に行こうよ!いつ見れるかは分からないけど…」

 

「──はい!」

それは2人で交わした小さな約束…遊嗣の言葉を聞いたマシュは嬉しそうに頷いた。

 

 

「じゃあねマシュ!また明日!」

 

「はい!また明日!」

そして2人はそれぞれに帰路につく…ぽかぽかと心を満たす、暖かな気持ちの余韻を楽しみながら…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、マシュは学校に姿を見せなかった。

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