転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話 作:S,K
楽しい時間を過ごした矢先、遊嗣の前から姿を消してしまったマシュ…彼女の身に、いったい何が起きたのか…。
遊嗣にとっての「非日常」の戦いが始まる。
それでは、最新話をどうぞ!
「マシュ、どうしたんだろう…」
《学校に来なくなって3日か…体調を崩してしまったのかもしれないね、メッセージアプリの既読がつかないのが気になるけど…》
マシュとのデートから3日が過ぎた…しかし、落ち込む遊嗣の隣に彼女の姿はない。
マシュはこの数日、学校に姿を見せていない…メッセージアプリによる連絡もつかない。
それを心配した遊嗣は2日目に担任に彼女の事情を伝え、住所を教えてもらうように頼んだのだが…個人情報の保護を理由に教えてくれず、緊急連絡先に指定されている彼女の父親への連絡を頼むのが精一杯だった。
「リンクヴレインズでも日食騒動があったらしいし…なんだか、嫌な予感がする…」
《日食が悪い事の前触れ…というのは迷信だよ、あまりにも珍しい出来事だから昔の人が恐れた…それだけさ》
「………」
そして先日、リンクヴレインズでも異変が起きた…何者かがリンクヴレインズのデータを書き換え、月が太陽を隠す──皆既日食が発生したのだ。
日食は古来から災いの前触れとされている……リンクヴレインズには不気味な気配が漂っていた…。
「なぁなぁ白波!
「島君…なに?
「ああ、そっちそっち!」
そんな時、落ち込んでいる遊嗣に島が話しかける…どうやら新しい情報を仕入れてきたらしい。
「ほら、最近学校で欠席の奴らが増えたろ?それで気になって調べたら…デンシティ全域で似たような事が起きてるらしいんだ」
「……デンシティ全域で?」
「ああ、なんでもリンクヴレインズに行ったまま戻ってこない奴がいるらしくてさ──」
それは巷を騒がせる事件…島曰く、深夜0時にデュエルディスクから白い手が伸び、デュエリストの精神を無理矢理にリンクヴレインズに引き込んでしまう…というオカルト話が広がっているらしい…。
「それで生身の体は抜け殻…
「──アナザー……意識が戻らない………──っ!?まさか…まさか!!マシュ!!」
「あっ、おい!!……どうしたんだ?白波の奴、血相変えて…まぁ良いか!次は情報弱者の藤木に教えねぇと…って、寝てらぁ…」
島の話をぼんやりと聞いていた遊嗣は唐突に嫌な予感を感じ取り、教室から飛び出した…!!
「ロマン!!!」
《分かってる、調べたよ!マシュが住んでるのは──》
凄まじい速さで街中を疾走しながら…遊嗣はロマンに声をかける、そしてロマンは既に学校のデータベースにアクセス、マシュの住む住所を割り出していた!
《このマンションの三階だよ!》
マシュが住んでいるのは中央広場にほど近いオートロック付きのマンション…遊嗣は部屋番号を押して呼び鈴を鳴らすが、誰かが出る気配はない。
「ロマン、
《当然さ…でも、良いのかい?ここからは先は──》
「後でどれだけ怒られてもいいから!!」
《了解…!きみのそういう所はマスターにそっくりだ!》
遊嗣の覚悟を聞いたロマンはオートロックをハッキング…自動扉をこじ開ける!
「っ…マシュ!!いるかい!?いるなら返事をしてくれ!!」
そしてマシュの住む部屋の前に辿り着いた遊嗣は呼び鈴を鳴らしながらドアを叩く…だが、反応は帰ってこない…。
『うるさいよ!何を騒いでるの!?』
「っ…おばちゃん!この部屋に住んでる、桃色の髪の女の子の事見てない!?」
『うん?マシュちゃんかい?そう言えば…この2、3日くらい姿を見てないね…いつも朝の出際に挨拶してくれるんだけど…』
「っつ!?」
その時…遊嗣の出した音が煩かったのか隣の部屋の主婦が飛び出して来る、そして主婦の言葉を聞いた遊嗣の顔色が青褪める…。
「おばちゃん!管理人さんは!?」
『今日は午前で帰っちゃう日で…マシュちゃんに何かあったのかい…!?』
「すいません!ベランダを貸してください!!」
『早く行きなさい!救急車は呼ぶから!』
遊嗣の尋常ではない様子を見た女性が遊嗣を部屋に通す…そして遊嗣は脱兎の速さでベランダ伝いにマシュの部屋に辿り着く…。
「っ…カーテンがっ…!──マシュ!!」
《っ…ダメだ遊嗣!拳に何かを巻いて───》
ビキッ…バリバリーン!!
カーテンの隙間から部屋の様子を窺う遊嗣…そして、彼は
「痛っ…!っ…マシュ…マシュ!!しっかりするんだ!」
「………───」
ガラスによって切り裂かれ、破片が突き刺さった右手の痛みを無視して遊嗣は部屋へと駆け込む。
そこには…デュエルデュエルの近くでぐったりと倒れ込むマシュの姿があった…。
「マシュ…お願い、目を覚まして…!マシュ…マシュ──!!」
遊嗣の悲しい叫びが部屋に木霊する…だが、彼女が目を覚ます事はなかった…。
Side遊作
「遊作、これを見てくれ…ハッキングで手に入れた防犯カメラの映像なんだが…アナザー被害の瞬間が映っているんだ」
《へぇ、そりゃ見ものだな!噂の0時までは…残り6分か》
Cafe Nagi・ハッキングルーム…学校帰りにそこを訪れた遊作はAiと共にアナザー被害の瞬間が映っているという防犯カメラの映像を確認していた…。
《……なんだ?0時きっかり、ってのはガセネタか?白い手も出ないし…》
「どうやら…本人の意思に関係なくリンクヴレインズにログインさせられる、というのは本当らしいな…これがアナザーか…」
映っていた映像…そこには、コンビニの駐車場に座っていた少年がリンクヴレインズへログインする際に現れるホログラムに似た白いプログラムに覆われ…倒れ込む瞬間が映っていた…。
「この少年はこの後に病院に搬送されたが、意識は戻らないままだそうだ…その病院には既にアナザー患者専用の集中治療室が設置されている」
《遊作、この症状は……》
「ああ、似ているな…
そして続いて草薙が映したのは病院のベッドで眠り続ける、遊作と同世代と思われる少年・少女達の姿…その姿は財前葵、ブルーエンジェルを昏睡させた「電脳ウイルス」の症状に酷似していた。
「……当初、アナザーは自ら現実世界を捨てて、リンクヴレインズで生きていく事を選んだ事が原因だと言われていたが…それは無さそうだな…誰かが、彼らの
「…誰が、何の為に…」
《アナザーになった連中のアバターはどうなったんだ?》
「それも調査する必要はあるが…ひとまず、アナザーになった者のデータをまとめておいた…見てくれ」
何者かによって連れ去られてしまった人々の精神…草薙は彼らのデータをハッキングによって手に入れていた。
《ふむふむ…このデータを見ていると…
「ああ…1つ、デュエルの才能に秀でている…2つ、旧型のデュエルディスクを使っている…3つ、彼らは皆…ハッカーだ」
「ここから導き出せる答えは──」
《標的は…プレイメーカー…!》
「それか、プレイメーカーと行動を共にするイグニス…つまりAi、お前だな」
《人気者は辛いな?遊作ちゃん!》
「お前と一緒にするな」
アナザー被害に遭った者達の共通点をまとめた結果…遊作達は、犯人がプレイメーカーの可能性がある者を狙っている、という結論を出した…!
「という事は、犯人は──いや、まだ結論づけるのは早いか……それから…遊作、お前に伝えなきゃならない事がある」
「どうしたんだ?」
犯人について目星をつけた草薙…しかし、それよりも前に草薙は遊作に伝えなければならない事があった。
「……これを見てくれ…さっき運び込まれてきた、新しいアナザーの患者なんだが…」
《あれっ…デュエル部の可愛い子ちゃん?…遊作と同じクラスの…》
「マシュ・キリエライト…!?」
草薙がハッキングした病院のカメラに映されていたもの、それは…他のアナザー患者達と同じように入院着を着させられ、ベッドで眠り続ける桃色の髪の少女…先日、Cafe Nagiを訪れた同級生…マシュ・キリエライトだった。
しかも、彼女が繋がれている点滴や検査機器の数は…他の患者達よりも多かった…。
「…カルテによると、彼女は一人暮らしだったみたいでな…アナザー被害に遭った後、誰にも気付かれないまま3日間も経っていたらしい……」
「何故、彼女が…?彼女はハッカーでもないし、デュエルの技術を上げる為にデュエル部に入ったと言っていた…さっきの条件には当てはまらない…」
それは今までのアナザー被害のイレギュラー…マシュは遊作達が見つけた3つの法則に当てはまっていないのだ。
「実はな…この前は気付けなかったんだが、彼女の顔に見覚えがあってな…ちょっと調べ直してみたんだ……遊作、Ai、お前達が出会った日を覚えてるか?」
《あ〜!覚えてる覚えてる!SOLテクノロジーがリンクヴレインズの一斉スキャンを掛けて、ハノイに好き勝手された日だろ?》
「オレがAiを捕まえた日か…何か見つけたのか?」
「ああ…この画像だ」
マシュの顔に見覚えがあった草薙は最近のデータを洗い直した…そこで見つけたのは、リンクヴレインズでビルの下敷きになった彼女…そして、後ろ姿だけだが…
「これは確かに彼女だな…財前と同じ、正体を隠さないタイプのアバターか…」
「ああ、そうなんだ…そして、もう1つ分かった事がある……あの日、ハノイの騎士は
《あれ?もう1人は?逃げた…いや、ハノイの奴なら遊作に連戦を仕掛けたっておかしくないぞ?》
「もう1人のハノイの騎士は
「ハノイの騎士を倒した…しかし、痕跡が残っていない…?マシュが倒した?いや、違う…この違和感は──」
──マシュさん?白波君と知り合いだったかな?──
──はい!先日、初めてリンクヴレインズにログインして、困っていた私を助けてくれたんです!──
「──この金髪の男…おそらく白波遊嗣、彼のアバターだ…マシュは白波に助けられたと言っていた…!」
「遊作!それ本当か!?」
そして遊作は自分の感じていた違和感の正体を思い出した…それはマシュが転校してきた自己紹介の時、ぼんやりと聞き流していた言葉だった。
「……1つ、マシュは白波に助けられたと言っていた…2つ、ハノイの騎士は何者かに倒されている…3つ、自分達に敵対した者をハノイの奴らが見逃すとは思えない」
「──彼女は、ハノイの奴らに
「いや…
《ハノイは金髪の白波の正体を掴んでない…だから、あいつを誘き出す為に、嬢ちゃんを利用したって事か…!!》
「…ハノイの騎士め…!汚い真似をしやがって!ついに手段を選ばなくなったか!!」
遊作達は犯人を特定する…アナザー事件、その実態は…プレイメーカーや白波遊嗣(仮)を炙り出す為の襲撃事件だったのだ…。
「これ以上、アナザーの被害者を出す訳にはいかない…草薙さん、何か手がかりは?」
「お前がそう言うと思って目星はつけておいた…!まずは君島マコト、16歳…お前と同じ高校の生徒だ…向かってみてくれ…!」
「わかった!」
《よーし、正義の味方の出番だな!》
「お前は黙ってろ」
《はーい》
ハノイの騎士による襲撃、それを確信した遊作は復讐の炎…そして正義への思いを燃やす…そして草薙がリストアップした人物のもとへと向かった。
Side遊嗣
──またアナザーの患者だ…!他の患者よりも衰弱が激しいぞ!──
──っ…!人工呼吸器を!急いで!!──
──キミ、手が…───治療しよう、そんな顔をしちゃダメだ…キミのおかげで彼女は助かったんだよ──
「………マシュ……」
《遊嗣、きみは…きみに出来る最善の行動をした、きみがマシュを助けたんだ》
「ロマン…っ…ああ……ーーー!!」
デンシティのとある病院…アナザー被害を受けてしまった患者専用のICUが設けられた病棟、その廊下で白波遊嗣は両手で頭を抱え…声を押し殺して泣いていた。
島からアナザー事件の情報を聞いた時に感じた遅すぎる
3日間も放置されていたマシュは衰弱…他のアナザー患者よりも多くの管や機械を装着されて眠り続けている。
そして、遊嗣は罪悪感に苛まれていた…「自分が早くマシュの異変に気付いていれば」「早く警察に通報していたら」「もっと早く助けに向かえれば」……命の危機に瀕していたマシュをもっと早く助けられたのではないかと…。
ガラスによる怪我を治療され、巻かれた包帯に血が滲むほどに拳を握り締めながら…。
「遊嗣…!遊嗣!大丈夫!?」
「かあ、さん…?」
《ボクが連絡したんだ、マシュがアナザーの被害を受けたと…そして、きみが怪我をしたって…》
そして、病院の廊下に聞き覚えのある女性の声が響く…それはロマンからの連絡を受けて駆けつけた翠だった。
「かあさん…マシュが…マシュが…!!」
「大丈夫、デンシティの医療レベルは日本トップクラス…マシュちゃんは絶対に助かる…だから、泣かないで…」
翠は涙でぐちゃぐちゃになった遊嗣を優しく抱きしめ、頭を撫でる…初めての「非日常」に取り乱す息子が落ち着くまで…。
………
「遊嗣、手を切っちゃったのね…いま
「…母さんの
しばらくして落ち着きを取り戻した遊嗣…それを見た翠は息子の手を軽く握り、回復魔法を発動…緑色の優しい光が遊嗣の傷を癒やしていく…。
「母さん…母さんの力で、マシュを…他のアナザーの人達を助けられないの…?」
「……私じゃ難しいの…私はお父さんより力が弱いから……体の傷は治せても、マシュちゃん達を目覚めさせる事はできないと思う……ごめんね、遊嗣…役立たずのお母さんで…」
「母さん……ありがとう、無理な事を言ってごめんなさい……」
遊嗣は両親…遊海と翠が特別な力──デュエルモンスターズに由来する不思議な力を使える事を知っていた。
だが、翠には電脳ウイルスに由来する昏睡を治す力はない…それほどの力を持つのは遊海、そしてその相棒であり、精霊のスーパーコンピューターである彩華…2人の力が必要になる。
そして遊海は…未だにARC次元から帰還する見込みは立っていなかった…。
『っ…すまない!私の
「あなたは…」
そんな時…呼吸を乱し、大汗を流した男性が病院に現れる…そして遊嗣と翠はその人物に見覚えがあった。
濃い紫色の短髪、色白の肌に変装と思われる眼鏡、上下共に黒のジャージ…ぱっと見ならば何処にでもいる中年の男性に見える。
…しかし…眼鏡の奥の瞳には鍛えられた者独特の鋭さがある、彼の名は───
「……プロデュエリストの、
『そうだ…私の名はランスロー、ランスロー・
「白波、遊嗣と言います…マシュの……娘さんの、友人です…」
『っ…きみか…!娘が電話で言っていた
彼の名はランスロー・キリエライト…イギリスプロリーグから日本のプロリーグへ移籍してきたプロデュエリストであり──マシュの父親だった。
『隣室の御婦人から状況は聞いた…!マシュは、娘は…!?』
「僕が…助けに入った時には、床に倒れてて…揺すっても、起きなくて…!体が弱ってるって、お医者さんが…!!」
『っ…!!!私のミスだ…!!担任から連絡を受けて遠征先からすぐに飛び出したんだが…ハノイの騎士とやらのクラッキングで飛行機が遅れてしまって…!!すぐに警察に依頼すべきだった!!』
マシュの父、ランスロー…彼が現れた事で遊嗣は再び涙を零しながら、事情を説明する…それを聞いたランスローも膝から崩れ落ちた……彼はハノイの騎士のクラッキングの影響で到着や連絡が遅れていたのだ…。
「ランスローさん…遊嗣の母の白波翠と言います、マシュさんは今、デンシティで起きている連続昏睡事件の被害を受けて…「アナザー」という状態になってしまっているんです」
『遊嗣君の母君か…アナザーとは、いったい…!?』
「アナザーは、リンクヴレインズを介して
『っつ…!!誰だ…!誰が娘にそんな事を!!』
再び取り乱した遊嗣に代わり、翠がランスローに事情を説明する…そして誰かしらの『犯人』がいると知ったランスローは怒りを爆発させる…その闘気は一流の決闘者に匹敵するほど強かった。
「アナザー…!?じゃあ、マコトは…ずっとあのままなんですか!?」
『っ…!?』
「あれは…カリスマデュエリストの、Go鬼塚さん…?」
その時、病院の廊下…集中治療室の入口辺りから大声が響く…そこにいたのは大柄なレスラーのような青年、カリスマデュエリストのGO鬼塚こと鬼塚豪…そして医師だった。
鬼塚が病院にいる理由…それは君島マコトという少年にある。
草薙がピックアップしたリストに従って君島マコトの家を訪れた遊作…しかし、その時には既にマコトはアナザーの被害を受けていた…そして、彼の自室で点けっぱなしなっていたパソコンモニターにはリンクヴレインズの様子が映されており…そこにはハノイの騎士らしき男に襲われるマコトの姿があった。
マコトを襲った者の正体…それはハノイの騎士の上級幹部『三騎士』の1人、ドクター・ゲノムだった。
知り合い…友人であるマコトが襲われる姿を見た鬼塚は慌ててリンクヴレインズに飛び込み、彼の救出に向かったのだが一歩遅く…ドクター・ゲノムによって電脳ウイルスを仕込まれたマコトは昏倒してしまった…。
対峙した鬼塚に対してドクターゲノムが提示したのはプレイメーカーの身柄と引き換えに除去プログラムを渡す、という取引…しかし、鬼塚はそれを拒否…そして犯人に対する怒りを燃やしていた…!
「俺はマコトを必ず助ける…!!その為に俺はハノイの騎士を…ドクターゲノムを倒す!!」
『っ…!!すまない、アナザーとやらはハノイの騎士の仕業なのか!?』
「貴方は…!プロデュエリストのランスロー選手!?なんでこの街に!?」
犯人…ドクターゲノムに対する気炎を上げる鬼塚…その声を聞いたランスローは咄嗟に鬼塚に声をかける、そして鬼塚のマネージャーを務める壮年の紳士はすぐに彼の正体に気が付いた。
『私の娘も、アナザーの被害を受けてしまったのだ…!犯人がハノイの騎士だと言うのは本当か…!』
「ああ、本当だ…!!奴らは俺やプレイメーカーに宣戦布告をしてきやがった!!俺は、絶対に奴らを許さない!!」
『ハノイの騎士…絶対に、許さん!!』
友人と娘…大切な者を奪われた2人はハノイの騎士と戦う事を決めた…!
「ハノイの騎士…!!……あれ…?藤木君…?」
「白波…マシュが襲われたと聞いて来た……大丈夫か?」
「……大丈夫、ではないかな……マシュを…僕の大切な
「そうか…」
ハノイの騎士への怒りを燃やす2人の決闘者…そんな時、物陰から姿を見せたのは遊作だった。
鬼塚がマコトの自宅に着く前に匿名で救急車を呼んだ彼は、マコトが運ばれるのがマシュと同じ病院と確認して様子を見に来たのだ。
「お前達の制服…マコトと同じ学校か…ハノイの騎士め、プレイメーカーを誘き出す為に似た世代の奴を狙いやがって…!!だが、安心しろ…このGO鬼塚が、必ず奴らをぶっ倒す!!」
ハノイの騎士の作戦の真意に気付いた鬼塚はさらにハノイの騎士への怒りを強めたのだった…。
「(まさか、この場面に居合わせるなんて…遊作君に鬼塚君……それに遊嗣……遊海さん、お願い…早く帰ってきて…!!)」
お互いにニアミスする3人のデュエリスト達…その姿を見た翠は静かに祈るしかなかった。
…………
コンコンコン
「失礼します…お見舞いに来ました」
『ああ、きみか…よく来てくれた…娘も喜ぶよ…』
ハノイの騎士が犯人と判明してから数日後、学校帰りの遊嗣は個室に転床となったマシュの見舞いに来ていた…その枕元にはランスローがずっと付き添っているが…その目元には隈ができていた…。
『白波君、きみに聞きたい事があったんだ……きみと初めて会った日…きみは何故、すぐに私の名前が分かったんだ?私はプロリーグの新参者…情けない話、まだそこまで有名ではないと思うのだが…』
「あっ…ランスローさんが、僕の
『きみの兄…?しかし、私が戦った中に白波という相手は……いや、まさか…きみは…『決闘王』神代凌牙が言っていた
ランスローがふとした疑問を遊嗣に問いかける…その答えは彼にとって思わぬものだった。
『……世間とは広いようで狭いものだ…彼からデンシティに両親と弟が住んでいる、とは聞いていたが…まさか既に娘と友人になっていたとはな…娘が知ったら飛び起きてきそうだ…』
「あはは…実はまだ、マシュに僕が『決闘王』の弟だとは伝えてないんです……本当に、それで目を覚ましてくれたらいいのに…!」
『白波君…(きみは、本当に娘の事を……我が娘ながら、本当に大したものだ…)』
ランスローと話しながら拳を握り締める遊嗣…その姿を見たランスローはマシュと遊嗣の絆の強さを感じ取っていた…。
『臨時ニュースをお伝えします!リンクヴレインズに多数のハノイの騎士が現れ、無差別に襲撃を仕掛けています!!ハノイの騎士に襲われたデュエリストは巷を騒がせているアナザーと呼ばれる状態に────』
『なんだと!!』
「ハノイの騎士…!!プレイメーカーを捕まえる為にここまでするのか!?」
その時、個室のテレビからニュース速報が流れる…その映像には多数のハノイの騎士がリンクヴレインズで暴れまわる様子が中継されていた…。
Side???
【……既に1000人を越す者達がハノイの騎士にと集ったが…所詮はあのような無頼の輩…リンクヴレインズに反感を持つ偏った主義者や、ハノイの名に憧れ…売名行為を目論む者ばかり…はぁ…】
リンクヴレインズ某所、大規模な攻勢…無差別襲撃を仕掛けるハノイの騎士の構成員の姿を見ながらハノイの騎士のリーダー、リボルバーは溜息を漏らしていた。
ハノイの騎士の目的は「イグニス、及びサイバースの抹殺」…しかし、その大義の意味も理解せず…「ハノイの騎士はかっこいい」「単に暴れたい」…そのような目的でハノイの騎士に入る者が多い…リボルバーはプレイメーカーを誘い出す為に彼らを「囮」にする事にした…だが、それはリボルバーの本意ではない。
彼にとっての「大義」はそんなに軽いモノではないのである。
【…あのような輩ではハノイの名は穢れるだけでしょう】
【来てくれたのですか…】
1人で黄昏れていたリボルバーに声を掛ける者がいた、それはハーフマスクを着けた壮年の男性と赤髪の女性…リボルバーは彼らに親しげに応える。
【今こそ、鴻上博士のご意思を継ぐ時です…!】
【イグニスを抹殺するのは私達の使命…既にドクター・ゲノムも動いています】
【…そうですか】
大義を果たす為、リボルバー達はその命を懸けていた…。
Side OUT
『ついに姿を見せたな、ハノイの騎士…!待っていろ、マシュ!!必ずお前を目覚めさせる方法を聞き出してやる!!in to theVRAINS!!』
「あっ、ちょっと!ランスローさん!?」
暴れまわるハノイの騎士…その姿を見たランスローは怒りの炎を燃やしながらリンクヴレインズへと飛び込んだ!
《遊嗣!彼を追うんだ!プロデュエリストとはいえ、リンクヴレインズは現実とはまた違う怖さがある!》
「わかった…!待ってて、マシュ!in to theVRAINS!!」
ロマンに促され…遊嗣もまたリンクヴレインズへと飛び込んだ…。
「っ…ランスローさん!!」
「キミは…白波君だな、きみも来てくれたのか…」
リンクヴレインズに飛び込んだ遊嗣はすぐにランスローの姿を見つける…ランスローのアバターは黒を基調としたヨーロッパの将校の正装だった。
「リンクヴレインズではYu-Zでお願いします…!ハノイの騎士と戦うんですか!?」
『そうだ…奴らからマシュや他のアナザー被害を受けた者達を目覚めさせる方法を聞き出す!!』
ハノイの騎士への怒りを燃やすランスロー…その時だった。
【ヒャッハー!獲物だ!囲め囲め─!!】
「ハノイの騎士…!!」
『来たか』
数人のハノイの騎士がランスローと遊嗣を包囲する…!
『我が名はランスロー!リンクヴレインズを騒がせる悪党共…私が相手だ!!』
【ランスロー?ハッ、洒落たアカウント名にしやがって…お前もアナザーにしてやるよ!!】
「ランスローさん!!」
『心配はいらない…見ていろ、Yu-Z君!』
ハノイの騎士に名乗りを上げるランスロー…その姿を見たハノイの騎士はランスローへと襲い掛かった!!
【「デュエル!!」】
ハノイの騎士LP4000
ランスローLP4000
・マスターデュエル
【俺のターン!】
【「幻殻竜」を召喚!】
黒みがかったアオミノウミウシに似たドラゴンが現れる! ATK2000
【カードを1枚伏せ、ターンエンド!】
ハノイの騎士LP4000
幻殻竜 伏せ1 手札3
『──
『私のターン!ドロー!!』
『「聖騎士の三兄弟」を召喚!』
鎧を纏う三人の聖騎士が現れる! ATK1200
『「三兄弟」の効果発動!このターン、「聖騎士」モンスターしか特殊召喚できなくなる代わりに…手札から2体の「聖騎士」を特殊召喚できる!現われろ!「焔聖騎士─オジエ」!「焔聖騎士─リッチャルデット」!!』
光の聖騎士に導かれ…妖精に愛された炎の騎士と炎の大剣を持つ赤い鎧の騎士が現れる! ATK1500 ATK500
『私はレベル4の「聖騎士の三兄弟」と「オジエ」にレベル1の「リッチャルデット」をチューニング!!』
4+4+1=9
『十二勇士を率いる炎の皇帝よ!その王道を走破せよ!シンクロ召喚!現われろ!レベル9!「焔聖騎士帝─シャルル」!!』
赤衣を纏いし伝説の皇帝が現れる! ATK3000
【なっ…攻撃力3000!?】
『墓地の「オジエ」の効果を発動!このカードを装備魔法として「シャルル」に装備!さらに手札から装備魔法「焔聖剣─オートクレール」を装備!』
シャルルの背後に騎士が控え、その両手に赤き双剣が握られる!
『そして「シャルル」の効果発動!自分フィールドのモンスターが装備魔法を装備した時、相手フィールドのカード1枚を選んで破壊する!伏せカードを破壊!!』
【チィッ!?『万能地雷グレイモヤ』が!?】
シャルルの炎の魔力が伏せカードを粉砕する!
『さらに「焔聖剣─オートクレール」の効果発動!装備モンスターは2回攻撃が可能になる!バトル!「シャルル」で「幻殻竜」を攻撃!』
【があっ!?】
赤き刃が黒いドラゴンを両断する!
ハノイの騎士 LP4000→3000
『ハノイの騎士にダイレクトアタック!悪を斬り裂け!紅蓮の刃よ!!』
『ぐわあああ!?』
さらに紅蓮の聖剣がハノイの騎士を切り裂いた!
ハノイの騎士 LP0
ランスロー WIN!
『さぁ…次の相手は誰だ?』
【っ…こいつ、本物だ!プロデュエリスト、聖騎士使いのランスローだ!!】
【なんでプロがリンクヴレインズにいるんだよぉ!?】
「すごい…!これが、プロデュエリスト…!」
ハノイの騎士を一蹴したランスローは他のハノイ達を睨みつける…その姿を見た遊嗣はその凜とした姿に目を奪われていた…だが…!
【ヒャッハー!!】
「っ…ランスローさん!後ろ!!」
『っ!?うおおっ!?』
ランスローの背後からDボードに乗ったハノイの騎士がリアルダイレクトアタックを仕掛けるが…遊嗣の叫びに気が付いたランスローは地面を転がる事で回避する…!
【プロだかなんだが知らねぇがよぉ!ここは行儀の良い奴らが来る場所じゃねぇんだよ─!!】
『っ、卑怯な…!』
「ランスローさん!!」
執拗にランスローを襲うハノイの騎士…その姿を見た遊嗣が声を上げる!
「…ロマン…力を貸して…!」
《Yu-Z、良いのかい?今まではきみ自身に降りかかる火の粉を払う為の戦いだった…でも、ここからは違う…きみは本格的にハノイの騎士と敵対する事になる……
ロマンに戦う為の力を求める遊嗣…そんな彼にロマンは戦う覚悟を問い掛ける。
「マシュがハノイの騎士に襲われたのは、きっと
《そうか…分かった!さぁ、風を掴むんだ!Yu-Z!こんな事になると思って…きみの為のDボードを開発していたのさ!》
「ありがとう、ロマン!やぁっ!!」
マシュを…誰かを助ける為に戦う、それを聞いたロマンが扉を開く…そして鳥の翼を思わせるDボードに遊嗣は飛び乗った!
「ランスローさんから離れろ!!」
【ぐおつ!?】
『Yu-Z君!?』
「ランスローさん!こっちは任せてください!!」
『っ…感謝する!!』
そしてDボードを操った遊嗣はハノイの騎士へと突進…ランスローから引き離し、デュエルへと持ち込む!!
《Yu-Z、このデッキは対スピードデュエルに特化した動きができる!》
「了解!」
【チッ…餓鬼が…!邪魔をするな!!】
そしてロマンは遊海に持たされた最後のデッキを開放…ハノイの騎士に挑む!
【「デュエル!!」】
ハノイの騎士LP4000
Yu-Z LP4000
・スピードデュエル
初期手札4枚
メインフェイズ2無し
【オレのターン!】
【『幻殻竜』を召喚!】
再び黒みがかった異形のドラゴンが現れる! ATK2000
【カードを2枚セット、ターンエンドだ!】
ハノイの騎士LP4000
幻殻竜 伏せ2 手札1
「僕のターン!ドロー!!」
「いくぞ…!僕は手札のカードを左側の魔法・罠カードゾーンにセット!さらに、同じ縦列にカードが2枚以上存在する時、その縦列に『紺碧の
【なんだ!?その召喚条件は!?】
背中に大きな輪を背負い、紺色の星を持つ機械生命体が現れる! ATK2400
■■□
□幻□
□ □
紺□□
■□□
「そして『紺碧の機界騎士』の効果発動!1ターンに1度、自分の『ジャックナイツ』モンスターを任意のメインモンスターゾーンに移動させる!僕は『紺碧』自身を一番右のモンスターゾーンに移動!さらに手札から『紫宵の機界騎士』を左のメインモンスターゾーンに特殊召喚!」
紫の星を持ち、白い法衣を纏った機械生命体が現れる! ATK2500
■■□
□幻□
□ □
紫□紺
■□□
「『紫宵』の効果発動!自身を次の自分のスタンバイフェイズまで除外する事でデッキから『蒼穹の機械騎士』を手札に加える!そして真ん中のメインモンスターゾーンに『蒼穹の機械騎士』を特殊召喚!」
青い星を持ち、双剣を携えた機械生命体が現れる! ATK2000
「そして『蒼穹』の効果発動!1ターンに1度、同じ縦列の相手のカード1枚につき1枚、デッキからカード名の違う『ジャックナイツ』モンスターを手札に加える!デッキから『機界騎士アヴラム』と『翠嵐の機界騎士』を手札に加える!そして僕は『機界騎士アヴラム』を召喚!」
青き星の力を受け継いだ勇者が現れる! ATK2000
「召喚条件は「ジャックナイツ」を含むモンスター2体!僕は『アヴラム』と『蒼穹』の2体でリンクマーカーをセッティング!リンク召喚!!現われろ!LINK-2!『明星の機械騎士』!」
右腕が光剣、左腕がドリルになった機械戦士が現れる! ATK2000
■■□
□幻□
明 □
□□紺
■□□
「『明星』の効果発動!手札の『翠嵐の機界騎士』を墓地に送って、デッキから永続魔法『星遺物に至る鍵』を手札に加え、右側の魔法・罠ゾーンに発動!その効果で除外されている『紫宵の機界騎士』を手札に加える!さらにフィールド魔法『星遺物が刻む傷痕』を発動!『ジャックナイツ』モンスターの攻守を300アップする!」
明星ATK2000→2300
紺碧2400→2700
「真ん中の魔法・罠ゾーンにカードをセット…バトルだ!『紺碧』で『幻殻竜』を攻撃!」
【チッ…ぶん回しやがって…!これでも喰らえ!罠カード発動!『魔法の筒』!!相手モンスター1体の攻撃を無効にして、その攻撃力分のダメージを与える!!】
「しまっ…!?ぐあああ!?」
《Yu-Z!!》
機界騎士から放たれた光線が「?」の描かれた筒に飲み込まれ、遊嗣自身に跳ね返される!!
Yu-Z LP4000→1300
「ぐうっ…これが、スピードデュエルの、ダメージ…でも、凌牙兄との特訓に、比べれば…!!『明星』で、『幻殻竜』を攻撃!!」
【ちいっ!?】
光の剣が異形のドラゴンを切り裂く!
ハノイの騎士LP4000→3700
「僕は、これでターンエンド!」
Yu-Z LP1300
明星 紺碧 傷痕 至る鍵 伏せ2 手札1
■□□
□□□
明 □
□□紺
■■鍵
【オレのターン!ドロー!】
【いい手札だ…!永続魔法『ドラゴノイド・ジェネレーター』を発動!オレのライフを1000払い、『ドラゴノイドトークン』を──】
「させない!カウンター罠『直通断線』!同じ縦列でモンスター・魔法・罠カードが発動した時、その発動を無効にして破壊する!」
【そんなカードを!!】
フィールドに電流が走り、「ドラゴノイド・ジェネレーター」が燃え尽きる!
■✖□
□□□
明 □
□紺□
■直鍵
【オレはターンエンドだ…】
ハノイの騎士 LP3700
伏せ1 手札1
「僕のターン、ドロー!」
「バトルだ!『紺碧』と『明星』でハノイの騎士にダイレクトアタック!!」
【があああっ!?】
2体の騎士の攻撃がハノイの騎士のライフを消し炭へと変えた!
ハノイの騎士 LP0
Yu-Z WIN!
「っ…はぁ、はぁ…
《上手く回せてるよYu-Z、十分に余力もある…何回か回せば慣れるさ》
ハノイの騎士を蹴散らし、呼吸を整える遊嗣…初めてのスピードデュエルと高いタクティクスを求められる「機界騎士」によって消耗は予想以上に大きい…しかし、休んでいる暇はない、何故なら───
【おい!生意気な奴がいるぞ!】
【ぶっ倒せ!!】
「っ…!!」
Dボードに乗ったハノイの騎士数人が遊嗣に狙いを定めていたからだ…!
『Yu-Z君!!』
【余所見してる暇はねぇぞプロデュエリスト─!!】
『くっ…!邪魔だ!!』
周囲のハノイの騎士を蹴散らすランスロー…だが、遊嗣をフォローできるほどの余力はない…。
「ハノイの騎士…どうしてお前達はそんなに簡単に人を傷付けられるんだ…!なんで罪のない人を傷付けて笑ってられるんだ!!」
遊嗣はハノイの騎士の1人に怒りを爆発させる…!
【ハッ…そんな事知ったもんかよぉ!俺達は
【オレはハノイの騎士で動画撮ってるんだ!炎上系で再生数稼ぎさ!あははははは!!!】
【リンクヴレインズにいるから悪いんだよ!バーカ!!】
「────」
《Yu-Z…》
ハノイの騎士達のあまりにも身勝手な理由を聞いた遊嗣は言葉を失う…そして、湧き出したのは──言い表せないほど強い怒りだった。
「デュエルモンスターズは、デュエルは…魂と魂のぶつかり合い…お互いの事を知る為の魂の対話なんだ……僕は、許さない…デュエルを馬鹿にする人を…デュエルで人を傷付ける人を…!お前達にデュエリストを名乗る資格は、ない!!」
【知った事か!俺等はハッカーだからなぁ!ギャハハハ!!】
「──ロマン、この前みたいな
《わかった…でも、Yu-Z…これだけは覚えておいて…怒りや憎しみ、負の感情を持ち込んだデュエルほど…悲しく、脆いデュエルはない……マスターはそう言っていたよ》
能面のような無表情になった遊嗣にロマンが優しく語りかける…その言葉の意味を遊嗣は理解していた、それでも──
《僕は、父さんや凌牙兄みたいな超人じゃないから…未熟なデュエリストだから…だから、許せない…!デュエルをテロや戦争みたいな事に使うお前達を!!みんなの大切な人を傷付けるお前達を!!》
それでも、大切な者を傷付けられた怒りが燃え上がる…その紅蓮の炎はハノイの騎士へと襲いかかった。