転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話 作:S,K
ハノイの騎士スペクターを打ち倒した遊海…しかし、ハノイの塔は稼働し続け、カウントダウンは進み続ける…。
それでは…最新話をどうぞ!
「あれがメタルナイト…オレを助けてくれた、ヒーロー…!」
《わお…プレイメーカー様が純粋な子供みたいな目ぇしてら…珍し…》
「……黙れ」
《あら冷たい………ゴメンて、そんなに睨まないでくれよ…?》
リボルバーの腹心・スペクターは遊海の手によって倒され、道は開かれた。
そして…
「……SOLテクノロジーの…セキュリティ部長の財前晃だな?怪我…異常はないか?」
『ああ、私はSOLテクノロジーの財前だ…貴方の仲間に助けてもらったから大丈夫……ありがとう、メタルナイト』
スペクターの消滅を見届けた遊海はアヤカが助け出した晃へと声を掛ける、茨の檻に閉じ込められていた彼だったが…アヤカによるハッキング(物理)によって無事に救出されていた。
「財前、お前はリンクヴレインズから離れた方がいい…ここに残っていたら、戦いの邪魔になる…お前はこの事件を見届けろ、過ちを繰り返さない為に」
『メタルナイト……わかった…』
そして、遊海は晃にリンクヴレインズからのログアウトを勧める…一般人がいる、それだけで戦場は格段に戦いづらくなる…晃もそれを理解していた…。
『プレイメーカー…きみに伝えなければならない事がある』
「…どうした?」
リンクヴレインズを離れる直前、晃はある情報を伝える為に遊作へと声をかける。
『……鴻上博士が、
「っ…!?なんだと!?」
晃の思わぬ言葉に遊作は目を見開く…!
『正確には、生きているのかは分からないが…彼のアバターがリンクヴレインズに蘇ったらしい……話した時間は僅かだったが……彼の考えは異常だ…!自分達諸共、イグニスを滅ぼす事に固執しているようにも見えた……頼む、プレイメーカー…!彼らを止め…妹を、助けてくれ…!』
「財前…」
晃は遊作へと頭を下げる、一度は彼の復讐を否定した晃…しかし、現状でハノイの騎士を…リボルバーを止められるのは遊作とGo鬼塚、そしてメタルナイトしかいなかった…。
「……1つ、オレはリボルバーを倒す為にリンクヴレインズに来た…2つ、ハノイの塔を止めなければ、多くの人々が犠牲になる……3つ、ブルーエンジェルとゴーストガールは必ず助け出す!」
『………頼む、プレイメーカー…!』
そして、遊作に運命を託した晃はリンクヴレインズからログアウトした…。
「さて……大丈夫か?遊嗣」
「ごめん、父さん…全然、動けない…」
「そうか…なら、
《うえっ!?帰っちゃうの!?》
晃を見送った遊海は倒れたままの遊嗣に声をかける…電脳ウイルスの影響は取り除いたものの、精神への負荷が大きすぎたらしく身動きが取れない遊嗣…その様子を見た遊海は戦いからのリタイアを決める。
だが、それを聞いたAiは戸惑うように声を上げた。
《メタルナイト!アンタってヒーローなんだろ!?オレ達に力を貸してくれよ!!》
「ああ、俺は確かに世界を守るヒーローだ…だが、その前に…俺は父親だ…家族の安全を守る義務がある」
《で、でもよぉ…》
「Ai、しつこいぞ…彼にも彼の事情がある…それに、Yu-Zはもう限界だ」
ヒーローとしてではなく、父親として遊嗣達の安全確保を優先する遊海…その様子を見た遊作は食い下がるAiを宥める。
「それに…俺が事件を
「メタルナイト…」
そして遊海は遊作の目を見ながら、その真意を見抜く。
これは遊作が真実を知り、失った時間を取り戻す為の復讐…その戦いに自分の手助けは不要…遊海はそう考えていた。
「まぁ、心配するな…息子の無事を確かめて、やらなきゃならない事をやったら戻ってくる…それに、KCが最悪の事態にならないようにバックアップしてくれてるはずだ……きみは、きみのやりたい事をやるといい」
「……プレイメーカー…力になれなくて、ごめん」
「いいんだ、Yu-Z…お前の思いは無駄にしない……メタルナイト、ありがとう」
「ふっ…事件が解決したら、ゆっくり話そう…積もる話もある……またな、プレイメーカー」
そして、親子2人はリンクヴレインズからログアウトして去っていった…。
《あ〜…もう!プレイメーカー!行くなら急ごうぜ!橋が壊れちまったら終わりだ!》
「ああ…行くぞ!!」
2人を見送った遊座は踵を返し、ハノイの塔へと走り出す…全ての因縁に決着をつける為に…。
『うおおっ…!?すごいデュエルだったなハト!「真紅眼」使いのデュエルに…まさか都市伝説のヒーロー、鋼の騎士のデュエルを間近で見れるとは…!!撮れたな!?』
『あの…それが……鋼の騎士、の中の人が現れた時のショックでカメラがダウンしてしまいまして…!!』
『ナニー!?!?』
一方、近くのビルの屋上…スペクター対Yu-Z…そしてスペクター対メタルナイトの目撃者となったジャーナリスト・カエル&ハト…だったのだが、肝心の鋼の騎士の戦いはカメラがダウンしてしまった事で記録に失敗してしまっていた…。
《ネットテレビのカエルさんとハトさんですね?》
『えっ、そうだけど…って…どわっ!?アンタ、鋼の騎士の!?』
『あ、可愛い///』
《ふふっ、ありがとうございます》
そんな時、カエルとハトに穏やかな女性が声をかける…それは遊海と別行動していたレイン彩華だった。
……なお、ハトは美少女の彩華の姿を見て頰を赤らめている。
《マスターから言伝を預かったのでお伝えします…『プレイメーカーの目になってほしい』『リンクヴレインズで起きている事を正しく街の人々に伝えてほしい』…との事です、マスターはあなた方の熱心で真摯な取材を気に入ったみたいです》
『お、おぉ…!?ヒーローから期待されちゃあ、しくじる訳にはいかねぇ!任せてくれ!必ず真実を伝えよう!!』
彩華がカエル達に伝えたのは遊海からのメッセージ…危険な状況で取材を続ける彼らへの激励だった。
《そして報酬としてこちらを…先ほどのマスターとスペクターとのデュエルのダイジェストデータです、番組を作る時に役立ててください》
『……いや、
『了解です!ホロッホー!!』
《…変わった記者さんでしたね…情報は彼らにとって値千金のはずですが…?》
そして、報酬として先ほどの映像データを渡そうとする彩華…しかし、カエルはそれを固辞してプレイメーカーを追いかけていった…。
『先輩〜!さっきの映像データ、もらわないで良かったんですか〜!?』
『おう!これは…俺からあの人への
『えっ…先輩、メタルナイトと会った事が!?』
『ああ、まぁな…』
先行したプレイメーカーの背中を追いかけながら、ハトはカエルにデータを受け取らなかった理由を訊ねる…その理由は…。
『俺がガキだった頃、あの人に助けてもらったんだよ…覇王龍の乱の時にな』
『えぇ〜!?先輩、あの現場にいたんですか!?』
『おう、いきなり暴れ出した4体のドラゴン…その攻撃から、あの人は俺や家族を守ってくれた……でも、その活躍はほとんど知られる事はなかった……だからよ、俺は真実を伝えられるように記者になったのさ…けど、あの人は自分の活躍が広まってほしくねぇって思ってるのは分かる……その分、今のリンクヴレインズの状況を伝えるぞ!ハト!!』
『山本先輩っ…一生付いていきます─!!』
『馬鹿!本名を呼ぶな本名を!!って落ちる─!?』
『わっ!?ごめんなさーいっ!!』
縁は巡る、誰かに手を伸ばした英雄達の思い…それは誰かへと受け継がれ、善意もまた巡っていくのだった。
────────────────────────
《ふぅ……無事にログアウト完了……お疲れ様、遊嗣》
「────う、うぅ…あたま、痛い…気持ち悪い……」
穏やかなロマンの声と共に遊嗣の意識が覚醒していく、それと共に遊嗣に襲いかかったのは凄まじい頭痛や倦怠感、気持ち悪さ…重度のVR酔いとデュエルで受けた精神ダメージによる不調だった。
「もう…!馬鹿遊嗣!心配させないでよぉぉ…!!よかった〜…!!」
「母さん…ごめん、なさい…」
そして、遊嗣の体にのしかかる重み……それは大粒の涙を流した翠の抱擁だった…そして、その傍らには───
「遊嗣さんっ…よかった…ぐすっ…よかったぁぁ…!」
「マシュ…」
翠と同じくらいの大粒の涙を流し、遊嗣の無事を喜ぶマシュの姿があった。
《こ〜ら!遊嗣!女の子を泣かせちゃダメだよ!》
《翠もマシュちゃんも、すっごく心配してたんだから…!》
《フォウ!!》
「ウィンダ姉…ウェン姉…フォウ…」
そして、そんな遊嗣を叱るのは翠に宿るデュエルモンスターズの精霊であるウィンダとウェン、そしてフォウだった…普段は人前に姿を見せない彼女達が出てきている事で、遊嗣はどれだけの心配を掛けてしまったのか実感する…。
「ぐすっ…遊嗣さんが胸を刺されて…電脳ウイルスに感染して…あのまま死んじゃうかもって…!」
「マシュ…ごめん、泣かないで…なんとか、生きてるから…」
泣きじゃくるマシュを宥めようと優しく声をかける遊嗣…死にかけはしたが、遊嗣は無事に家族のもとへ帰ってくる事ができたのだ…。
「でも…どうやって、助かったんですか…?遊嗣さんがスペクターに負けてしまった後、金色の光のせいでカメラが途切れてしまって…」
「あ、それは──」
キィン!!
「っ!?なんですか!?」
遊嗣が助かった理由が分からず戸惑うマシュ…その時、遊嗣の部屋の窓辺にSF映画で見るようなワープホールが現れる!
「よいしょっと…大丈夫そうだな、遊嗣!」
「父さん…」
「あっ…遊海さん!!おかえりなさい!」
《フォーウ!(遊海!おかえり〜!)》
「おっとっと!?ただいま…遅くなって悪かった…」
そして、そのワープホール…「紋章の力」によるゲートを通って帰ってきたのは…赤帽子に赤ジャケット、ジーパンという出で立ちの青年──白波家の大黒柱、遊海だった。
その帰還に気付いた翠はその胸に飛び込み、フォウは肩に乗って顔を擦り寄せている。
「えっ、あ…遊嗣さんの、お父さん?…えっ…赤帽子、って…!?」
「ん…!?き、キミは…!?」
《フォッ?(あれ?なんかヤバい感じ?)》
そしてここで遊海は初めて見慣れない、しかし見覚えのある少女の存在に気付く…さらにマシュも赤帽子、赤ジャケットという特徴的な…
「あっ…父さん…その子は同級生のマシュ・キリエライトさんって言うんだ…マシュ、その人は僕の父さん…ちょっと不思議な力があるんだけど…」
「マッ!?(名前も一緒!?えっ、なに!?これから人理焼却案件起きるの!?遊嗣の顔って確かに似てるけど!?ビーストは全部…いや、たしかイギリスリーグのプロにキリエライトって名前があったような…彼の娘か?いや、そうであってくれ!?)」
遊嗣がそれぞれにお互いの事を紹介する…そしてマシュの事を知った遊海は前世の記憶から最悪の事態を想定し、冷や汗を流す…。
「あ、あの…!?遊嗣さんの、お父さん?もしかして、
「──ん…?……ああ、俺は遊海だ…何処かで会ったかな?」
「に、二代目決闘王で、チーム5D’sの監督を務めて…ネオドミノシティでメタルナイトと呼ばれていたりしました…?」
「マシュ?何を聞いてるの?確かに、父さんの名前は遊海だけど…他人の空似じゃない…?」
「あー……ちょっとマズったかな?」
さらに、マシュの問いかけに思わず頷いてしまう遊海…マシュの目はキラキラと輝いてしまっている…。
《ユウミ、別に隠すほどの事でもないでしょう?ユウジの友達だと言うなら、信用はできます…それに、あまり
《うむ、多少なり正体を知られたところで問題はなかろう…遊嗣も大きくなった、伝えてもいい時期だ》
「メガロックじいちゃん?フレア?えっ?正体って…」
静まり返った空気を打ち破ったのは遊海の傍らに現れた岩の竜とその頭に乗った金色の小鳥…2人は呆れたように遊海を見る。
「はぁ……こんなタイミングになるかぁ……ああ、俺は二代目決闘王だった白波遊海だ……あまり広めないでくれるとありがたいかな?」
「あ、ああ…!やっぱり!!私、大ファンなんです!!サインください!!」
「えっ……うえぇぇえええ!?!?」
「あらあら…マシュちゃんってそういうタイプだったんだ…」
《フォ〜ウ〜…(こんなやり取りしてる場合なのかなぁ…)》
遊海はマシュに自分の正体を明かす…そして、息子である遊嗣も初めて、自分の父親が歴史上の『英雄』と同一人物だと知ったのだった。
なお、気の抜けたやり取りを見ながらフォウは呆れていた…。
〜〜〜〜〜
「まぁ、今はそんな話をしてる場合じゃないな…遊嗣も、あとで話すから…少しだけ待っててくれ」
「……うん…」
マシュが落ち着くのを待つ事数分…遊海は気を取り直して遊嗣へと話しかける。
「とりあえず…俺はやらなきゃならない事がある、お前はしっかり休んでろ、いいな?」
「待って、父さん…ハノイの騎士を、止めに行くんだよね…!僕も一緒…っう…」
「ほら、無理するな……マシュちゃん、悪いけど遊嗣を見張っててくれ…まだ本調子じゃないからな」
「は、はひ!!」
《フォ〜ウ!キャウ!(マシュ、そんなに緊張しなくて大丈夫だよ〜遊海は優しいから!)》
「わぷっ…」
とある目的の為に出掛けようとする遊海…遊嗣はそれがハノイの関係だと思い、ついていこうとするが…ダメージを受けすぎてまともに動く事は難しかった…。
なお、マシュは憧れの遊海を前に緊張し過ぎていたが…フォウが戯れる事でほぐされている。
「大丈夫、今度はすぐに帰ってくるから……翠、ちょっと良いか?」
「あ、はい!遊嗣、しっかり休むのよ!」
そして、遊海は遊嗣達に優しく笑いかけると翠と共に部屋から出ていった…。
「遊嗣さん!すごいですね!本当に『決闘王』の息子だったなんて…!!昔の資料に白波遊海さんは千年アイテムの加護で歳を取らないと書かれた都市伝説があって…まさか本当の話だったなんて…!!」
「うん…でも……
「えっ…?」
「僕、決闘王の息子なのに…ハノイの騎士に…スペクターに勝てなかった………もっと、強くならないと…!父さんと凌牙兄の名前に負けないように…!!」
自分が『決闘王』の息子だと知り、戸惑いを隠せない遊嗣…しかし、彼がそれ以上に落ち込んだのは…「最強」の息子でありながら、デュエルに負けてしまった事だった…。
「遊嗣さん……えっ…?凌牙って…8代目決闘王の神代凌牙さん……えっ、お兄さん!?!?」
「……あっ、まだマシュに話してなかった…(汗)」
《……このうっかりしてる所……親子だねぇ…》
《フォウ〜…(特別意訳:そだね〜)》
しかし、ふとした一言がマシュをさらに興奮させてしまったのは…完全な余談である。
「っ…ごふっ!?ぐう、うっ…」
「っ…!?遊海さん?!大丈夫ですか!?……大変!ひどい怪我!!」
「っ…
一方、遊嗣と別れた遊海だったが…血を吐き、崩れるようにリビングの床へと倒れ込んでしまう…慌てて翠が遊海を支えるが、服に隠されていた体はボロボロになっていた…。
心配を掛けないよう、遊嗣達には隠し通したのだが…遊海はARC次元における事件の解決直後、人間界へと直行していた。
それにより、ネオ・アカデミアの拠点突入とロジェとのデュエルによる負傷、そしてロマンからの緊急連絡を受けた事による『NEXUSⅢ』を使っての光速の次元移動…さらに、スペクターとのデュエルによる精神ダメージ…そして何よりもネオ・アカデミアとの長い戦いでダメージを蓄積し続けた遊海はとっくに肉体・精神の限界を越えてしまっていたのだ…。
「遊海さん!少し休まないと…!どれだけARC次元で無茶してきたんですか!?」
「役割分担は、してたんだけど…もう、2週間はまともに寝てなかった、から……アヤカ…ハノイの塔、完成までの…時間は…?」
《現在、ハノイの塔は三段目まで完成…四段目を構築中、完成までの時間は3時間弱と思われます》
「…リボルバーとプレイメーカー…が、スピーどデゅエる、するまえに、おこし、て──」
「遊海さん!?」
アヤカと翠に後を託し、遊海の目の前は真っ暗になった…。