転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話 作:S,K
《プレイメーカー…勝てたんだな、オレ達…》
「ああ…」
リンクヴレインズ…否、全ての電脳世界と人類の未来を賭けたPlaymakerとリボルバーの決戦は復讐を乗り越え、光の道へと踏み出したPlaymakerの勝利によって決着した。
そして…敗れたリボルバーは潔く敗北を認め、ハノイの塔を停止・解体するプログラムを起動してリンクヴレインズから去っていった…『自分の運命からは逃げない』と捨て台詞を残して…。
「……よかった、みんな解放されたようだな…」
暗雲が晴れ、黄昏色の光に包まれたリンクヴレインズに無数の黄金の光が輝く…それはハノイの塔に吸収された人々のアバターや意識が解放された証だった…。
「はぁ…借りができちゃったわね、Playmaker」
「うぅ…私は…?」
「葵…良かった…!」
「ぐぅ……なんだ、助かったのか…やるじゃねぇか、Playmaker」
ゴーストガール…財前兄妹…鬼塚…囚われていた人々が目覚めていく…そして───
「う……ん……?あれ…?僕は…頭の下が…暖かい…?」
「あっ…!遊嗣さん!目が覚めましたか!?」
「マシュ…?」
同じ頃…過労で意識を失っていた遊嗣が目を覚ました、そして寝惚け眼で
「マシュ…?あれ…?顔が…近っ(あれ…?この感じ、もしかして
「へっ!?」
《あ!遊嗣!そんな急に起き上がったら!?》
ゴッチーン☆
「「ふみゃ!?!?」」
《フォ〜ウ…(特別意訳:うわっ、痛そ〜…)》
《ああ、言わんこっちゃない…》
説明しよう…頭の下の温かい感覚とマシュの顔の角度から自分が膝枕されている事に気付いた遊嗣は急いで飛び起きてしまった…しかし、遊嗣の思わぬ動きにマシュは反応できずにお互いのおでこが激突……あまりの痛みと衝撃にマシュは寄りかかっていたクッションに倒れ込み、遊嗣は額を押さえながら、床をゴロゴロと転がりながら痛みに悶える…。
そんなラブコメじみたハプニングをフォウとロマンは呆れた様子で見守っていた。
「あいたた……ま、マシュごめん大丈夫!?」
「だ、大丈夫れふ…びっくりしゃせてごめんなさい…!」
「あ、いや!マシュに膝枕されて眠っちゃった僕が悪かった!ごめん!!」
「「ぷっ…あははは…」」
お互いに恥ずかしさで顔を真っ赤にして謝罪合戦を繰り広げる遊嗣とマシュ…しかし、お互いの慌てた様子が面白くなり噴き出して笑いあった…。
「あっ…僕、どうして寝てたんだっけ…?」
《遊嗣、きみはスペクターに受けた精神ダメージのせいで気を失っていたんだよ…プレイメーカーとリボルバーのスピードデュエルを見ている途中でね》
「ロマン…そうだ…!プレイメーカーは!?リンクヴレインズは!?」
そして、遊嗣は自分が気を失う前の事を思い出す…ついに始まったプレイメーカー…遊作とリボルバーのスピードデュエル…しかし、その戦いは相討ちに終わり、遊嗣は遊作を助けに行こうとした所で力尽きてしまったのだ。
「大丈夫です!ハノイの塔の頂上でプレイメーカーさんとリボルバーの決戦があって…プレイメーカーさんが無事に勝利を掴みました!」
「マシュ!それ本当…!?」
《ああ、本当の事さ!残りライフ13からのプレイメーカーとリボルバーのフィールドを繋ぐ『完全なるエクストラリンク』!そして攻撃力9200になった『デコード・トーカー』の大逆転勝利!ちゃんと記録は残してあるからネ!》
「ロマン…よ、よかったぁぁ〜!!」
そして、遊作の勝利を聞いた遊嗣は胸を撫でおろす…彼らの戦いはようやく終わりを迎えたのだ…。
「ありがとう、プレイメーカー…Ai…」
黄昏の夕陽を見つめながら、遊嗣は世界と大切な家族を守ってくれた2人の友人へと感謝を口にした…。
『遊作!リボルバー…鴻上了見は!?逃げたのか…!?』
「……ああ、だが…奴は必ず帰ってくる…鴻上博士の大義を…自分の決めた事をやり遂げる為に…」
最終決戦を見届けた草薙が遊作と了見が対峙していた部屋へと駆け込む…だが、そこに了見の姿はない…残されていたのは遊作とAi、そして遊海による最大威力の「マインド・クラッシュ」を撃ち込まれて廃人状態となった鴻上博士のみ。
了見は用意していた逃走用のクルーザーに乗ってデンシティを離れていった。
しかし、了見は必ずデンシティに舞い戻るだろう…父親の大義をやり遂げる為に…。
『……とりあえず、匿名で警察に通報して俺達もこの場を離れよう…鴻上博士が受けるべきなのは──司法の裁きだ』
「草薙さん…ああ、そうだな」
そして、遊作達もその場を離れる……正義の天秤に鴻上博士の処断を委ねて…。
『そういえば…鋼の騎士…いや、白波遊海は?』
《オレ達がログアウトした時にはいなかったぜ?きっともうどっか行っちまったんだよ》
『そうか…彼には礼を言いたかったんだけどな…』
「きっと、また会えるさ…彼もこの街に暮らしているんだ」
…………
《おお〜…!これが『スターダスト・ロード』か!こりゃキレイだな〜!》
夜の帳が落ちたデンシティの海浜公園…穏やかな星空の下、その海には夜光虫による光の道…スターダスト・ロードが現れていた。
その幻想的な光景を遊嗣とAiは静かに眺めていた…。
「………」
ピッピッピッ…カシャン!
《ん?今の音は…プレイメーカー?》
「……ロックの解除プログラムを入力した…これで、お前は
《ロックって…お前…オレを自由にしていいのか?》
「ハノイは滅んだ、お前の
そんな時、遊作はデュエルディスクにあるプログラム…Aiをデュエルディスクに閉じ込めていたロックを解除するプログラムを入力する。
ハノイの騎士が滅びた今、遊作はAiを捕まえておく意味がなくなったのだ。
「……早く行け、気が変わるかもしれないぞ?」
《プレイメーカー…》
しかし、Aiは分かっていた…それは遊作なりの照れ隠しなのだと…Aiの「故郷に帰りたい」という願いを聞いてくれたのだと…。
《…人間の世界だと…こういう時、なんか気の利いた事を言うんだよな?》
「ふっ…何か言えるのか?」
《うーん……これだ!「人の振り見て我が振り直せ」!…どうよ?》
「ああ、いい言葉だ」
《よっし!流石オレ!……あっ…それから、遊嗣とロマンにヨロシクって伝えてくれ!あの2人もオレの恩人だからな!》
「それを言うなら「よろしく伝えて」でいいんだ、あいつらにも言っておくよ」
《ありゃ…日本語って難しーなー》
最後に軽口を交わす遊作とAi…その様子は今までにないほど穏やかだった。
《……じゃあ、行くよプレイメーカー……いや、遊作!》
「ああ、元気でな」
そして、遊作に別れを告げたAiはデュエルディスクから出したプロペラで空中に浮かび上がり──
「……Ai、デュエルディスクは置いていけ…」
《おっといけね!では改めて…じゃあな☆》
間違えてディスクごと行こうとしたAi…そんなドジな様子を見せながら、彼はサイバース世界を目指して電脳世界へと潜っていった。
「………さて、帰るか…明日も学校だ」
そして…少し名残り惜しそうにAiを見送った遊作はスターダスト・ロードを背に歩き出す……新たな道へと進む為に…。
「ふう……これで一件落着、だな…」
《ええ…ほぼ全壊したリンクヴレインズの復旧や鴻上博士の処遇などの後始末はありますが…お疲れ様です、マスター》
「ああ…まったく、劇場版クラスの事件連発は勘弁してほしいよ…」
そんな遊作とAiを少し離れた高台から見守っていた遊海はため息を吐く…その表情は明るいが、疲れ切った様子である…。
「……ぁ……だめだ…気をぬいたら、ちからが…」
《マスター!?》
そして、遊海は膝から崩れるように体勢を崩す…遊海は鴻上博士に罰を下す為、
『父さん!!』
「おっ…と……凌牙…?来てたのか…」
『ああ、まったく…また無茶したんだな?体中ボロボロじゃんか…』
倒れ込んだ遊海…その体を支えたのはデンシティでの事件発生を聞いて駆けつけていた白波家の長男・凌牙だった…たくましく成長した凌牙はボロボロの父を優しく抱き留める…。
『というか…どんな勢いでARC次元から帰ってきたんだよ!?普通に数分間
「はは……とちゅうで…遊嗣の…泣き声が、聞こえたんだ……俺は、さいきょうの父ちゃん、だからな……」
『最強なのは分かってるけど限界があるって!!ほら、帰ろうぜ…母さんと遊嗣達が待ってる』
「ああ…帰ろう、みんなの、ところに……」
そして、遊海は最後の力を振り絞って紋章の転移ゲートを開き、凌牙に支えられながら歩き出す…最愛の家族の下に帰る為に…。
これは復讐と大義、お互いの譲れぬ正義を懸けたケジメの戦い…その果てに復讐者は光の道への一歩を踏み出した。
だが、彼は知らない……この先に再び世界を揺るがす大きな戦いが迫っている事を…。
その戦いは世界に…彼らに何を伝え、何をもたらすのか……それは誰も知らない未来の話である。