転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話   作:S,K

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こんにちは!S,Kです!

「風のワールド」でのボーマンとの戦いを乗り越えた遊作達…だが、仁や遊海の意識データを取り戻す事はできなかった…。

そんな中、遊嗣は…


それでは、最新話をどうぞ!


束の間の休息〜不思議な獣〜

「……遊海さん…」

デンシティにあるKC系列の病院の特別室…そこで遊海は眠り続けていた。

遊嗣との穏やかな休日を過ごすはずだった遊海はその意識を奪われ、翠やアヤカの治療も効果を見せていなかった…。

 

 

《……今のマスターは意識データを抜き取られ、強制的に()を見せられているような状態……それか、そもそも()()()()()()()()()すら認識できていない可能性もあります…しかし、医学的には『ただ眠っているだけ』という状態なのです……私達が声を掛けても、今までのように声が届いているのかどうか……》

 

「そんな…」

今の遊海は今までにない()()()()な矛盾を抱えた状態だった、遊戯王世界で最高レベルの科学技術──『電脳世界へのフルダイブ』…遊海達にとっても『未知』となるその技術によって…世界の切り札は()()されてしまったのだ…。

 

 

 

《(…しかし、おかしい…意識データが奪われた、と言っても…ユウミの()には影響はないはず…なのに……科学だけではない、何か()()()がユウミに影響している…?この世界を脅かす超常の異変は全て取り除いたはず…)》

悲しみに暮れる翠の様子を見つめるフレアは小さな()()を感じ取っていた。

 

 

遊海や翠は『転生者』として自分の『魂』を知覚している…現に、肉体が眠っていたとしても…遊海はその魂だけで戦いに向かったり、仲間達に力を与えた事も1度や2度ではない。

 

しかし、今回に限って遊海は肉体だけではなく『魂』の意識すらも奪われ、アヤカやフレアの干渉でも目覚めさせる事ができなかったのだ…。

 

 

《VRAINSの物語…私達にとっての『未知』の物語……ユウミを狙った敵は何を狙っているのです…!》

神の力を以てしても遊海を目覚めさせる事はできず…フレアは自分の無力さを噛み締める事しかできなかった…。

 

 

 

 

「……ただいま、母さん、父さん…」

 

「お、お邪魔します…!」

 

「あっ…おかえりなさいユウ君、マシュちゃんも…わざわざありがとうね」

 

「い、いえ!私も、遊海さんの事が心配で…!」

そんな時、病室にやってきたのは授業を終えた遊嗣とマシュだった。

遊作達との『風のワールド』突入から数日、遊嗣はできる限りの「日常」を過ごしていた……と言っても、それにも限界がある…遊嗣が無理をしている事に気付いていたマシュは静かに彼に寄り添っていた…。

 

 

 

「父さんは…」

 

「大丈夫、悪化はしてないわ……ただ眠ってるだけ……まさか、遊海さんが何もできないまま動けなくなっちゃうなんて……」

 

「母さん…」

もはや遊嗣の()()となってしまった言葉…その問いかけに翠は静かに応える。

 

今までの戦いの中で遊海が倒れた回数は数え切れない…デュエル中の負傷、事故…ゼロ・リバースの後遺症…刺客による襲撃……その全てが戦いの中での事だった……しかし、戦いの前に襲撃され、身動きを封じられるのは初めての事だった…。

 

 

「っ…あの時、僕がもっと早く動ければ…!プレイメーカーみたいに犯人を追いかけられれば…!!」

 

「遊嗣さん…」

遊嗣は遊作の名前を伏せ、『プレイメーカーと協力して意識データを取り戻す為に戦っている』とマシュに伝えている…そして、遊嗣は後悔の中にいた…。

遊海が襲われた瞬間、『何か』ができたのではないか…遊作のように犯人を追えたのではないかと…。

 

《遊嗣…きみはマスターのような()()じゃない、ならなくて良いんだ…あの時、きみはできる限りの事をした…それで良いんだよ》

 

「ロマン…」

失意の中にいる遊嗣をロマンが慰める…遊嗣は遊海や翠のような『決闘者(デュエリスト)』ではない…そうならなくて良いように遊海達は遊嗣を守り育ててきた…その中で遊嗣は最善の行動をしたのだと…。

 

 

 

 

 

「………マシュちゃん、ちょっとお願いがあるんだけど…良いかしら?」

 

「は、はい!なんでしょうか!」

そんな時、翠がマシュに穏やかに話しかける…。

 

 

「少しの間でいいの…遊嗣の事を()()()()に連れていってくれないかしら」

 

「母さん!?気分転換って、そんな…父さんが大変な時に…!!」

 

「遊海さんを襲った犯人が動かないなら、私達ができる事はないもの…それに、ずっと気持ちを張り詰めていたら…いざという時に自分の力を出せなくなっちゃうわ……遊海さんもそうだったもの」

 

「母さん…」

愛おしそうに遊海の頬を撫でながら…翠はマシュに頼み事をする…。

母の突然の言葉に遊嗣は驚くが…それは翠の経験を踏まえた言葉だった。

 

 

「それに…()()を大切にしなかったら──目を覚ました遊海さんに怒られちゃうわよ〜?」

     

「ちょっ…母さ〜ん…////」

 

「っ…///」

 

《あらら…2人とも真っ赤になっちゃって…》

そして…茶目っ気のある翠の言葉に遊嗣とマシュは顔を真っ赤に染めたのだった。

 

 

「それなら…遊嗣さん、一緒に新生リンクヴレインズに行きませんか?プレイメーカーさんと行動してばかりで街の中まで行けてないみたいですし…それに、街の中に事件の手がかりが隠れてるかもしれません!」

 

「マシュ……そうだね、ちょっと行ってみようか」

そして、そんな遊嗣にマシュが提案したのはリンクヴレインズに行く事だった…それはリンクヴレインズで手がかりを探すのと同時に遊嗣が遊海の側を離れずに済むようにと考えた故だった。

 

 

「ふふっ…ありがとうマシュちゃん……遊嗣、何かあったら連絡するから…マシュちゃんと楽しんでいらっしゃい」

 

「母さん……うん、いってきます!」

 

「「into the VRAINS!」」

そして、病室のソファに身を預けた遊嗣とマシュは仮想世界に飛び込んでいった…。

 

 

 

 

『……行ったか…気丈だな、お前達の息子は…』

 

「瀬人さん…」

リンクヴレインズに向かった遊嗣達…それを見届けた所で聞き慣れた声が翠に話しかける、それは身を隠していた瀬人だった。

 

 

「案ずるな、リンクヴレインズに残っていた遊嗣…Yu-Zの姿を映したデータはある記者のモノ以外削除済みだ…人の噂も75日、Yu-Zという名を覚えていても、アバターを変えた遊嗣に気付く者は少ないだろう」

 

「そう、ですね……」

彼なりに遊嗣の身を案じる瀬人…遊嗣が少しでも安心して過ごせるように、彼は陰ながら気を配っているのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっと…ここが、新生リンクヴレインズの街か…なんだか、現実世界の街に近付いた感じがするなぁ…」

 

「はい!私も調べた限り、他の皆さんの評価も高いみたいです!」

数瞬の暗転を経て…遊嗣とマシュは新生リンクヴレインズの街中に降り立つ、そこには以前のリンクヴレインズ以上の賑わいの電脳の街が広がっていた…。

 

 

「あっ…マシュもアバター変えたんだ…!似合ってる!」

 

「──はい!ありがとうございます!遊嗣さんもカッコいいです!」

 

「うん…ありがとう…!」

 

 

《(まったく…二人とも初心なんだから…)》

そして、遊嗣はマシュがアバターを変えていた事に気付く…以前は理系の研究者を思わせる白衣姿だったが、今の彼女は同じく白を基調としたスカートの制服姿だった。*1

その胸元には遊嗣の贈った『円卓の盾』のペンダントが黒く光るアクセントになっている。

 

 

「色々とネットで調べたので、今回は私にエスコートさせてください!」

 

「ありがとうマシュ…よろしくね!」

そうして…二人は新生リンクヴレインズをゆったりと歩き始めた…。

 

 

………

 

「ふぅ…新生リンクヴレインズも広いなぁ…!前よりお店も人も増えてるし」

 

「は、はい…!私も、少し人酔いしてしまいそうです…」

リンクヴレインズを散策する事しばらく…遊嗣とマシュは新生リンクヴレインズの中心、セントラル・ステーションで休憩していた…リンクヴレインズは平日とは思えないほど賑わっており、二人とも気疲れしてしまったのだ…。

 

 

「……新生リンクヴレインズ……この世界の何処かに、父さん達の意識データを奪った奴が隠れてる……必ず、見つけてみせる」

 

「遊嗣さん…」

セントラルステーションの中心に表示されるのは塔のような形をした新生リンクヴレインズの全体図…それを見つめながら、遊嗣は無意識に拳を握り締めていた…。

 

 

「(遊嗣さん…やっぱり、遊海さんの事を……少しでも、気分を変えるには───)……あっ…!遊嗣さん、お願いがあります!私にD()()()()()()()()()を教えてください!」

 

「──えっ?」

眉間にシワを寄せる遊嗣…その様子を見たマシュは遊嗣が細かい事を忘れられる事を必死に考え…1つの答えを出した…。

 

 

 

 

「た、高いですね…!」

 

《大丈夫、今のリンクヴレインズはD・ボードの安全装置も安定力も増してるし…ボクが改造したD・ボードだからね!》

リンクヴレインズの街の郊外…少し高いビルの上に遊嗣とマシュはいた…手近なショップで紫色のD・ボードを手に入れたマシュは初めてのD・ボードデビューを飾ろうとしていた。

 

 

「えっと…基本はバランスボールに乗る、みたいな感じで…重心を低くしてバランスを取るんだ…こういう感じ…!」

 

「おおー…!」

手近なデータストームに乗ってみせる遊嗣…その様子にマシュは目を輝かせる…!

 

「よし…いきます…!」

そんな遊嗣のお手本を見ながら、マシュは新品のD・ボードに乗り込む…それは既製品のD・ボードにロマンがカスタマイズをしたモノ…ターボエンジンには『円卓の盾』の装飾が施されている。

 

 

「ふっ…やっ…ととっ…!?の、乗れました!!」

 

「うん!D・ボードデビューおめでとう!」

苦節数分…ロマンや遊嗣のサポートもあり、マシュはとりあえずD・ボードに乗り込む事に成功した…!

 

 

「それじゃ…風に乗りながらゆっくり進んでみよう!」

 

「は、はい…!」

そして二人はゆっくりと風に乗る…遊嗣は周りを見渡し、マシュが危なくないように気を配り…マシュは必死にバランスをとりながら遊嗣の後ろをついていく…。

 

 

「実際のスピードデュエルだと、もう少しスピードを上げなきゃならないけど…リンクヴレインズの移動手段として扱うなら、そんなにスピードを上げなくても大丈夫だから…」

 

「は、はい…!」

穏やかに吹き抜けるデータストーム…遠くの方では楽しげにスピードデュエルをする一般デュエリスト達の姿もあるが、マシュにはそれを見る余裕はない……実際、マシュはD・ボードには乗れているが…電脳世界とは言え()()に慣れないらしかった。

 

 

 

《…ん…?》

 

「ロマン?どうしたの?」

 

《いや、危ない奴らが来ないようにサーチの範囲を広げてたんだけど…なんか変な反応が…?なんだろうコレ…?》

 

「えっ…?」

そんな時、ロマンが不可解な表情をみせる…何かを感知したらしい…。

 

 

「まさか…イグニス…?」

 

《なんとも言えないね…近くを探してみよう、マシュ!自動運転モードにするからちょっとついて来て》

 

「は、はい!!」

そして、遊嗣達は警戒しながら反応のあった地点へと向かった…。

 

 

 

 

 

《反応があったのはこの辺りだけど…》

 

「特に何もなさそう…」

遊嗣達がやってきたのはリンクヴレインズの下層…その路地裏だった。

 

 

《うーん…反応が弱くなってる?バグだったかな…》

 

「まぁ、仕方ないよ!何もなかったらなかったで良かったと思おう」

 

《そうだね…前向きにいこう》

ボーマン一味か他のイグニス達の手がかりかと思われたが…空振りに終わったと思われたロマンの感知…しかし…。

 

 

「っ…?ゆ、Yu-Zさん!ロマンさん!この子…!?」

 

「マシュ!?どうしたの!?」

その時、マシュが慌てた様子で遊嗣を呼び寄せる…そこには…

 

 「な、なんだろう?…黒い……えっ?()()()くん!?」

 

《……──》

 

《確かに、フォウにそっくりだね…!?》

そこにいたのは、全身がノイズに覆われた黒い生き物…その姿は白波家のマスコット…フォウにあまりにも酷似していた…!

 

 

「大変…!全身ボロボロです!」

 

「しっかりして!意識があるならログアウトするんだ!」

 

《───?……───》

 

《いや、違う…アバターじゃない!Aiに話を聞いた事があるけど、サイバース世界には「リンクリボー」を始めとしたサイバースのモンスターや生き物も暮らしていたはず…()()()()()()()()()()()()かもしれない!》

今にも消滅してしまいそうな黒猫…黒いフォウは、遊嗣の問いかけに薄っすらと目を開けたが、すぐに意識を失ってしまう…。

そしてその姿を見たロマンはサイバース世界の電脳生物なのではないか、と予想した…!

 

 

《遊嗣!きみのデュエルディスクの容量には余裕がある!彼を取り込んで母様に…彩華に見せるんだ!》

 

「う、うん!!ごめんマシュ、戻ろう!」

 

「は、はい!!」

そして…遊嗣は慌ただしく黒いフォウを回収し、現実世界に戻るべくログアウトした…。

 

 

 

 

 

 

 

「もう…ダメじゃないのフォウくん、一人で病院に来たら…」

 

《フォ〜ウ…(特別意訳:だって、遊海が心配だったんだもん…)》

 

「遊海さんが心配なのは分かる…でも、それでフォウくんが危ない目に遭ったら遊海さんが悲しむわ…」

 

《キュウ…(特別意訳:ごめんなさい…)》

 

「うん、反省したならよろしい!遊嗣が目を覚ましたら連れて帰ってもらおうね〜」

 

《フォウ〜ン…》

同じ頃、遊海の病室では翠とフォウが話し込んでいた…遊海を心配したフォウが病院に忍び込んでいたのだ…それをアヤカが見つけ、騒ぎになる前に確保できたのだ。

 

 

「う、うーん…」

 

「あっ、起きたみたいね…おはよう遊嗣、気分転換になった?」

 

「母さんっ…!彩姉!ごめん!力を貸して!!」

 

《遊嗣どうしたのです!リンクヴレインズで何か!?》

 

《母様!リンクヴレインズでサイバース由来と思われる電脳生物を保護しました!治療・修復をお願いします!》

そんな時、リンクヴレインズに向かっていた遊嗣が目を覚ます…そして、飛び起きると遊海の看病をしていたアヤカへと駆け寄る、そのデュエルディスクには見慣れない…しかし、見覚えのある生き物の姿が映し出されていた…!

 

 

 

《ドフォウ!?(えっ?あれ?ボク!?色違い!?)》

 

「えっ…フォウくんにそっくり…!?」

 

《これは…データが損傷しているようです…私が預かりましょう…!》

 

「お願い!彩姉…!」

あまりにもフォウにそっくりな黒フォウにビックリするフォウと翠…そして、ロマンから事情を聞いたアヤカは遊嗣から黒フォウのデータを受け取った…。

 

 

《解析…詳細不明…完全解析にはプログラムの解体が必要…手段破棄、プログラムの修復を優先……大丈夫、1日2日で治す事ができるはずです》

 

「よかった…」

 

《フォーウ…マーリンシスベシフォーウ!!(あの馬鹿ナイトメア、また余計な事したな…!?これ以上引っ掻き回すな〜!!)》

解析の結果、アヤカの力で修復可能な事が判明した黒フォウ…しかし、その正体は…今は誰にも分からないのであった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おーい…私は何もしてないよ〜?……いや、本当に……大体のアタリをつける事はできるけど……うん、物語の流れに任せてみようか……それが遊海君の…そして遊嗣君の力になる…と、思うけどなぁ…』

*1
決戦用カルデア制服モチーフ

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