転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話 作:S,K
長い眠りから目を覚ました遊嗣…しかし、彼が眠っている間にも事態は進み続けていた…。
それでは、最新話をどうぞ!
「………僕、どうしたんだっけ…?」
気付いた時、遊嗣は真っ暗な世界にいた…直前の記憶はあやふやだが───自分はデュエルに負けたのだと、なんとなく理解していた。
「……とにかく、進まなきゃ……こんな所にいても、どうにもならないし…」
上下も前後も左右も分からない暗闇の中、遊嗣は歩き始める。
その先に出口が存在するのかも分からないまま…あるとしても出口なのか…それとも
「───あっ……」
そして──遊嗣は暗闇の先に光を放つ
「───ここは……?」
遊嗣が手を伸ばした先…そこは再びの暗闇の中だった、しかし…その場所は今までの暗闇とは違っていた。
「──レッド、アイズ…?」
《─────》
遊嗣の目の前には巨大なモンスターが眠っていた…大きくて、暗くて…その正体は見えない──しかし、遊嗣は不思議とそれが
「……きみは、誰…?どうしてこんな場所にいるの?」
《─────》
無意識にドラゴンに語り掛ける遊嗣…しかし、ドラゴンは応えない…まるで、遊嗣を
「……『僕はお前さんを憎みはしない、イジメはしない…もしも、誰かがかかってきたら…いつだって、庇ってやる』」
《────………》
遊嗣が口にしたのは…彼が小さな頃から好きな絵本の一節だった…その言葉を聞いたドラゴンは片目を開き、紅い眼光が遊嗣を見つめる。
「もしかして、きみは…僕の─────」
ドラゴンへと手を伸ばす遊嗣…そして───
『ダメだよ、遊嗣君───今、その先に踏み込んだら、きみは後戻りできなくなってしまう』
「わっ─!?」
暗闇の世界に穏やかな声が響いた瞬間、世界が光に包まれる…そして気付いた時、遊嗣は濃い霧に覆われた花畑の中に立っていた。
「ここは……天国…?」
『いやいや、きみはまだ生きているよ…ちょっと
「あなたは、露天商の……」
『ふふっ…覚えていてくれたんだ、嬉しいな』
戸惑う遊嗣の前に現れたのは白いローブに身を包んだ、いつかの露天商の青年だった…遊嗣の言葉を聞いた青年は穏やかに笑う。
『さっそくだけど…きみはきみのいるべき場所に帰りなさい、きみの戦いは道半ば……大切な人達にあまり心配をかけてはならないよ?』
「あっ…!?待って!あなたはいったい─?」
『きみのお父さんの古い知り合いさ!また会おう、遊嗣君!誇り高き「遊」の意思を継ぐ子よ───』
遊嗣を覆うのは春一番のように暖かい花弁の花吹雪…その風に包まれながら、遊嗣の意識は遠くなっていった…。
〜〜〜〜〜
「うっ…?」
そして、遊嗣は目を覚ました…最初に感じたのは眩しい光と見慣れない天井…そして、安心するような
「───ま、しゅ…?」
「えっ?──遊嗣、さん…?」
ぼやけた視界で周りを見渡し…遊嗣は部屋から出ようとしている桃色の髪の少女に気付く、そして…自分でも驚くほど掠れた声に振り返った少女──恋人であるマシュは驚いた顔からすぐに顔がくしゃりと歪み…転ぶような勢いで遊嗣へと抱き着いた…。
「遊嗣さん…!遊嗣さん!!良かった…よかったあああ!!!」
《遊嗣…よかった…!目が覚めてよかった…!!》
「……マシュ…?ぼくは……ここ、どこ…?なんで、泣いてるの…?泣かないで…」
ぼんやりとした意識の中、
「遊嗣!!あっ───ふふっ…ありがとう、マシュちゃん」
そして、翠も駆けつけたが…泣きじゃくるマシュの姿を見て穏やかに笑う…その光景は少し後に医師達がやってくるまで続いた…。
……………
「………そうか、僕…ライトニングに、負けたんだ…」
《遊嗣、きみは負けてなんかない…!ライトニングが卑怯だったんだ…!!》
医師の診察や検査を終え、意識がはっきりとした遊嗣は途切れ途切れの記憶を思い出していく。
遊作が罠に巻き込まれた事を知り、ロマンと一緒に謎のワールドに向かった事。
その先で遊作が光のイグニス・ライトニングやウィンディに囚われる姿を見て、彼らを助ける為にライトニングにデュエルを挑んだ事。
ライトニングを追い詰めたが…遊海の意識データを人質に取られた事で頭が真っ白になり──デュエルに負けてしまった事……そして、あまりにも大きな衝撃を受けてしまい、そこで記憶は途切れていた…。
「ロマン…遊作君は…父さんは…!?」
《遊作君達は無事だよ…ボク達はライトニングにやられて──》
そして、ロマンがその先の出来事を伝える…。
追い詰められた遊作と遊嗣がハノイの騎士、リボルバーに助けられた事。
リボルバーとウィンディがデュエルで激突…激戦の末にウィンディが敗北し──ハノイの騎士の対イグニス用ウイルスを仕込まれて生死不明である事。
ライトニングはボーマンの仲間であり、敵対するAiや不霊夢、人間達に宣戦布告して逃亡した事。
ログアウトを封じられた遊嗣を守る為に敵であるはずのハノイの騎士が奮戦し──最終的に力技でログインしてきた凌牙に助けられた事。
遊作とボーマンのデュエルは引き分けに終わり、ハリボテのサイバース世界が崩壊した事。
そして、結果として遊海や草薙仁の意識データを取り戻す事はできず──全ての事件が終わった後、遊嗣は10日間も意識を失っていたのだと…。
「……そんなに眠ってたんだ…マシュがあんなに大泣きする訳だ…本当に、ごめん…」
「すぅ…すぅ…」
ロマンから事情を聞かされた遊嗣は自分のベッドに突っ伏して眠るマシュの頭を優しく撫でる…遊嗣が目を覚ました事に安心して気が抜けてしまったのだ…。
「ロマン…遊作君達は…?」
《うん…その事なんだけど……》
近くにあった膝掛けをマシュに羽織らせながら、遊作達について訊ねる遊嗣…その問いにロマンは言い淀む…。
《……遊嗣、きみが眠っている間に事態は大きく動いたんだ……大きな事件は、3つ……1つ、水のイグニス・アクアの保護とブルーガール、ゴーストガールとの同盟…2つ、地のイグニス・アースの
「えっ…!?」
それは状況を簡潔に説明する『3つの言葉』…それでも、あまりの情報量にロマンからそれを聞かされた遊嗣は目を見開いた…。
Side遊作
《ロマン…もう体は大丈夫なのか?ライトニング達の事もある、単独行動は控えた方がいいだろう》
《ありがとう不霊夢…一応、スペクターから渡されたプログラムで身を守ってはいるけど…遊嗣が目を覚ますまでは彼のそばにいるよ…無事だって知らせるだけでも、きみ達は安心すると思ってね》
「ありがとうロマン…遊嗣に何かあったら、すぐに連絡してくれ」
《くっそ〜!ライトニングのヤツ、今度見つけたらコテンパンにしてやる!!》
「Ai、落ち着いて…」
ライトニングによる『宣戦布告』から2日が経ち、回復したロマンはCafeNagiのハッキングルームを訪れていた…ライトニング達に気付かれる恐れもあったが……遊作達に遊嗣の容体を伝える事を優先したのだ。
《それより…心配なのは地のイグニスのアース、そして水のイグニスのアクアの事だね…ボーマンは『イグニスを統合する器』だと言っていたんだろう?彼らも狙われている、と見るべきだね》
《だよな…まったく、アースの馬鹿は肝心な時に現れねぇし…》
《うむ、アクアはサイバース世界が襲撃を受ける前から行方不明だ》
《ああ、早くあいつらを見つけねぇと…ライトニングの奴が何をするかわからねぇ》
そしてAi達は残る2体のイグニス…アースとアクアの事を心配する…アクアに関しては一切の手がかりはなく、アースも先日の一件以降接触はなかった…。
「よし…草薙さん」
「ああ、ようやくできたな…!」
《ん?何か見つけたのか?》
「ああ、アースは度々リンクヴレインズに出没していたみたいでな…遊作と一緒に痕跡があった場所を抽出してみたんだ」
《へぇ〜…って!?多すぎだろ!?!どんだけフラフラしてるんだよアースの奴!?》
そんな時、遊作と草薙がアースの痕跡をマッピングした地図をモニターへと映し出す…しかし、それは新生リンクヴレインズ全域に広がっており…流石のAiも驚愕するほどである。
《アースの事だ、アクアを探していたのかもしれないな》
《あー…アイツ、マジだったもんな…文字通り草の根分けても探しそうだ…》
《なるほど…この何処かにアースの領域、「地のワールド」の入口があるかも、って事だね》
「そういう事、少し骨の折れる作業になるが…頼むぞ遊作、尊」
そして、アースを探すべく遊作と尊はリンクヴレインズへと飛び込んでいった…。
………
《あまり見慣れない景色だ…なんだ?この違和感は…》
同じ頃、新生リンクヴレインズでは行方不明の水のイグニス・アクアを探すアースの姿があった…彼は木製の人形とDボードを操り、リンクヴレインズ中をくまなく探し回る…そんな中で彼はリンクヴレインズの一角に違和感を感じ取った…!
《サーチ開始…!──これは…?この先に何かあるのか…?》
そしてアースは周辺を丁寧に探査する…そして、巧妙に隠された領域を見つけ出した…!
《っ…アクア!!》
《貴方は地の…!助けに来てくれたのですか…!?》
謎のエリアへと踏み込んだアース…そこで彼が見つけたのは球状の鉄格子に囚われの身になっていた水色の体に水滴のようなツインテールの髪型をした桃色の瞳のイグニス…水のイグニスだった…!
《無事で良かった、アクア…!》
《アクア…それは…?》
《きみの名前だ、私の事はアースと呼んでくれ…今、きみを助け出す!!》
《っ…!待ってアース!このプログラムは!!》
バチィ!!!
《ぐああっ!!?》
アクアを解放すべく鉄格子に触れるアース…その檻は強力なファイアーウォールになっており、アースの腕は焼け爛れていく…!
《無理をしてはダメ!アース!!》
《なんの…これしきぃぃッ!!!うおおおっ!!!》
しかし、アースは怯まない…想い人であるアクアを救う為、アースは自身の頑丈な体と怪力でファイアーウォールを強引に捻じ曲げ、打ち壊した!
《っ…はぁ…はぁ…!》
《アース!大丈夫ですか!?》
《ああ…とにかく、今はここから離れよう…!!》
ファイアーウォールをこじ開けたダメージで膝をつくアース…アクアは彼の身を案じたが、アースは追手がかかる前にとその場から離れた…。
………
《───そうですか…やはり、サイバース世界は滅ぼされてしまったのですね…》
《ああ…その様子だと、きみは何か知っていたのか?》
《ええ…おそらく、私を閉じ込めた者──光のイグニスがサイバース世界を滅ぼしたのです…》
自身の持つ癒しの力で焼け爛れたアースの腕を修復するアクア…その中で彼女はサイバース世界が滅ぼされた真実を語る…。
サイバース世界が滅ぼされる前、アクアはサイバース世界の某所で『
《許せない…彼がきみにそんな事をするとは…!!この事をAiや不霊夢…闇のイグニスや炎のイグニスにも伝えてやらねば…》
アースは不器用な男である…しかし、それと同時に心優しい男でもある…アクアの受けた仕打ちを聞いた彼はライトニングへと怒り、仲間達にその情報を伝える決意を固める…!
《アース…っ!?追われています!!》
《むっ!?もう気づかれたか…!!》
《いえ…!?この感じはイグニスではないようですが…!?》
その時、イグニスの中でも探査能力に優れるアクアが異変を感じ取る…何者かが2人を追いかけていたのだ…!
『見つけたぞ…!待ちやがれ!イグニース!!』
《人間…?!我らを狙うSOLの人間か…!?》
《それにしては…奇抜なアバター姿ですが…》
2人を追いかけていた人物…それは恐竜の覆面を被った大男、マスクドGOことGO鬼塚だった…!
《くっ…振り切れない…!アクア、逃げろ!私のワールドに隠れていてくれ…!》
《アース!?》
Dボードよるチェイスをくり広げる事数分…鬼塚を振り切れない事を悟ったアースはアクアをDボードから突き落とし、鬼塚の前に立ち塞がる…!
『ほう、女のイグニスを逃がしたか…まぁいい…1体でもイグニスを捕まえられればな…!』
《どうやら、SOLでもハノイの騎士でもないらしいな…!何故、我々を狙う?》
『ハッ…決まってんだろ?お前にはプレイメーカーを誘い出す為の
《(私を人質に?何を言ってるんだ、あの人間は…?)》
鬼塚がアースを…イグニスを探していた理由──それは神出鬼没のプレイメーカーを誘い出す囮にする為だったのだ…!
『問答無用だ…!俺と一緒に来てもらうぞ!イグニス!!』
《悪いが…お前の思い通りになる訳にはいかない…!》
リンクヴレインズの一角…そこで不器用なイグニスとプレイメーカーとの対決を望む修羅が激突する!
『《スピード・デュエル!!》』
デュエルダイジェスト マスクドGO対アース
《見つけた!アース…って、鬼塚とデュエルしてる!?》
「何故、鬼塚とアースがデュエルしているんだ…?」
『ハッ…来やがったなプレイメーカー…!待ってろよ…何が何でも俺とデュエルで決着をつけてもらうからな──!!』
リンクヴレインズで始まった鬼塚とアースのスピードデュエル…その直後、遊作とAiがその場に駆けつけたが──本来、戦う理由が存在しない鬼塚とアースの組み合わせを見て動揺していた…。
先攻を取ったのは鬼塚…彼はただ、モンスターを伏せただけでターンを終える…しかし、その様子は自信に満ち溢れているようにも見えた。
続くアースのターン…彼は先日の遊作との戦い以上のタクティクスを発揮──防御の要である『Gゴーレム・クリスタル・ハート』と攻撃の要である『Gゴーレム・インヴァリッド・ドルメン』を次々とリンク召喚、鬼塚へと攻撃を仕掛ける。
対する鬼塚は攻撃された『ダイナレスラー・カパプテラ』を手札の『ダイナレスラー・マーシャルアンキロ』の効果で守り、ダメージを半分にする。
鬼塚のターン…彼はエースである『ダイナレスラー・キング・T・レッスル』をリンク召喚、リンク素材となった『カパプテラ』の効果で攻撃力を1000アップさせ、攻撃力の低い『クリスタルハート』を攻撃する…だが、『インヴァリッドドルメン』の効果で攻撃を誘導され、ダメージを与えるが…『インヴァリッドドルメン』の効果で『キングTレッスル』の効果は無効化…さらに、罠カード『
まさに『鉄壁』の布陣を敷くアース…だが、鬼塚は新たな1手を打つ。
それは融合召喚──速攻魔法『タイラント・ダイナ・フュージョン』を発動──切り札たる『ダイナレスラー・キメラ・T・レッスル』を喚び出す…!
「っ…なんだ…?鬼塚、お前…何をした…!?」
『何をした…?ははっ…決まってるだろ?
「───はっ?」
《んな馬鹿な!?そんなのでそんな強くなってたまるかぁ!!》
プレイスタイルも変わり、明らかに実力が上がった鬼塚の様子に戸惑う遊作…しかし、その答えはあまりにも予想外…あまりにも
『ただ、デュエルに挑むだけじゃねぇ…負ける毎に自分に
《嘘だろ?脳筋でAIを凌駕しようとしたのかよ鬼塚…というか、そのやり方って……》
正史の物語において、鬼塚はSOLテクノロジー製のデュエルAIを脳に埋め込み、それにより自分の思考領域を拡張、本来の実力以上の実力を発揮できるようにしていた。
しかし、この世界の鬼塚はSOLテクノロジーのバウンティーハンターになる事もなく、インプラントもされていない。
……その代わり、彼は自分を徹底的に追い詰めた──デュエルに負ければ食事を削り、筋トレを課し…時には電気ショックで自分を追い詰めた……それは奇しくも遊作達が体験した『デュエル地獄』の追体験となり──鬼塚の能力を正史の物語の鬼塚と同等まで引き上げていたのだ。
『俺は勝つためなら何でもやってやる…!例え、この命が燃え尽きようとも!!バトル続行だ!「キメラTレッスル」で「Gゴーレム・トークン」を攻撃!さらに「キメラTレッスル」は貫通効果持ちだ!!』
《むぅっ!?》
勝利を掴む為に魂を燃やす鬼塚…その一撃はアースのライフを大きく削る…!
『さらに「キメラTレッスル」は相手モンスターを破壊した時、攻撃力が500アップする!』
《(この人間は
荒ぶる勝利への渇望…刃のように研ぎ澄まされた
しかし、アースも黙ってはいない…『クリスタル・ハート』によって『インヴァリッド・ドルメン』を蘇生…そしてエースを糧としてLink-4の切り札『Gゴーレム・ディグニファイド・トリリトン』を喚び出す。
『トリリトン』の元々の攻撃力は3200…さらに、その攻撃力は『クリスタルハート』の効果を受けて4400まで上昇…アースは決着をつけるべく勝負に出る…!
《バトルだ!「トリリトン」で「キメラTレッスル」を攻撃!さらに「トリリトン」の効果発動!手札の地属性モンスターを墓地に送る事で相手モンスター1体の攻撃力を200ダウンさせ、効果を無効にする!》
『だが!『キメラTレッスル』は『タイラント・ダイナ・フュージョン』の効果で1度だけ、戦闘・効果では破壊されない!』
《しかし、ダメージは受ける!!》
鬼塚にダメージを与えるアース…しかし、その攻撃はまだ止まらない!
《『クリスタル・ハート』の効果発動!自身にカウンターが2つ以上乗っている時、相互リンクしているモンスターは2回攻撃できる!!『トリリトン』でもう一度『キメラTレッスル』を攻撃!》
『うおおっ…!!』
巨大な岩礫が鬼塚の切り札を破壊…その残りライフを100まで追い詰める…!
《うおおっ…!惜しい!あと一撃でアースの勝ちなのに…!》
《いや、これで決着だ!!スキル発動!【ロック・ユー】!自分の地属性モンスターが相手モンスターを破壊した時、破壊したモンスターのレベル×100ダメージを与える!「キメラTレッスル」のレベルは8!これで決着だ!!》
アースの操る人形の腕から巨大な槍状の岩が現れる…絶体絶命の状況──しかし、鬼塚は笑っていた…!
『はっ…そうだよな……スピードデュエルなら、「スキル」がある…俺も何度も痛い目を見てきた…ならよぉ──無効にしちまえばいいよなァ!!スキル発動【アンチスキル】!!ドオオラアアアア!!』
《なにっ…!?》
「アースのスキルが、砕けた!?」
それは驚くべき光景だった…アースの人形が投擲した槍が鬼塚の拳によって粉々に砕け散ったのだ…!
『スキル【アンチスキル】…!デュエル中に1度、相手がスキルを発動した時、そのスキルを無効にしてカードを2枚ドローする!!』
「相手のスキルを無効にするスキル…!」
《おいおい…!?鬼塚って
鬼塚の実力の高さ…そして勝利への執念の強さに遊作とAiは驚愕する…。
今までの鬼塚のスキルは【闘魂】や【ダイナレッスル・レボリューション】など…自身のデッキを活かす為スキルが多かった…だが、鬼塚はそのスタイルすらも捨て、相手の見せ場を
「プレイメーカー!!」
「ブルーガールか…!」
「事情は聞いているわ…あれが地のイグニスと──戦ってるのは誰…?」
《マスクドGO…というか、GO鬼塚だ!なんでか知らねぇけど地のイグニス…アースの事を狙ってんだ!!》
「GO鬼塚!?最近、姿を見ないとは思ってたけど…」
そんな時、遊作達に追走してきたのはブルーガール…財前葵だった、ゴーストガールがイグニスの反応に気付き、状況を確認する為にログインしたのだ。
「プレイメーカー、私とゴーストガールは貴方達と争うつもりはないわ…今はイグニスの身を守る事が先決よ」
《おおっ!そりゃ願ったり叶ったりだ!だけど、アースはデュエルで決着をつけるつもりなんだ…!》
「戦況は…」
「アースが有利だが、どうなるかはまだわからない…!」
遊作達に争うつもりはないと伝える葵…そして、誇りと執念を懸けたデュエルは決着へと向かう…!
『屈曲なる太古の王者よ!全ての敵を蹴散らせ!!シンクロ召喚!!現れろ!「ダイナレスラー・ギガ・スピノサバット」!!』
鬼塚はシンクロ召喚を解放…2体目の切り札たるスピノサウルスの闘士を喚び出す!
『さらに俺は魔法カード「時空超越」を発動!その効果により墓地の恐竜族モンスター…レベル1の「マーシャルアンキロ」とレベル7の「パンクケラトプス」を除外し、そのレベルの合計であるレベル8の「キメラTレッスル」を墓地から特殊召喚!!ただし、この効果で喚び出したモンスターはこのターン攻撃できない!』
《攻撃できないモンスターを特殊召喚だと…?》
さらに、破壊されたキメラの闘士が並び立つ…!
『「ギガスピノサバット」の効果発動!相手モンスター1体を破壊する!俺が対象にするのは「クリスタルハート」だ!』
《させん!「トリリトン」の効果発動!自分フィールドのモンスターが効果の対象となった時、その効果を無効にし、破壊する!!》
『ならば「ギガスピノサバット」のさらなる効果発動!自身が戦闘・効果で破壊される時、「キメラTレッスル」を身代わりに破壊できる!!そして、破壊された「キメラTレッスル」の効果が発動する!』
「クリスタルハート」を守る為に全力を尽くすアース…しかし、鬼塚も譲らない…フィールドに闘士の執念が揺らめく…!
『「キメラTレッスル」が破壊された時!相手フィールドの攻撃表示のモンスター全てを破壊する!』
《なにっ…!?》
それは闘士の執念の咆哮…恐ろしき咆哮がアースのフィールドを吹き飛ばそうとする…!
《だが、まだだ!罠カード「
アースは己の切り札を犠牲にクリスタルハートを守りきる…しかし、安心するのはまだ早かった…!
『お前の戦い方、昔の俺と似ているな…自分の誇りを守る為の戦い……悪いが、俺にも負けられない理由があるんだよ!!バトルだ!「ギガスピノサバット」で「クリスタルハート」を攻撃!さらに、手札から速攻魔法「ダイナロア」を発動!その効果により、自分の恐竜族モンスターが相手とバトルする時!相手の魔法・罠カード1枚を墓地に送る!!俺が選ぶのは装備カードになった「重力防護」だ!!』
《し、しまった!!やめろ…止めてくれ!!》
それは鬼塚の執念の一撃…強烈な飛び蹴りは水晶のハートに直撃…水晶のハートはアースの悲鳴と共に粉々に砕け散った…。
アース LP0
マスクドGO WIN!
《すまない…アクア…きみのくれたモンスターを、守りきれなかった…!》
バサッ!!
『しゃあ!!イグニスゲット!!』
《アース!!》
デュエルは鬼塚の勝利で決着…『クリスタルハート』を守りきれずに放心していたアースは…鬼塚が取り出した虫とり網に捕まってしまう…!
「っ…!GO鬼塚!アースを解放してくれ…!そのイグニスは敵じゃない…オレ達はアースを敵から守りたくて探していたんだ…!」
『はっ…そうかよ…なら、俺に勝ったら返してやる!お前とデュエルする為に、俺はイグニスを捕まえた…!明日の正午にリンクヴレインズに来い…そこで真っ正面から、お前を叩き潰す!!』
「っ…待て!!」
《鬼塚の奴…そこまでして、プレイメーカーと戦いたいのかよ…!!待ってろ、アース…必ず助けてやるからな…!!》
そして、鬼塚は遊作へと宣戦布告を叩きつけてリンクヴレインズからログアウトしていった…全ては失われた誇りを取り戻す為に…。
『はぁ…はぁ…やったぞ…これで、プレイメーカーと決着をつけられる…っう…!』
《おい…大丈夫か?》
『AIに、心配されるほど…落ちぶれてはねぇよ…!』
現実世界、鬼塚の拠点…無人のリングの上で鬼塚は倒れ込んでいた。
リンクヴレインズではマスクに隠されて気付かれる事はなかったが…今の鬼塚は頬は痩け、体の脂肪は削ぎ落とされた…まるで過剰な減量をしたボクサーのような姿になっていた。
あまりにもズタボロな鬼塚の姿に人質として虫かご型のプログラムに閉じ込められたアースも心配を隠せなかった…。
『……心配すんな、俺が勝とうが負けようが…お前はプレイメーカーに返してやる』
《むっ…?ならば、何故プレイメーカーに直接挑みに行かなかった?》
『アイツは神出鬼没…この1ヶ月、リンクヴレインズを探し回っても痕跡も掴めねぇ…ならよぉ、アイツに来てもらうしかないだろうが…!』
《そうか…お前も、
『ああ、そうだよ…!俺は不器用で愚かな男さ……頭では分かってるのに、プレイメーカーと決着をつけなきゃ…俺は前に進めねぇんだ…!アイツの対等なライバルになる為に…!』
それはデュエルの世界に生きてきた鬼塚の本音…プレイメーカーと対等な存在として戦いたいと願う、不器用なデュエリストの本能だった…。
──AIとイグニスの未来を、真実を…自分の目で見極めて欲しいのです──
《(鬼塚は悪意を持って私にデュエルを挑んだのではない、か……アクア、少しだけ待っていてくれ…私は彼を見極めたいと思う)》
アースは逃げようと思えば逃げられる状況にいた…ハッカーではない鬼塚のプログラムは穴だらけ……すぐにでも脱出できるだろう。
しかし、アースはその選択肢を選ばなかった…プレイメーカーとはまた違う、
《鬼塚豪…プレイメーカーに勝ちたいか?》