転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話   作:S,K

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『やぁやぁ!おはよう諸君、白波遊海ファンクラブ会長(自称)の花のお兄さんことマーリンお兄さんさ!』

『今、ミラー・リンクヴレインズではボーマンとプレイメーカーこと遊作君の最終決戦が始まろうとしているけど…キミ達は「何故、ズァークが遊海君の息子に生まれ変わっているのか?」「そもそも、遊海君達はいつから遊嗣君がズァークの生まれ変わりだと知っていたのか?」という事も気になっているんじゃないかな?』

『そんなキミ達の疑問に応える為に…最終決戦の方は小休止、彼らの過去に目を向けてみよう……では──』




───とある家族の話をするとしよう、彼らが手にした穏やかで平和な日常…そして、彼の原点について……───


Episode:Yuji 

「パパ〜だっこ〜!」

 

「お〜遊嗣!よく言えたな〜!よしよし〜!」

 

「えへへ〜!ぎゅ〜!」

 

《ふふっ…遊嗣も大きくなりましたね!》

 

《フォウ、フォ〜ウ!(ちょっと前までハイハイだったのに…トテトテ歩くのが可愛いんだ〜!)》

 

 

それは遊海達がまだハートランドで暮らしていた頃の事…遊嗣はすくすくと成長し、まもなく3歳の誕生日を迎えようとしていた。

そんな遊嗣は遊海に抱っこをねだり、遊海は笑いながら息子の相手をしている…そんな様子を精霊達も微笑ましく見守っていた…。

 

 

「ははっ…いいな〜遊嗣!父さんに抱っこしてもらって…俺の所にも来るか〜?」

 

「遊嗣〜凌牙兄ちゃんが来たぞ~?」

 

「にぃに〜!」

 

「よいしょ!まったく…本当にぷにぷにだな遊嗣は〜」

 

「きゃはは!」

 

「ああ…天使がいる…本当に、俺は幸せ者だなぁ…」

 

《まったく…その表情は家族以外には見せられんな…》

 

《ユウミもすっかり丸くなりましたね…ここしばらくは大きな事件もないですし、本当に良かった》

そして、そんな戯れに凌牙が混ざる…遊嗣を抱っこした凌牙も、その様子を見ている遊海も精霊達も…穏やかに優しく笑っていた。

 

 

「遊海さん!凌牙君お昼ご飯──あっ、2人とも遊嗣にメロメロに…私も〜!!」

 

「ママ〜!」

 

《フォ〜ウ?…フォウ!(お〜い、お昼ご飯冷めちゃうよ〜?……まぁ、いっか!)》

さらに、昼食の用意ができた事を伝えに来た翠もその輪に加わる…白波家は今までの人生で一番、充実した平和な日々を過ごしていた。

 

 

 

…………

 

 

 

「すぅ…すぅ…」

 

「えっ?父さん達、引っ越すのか?」

 

「ああ、遊嗣が3歳になる前に()()()……DenCityに引っ越そうと思ってる……あの街が次の『物語』の舞台だからな…」

 

「そうなのか…でも、すごい運命だよな…ズァークが吹っ飛ばした街が…新しい事件の起きる場所になるなんてさ」

 

「確かにな…俺も瀬人とカイトから新しい街の名前を聞いた時はびっくりしたよ…」

昼食をお腹いっぱい食べ、夢の世界へと旅立った遊嗣…そんな遊嗣を見守りながら、遊海は凌牙に引越しの計画を伝える。

 

 

 

約四年前、「覇王龍」と化したズァークと伝説の決闘者達が衝突し、ARC次元創世の余波によって更地となった某市…その街はKCを始めとしたいくつもの企業の手助けによって『DenCity』として再出発しようとしていた。

そして遊海は街を更地にしてしまった元凶の1人として、その責任を果たす為…そして、次なる『物語』に備えて拠点を移そうと考えていたのだ。

 

 

 

「この家はお前が使うといい…お前もその方がいいだろう?」

 

「ああ、ありがとう父さん」

 

「ふふっ…凌牙君、一人暮らしでも大丈夫?プロの試合にパジャマで行っちゃダメよ?」

 

「ぶっ…!?それは子供の時の話だろ!?もうやらねぇって!!もう大人なんだから…」

 

「そうだと良いけどな〜?」

 

「父さんまで乗らないでくれよぉ…」

 

「くすくす…」

久しぶりの一人暮らしとなる凌牙をからかう翠と遊海…しかし、その表情は穏やかだった。

 

 

「まぁ、引越しはするけど…DenCityとハートランドはそんなに遠くはないし、あの街で何も起きなかったら…またハートランドに帰ってくるさ」

 

「何も起きない、なんて事あるのか?」

 

「ああ、この世界は俺達がいる事で運命が変わった…地球温暖化も収まって大規模災害も減ったし、戦争や紛争なんかも少なくなった…そして、人類は緩やかに成長を続けてる…この条件なら、俺の心配も杞憂に終わるかもしれないからな」

 

「ふ〜ん…」

遊海は記憶の底から『物語』の事を思い出す…『VRAINS』の元凶たる鴻上博士は人類の『後継種』としてAIたるイグニスを開発しようとした…しかし、今の人類は滅びから遠い所にいる…故に『物語が起きない』という可能性を遊海は考えていたのだ。

 

 

「(でも…この先は俺にとっても『未知』の物語だ…警戒だけは緩めない方がいいよな…)」

遊海と翠は新たな物語…『VRAINS』の物語がどのような終わりを迎えたのかを知らない…故に、今までの経験則から警戒だけはしておこうと考えていた…。

 

 

 

キン─

 

 

 

【久しいな、遊海…我の声が聞こえるか?】

 

「(ドン千?いきなりどうした?お前から念話を飛ばしてくるなんて珍しいじゃないか?)」

 

【だから、略すなと言っているだろう…】

その時、遊海の脳裏に声が響く…それはARC次元で『ヌメロン・ピース』を管理している『善神』ドン・サウザンドからの念話だった。

 

 

【お前達に話がある、時間ができた時で構わん…凌牙と璃緒を連れて我が世界に来い…()()()()()()()()()()…以上だ】

 

「あ、おい!?…なんだよ、藪から棒に…」

 

「父さん?どうしたんだ?」

 

「ドン・サウザンドから念話があってな…俺達家族だけで来てくれってさ」

 

「奴から?…遊馬達には伝えるなって事か?」

 

「……もしかして、何か悪巧みを…?」

 

「う〜ん…?そんな感じではなかったけどなぁ…」

ドン・サウザンドからの突然の連絡…その内容に遊海達は首を傾げた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

キィン─!

 

 

 

《お待たせしましたマスター!セントラル次元に到着です!》

 

「ありがとうアヤカ、お疲れ様」

 

「う〜ん…!本当に穏やかな場所よね〜…ドン・サウザンドがいるとは思えないわ…」

 

「パパ!ねぇね!キラキラね〜!」

 

「ははっ、綺麗だなぁ」

数日後、遊海は嫁いだ璃緒を連れ…家族5人と精霊達でARC次元の中心世界改め、「セントラル次元」へと訪れていた。

遊嗣は暗いのに明るい夜空に輝く星や、浮かぶ水晶に目を輝かせている。

 

 

 

【よく来たな、遊海…思ったより早かったではないか?】

 

「まぁな!お前が悪巧みしてるんじゃないかと心配でな?」

 

【フッ…言うではないか】

そして、そんな白波家を出迎えたのは黒き体から透き通るような青い体に変わった…「魂のランクアップ」を遂げた『善神』ドン・サウザンドだった。

 

 

「せんせん〜!おはよ〜!」

 

【我を見ても恐れもせんとは…やはり肝が座っているな、遊嗣よ】

 

「えへへ〜」

 

「遊嗣〜!ちゃんと挨拶できて偉いわね〜!」

 

「「(ドン・サウザンドが遊嗣の頭を撫でてる…似合わね〜…)」」

そんなドン・サウザンドを怖がらず、元気に挨拶する遊嗣…その無邪気な様子にドン・サウザンドも穏やかに応えている。

 

…なお、そんな様子を見ながら遊海と凌牙は同じ事を考えていた…。

 

 

 

 

「おほん……それで、なんで俺達を呼び出したんだ?ARC次元で何かあったのか?」

 

【いいや?この次元は平和そのものだ…今回は少し気に掛かる事があってな】

 

「気に掛かる事?」

ドン・サウザンドに自分達を呼び出した理由を訊ねる遊海…その答えは彼らしくないものだった。

 

 

 

【知っての通り、我はこの場所で『ヌメロン・ピース』の片割れを管理する番人だ…しかし、退屈だったのでな…『ヌメロン・ピース』の権能を使い、以前の事件──お前達の言い方ならば『ARC-V』の物語の記録を見返していたのだ】

 

「『ヌメロン・ピース』…『ヌメロン・コード』は全知の力、確かにこの次元で起きた事が記録されてる……それで?」

 

【我は気になっていたのだ…榊遊矢から切り離された「覇王龍ズァーク」、その()()()の行方についてな】

 

「ズァークの、悪の魂…」

ドン・サウザンドの言葉に遊海と事情がよく分かっていない遊嗣以外の全員がハッとした表情を見せる。

 

 

覇王龍ズァークと遊海を始めとした歴代「主人公」達の魂を懸けた決闘…その果てにズァークは倒され、その魂は榊遊矢達4人を含む「善の魂」と怒りや憎しみに支配されていた「悪の魂」へと分離した。

そして「悪の魂」は彼の抱えていた迷いや悲しみを受け止めた遊海の言葉と抱擁によって浄化されたのだった。

 

 

 

「それって確か……お父さんが浄化したはずよね?」

 

【そうだ…遊海は奴の魂を浄化し、光へと還した……しかし、その後はどうした?】

 

「う〜ん……俺はその後の事は知らないし、どうなったのかも聞いてない…たぶん、何処かの『あの世』に流れ着いたか…もう転生してるんじゃないかなぁ…?」

 

「そんな適当な…『ヌメロン・ピース』を書き換えた時に何かしなかったのか?」

 

「俺もできるなら、何か手助けをしてやりたかったけど…ズァークは大きな罪を犯した…その罪はどんな形であれ、自分で償ってほしい…そう思ったから何もしなかったんだ」

 

《フォウ、フォウ(遊海らしい考えだね)》

璃緒や凌牙の言葉に遊海は頭を掻きながら答える…遊海はやろうとすればズァークの半身を何かしらの存在に転生させる事もできたが、確認も手出しもしなかった。

 

輪廻転生の中でズァークが救われるように…。

 

 

 

【ふむ……では、()()()()はお前の意図した事ではない…と言う事か…】

 

「……ドン・サウザンド…お前、何を隠してる?まさか、また何かやらかしたんじゃないだろうな…!」

 

「凌牙、落ち着け…青の『ヌメロン・ピース』だけじゃ『書き換え』はできないし、『ヌメロン・ピース』が使われたら俺とアストラルが真っ先に気付いてる」

遊海の言葉を聞いて1人で何かに納得するドン・サウザンド…その不可解な様子に凌牙が殺気を放つが、今のドン・サウザンドに『書き換え』ができない事を知っている遊海が穏やかに声をかける…。

 

 

「にぃに、こわいこわいはめーだよ〜?」

 

「……ああ、そうだな…怖がらせてごめんな〜遊嗣」

 

「えへへ〜」

そして、凌牙の怒った顔を見た遊嗣が翠の腕の中から凌牙の服を引っ張る…その無邪気な様子に凌牙は殺気を引っ込めた…。

 

 

「ドン・サウザンド…何に気付いた?別に()()()()の異変があった訳じゃない…そして、わざわざ俺達家族だけを呼んだ…そこに意味があるんだろう?」

 

【フッ…流石に聡いな、遊海…流石は歴戦の英雄か……ならば、前置きは無しで()()を告げよう】

 

「事実…?」

穏やかにドン・サウザンドに自分達を呼び出した真意を問う遊海…彼のまっすぐな目を見たドン・サウザンドは静かに言葉を紡ぐ…。

 

 

 

 

 

 

 

【白波遊海…お前の息子、白波遊嗣は───人間界とARC次元を滅ぼしかけた災厄の決闘者(デュエリスト)・ズァーク、その悪の魂の()()()()()()だ】

 

 

 

 

 

 

 

「──────はっ?」

 

「「えっ…!?」」

 

「………」

 

《フォッ…!?》

 

「にぃに?ねぇね〜?」

 

ドン・サウザンドが告げた()()…それを聞いた凌牙は言葉を失い、璃緒と翠でさえもその言葉の意味を受け止めきれずに固まってしまう……そんな中、事態を理解できていない遊嗣はきょとんとした顔をしていた…。

 

 

 

「待って…待ってドン・サウザンド!!この子は、この子は正真正銘、私と遊海さんの子です!それが、ズァークの生まれ変わりって…!?」

 

「ママ〜…?」

 

【落ち着け、翠…順を追って説明してやる……だからそう不安そうな顔をするな…遊嗣が泣いてしまうぞ?】

 

「っ…遊嗣…大丈夫、大丈夫だからね…」

 

「?」

突然告げられた言葉を理解しきれずに取り乱してしまう翠…だが、珍しく優しいドン・サウザンドの言葉で正気を取り戻し、遊嗣を抱きしめる…。

 

 

 

 

 

【全てはあの決戦の日に遡る…遊海や九十九遊馬達は『覇王龍ズァーク』を打ち倒した…しかし、ズァークは倒れる事なく、しぶとく魂のみで逃げようとしたが…奴の中で眠っていた榊遊矢の魂が目覚め、それを阻んだ…その後に何があったか覚えているか?】

 

「父さんはたしか…ズァークの魂を抱きしめて……」

 

「………あいつは『もっと早く、俺に会いたかった』と言っていたはずだ」

 

【その通り、そしてお前は()()()()()()?】

 

「───『お前が巡る輪廻の先で、俺は待ってる』」

 

「っ…まさか…!!『ヌメロン・ピース』が!?」

 

【ああ、()()だ】

ズァークを倒し、絶望の中から救い出した日の事を思い出す遊海達…その中に答えはあった…!

 

 

 

【あの時点で『ヌメロン・ピース』の使用権はARC次元を創世したズァークと遊海にあった…そして、未覚醒状態だったとはいえ『全能の欠片の片割れ』を持つ者2人が願いを…()()()()()()を口にした事で『ヌメロン・ピース』がその願いを叶え、『ズァークの魂は白波遊海の子供として転生する』という因果を結んでいたのだ】

 

日本には古来から言葉には力が宿り、『言霊』となってその通りの事を起こす、という考え方がある……奇しくもその言い伝えは『全能』の力によって現実になっていたというのだ。

 

 

 

【無論、転生を経れば魂はリセットされ…新たな命として生まれ出るだろう…だが、ズァークの魂はあまりにも()()()()

 

「……人間からバリアンに転生した俺達みたいに、前世の記憶と()を取り戻す可能性がある、って事か…!?」

 

【その通り……しかも、両親である遊海と翠は別世界から来た()()()()()()だ……その因子を受け継いでいるのならば、遊嗣は───】

 

「まさか……人類の敵として…()()()として目覚めてしまうかも、しれないって事ですか…!?」

 

「「っ…!?!」」

 

【ああ…無論、可能性の中での話になるがな】

 

「っ…そんな…!遊嗣…!!」

 

「ママ…ギュウギュウいたいよ〜?」

本来、転生した魂は前世の事を忘却し、まっさらな生命として生まれ直す……しかし、精霊4体の魂を受け止める器となってデュエルモンスターへと変貌し、さらに榊遊矢・ユート・ユーゴ・ユーリの4人に分割・転生しても自我を失わなかったズァークの魂の強さはアストラル世界へ導かれるランクアップした魂…それ以上の強度があるだろう。

 

そして、その肉体は遊海と翠の遺伝子と『異界からの転生者』としての因子を色濃く受け継いでいる…それにより【闘争の人類悪】が復活する可能性がある…ドン・サウザンドはそれを告げる為に彼らを呼び寄せたのだ。

 

 

 

【まぁ、今の遊嗣は見た通りの子供に過ぎん…我の考えが杞憂に終わるという事もあるだろう…だが、()()()という事もある故な…我なりの()()()という奴だ】

 

「何が、気遣いだよ…!弟が…遊嗣が人類の敵になるかもなんて言われて…どうしろって言うんだ!!」

 

「っ…落ち着いて凌牙!!…遊嗣が怖がるわ…」

 

「にぃに…こわい…」

 

「っ…!!!……ごめんな、遊嗣…大きな声を出して……」

ドン・サウザンドの言葉を聞いて凌牙は取り乱すが、それを璃緒に諌められる…翠の腕の中で遊嗣は不安そうな表情をしていた…。

 

 

 

 

 

 

「はぁ…なんだ、()()()()を言う為に俺達を呼び出したのか?本当に()()()()()()()ドン千…遊嗣、ほらおいで…」

 

「パパ〜…」

 

「遊海さん…」

 

「父さん…?」

そんな中、今まで平静を保っていた遊海が遊嗣を抱き寄せる…おそらくは()()()()()()()()を受けながらも、遊海は穏やかに笑っていた。

 

 

 

 

「まったく…()()()()()さ、どんな事があっても──遊嗣は俺達の大切な…本当に大切な()()なんだから……な〜?」

 

「ん〜?…えへへ!ぎゅう〜!」

 

「遊海さん…!」

息子がズァークの生まれ変わりと知っても、遊海は穏やかに笑っていた…遊海が遊嗣に向ける()()は決して揺らがなかった。

その証拠に遊嗣は先ほどまでの不安そうな表情が嘘のように、満開の笑顔で遊海に抱きついていた…。

 

 

【ふん…遊嗣の運命を知ってなお、それを受け入れるというのか?本当にお前はお人好しだな、遊海】

 

「お前…今更、何を言ってるんだ?俺と翠は凌牙と璃緒がバリアンの生まれ変わりだと知ってて親になったんだぞ?それなのに息子がズァークの生まれ変わりだった…なんて言われたから態度を変える人間だと思うのか?……むしろ、()()したいぐらいさ」

 

【ほう?】

あっけらかんとドン・サウザンドの言葉に答える遊海…むしろ、その表情は嬉しそうだった。

 

 

 

「感謝…?ズァークに、か…?」

 

「ああ、あいつが消える時に約束したんだ…『今度は1対1でデュエルをしよう』って…世界の命運も誰かの評価も関係ない、心の底から笑える楽しいデュエルをしようって……あいつは約束を果たす為に俺達の息子に生まれ変わってくれたんだ…こんなに嬉しい事があるか?なぁ?」

 

「遊海さん…そうですね!ズァークは人類悪、なんて言ったのはマーリンさんの言葉遊びだったらしいですし!今の遊嗣には関係ないもんね〜?」

 

「むぎゅう」

 

「「えー…」」

 

【はぁ……子煩悩、ここに極まれり…といったところか…】

 

《フォ〜ウ…(うん、遊海と翠の平常運転だ…)》

遊海が嬉しそうだった理由…それは、かつてズァークと交わした()()を果たせる事に気付いたからだった…その様子を見ていた翠も今までの事を割り切り、遊海と一緒に遊嗣の事を抱きしめる。

そんな2人の姿を見た凌牙と璃緒は苦笑し、ドン・サウザンドも呆れ果てていた…。

 

 

 

「……まぁ、冷静になってみれば…俺達も人間界の敵だったもんなぁ……今更か?」

 

「確かにそうね…ふふっ…世界最強の転生者の父さんと母さんに、バリアンから生まれ変わった凌牙と私…そしてズァークの生まれ変わりの弟……まさに最強で無敵の家族ね!誰にも負ける気がしないわ!ね〜?」

 

《フォウ〜!!(みんなー!ボクも忘れないでー!)》

 

「おっと…大丈夫、忘れてないよ」

 

「むてき〜!」

 

【……家族揃って前向きな事だ】

そして…凌牙と璃緒も自分達の「やらかし」を思い出しながら遊嗣の事を撫でる…元々が()()()の白波家にズァークの魂を受け継ぐ遊嗣が加わったとしても、そんなに変わらないと気が付いたからだ…。

 

そして、そんな楽しそうな家族の輪の中で遊嗣は無邪気に笑っていた…。

 

 

 

 

「んー…遊嗣がズァークの生まれ変わりなのは問題ないとして、この子が不意に()()しちゃうと…みんなに迷惑掛けちゃうか…?アヤカ、フレアどう思う?」

 

《マスター、あなたという人は……コホン、今の遊嗣からはズァーク──人類悪たる「覇王龍」の兆しは感じられません、それこそ遊矢達…「四天の龍」との共鳴や、生命の危機のような()()()()に遭遇しない限り、彼が本当の意味で目覚める事はないはずです》

 

《念の為、彼…ズァークと関わりのある『ペンデュラム召喚』を見せる事も避けた方が良いでしょう…あとは今まで通り、普通の子供として育てていきましょう…それがユウジの為になるはずです》

 

「そうだよなぁ…となると、しばらくはARC次元に遊嗣を連れて行くのは避けた方がいいか…遊戯や遊希達には申し訳ないけど…まぁ、向こうから来てもらう分には大丈夫か…?」

遊嗣のこれからについて精霊達に助言を求める遊海…そして、2人の言葉から遊嗣…引いては彼の中に眠る『覇王龍』を目覚めさせない為に対策を取る事を決める。

 

 

 

「まぁ、なんにせよ!遊嗣が事件に巻き込まれる事は絶対にないし…命の危機なんて絶対にさせない……それが俺のやるべき事さ…な〜?うりうり〜!!」

 

「きゃはは!」

 

【フン…優しさ───やはり、それがお前の一番の強さだな、遊海よ】

穏やかに、しかし力強く遊嗣を守り育てる事を誓う遊海…そんな遊海の『父親』としての姿を見ながら、ドン・サウザンドは小さく口元を緩ませた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊嗣、俺達を選んでくれて…俺の息子になってくれて…ありがとう」

 

「えへへ〜!パパ大しゅき〜!」

 

「えー!?遊海さんばっかりずーるーい〜!遊嗣!ママは!ママの事は!?」

 

「ママも大しゅき〜!!

 

「やった〜!遊嗣!ありがとう〜!!」

 

 

 

これは新たな『転生者』の始まりの物語…悪しき魂を宿した彼の道行きは光の道か、あるいは──闇の中か…。

 

 

全ての運命が動き出すのは、それから十数年先の未来の事だった。

 

 

 

Episode:Yu-Z──白波遊嗣 Re:オリジン──

 

 




スペシャルマテリアルが解放されました。
 

●白波 遊嗣

アバター 黒スーツ→魔術礼装カルデア風制服
(首元のフィニス・カルデアマークが『聖剣のネックレス』に変わっている)

イグニス編では謎の存在に奪われた遊海の意識データを取り戻すべく、遊作達と協力しイグニスを捜索していた。



遊嗣の前世──それは、ARC次元における総力戦で伝説の決闘者達に倒され、遊海によって浄化された『覇王龍ズァーク』…『善の魂』である遊矢達から分かたれた『悪の魂』の生まれ変わり。

彼の最期の言葉──「もっと早く遊海に逢いたかった」という想い。
そして、遊海がそれに答えた『輪廻の先で待っている』という言葉を2人に宿っていた『ヌメロン・ピース』が聞き届けていた結果、その魂は遊海と翠の子供へと生まれ変わる因果が結ばれていた。


破滅の光・ライトニングの覚醒…そして、遊海への憑依を確認したロマンが対抗手段として遊海によって封印されていた『覇王龍』デッキを遊嗣に渡した事によって前世の記憶に覚醒する。
そして、『覇王龍ズァーク』の召喚が近づく事によって暴走しかけるが……マシュの献身によって暴走を克服、その圧倒的な力でライトニングを一蹴し遊海を救い出した。

なお、『覚醒』の余波は現実世界にまで及び…デンシティ全域で天変地異が発生…窓ガラスが割れる、道路が陥没するなどの被害を引き起こしてしまった。


劇中の『伝説の決闘者』達は全員、遊嗣がズァークの生まれ変わりである事を知らされている…故に、遊嗣が事件に巻き込まれたと聞いた時には全員が肝を冷やしていた。
また、遊海達はふとした事からの遊嗣の『覚醒』を防ぐ為にアストラル世界やARC次元、ペンデュラム召喚の存在を遊嗣に対しては隠し続けており…少なくとも、遊嗣が高校を卒業するまでは隠し通す予定だった。

また、遊嗣が「手に馴染む」と言って使っていたデッキもズァークとしての影響を受けており、彼の正体への伏線となっていた。

『アーティファクト』→ソリッドビジョンでプレイヤー自身が戦う
『魔妖』→『畏れ』を力に変える
『真紅眼』→『覇王龍』と似通った『黒き竜』であり、『可能性の極致』
『斬機』→多数の召喚法を扱い『進化』するデッキ




◆遊嗣魔人体

魂のカードたる『覇王龍』を手にした遊嗣が心の闇によって【人類悪】としての側面に引っ張られてしまった半人半精霊の暴走形態。
姿のイメージとして魔人化した遊矢+藤丸立香(男主人公)

この姿のままデュエルが進んでいた場合、『アストログラフ・マジシャン』や『覇王龍ズァーク』はアニメ版効果へと書き換わり…白波遊嗣としての自我は消滅、名を失った『悪魔』は世界を滅ぼす者として全てを破壊し尽くしただろう。




◆覇王覚醒状態

遊嗣が自分の前世…『覇王龍ズァーク』としての力を受け入れ、開放した覚醒形態、瞳の色が金と碧のオッドアイへと変化する。

なお、この姿における『覇王』とは全てを力で薙ぎ払う『暴君』を指す言葉ではない。
『正しき闇の覇王』である遊城十代と同じ『生命の輝きを守る、闇の力を正しく使う者』としての『覇王』である。

また、元『人類悪』=人類の繁栄を願う『人類愛』であった事から、全ての生命の破滅を願う『破滅の光』の影響を受けた存在に対して異常な敵意を向ける原因となっていた。


なお、この覚醒によって能力の大半を封印されていた遊嗣は真の意味で「全力」を出せるようになった。
具体的には現実世界・リンクヴレインズでの「精霊」の召喚、遊海に次ぐレベルの回復魔法の行使、生身でコンクリートを砕き、100mを8秒台で走り、20mの高さの跳躍などなど…『運命に愛された決闘者』に相応しい力を得た。




 


・聖剣のアクセサリー

蚤の市の青年…もとい、花の魔術師たるマーリンが遊嗣に手渡したマジックアイテム。
聖剣部分は単なる()()()、多少の魔力が込められた『星の聖剣』を模したアクセサリーに過ぎないが、問題はその()にある。

それはこの世界に現存していた、アーサー王伝説に登場する聖剣エクスカリバーの『魔法の鞘』──現存する宝具『全て遠き理想郷』そのものである。
(遊海のとある記憶を覗き見たマーリンが千里眼によって隠し場所を見通し、折を見て探し当てていた。)

型月世界の原典通り、持ち主に超回復能力や不老不死の力を与える事が出来るが…『担い手』たる存在との繋がりが無ければ、持ち主の治癒力を促進させる程度に留まる。

しかし、マーリンはその問題を解決する為の手段を用意していた…全ては『最善』の結末を見届ける為に──。



・円卓の盾のアクセサリー

マーリンがマシュの為に作ったマジックアイテム、このアクセサリーには原典と同じく『騎士王の円卓』…その小さな欠片が仕込まれている。

そして、このアクセサリーと遊嗣の内包する大きな力の影響を受けたマシュは『精霊の力』に覚醒…それによって『精霊』としてアルトリア・ペンドラゴンを召喚する事ができた。

さらに、有事に備えてマーリンによって構築された宝具級のスキルプログラムが仕込まれていた。
  




●マシュ・キリエライト

アバター カルデア職員風白衣→決戦用カルデア制服(首元には円卓の盾のアクセサリーを着けている)

遊海の意識が奪われ、それを取り戻す為に戦う遊嗣の隣に居続けた『献身の少女』

そんな彼女は強力な力を内包した遊嗣とマーリン謹製のマジックアイテム『円卓の盾』の力によって『精霊の力』に覚醒…そこへ翠から遊海の使っていた『聖騎士アルトリウス』シリーズのカードを託された事で『英霊』にして『精霊』たるアルトリア・ペンドラゴンを召喚する事に成功した。
なお、彼女の目覚めた『精霊の力』は遊海達のような戦闘力特化ではなく、龍可に近い「モンスターとの対話・意思疎通」に特化したタイプ…距離の近い人間にはテレパスのような使い方もできる。

遊嗣の中に眠る『覇王龍ズァーク』の覚醒にあたってはマーリンの助言とアルトリアのサポートを受け、苦しむ遊嗣を救う為に荒れ狂う闇の嵐へと飛び込み…遊嗣への『愛』を伝える事で遊嗣が【闘争の人類悪】ではなく、『正しき闇の覇王』として覚醒する為の大きな力となった。


なお、マシュが遊嗣を追ってミラー・リンクヴレインズに向かわなかった、またはミラー・リンクヴレインズでの戦いで消滅してしまっていた場合…遊嗣は自我を失った状態で【闘争の人類悪】と化し、遊海ごとライトニングを鏖殺。
その後、ボーマンや遊作達、無辜の人々ごとミラー・リンクヴレインズ、リンクヴレインズを破壊し…現実世界で近くにいた翠達に重傷を負わせながら『覇王龍ズァーク』が顕現……『第二次覇王龍の乱』が発生。

その後、再びDenCityを壊滅させた【闘争の人類悪】は凌牙や遊馬によって討ち取られる…という最悪の未来が待っていた。





スキル「いまは遥か理想の城」

マーリンが遊嗣とマシュを守る為を開発した『宝具』級スキル、「円卓の盾のアクセサリー」に付与される形でマシュのスキルとなっていた。
マスターデュエル・スピードデュエルの双方で発動できる。

①自分フィールドにカードが存在せず、相手が自分にダメージを与える効果を発動した時、または直接攻撃を宣言をした場合に発動できる。
自分のLPを半分払う事でこのターンに自分が受ける戦闘・効果によるダメージを0にする。

発動時はマシュの「円卓の盾のアクセサリー」が巨大化、白亜の城の幻影と共に自陣を包み込む。




☆アルトリア・ペンドラゴン

『聖騎士アルトリウス』の精霊──として『理想郷』から召喚に割り込んだ『英霊』──『アーサー王伝説の騎士王』本人。
遊海達の世界において、騎士王は男装の麗人だったようだ。
(この時、マシュの持つ「聖騎士アルトリウス」シリーズのイラストはアルトリアの姿に書き換わっている)

基本的説明・性質はFGOなどのセイバー霊基の設定に準ずる…高潔にして正々堂々とした(負けず嫌いで健啖家な)騎士達の王。


マーリンから話を聞かされていた『現代の英雄』である白波遊海が危機に陥った事と『人類悪』並びに『破滅の光』が同時に出現する予兆を感じ取り、本来召喚に応じるべき『聖騎士アルトリウス』を押しのけ、マシュの精霊として現界した。

その目的は星を滅ぼす存在である「破滅の光」の討伐…並びに【闘争の人類悪】たるズァークの討伐ないし無力化……それ故に遊嗣に情が移らないように冷たい態度を取っていた。


電脳世界であるリンクヴレインズにとって「イレギュラー」であるその聖剣の一撃はデュエル外の有象無象を蹴散らすだけの威力を持ち、星を滅ぼす存在である「破滅の光」に対しては凄まじい特攻能力が付与される。

『聖騎士アルトリウス』→FGOの第一再臨
『聖騎士王アルトリウス』→第二再臨(風王結界霊衣)
『神聖騎士王アルトリウス』→第三再臨




●クロ

容姿 黒い毛並みのフォウ君、赤い目をしている。

リンクヴレインズで遊海の手掛かりを探す遊嗣達が見つけた謎の電脳生物…フォウに似た姿をしているが、本人(本猫?)とは無関係の存在らしい。
リンクヴレインズの『アバター』やサイバース族のモンスター…という訳ではなく、言語・発声データが壊れているのか『ふぉう』としか喋れないようだ。
性格はフォウに比べると頑固…というより気難しく、声は少し低い。


その正体はライトニングによる遊海の意識データ誘拐から偶然逃れる事ができた遊海の闇人格・ユウスケの意識データがフォウの似姿に変化してしまったモノ……遊海の意識データが奪われた際にフレアやトフェニが妨害した事で逃走中のライトニングの手元からデータが零れ落ちたらしい。

言葉を喋る事も、肉体に戻る事も出来ずにリンクヴレインズを彷徨っていた所を奇跡的に遊嗣達に保護された。

戦闘能力は完全に失われているが…その身を犠牲にする事で電脳世界に存在しなかった『No.∞』をリンクヴレインズへと顕現させた。

 
例え、誰も知らないとしても…もう一人の『父親』として、大切な息子を守る為に──




●ズァーク

白波遊嗣の『前世』であり、様々な要因が重なった事で『悪魔のデュエリスト』として望まぬ形で歴史に名を刻む事になってしまった哀しきデュエリスト…その残留思念。

普段は遊嗣の精神世界の最奥…深層意識の奥底で『覇王龍ズァーク』として眠り続けていた。
(千里眼で事情を知るマーリンが時々様子を見に来ている)


遊嗣対ライトニング戦の中、「心の闇」を乗り越えた遊嗣に自分が本当にやりたかった事──『みんなが楽しめる、笑顔になれるデュエル』を伝え、遊嗣と同化する事で彼を『正しき闇の覇王』として覚醒させた。

ズァークは前世から新世代の『覇王』としての資質を持っていたが…全てのタイミングのかみ合わせが悪く、その結果『覇王龍』として世界に牙を剥く事になってしまった。
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