転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話   作:S,K

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お久しぶりです…S,Kです…大変、大変長らくお待たせしてしまいました…申し訳ありません…!!

遊嗣とライトニングとの決着を書いた事で持病の「燃え尽き症候群」が発症してしまった上に、私生活・仕事の忙しさが凄まじく、執筆時間が取れませんでした…。

しかし、私のストレスゲージが限界突破した事で…ようやく、執筆の神様が降りてきてくれました。


それでは…最新話をどうぞ!!


最終決戦─独善的な理想郷(ディストピア)

『臨時ニュースをお伝えします、午後7時頃、DenCity周辺を震源とする震度5強の地震が発生しました、この地震による津波の心配はありません…この地震により道路の陥没や、それに伴う水道管の破裂、モーメント発電所の緊急停止、ビルの窓ガラスが割れるなどの被害が報告されています…DenCityではこれ以外にも大粒の雹が確認されていると共に大雨・洪水警報、暴風警報、竜巻注意報、雷注意報などが発令されており、注意が必要です…続いて壊滅的な障害が発生しているリンクヴレインズについて─────』

 

 

 

 

「遊海さん……遊嗣……ああ────」

 

「っ──!?母さん!?大丈夫!?母さん!!」

 

「…大丈夫、気を失っただけだ………遊嗣が破滅の光を倒して、父さんも解放されたから気が抜けたんだろ──まぁ、外は()()()()が起きまくって大変な事になってるが……遊嗣が()()して、このくらいで済んでるならラッキーな方だな…」

 

現実世界・遊嗣の病室…復活した破滅の光・ライトニングと自身の前世を受け入れ、新たなる「覇王」として覚醒した遊嗣の対決…そして、破滅の光の討伐を見届けた伝説の決闘者達や翠達は一連の事件の最終局面を前にほっとした空気に包まれている。

しかし、それで気が抜けてしまったのか…遊嗣やマシュに回復魔法を使い続けていた翠は静かに倒れ込んでしまった。

 

なお、街は『覇王龍ズァーク』の覚醒によって次元の歪みが発生…その影響による地震・竜巻・暴風雨・赤雷・雹などの天変地異に見舞われていた…。

 

 

 

「シャーク、遊嗣達の事はオレが見てるから…翠さんを休ませてやってくれよ」

 

「ああ…サンキューな、遊馬…父さんの病室に簡易ベッドがあるから寝かせてくる」

 

「車椅子があるから使わせてもらおう、手伝うぜ」

 

「十代さん…ありがとうございます」

そして、気を失ってしまった翠を介抱する凌牙と十代…そんな時───

 

 

『凌牙…それに、先代決闘王・九十九遊馬…キミ達は、知っていたのか?遊嗣君が、()()ズァークの生まれ変わりなのだと…!?』

 

「──ああ、俺達はずっと知ってた……その上で、父さんや母さんは遊嗣を『普通の子供』として育てる事を決めた…遊嗣の前世がどんな存在だったとしても───こいつは…俺達家族の大切な()()なんだ」

 

「へへっ…だよな!遊嗣が生まれて、遊海もすごく丸くなったもんなぁ…オレはずっと遊嗣なら自分の力を使い熟せる日が来るって信じてたぜ!他の決闘者のみんなもな!」

 

「まぁ、その方法が『覇王』になるって事だとは思ってなかったけどな?本当にズァークも遊嗣も…運命に愛されたデュエリストって奴だぜ!」

 

『そうか……マシュ、お前は本当に──とんでもない子を好きになったなぁ…』

ランスローは凌牙達に遊嗣の真実について問いかける…そして、凌牙や遊馬、十代は穏やかに、明るく遊嗣について話す…その姿を見たランスローは優しく、マシュの頭を撫でていた…。

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

「プレイ…メーカー…」

 

「っ…プレイメーカーさんと、ボーマンのデュエル…!」

 

『ボーマン…5体のイグニスを取り込んだ彼は電脳世界における巨大構造体(ギガストラクチャ)になりつつある、電脳世界においては自分の()()()()()()が強さへと直結する…しかし、()()ではない…必ず突破口はある、ともっともらしい事を言ってみようか』

ミラー・リンクヴレインズ、花畑エリア…自分の真実を知り、心の闇を乗り越え…「覇王」として覚醒した事で破滅の光から遊海を解放する事に成功した遊嗣…。

 

全ての力を使い果たし、身動きが取れなくなってしまった彼やマシュの前で遊作とAi、そして5体のイグニスを取り込んだボーマンが対峙する…!

 

 

 

「いくぞ…ボーマン!!」

 

【いいや…その前に、最後を飾る場所として()()()()()()()()に場所を移そうではないか…!】

 

キィン!

 

「っ…プレイメーカー…!Ai…!?」

 

「2人とボーマンが消えた…!?」

 

《どうやら、ミラー・リンクヴレインズの街中…中心部に場所を移したみたいだね》

ついに訪れた決着の時…それを前にボーマンは遊嗣やマシュをその場に残し、遊作達と共に何処かへと転移してしまった。

 

 

 

「っ……いかなきゃ…力には、なれなく…ても……プレイメーカーの、戦い、を……動いて…動いてよ…!ぼくの、から、だ…!」

 

「遊嗣さん…」

 

《Yu-Z、マーリンも言っただろう?きみはもう()()なんだ…今までの戦いはきみの限界を超えてる…もう休んでいいんだ…後はプレイメーカーとAiに託そう》

転移した遊作とボーマンを追おうとする遊嗣…しかし、彼の体はピクリとも動かない…マーリンやロマンの言葉通り、遊嗣は全力──()()()()を出しきってしまったのだ。

 

 

 

「………ごめん……遊作、くん…Ai……負けない、で……───」

 

「………おやすみなさい、遊嗣さん……わたしも…つか、れ……ねむ、く…───」

 

《おやすみ、2人とも…きみ達は本当によく頑張った…ゆっくり休んでいいんだよ……お疲れ様》

そして、存在感の塊たるボーマンが消えた事で最後の緊張の糸が切れてしまったのか…遊嗣はうつ伏せのまま眠りに落ち、マシュも彼に寄り添うように倒れ込んでしまうのだった…。

 

 

 

 

『しかし…()()というものは酷な事をするねぇ…この半日の間にどれだけの試練を遊嗣君に課すつもりなのやら…多数の兵隊(ビットブート)との連戦からネームレスの再現体との命懸けの戦い、前世の自覚による暴走…遊海君を乗っ取った破滅の光との運命の決闘……遊海君でもここまでの規模の連戦はした事ないんじゃないかな?』

 

《でも、その全てを遊嗣とマシュは乗り越えてみせた…彼は見事に運命を乗り越えたんだ、すごい事だよ》

眠ってしまった遊嗣とマシュに喚び出した毛布を掛けながら、マーリンがやれやれと言った様子で呟く。

 

この数ヶ月で遊嗣が巻き込まれた試練は遊海や歴代の「運命に選ばれた決闘者」達に比べても遜色ないものばかり……その全てを乗り越えた遊嗣はまさに「運命に愛された決闘者」と言えるだろう…。

 

 

 

『さて……それで、ロマン…キミはどうするんだい?キミの使()()を果たしにいくのかな?』

 

《うん……父様と母様はその為に僕に力を与えてくれた……任された役目をしっかり果たさないと…騎士王、2人の事を頼みます》

 

《ええ、こちらは大丈夫でしょう……貴方の役目を果たしてください、ロマン》

 

《ありがとう……行ってくる!》

そして、行動不能になってしまった遊嗣達をアルトリアやマーリンに任せたロマンは遊嗣のデュエルディスクから飛び出すと遊作達の戦う場所へと向かっていった…。

 

 

 

 

 

キィン!

 

 

「ここは…」

 

《セントラル・ステーションのある広場か…!!》

 

【そうだ、リンクヴレインズの中心…ここを決着の舞台としよう】

そして…ミラー・リンクヴレインズの中心部に転移させられた遊作とAiはボーマンと対峙する…その様子を見守る者たちと共に…。

 

 

 

Side???

 

 

 

『────なんという、戦いだ……』

 

『ええ……まさか、Yu-Z君が「覇王龍ズァーク」を喚び出すなんて……これ、下手に情報が出回ったら大騒動よ…?』

本物のリンクヴレインズ…そのコントロールルーム…晃とゴーストガールは呆然としていた。

 

リボルバーとライトニングの戦いの中で明かされた一連の事件の真相…そして、リボルバーとの相討ち状態から復活し、ライトニングと鋼の騎士(白波遊海)を傀儡としてYu-Zと衝突した「破滅の光」なる存在。

……そして、電脳世界で復活した災厄の化身──『覇王龍ズァーク』…怒涛の展開の連続で2人はキャパオーバー寸前だった…。

 

 

 

「お前達!呆けている暇はないぞ!この局面、ボーマンとやらは何かを仕掛けてくるだろう…警戒を怠るな!」

 

『カイバーマン…貴方は、知っていたのですか?彼が──』

 

「フン──()()()、覇王龍の乱に参戦した決闘者達は皆、あやつの事情を知っている……だが、もう案じる必要はない!Yu-Zは希望を手に、自らの闇を乗り越えたのだからな!…そんな事より、目の前の最終決戦に注目しろ!」

しかし、そんな晃とゴーストガールにSOLの司令室から瀬人が激を飛ばす…彼はYu-Zの覚醒を目の当たりにしても動じない。

 

オリジナルたる海馬瀬人はどう考えるかは分からないが──彼もまた白波遊嗣の可能性を信じていた1人だったからだ。

 

 

 

『……ここまで、たくさんのデュエリスト達が倒れていった…GO鬼塚、ブラッドシェパード…スペクター、ソウルバーナー、リボルバー…そして、ブルーメイデン……生き残ってはいるけど、Yu-Zと……マシュという女の子も死力を尽くして戦ってくれた……彼らの犠牲や奮闘を無駄にしない為に…私達も手をこまねいている訳にはいかないわ…!』

 

『っ……ゴーストガール…そうだな…!!』

そして、仕事人としてゴーストガールは意識を切り替える…ミラー・リンクヴレインズで奮闘し、犠牲になっていった者達の想いを無駄にしない為に…その言葉を聞いた晃も気合いを入れ直す…!

 

 

『まずは、リンクヴレインズに閉じ込められているこの状況をどうにかするのが先決ね……かと言ってログアウトシステムは使えないけど…』

 

『──なら、リンクヴレインズのシステムをハッキングして…一度、全てのシステムをダウンさせて再起動してみよう…!』

 

『正気!?そんな事をしたらここにいる全員が予期せぬ強制ログアウトで大きな精神ダメージを負うかもしれないのよ…!?』

 

『わかっている…だが、このままでは何も変わらない…!やるしかないんだ…!』

そして、晃とゴーストガールは事態を解決する為にハッキングを開始した…。

 

 

 

「……アヤカ、聞こえているな?」

 

《ええ、状況は把握しています》

リンクヴレインズで奮闘する晃とゴーストガールの姿を見ながら…瀬人は彩華へと連絡を飛ばす…。

 

 

 

()()()()?」

 

《ボーマンはおそらく、リンクヴレインズに捕らえた人々を利用して…()()をするつもりでしょう……今までの動きから予測するならば────リンクヴレインズにアクセスした人々の意識データを外付けの()()()()として使い、強力なデータストームを発生させ、【ストーム・アクセス】で新たな切り札を創造する……というところかと》

 

「ちいっ…!人間の意識を束ねた演算だと?そんなモノ、かつてのプラナとやらやダークネスの二番煎じではないか!!」

そして…彩華はボーマンが取りうる()()を予測する、それは遊海と数多の戦いを乗り越えてきた『()()()()』としての演算結果だった。

 

 

「対処は可能か?遊海のデータはバラバラにされてしまったが…ボーマンの支配下にはないはず、お前の能力を縛る要因はなくなったはずだ」

 

《………もっとも手早く、簡単な方法は私が新生リンクヴレインズを破壊し、それによる強制ログアウトでデュエリスト達を電脳世界から弾き出す事ですが…財前晃達の手段と同じく、精神ダメージのリスクがあります……また、ボーマンが外部からの干渉を想定していないとは思えません……リンクヴレインズとミラー・リンクヴレインズ…2つの世界が重なっている事でプログラムの物理的な強度も上がっているでしょう……おそらく、ハノイの塔炸裂級の攻撃が必要になるかと》

 

「………それは、人が死ぬぞ」

 

《わかっています》

事態を解決する為の最短ルートを提示する彩華…それは被害を度外視した()()だった。

 

 

《故に……私は事態を見守るつもりです、先ほどの手段を実行するのは状況が()()になった時のみ……マスターも、意識があればそう判断するはずです》

 

「フン………「運命に選ばれたデュエリスト」──プレイメーカーに全てを託す、か……それが一番の()()かもしれん」

そして、彩華の結論に瀬人は目を閉じる…その脳裏では遊戯や十代、遊星や遊馬が乗り越えた()()()()()の光景を思い出していた…。

 

 

《それに……私はロマンを───()()を信じています、あの子があちらにいる限り、最悪の事態にはならないはずです》

 

「──────フッ、ずいぶんと()()()()()考え方をするようになったな、アヤカ」

 

《当然です…私はマスターの…白波遊海の相棒であり、ロマンの()()なんですから》

そして、最後にAIらしからぬ考えを伝える彩華…遊海達と共に戦いを乗り越え、曲がりなりにも母親になった彼女は……イグニス達とは別の形で人間のように()()していたのだった。

 

 

 

「それはそれとして…()()を掴むのが()()の旅路だ!お前ならボーマンの目を潜り抜けるハッキングなど朝飯前だろう?財前達に力を貸してやれ!」

 

《了解です…!フレア、マスターと翠の事は任せます》

 

《ええ…!今まで煮え湯を飲まされた分、少しでもやり返してやりなさい!彩華!》

最終手段の準備をしつつ、彩華はリンクヴレインズへとハッキングする───「最善を掴む」という遊海の想いを果たす為に…。

 

 

 

 

Side OUT

 

 

 

 

 

『せ、先輩…!ボク達も一緒に花畑から飛ばされて来ちゃいましたけど…どうなるんでしょう…!?』

 

『むぅ…どうなるもこうなるも…この()()がある限りはカメラを回すしかないだろう…!』

そして、今までのプレイメーカー陣営とライトニング陣営の戦いの実質的な「見届け人」となったカエルとハトの二人組…彼らも最終決戦を前に動揺していた…。

 

 

『だが…オレは正直、どんな形でも…この戦いを見届けたいと思うぜ…!この戦いを見届けられるなら、ここで命尽きても構わねぇ…それが、この戦いで消えていった…全てのデュエリスト達への()()だと思うんだ…!!』

 

『先輩…!!すごいジャーナリスト魂ッス!尊敬しちゃうッス!!』

 

『だってさ……約束したもんな、鋼の騎士…!リンクヴレインズで起きている事を、正しく伝えるってよぉ…!!気合い入れろ!ハト!!』

 

『ハイ!!どこまでもお供するッス─!!』

カエルとハトはここまで全ての戦いを見届けてきた。

 

 

スペクターとライトニングの『奪いあう戦い』

 

ソウルバーナーとウインディの『逆境を乗り越える戦い』

 

Yu-Z&マシュとシャドウ・ネームレスによる絶望を斬り裂く『奇跡の戦い』

 

ブルーメイデンとボーマンの『兄弟の絆の戦い』

 

プレイメーカーと謎のデュエリストの『約束の戦い』

 

ソウルバーナーとボーマンの『怒りの戦い』

 

リボルバーとライトニングの『真実を明かす戦い』

 

そして──Yu-Zと全ての元凶たる『破滅の光』による『希望を掴む戦い』 

 

 

互いに鎬を削り、信念を懸けた決闘を繰り広げてきたデュエリスト達…カエルが彼らに応える方法は───()()()()()()()()、それしかないと考えたのだ。

 

 

 

【ふむ…不幸にも巻き込まれただけかと思っていたが…キミ達にもそれなりの信念があったようだな……よかろう、もう戦いを映す必要もないが……世界の行く末をそのカメラに記録するがいい】

喧しく騒ぐカエル達に目を向けるボーマン…そんな彼はカエル達の覚悟に敬意を払い、彼らの首輪を取り除くと…遊作達へと向き直る。

 

 

 

 

【さぁ…この戦いに終止符が打たれると同時に、ここから()()()の扉が開かれる…】

 

「新世界だと…?ボーマン、お前はどんな世界を作り出そうとしているんだ…!」

 

【その答えは──この決闘と共に明かされるだろう】

 

「っ…?」

遊作とAiに対して新世界を作ると謳うボーマン…彼は自分が手にした力を解放する…!

 

 

【イグニス達よ…我が力となれ!】

 

キィン!!

 

「っ…取り込んだイグニス達の力を取り込み、新たなデッキを組み上げたのか!!」

 

《炎・水・地・風…そして光…5つのイグニスの力を持つデッキってわけか…!》

その身から力を解放するボーマン…彼の体から飛び出した5属性のシンボルがデュエルディスクに宿り、新たなデッキを構築していく…それと同時にリンクヴレインズ側でも異変が起きていた…。

 

 

 

 

Sideリンクヴレインズ

 

 

 

『っ…?あれは、イグニスアルゴリズムのプログラム…?』

 

『何が始まろうとしているの…!?』

民間人をリンクヴレインズから脱出させるべくハッキングを続ける晃とゴーストガール…その時、人々がごった返すセントラルステーションのある広場上空に緑色の光を放つイグニスアルゴリズムで組まれたプログラムが出現した…!

 

 

『嫌な予感がする…!急ごう!!なんとしても中枢にハッキングするんだ!』

 

『ええっ…!』

事態の新たな局面に2人はコンソールを叩くスピードを上げた…。

 

 

 

Side OUT

 

 

 

《くっ…ボーマン…ふざけやがって…!!お前がオレの仲間達の力を使うなんて許せねぇ…!オレ達はお前の()()じゃねぇんだぞ!!》

 

【道具ではない、既に彼らは()()()()…私はイグニスを1つにする為に作られた…私こそが、きみ達の力を最大限に発揮させる事ができるのだ】

仲間のイグニス達の力を使うボーマンに対して怒りを露わにするAi…しかし、ボーマンは動じない……イグニスを束ねた()()として、ボーマンは彼らの前に立ちはだかる…!

 

 

 

【では──始めよう…プレイメーカー、Ai…終焉となる戦いを──!!】

 

「いくぞ…ボーマン!!」

そして…人間とイグニス、お互いの存亡を賭けた最後の決闘(デュエル)が幕を上げた…!

 

 

 

 

 

 

【「デュエル!!」】

 

デュエルダイジェスト Playmaker対ボーマン

 

 

 

ついに始まった最後のデュエル…当然の如く先攻を取ったボーマンは強化された『ハイドライブ』デッキを展開する…しかし、その展開は()()()だった。

 

『ハイドライブ』の定石である『ハイドライブ・ブースター』…そこからボーマンはLink-1の『グランド・ハイドライブ』…さらに2体目の『ハイドライブ・ブースター』から『クーラント・ハイドライブ』を喚び出し、Link-2の『ツイン・ハイドライブ・ナイト』に繋げたかと思えば…そのモンスターを素材としてLink-1の『バーン・ハイドライブ』に繋げる……意味不明の展開を見せるボーマン…しかし、その展開に遊作は嫌な予感を感じ取る。

 

 

 

「まさか、5()()()()()の『ハイドライブ』リンクモンスターを揃えようとしている…!?」

 

《いやいや…!そんな事して何になるんだよ?オレの知る限り、リンクヴレインズにLink-5のリンクモンスターは()()()()()はずだぜ??》

遊作の懸念…それは5つの属性を宿したLink-5の『ハイドライブ』モンスターの存在…だが、Aiはその考えを否定する──リンクヴレインズにはLink-5のリンクモンスターは存在しないはずだから────だが、それは……最悪の形で()()となる…!

 

 

 

【フッ…Ai、その程度の考えがきみの限界のようだな──()()()()()()()()()のだよ…!私にはそれができる…!!()()()()()!!】

 

《なっ、スキルだと!?》

手札を全て使い切り、5つの属性を持つ『ハイドライブ』モンスターをフィールドに揃えたボーマン…彼は掟破りの暴挙───マスターデュエルでの「スキル」を発動する!

 

 

 

─────!!!

 

 

「《っ…!?!?》」

 

()()()…!また、悲鳴が…!!」

その時、遊作とAiは頭を抱える…その理由……それはボーマンが動く度に()()が聞こえていたからだ──それも、()()()()()分もの…!

 

 

ゴウッ!!

 

 

《っ…なんて規模のデータストームだ!?!》

 

【ゆくぞ…!1()()()()()1()()!データストームからサイバース族モンスター1体をランダムに選択し、エクストラデッキに加える!来い!()()()()の下に生まれし新たなカードよ!!【マスターストーム・アクセス】!!】

凄まじい規模のデータストームがボーマンの手に集束…新たなモンスターをその手に導いた…!

 

 

 

【これで、全てが整った…現れろ!真実を極めるサーキット!召喚条件は──属性の異なるリンクモンスター5体!!】

 

「まさか…!!」

 

【リンク召喚!!現れろ──Link-5!!『キメラ・ハイドライブ・ドラグリッド』!!】

 

《り、Link-5だとぉ!?》

禍々しい赤き光が()()を呼び覚ます…それは5属性の力を宿す、7つの首を持つ多頭竜──攻撃力4000を誇る規格外のモンスターが現実となる…!

 

 

 

「っ…!!」

 

【『ドラグリッド』の効果発動、このカードがエクストラデッキから特殊召喚された時、ハイドライブ・カウンターを1つ置く】

 

《マジでLink-5を喚び出しやがった…!?コイツ、本当にオレ達より()だってのか…!?》

 

《いや…ボーマンはズル…()()()を使っているよ、あまりにも()()()()な手をね…!》

 

《っ…ロマン!お前1人か!?Yu-Z達は…!?》

 

《遅くなってごめん2人とも、Yu-Zとマシュはリタイアだ》

存在するはずのないリンクモンスターを前に狼狽するAi…その時、ロマンが彼らのもとに合流する。

 

 

《しかし、チートって…いや、マスターデュエルでスキルを発動してる時点でだいぶ無茶してるけど…!?》

 

「非()()()…無数の悲鳴………っ!?ボーマン、まさか…お前は!!」

 

【ようやく気付いたか、プレイメーカー…その通り、先ほどからきみ達に聞こえていた()()…その声の主は──新生リンクヴレインズにいる人間達の()()だ】

 

《リンクヴレインズの…!?》

 

「いったい何をした!!」

 

【フッ…()()()()()()()()()…それが、私の開発した()()()()()()()だ!】

ロマンの言葉から()()の可能性に至った遊作…その姿を見たボーマンは自身の頭上に輝く光球を指し示した…!

 

 

【ニューロン・リンク…それは人の脳が持つ能力を極限まで引き出し、利用する】

 

《あのデータストームはそれを利用して…だけど、あんなデータストーム…!》

 

《そうだ、人間1人ではあんな規模のデータストームは起こせない…何十…何百、何千……何万もの人々による演算が必要になる…!!》

 

【その通り…何万という人々の演算能力…彼らの思考領域は私の力となる!!このLink-5のモンスターはその人間達が生み出したモンスターだ!!】

 

《おい、待てよ…そんな事したら…!?》

 

《その通りだよ、Ai……リンクヴレインズは大騒ぎになってる…!ボーマンのプログラムがリンクヴレインズに閉じ込められた人々に襲い掛かり、廃人になりかねない負荷をみんなに掛けているんだ…!!》

 

「《っ…!!》」

ロマンの言葉に遊作とAiは息を呑む…新生リンクヴレインズに現れたニューロン・リンクは人々の頭を貫き、彼らを生ける屍と化していたからだ…!

 

 

《ボーマン!!お前、言ってる事とやってる事が()()してるぞ!!》

 

【矛盾だと?】

 

《お前…ライトニングが草薙の弟を盾にした時、()()だって言っただろ!?お前のやってる事だって()()()()()()()じゃねぇか!!リンクヴレインズに人間を閉じ込めて脳の力を使い潰すなんて──!!》

ボーマンの所業を聞いたAiが声を荒らげる…しかし、ボーマンの答えは───

 

 

【フッ…()()()()()

 

 

《なんだと…!?》

 

【ライトニングは草薙仁や白波遊海を盾にリボルバーやYu-Zの戦う力を封じようとした…だが、()()()()()()()()()()

 

《────はっ…?》

 

【ニューロン・リンクはあくまでも()()()()()()()に過ぎない、ライトニングと一緒にされるのは()()だ】

 

《ふ、ふざけんな!?意識を奪われた人間はどうなる!?()()()()()()じゃねぇか!!》

 

()()()は違う──彼らは()()()()として()()を生き続ける…私という()()()の中で全てが統一され、私の意思に反映されるのだ】

 

「ボーマン…!それが、お前の目指す()()()か…!!」

 

《お前だけいりゃ良いってのか!?そういうのを()()()って言うんだ!!》

 

【独裁?それは品位に欠ける表現だが──世界は私の下で1つとなる】

 

《り、理解できねぇ…いや、()()()()()()()()!!》

世界中の人間全ての意識を自分の下に統一すると宣言するボーマン…その実、彼の成そうとする事は理想郷(ユートピア)の正反対───暗黒郷(ディストピア)を齎す事にほかならない…!

 

 

《話すだけ無駄だよプレイメーカー、Ai……彼はライトニングに作られた存在──今の性格がプレイメーカーとの戦いを学習して構築されたモノだとしても、その根幹にはライトニングと同じくAI…()()()()()()()()と言える思考がある…『進化したイグニスたる自分が性能で劣る人間達を支配して当然』……そう思っているんだろう?》

 

【フッ…よく理解しているではないか、ロマン…私はこれでターンエンド……私がこのデュエルに勝利すれば、ニューロン・リンクで瞬く間に世界のネットワークを掌握し…世界の人間全てが私の意のままになる】

 

《───『井の中の蛙大海を知らず』……キミにはこの言葉を贈ろう…この場にマスターや遊馬君がいない事に感謝するんだね》

 

【っ…?(なんだ?この感覚は?──()()?5体のイグニスを取り込んだ私が…イグニスの模造品に?…そんな訳はない、気のせいだ)】

Link-5のモンスターを喚び出し、既に勝利を手にしたつもりでいるボーマンをロマンは静かに睨みつける……その視線にボーマンは微かな違和感を覚えた…。

 

 

 

 

《くっそ〜…!Link-5を喚び出して()()気取りかよ…!》

 

《2人とも落ち着いて…デュエルモンスターズには()()の存在なんて存在しない……エジプトの破壊神だろうと、全てを虚無に沈める邪神だろうと、はるか未来の英雄だろうと…混沌の神や荒ぶる()()()であったとしても…歴代の決闘者達(デュエリスト)はそれを乗り越えて未来を掴み取ってきた…!人間とイグニス…きみ達の繋ぐ可能性はきっと、勝利への方程式を導ける!!》

 

「ロマン…そうか、お前は………その通りだ、例えLink-5のモンスターが相手でも──対抗策はある!!」

ロマンの応援を聞いた遊作はデッキトップに手をかける…全てはボーマンを倒し、未来へのサーキットを繋げる為に…!

 

 

 

 

「紫電一閃!未知なる力が飛竜乗雲となる!シンクロ召喚!!降臨せよ!!『サイバース・クアンタム・ドラゴン』!!」

続く遊作のターン…高い攻撃力を持つ「ドラグリッド」に対抗するべく、青と白の装甲を纏う電脳竜が咆哮する!

 

 

《よーし…!『ドラグリッド』の攻撃力は4000…だけど、この『クアンタムドラゴン』ならバトルする時に相手モンスターをデッキに戻せる!これでどうだ…!!》

 

【フッ…残念だが、()()()()()()()()…!お前達のやる事などお見通しだ……()()()()()!!】

 

《なっ…!?》

 

《2回目のスキルだって!?》

ボーマンのモンスターに対する対策を取ることができたと思われた遊作達…しかし、ボーマンはその様子を嘲笑うように再びスキルを発動───人々の悲鳴と共に再びデータストームが集束していく…!

 

 

【見て感じるがいい…きみ達の想像を超えた私のデュエルを!!来い…我が意思の下へ!新たなるカードよ…!【マスターストーム・アクセス】!!】

再び発動されるボーマンのスキル…そして、データストームから新たなカードがボーマンの手中に導かれる…!

 

 

《おいおい…!そんなのアリかよ…!?》

 

《っ…どうやら、ボーマンは自身と同期したミラー・リンクヴレインズを介して鏡写しの存在である新生リンクヴレインズを掌握してる…だから、本来であればデュエル中1度しか使えない『スキル』の制限を無視して何度でも効果を発動できる…!ボク達は『ボーマン』というルールの敷かれた、彼の()()()()()()で戦っているようなものだ…!デュエリストとして…いいや、AIとしても風上にも置けない!!》

掟破りのスキル発動…それを見たロマンがボーマンを分析し、その答えを見つけ出す…遊作達は今、ボーマンの体内で戦っているも同然の状況だったのだ…!

 

 

【どうとでも言うがいい、これが私の力だ!『ドラグリッド』の効果発動!ハイドライブ・カウンターを1つ取り除き、サイコロを振る…そして、自身をEXデッキに戻す事で出目に応じた属性の『ドラグヘッド』リンクモンスターを特殊召喚する!ジャッジメント・ダイス!】

そして、ボーマンの手の中でダイスが転がる…示された属性は水属性…!

 

 

【出たのは水属性──現れろ!『キメラ・ハイドライブ・ドラグヘッド アクア』!!】

示された出目…それによって『ドラグリッド』の中央の首が引っ込み──水属性のシンボルが刻まれた首へと換装される…!

 

 

【『ドラグヘッドアクア』の効果発動!このモンスターのリンク先のモンスターの効果は無効となる…!】

 

「『クアンタムドラゴン』の効果が無効にされた…!」

さらに、水属性の首が持つ効果によって『クアンタムドラゴン』の効果が無効にされてしまう…。

 

 

「くっ…カードを1枚伏せて、ターンエンドだ…!」

 

【『ドラグヘッドアクア』のさらなる効果発動!自身をEXデッキに戻す事でEXデッキの『ドラグリッド』を特殊召喚!そして、特殊召喚に成功した事で『ドラグリッド』には再びハイドライブ・カウンターが乗る】

効果と攻撃を封じられターンを終える遊作…それと共に首が換装され、『ドラグリッド』がフィールドに戻ってくる…!

 

 

 

【フッ…きみ達が『クアンタムドラゴン』を召喚する事は分かっていた】

 

《なんでそんな事が分かったってんだ?》

 

【私は聞いたのだよ…多くの()を、ニューロン・リンクによって…!】

遊作達の一手を封じてみせたボーマンは得意げに語り始める。

 

 

リンクヴレインズに閉じ込められ、ニューロン・リンクに取り込まれた無数の人々…その意識の中にはプレイメーカーへの『憧れ』や『畏怖』『挑戦心』などの無数の意思が溢れている…それらの思考を束ね、遊作のプレイングを演算したのだと。

 

遊作が相手にしているのはボーマン1人ではない…数多の人々を同時に相手にしているのも同然の状況だったのだ…!

 

 

「っ…()()()()に利用する為に、人々を閉じ込めたのか!!」

 

《だけど、リンクヴレインズにいる人間にも()()がある…!お前が人間を使い続ければ必ず、限界が来るはずだ!!》

人々をモノのように使い潰そうとするボーマンの所業に怒りを露わにする遊作とAi…そして、ボーマンによるチートの限界を指摘したが…。

 

 

【それはどうかな?人間とは()()()()()の強い生き物だ…「覗いてはならない」「してはいけない」……それを()()のが人間の持つ()というものだ…!】

 

「っ…まさか、貴様…!ログアウトを妨害しても()()()()は止めなかったのか!?」

 

《っ…それじゃあ、ボーマンの奴は無尽蔵に強化されちまうって事じゃねぇか!?》

ボーマンは不敵に笑う…リンクヴレインズを襲う未曾有の事態は当然、大きなニュースとなっているだろう…しかも、その()()に入れるならば…()()()が集まるのは自明の理──ボーマンは人間の持つ()()()を利用した罠を作り上げていたのだ…!

 

 

 

 

 

《───それはどうかな?》

 

 

【なに…?】

 

「ロマン…?」

不敵に笑うボーマン…しかし、そんな彼に対してロマンが不敵な表情を見せる…!

 

 

【ロマン…イグニスの模造品、ミラー・リンクヴレインズに閉じ込められたキミに何が───?(……リンクヴレインズにログインしてくる人間達の人数が想定より()()()?いや…ニューロン・リンクに取り込んだ人数も───)】

パートナーたる遊嗣と離れた彼を下に見るボーマン…しかしその時、リンクヴレインズの異変に気付く…ボーマンの想定よりもリンクヴレインズにログインする人数も少なく、ニューロン・リンクに取り込んだ人数も想定より僅かに少ない事に気付いたのだ。

 

 

 

《ボーマン、お前は…お前達は()を敵に回したと思っているんだい?ニューロン・リンク…捕らえた人々を外付けの演算回路として使う事を()()()が想定していない訳がないだろう?お前は()()を──世界を守り続けてきた()()達を見くびりすぎだ!!》

ロマンは瞳を輝かせながらボーマンを睨みつける。

 

数万の人々対プレイメーカー1人?───そんなはずはない。

 

遊作は1人ではない…共に戦うAiがいる…リンクヴレインズでハッキングを続ける財前晃とゴーストガール、現実世界で解析を続けるハノイの三騎士……そして、事態を見守っていた()()達がいる!

 

 

 

 

 

 

Side???

 

 

「財前部長!カイバーマンさん!リンクヴレインズへの新規ログイン者が減っていきます!」

 

「フン──アヤカの想定通りか……()()()を残しておいて正解だったな」

 

『カイバーマン…いったい何を…!?』

SOLテクノロジー・管制室…そこでは腕を組んだ瀬人が早見からの報告を聞きながら画面を鋭く睨んでいた…彼はボーマンの罠を見抜き、次善の策を打っていたのだ。

 

 

 

「そう大した事はしていない…まずは状況、今の現実世界のDenCityは()()()だ…突然の地震に暴風雨…そのおかげで外に出ている者は少ない、しかも()()があると警戒すれば身動きが取れなくなるリンクヴレインズにログインする()鹿()も少なくなるだろう」

1つ…それは「覇王龍ズァーク」の覚醒による余波…天変地異によって街は大騒ぎ…この時点でリンクヴレインズにログインする()()がある者は半分程度になっていた、さらに──

 

「リンクヴレインズの障害は大きなニュースだ、人々の興味を惹くだろう…ならば、それを上回る()()で人々の目を釘付けにすれば良い……例えば、武藤遊戯対海馬瀬人──()()()の活躍する決闘を配信する……今の視聴人数は──全世界で3()0()()()程か…フッ…まだ少ないな」

瀬人はKCの動画チャンネルでかつての『バトルシティ』の記録映像を特別配信…さらに、次弾には不動遊星対Z-ONE戦や九十九遊馬対トロン戦なども控えている。

 

 

「そして…ニューロン・リンクか……これを解析するのはオレでも骨が折れる…だが、人々を守る術がない訳ではない───()()()()()()!進捗はどうだ!」

 

『大丈夫!対イグニス用スフィア・フィールドプログラムは正常に稼働してる!流石にリンクヴレインズ全域はカバーできないけど……セントラルステーション周辺くらいはカバーできる!ハノイの騎士のプログラムに感謝だね!ちょっと複雑だけど…』

 

「フン…餅は餅屋、イグニスにはハッカーだ…そのまま警戒と誘導を続けろ」

そして…混乱が続くリンクヴレインズには()()がいた…!

 

 

 

 

Sideリンクヴレインズ

 

 

『女性や子供を優先してセントラルステーションの近くへ!そこならあの光の矢は届かない!!』

 

『慌てるな!あの光に貫かれても()()()()になるだけだ!必ず目を覚ます!!』

 

『お前達は必ずログアウトできるようになる!故に、我らの指示に従ってくれ!!』

 

 

「わ、わぁ…!ありがてぇ!助かった〜!!」

 

地面に倒れ伏す人々の姿をつらそうに見つめながら…赤いサングラスを掛けたライダースーツの青年、逆立った髪の大柄な男、長い金髪をなびかせた男が生き残った人々を安全地帯──セントラルステーション付近に張られたスフィア・フィールドの結界へと誘導していく…。

 

 

 

『人間とAIの戦争…それがこの時代に、こんな形で起きる事になろうとは…』

 

『いいや、まだ()()()()()()()ではない…白波遊海や不動遊星の繋げた希望を、未来を…こんな所で断ち切ってはならない!!』

 

『遊海……大丈夫、この時代を──きみ達が幸せに生きる()を…絶望の時代になんかさせるものか!!』

かつて、絶望の未来を生きた三人の()()達は不気味に佇むミラー・リンクヴレインズを静かに睨んだ…。

 

 

 

Side OUT

 

 

 

 

 

【貴様…!何をした!!】

 

《ボクは何もしていないさ…お前は人間の──決闘者達が積み上げてきた叡智を過小評価していた……それだけの事だよ》

 

《ロマン…すげぇな、お前…今のボーマンをあんだけ取り乱させるなんて…!?》

 

《違うよ、Ai…すごいのはボクじゃない──数多の人々を繋いできたマスターの()の力だよ》

自身の究極のシステムを妨害されて激昂するボーマン…彼は()()達の動きを計算に入れていなかったのだ。

 

 

《でも…これはあくまで()()()()に過ぎない……原因であるボーマンを止めない限り、ジワジワと被害は広がってしまう……()()ボク達にできる事はこれが限界だ……頼んだよ、プレイメーカー…!》

 

「ああ…!」

最善のバックアップを整えていた遊海の仲間達…しかし、その支援はボーマンと対峙する遊作が敗れてしまえば無駄になってしまう…!

 

 

 

【模造品ごときが、私を…!だが…!リンクヴレインズにいる人間達はまだまだ尽きる事はない!!プレイメーカー!きみは、きみが助けようとする人々に押し潰されるのだ!私のターン!ドロー!!そして、スキル発動…!【マスターストーム・アクセス】!】

取り乱していたボーマンは冷静さを取り戻し、再びスキルを発動する…!

 

 

【プレイメーカー、私はきみに心から感謝しているのだ…きみは私の()をここまで強く育ててくれた…いわば、私はきみの()()()()姿()とも言える……それ故に、()()()()()()()()()…今ならば、降伏──サレンダーを認めよう…きみのデータは私の中でも特別な位置に置く…未来永劫、()()()()()を私の中で与えよう…!】

 

《チッ…!好き勝手言いやがって!なんだよ、プレイメーカーに与える幸福な時間ってのは?》

 

【──ロスト事件のない、挫折も孤独もない…プレイメーカー、きみが本来過ごしたであろう人生の記憶だ】

 

「オレに()()()()()は必要ない、オレは──倒れていった仲間達の思いを…意志を貫く!!」

 

《おおっ…!流石の即断!!》

遊作へと降伏を進めるボーマン…彼の口にした甘い誘いを遊作は一言で切り捨てる!

 

 

 

【私の作る()()()は気に入らないかね?】

 

「誰かの犠牲の上に築かれる理想など、オレは認めない!」

 

【きみも()()()()()()から逃れる事はできないか…惜しいな、それだけの高度な思考を持ちながら…人間の()に囚われるのは…ならば、このまま私に倒されるという未来しかないな…!】

誘いを否定されたボーマンは遊作へと攻勢を仕掛ける…。

 

 

 

ボーマンは『ドラグリッド』の効果によって新たな頭──『キメラ・ハイドライブ・ドラグヘッド フレイム』を喚び出す…その効果でリンク先の『クアンタムドラゴン』を破壊、遊作のライフを削り切る事を狙うが…その程度で倒される遊作ではない。

墓地の『サイバース・シンクロン』を除外する事で破壊効果を回避…『ドラグヘッドフレイム』の攻撃で『クアンタムドラゴン』は戦闘破壊されてしまうが、ダメージを最小限に抑え込む…!

 

 

 

【ああ…聞こえるぞ…多くの()が私の中で…!間もなく、()()()()()が誕生する…!全てをもとに最良の1()()を選び、最良の道を生み出す世界が…!】

 

「だが、そこに()()()はない!!」

 

【そんなものは──()()()()

ニューロン・リンクを通じて流れ込む大量のデータ…それに酔いしれるような様子を見せるボーマン…だが、その理想を遊作は否定する…しかし、ボーマンは動じない。

 

 

 

【人間という()()は我々に比べて個体差が激しい…その全ての()を尊重してしまえば世界は破綻し、対立や争いが起きる…それは人間の()()が物語っている…個々の考えがぶつかりあい、争いを生んできた!故に、全てを1つにした究極の思考の中で()1()()()()()()()()()()!!最良にして究極は1()()()()()!!それが平和をもたらし、崇高なる世界へと導くのだ!】

 

 

「………ボーマン、お前は───()()だな」

 

【なに…?】

人間達の個性を切り捨て、全てを自身のもとで統率するという理想を謳うボーマン…その理想を聞いた遊作が口にしたのは──ボーマンを哀れむ言葉だった。

 

 

「孤独の中からオレが得たのは…()()()()()()だけだった…だが、多くの仲間と出会い…時にぶつかり合うなかでオレの考えは広がっていった…多くの仲間の声に耳を傾けてこそ、初めて見えてくるモノがある…!それが互いを()()()()という事だ!」

遊作は今までの自分の旅路を思い返し、自分の理想を口にする。

 

全てを奪われたロスト事件…記憶を失った孤独と犯人へと抱いた復讐心…相棒たる草薙やAi、遊嗣や尊を始めとした仲間やハノイの騎士、リボルバーとのぶつかり合い……つらい時、悲しい時も…喜ぶ時も笑いあう時もあった…その全てが今のプレイメーカー──「藤木遊作」という人間を形作り、導いてきたのだ…!

 

 

【声を1つに集約し、1つの答えを導く…我々の主張は同じ事なのだよ、プレイメーカー!!】

 

「いいや!お前のやり方は全てを犠牲にする!そして、その先にあるのはただの()()…!閉ざされた未来だけだ!!オレはイグニス達と共に生き、切り開ける未来を信じる!!」

 

《プレイメーカー…!》

 

《その通り…幸せしか存在しない世界には()()()()()()()…誰かと語り合い、ぶつかり合って…それでも、誰かの為に生きよう…誰かと共に歩もうという想いが、願いが!未来を導く為の力になるんだ!!ボーマン、お前の理想に共感する奴なんて虚無の邪神くらいのものさ!!少なくとも、今を生きる人間達は───お前の理想を否定する!!》

 

【っ…!】

人間の「負の側面」しか見ずに個を否定するボーマン、人間の「光と闇」を見てそれを併せ飲む遊作…似て非なる理想を持つ2人の道は分かたれる…そんな遊作の背中を押すように、「英雄」の記録を持つロマンも声を上げる…!

 

 

 

「ボーマン…お前の理想世界は作らせない!オレは、このデュエルに勝つ!!」

 

 

 

「今、雄大なる翼のもとに集いし強者達よ!新たな伝説となれ!融合召喚!!出でよ!『サイバース・クロック・ドラゴン』!!」

逆転を賭けた遊作のターン…遊作はリンク召喚によってサーキットを繋ぎ、紫の電脳竜を喚び出す…その効果によってデッキのカード3枚を墓地へと送り、攻撃力を『ドラグリッド』を超える5500まで強化する!

 

 

《どうだ!お前の『ドラグリッド』の攻撃力を上回ってやったぜ!!》

 

【Ai、きみ達の前のターンの事を忘れた訳ではあるまい…きみ達はニューロン・リンクによって『Playmaker』という情報として解析されつつある…きみはリンクヴレインズの人間全てを相手にしているのに等しいのだ!】

 

「だが、オレが倒すべき相手はお前1人だ、ボーマン!!」

 

《(その通りだ…本来、【ストーム・アクセス】で引き込めるカードはランダム…だけど、ボーマンはシステムを書き換え…ニューロン・リンクを利用する事でシャイニング・ドローのように自分に有利となるカードを引き込んでくる…それを止めるには、ニューロン・リンクを停止させるしかない…!でも、()()()()では──あの巨大プログラムを破壊する事はできない…どうすれば…!)》

逆転の一手を前にしても不敵な笑みを浮かべたままのボーマン…その自信の源は究極のシステムたるニューロン・リンク…それを止める術を…()をロマンは持たない…その時だった。

 

 

 

「───聞こえるか、プレイメーカー…答えなくていい、気付かれる…!これから、ニューロン・リンクを止める為の作戦を伝える…!!」

 

「(──ファウストか…!)」

 

その時、ボーマンに抗っていた()()達が起死回生の作戦を伝えた…!

 

 

 

 

【いくぞ…スキル発動!!】

遊作を潰すべく再びスキルを発動し、データストームを巻き起こすボーマン…その時だった…!

 

 

ズキン!!

 

 

【っ…何か違和感があると思ったが…キミ達か、財前にゴーストガール…ハノイの騎士もか!!】

 

《ヤベッ、バレた!!?》

吹き荒れるデータストーム…それを巻き起こすニューロン・リンクのシステムにボーマンが違和感を感じ取り、声を上げる…!

 

究極のシステムだという「ニューロン・リンク」…しかし、それを制御するのは当然、ボーマン1人…無数の人々を取り込みながらスキルを発動する。

…その瞬間、僅かにシステムに隙が生じる事を見抜いたハノイの騎士がリンクヴレインズ内にいる財前達にコンタクトを取り、内と外から同時に攻撃を仕掛ける事でニューロン・リンクに負荷を掛ける事でシステムを停止させる作戦を実行したのだが…すんでの所でボーマンに勘付かれてしまったのだ…!

 

 

 

【お前達の好き勝手にはさせない…!お前達も私の一部となれ!!】

 

「っ──財前!ゴーストガール!!!」

 

 

 

 

Sideリンクヴレインズ

 

 

『ハノイの騎士は攻撃を成功させた…!あとはこのウイルス爆弾を手動で起動させれば──!!』

ハノイの騎士の攻撃を確認した晃は必死にコンソールへとデータを打ち込む…その時───

 

 

 

ギィン──!!

 

 

 

『晃!危ない!!』

 

『ゴーストガール──!?』

妨害を察したボーマンがニューロン・リンクを操り、財前へと攻撃を仕掛ける…その寸前、ゴーストガールが盾となり───

 

 

 

グサッ!!

 

 

 

 

 

『えっ…?』

 

「──させると思いますか?」

 

『き、キミは…!!』

ゴーストガール…エマは言葉を失った…ニューロン・リンクに貫かれる寸前、()()が自分を庇った…その正体に財前は目を丸くする。

 

 

 

 

『キミは、鋼の騎士の──!』

 

「私の事に構わずシステムを起動してください、財前さん……間に合って良かった」

財前とエマ…2人を庇ったのは銀髪のツインテールの少女──レイン彩華だった…エマを庇った彩華は頭をニューロン・リンクに貫かれてしまっていた…。

 

 

 

 

「──心配は無用です、()()()の規格なんて…私には()()()()()()()

 

バキャン!!

 

『『は…!?』』

しかし、彩華はニューロン・リンクの光をおもむろに()()()()()…その光景に財前達はフリーズしてしまう…。

 

 

「スフィア・フィールド展開……私を止めたくば攻撃力3500以上のモンスターを連れて来る事です───財前さん、合わせてください…私の()()に貴方達の攻撃を合わせます」

 

『っ…すまない!!ウイルス爆弾、起動!!』

 

「罠カード『機殻の凍結(クリフォート・ダウン)』──私達の怒り、受け止めてみなさい──ボーマン!!」

スフィア・フィールドによってボーマンからの追撃を防いだ彩華、そして財前とゴーストガールのウイルス爆弾がニューロン・リンクへと炸裂した…!!

 

 

 

Side OUT

 

 

ガシャン!!

 

 

【な、なにぃぃ!?】

 

「ニューロン・リンクが…!」

 

《止まった上に凍りついた!?》

 

《───母様、ありがとうございます…!》

その刹那、ミラー・リンクヴレインズでも異変が起きる…緑に輝いていたニューロン・リンクの光球から光が消え、氷の結晶が飛び出す…それによってスキル【マスターストーム・アクセス】が停止したのだ!

 

 

《今だ!プレイメーカー!財前さんにゴーストガール、ハノイの騎士がニューロン・リンクを破壊した!今なら、攻撃が通る!!》

 

《やっちまえ!プレイメーカー─!!》

 

「ああ…!みんなの思いを、犠牲を…無駄にはしない!!」

願いが繋いだ僅かな隙…遊作は起死回生の攻撃を仕掛ける!

 

 

【させるものか…!『ドラグリッド』の効果発動!ジャッジメント・ダイス!!───光属性だと!?】

 

「運にも見放されたようだな、ボーマン!!これで『クロック・ドラゴン』の効果が無効になる事も、効果破壊される事もない!!」

ボーマンは既にEXデッキに加わっている『ドラグヘッド』を喚び出すべく効果を起動…しかし、効果は無駄打ちに終わる─!!

 

 

「受けてみろ!『サイバース・クロック・ドラゴン』の攻撃!パルス・プレッシャー!!」

 

【ぬっ…!?ぐううっ!?】

 

《よっしゃ!!これでライフは五分と五分だ!!》

紫の電脳竜の一撃は多頭竜を粉砕…ボーマンに大ダメージを与えた!!

 

 

 

【ぐっ…やはり、ライトニングの言う通り…人間の()とやらは厄介な存在のようだ…だが…!!おおおっ──!!!】

 

キィン─!!

 

「っ…なんだ!?」

大ダメージを受け、表情を歪めるボーマン…だが、その体から光が溢れ出す…!

 

 

《マズい…!ニューロン・リンクを修復しようとしてる!?》

 

【その通り…ミラー・リンクヴレインズは()()()()…!私が存在する限り、ニューロン・リンクは何度でも蘇る!!】

ボーマンの力によって停止したはずのニューロン・リンクが明滅…氷の結晶も消え去り、復元されていく…!

 

 

《っ……させるかよぉ!!》

 

「Ai!?」

 

《悪いな、ロックは解除させて貰った…ニューロン・リンクにトドメを刺すなら──今しかねぇ!!》

 

《Ai…まさか、()()するつもりかい!?》

その時、自力でシステムロックを解いたAiがデュエルディスクから飛び出す…復元しかけているニューロン・リンクを破壊する為に自滅覚悟の体当たりを仕掛けようとしていたのだ…!!

 

 

「Ai!よせ!!」

 

《Ai、きみは───》

 

《止めてくれるなよプレイメーカー、ロマン…これがオレの()()だ!オレがいなくなっても…プレイメーカー、お前は繋がってる…!たくさんの人間達と!!》

 

【させない…させないぞ、Ai!!】

 

ギィン!!

 

遊作の制止も聞かず、Aiはニューロン・リンクへと迫る…だが、それをボーマンが見過ごすはずもなく…ニューロン・リンクによってAiへと無数の光を放ち、攻撃を仕掛ける…!

 

 

《プレイメーカー…!お前、言ったよな…孤独の中から得たのは虚しい復讐心だけ…仲間との出会いで考えが広がった…繋がる事で、強くなれたって!!》

 

ザン!!グサッ!!

 

「Ai!!」

 

《ガッ…!?繋がる事を、恐れるな!!お前は、みんなと、繋がってんだ!!》

ニューロン・リンクの光によって傷付きながら、Aiは遊作へと思いを伝える……まるで()()のように…!

 

 

《草薙に、ソウルバーナー…Yu-Zに、マシュ!ブルーメイデン!リボルバー、財前、スペクター、ゴーストガール!鋼の騎士!不霊夢にアクア、ロマン…そしてオレとも!!》

 

「Ai─!!」

手をもがれ、足に穴が空こうともAiは止まらない…最後の活路を開く為に…!

 

 

《プレイメーカー…!倒せ、ボーマンを!そして…世界を救ってくれ…!!》

それはAiの()の叫び…自己中心的な彼が初めて、打算もなく誰かの為に選んだ魂の叫びだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《──ありがとう、Playmaker…ありがとう、Ai──人間とイグニス…きみ達の絆と覚悟が──()()を引き寄せる、最後の鍵だった》

 

 

 

 

 

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