転生して決闘の観測者〈デュエル・ゲイザー〉になった話 作:S,K
「最善」を掴み取ったはずの遊嗣達…しかし、その手からは大切な者が零れ落ちてしまっていた。
これは…「運命」へと抗う、最後の戦いである…。
それでは、最新話をどうぞ!
プロローグ─英雄の死─
《遊作、もう動いて大丈夫なのか?》
「ああ、心配かけたな」
《心配なんてモンじゃねぇって!?お前も尊もログアウトすると同時にブッ倒れたんだからな!?》
《仕方ないだろう、体は動いていないとはいえ…彼らは
「あはは…草薙さんには申し訳ない事したなぁ…早く弟さんに会いに行きたかったはずなのに…」
新生リンクヴレインズでの激戦が終わって数時間…遊作と尊は遊嗣と遊海が入院する病院を訪れていた。
本当ならば…遊嗣達の無事を確かめる為にすぐに病院に向かいたかったのだが、遊作も尊も長い戦いのダメージで昏倒…病院に向かうのは昼近くになっていた…。
なお、遊作達が倒れている間にAiは不霊夢を会話可能の状態まで修復…草薙は遊作達と別れて弟のいる施設へと向かっている。
「でも……遊嗣があの『覇王龍の乱』を引き起こしたズァークの生まれ変わり、か……」
「ああ…遊嗣自身も、ロマンからデッキを渡されるまで気付かなかったらしい」
《生まれ変わりか……人間達の中でも
《まぁ、デュエルモンスターズの精霊とか…別次元からの侵略なんかも起きた事があるし、
そして…遊作は尊にライトニングが今回を起こした理由と共に「破滅の光」との決戦の中で明らかとなった遊嗣が「覇王龍ズァーク」の生まれ変わりだった…という事実を話していた。
デュエルモンスターズ関連の話題に疎い事が多い尊だが…流石に「覇王龍の乱」については知っていたらしく、その経緯を聞いて驚いていたが……普段の遊嗣の優しさを知る尊はそこまで気にはしていない様子だった。
「だけど…これでようやく
「そんなに緊張しなくてもいいさ、遊海さんは気さくな優しい人だ…とりあえず、遊嗣と合流してからだな」
そして、尊はロスト事件から救いだしてくれた恩人である遊海とようやく再会できる事に嬉しそうな様子を見せる…その前に遊嗣と合流する為に2人は病室へと向かった…。
コンコンコン
「失礼します……っ…?」
『むっ…キミはマシュの同級生の…藤木君、だったか…久しぶりだね』
「プロデュエリストの…ランスローさん…」
遊嗣の病室に入る遊作達…そんな彼らを出迎えたのは──マシュの父親であるランスローだった…さらに、遊嗣がいるはずのベッド周りはカーテンによって仕切られている…。
『………私はこれで失礼するよ………遊嗣君と娘を頼む
「「っ!?」」
何処か沈んだ表情をしながら…遊作達の
「遊作、今…正体を…!?」
「いや、そんな事はいい…!!遊嗣、オレだ──大丈夫か?」
遊作の正体を見抜かれた事に驚く尊…しかし、遊作はそれ事態を気にする事はなく……それ以上に遊嗣に
「………あっ……藤木さん…穂村さん……」
「…………」
《お、おいおい…!?なんだよこの雰囲気…?ようやく戦いが終わったのに、
「っ……」
カーテンの中…そのベッドの上には茫然自失といった様子の遊嗣が身を起こしていた…その横の椅子には泣き腫らした様子のマシュが遊嗣に寄り添っている。
あまりにも異様な雰囲気に遊作のデュエルディスクからAiも顔を出してしまう…。
「遊嗣…遊嗣!しっかりしろ!何かあったのか…!?」
「ゆうさく、くん…たける、くん……父さん、が……父さんが…!!ああ…あああ…!!」
《ロマン!!何がどうしたんだよ!?戦いが終わったんだから、喜ぶところだろ!?》
《やぁ、Ai…遊作君…尊君に不霊夢も……
「《「《は…?》」》」
遊作達の顔を見て泣き崩れる遊嗣…そして、ロマンは遊作達に最悪の知らせを伝えた…。
……………
KC病院・大会議室……本来ならば、医師や看護師達が治療に関するカンファレンスに使用するその場所はスポンサーであるKCの意向によって貸切となっていた…その理由は…。
「お父さん…なんで…なんでっ…!?」
「璃緒さん……」
《フォウ…フォーウ……》
「……おい、ギラグ……オレの事、ぶん殴ってくれ」
「……殴れねぇよ真月……夢なんかじゃねぇ、俺達の目の前で起きてるのは……
「遊海…なんで、なんでだよ…!!」
(……こんなに胸が痛むのは、ハートランドでの戦いが終わって以来だ…)
「遊馬…アストラル…」
《………あっけない、最期だったねぇ………》
「っ…遊海先生っ…!!!」
「これ、は……」
《……世界で活躍するプロデュエリスト、勢揃い…って感じだな…デュエルモンスターズの精霊みたいなのもちらほら…》
「……みんな、父さんと一緒に戦ってくれたデュエリストなんだって……「覇王龍の乱」の時も……」
「遊嗣さん……」
大会議室は重たい空気に包まれていた…その理由は部屋の中央に安置されたモノ───不死身の英雄であるはずの白波遊海の亡骸だった。
リンクヴレインズでの戦いはプレイメーカーの勝利によって終結した…それにより、ニューロン・リンクに取り込まれた人々やライトニング一味によって奪われた意識データ、倒されてしまったデュエリスト達のデータも解放された。
だが……遊海は意識を取り戻す事はなかった。
リンクヴレインズで遊海の意識データを取り戻し、データ自体の損傷や破滅の光による影響が無い事を確認した彩華は遊海の肉体へと意識データを戻した…しかし、その瞬間に遊海の肉体の容態が急激に悪化………翠の回復魔法やフレアによる加護も意味を成さず、白波遊海は息を引き取ってしまった。
この場に集まっていたのはリンクヴレインズでシャドウ・ネームレスというイレギュラーが現れた事で招集された、かつての「チームZEXAL」のメンバー達だった…。
泣き崩れる璃緒に寄り添う鉄男やフォウ…現実を受け入れられず、呆然としている真月やギラグ…項垂れる遊馬に寄り添う小鳥に、必死に涙を堪える十代……その他のメンバー達も一様に表情は暗く、悲しみが部屋を埋め尽くしていた…。
その様子に車イスに乗せられた遊嗣、それを押すマシュと共に大会議室に通された遊作や尊も言葉を失っている。
《………貴方達が来るのを待っていましたプレイメーカー…いえ藤木遊作、Ai……
《わっ!?って…その声……ロマンの母ちゃん…?銀髪美少女の……ってか、完全に
「確か…アヤカ、と遊海さんが呼んでいた…」
《ええ、私はマスターのパートナー……デュエルモンスターズの精霊、彩華です……リンクヴレインズでは銀髪の少女のアバターを使いますが、こちらが私本来の姿です》
その時、遊作達に声を掛ける者がいた……それは虹色の核石を持つ、カプセル型の機械──遊海の相棒たる彩華だった。
《闇のイグニス・Ai…貴方が持つ光のイグニス・ライトニングの身柄を引き渡してください……手荒な真似はしないと約束します》
《えっ──お、おう…暴れ出さないように凍結してるけど、それでもいいなら……》
そして、彩華は有無を言わせぬ圧力を発しながらAiにライトニングのデータを引き渡すように求め…Aiは戸惑いながらそれに従う…。
《解析開始………………違う、
《あっ、もういいの?………解析能力半端ないなオイ…流石はロマンの母ちゃん…》
渡されて数秒でライトニングの解析を終わらせたアヤカはAiへとデータを返す…その声色から目的は果たせなかった事は分かった…。
「……教えてくれ、どうして…遊海さんは、亡くなったんだ?」
《……原因不明の、心停止…それが、マスターの死因です………そんな死に方は、
「伝説の英雄が、原因不明って……」
《先ほどの解析…ライトニングが白波遊海に何か危害を加えたのかを調べたのだな?》
《その通りです、炎のイグニス・不霊夢………ライトニングはマスターに致命的な危害は加えていなかった…電脳ウイルスなどを仕込んだ形跡もありませんでした》
《じゃあ…遊海は、なんで死んじまったんだよ……》
遊作の問いかけに彩華は静かに答える…遊海の直接的死因は彩華やフレアにも分からず、ライトニングの仕業ではない…という事が判明しただけだったのだ。
キィン─!!
「わっ…!?なんだっ!?!」
「これはっ…!?」
その時、会議室内の
『っ──着いたようだな、DM世界に……』
光が収束した場所から数人の人影が現れる…その中で最初に声を上げたのは鋭い目つきにシルバーのコートを纏った青年だった。
《えっ…
その姿を見たAiが声を上げる…それはハリボテのサイバース世界で出会ったデュエルヒーロー、カイバーマンによく似た人物だったからだ。
『ふん……話に聞いたイグニスという意思持つAIか……
《──分身?》
「待て、Ai…!?その人は、カイバーマンじゃない…!周りを見ろ…!」
「ち、ちょっと待って!?こんな事
「えっ…あ…
Aiとは初対面らしいカイバーマンに似た青年…そして、遊作やマシュ達は異変にようやく気付いた。
カイバーマン……その隣に並ぶのは特徴的な星型の髪型の柔和な雰囲気を纏う青年や、金髪の青年──その正体はARC次元から転移してきた、遊海と共に戦い抜いてきた
『っ…おい!!遊海は何処だ!!からかうのはやめてくれよ!?あいつが死ぬ訳ねぇだろ…!?』
「城之内、さん…嘘じゃ、ないんです……遊海先生はっ…!!」
『───十代───遊海、そんな……』
集団の中から取り乱した様子の城之内が飛び出す…カイトを通じて送られた緊急連絡を受けて駆け付けた彼らだったが……城之内は遊海の死を信じていなかった…。
だが、十代の声に導かれるように…城之内は
『ゆ、遊海…冗談キツイって…!ドッキリを仕掛けんのは、オレの十八番だろ?………なぁ…なんとか言えッ─────馬鹿、野郎…なんで、なんでだよぉぉ!!!!』
『城之内君…っ…!!遊海…どうして…!!』
会議室に城之内の慟哭が響く…城之内は遊海の死を信じてはいなかった……だが、氷のように冷たくなった遊海の手に触れた事で…嫌でも現実を理解する……泣き崩れる彼には遊戯が寄り添った…。
『っ…璃緒ちゃん!翠ちゃんは…!?』
「杏子、さん……病室で、寝込んでます……母さんを、お願いします…」
「っ……!舞さん…」
「行ってあげよう……あの子の悲しみを受け止めてやれるのは、アタシ達だけだ…」
そして、翠のもとへは杏子と舞の二人が向かう…翠は憔悴し、起き上がれなくなっていた…。
「こ、コレ…どういう事ですか…!?海馬瀬人さんも、武藤遊戯さんも城之内克也さんも…ずっと昔に亡くなったはずじゃ…!?しかも、あんなに若い姿のはずが…!?」
《……キミ達に話す時が来たみたいだね、「覇王龍の乱」の真実を……》
《覇王龍の乱の真実?それって映画のストーリーとは違うのか?》
《覇王龍の乱…それは、世界を切り裂くほどの戦いだった───》
伝説の決闘者達が現れた事で戸惑うマシュや遊作達にロマンが全ての真相を語る…。
かつて旧DenCityを更地へと変えた『覇王龍ズァーク』は遊海達、伝説の決闘者達の奮闘と突発的なハプニングによって異次元世界へと飛び出し、そこで自身が復活し、君臨する為の新たな世界『ARC次元』を創世した。
その世界創世にズァークと相討ちに近い形で巻き込まれた遊海の持つ力が反映された事で、遊海と絆を結んだ伝説の決闘者達が転生したり、並行存在が生まれる「奇跡の世界」となった事。
そのARC次元で大きな戦いが起こった事で『覇王龍ズァーク』が復活…最終的に遊海・遊戯・十代・遊星・遊馬の5人がズァークを鎮めるべく戦いを挑み──その戦いの果てにズァークは倒され、世界の平和が守られたのだと……ロマンは『ARC-V』の物語を掻い摘んでマシュや遊作達へと伝えた…。
「事実は小説より奇なり、か……そんな事が世界の裏……いいや、別世界で起きていたとは……」
《……オレ達の経験した戦いがちっぽけに思えちまうぜ…》
《いや、実際…彼らから見れば
「じゃあ、海馬社長や、遊戯さんは、遊海さんの為に…」
《その通り……マスターの死の知らせを受けて、彼らはこの世界に戻ってきたんだ……それだけ、マスターの影響力は大きいから……》
ロマンから過去の戦いの真相を聞かされた遊作達は白波遊海の旅路がどれほど過酷だったのかを思い知る……遊海が無事だったのならば、ボーマンが『完成』する前に全ての事件が解決していただろうと考えるほどに…。
「海馬瀬人社長…武藤遊戯さん、武藤杏子さん…城之内克也さんに城之内舞さん…それに、あれは────」
「海馬社長…渡ってきたのはこれで…?他の決闘者達は……」
『うむ…全員で押しかける訳にもいかんだろう、不動遊星や天上院明日香なども来たがったが、今は待機してもらった……ひとまず、ペンデュラム次元から俺に遊戯、杏子に凡骨と舞……そして──この2人だ』
カイトが海馬に対して次元を越えてきたメンバーを尋ねる…メンバーは計7人、残る2人は────
『───久しぶりだね、遊嗣……まさか、こんな形でこの
「遊希、さん…?それに───貴方は───」
『やぁ、久しぶり……でいいのかな?遊嗣……オレの事はほとんど覚えてないかな…?』
「───
車イスの上で憔悴した様子の遊嗣に歩み寄る2人の人影……それは青いジャケットを着た青年、榊遊希…そして、父親譲りの赤いタキシードに身を包んだ青年──エンタメデュエリスト・榊遊矢だった。
「ロマンさん、まさか…遊希さんも…?」
《……うん、遊希はズァークの生み出したARC次元で生まれたんだ……そして、榊遊矢は───かつて、マスター達、歴代最強の5人の決闘者達に浄化された『覇王龍ズァーク』…その善の心を受け継いだ────遊嗣の
「「ズァーク…遊嗣の、半身…!?」」
ロマンの言葉に遊作達は言葉を失った…。
『………遊嗣、きみが「覇王龍」として目覚めた事…次元を隔てた
「遊矢…」
車イスに座る遊嗣に目線を合わせて屈み込む遊矢、彼は…彼ら
『……遊嗣、教えてくれないか?遊海の最後の様子がどんな感じだったのか…』
「父さんは…最後まで、父さんだった…僕なんか、敵わないほど、強かったのに……なんで…なんで…!!!」
「遊嗣さん………」
遊矢の穏やかな問い掛けに遊嗣は泣きながら、ぽつりぽつりとデュエルの一部始終を伝える…。
光のイグニス・ライトニングが破滅の光の尖兵として遊海を乗っ取り、デュエルを仕掛けてきた事。
人類を脅かす存在である破滅の光に対抗すべく、遊海に「覇王龍」デッキを託されていたロマンがデッキを解放し、ライトニングとのデュエルに挑んだ事。
デュエルの中でズァークとしての「心の闇」に呑まれかけたが…
そのデュエルの果てにライトニングを倒し、破滅の光の支配から遊海を解放できたが……ミラー・リンクヴレインズに敷かれたルールによって遊海の意識データは光となって消えてしまったのだと…。
『────ちょっと待って…!!
「遊戯さん…?」
遊海の最後の様子をロマンと共に伝える遊嗣…その時、その話を聞いていた遊戯が声を上げる…。
「遊戯さん……だよな…!遊海先生なら、これくらいの戦いで死ぬはずがねぇ…!遊馬もそう思うだろ…!?」
「ああ…!遊海は死んだって死なないし、死んだって…
遊戯の言葉を聞いた十代や遊馬…そして、集まった決闘者達は強く頷く…不死身の英雄たる白波遊海が
《そりゃ、そうだよな…?ライトニングに意識を奪われた草薙の弟やボーマンに倒されたブルーメイデンやソウルバーナーが戻ってきてるんだから…同じ条件の遊海だけが死んじまうのはおかしい、よな?鴻上博士みたいに
《Ai、それはありません…昏睡状態で多少の衰弱はあったとはいえ、マスターは
『彩華も、フレアも理由が分からない?それは───』
そして、それぞれの話を聞いたAiが声を上げる…同じ条件で倒され、同じ条件で戻ってきたはずなのに…遊海だけが命を落とすのは変だと…しかし、遊海の直接の死因は彩華やフレアにも分かっていない…その時だった…。
キィン───
【何事だ、騒々しい……人間界とARC次元の往来は最小限の人数で行なうのではなかったか?】
「っ…なんだ?空間に穴が…!?」
《おいおい…!?ここはリンクヴレインズじゃないんだぞ!?》
「この、声は…?」
会議室の虚空に光のゲートが開く…そして、その扉の中から威厳のある低い声が響く…突然の事に戸惑う遊作達の前に
【フン…こうして人間界に来るのはしばらく振りか…】
「───綺麗……」
現れたのは大柄な光の人型だった。
赤い前髪と光輝く金色の髪は腰まで伸び、赤と青のオッドアイを持つ透き通るような青色の鍛えられた体を持つその人物────それはARC次元の管理者、『理想と混沌の神』善神ドン・サウザンドだった。
その芸術作品のような肉体にマシュは目を奪われている…。
【───久しぶりだな、遊嗣よ…しばらく見ぬうちに大きくなりおって…人間の成長は早いものだ】
「──
【……遊海め、呼び方を直さなかったな?】
《えっ…遊嗣の知り合いなの!?というか、呼び方が可愛いなオイ…》
光の扉から現れたドン・サウザンドは優しく遊嗣の頭を撫でる…しかし、遊嗣の呼び方を聞いて呆れた表情を見せる…。
なお、超常の存在を目の当たりにしたAiはドン・サウザンドが遊嗣の知り合いである事に驚いている…。
「ドン・サウザンド!?どうして…」
【どうしても何もあるか、以前の約定によって次元移動は最小限にすると決めたであろうが……まぁ、遊嗣が既に
突然現れたドン・サウザンドに驚く遊馬…ドン・サウザンドは以前の取り決めによって「人間界とARC次元の転移を最小限にする」事が決定した事で微睡みながら次元を見守っていたのだが…遊戯達7人が転移した事に気付き、様子を見に来たのだ。
そして…彼は部屋の中央に安置された亡骸の存在に気付いた…。
【………死んだか、遊海よ……不死身の英雄であっても、人間の死とはあっけないものだ……して、
「「「「っ…!!?」」」」
遊海の亡骸を見たドン・サウザンドが強い殺気を放つ…それを目の当たりにした遊嗣や遊作達は冷や汗を流し、呼吸すらも忘れてしまっている…。
(ドン・サウザンド…遊海の死因ははっきりとしていない、彼は電脳世界に潜んでいた破滅の光に乗っ取られ、「覇王龍」の力を手にした遊嗣との決闘で敗北した……だが、それは──遊海の命を奪う原因にはならないはずだ)
【──なに?】
だが、アストラルの言葉を聞いたドン・サウザンドは呆気にとられ…漏れ出していた殺気が霧散していく…。
「父さんが、殺されたって…どういう事…?父さんは、不死身なんじゃ…!?」
「………遊嗣、お父さんはね…命の懸かったデュエル──闇のゲームで負けなければ死なない…という千年アイテムの祝福を持っているの……母さんも同じよ…」
遊海が殺されたと聞いて戸惑う遊嗣に璃緒が両親の秘密を明かす…だが、それは───
「デュエルで、命を落とすって…それは───」
《…
「あっ───」
《っ…違う!!今回の事と遊嗣は関係ない!過去の例から見ても、マスターが遊嗣とのデュエルで死ぬなんて
闇のゲームによる敗北…それは今回の遊嗣と遊海の戦いにも当て嵌まってしまう…それを聞いた遊嗣の表情が絶望に歪むが───ロマンがそれを強く否定する!
『っ…その通りだぜ、遊海は今までも誰かに操られたりした状態でデュエルした事は何回かあった!!だけど、誰かに
《城之内さんの言う通りです、闇のデュエルにおける死には…対戦相手のマスターへの
【─────チッ、
(ドン・サウザンド、何か気付いたのか?)
ロマンの言葉を受けた城之内や彩華が今までの前例を説明する中…何かに気付いたドン・サウザンドが苦々しい表情を見せる…。
【アストラル、どうやら我々は……長い間
キィン─!!
ドン・サウザンドが遊海の亡骸へと力を解放する…そして、
「うっ…!?」
『なんだ、これは…!?』
「遊海…!?」
「なに、これ…!?」
「遊海さんの体、に…黒い何かが、纏わりついて…!?」
ドン・サウザンドによって明らかにされた遊海の真実…寝かされた遊海の肉体は禍々しい
「この、感じ……まさか…!!」
《間違いない……これは、
「ダークネス…?」
《ダークネス……ボク達の住む世界の裏側に存在する「虚無の世界」を支配する邪神だ……奴は人間の抱く『負の心』の強さに応じて力を増し、幾度となく人類を「喜びも悲しみも存在しない」虚無の世界に飲み込もうとしてきた───マスターと遊城十代の因縁の相手だ》
「虚無の、邪神…!?」
その呪詛を目の当たりにした十代とユベルがその呪いを掛けた者の正体に気付く…事情を知らない遊嗣達は知らない名前に戸惑うが…ロマンの説明によって「邪悪な存在」である、という事は理解できた…。
「呪いって…いつ…!?ダークネスは18年前に倒したはずだろ!?ドン・サウザンド!!」
【覚えておらぬか……我は確かに、ダークネスの人格を燃やし尽くし葬った…だが、
「あっ………アイツ、凌牙を攻撃しようとして…お父さんが────まさか…!!」
【その時であろうな…癪に障る話だが…奴の隠れ潜み、自分の痕跡を隠す力は侮れん……事実、遊海も融合次元で奴と対峙するまで「覇王龍の乱」で奴に妨害を受けた事を忘れていたのだろう?───呪いの1つや2つ、今まで隠し通せてもおかしい話ではない】
そして、璃緒達は思い出す…融合次元における対アカデミア強襲戦の最終局面、赤馬零王に取り憑いたダークネスは遊海とドン・サウザンドによって撃破された。
──しかし、ダークネスは遊海の矜持を折るべく、隙を見せた凌牙へと攻撃を仕掛け───遊海はそれを庇い、深いダメージを負っていた……その時に呪詛を仕込まれたのだと…。
「ま、待ってください!呪いが掛けられたとしても…遊海さんは赤き竜の
【ほう、現代の人間にしては…遊海に詳しいものだな、娘よ】
その時、様々な文献や資料を読み、遊海自身とも話した事もあるマシュが声を上げる…神を前に物怖じしない彼女に対してドン・サウザンドも興味を見せる。
《っ……まさか、ダークネスは……》
【思い至ったか、太陽神……ダークネスが遊海に掛けた呪い、その内容は恐らく────『闇のデュエルに敗れれば命を落とす』……そのような類だろう】
『『『「「「!!?」」」』』』
《えっ…それ、遊海が持ってる祝福と矛盾した内容じゃね?そんな事して意味あるのか?》
『……そうでもないのだ、イグニス……遊海の祝福は「闇のデュエルに負けなければ
「なんだよ…なんだよ!そのたちの悪い
そして、遊海が死んだ原因が明らかとなる……遊海はダークネスの呪いによって、常に生死の狭間を彷徨っていたのだと…その内容を聞いた真月があまりにも悪辣な内容の呪いに怒りの声を上げる…。
『遊海の奴……どんなデュエルでも楽しみたい、相手を救いたいって思ってたから…少しだけ手心を加える時があるんだ…ダークネスの奴、それを知ってて…!!』
【それもあるだろうが…遊海は不死身故に、誰かを助ける時に
遊海の親友である城之内、そして一時的とはいえコンビを組んだ事もあるドン・サウザンドが呪いの意図を察する…そして、それは───
「……つま、り…父さん…を……父さんを、死なせた…のは───
「あっ…!?」
《しまっ…!?遊嗣!落ち着け!!》
ドクン
「あ…ああ……うわあああああああ!!!」
「っ!?遊嗣!!!」
《どわぁ!?!?なんだこれぇ!?》
魂が引き裂けるような絶叫を上げる遊嗣…その体から凄まじい力の奔流が溢れ出し、会議室に吹き荒れる…!!
【不味いな………覚醒したとはいえ、結果的な
「馬鹿!!余計な事言うなドン・サウザンド─!!」
「オービタル7!スフィアフィールド展開!!」
《カシコマリ!!?っ…ダメであります!!すぐに壊れてしまうでアリマス──!!!?》
心のバランスが崩れた事で制御を失って吹き荒れる力の奔流…父親にトドメを刺した……それが、避けようのない
「僕が!!ぼくのせいだ!!ああ、あああああああ───!!」
「遊嗣さん…ダメ…!!落ち着いて…!!っ───!!」
《遊嗣!落ち着け!!きみのせいじゃない!!悪いのはダークネスっ…ダメだ、声が届いてない…!!》
「マシュちゃん!!」
《ロマン!!》
力の奔流に阻まれ、距離を取るしかない決闘者達…その中でマシュとロマンだけが我を失った遊嗣にしがみついて必死に声をかけ続けている…!
《フレア!なんとか…!!》
《っ…(室内で力を使いづらい…!遊嗣の暴走を止めるには…意識を刈り取るしか……早くしないと遊嗣の
荒れ狂う力の奔流…それを前に太陽神であるフレアも二の足を踏む…その時だった…!
《フレア…我ラニ、任セロ》
《此度の戦いでは、主の力になれなかった》
《これ以上、あの子を傷つけたくない……主が、悲しむ…!》
《っ…ラビエル、ウリア、ハモン!!》
その時、遊海の亡骸の近くに置かれたネックレス…「賢者の鍵」から光が溢れ出し…三幻魔達が現れる…!
《許セ、ユウジ……今コソ、主トノ特訓ノ成果ヲ見セル時…!!》
キィン──!!
ラビエルの言葉と共に三幻魔達は大きく息を吸う……三幻魔の特殊能力、それは「精霊の力」を吸収する事。
本来、それは世界全てのモンスター達から力を奪い尽くすほどの力を誇るが──この世界の三幻魔達は遊海との特訓によってそれを克服、ON/OFFと
ズキン
「アア、アアアアア!!!…あ……ああ、あ──────」
「っ…遊嗣、さん…遊嗣さん!!」
《遊嗣!しっかりするんだ!!》
ラビエル達によって急激に精霊の力を吸い尽くされた遊嗣は脱力……そのまま床へと崩れ落ち、意識を失った…。
《ラビエル、助かりました……》
《……我ラニハ、コンナ事シカ、デキナイ………ユウジノ力、悲シミノ味ダッタ………主、キット、悲シンデル……》
《人の心ほど、癒すのが難しいモノはありません……翠にも、遊嗣にも…私達がしてあげられる事はないでしょう───私も、
なんとか暴走した遊嗣を止めた幻魔達は涙を流す……それは冷静に努めていたアヤカも同じ……彼女は人心回路のスイッチを切る事で冷静さを保っていたのだ…。
「っ…今の揺れは何事だ!!っ…
『遅いぞ、
「凌牙と共に翠の看病をしていたのだ…杏子と舞に託してこちらに来る途中に異変を感じたが────」
「ドン・サウザンド…!?─────遊嗣!!」
その時、翠に付いていたデュエルロイド瀬人と凌牙が駆け付ける…そして、強風が吹き抜けたように荒れる室内とその中心に倒れ込む遊嗣の姿に
「ドン・サウザンド…!テメェ、遊嗣に何しやがった…!!」
「……落ち着け凌牙、ドン・サウザンドは何もしていない…だが、悪い知らせがある」
「カイト…何が、あった…!?」
数年振りに会うドン・サウザンドに対して以前の件もあって警戒感を露わにする凌牙………そして、カイトは静かにこの場で起きた一部始終を伝えた…。
……………
「っ……俺の、せいか…!?あのとき、不用意に前に出なければ!!父さんは…遊嗣は…!!」
「凌牙…」
「シャーク…」
カイトから全ての説明を受けた凌牙はぐったりとした遊嗣を抱きしめる…その食い縛られた口元からは血が流れていた…。
「アストラル…なんとか、ならないのか…」
(シャーク、分かっているはずだ…『ヌメロン・コード』は遊海には効果を発揮できない……我々にできるのは、遊海の死を受け入れ……遊海の代わりに翠と遊嗣を守り…彼に安心して、眠ってもらう事だけだろう)
「っ……チクショウ…!チクショウ──!!!」
『っ…こんなのって、ねぇよ…!!遊海はずっと戦い続けて、ようやく自分の
「ダークネスッ…どこまで…どこまで遊海先生の邪魔をすれば…どれだけ翠さんや遊嗣を傷つければ気が済むんだ!!」
『遊海君……ごめん…!肝心な時に、僕達は…きみの力になれなかった…!!』
《遊作…オレ達、とんでもない時に…遊海や遊嗣を巻き込んじまったのか…?》
「………そうかも、しれないな…」
《白波遊海……尊の恩人である貴方に、直接…感謝を伝えたかった…!》
「不霊夢……」
数多の戦いを乗り越え、運命を変え…未来を掴み取った英雄達であっても…既に起きてしまった現実を受け入れるしかない。
……凌牙や仲間達の慟哭や嘆きは…しばらく途切れる事はなかった…。